特許第6646509号(P6646509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646509
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20200203BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20200203BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20200203BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20200203BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20200203BHJP
【FI】
   B60W30/16
   B60W40/06
   B60R21/00 991
   F02D29/02 301D
   G01S17/93
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-74646(P2016-74646)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-185855(P2017-185855A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆久
【審査官】 菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−158924(JP,A)
【文献】 特開平02−040798(JP,A)
【文献】 特開2006−069343(JP,A)
【文献】 特開2004−301833(JP,A)
【文献】 特開2008−254690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
G08G 1/00 − 99/00
B60R 21/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と当該自車両の前方を走行する先行車両との車間距離が目標車間距離となるよう前記自車両を制御する車間制御部(25)を備える車両制御装置(20)であって、
前記先行車両の高さを取得する高さ取得部(21)と、
前記先行車両と前記自車両との車間への他車両の割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定する割り込み判定部(24)と、を有し、
前記車間制御部は、取得された前記先行車両の高さと、前記割り込み判定部の判定結果と、に基づいて前記目標車間距離を設定するものであり
前記車間制御部は、
前記割り込みの可能性が前記高い状態ではないと判定された場合、前記目標車間距離を、所定の最小距離以上の車間距離であって、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在している場合において前記自車両の運転手が前記先行車両の上方に前記信号機を視認できる車間距離である視認距離(Dview)に設定し、
前記割り込みの可能性が前記高い状態であると判定された場合において、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在していない場合、前記目標車間距離を、前記所定の最小距離よりも狭い車間距離である狭距離(Ds)に設定し、
前記割り込みの可能性が前記高い状態であると判定された場合において、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在している場合、前記目標車間距離を前記視認距離に設定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記割り込み判定部は、前記自車両が走行する道路の車線数に基づいて前記割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記割り込み判定部は、前記自車両が走行する車線の隣接車線において自車両周辺を走行する他車両の有無に基づいて前記割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定する、請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記割り込み判定部は、前記自車両の進行方向と同一方向での隣接車線の混み具合に基づいて、前記車間への前記他車両の割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記車間制御部は、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在している場合、前記目標車間距離を前記先行車両の高さに基づいて設定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記自車両が走行する道路において前記信号機の手前位置で当該信号機の存在を示す情報を取得する情報取得部(23)を有し、
