特許第6646483号(P6646483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646483
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20200203BHJP
   F16F 9/348 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   F16F9/32 L
   F16F9/348
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-49627(P2016-49627)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-166510(P2017-166510A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】北村 健司
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−076856(JP,A)
【文献】 特開2010−156293(JP,A)
【文献】 特開2010−242662(JP,A)
【文献】 特開2012−255467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に複数のポートを有する環状のバルブディスクと
前記バルブディスクに積層され、前記ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、
前記リーフバルブの内周側と対向する前記バルブディスクの内周ボス部にポケットを設け、
前記ポケットは、前記内周ボス部に開口する入口通路と、前記入口通路に通じる中空な貯留部とを有し、
前記バルブディスクは、中央に設けられた軸を挿入可能な孔と、内周部に設けられ前記孔に連通する凹部とを有し、
前記貯留部は、前記凹部と前記孔に挿入された軸とで形成されるとともに、前記入口通路における前記貯留部への接続部分の開口部と平行な面で切断した断面積のうち、前記接続部分の開口部の開口面積より大きな部位を有する
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
周方向に複数のポートを有する環状のバルブディスクと、
前記バルブディスクに積層され、前記ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、
前記リーフバルブの内周側と対向する前記バルブディスクの内周ボス部にポケットを設け、
前記ポケットは、前記内周ボス部に開口する入口通路と、前記入口通路に通じる中空であって環状の貯留部とを有し、
前記貯留部は、前記入口通路における前記貯留部への接続部分の開口部と平行な面で切断した断面積のうち、前記接続部分の開口部の開口面積より大きな部位を有する
ことを特徴とするバルブ。
【請求項3】
周方向に複数のポートを有する環状のバルブディスクと、
前記バルブディスクに積層され、前記ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、
前記リーフバルブの内周側と対向する前記バルブディスクの内周ボス部にポケットを設け、
前記ポケットは、前記内周ボス部に開口する入口通路と、前記入口通路に通じる中空な貯留部とを有し、
前記バルブディスクは、前記入口通路が形成された上部ピースと前記貯留部が形成された下部ピースとを有し、
前記貯留部は、前記入口通路における前記貯留部への接続部分の開口部と平行な面で切断した断面積のうち、前記接続部分の開口部の開口面積より大きな部位を有する
ことを特徴とするバルブ。
【請求項4】
前記上部ピースと前記下部ピースは、それぞれ軸を挿入可能な孔を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記入口通路が前記バルブディスクの内周に向けて斜めに形成される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体と車軸との間に介装されて、車体の振動を抑制する緩衝器は、減衰力を発生するためにバルブを備えている。
【0003】
このようなバルブは、例えば、液体が収容されたシリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されたロッドと、ロッドの先端に連結されてシリンダ内を二室に区画するピストンを備えた緩衝器のピストン部分に具現化される。
