(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転円盤は、前記排出落下口が開口する前記ホッパの後側壁面の外側において、支持枠体を介して上下反転可能とする反転ボックス内に内設されているモータの下向き鉛直な出力軸に取り付け支持されて、前記排出落下口の斜め下方位置に水平回転可能に配設され、
前記支持枠体と前記反転ボックスとの間には、該反転ボックスが上方反転時にモータへの電流を遮断する安全スイッチを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載された散布装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の散布装置について詳細に説明する。本発明の実施形態は図示の形態を含むが、これに特に限定されるものではない。
本実施形態では、道路を走行する車両の荷台後部に積み込み搭載されて、車両の後方に向けて散布物である粒状の凍結防止剤(融雪剤)を散布するように構成された散布装置Aを実施の一例に挙げて説明する。
【0013】
≪散布装置Aの構成≫
散布装置Aは、トラックなどの車両Bの荷台b後部において、ロープなどにより固定された状態で搭載され、走行車線の道路幅などに応じた散布幅Lにて凍結防止剤Mを広角的(平面視で略扇形)に散布するように構成されている。
この散布装置Aは、凍結防止剤Mが収容されるホッパ1と、ホッパ1の後記する排出落下口2から自然落下してくる凍結防止剤Mを走行する車両Bの後方に向けて散布する散布部3とを、主要な構成として備えている。
【0014】
≪ホッパ1の構成≫
ホッパ1は、上面を平面視で四角形状に開口させ、車両Bの荷台b上に搭載された状態で、車両Bの後方側の後側壁面1aを垂直壁と成し、車両Bの進行方向側の前側壁面1bと車両Bの車幅方向側の両側壁面1cとを上部開口側を除いて後側壁面1aの下部中央に向けて絞り込むように漸次傾斜させてなる。
つまり、ホッパ1は、前側壁面1bと両側壁面1cとが後側壁面1aの下部中央に向けて窄まった漏斗形状を成して、当該下部中央に排出落下口2を備えている。排出落下口2は、ホッパ1の前側壁面1bの傾斜延長線上に向けた斜め下向きにて車両Bの車幅方向に長い矩形形状に開口されている。
このように、前側壁面1bと両側壁面1cが垂直な後側壁面1aの下部中央の排出落下口2に向けて窄まった漏斗形状を成していることで、ホッパ1内の凍結防止剤Mが、排出落下口2へ向けて自重にて滑り落ち(流下し)、当該排出落下口2から散布部3の後記する回転円盤4上に自然落下されるようにしている。
【0015】
このような構成において、ホッパ1は、方形形状に枠組みされた装置機枠(フレーム)100内に吊持状に支持内設されて車両Bの荷台b後部に固定的に搭載されるものである。
そして、装置機枠100の前後両側の四隅支柱枠101には、装置機枠100を荷台bに固定するロープなどを架け渡すための横向きU字状の引掛け部材102が備えられており、ロープなどを荷台bから引掛け部材102に架け渡すことで、散布装置Aを荷台bの後部に移動不能に固定した状態で搭載し得るようにしてある。
【0016】
また、装置機枠100の底部を平面視で略四角形状に枠組み構成する後側下辺枠103の左右両側には、散布装置Aを荷台b上に搭載するときの位置決め用の突き当て部材104が下向きに備えられており、突き当て部材104を荷台bの後辺部(ヒンジ部より垂れ下げた後側あおりなど)に宛がうことで、荷台bの後部に位置決めした状態で散布装置Aを搭載できるようにしてなる。つまり、荷台bより後方に飛び出させて、なおかつ、下方に位置させて配置される散布部3の回転円盤4などを、荷台bの後部に誤ってぶっつけるなどにより損傷させてしまうおそれをなくして散布装置Aを荷台b上に搭載できるようにしてなる。
【0017】
このようにして荷台bの後部に搭載される散布装置Aのホッパ1下部中央に設けた排出落下口2にはシャッタ機構が備えられており、凍結防止剤Mの散布中、散布終了後などにおいて排出落下口2を開閉し得るようにしている。