前記車間制御部は、取得された前記情報に基づいて前記信号機の存在を判定する、請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記目標車間距離の変更操作を受け付ける受付部(35)を有し、
前記車間制御部は、前記受付部が前記変更操作を受け付けたことを条件に、前記目標車間距離の設定を前記先行車両の高さに基づく設定に維持する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
自車両と当該自車両の前方を走行する先行車両との車間距離が目標車間距離となるよう前記自車両を制御する車間制御工程を備える車両制御方法であって、
前記先行車両の高さを取得する高さ取得工程と、
前記先行車両と前記自車両との車間への他車両の割り込みの可能性が高いか否かを判定する割り込み判定工程と、を有し、
前記車間制御工程では、取得された前記先行車両の高さと、前記割り込み判定工程での判定結果と、に基づいて前記目標車間距離を設定
前記車間制御工程では、
前記割り込みの可能性が前記高い状態ではないと判定された場合、前記目標車間距離を、所定の最小距離以上の車間距離であって、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在している場合において前記自車両の運転手が前記先行車両の上方に前記信号機を視認できる車間距離である視認距離(Dview)に設定し、
前記割り込みの可能性が前記高い状態であると判定された場合において、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在していない場合、前記目標車間距離を、前記所定の最小距離よりも狭い車間距離である狭距離(Ds)に設定し、
前記割り込みの可能性が前記高い状態であると判定された場合において、前記自車両の進行方向前方に信号機が存在している場合、前記目標車間距離を前記視認距離に設定する、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両と先行車両との車間を制御する車両制御装置、及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両の前方を走行する先行車両の高さに応じて、自車両と先行車両との車間を制御する車両制御装置が開示されている。この車両制御装置は、先行車両の全高と自車両の運転者の視野角とに基づいて目標車間距離を設定する。そのため、自車両と先行車両との車間は、先行車両の背が高い場合でも、自車両の運転者が前方の信号等を視認できる距離に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−301833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行車両の全高が高い場合、自車両と先行車両との車間距離は常に広く設定されることとなる。車間距離を広く設定すると、他車両が車間に割り込む可能性が高くなり、割り込みの都度、自車両は車間距離を調整し直す必要が生じる。車間距離の調整は車速の変更を伴うため、割り込みが頻繁に生じると、運転者の違和感を増加させるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、運転者の車両前方に対する視認性の確保と、頻繁な他車両の割り込みの抑制とを両立させることができる、車両制御装置、及び車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では、自車両と当該自車両の前方を走行する先行車両との車間距離が目標車間距離となるよう前記自車両を制御する車間制御部を備える車両制御装置であって、前記先行車両の高さを取得する高さ取得部と、前記先行車両と前記自車両との車間への他車両の割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定する割り込み判定部と、を有し、前記車間制御部は、取得された前記先行車両の高さと、前記割り込み判定部の判定結果と、に基づいて前記目標車間距離を設定する。