【0004】
具体的には、バルブは、伸側ポートと圧側ポートを有するバルブディスクとしてのピストンと、ピストンに積層されてポートを開閉する環状のリーフバルブとを備えて構成される。緩衝器が伸縮する際に圧縮される室から拡大される室へ液体がポートを介して移動するが、リーフバルブで液体の流れに抵抗を与えて二室間に差圧を生じさせる。これにより、緩衝器は減衰力を発揮する。
【0005】
このような緩衝器を構成する部品は、孔開け、切削等といった加工により製造されるため、組立て前に洗浄されるものの、切削くず等が取り除かれずに部品に付着したまま組み立てられてしまい、緩衝器内にコンタミナントとして残ってしまうことがある。
【0006】
このように、緩衝器内にコンタミナントが残った状態では、液体と一緒にコンタミナントも移動する。リーフバルブは、ポートを介して移動する液体の圧力により、外周側から撓んでバルブディスクから離座してバルブディスクとの間に流路を形成するが、流路を形成しないリーフバルブの内周側も僅かに離座するため、ここにコンタミナントが挟み込まれてしまう恐れがある。すると、リーフバルブの外周側が常にバルブディスクから浮いて隙間ができてしまう。そのため、当該隙間から流れる液体によって、リーフバルブの外周部が振動して異音を発生させたり、リーフバルブの閉弁時にも隙間から液体が流れてしまい、減衰特性が悪化してしまう恐れがあった。
【0007】
これに対し、特許文献1に開示されているように、リーフバルブの内周側とバルブディスクの内周側との間にコンタミナントが挟まれないように、バルブディスクの内周側にコンタミナントを回収するポケットを設けたバルブがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−76856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のバルブに設けられたポケットは、鉛直方向に真っ直ぐ形成されているため、ポケット内に回収されたコンタミナントがリーフバルブの開弁する際にポケットから排出されて、コンタミナントの回収が捗らない恐れがある。
【0010】
そこで、本発明では、コンタミナントを回収して異音の発生や減衰力特性の悪化を防止できると共に、コンタミナントが排出されにくい構造を備えたバルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、バルブディスクの内周ボス部に前記内周ボス部から開口する入口通路と、前記入口通路に通じる中空な貯留部とを有し、前記バルブディスクは、中央に設けられた軸を挿入可能な孔と、内周部に設けられ前記孔に連通する凹部とを有し、前記貯留部が、前記凹部と前記孔に挿入された軸とで形成されるとともに、前記入口通路における前記貯留部への接続部分の開口部と平行な面で切断した断面積のうち、前記接続部分の開口部の開口断面積より大きな部位を有するポケットを有することを特徴とする。この構成によると、バルブディスクを加工して貯留部を形成する際に、バルブディスクを内周側から直接加工できるため、貯留部を容易に形成できる。
【0012】
また、前記入口通路が前記バルブディスクの内周に向けて斜めに形成されるようにしてもよい。この構成によると、貯留部を内周ボス部のリーフバルブ開口側から遠ざけられるため、貯留部に収容されたコンタミナントがリーフバルブの開弁時にポケットから排出されにくくなる。
【0014】
また、他の手段は、周方向に複数のポートを有する環状のバルブディスクと、前記バルブディスクに積層され、前記ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、前記リーフバルブの内周側と対向する前記バルブディスクの内周ボス部にポケットを設け、前記ポケットは、前記内周ボス部に開口する入口通路と、前記入口通路に通じる中空であって環状の貯留部とを有し、前記貯留部は、前記入口通路における前記貯留部への接続部分の開口部と平行な面で切断した断面積のうち、前記接続部分の開口部の開口面積より大きな部位を有することを特徴とする。この構成によると、ポケットのコンタミナントの収容量が増加する上、貯留部が広がった分、貯留部の上記断面積が大きくなるため、貯留部に収容されたコンタミナントがリーフバルブの開弁時にポケットからより排出されにくくなる。
【0015】
