(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ごみ焼却炉において一次燃焼室と二次燃焼室との間の空気吹込み室を構成する円筒壁部の円周数ヶ所に空気を吹き込む旋回流ノズルを設けるとともに、この旋回流ノズルの設置場所よりも上方位置に単一の空気導入管を径方向外側から挿入し、この空気導入管の内端に取り付けられる乱流用ノズルを前記空気吹込み室の径方向中心位置から上向きに屈曲させた構成が記載されている。
【0003】
この特許文献1では、一次燃焼室から上昇して二次燃焼室に流入する燃焼ガスを前記旋回流ノズルから吹き込まれる空気によって旋回流にするとともに、この旋回する燃焼ガスの径方向中心位置に配置される前記乱流用ノズルから空気を上向きに吹き込むことによって前記燃焼ガスに乱流を起こさせて、当該燃焼ガスを再燃させるようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、ごみ焼却炉の二次燃焼室内に多数のガス噴出器を設置し、このガス噴出器それぞれから二次燃焼空気を噴出させて、二次燃焼を行わせるということが記載されている。前記多数のガス噴出器は、多孔質セラミックス製の管状体とされており、それに内在する微細孔から二次燃焼空気を噴出させることによって、当該ガス噴出器の外周を前記二次燃焼空気で膜状に包むようにしている。
【0005】
この特許文献2では、その段落0021に記載されているように、「二次燃焼室において、一次燃焼室から上昇流入した一次燃焼ガスが、前記各ガス噴出器の外周に形成される膜状の二次燃焼空気と攪拌、混合される」ようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、前記一次燃焼室から前記二次燃焼室へ上昇する燃焼ガスを旋回流にするとともに、当該燃焼ガスの径方向中心位置から上向きに空気を吹き込むようにしている。また、上記特許文献2では、多孔質セラミックス製の管状体からなるガス噴出器の微細孔から外周に二次燃焼空気を漏れ出させるようにしている。
【0008】
このような特許文献1,2では、いずれも、前記一次燃焼室から前記二次燃焼室へ上昇する燃焼ガスを前記二次燃焼空気で攪拌する作用が不十分であることが懸念される。そのため、前記燃焼ガスの全体を再燃させることが困難になっている。
【0009】
このような事情に鑑み、本発明は、ごみ焼却炉内に、上昇する燃焼ガスを再燃させるための二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給装
置を備えるごみ焼却装置において、ごみ焼却炉での安定した完全燃焼を促進可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ごみ焼却炉内に、上昇する燃焼ガスを再燃させるための二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給装置を有するごみ焼却装置であって、前記ごみ焼却炉の出口寄りにおける酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、下記二次燃焼空気供給路において下記二次燃焼空気送風機よりも二次燃焼空気の供給方向下流側における二次燃焼空気の
流速を検出する
流速検出手段と、前記酸素濃度検出手段の検出出力に基づいて下記二次燃焼空気送風機およびダンパを制御することによって前記酸素濃度を所定の目標範囲に収めるように二次燃焼空気の供給量を調整するとともに、前記
流速検出手段からの検出出力に基づいて下記二次燃焼空気送風機およびダンパを制御することによって前記燃焼ガスに二次燃焼空気を密に混合させるように二次燃焼空気の