【0007】
上記のように構成された発明では、先行車両の高さと、車間への他車両の割り込む可能性が高い状態であるか否かの判定と、を共に使用して自車両の目標車間距離を設定する。そのため、先行車両の高さのみで車間を制御する場合に比べて、運転者の車両前方の視認性の確保と他車両の割り込みの抑制とを、両立させることができる。例えば、割り込み判定部が車間への他車両の割り込みの可能性が高いと判定していれば、目標車間距離は他車両の割り込みを規制する距離に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】運転支援システム100を説明する構成図。
図2】車間制御部25が視認距離を設定する手法を説明する図。
図3】車間距離の制御を説明するフローチャート。
図4】ステップS14で実施される処理を説明するフローチャート。
図5】可能性指標値PInの設定を説明する図。
図6】運転支援ECU20により実施される車間距離の調整を説明する図。
図7】第2実施形態において図3のステップS16で実施される処理を示すフローチャート。
図8】特徴情報CIを説明する図。
図9】第3実施形態に係る車間の制御を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、車両制御装置及び車両制御方法の実施形態を、運転支援システムの一部を構成する電子制御装置(運転支援ECU)を例に説明する。運転支援システムは、車両に組み込まれ、車両の制動量や車速を制御することにより運転者の運転を支援する。なお、以下の実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0010】
(第1実施形態)
図1に示す運転支援システム100は、自車両CSの走行状態や周囲の情報を取得する各種センサと、車両の制動力を変化させるブレーキユニット40と、車速Vを変化させる駆動ユニット50と、ブレーキユニット40及び駆動ユニット50を制御する運転支援ECU20と、を主に備えている。
【0011】
各種検出部は、車両前方を撮像するカメラセンサ31と、車両前方に位置する先行車両CFを検出するレーザセンサ32と、自車両CSの車速を検出する車速センサ33と、ナビゲーション装置34と、を備えている。
【0012】
カメラセンサ31は自車両CSの前方を撮像し、撮像画像に含まれる特定の物体を検出する。カメラセンサ31は、例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、近赤外線センサ等の単眼カメラ又はステレオカメラを含む装置であり、自車両CSのフロントガラスの上端付近で且つ車幅方向の中央付近に取付けられている。
【0013】
レーザセンサ32は、指向性のあるレーダ光を送信波とし、この送信波に応じて自車両CSの前方の物体から反射される反射波を受信する。レーザセンサ32は、送信波を車両横方向に走査することで先行車両CFの位置や、自車両CSと先行車両CFとの現在の車間距離を検出する。また、レーザセンサ32は、送信波を上下方向に走査することで先行車両CFの高さを検出する。以下では、車間と記載するときは、自車両CSと先行車両CFとの間の車間を意味するものとする。
【0014】
車速センサ33は、自車両CSの車輪の回転速度に応じた信号を出力する。車速センサ33は、例えば、車輪に取り付けられたパルス発生器から出力される単位時間当たりのパルス数に基づいて当該車輪の回転速度を検出し、運転支援ECU20へ出力する。
【0015】
ナビゲーション装置34は、例えば、GPS受信機により受信されたGPS信号等を用いて車両の現在位置を算出し、該算出した現在位置から目的地までの経路の探索や、経路案内等を実施する。また、ナビゲーション装置34は、不図示のサーバから送信される道路情報や、地図データベースを用いて、自車両CSが走行する道路上の信号機の位置や、道路標識の位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置34は、道路の車線数、曲率ρ等の情報を取得することができる。
【0016】
操作部35は、自車両CSの運転席周囲に配置されたスイッチや、表示ディスプレイに表示される操作アイコンにより構成されている。これ以外にも、自車両CSがスマートフォン等の携帯端末と通信を行う場合、携帯端末に表示される操作アイコンを操作部35として機能させてもよい。
【0017】