さらに、他の手段は、周方向に複数のポートを有する環状のバルブディスクと、前記バルブディスクに積層され、前記ポートを開閉する環状のリーフバルブとを備え、前記リーフバルブの内周側と対向する前記バルブディスクの内周ボス部にポケットを設け、前記ポケットは、前記内周ボス部に開口する入口通路と、前記入口通路に通じる中空な貯留部とを有し、前記バルブディスクは、前記入口通路が形成された上部ピースと前記貯留部が形成された下部ピースとを有し、前記貯留部は、前記入口通路における前記貯留部への接続部分の開口部と平行な面で切断した断面積のうち、前記接続部分の開口部の開口面積より大きな部位を有することを特徴とする。この構成によると、貯留部を形成する加工が非常に容易となる。また、前記上部ピースと前記下部ピースは、それぞれ軸を挿入可能な孔を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルブによれば、異音、減衰特性の悪化などの不具合を防止するとともに、一度貯留部に収容されたコンタミナントがポケットから排出されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係るバルブを備える緩衝器の一部を示す縦断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るバルブのバルブディスクを図1中上側から見た状態を示す平面図である。
図3図1の一部を拡大して示す図である。
図4図3のポケットの貯留部がバルブディスクの外周側に広がった変形例を示す図である。
図5図3のポケットの貯留部がバルブディスクの内周側と外周側の両方に広がった変形例を示す図である。
図6】第二実施形態に係るバルブのバルブディスクの一部を拡大して示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0019】
<第一実施形態>
第一実施の形態に係るバルブVは、図1に示すように、緩衝器1のピストン部に具現化されている。緩衝器1は、筒状のシリンダ2と、シリンダ2内を軸方向に出入り自在に移動するロッド3と、シリンダ2の反ロッド側に摺動自在に挿入されるフリーピストン(図示せず)と、環状に形成されてロッド3の外周に摺接し、シリンダ2の一端開口を塞ぐヘッドキャップ(図示せず)と、シリンダ2の他端開口を塞ぐボトムキャップ(図示せず)とを備え、ロッド3の先端にバルブVが装着されている。そして、シリンダ2が車両の車軸あるいは車体に連結されるとともに、ロッド3がシリンダ2の連結された方と反対の車軸あるいは車体に連結されるので、路面凹凸による衝撃が車輪に入力されると、ロッド3がシリンダ2内を出入りして緩衝器1を伸縮作動する。
【0020】
また、シリンダ2の内部は、フリーピストンで液室と気室(図示せず)に区画されており、当該液室は、ロッド3の先端に設けられたバルブVで図中上側のロッド側室R1と図中下側のピストン側室R2に区画されている。ロッド側室R1とピストン側室R2には作動油等の液体が封入されるとともに、気室には気体が封入されている。そして、当該気室は、フリーピストンの摺動により拡大したり縮小したりして、緩衝器1の伸縮時に出入りするロッド3の出没体積分のシリンダ2内の体積変化を補償する。
【0021】
次に、本実施の形態に係るバルブVの構造について詳細に説明する。バルブVは、ピストンとしての環状のバルブディスク4と、バルブディスク4の軸方向の両側にそれぞれ積層された環状のリーフバルブ8,9を備えて構成される。
【0022】
バルブディスク4は、軸方向から見て中心に形成された取付孔4aと、取付孔4aの周りに周方向に形成された複数のポートである伸側ポート6と圧側ポート7を有する。本例では、図2に示すように、バルブディスク4には、バルブディスク4の内周側に開口された伸側ポート6と外周側に開口された圧側ポート7が4つずつ周方向に設けられて、交互に配置されており、ロッド側室R1とピストン側室R2を連通している。なお、各ポートの数は任意に決められてよい。
【0023】
また、バルブディスク4の図1中下端であるピストン側室R2側には環状窓4gが設けられており、各伸側ポート6の出口端が環状窓4gに連通している。さらに、バルブディスク4のピストン側室R2側には、取付孔4aを囲い環状窓4gの内周に沿う環状の内周ボス部4bと、環状窓4gの外周に沿い環状窓4gを囲う環状の外周シート部4cが形成される。
【0024】