【0018】
≪シャッタ機構の構成≫
シャッタ機構は、排出落下口2が開口するホッパ1の後側壁面1aにおいて、後側壁面1aの外側に備えられるものであり、シャッタ板200と、駆動部であるシリンダ201とから構成されている。
シャッタ板200は、積層形態を成して、排出落下口2を左右から挟むように後側壁面1aに取り付けられている縦方向のガイド部材202によって上下スライド可能に備えられて排出落下口2を開閉するようにしている。シャッタ板200の積層形態は、中央の金属板材をサンドイッチ状に挟み込むようにシール性と潤滑性を兼ね備えた素材からなる板材を備えてなる。
【0019】
シリンダ201は、電動式であり、車両B運転席の散布コントローラ(図示省略)により起動・停止するようになっており、ロッド203を下向き垂直にした状態で後側壁面1aに取り付けられる。そして、シリンダ201は、シャッタ板200にブラケット204を介して直立に取り付けられている筒状の連結部材205にロッド203を挿入させ、ロッド203を連結部材205に対して連結位置調節可能に連結し得るようにしている。
詳しく説明すると、ロッド203に同軸上に連結するロッド延長部材206に軸方向等間隔にて開孔されているピン止め孔207への連結ピン208の挿入差し換えによって、ロッド203とロッド延長部材206との連結位置を適宜調節することを可能としている。
【0020】
≪散布部3の構成≫
つぎに、シャッタ機構のシャッタ板200を開くことで、ホッパ1の排出落下口2から自然落下してくる凍結防止剤Mを散布する散布部3について説明する。
散布部3は、ホッパ1の排出落下口2から自然落下してくる凍結防止剤Mを回転円盤4の回転により走行する車両B後方に向けて広角的に散布するものであり、排出落下口2が開口するホッパ1の外側において、装置機枠100に取り付けられている支持枠体300に支持された状態で装備される。
この散布部3は、羽根部材5を備える回転円盤4と、回転円盤4の回転駆動源である電動モータ6、回転円盤4の円盤外周に沿って配設される散布ガード部材7と、電動モータ6を内設する反転ボックス8と、排出落下口2から落下するホッパ1内の凍結防止剤Mを、回転円盤4上へ案内導く受け口部材9とを、主要な構成として備えている。
【0021】
≪回転円盤4の構成≫
回転円盤4は、所定大きさの外径(直径)を有する平板状を成し、
図1〜
図3に示すように、電動モータ6の出力軸6aに連結具10を介して同軸上に連結される出力伝達軸11の下端側にリング部材12、ボルトナット13にて固定的に取り付け支持されるように形成されている。
そして、回転円盤4上には複数(図示例では3個)の羽根部材5が放射状に備えられている。
【0022】
≪羽根部材5の構成≫
羽根部材5は、回転円盤4の半径に相当する長さに形成されて回転円盤4上に、後記において詳述する傾斜角度θ2にて起立状に配設されるとともに、上辺部5a側を回転円盤4の回転方向に向けて屈曲させた縦断面視で略逆向きL字状に形成されている。これにより、ホッパ1の排出落下口2から回転円盤4上に自然落下されてくる凍結防止剤Mを回転円盤4との間で把持(掴持)するようにキャッチし、回転円盤4の回転(遠心力)により凍結防止剤Mを回転円盤4上から払い押出すように構成されている。
【0023】
電動モータ6は、車両B運転席の散布コントローラに備えられているボリューム摘みなどにより回転数を無段階に切り換え可能とするDCモータであり、
図2および
図3、
図7に示すように、支持枠体300内に回転支持軸14にて上下反転可能に支持されている反転ボックス8内に、出力軸6aを下向き鉛直とした状態で内設される。そして、反転ボックス8内において下向きへ鉛直な出力軸6aは、回転円盤4の回転軸芯P1にリング部材12、ボルトナット13により取り付けられている出力伝達軸11と連結具10にて連結されて回転円盤4を駆動回転させるようにしてある。出力伝達軸11は、内部軸芯に軸受16を有する筒状の支持部材15によって反転ボックス8の底部に回転可能に取り付け支持されている。
【0024】
≪散布ガード部材7の構成≫
