(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水処理材は、芯部と、芯部の少なくとも一部を被覆し且つ芯部と色が異なる外層とを有する。
ここで、本明細書において「水処理材」とは、表面に担持した微生物による代謝反応、及び材料と水の接触によって水を浄化処理する材料のことを意味し、「濾過材」、「微生物担体」とも称される。水処理材は、一般に、水処理装置(濾過装置)に充填して使用される。
【0016】
図1及び2は、本発明の水処理材を示す図である。
図1は、円柱状の水処理材の斜視図であり、
図2は、球状の水処理材の断面図である。なお、
図1及び2は、本発明の水処理材の例を示したに過ぎず、本発明の水処理材が、
図1及び2に示される構造に限定されるわけではない。本発明の水処理材は、円柱状及び球状以外にも、直方体状、パイプ状、リング状、マット状、文字状などの各種形状とすることができる。
【0017】
図1において、本発明の水処理材1は、円柱状の芯部2と、円柱状の芯部2の曲面上に形成された外層3とを有する。
図1においては、円柱状の芯部2の平面上に外層3が形成されていないけれども、円柱状の芯部2の平面上に外層3が形成されていてもよい。
また、
図2において、本発明の水処理材1は、球状の芯部2と、球状の芯部2の表面全体に形成された外層3とを有する。
【0018】
芯部2としては、特に限定されず、水処理材1に一般に用いられる材料から形成することができる。
芯部2は外層3によって被覆されているため、水処理材1の衝突又は擦れなどによって芯部2に割れ又は欠けが発生することは少ない。そのため、芯部2は外層3に比べて強度及び経年劣化耐性が小さくてもよい。一方、
図1のように、外層3によって被覆されていない芯部2が存在したり、長期間の使用によって芯部2が露出したりすることがある。そのため、芯部2は、長期に渡ってアンモニアの処理能力及びpH緩衝作用を有することが好ましい。これらの特性を有する材料としては、特許文献1に記載された材料などが挙げられる。したがって、芯部2は、ワラストナイト及びアノーサイトを含有することが好ましい。
【0019】
ワラストナイトは、水中に浸漬した際に、ワラストナイトに含有されるカルシウム化合物が適度に水に溶解し、水のpH緩衝作用をもたらす成分である。ワラストナイトは、化学式がCaO・SiO
2で表されるケイ酸塩鉱物である。また、ワラストナイトは、Fe
2O
3、MgOなどの微量成分を含有していてもよい。
【0020】
アノーサイトは、強度を確保するための成分である。アノーサイトは、化学式がCaO・Al
2O
3・2SiO
2で表されるケイ酸塩鉱物である。また、アノーサイトは、Fe
2O
3、MgOなどの微量成分を含有していてもよい。
【0021】
ワラストナイト及びアノーサイトは、芯部2の主成分であることが好ましい。ここで、本明細書において「主成分」とは、全成分中の含有量が50質量%よりも多いことを意味する。芯部2におけるワラストナイト及びアノーサイトの合計含有量は、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。
【0022】
芯部2は、ワラストナイト及びアノーサイトの他に、当該技術分野において公知の各種成分を含有することができる。このような成分の例としては、芯部2の嵩密度を調整する(すなわち、芯部2を軽量化する)ための材料(軽量化材)、芯部2を着色するための材料(セラミック顔料などの無機顔料)などが挙げられる。軽量化材としては、多孔質材料、軽量骨材などを用いることができる。芯部2における軽量化材の含有量は、特に限定されず、使用する軽量化材の種類に応じて適宜調整すればよい。
芯部2の色は、外層3と異なっていれば特に限定されない。芯部2は、外層3を芯部2と異なる色にすれば、着色しなくてもよい。また、芯部2は、無機顔料などを用いて外層3と異なる色に着色してもよい。
【0023】
芯部2は多孔質であり、空隙を有する。空隙の孔径は、特に限定されないが、一般に0.1μm〜1000μm、好ましくは1μm〜800μm、より好ましくは2μm〜500μmである。
芯部2の内径は、作製する水処理材1の大きさに応じて適宜設定すればよいが、一般に1mm〜100mm、好ましくは2mm〜50mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
【0024】
外層3は、芯部2と異なり、水処理材1の衝突又は擦れなどにさらされるため、外層3の割れ又は欠けを防止する観点から、外層3には強度及び経年劣化耐性が要求される。さらに、外層3には、長期に渡ってアンモニアの処理能力及びpH緩衝作用を有することも求められる。
これらの特性を確保するために、外層3は、ワラストナイトと、アノーサイトと、ジルコニウム含有酸化物、スピネル型酸化物又はそれらの混合物から選択される酸化物とを含有する。これらの成分の中で、ワラストナイト及びアノーサイトは、外層3の主成分であることが好ましい。外層3におけるワラストナイト及びアノーサイトの合計含有量は、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。