他方、バルブディスク4の図1中上端であるロッド側室R1側には、バルブディスク4の外周側で広がるように扇状に形成された窓4hが周方向に独立して複数設けられており、それぞれ各圧側ポート7の出口端が窓4hに連通している。
【0025】
また、バルブディスク4のロッド側室R1側には、取付孔4aを囲う環状の内周ボス部4dと、この内周ボス部4dに連なるとともに窓4hを囲う外周シート部4eが形成される。この外周シート部4eは、窓4h(圧側ポート7)の数に合わせて四つ等間隔で周方向に並べられ、全体として花弁状になっている。
【0026】
また、バルブディスク4の外周には、合成樹脂製のピストンリング20が装着されており、バルブVは、このピストンリング20を介してシリンダ2の内周に摺接し、シリンダ2内を円滑に移動できる。
【0027】
ロッド側室R1側に積層された圧側リーフバルブ9とバルブディスク4のピストン側室R2側に積層された伸側リーフバルブ8は、ともに薄い環状板を複数枚積層して構成されている。また、圧側リーフバルブ9の図1中上側には環状であって、圧側リーフバルブ9の内周側にのみ当接する径の間座11と環状のバルブストッパ12が順に積層されている。他方の伸側リーフバルブ8の図1中下側には環状であって、伸側リーフバルブ8の内周側にのみ当接する径の間座10が積層されている。そして、バルブディスク4は、伸側リーフバルブ8、圧側リーフバルブ9、間座10,11及びバルブストッパ12とともに、ロッド3の先端部に設けられた取付部3aの外周に装着され、ナット13で固定されている。
【0028】
より詳しくは、ロッド3の先端部には、他の部分よりも外径が小さい取付部3aが設けられており、当該取付部3aと他の部分との境界に環状の段差3bが形成されている。また、取付部3aの先端には、螺子溝が形成されており、ナット13を螺合できる。バルブディスク4、伸側リーフバルブ8、圧側リーフバルブ9、間座10,11及びバルブストッパ12は、全て環状であるため中心部に取付孔が設けられている。このため、ロッド3の取付部3aをバルブストッパ12、間座11、圧側リーフバルブ9、バルブディスク4、伸側リーフバルブ8、間座10の各取付孔に前述の順に挿通し、間座10から突出させた取付部3aの先端にナット13を螺合すると、当該ナット13と段差3bとの間に前述のバルブディスク4等を挟んで固定できる。
【0029】
これにより、バルブディスク4のピストン側室R2側に積層される伸側リーフバルブ8は、間座10を介して内周側だけが内周ボス部4bに締め付けられて固定されるため、外周側のみ撓みが許容されており、外周側は外周シート部4cに離着座可能に着座している。
【0030】
また、伸側リーフバルブ8は、バルブディスク4のピストン側室R2側に積層されて、各伸側ポート6の出口と連通する環状窓4gに蓋をするので、伸側ポート6の連通が遮断される。これに対し、圧側ポート7の入口は、外周シート部4cよりも外側に設けられているため、ピストン側室R2とは常に連通した状態となっている。
【0031】
他方、バルブディスク4のロッド側室R1側に積層される圧側リーフバルブ9は、間座11を介して内周側だけが内周ボス部4dに締め付けられて固定されるため、外周側のみ撓みが許容されており、外周側は外周シート部4eに離着座可能に着座している。
【0032】
また、圧側リーフバルブ9は、バルブディスク4のロッド側室R1側に積層されて、各圧側ポート7の出口と連通する全ての窓4hに蓋をするので、圧側ポート7の連通が遮断される。これに対し、伸側ポート6の入口は、それぞれ内周ボス部4dの外側であって、隣り合う外周シート部4e,4eの間に設けられるので常に連通された状態となっている。
【0033】
さらに、図1図2に示すように、隣り合う外周シート部4e,4e間には、それぞれ突起4fが設けられており、当該突起4fで圧側リーフバルブ9を支え、当該圧側リーフバルブ9がロッド側室R1の圧力(背圧)でバルブディスク4側に撓むのを防ぐ。これにより、圧側リーフバルブ9がロッド側室R1側からの圧力によって割れるのを防止する。なお、突起4fはロッド側室R1と伸側ポート6との連通を妨げないように配慮されている。
【0034】
また、図1図2に示すように、各圧側ポート7の内周側の内周ボス部4dには、バルブディスク4と内周ボス部4d間にコンタミナントが挟まらないように、コンタミナントを回収するポケット5がそれぞれ設けられている。
【0035】
図3に拡大して示すように、本実施の形態に係る各ポケット5は、内周ボス部4dから開口される入口通路5aとこの入口通路5aと連通する中空の貯留部5bとを備えて構成される。