つぎに、回転円盤4の回転方向における円盤外周において、回転円盤4の後記において詳述する周方向所定の角度θ1範囲で回転円盤4を覆う散布ガード部材7について説明する。
散布ガード部材7は、
図4および
図5に示すように、ホッパ1の排出落下口2から排出されて回転円盤4の円盤軸芯P1よりも車両Bの進行方向寄りに位置する回転円盤4上に受け口部材9を介して自然落下される凍結防止剤Mが、回転円盤4の回転と羽根部材5との協働で回転円盤4上から払い押出されるとき、散布方向が走行する車両Bの後方となり、散布幅Lが走行車線の車線幅となるように凍結防止剤Mの散布方向と散布幅(散布範囲)Lを規制する役目を成す。つまり、散布ガード部材7は、羽根部材5との協働で、無駄のない効率的な散布を実現するための凍結防止剤Mの散布方向と散布幅Lを規制するものである。
【0025】
この散布ガード部材7は、
図2〜
図5に示すように、所定の幅(高さ)を有する帯状の板材などを用いて回転円盤4の半円に相当する長さ(円弧長)にて湾曲させた円弧状に形成されている。散布ガード部材7は、
図2および
図3に示すように、反転ボックス8の底部に取り付けられている支持部材15の下端に天板(固定円板)17を介して取り付け支持されることで、
図5に示すように、回転円盤4の回転方向における円盤外周を、周方向所定の角度θ1範囲で覆うように設けられる。
【0026】
散布ガード部材7を取り付け支持する天板17は、回転円盤4の直径によりも僅かに大きく、散布ガード部材7の大きさ(円弧)に相当する円板形状に形成されて、反転ボックス8底部の支持部材15の下端にリング部材18、ボルトナット19にて固定的に取り付け支持される。天板17に対する散布ガード部材7の取り付けは、溶接やスポットなどによって行われる。
【0027】
≪反転ボックス8の構成≫
支持部材15を介して底部に天板17を取り付け支持するとともに、電動モータ6を内設する反転ボックス8は、ボックス本体部8aとカバー部8bとの2部材から構成されている。ボックス本体部8aは、
図2および
図3に示すように、適宜の剛性(強度)を保つ厚さを有する鉄板から上部側を後方(散布方向)に向けて折り曲げ傾斜させた縦断側面視で略L字状を成す縦長で、横断面視で後方に向けて開口させた略コの字状に形成されている。そして、ボックス本体部8aは、底部側に備えているモータ設置板20上に電動モータ6を下向き立形に取り付け載置するとともに、モータ設置板20の下方において出力軸6aと出力伝達軸11とを連結具10にて同軸上に連結するようにしてなる。
【0028】
このような構成において、ボックス本体部8aは、支持枠体300の上半部側において両側枠部301にそれぞれ備えられている左右の横架枠部材302に、回転支持軸14を介して支持されて支持枠体300の両側枠部301間に上下反転可能に装備される。両側の横架枠部材302には内向きに対向する筒状の軸支持部材303が取り付けられており、この軸支持部材303に回転支持軸14の両端小径部が回転可能に挿入支持されるようにしている。
一方、カバー部8bは、
図2および
図3に示すように、ボックス本体部8aの上面と後面との開口を覆うように下向きの略逆L字状に形成されて、止めボルト21にてボックス本体部8aに着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0029】
そして、本実施例では、
図6に示すように、反転ボックス8と支持枠体300との間に、反転ボックス8を上方へ反転持ち上げたときに、電動モータ6への電流を遮断する安全スイッチ22を備えている。
【0030】
安全スイッチ22は、支持枠体300に配設されるスイッチボックス22aを備え、スイッチボックス22aには内部バネ材などにより外部凸状に付勢されている押し釦23が備えられている。そして、安全スイッチ22は、反転ボックス8側に配設される釦押動ON/OFF切替え部材22bを備え、押し釦23を押した状態で、電動モータ6に電流が通電され、押し釦23から釦押動ON/OFF切替え部材22bが離れて押し釦23が外部凸状に復帰した状態で、電動モータ6への通電が遮断されるように構成されている。