【0025】
ジルコニウム含有酸化物、スピネル型酸化物又はそれらの混合物から選択される酸化物は、外層3の強度及び経年劣化耐性を向上させる成分である。ここで、本発明において「経年劣化耐性」とは、水処理材1の長期使用時の水流や目詰まり防止のために行う洗浄作業などによっても、欠けや割れが起こり難く、強度の低下が発現し難い性質のことを意味する。
ジルコニウム含有酸化物としては、ジルコニウムを含有する酸化物であれば特に限定されない。ジルコニウム含有酸化物の例としては、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、ジルコン(ZrO
2・SiO
2)、ジルコン固溶体((Zr,X)O
2・SiO
2、式中、XはFe、Ti、Pr、V、Hfなどの金属元素の少なくとも1種である)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ジルコニウム含有酸化物の中には、外層3を着色するセラミック顔料としての機能を有するものがある。例えば、酸化ジルコニウムは、外層3を白色に着色することができる。また、(Zr,Hf,Pr)O
2・SiO
2は、外層3を黄色に着色することができる。
【0026】
スピネル型酸化物としては、スピネル型の結晶構造を有する酸化物であれば特に限定されない。スピネル型酸化物の例としては、MgO・Al
2O
3、ZnO・Al
2O
3、CoO・Al
2O
3、(Co,Zn)O・Al
2O
3、ZnO・Fe
2O
3などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、スピネル型酸化物の中には、外層3を着色するセラミック顔料としての機能を有するものがある。例えば、(Co,Zn)O・Al
2O
3は、外層3を青色に着色することができる。
【0027】
外層3におけるジルコニウム含有酸化物、スピネル型酸化物又はそれらの混合物から選択される酸化物の含有量は、1質量%〜10質量%である。このような含有量とすることにより、外層3の強度及び経年劣化耐性を向上させることができる。当該酸化物の含有量が1質量%未満であると、外層3の強度及び経年劣化耐性が十分に向上しない。一方、当該酸化物の含有量が10質量%を超えると、外層3のpH緩衝作用が低下してしまう。また、当該酸化物の含有量は、好ましくは2質量%〜9質量%、より好ましくは3質量%〜8質量%、最も好ましくは4質量%〜7質量%である。
【0028】
外層3は、芯部2と同様に、上記の成分以外に、当該技術分野において公知の各種成分を含有することができる。このような成分の例としては、外層3の嵩密度を調整する(すなわち、外層3を軽量化する)ための材料(軽量化材)、外層3を着色するための材料(セラミック顔料などの無機顔料)などが挙げられる。軽量化材としては、多孔質材料、軽量骨材などを用いることができる。外層3における軽量化材の含有量は、特に限定されず、使用する軽量化材の種類に応じて適宜調整すればよい。
外層3の色は、芯部2と異なっていれば特に限定されない。外層3は、芯部2を外層3と異なる色にすれば、着色しなくてもよい。また、外層3は、外層3に着色を与える成分を用いるか又は無機顔料を加えることによって芯部2と異なる色に着色してもよい。
【0029】
上記のような成分を含有する外層3は、多孔質であり、空隙を有する。空隙の孔径は、特に限定されないが、一般に0.1μm〜1000μm、好ましくは1μm〜800μm、より好ましくは2μm〜500μmである。
芯部2の内径に対する外層3の厚さの比は、0.1以上、好ましくは0.12〜2.0である。当該比が0.1未満であると、外層3の割合が低くなるため、長期間使用すると強度が低下し易くなる(すなわち、経年劣化耐性が低下する)。
【0030】
外層3の厚さは、作製する水処理材1の大きさに応じて適宜設定すればよいが、一般に0.5mm〜500mm、好ましくは1mm〜40mm、さらに好ましくは2mm〜30mmである。
【0031】
本発明の水処理材1は、外層3を与える組成物によって芯部2の少なくとも一部を被覆した後、900℃〜1200℃の温度で焼成することによって製造することができる。
芯部2は、当該技術分野において公知の方法によって製造することができる。例えば、ワラストナイト及びアノーサイトを含有する芯部2を用いる場合、ケイ酸カルシウム化合物と、アルミニウム含有粘土鉱物とを混練して混練物を得た後、混練物を成形し、得られた成形物を所定の温度で焼成すればよい。
【0032】
ケイ酸カルシウム化合物としては、ワラストナイトの他、焼成後にワラストナイトを生成する材料を用いることができる。焼成後にワラストナイトを生成する材料としては、トバモライト、ゾノトライトなどのケイ酸カルシウム水和物が挙げられる。また、トバモライト及び/又はゾノトライトを主成分とする建材(軽量気泡コンクリート、ケイ酸カルシウム板、保温材など)の端材を原料として用いることも可能である。
【0033】