噴射速度を調整する制御装置と、を有し、前記二次燃焼空気供給装置は、前記ごみ焼却炉内と大気とを連通する二次燃焼空気供給路と、この二次燃焼空気供給路に大気を二次燃焼空気として吸引するための二次燃焼空気送風機と、前記二次燃焼空気供給路内を通過する二次燃焼空気の流量を調整するダンパと、前記二次燃焼空気供給路において大気吸引方向の下流側のごみ焼却炉内に接続されかつ前記二次燃焼空気を前記ごみ焼却炉内に導入するための導入管と、を有し、この導入管は、前記ごみ焼却炉内において前記上昇する燃焼ガスを横切る方向に沿うように配置され、かつ前記燃焼ガスを横切る方向および前記燃焼ガスの上昇方向にそれぞれ少なくとも2つ以上並んで設けられており、この導入管それぞれは、鉄系金属製の管本体の外周に耐熱材が設けられた構成とされており、前記各導入管の円周方向および長手方向の数ヶ所には、二次燃焼空気を径方向外向きに噴射させる噴射孔が設けられており、前記隣り合う導入管の噴射孔は、それぞれ向き合わないようにずらされているとともに、すべて平面視で円形に形成されている、ことを特徴としている。
【0011】
なお、本発明では、少なくとも2つ以上の導入管が前記燃焼ガスを横切る方向のみに並んで設けられる形態、少なくとも2つ以上の導入管が前記燃焼ガ
スを横切る方向と前記燃焼ガスの上昇方向との両方に並んで設けられる形態を含んでいる。
【0012】
この構成では、前記ごみ焼却炉内に、少なくとも2つ以上の導入管の多数の噴射孔から径方向外向きに二次燃焼空気を勢いよく噴射させるようにしているから、前記ごみ焼却炉内を上昇する燃焼ガスが、前記ごみ焼却炉内において前記燃焼ガスを横切る方向および前記燃焼ガスの上昇方向の少なくともいずれか一方向の広域で攪拌されるようになって、当該燃焼ガスの全体に前記二次燃焼空気が密に混合されるようになる。
【0013】
これにより、前記燃焼ガスが効率良く再燃されるようになるので、前記ごみ焼却炉での安定した完全燃焼が促進されることになる。
【0015】
ところで、上記導入管は、鉄系金属製の管本体の外周に耐熱材が設けられた構成とされているので、当該導入管の強度、耐熱性ならびに耐久性が可及的に向上するようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るごみ焼却装置によれば、ごみ焼却炉での安定した完全燃焼を促進することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1から
図4に、本発明の一実施形態を示している。
図1に示すごみ焼却装置は、ごみ焼却炉1、冷却装置2、バグフィルタ等のろ過式の集塵装置3、誘引通風機4、煙突5などを備えている。
【0026】
冷却装置2、集塵装置3ならびに誘引通風機4は、ごみ焼却炉1から煙突5までの排気路11に配置されている。
【0027】
ごみ焼却炉1は、例えば図示しない一般廃棄物、産業廃棄物や所定梱包に入れられた感染性医療廃棄物などのごみを燃焼するものであり、焼却炉の型式は問わない。
【0028】
冷却装置2は、詳細に図示していないが、ごみ焼却炉1から排出される高温の排ガスを冷却するものであって、例えばボイラ、あるいはガス冷却室などとされる。
【0029】
集塵装置3は、冷却装置2で減温された排ガス中のばいじんや有害ガス成分を中和、濾過して浄化するものである。
【0030】
誘引通風機4は、集塵装置3内の排ガスを吸引して、煙突5から大気中に放出させるものである。
【0031】
ごみ焼却炉1の焼却灰排出口1a寄りには、一次燃焼空気供給装置6によって一次燃焼空気が供給されるようになっており、また、ごみ焼却炉1の火炎層1b寄りには、二次燃焼空気供給装置7によって二次燃焼空気が供給されるようになっている。
【0032】
一次燃焼空気供給装置6は、ごみ焼却炉1内に投入されるごみを燃焼させるためにごみ焼却炉1内において焼却灰排出口1a側に一次燃焼空気を供給するものであって、一次燃焼空気供給路6a、一次燃焼空気送風機6bなどを備えている。
【0033】
二次燃焼空気供給装置7は、ごみ焼却炉1内で上昇する燃焼ガスを再燃させるための二次燃焼空気をごみ焼却炉1内に供給するものであって、二次燃焼空気供給路7a、二次燃焼空気送風機7b、ダンパ7c、導入管7dなどを備えている。
【0034】
二次燃焼空気供給路7aは、ごみ焼却炉1内において火炎層1bの上方と大気とを連通するものである。二次燃焼空気送風機7bは、二次燃焼空気供給路7aに大気を二次燃焼空気として吸引するものである。
【0035】
ダンパ7cは、二次燃焼空気供給路7a内を通過する二次燃焼空気の流量を調整するものである。
【0036】