すなわち、
図6の(a)に示すように、回転円盤4などを下方に位置させた反転ボックス8の下方反転戻り状態(凍結防止剤Mの散布時)では電動モータ6に電流が通電され、
図6の(b)に示すように、回転円盤4などを上方に位置させた反転ボックス8の上方反転状態では電動モータ6への通電が遮断されるようになっている。
【0031】
また、本実施例では、
図2および
図3、
図6に示すように、反転ボックス8の下方反転戻し状態と上方反転状態において、反転ボックス8を支持枠体300に不動に取り付ける2種類の取付け部24,25を備えている。
【0032】
取付け部24は、反転ボックス8を上方へ反転させた時点で、そして、下方へ反転戻した時点で反転ボックス8を支持枠体300に仮止めするためのものであり、支持枠体300側の上下所定位置に配設されるピン部材24aと、反転ボックス8側の所定位置に配設されてピン部材24aに引っ掛けるフック部材24bとからなる。
一方、取付け部25は、取付け部24にて反転ボックス8を支持枠体300に仮止めした状態において、反転ボックス8を支持枠体300に本止めするためのものであり、支持枠体300側の上下所定位置にブラケット26を介して配設されるナット部材25aと、反転ボックス8側の所定位置に配設されたブラケット27を介してナット部材25aに螺合締結するノブ部材25bとからなる。
これにより、反転ボックス8を、
図6の(a)に示す下方反転戻し位置と、
図6の(b)に示す上方反転位置とに不動に取り付けた状態で、凍結防止剤Mの散布作業、そして、散布現場への移動や散布終了後などにおけるホッパ1の排出落下口2のメンテナンスを安全に行うことができる。
【0033】
≪受け口部材9の構成≫
つぎに、ホッパ1の排出落下口2から排出落下される凍結防止剤Mを排出落下口2から受け取り、斜め下方位置に配設されている回転円盤4上に凍結防止剤Mを案内導く受け口部材9について説明する。
【0034】
受け口部材9は、車両Bの車幅方向に長い所定大きさの上向き長方形状に開口し、長辺一側と短辺両側とを上向き傾斜させたラッパ状に形成されている。この受け口部材9は、排出落下口2の斜め下方に位置する天板17部分の開口部に取り付け配設されることで、排出落下口2から排出落下されるホッパ1内の凍結防止剤Mを、
図4および
図5に示すように、回転主軸Pよりも車両Bの進行方向よりに位置する回転円盤4上に案内導くようにしてある。
【0035】
以上のように構成されている本実施形態に係る散布装置Aにおいて、回転円盤4の回転軸芯P1を通る車両Bの進行方向および凍結防止剤Mの散布方向の第1軸直線X1に対する散布ガード部材7の回転円盤4の回転方向における角度θ1を5°〜40°の範囲に設定することが好ましい。つまり、回転軸芯P1より車両Bの進行方向寄りの落下位置Dに落下(供給)される回転円盤4上の散布物は、回転円盤4の回転に伴い羽根部材5によってキャッチされて回転方向に運ばれるとき、羽根部材5の外側(円盤外周方向)に向かって移動する。
そのために、
図5に示すように、回転円盤4の回転軸芯Pを通る車両の進行方向の第1軸直線X1を跨いで位置させる散布ガード部材7の一側辺端部7aの第1軸直線X1に対する角度θ1、そして、散布物の散布方向の第1軸直線X1から離れる方向に位置させる散布ガード部材7の他側辺端部7bの第1軸直線X1に対する角度θ1を5°〜40°の範囲に設定することが好ましい。
その理由は、角度θ1を5°以下にすると、落下位置に近い散布ガード部材7の一側辺端部7aから散布物が走行する車両後方の散布方向に向かって払い押出されることなく、
図5の紙面下側方向に向かって払い押出されてしまうおそれがあり、また、散布ガード部材7の他側辺端部7bまで羽根部材5によって運ばれてきた散布物が車両後方の散布方向に向かって払い押出されるものの、その払い押出される方向が
図5の紙面下側方向に片寄ってしまうおそれがある。つまり、角度θ1が5°以下では、車両が走行する道路幅(走行車線)全体に凍結防止剤Mを、第1軸直線X1を境とする左右均等、万遍に散布することができなくなるおそれと、凍結防止剤Mが道路脇などに飛び出して無駄に消費されることになるおそれがあるからである。