運転支援ECU20は、レーザセンサ32により先行車両CFの走行軌跡を検出し、アダプティブクルーズコントロール(ACCAdaptive Cruise Control)等の車両制御を実施する。このACCでは、運転支援ECU20が駆動ユニット50とブレーキユニット40とを制御することで車間を調整する。
【0018】
運転支援ECU20は、CPU、ROM、RAMを中心に構成された周知のマイクロコンピュータとして構成されている。CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで、高さ取得部21、車間距離取得部22、情報取得部23、割り込み判定部24、車間制御部25、として機能する。
【0019】
高さ取得部21は、先行車両CFの全高を取得する。この実施形態では、高さ取得部21は、レーザセンサ32からの出力を用いて、先行車両CFの高さを示す高さ情報Haを取得する。これ以外にも、高さ取得部21は、カメラセンサ31からの出力を用いて、先行車両CFの高さを取得するものであってもよい。
【0020】
車間距離取得部22は、自車両CSと先行車両CFとの現在の車間距離とを取得する。この実施形態では、車間距離取得部22は、レーザセンサ32からの出力を用いて自車両CSと先行車両CFとの現在の車間距離を示す現在車間距離PDを取得する。
【0021】
情報取得部23は、自車両周辺の走行環境を示す走行環境情報RIを取得する。情報取得部23は、一例として、車線数、渋滞情報、隣接車線を走行する車両数、信号機までの距離、車速、を走行環境情報RIとして取得する。車線数は、自車両CSが走行する道路において、車両が同一方向に走行できる車線の数であり、カメラセンサ31又はナビゲーション装置34からの出力に応じて取得される。渋滞情報は、自車両CSが走行する道路の混み具合を示す情報であり、ナビゲーション装置34からの出力に応じて取得される。隣接車線を走行する車両数は、自車両CSが走行する道路において自車両CSと同じ進行方向の他車両COの数を示し、カメラセンサ31やレーザセンサ32からの出力に応じて取得される。自車両CSから信号機までの距離は、自車両CSが走行する道路上で進行方向において最も近い距離範囲に位置する信号機までの距離であり、ナビゲーション装置34からの出力に応じて取得される。自車両CSの車速Vは、車速センサ33からの出力に基づいて取得される。
【0022】
割り込み判定部24は、走行環境情報RIに基づいて、車間への他車両COの割り込みの可能性を判定する。割り込み判定部24は、走行環境情報RIの内、車間への他車両COの割り込みの可能性に関連する情報を参照し、可能性指標値PInを設定する。そして、割り込み判定部24はこの可能性指標値PInを用いて車間への他車両の割り込みの可能性を判定する。
【0023】
車間制御部25は、自車両CSと先行車両CFとの間の車間距離を制御する。車間制御部25が実施する車間距離の制御では、走行環境情報RIと割り込み判定部24による判定結果とを併用して目標車間距離TDが設定される。例えば、車間制御部25は設定した目標車間距離TDと現在の車間距離とを比較し、比較結果に応じてエンジンECU52やブレーキECU42を制御する。車間制御部25による制御により、エンジンECU52やブレーキECU42は、自車両CSの車速V、加速度a、制動力を変化させて、車間距離を調整する。
【0024】
車間制御部25は、車間への他車両COの割り込みの可能性が低い状態であると判定された場合、目標車間距離TDを視認距離Dviewに基づいて設定する。視認距離Dviewは、自車両CSの運転手が先行車両CFの上方に信号機を視認できる車間に基づいて設定される距離である。一方、車間制御部25は、車間への他車両COの割り込みの可能性が高い状態であると判定された場合、狭距離Dsを目標車間距離TDとして設定する。例えば、狭距離Dsは、ドライバが設定するACCの通常の車間距離として予め設定されている距離であり、視認距離Dviewとして設定することができる最小値よりも狭い値として設定されている。
【0025】
車間制御部25が視認距離Dviewを設定する手法を、図2を用いて説明する。なお、各種の標識、歩行者用信号機の高さはさまざまであるが、車両用の信号機の高さはほぼ一定であるものとして図2の説明を行う。
【0026】
運転者の目の高さをHd、自車両CSの運転席から車両先端までの水平方向の距離をLdとしたとき、三角形の相似の関係から、視認距離Dviewは下記式(1)を用いて算出することができる。この視認距離Dviewは、先行車両の高さを示す高さ情報Haが大きいほど、大きな値になる。
【0027】
Dview=(Hs−Hd)/(Ha−Hd)×Dcs−Ld+δ … (1)