【0036】
入口通路5aは、入口通路5aの入口部の圧側ポート7側(外周側)にすり鉢状に形成されたテーパ部5cを有し、入口が大きくなっている。これにより、入口通路5aを介して貯留部5bにコンタミナントが入りやすくしている。
【0037】
また、本例では、貯留部5bは、内周ボス部4dの外周側である圧側リーフバルブ9の開口側から内周側に遠ざかるように広がっており、入口通路5aにおける貯留部5bへの接続部分5dの開口部と平行な面で切断した断面積Aが、接続部分5dの開口部の開口面積Bよりも大きく形成されている。
【0038】
ここで、接続部分5dの開口部は、入口通路5aの貯留部5bと接続する端部を縁として形成された部分である。
【0039】
図3に示す貯留部5bは、バルブディスク4の内周側に縦断面形状が四角形であってロッド3の周方向に沿って掘られた空部によって形成されている。
【0040】
また、図3に示す貯留部5bは、バルブディスク4の内周側に広がっているが、貯留部5bの広がる方向は、内周ボス部4dの圧側リーフバルブ9の開口側から遠ざかる方向であればよい。そのため、貯留部5bの広がる方向は、例えば、図4に示すように、バルブディスク4の外周側に広がるようにされてもよいし、あるいは図5に示すように、入口通路5aとの接続部分5dを挟んで内周側と外周側の両側に広がるようにされてもよい。また、貯留部5bの縦断面形状も四角形に限定されない。
【0041】
なお、貯留部5bをバルブディスク4の外周側に広げて形成する場合には、圧側ポート7と連通しないようにしなければならないのは勿論である。
【0042】
また、本実施の形態において、貯留部5bは、各ポケット5毎に設けられているが、貯留部5bを環状の空部にして、各ポケット5の貯留部5bを連通させてもよい。
【0043】
なお、貯留部5bは、入口通路5aにおける貯留部5bへの接続部分5dの開口部と平行な面で切断した断面積Aのうち、接続部分5dの開口部の開口面積Bよりも大きな部位を一部でも有して形成されていればよく、貯留部5bの形状は特に本実施例に限定されるものではない。
【0044】
また、本実施の形態に係るバルブディスク4は、入口通路5aが形成された上部ピースP1と貯留部5bが形成された下部ピースP2に分割して形成される。これにより、貯留部5bを形成する加工が非常に容易となる利点がある。
【0045】
次に、本実施の形態に係るバルブVを備える緩衝器1の作動及び効果について説明する。ロッド3がシリンダ2から退出する緩衝器1の伸長作動時には、バルブVがシリンダ2内を図1中上方へ移動してロッド側室R1を圧縮する。すると、ロッド側室R1内の圧力が上昇して当該圧力が、伸側ポート6を介して伸側リーフバルブ8を撓ませる方向に作用する。そして、伸側リーフバルブ8が図1中下方へ撓むと、伸側リーフバルブ8の外周部と外周シート部4cとの間に隙間ができるので、ロッド側室R1の液体が伸側ポート6を通ってピストン側室R2へ流れる。つまり、伸側リーフバルブ8が、ロッド側室R1内の圧力を受けて開弁する際、伸側ポート6を通過する液体の流れに対して伸側リーフバルブ8で抵抗を与えるので、緩衝器1は、伸長作動を抑制する伸側減衰力を発揮する。
【0046】
なお、圧側リーフバルブ9については、ロッド側室R1の圧力が高まると、当該圧力は圧側リーフバルブ9を外周シート部4eへ押し付ける方向に作用するので、圧側リーフバルブ9は圧側ポート7を閉じた状態に維持される。
【0047】
反対に、ロッド3がシリンダ2内へ侵入する緩衝器1の収縮作動時には、バルブVがシリンダ2内を図1中下方へ移動してピストン側室R2を圧縮する。すると、ピストン側室R2内の圧力が上昇して当該圧力が、圧側ポート7を介して圧側リーフバルブ9を撓ませる方向に作用する。そして、圧側リーフバルブ9が図1中上方へ撓むと、圧側リーフバルブ9の外周部と外周シート部4eとの間に隙間ができるので、ピストン側室R2の液体が圧側ポート7を通ってロッド側室R1へ流れる。つまり、圧側リーフバルブ9が、ピストン側室R2内の圧力を受けて開弁する際、圧側ポート7を通過する液体の流れに対して圧側リーフバルブ9で抵抗を与えるので、緩衝器1は、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発揮する。
【0048】
なお、伸側リーフバルブ8については、ピストン側室R2の圧力が高まると、当該圧力は伸側リーフバルブ8を外周シート部4cへ押し付ける方向に作用するので、伸側リーフバルブ8は伸側ポート6を閉じた状態に維持される。