一方、角度θ1が40°を越えると、散布ガード部材7の一側辺端部7a側では車両後方の散布方向に向かって散布物を払い押出すことが可能になるものの、散布ガード部材7の他側辺端部7b側では車両後方の散布方向に向かって払い押出されることなく、
図5の紙面上側方向に向かって払い押出され、なおかつ、車両側に向かって払い押出されてしまうおそれがあり、所期の目的を達成することが難しくなるからである。
したがって、本実施形態に係る回転円盤4の回転方向における円盤外周に設けられる散布ガード部材7においては、第1軸直線X1に対する角度θ1を5°〜40°の範囲に設定、好ましくは10°〜30°の範囲、特に好ましくは25°に設定することが所期の目的を達成する上で重要である。
【0036】
また、
図5に示すように、円盤外周側に位置する一端側の回転円盤4の回転軸芯P1を通る直径方向の第2軸直線X2との交差部を基点P2として、回転軸芯P1側に位置する他端側が回転円盤4の回転方向に向けて第2軸直線X2から離れるように回転円盤4上に配設される羽根部材5の第2軸直線X2に対する傾斜角度θ2は、20°〜50°の範囲に設定することが好ましい。
その理由は、傾斜角度θ2を20°以下にすると、羽根部材5にキャッチされた散布物が、キャッチされた直後において羽根部材5の外側(円盤外周方向)に向かって移動しまい、羽根部材5から逃れてしまう。つまり、羽根部材5によって回転方向に運ばれなくなるおそれがあるからであり、傾斜角度θ2が50°を越えると、羽根部材5にキャッチされた散布物は羽根部材5によって回転方向に運ばれることなく、回転円盤4の回転軸芯P1方向に寄せ集められ、散布剤同士が互いに干渉し合って散布ガード部材7との協働による散布方向が定まらない、不規則になるおそれがあるからである。
したがって、本実施形態に係る回転円盤4上に配設される羽根部材5においては、第2軸直線X2に対する回転円盤4の回転方向への傾斜角度θ2を20°〜50°の範囲に設定、好ましくは35°〜45°の範囲、特に好ましくは40°に設定することが重要である。つまり、羽根部材5の回転円盤4上への第2軸直線X2に対する傾斜角度θ2を20°〜50°の範囲に設定することで、前記した第1軸直線X1に対する散布ガード部材7の回転円盤4の回転方向における角度θ1との相乗作用によって所期の目的を達成する上で効果的である。
【0037】
このような構成において、散布装置Aは、
図1〜
図4および
図7に示すように、排出落下口2に近い両側壁面1c間にわたり手動操作用の攪拌装置400を備えている。
【0038】
攪拌装置400は、散布作業者が手動で回転させてホッパ1内の凍結防止剤Mを攪拌するものであり、
図2および
図4に二点鎖線で示すように、両側壁面間1cにわたり軸受部材27を介して外部貫通状に取り付けられるパイプ材から成る回転軸体401と、回転軸体401の軸方向数カ所において円周三方方向に向きを変えて取り付けられる攪拌軸体402と、回転軸体401の一端側に抜き差し着脱可能に装着される手動用のハンドル403とから構成されている。
而して、
図7に示すように、外部に突出する回転軸体401の一端側にハンドル403を装着して回転軸体401を回すことで、軸方向数カ所の各攪拌棒体402によって排出落下口2近くの凍結防止剤Mが攪拌されるようにしてある。これにより、ホッパ1内の凍結防止材M、特に、排出落下口2近くの凍結防止剤Mのブリッチ現象を防止し、散布中において排出落下口2から回転円盤4上に凍結防止剤Mが速やかに自然落下するようにしてなる。
【0039】
また、本実施例では、
図7に示すように、左右一対のスタンドCで散布装置Aを支持し得るようにしている。
すなわち、
図1および
図6に示すように、散布装置Aの装置機枠100を構成する左右両側の下部枠部材105と中間枠部材106との間に取り付けた縦枠部材107の所定高さ位置に、丸パイプ材などからなる連結部材500を横向き開口状に取り付けている。そして、