導入管7dは、ごみ焼却炉1内において火炎層1bの上方に二次燃焼空気を導入するものであって、二次燃焼空気供給路7aにおいて大気吸引方向の下流側に接続されている。
【0037】
この導入管7dは、
図2に示すように、ごみ焼却炉1内において火炎層1bの上方に、上昇する燃焼ガスを横切る方向(ごみ焼却炉1の径方向または左右方向に相当)に4列並んで設けられているとともに、前記燃焼ガスの上昇方向(ごみ焼却炉1の中心軸線方向または上下方向に相当)に3段並んで設けられている。なお、この導入管7dの配置数については、前記左右方向ならびに前記上下方向にそれぞれ少なくとも2つ以上であれば任意に設定することができる。
【0038】
この導入管7dは、管本体7d1の外周に耐熱材7d2を設けた構成とされている。管本体7d1は、鉄系金属とされる。耐熱材7d2は、キャスタブル、炭化ケイ素(SiC)あるいは酸化アルミニウムとされる。前記キャスタブルとは、耐火骨材と水硬化セメント(アルミナセメントなど)を混合した耐火物製品のことである。この他、導入管7dは、多孔質でないセラミックス製パイプの単体構成とすることも可能である。
【0039】
そして、導入管7dそれぞれの円周方向および長手方向の数ヶ所(任意)には、噴射孔7d3が設けられている。この噴射孔7d3は、導入管7dの中心から放射方向外向きに一直線に管本体7d1および耐熱材7d2を貫通するように設けられており、導入管7dの中心孔に供給される二次燃焼空気を径方向外向きに勢いよく噴射するものである。
【0040】
噴射孔7d3は、すべて平面視で円形に形成されている。噴射孔7d3の直径寸法は、ごみ焼却炉1において二次燃焼空気の噴射速度が10〜40m/secとなるように設定される。
【0041】
この噴射孔7d3は、
図4に示すように、導入管7dの円周数ヶ所(例えば90度おきの4ヶ所)に設けられているとともに、
図2および
図3に示すように、導入管7dの長手方向の数ヶ所に設けられている。
【0042】
詳しくは、上段および下段の導入管7dにおいては、
図4の左側から2列目と4列目の導入管7dの円周4ヶ所の噴射孔7d3が時計の12時、3時、6時、9時の位置に配置されており、
図4の左側から1列目と3列目の導入管7dの円周4ヶ所の噴射孔7d3が前記2列目と4列目の導入管7dの円周4ヶ所の噴射孔7d3に対してそれぞれ45度ずつずらされている。
【0043】
中段の導入管7dにおいては、
図4の左側から1列目と3列目の導入管7dの円周4ヶ所の噴射孔7d3が時計の12時、3時、6時、9時の位置に配置されており、
図4の左側から2列目と4列目の導入管7dの円周4ヶ所の噴射孔7d3が前記1列目と3列目の導入管7dの円周4ヶ所の噴射孔7d3に対してそれぞれ45度ずつずらされている。
【0044】
そして、
図2および
図3に示すように、導入管7dの円周方向1列目で長手方向多数の噴射孔7d3と導入管7dの円周方向3列目で長手方向多数の噴射孔7d3とが長手方向で同じ位置に配置されており、導入管7dの円周方向2列目で長手方向多数の噴射孔7d3と導入管7dの円周方向4列目で長手方向多数の噴射孔7d3とが長手方向で同じ位置に配置されており、かつ、前記1列目の噴射孔7d3および3列目の噴射孔7d3に対し前記2列目の噴射孔7d3および4列目の噴射孔7d3が長手方向で齟齬状に配置されている。
【0045】
また、上下方向および左右方向に並んで配置される多数の導入管7dのうち、隣り合う2つの導入管7dの噴射孔7d3は、
図2から
図4に示すように、それぞれ向き合わないようにずらされている。
【0046】
ところで、この実施形態では、ごみ焼却炉1内で完全燃焼を促進させるために、制御装置10でもって、酸素濃度検出手段21ならびに
流速検出手段22からの検出出力に基づいて、二次燃焼空気送風機7bおよびダンパ7cを制御するように構成されている。
【0047】
具体的に、酸素濃度検出手段21は、二次燃焼空気供給路7aからごみ焼却炉1内への二次燃焼空気の供給位置よりも排気口1c寄りの位置における酸素濃度を検出する。また、
流速検出手段22は、二次燃焼空気供給路7aにおいて二次燃焼空気送風機7bよりも二次燃焼空気の供給方向下流側における二次燃焼空気の
流速を検出する。
【0048】