なお、式中のδは、信号機を確実に視認することができる余裕度を示す補正値である。
【0028】
ブレーキユニット40は、自車両CSの車速Vを減速させるブレーキ機構41と、このブレーキ機構41を制御するブレーキECU42と、を備えている。ブレーキ機構41は、例えば、マスターシリンダと、車輪に制動力を与えるホイルシリンダと、マスターシリンダからホイルシリンダへの圧力(油圧)の分配を調整するABSアクチュエータと、を備えている。ABSアクチュエータは、ブレーキECU42に接続されており、このブレーキECU42からの制御によりマスターシリンダからホイルシリンダへの油圧を調整することで、車輪に対する制動力を調整する。
【0029】
駆動ユニット50は、自車両CSの車速Vを制御する。駆動ユニット50は、内燃機関として機能するエンジン51と、このエンジン51の駆動を制御するエンジンECU52と、を備えている。エンジンECU52には、不図示のアクセルペダルユニットが接続されている。運転者がこのアクセルペダルユニットを操作することで、エンジンECU52は、エンジン51への流入空気量や燃料の噴射の有無を制御し、車速Vを変化させる。
【0030】
駆動ユニット50は、エンジン51に代えて、駆動用モータを備えるものであってもよい。この場合、エンジンECU52は、アクセルペダルユニットの操作に基づいて、駆動用モータの回転数を変化させることで車速Vを制御する。これ以外にも、駆動ユニット50はエンジンと駆動用モータとを併設するものであってもよい。
【0031】
次に、運転支援ECU20により実施される車間距離の制御を、図3を用いて説明する。図3に示す処理は、運転者が操作部35を操作してACCの実施を選択した場合に、運転支援ECU20により所定周期で実施される処理である。また、ACCの実施により、運転支援ECU20は、進路前方を走行する先行車両CFを認識しているものとする。
【0032】
ステップS11では、レーザセンサ32からの出力に基づいて現在車間距離PDを取得する。ステップS12では、レーザセンサ32からの出力に基づいて高さ情報Haを取得する。ステップS13では、各種センサからの出力をもとに、走行環境情報RIを取得する。ステップS12が高さ取得工程として機能する。
【0033】
ステップS14では、ステップS13で取得した走行環境情報RIを用いて、車間への他車両の割り込む可能性を求める。図4は、ステップS14で実施される処理を説明するフローチャートである。図5は、可能性指標値PInの設定を説明する図である。
【0034】
ステップS21では、走行環境情報RIを解析する、運転支援ECU20は、走行環境情報RIのうち、道路の車線数や、隣接車線の混み具合に関係する情報を用いて可能性指標値PInを設定する。
【0035】
図5(a)に示すように、道路の走行車線が片側1車線しかなければ、他車両COが車間へ割り込む可能性は低くなる。一方、図5(b),(c)に示すように、道路が片側2車線以上ある場合、隣接車線を走行する他車両COが車間へ割り込む可能性は高くなる。そのため、走行環境情報RIに道路を片側1車線とする情報があれば(ステップS22:YES)、ステップS24では、可能性指標値PInを低く設定する。
【0036】
また、道路が2車線以上である場合でも(ステップS22:NO)、隣接車線の混み具合に基づいて、可能性を判定することができる。例えば、図5(b)に示すように、隣接車線を走行する自車両CSと同じ進行方向での他車両COが1台もいなければ、他車両COが車間へ割り込む可能性は低くなる。一方、図5(c)に示すように、道路が2車線以上であって、かつ、隣接車線を走行する自車両CSと同じ進行方向での他車両COの数が多ければ、この他車両COが車間へ割り込む可能性指が高くなる。
【0037】
そのため、ステップS23では、隣接車線を走行する他車両COの数を検出し、他車両COの数が閾値TA未満であれば(ステップS23:YES)、ステップS24に進み、可能性指標値PInを低く設定する。一方、他車両COの数が閾値TA以上であれば(ステップS23:NO)、ステップS25に進み、可能性指標値PInを高く設定する。
【0038】
隣接車線を走行する他車両COの数は、運転支援ECU20(情報取得部23)がカメラセンサ31により取得した撮像画像において一定時間内に自車両CSを追い抜いた他車両COの数を検出することで判定する。これ以外にも、一定時間内に自車両CSが追い抜いた他車両COの数を検出するものであってもよい。また、撮像画像を用いる以外にも、レーザセンサ32による自車両CSと他車両COとの相対速度を用いて、自車両CSが追い抜いた他車両COの数や、自車両CSを追い抜いた他車両COの数を判定するものであってもよい。