図7に示すように、キャスタ502を備える水平杆部材501と、水平杆部材501の長さ方向中央部から立設させた垂直杆部材503と、から側面視で略逆向きT字形の構設されているスタンドCを備えている。
【0040】
このような構成において、
図7に示すように、スタンドCの垂直杆部材503の上部側に備えた挿入連結部材504を装置機枠100側の連結部材500に抜き差し着脱可能に挿入連結することで、散布装置Aを左右両側で支持し得るようにしている。連結部材500に対する挿入連結部材504の挿入状態はピン止めなどによって抜動不能に連結し得るようにしている。
【0041】
スタンドCの垂直杆部材503は、角パイプ材からなる上部側杆部503aと下部側杆部503bとからなり、上部側杆部503aに備えた図示省略の螺子杆部材を、下部側杆部503bに備えた図示省略のナット部材に螺合挿通させることで、上部側杆部503aを下部側杆部503bに対して連結してなる。そして、上部側杆部503aの上端から突出する螺子杆部材の上端に取り付けたハンドル505を回すことで、上部側杆部503aの高さを調整可能(下部側杆部503bに対して上下伸縮移動可能)としてなる。上部側杆部503aの高さ調整後においてはピン止めなどによって、上部側杆部503aを下部側杆部503bに対して不動に連結し得るようにしている。
このように構成されているスタンドCを使用することで、散布装置Aを車両Bの荷台bに載せる、荷台bから降ろす積み下ろし作業が一人で簡単に行ない得るとともに、散布終了後のオフシーズン時などにおいては散布装置Aの保管用として有効なものとなる。
【0042】
[作用説明]
つぎに、以上のように構成されている本実施形態に係る散布装置Aの使用について簡単に説明する。
まず、散布装置Aを車両Bの荷台b後部に搭載するときには、
図7に示す左右一対のスタンドCを用いて行う。このとき、装置機枠100に備えられている突き当て部材104を荷台bの後辺部などに宛がうことで、散布部3の回転円盤4などを荷台bにぶっつけることなく荷台b後方における路面から所定高さに回転円盤4などを位置させた状態で散布装置Aを荷台bの後部に載せることができる。散布装置Aを荷台b上に載せた後に装置機枠100に備えられている四隅の引掛け部材102にわたりロープなどを架け渡して散布装置Aを荷台b上に移動不能に固定するとともに、散布部3の電動モータ6の電源ケーブルを車両Bのバッテリなどの電源部に繋ぎ、電動モータ6に電源が供給される状態とする。
【0043】
このようにして、散布装置Aを荷台bの後部に搭載した後にホッパ1内に凍結防止剤Mを投入し、散布現場に移動して散布作業を行なうときには、運転席の散布コントローラによって電動モータ6を起動させ、電動シリンダ201をシャッタ開方向に起動させてシャッタ板200を開くことで、走行する車両Bの後方を向けて凍結防止剤Mを散布する散布作業を遂行させることができる。このとき、散布コントローラに備えられているボリューム摘みなどにより電動モータ6の回転数を切り換えることで、走行車線の車線幅に合わせた散布幅Lにて散布作業を遂行させることができる。
【0044】
散布作業中、ホッパ1内に収容されている凍結防止剤Mは、ホッパ1の垂直な後側壁面1aの下部中央の排出落下口2に向けて傾斜させた前側壁面1bと両側壁面1cによって、当該排出落下口2に向けて自重にて滑り落ちる(流下する)。排出落下口2への滑り落ちてきた凍結防止剤Mは、排出落下口2から斜め下方位置(車両Bの荷台高さより低い位置)に配設されている受け口部材9によって回転円盤4上に排出落下されて回転円盤4の回転により回転円盤4上から走行する車両Bの後方(走行車線)に向けて払い押出されて散布される。
このとき、排出落下口2から受け口部材9に誘導されて回転軸芯Pよりも車両Bの進行方向寄りにおける回転円盤4上の落下位置Dに落下した凍結防止剤Mは、回転円盤4の回転軸芯Pを通る第2軸直線X2に対して傾斜角度θ2にて回転円盤4上に配設されている羽根部材5によって回転円盤4との間で把持するようにキャッチされる。
【0045】