制御装置10は、酸素濃度検出手段21からの検出出力に基づいて二次燃焼空気送風機7bおよびダンパ7cを制御することによって、ごみ焼却炉1内の酸素濃度を所定の目標範囲内に収めるように二次燃焼空気の供給量を調整するとともに、
流速検出手段22からの検出出力に基づいて二次燃焼空気送風機7bおよびダンパ7cを制御することによって、ごみ焼却炉1内を上昇する燃焼ガスに二次燃焼空気を密に混合させるように二次燃焼空気の
噴射速度を調整する。これにより、ごみ焼却炉1の低負荷運転や急燃焼運転などの運転条件の変動に関係なく、二次燃焼空気で燃焼ガスを攪拌させて、当該燃焼ガスに二次燃焼空気を密に混合させることが可能になる。
【0049】
次に、この実施形態に係る二次燃焼空気供給装置7の動作を説明する。
【0050】
ごみ焼却運転中において、二次燃焼空気供給装置7により二次燃焼空気をごみ焼却炉1内に供給すると、上段の導入管7d、中段の導入管7dならびに下段の導入管7dの全ての噴射孔7d3から二次燃焼空気が勢いよく噴射されることになるので、この二次燃焼空気が、ごみ焼却炉1内を上昇する燃焼ガスを攪拌して、当該燃焼ガスと混合されることになる。
【0051】
その際、
図4に示すように、多数の導入管7dのうちの隣り合う2つの導入管7dの噴射孔7d3が向き合わないようにずらされているから、当該隣り合う導入管それぞれの噴射孔7d3から噴射される二次燃焼空気が互いに直接的に衝突せずに、前記燃焼ガスに直接的に衝突することになる。
【0052】
これにより、ごみ焼却炉1内を上昇する燃焼ガスがごみ焼却炉1の左右方向ならびに上下方向の全域で略均等に攪拌されることになって、当該燃焼ガスに二次燃焼空気が密に混合させられることになるので、当該燃焼ガスが効率良く再燃されることになる。その結果、ごみ焼却炉1での安定した完全燃焼を促進することができるので、大気に排出する排ガスを清浄化するうえで有利になる。
【0053】
しかも、前記しているように隣り合う導入管7dそれぞれの各噴射孔7d3から噴射される二次燃焼空気がそれぞれ互いに直接的に衝突せずに前記燃焼ガスに直接的に衝突することに伴い、各導入管7dの外周で乱流が発生するので、飛灰などのダストが各導入管7dの外周に付着、堆積することが抑制または防止されることになる。
【0054】
さらに、この実施形態では、導入管7dを管本体7d1と耐熱材7d2とを含む複合構成にしているので、導入管7dを単体で構成する場合に比べると、導入管7dの強度、耐熱性ならびに耐久性が向上することになるなど、長寿命化に貢献できるようになる。
【0055】
しかも、導入管7dの耐熱材7d2としてのキャスタブル、炭化ケイ素あるいは酸化アルミニウムは、ごみ焼却炉1内からの受熱に伴い輻射熱を発生するので、当該耐熱材7d2から発生する輻射熱が前記燃焼ガスの再燃を促進させることに役立つようになる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0057】
(1)
図5から
図7に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、中段の導入管7dを上段および下段の導入管7dに対して直交する姿勢で配置している。その他の構成は上記実施形態と同様になっている。この実施形態においても、上記実施形態と同様に作用、効果が得られる。
【0058】
(2)上記実施形態において、導入管7dの円周数ヶ所の噴射孔7d3それぞれの長手方向での相対的な配置については特に限定されるものではない。
【0059】
まず、導入管7dの円周数ヶ所の噴射孔7d3それぞれを、すべて長手方向で同じ位置に配置することが可能である。この場合、左右方向ならびに上下方向に並べて配置される多数の導入管7dにおいて、隣り合う2つの導入管7dの噴射孔7d3を向かい合わせるようにしてもよい。
【0060】
また、前記導入管7dそれぞれの噴射孔7d3を規則性の無い状態に配置することも可能である。
【0061】
(3)上記実施形態において、ごみ焼却炉1において二次燃焼空気を供給する領域の円筒壁部に、その円周数ヶ所から径方向内向きに二次燃焼空気を噴射させる手段を設けることが可能である。この場合、ごみ焼却炉1内を上昇する燃焼ガスの攪拌作用がさらに向上する。