アルミニウム含有粘土鉱物としては、アノーサイトの他、焼成後にアノーサイトを生成する材料を用いることができる。焼成後にアノーサイトを生成する材料の例としては、カオリナイト、モンモリロナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、イモゴライト、アロフェンなどのケイ酸塩水和物が挙げられる。また、ケイ酸塩水和物を含有する蛙目粘土、木節粘土、信楽土などの陶土を原料として用いることも可能である。
【0034】
上記の成分を含む混練物には、軽量化材、無機顔料などの公知の各種成分を配合してもよい。軽量化材としては、上記の例示した材料の他に、焼成時に消失して空隙を形成する有機材料(空隙形成材)を用いることができる。また、混練物には、混練性及び成形性を確保する観点から、水などを配合してもよい。
混練物における各成分の配合量は、芯部2に含有される各成分が上記の含有量となるように調整される。
混練方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の混練機などを用いて行えばよい。
【0035】
混練物の成形方法としては、特に限定されず、作製する芯部2の形状に応じて適切な方法を選択すればよい。例えば、
図2に示すような球状の水処理材1を製造する場合、造粒機などを用いて混練物を球状に成形すればよい。また、混練物を円柱状、直方体状、パイプ状、リング状、マット状、文字状などの成形物に成形する場合、押出成形機や型を用いたプレス成形などを用いて成形を行えばよい。例えば、
図1に示すような円柱状の水処理材1を製造する場合、円柱状に混錬物を押出成形した後、所定の長さに切断すればよい。なお、切断は、この段階で行ってもよいが、外層3を形成した後に行ってもよい。
成形物は、直ぐに焼成してもよいが、焼成前に必要に応じて乾燥を行ってもよい。
【0036】
成形物の焼成は、900℃〜1200℃の温度で行われる。焼成温度が900℃未満であると、芯部2の強度が低下し、形状が崩れて細粒分が発生し易い。一方、焼成温度が1200℃を超えると、焼成後にワラストナイト、アノーサイトを生成する材料を原料として用いた場合に、ワラストナイト、アノーサイトが十分に生成しないため、水処理材1のpH緩衝作用が低下してしまう。なお、外層3を形成する際に同程度の温度範囲での焼成が行われるため、この段階では焼成を省略することも可能である。
【0037】
焼成方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の焼成装置を用いて行うことができる。焼成装置としては、バッチ炉、トンネル窯、ロータリーキルンなどを用いることができる。
【0038】
外層3を与える組成物は、ケイ酸カルシウム化合物と、アルミニウム含有粘土鉱物と、ジルコニウム含有酸化物、スピネル型酸化物又はそれらの混合物から選択される酸化物とを含有し、且つ固形分中の前記酸化物の含有量が1質量%〜10質量%である。
ケイ酸カルシウム化合物及びアルミニウム含有粘土鉱物は、芯部2において説明したものを用いることができる。
ジルコニウム含有酸化物及びスピネル型酸化物としては、特に限定されないが、上記で例示したものを用いることができる。
【0039】
上記の成分を含む組成物には、軽量化材、無機顔料などの公知の各種成分を配合してもよい。軽量化材としては、上記の例示した材料の他に、焼成時に消失して空隙を形成する有機材料(空隙形成材)を用いることができる。また、組成物には、芯部2に対する被覆性を確保する観点から、水などを配合してもよい。
【0040】
組成物における各成分の配合量は、外層3に含有される各成分が上記の含有量となるように調整される。特に、外層3においてジルコニウム含有酸化物、スピネル型酸化物又はそれらの混合物から選択される酸化物の含有量を1質量%〜10質量%とするために、組成物の固形分における当該酸化物の含有量が1質量%〜10質量%に調整される。ここで、本明細書において「組成物の固形分」とは、水以外の成分のことを意味する。
組成物の調製方法としては、特に限定されず、各成分を配合した後、当該技術分野において公知の混合機などを用いて混合すればよい。
【0041】
上記の組成物で芯部2の少なくとも一部を被覆する方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
例えば、
図1の円柱状の水処理材1を製造する場合、組成物をシート状に成形した後、円柱状の芯部2に巻き付ければよい。また、
図2の球状の水処理材1を製造する場合、組成物と共に球状の芯部2を原料として用い、造粒機によって球状に成形すればよい。その他の形状の水処理材1を製造する場合、上記の各方法の他、型を用いたプレス成形などを用いることにより、外層3で芯部2の少なくとも一部を被覆することができる。
【0042】
上記の組成物で芯部2の少なくとも一部を被覆する際、芯部2の内径に対する外層3の厚さの比が0.1以上、好ましくは0.12〜2.0となるように調整する必要がある。当該比が0.1未満であると、外層3の割合が低くなるため、長期間使用すると強度が低下し易くなる(すなわち、経年劣化耐性が低下する)。
外層3で芯部2の少なくとも一部を被覆した後、直ぐに焼成してもよいが、焼成前に必要に応じて乾燥を行ってもよい。