羽根部材5によってキャッチされた凍結防止剤Mは、回転円盤4の回転により羽根部材5の外側(円盤外周側)へと移動しながら、なおかつ、回転円盤4の回転軸芯Pを通る第1軸直線X1に対して周方向角度θ1にて回転円盤4の円盤外周を覆うように取り付けられている円弧状の散布ガード部材7に沿って回転円盤4の回転方向に運ばれて行く。
すると、散布ガード部材7の両側辺端部7a,7bのうち、凍結防止剤Mの回転円盤4上への落下位置Dに近い一側辺端部7a側から順次に、回転円盤4の回転方向の他側辺端部7b側に至る散布ガード部材7により覆われていない円盤外周から凍結防止剤Mが走行車線の車線幅に相当する散布幅Lにて払い押出されて散布される。
【0046】
このように、本発明の実施形態に係る散布装置Aによれば、従来技術のように、ホッパ内凍結防止剤を回転円盤上へ落下(供給)するためのスクリューなどをホッパ底部に備えることなく、ホッパ1内の凍結防止剤Mを回転円盤4上に自然落下させながら車両Bの後方に向けた散布方向と無駄のない散布幅(走行車線幅)Lにて散布することができる。
【0047】
つまり、ホッパ1の垂直な後側壁面1aの下部中央に設けた排出落下口2に向けて前側壁面1bと両側壁面1cとを絞り込むように漸次傾斜させたことで、ホッパ1内の凍結防止剤Mが自重にて排出落下口2に向けて滑り落ちる(流下する)。そして、排出落下口2から回転円盤4上への凍結防止剤Mの落下位置Dを、受け口部材9によって誘導(案内)される回転円盤4の回転主軸Pよりも車両Bの進行方向寄りとすることで、排出落下口2に向けて窄まった漏斗形状を成すホッパ1内の凍結防止剤Mが回転円盤4上に確実に落下されることに着目することで本発明の完成するに至ったものである。
そしてまた、回転軸芯Pよりも車両Bの進行方向寄りの回転円盤上の落下位置Dに落下させた凍結防止剤Mを、走行する車両Bの後方に向けた散布方向で無駄のない散布幅Lにて散布するために、回転円盤4の半円に相当する長さ(円弧長)にて円弧状に湾曲させた散布ガード部材7の両側辺端部7a,7bを、回転円盤4の円盤軸芯Pを通る進行方向および散布方向の第1軸直線X1に対して周方向所定の角度θ1範囲に位置させた状態で散布ガード部材7を回転円盤4の回転方向における円盤外周に設けることに着目することで本発明を完成するに至ったものである。
【0048】
つぎに、ホッパ1内の凍結防止剤(融雪剤)の詰まり解消機構について説明する。ホッパ1内に入れる凍結防止剤には、様々な形状があるが、大きく分けると粒状物,粉状物,フレーク状物に分けられる。このような凍結防止剤は、湿気を吸いやすく、湿気を吸うと流動性が悪くなる特性ある。湿気を吸って流動性が悪くなった凍結防止剤は、ホッパ1内で、排出落下口2の上方だけが落ちてその周りが崩れずに固まってしまうラットホールや排出落下口2から落下しなくなるブリッジを起こしやすくなり、ホッパ1内に収容され凍結防止材を、連続的に排出落下口2から排出することが困難になる。
【0049】
これに対して、本発明の他の実施形態では、
図8〜
図10に示すような、ハンマー機構を設けている。ハンマー機構600は、ホッパ1の前方における下部枠部材105上に設置され、ホッパ1の前側壁面1bの下方位置を間欠的に外側から叩くことで、ホッパ1内の凍結防止材を排出落下口2から連続的に排出させる機能を有している。ホッパ1における前側壁面1bの下方は、空きスペースになるので、そこにハンマー機構600を設置することで、装置を大型化することなく、ハンマー機構600を設置することができる。
【0050】
ハンマー機構600は、前側壁面1bを叩くハンマー体601と、ハンマー体601を支持する一端側と力点部602aとなる他端側がそれぞれ上下揺動するように軸支されたアーム602と、アーム602の他端側を下方に向けて付勢するバネ603と、アーム602の力点部602aを上方に持ち上げて離すカム体604Aを回転駆動する駆動部604とを備えている。
【0051】