【0039】
隣接車線を走行する他車両COの数を比較する閾値TAは、少なくとも1台を含む数とすることができる。そのため、ステップS14では、自車両CSが走行する車線の隣接車線において自車両周辺を走行する他車両COの有無に基づいて割り込みの可能性を判定しているとも言える。
【0040】
図3に戻り、ステップS15では車間への他車両COの割り込みの可能性が高いか否かを判定する。可能性指標値PInが低い場合(ステップS15:NO)、ステップS18では、高さ情報Haに基づいて、目標車間距離TDを設定する。運転支援ECU20は、ステップS12で取得した高さ情報Haと、ステップS13で取得した車速Vと、上記式(1)とを用いて、視認距離Dviewを算出する。そして、ステップS11で取得された視認距離Dviewを目標車間距離TDとして設定する。ステップS14,S15が割り込み判定工程として機能する。
【0041】
一方、可能性指標値PInが高い場合(ステップS15:YES)、ステップS16では、自車両CSの進行方向上に信号機が存在するか存在しないかを判定する。自車両CSの進路上に信号機が存在する場合、他車両COの割り込みの抑制を優先させるよりも、信号機の視認性を優先させる方が望ましい。そのため、この実施形態では、信号機が存在する場合、目標車間距離TDを先行車両CFの高さに基づいて設定する。
【0042】
例えば、運転支援ECU20は、走行計画がされた道路上の最初の信号機までの距離Dcsを閾値TBと比較することで、信号機が存在するか存在しないかを判定する。距離Dcsが閾値TB以上であれば、信号機が存在しないと判定し、距離Dcsが閾値TB未満であれば信号機が存在すると判定する。距離Dcsは、ステップS13で走行環境情報RIとして取得された情報を用いる。
【0043】
信号機が存在すると判定されれば(ステップS16:YES)、ステップS18では、運転支援ECU20は、目標車間距離TDを広く設定する。具体的には、車間制御部25は、視認距離Dviewを目標車間距離TDとして設定する。
【0044】
信号機が存在しないと判定されれば(ステップS16:NO)、ステップS17では、目標車間距離TDを狭く設定する。具体的には、運転支援ECU20は、狭距離Dsを目標車間距離TDとして設定する。
【0045】
ステップS19では、設定された目標車間距離TDを用いて車間を制御する。運転支援ECU20は、目標車間距離TDと、ステップS11で取得されている現在車間距離PDとを比較し、比較結果に応じた制御信号をエンジンECUとブレーキECUとにそれぞれ送信する。例えば、目標車間距離TDが現在車間距離PDよりも広ければ、運転支援ECU20からの制御信号により、エンジンECUはエンジン回転数を減少させ、また、ブレーキECUは制動力を増加させることで、車間距離を増加させる。一方、目標車間距離TDが現在車間距離PDよりも狭ければ、運転支援ECU20からの制御信号により、エンジンECUはエンジン回転数を増加させて、車間距離を減少させる。ステップS16〜S19が車間制御工程として機能する。
【0046】
次に、運転支援ECU20により実施される車間距離の調整を、図6を用いて説明する。図6には、異なる時刻t1〜t4での、自車両CSと先行車両CFとの車間距離の変化を示している。時刻t1では、自車両CSはACCを実施しておらず、時刻t1での車間DB(t1)は、運転者の運転に伴う任意の距離となっている。そして、時刻t2〜t4では、自車両CSの運転者はACCを選択しており、車間DBが制御されているものとする。
【0047】
時刻t2では、運転支援ECU20は先行車両CFを追従するACCを開始している。図6(b)では、自車両CSが走行する車線の隣接車線には他車両COが走行していない。そのため、運転支援ECU20は、運転者の視認性を優先し、目標車間距離TDを先行車両CFの全高Haに基づいて設定している。この例では、時刻t2での車間DB(t2)は時刻t1での車間DB(t1)と比べて広くなっている。
【0048】
次に、時刻t3では、図6(c)に示すように、隣接車線には他車両COが複数台走行しており、混み具合が高くなっている。また、自車両CSが走行する車線において、自車両CSの進行方向前方には信号機が存在していない。そのため、運転支援ECU20は、他車両COの割り込みの抑制を優先し、目標車間距離TDを時刻t2での車間DB(t2)よりも狭く設定している。そのため、自車両CSと先行車両CFとの車間は狭くなっている。
【0049】