【0043】
焼成は、900℃〜1200℃の温度で行われる。このような温度範囲で焼成を行うことにより、外層3の強度及び経年劣化耐性を高めつつ、外層3のアンモニア処理能力及びpH緩衝作用を維持した水処理材1を得ることが可能になる。焼成温度が900℃未満であると、水処理材1の強度が低下し、形状が崩れて細粒分が発生し易い。一方、焼成温度が1200℃を超えると、焼成後にワラストナイト、アノーサイトを生成する材料を原料として用いた場合に、ワラストナイト、アノーサイトが十分に生成しないため、水処理材1のpH緩衝作用が低下してしまう。
【0044】
焼成方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の焼成装置を用いて行うことができる。焼成装置としては、バッチ炉、トンネル窯、ロータリーキルンなどを用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例では、次の原料を用いた。
・トバモライト:ケイ酸カルシウム化合物(酸化カルシウムと珪石と水とを混合したスラリーを180℃、10000hPaの条件下で10時間水和反応を行った後、濾過して乾燥することにより製造した。)
・モンモリロナイト:アルミニウム含有粘土鉱物(カサネン工業株式会社から入手した。)
・ZrO
2:ジルコニウム含有酸化物(関東化学株式会社から入手した。)
・(Zr,Hf,Pr)O
2・SiO
2:ジルコニウム含有酸化物(株式会社竹昇工房から入手した。)
・(Co,Zn)O・Al
2O
3:スピネル型酸化物(株式会社竹昇工房から入手した。)
・パーライト:軽量化材(太平洋パーライト株式会社から入手した。)
【0046】
(実施例1−1)
45質量部のトバモライト、45質量部のモンモリロナイト、10質量部のパーライト及び20質量部の水を配合して混錬した後、得られた混錬物を直径が8mmの円柱状に押出成形して円柱状の芯部を得た。
次に、40.5質量部のトバモライト、40.5質量部のモンモリロナイト、10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3、9質量部のパーライト及び20質量部の水を配合して混合した後、得られた組成物を厚さ1mmのシート状に成形した。次に、得られたシートを円柱状の芯部に巻き付けた。次に、60℃で6時間乾燥した後、1050℃で1時間焼成することによって円柱状の芯部の曲面上に外層を形成し、長さ10mmに切断することにより、
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0047】
(実施例1−2)
混錬物を直径が6mmの円柱状に押出成形したこと、及び組成物を厚さ2mmのシート状に成形したこと以外は実施例1−1と同様にして
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0048】
(実施例1−3)
混錬物を直径が4mmの円柱状に押出成形したこと、及び組成物を厚さ3mmのシート状に成形したこと以外は実施例1−1と同様にして
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0049】
(実施例1−4)
10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3の代わりに10質量部の(Zr,Hf,Pr)O
2・SiO
2を用いたこと以外は実施例1−2と同様にして
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0050】
(実施例1−5)
10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3の代わりに10質量部のZrO
2を用いたこと以外は実施例1−2と同様にして
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0051】
(実施例1−6)
(Co,Zn)O・Al
2O
3の配合量を5質量部に変更すると共に5質量部のZrO
2をさらに配合したこと以外は実施例1−2と同様にして
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0052】
(比較例1−1)
混錬物を直径が10mmの円柱状に押出成形したこと、及び外層を形成しなかったこと以外は実施例1−1と同様にして円柱状の水処理材を得た。
【0053】
(比較例1−2)
混錬物を直径が9mmの円柱状に押出成形したこと、及び組成物を厚さ0.5mmのシート状に成形したこと以外は実施例1−1と同様にして
図1に示す円柱状の水処理材を得た。
【0054】
(参考例1)
40.5質量部のトバモライト、40.5質量部のモンモリロナイト、10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3、9質量部のパーライト及び20質量部の水を配合して混錬した後、得られた混錬物を直径が10mmの円柱状に押出成形した。次に、得られた成形物を60℃で6時間乾燥した後、1050℃で1時間焼成することによって円柱状の水処理材を得た。