アーム602は、支持体605の設置された水平軸606に中間部が軸支されることで、その両端が上下に揺動自在に支持されている。アーム602の前端側には、ハンマー体601が取り付けられている。図示の例では、一対のアーム602間に水平軸607が設けられ、その水平軸607に軸支されるようにドラム状のハンマー体601が取り付けられている。
【0052】
バネ603は、一端側がアーム602の前端側に係止され、他端側が支持体605に係止されることで、アーム602の前端側を下向きに付勢している。これによって、ハンマー体601が取り付けられているアーム602の後端側は、バネ603によって上方に向けて付勢されている。
【0053】
駆動部604は、カム体604Aとこのカム体604Aを回転駆動する電動モータ604Bとを備えている。電動モータ604Bの減速された一定回転で、カム体604Aは回転駆動され、その回転速度でハンマー体601が前側壁面1bを叩く間欠周期が設定される。回転駆動されるカム体604Aは、その先端部がアーム602の力点部602aに当接することで、アーム602の力点部602aを上方に持ち上げて離す機能を繰り返す。駆動部604の電動モータ604Bは、車両Bに搭載される電源(バッテリ:図示省略)から給電され、車両の運転席に設置したコントロールボックス(図示省略)のスイッチ操作によりオンオフがなされる。
【0054】
図10の(a)〜(c)は、ハンマー機構600の動作を示している。ハンマー機構600は、散布作業中に駆動部604の電動モータ604Bをオン操作することで動作が開始される。電動モータ604Bの回転によってカム体604Aが回転すると、カム体604Aの先端部がアーム602の力点部602aに当接している間だけ、バネ603の弾性力に反発して、アーム602の前端側が持ち上げられ、カム体604Aの先端部がアーム602の力点部602aから離れると、バネ603の弾性力でアーム602の前端側が押し下げられる共にアーム602の後端側が押し上げられて、アーム602の後端側に取り付けられたハンマー体601がホッパ1の前側壁面1bを叩く。
【0055】
カム体604Aは、回転軸周りの180°位置に一対の先端部が設けられており、カム体604Aの1回転で2回ハンマー体601がホッパ1の前側壁面1bを叩く。ハンマー体601が前側壁面1bを叩く間欠周期は、一秒に1回程度が好ましく、そのために、電動モータ604Bの出力軸の回転速度(カム体604Aの回転速度)は、30rpm程度に設定することが好ましい。ハンマー体601が前側壁面1bを叩く力は、バネ603の弾性力などで適宜調節することができる。
【0056】
本発明の実施形態に係る散布装置Aは、このようなハンマー機構600を設けることで、ホッパ1内に収容された凍結防止材を詰まり無く排出落下口2から回転円盤4上に排出することができる。これによって、凍結防止材が湿気を吸って流動性が悪くなった場合でも、円滑に散布作業を進行することができる。
【0057】
ハンマー機構600を動作させると、ハンマー体601が前側壁面1bを叩くハンマー音が発生するが、前側壁面1bにおけるハンマー体601の当接位置にハンマー音抑制部材610を設けることで、騒音を抑止することが可能になる。ハンマー音抑制部材610は、スポンジ材とプラスチック材の積層体にすることで、適度の衝撃を加えたながら、ハンマー音の発生を抑制することが可能になる。
【0058】
ハンマー体601が前側壁面1bを叩く位置は、前側壁面1bの下方位置であり、排出落下口2の背面近傍が好ましい。このような位置をハンマー体601が叩くことで、ホッパ1内の凍結防止材は、ブリッジやラットホールが効果的に崩れて、円滑に排出落下口2から排出される。ハンマー機構600には、必要に応じて、駆動部604などを覆うカバー611が設けられる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
また、前述の各図で示した実施形態は、その目的および構成などに特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の散布装置は、凍結防止剤の散布に限らず、散布物である粒状の肥料を圃場に散布するなどの種々の分野において適用されるものである。