【0049】
また、通常のバルブでは、コンタミナントがバルブディスクとリーフバルブとの間に挟まると、リーフバルブの外周側が常にバルブディスクから浮いて隙間ができてしまうため、当該隙間から流れる液体によってリーフバルブの外周部が振動して異音の原因となってしまう。
【0050】
しかしながら、本実施の形態に係るバルブVでは、圧側リーフバルブ9が撓む際に、内周ボス部4dの窓4h側端部と圧側リーフバルブ9との間にできた隙間にコンタミナントが入り込みそうになったとしても、内周ボス部4dに開口されたポケット5に回収される。
【0051】
さらに、本実施例ではポケット5の貯留部5bは、入口通路5aにおける貯留部5bへの接続部分5dの開口部と平行な面で切断した断面積Aが接続部分5dの開口部の開口面積Bより大きく形成されている。これにより、貯留部5bは接続部分5dから広がるようになっているため、コンタミナントが貯留部5bに入りやすく、貯留部5bから排出されにくくなっている。
【0052】
したがって、本実施の形態によると、バルブディスク4と圧側リーフバルブ9との間にコンタミナントが挟み込まれた状態にならないので、コンタミナントによって圧側リーフバルブ9の閉じ切りが阻害されず、圧側リーフバルブ9の外周部が外周シート部4eから浮き上がった状態にならない。
【0053】
よって、外周シート部4eから浮き上がった圧側リーフバルブ9の外周部との隙間を通ってピストン側室R2へ流れる液体により、圧側リーフバルブ9の外周部が振動して異音が発生することがない。さらに、圧側リーフバルブ9に漏れが生じないので、緩衝器1が所望の減衰力を発揮できる。
【0054】
本発明のバルブVは、バルブディスク4と、バルブディスク4の内周ボス部4dに内周を支持される圧側リーフバルブ9とを備え、内周ボス部4dにポケット5を設け、ポケット5は、内周ボス部4dに開口する入口通路5aと、入口通路5aに通じる中空な貯留部5bとを有し、貯留部5bが入口通路5aにおける貯留部5bへの接続部分5dの開口部と平行な面で切断した断面積Aのうち、接続部分5dの開口部の開口面積Bより大きな部位を有している。
【0055】
この構成によると、緩衝器1の収縮作動時に圧側ポート7を通過する液体中に浮遊しているコンタミナントが内周ボス部4dに設けられたポケット5によって回収される上、ポケット5の貯留部5bの断面積Aが接続部分5dの開口部の開口面積Bより大きくなっているため、ポケット5はコンタミナントが入りやすいが出にくい構造となっている。
【0056】
また、従来のバルブでは入口通路と貯留部の断面積が等しいストレートなポケットが設けられているため、貯留部にコンタミナントが堆積していくと徐々にコンタミナントが入口通路の入口部に近づいてしまうため、一度貯留部に収容されたコンタミナントがポケットから排出されてしまう可能性が高まる。これに対して、本実施の形態においては、貯留部5bの体積が大きくなっている分、貯留部5bのコンタミナントの収容量が増加している。そのため、同じ量のコンタミナントが堆積した場合、ストレートなポケットに比べて、コンタミナントが入口通路5aの入口部に近づきにくいので、貯留部5bに収容されたコンタミナントがポケット5から排出されにくくなっている。
【0057】
また、図示しないが、本実施の形態に係る貯留部5bは、バルブディスク4の各圧側ポート7毎に設けられたポケット5の貯留部5bを全て連通させて、バルブディスク4の取付孔4aを周方向に囲むような環状に形成されてもよい。
【0058】
この構成によると、各貯留部5b,5b間の分だけ貯留部5bの体積を大きくできるため、コンタミナントの収容量が増加する。また、貯留部5b,5b間の分だけ貯留部5bが広がるので、貯留部5bの断面積Aを大きくでき、貯留部5bに収容されたコンタミナントがポケット5から排出されにくくなっている。さらに、各入口通路5a毎に独立した貯留部5bを個別に形成する必要がなくなる。
【0059】
なお、本実施の形態においては、ポケット5は各圧側ポート7毎に設けられているが、全ての圧側ポート7の内周ボス部4dに設けなくともよい。その場合であっても、貯留部5bを環状に形成すれば、貯留部5bの収容量を増加させるとともに、貯留部5bの断面積Aを大きくでき、ポケット5からコンタミナントが排出されにくくなる。
【0060】