【0055】
上記で作製した水処理材について、強度、pH緩衝作用、及び破砕率を評価した。
水処理材の強度は、アイコーエンジニアリング株式会社製のプッシュプルゲージ9500シリーズを使用し、円柱状の水処理材の直径方向の強度を測定した。また、各例において、10個の水処理材の強度を測定し、その平均値を評価結果とした。水処理材の強度は、長期間の使用を考慮すると、65N以上である必要がある。
水処理材のpH緩衝作用は、次の手順にしたがって評価した。まず、蓋を有する500mLポリビンに、硝酸濃度が0、100ppm、200ppm及び300ppmとなるように調整した硝酸水溶液を300mL入れた。そして、硝酸水溶液中に水処理材を4.5g入れて蓋をし、20℃にて振盪機で72時間振盪させた。振盪条件は、ポリビンを縦置き、振盪速度を100rpmとした。振盪終了後、水平な台の上でポリビンを30分間静置し、pHメータを用いてポリビン内の硝酸水溶液のpHを測定した。
【0056】
水処理材の破砕率は、英国規格のBS 812−Part 110 Methods for determination of aggregate crushing value(ACV)に準拠して測定した。破砕率は、長期間の使用を考慮すると、40%以下である必要がある。
上記の評価結果を表1に示す。なお、表1では、水処理材を添加していない硝酸水溶液のpHについても参考例2として示す。また、表1中の各成分における数値の単位は質量部である。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されているように、実施例1−1〜1−6の水処理材は、強度が高いと共に破砕率が小さく、pH緩衝作用も良好であった。
これに対して比較例1−1の水処理材は、外層を有していないため、強度が低く、破砕率も大きかった。また、比較例1−2の水処理材は、外層を有しているものの、芯部の内径に対する外層の厚さの比が小さすぎたため、強度が低く、破砕率も大きかった。
【0059】
(実施例2−1)
45質量部のトバモライト、45質量部のモンモリロナイト、10質量部のパーライト及び20質量部の水を配合して混錬した後、得られた混錬物を直径が8mmの球状となるように造粒機で造粒して直径が8mmの球状の芯部を得た。
次に、40.5質量部のトバモライト、40.5質量部のモンモリロナイト、10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3、9質量部のパーライト及び20質量部の水を配合して混合して組成物を得た後、この組成物と共に球状の芯部を用いて造粒機で造粒し、球状の芯部の表面に厚さ1mmの被覆物を形成した。次に、60℃で6時間乾燥した後、1050℃で1時間焼成することにより、球状の芯部の表面に厚さ1mmの外層を有する
図2に示す球状の水処理材を得た。
【0060】
(実施例2−2)
球状の芯部の直径を6mmに変更すると共に及び外層の厚さを2mmに変更したこと以外は実施例2−1と同様にして
図2に示す球状の水処理材を得た。
【0061】
(実施例2−3)
10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3の代わりに10質量部の(Zr,Hf,Pr)O
2・SiO
2を用いたこと以外は実施例2−2と同様にして
図2に示す球状の水処理材を得た。
【0062】
(実施例2−4)
10質量部の(Co,Zn)O・Al
2O
3の代わりに10質量部のZrO
2を用いたこと以外は実施例2−2と同様にして
図2に示す球状の水処理材を得た。
【0063】
(比較例2−1)
混錬物を直径が10mmの球状となるように造粒したこと、及び外層を形成しなかったこと以外は実施例2−1と同様にして球状の水処理材を得た。
【0064】
(比較例2−2)
球状の芯部の直径を9mmに変更すると共に及び外層の厚さを0.5mmに変更したこと以外は実施例2−1と同様にして
図2に示す球状の水処理材を得た。
【0065】
上記で作製した水処理材について、強度、pH緩衝作用、及び破砕率を上記と同様にして評価した。
上記の評価結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示されているように、実施例2−1〜2−4の水処理材は、強度が高いと共に破砕率が小さく、pH緩衝作用も良好であった。
これに対して比較例2−1の水処理材は、外層を有していないため、強度が低く、破砕率も大きかった。また、比較例2−2の水処理材は、外層を有しているものの、芯部の内径に対する外層の厚さの比が小さすぎたため、破砕率が大きかった。
【0068】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、強度が高く、且つ長期間使用しても強度が低下し難く(すなわち、経年劣化耐性に優れ)、長期に渡ってアンモニアの処理能力及びpH緩衝作用を維持することができ、しかも交換時期を容易に判断することが可能な水処理材及びその製造方法を提供することができる。