次に、時刻t4では、図6(d)に示すように、隣接車線の混み具体は高くなっているが、自車両CSの進路前方に信号機が存在している。そのため、運転支援ECU20は、運転者の信号機に対する視認性を優先し、目標車間距離TDを先行車両CFの全高Haに基づいて設定する。そのため、時刻t4での車間DB(t4)は、時刻t3での車間DB(t3)と比べて広くなっている。
【0050】
以上説明したようにこの第1実施形態では、先行車両CFの高さと、車間への他車両COの割り込む可能性とが高いか否かの判定と、を共に使用して自車両CSの目標車間距離TDを設定する。そのため、先行車両CFの高さのみで車間を制御する場合に比べて、運転者の前方への視認性の確保と頻繁な他車両COの割り込みの抑制とを、両立させることができる。
【0051】
運転支援ECU20は、自車両CSが走行する道路の車線数に基づいて割り込みの可能性が高いか否かを判定する。道路が片側一車線であれば、他車両COが車間へ割り込む可能性は低い。逆に、道路が2車線以上であれば他車両COが車間へ割り込む可能性は高い。そのため、道路の車線数を使用した簡易的な予測を用いて他車両COの割り込みの有無を判定することで、判定に要する処理負荷を低減することができる。
【0052】
運転支援ECU20は、自車両CSが走行する車線の隣接車線において自車両周辺を走行する他車両の有無に基づいて前記割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定する。上記構成では、自車両CSの周辺に実際に走行している他車両の有無に基づいて、車間への他車両の割り込みの可能性が高い状態であるか否かを判定することで、割り込みの可能性に対する判定精度を高めることができる。
【0053】
運転支援ECU20は、自車両CSの進行方向と同一方向での隣接車線の混み具合に基づいて、車間への他車両の割り込みの可能性が高いか否かを判定する。道路の交通量はその区間においても変化するため自車両CSが、現在、走行している道路において同じ進行方向の他車両COが多く存在し混み具体が高ければ、この他車両COが車間へ割り込む可能性が高くなる。上記構成では、自車両CSの周辺に実際に走行している道路における込み具体に基づいて、車間への他車両の割り込みの可能性が高いか否かを判定することで、割り込みの可能性に対する判定精度を高めることができる。
【0054】
運転支援ECU20は、自車両CSの進行方向前方に信号機が存在している場合、目標車間距離TDを先行車両CFの高さに基づいて設定する。車間への他車両COの割り込む可能性に基づいて車間距離を設定する場合でも、信号機の手前では安全性を考慮して、運転者の視認性を優先させる車間とすることが好ましい。そのため、上記構成では、自車両CSの進行方向前方に信号機が存在する場合、目標車間距離TDを先行車両CFの高さに基づいて設定する。そのため、信号機に対する運転者の視認性を優先させることで、走行の安全性を高めることができる。
【0055】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、運転支援ECU20は、自車両CSの進路前方に信号機が存在しているか存在していないかの判定を、信号機の手前位置で当該信号機の存在を示す情報を用いて実施する。
【0056】
図7は、第2実施形態において図3のステップS16で実施される処理を示すフローチャートである。
【0057】
ステップS31では、カメラセンサ31により取得された撮像画像を解析し、信号機の存在を示す情報である特徴情報CIを検出する。特徴情報CIは、道路において信号機の手前に存在し、かつ信号機の出現を示す情報である。図8では、特徴情報CIとして、標識案内CI1,CI2、右折レーンの出現を示す区画白線の形状の変化CI3、ゼブラゾーンCI4、道路上に形成された左折又は右折を示す矢印CI5,CI6、路面上に形成された道路標示CI7、を示している。
【0058】
ステップS31による各特徴情報CIの検出は、周知のテンプレートマッチングを用いて実施される。運転支援ECU20は、各特徴情報CIに応じた辞書を備えておき、この辞書を用いることで撮像画像に含まれる特徴情報CIを検出する。また、運転支援ECU20は、標識案内CI1,CI2を検出する場合、この標識案内CI1,CI2に含まれる信号までの距離を示す文字列を検出するものであってもよい。
【0059】
特徴情報CIを検出していない場合(ステップS32:NO)、ステップS34に進む。特徴情報CIを検出している場合(ステップS32:YES)、ステップS33では、特徴情報CIを検出した総数ANをカウントする。ここで、総数ANは、ステップS31において撮像画像内で解析された特徴情報CIの総和を示している。