また、図示しないが、貯留部5bの底面にコンタミナントを吸着する吸着体を設けるようにしてもよい。ここでいう吸着体は、薄いスポンジなどのコンタミナントが絡まるような構造のものであったり、コンタミナントが金属製である場合には磁石であってもよい。この構成によると、貯留部5bに収容されたコンタミナントが当該吸着体に吸着されるため、よりポケット5からコンタミナントが排出されなくなる。
【0061】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態のバルブV2について説明する。ここでは上述した第一実施形態に係るバルブVとの異なる点を中心に説明し、同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施の形態に係るバルブV2は、バルブディスク4の内周ボス部4dにポケット50を設けてなる。ポケット50は、内周ボス部4dからバルブディスク4の内周に向けて斜めに開孔する入口通路50aと、入口通路50aに通じる貯留部50bを備えて構成される。
【0063】
図6に示すように、バルブディスク4の内周部には、取付孔4aに連通する中空の凹部50cが設けられている。そして、バルブV2がロッド3に組み付けられると、ロッド3の外周によって凹部50cの取付孔4a側が閉じられて、貯留部50bが区画されて形成される。
【0064】
つまり、本実施の形態に係る貯留部50bは、バルブディスク4の内周部に設けられるとともに取付孔4aに連通する凹部50cと、取付孔4aに挿入されたロッド3とで形成される。
【0065】
また、本実施の形態に係る凹部50cは、縦断面形状が直角三角形状の環状の空部であって、直角を形成する二辺のうち縦辺50d側が取付孔4aに連通しており、斜辺50e側に入口通路50aが連通している。
【0066】
そして、本例では、貯留部50bは、入口通路50aにおける貯留部50bへの接続部分50fの開口部と平行な面で切断した断面積Aが、接続部分50fの開口部の開口面積Bより大きく形成されている。また、入口通路50aは、貯留部50bの図6中上側に開口されているため、コンタミナントが堆積する貯留部50bの底部からは遠ざけられている。
【0067】
なお、本実施の形態においては、貯留部50bは、環状な空部となっているが、貯留部50bを各ポケット50毎に独立して設けるようにしてもよい。
【0068】
バルブV2の上記した以外の構成は、第一実施形態に係るバルブVと共通しているため、第二実施形態に係る発明についても第一実施形態に係る発明と同様の効果を奏する。
【0069】
また、本実施の形態に係るバルブV2においては、貯留部50bを構成する凹部50cが取付孔4aに連通している。そのため、バルブディスク4の内周側から凹部50cを加工できるため、貯留部50bを容易に形成できる。
【0070】
したがって、本実施の形態に係るポケット50であれば、バルブディスク4を二つのピースに分けて形成せずとも、バルブディスク4の内周側から加工された凹部50cにバルブディスク4の内周ボス部4dから開孔された入口通路50aを連通させれば、バルブV2をロッド3に組み付けた際に、ポケット50を形成できるため、貯留部50bが取付孔4aに連通していない場合と比べて、生産効率が飛躍的に向上する。
【0071】
また、本実施の形態に係る入口通路50aはバルブディスク4の内周に向けて斜めに形成されている。すると、入口通路50aが取付孔4aに対して平行な鉛直方向に真っ直ぐ設けられている場合に比べて、貯留部50bを内周ボス部4dの圧側リーフバルブ9の開口側から遠ざけられるため、コンタミナントがポケット50に入りやすいが出にくい構造になっている。
【0072】
なお、第一実施形態および第二実施形態では、バルブV,V2が緩衝器1のピストン部に実現されているが、バルブV,V2が設けられる位置はピストン部には限定されず、たとえば緩衝器のベースバルブなどのピストン部以外のバルブに利用されてもよい。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0074】
2・・・シリンダ、3・・・ロッド(軸)、4・・・バルブディスク、4a・・・取付孔、4b・・・内周ボス部、5,50・・・ポケット、5a,50a・・・入口通路、5b,50b・・・貯留部、50c・・・凹部、5d,50f・・・接続部分、8・・・伸側リーフバルブ、9・・・圧側リーフバルブ、A・・・断面積、B・・・開口面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6