【0060】
ステップS34では、特徴情報CIを検出した総数ANを閾値TCと比較する。総数ANが閾値TC以上であれば(ステップS34:YES)、ステップS35では、信号機が進路上に存在すると判定する。一方、総数ANが閾値TC未満であれば(ステップS34:NO)、進路上に信号機が存在しないと判定し、図7に示す処理を終了する。
【0061】
そして、図3のステップS17又はステップS18による目標車間距離TDの設定が実施される。
【0062】
以上説明したように、この第2実施形態では、運転支援ECU20は、自車両CSが走行する道路において信号機の手前位置で当該信号機の存在を示す特徴情報CIを取得し、取得された特徴情報CIに基づいて信号機の存在を判定する。間接的に信号機の存在を示す情報を用いることで、ナビゲーション装置34等による情報に頼らなくても信号の存在を判定することが可能となる。そのため、上記構成では、信号機の位置を示す情報をナビゲーション装置34等から得られない場合でも、信号機の手前で同信号機の視認性を優先する車間距離に設定することが可能となる。
【0063】
また、ナビゲーション装置34から信号機の位置等の情報を得られる場合でも、ナビゲーション装置34の情報が古いままで現在の信号機の位置に対応していない場合もある。このような場合においても、道路上で取得した特徴情報CIにより信号機の存在を判定するため、信号機の手前で車間距離を広げられなくなる可能性を抑制することができる。
【0064】
(第3実施形態)
この第3実施形態では、運転支援ECU20は、操作部35が車間距離の設定の変更操作を受け付けたことを条件に、目標車間距離TDの設定を先行車両CFの高さに基づく設定に維持する。
【0065】
この場合、図3のステップS15において、運転支援ECU20は、可能性の判定に加えて操作部35の操作に応じて車間を広くするモードに切り替えられているか否かを判定する。そして、車間を広くするモードに切り替えられている場合(ステップS15:YES)、ステップS18では目標車間距離TDを先行車両CFの高さに基づいて設定する。そのため、この実施形態では、操作部35が受付部として機能する。
【0066】
図9は第3実施形態に係る車間の制御を説明する図である。図9では、ACCの実施により、自車両CSが先行車両CFに追従している。また、隣接車線の混み具合が高く車間への他車両の割り込みの可能性が高くなっている。
【0067】
図9(a)では、操作部35による操作の受付により、先行車両CFの高さに応じて車間を調整するモードが選択されている。そのため、隣接車線の混み具合が高く、車間への他車両COの割り込みの可能性が高いため、運転支援ECU20は車間を狭くしている。一方、図9(b)では、操作部35による操作の受付により、車間を広く維持するモードが選択されている。そのため、車間に他車両COが割り込む可能性が高くなっていても、運転支援ECU20は車間を広く維持している。
【0068】
以上説明したように、運転者は操作部35を操作することで車間距離を常に先行車両CFの高さに基づいた距離に維持するよう切り替えることができるため、車間距離に対する運転者の嗜好を反映させることができる。
【0069】
(その他の実施形態)
目標車間距離TDの設定を以下のように限定するものであってもよい。運転支援ECU20(車間制御部25)は、高さ情報Haと可能性指標値PInとを変数とし、目標車間距離TDを算出するための車間関数を備えている。この場合、図3のステップS18において、目標車間距離TDの算出は、この車間関数を用いて多段的に設定される。
【0070】
車間への他車両COの割り込みの可能性の判定を、以下のように限定するものであってもよい。例えば、図3のステップS14において、ナビゲーション装置34からの出力される渋滞情報に基づいて隣接車線の混み具合を取得する。そして、取得した情報を用いて、車間への他車両COの割り込みの可能性指標値PInを設定する。
【0071】
図3のステップS18において、運転支援ECU20(車間制御部25)は、視認距離Dviewと現在車間距離PDのいずれか広い方を目標車間距離TDとして設定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
20…運転支援ECU、21…高さ取得部、23…情報取得部、24…割り込み判定部、25…車間制御部、CF…先行車両、CO…他車両、CS…自車両、TD…目標車間距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9