(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.画像形成装置(第1実施形態)
1−1.全体構成
1−2.現像部の構成
1−3.ブロック構成
1−4.ガラス転移開始温度の特定手順
1−5.トナーの構成
1−6.動作
1−7.作用および効果
2.画像形成装置(第2実施形態)
2−1.構成
2−2.動作
2−3.作用および効果
3.画像形成装置(第3実施形態)
3−1.構成
3−2.動作
3−3.作用および効果
4.変形例
【0014】
<1.画像形成装置(第1実施形態)>
本発明の第1実施形態の画像形成装置に関して説明する。
【0015】
<1−1.全体構成>
まず、画像形成装置の全体構成に関して説明する。
【0016】
ここで説明する画像形成装置は、例えば、電子写真方式のフルカラープリンタであり、トナー(いわゆる現像剤)を用いて媒体M(後述する
図1参照)の表面に画像を形成する。媒体Mの材質は、特に限定されないが、例えば、紙およびフィルムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0017】
図1は、画像形成装置の平面構成を表している。この画像形成装置では、媒体Mは、搬送経路R1〜R5に沿って搬送可能である。
図1では、搬送経路R1〜R5のそれぞれを破線で示している。
【0018】
画像形成装置は、例えば、
図1に示したように、筐体1の内部に、トレイ10と、送り出しローラ20と、1または2以上の現像部30と、転写部40と、定着部50と、搬送ローラ61〜68と、搬送路切り替えガイド69,70と、本発明の一実施形態の「温度検出部」である温度センサ78とを備えている。
【0019】
[筐体]
筐体1は、例えば、金属材料および高分子材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。筐体1には、画像が形成された媒体Mを排出するためのスタッカ部2が設けられており、その画像が形成された媒体Mは、筐体1に設けられた排出口1Hから排出される。
【0020】
[トレイおよび送り出しローラ]
トレイ10は、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されており、媒体Mを収納している。送り出しローラ20は、例えば、Y軸方向に延在しており、そのY軸を中心として回転可能である。以降において説明する一連の構成要素のうち、名称中に「ローラ」という文言を含む構成要素は、送り出しローラ20と同様に、Y軸方向に延在していると共にY軸を中心として回転可能である。
【0021】
トレイ10には、例えば、複数の媒体Mが積層された状態で収納されている。このトレイ10に収納されている複数の媒体Mは、例えば、送り出しローラ20によりトレイ10から1つずつ取り出される。
【0022】
トレイ10の数および送り出しローラ20の数のそれぞれは、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。
図1では、例えば、トレイ10の数が1個であると共に送り出しローラ20の数が1個である場合を示している。
【0023】
[現像部]
現像部30は、トナーを用いて、そのトナーの付着処理(現像処理)を行う。具体的には、現像部30は、主に、静電潜像を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像にトナーを付着させる。
【0024】
ここでは、画像形成装置は、例えば、4個の現像部30(30K,30C,30M,30Y)を備えている。
【0025】
現像部30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されていると共に、後述する中間転写ベルト41の移動経路に沿って配列されている。ここでは、現像部30K,30C,30M,30Yは、例えば、中間転写ベルト41の移動方向(矢印F5)において、上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
【0026】
現像部30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、後述するカートリッジ39(
図2参照)に収納されているトナーの種類(色)が異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。現像部30K,30C,30M,30Yのそれぞれの構成に関しては、後述する。
【0027】
[転写部]
転写部40は、現像部30により現像処理されたトナーを用いて転写処理を行う。具体的には、転写部40は、主に、現像部30により静電潜像に付着されたトナーを媒体Mに転写させる。
【0028】
この転写部40は、例えば、中間転写ベルト41と、駆動ローラ42と、従動ローラ(アイドルローラ)43と、バックアップローラ44と、1または2以上の1次転写ローラ45と、2次転写ローラ46と、クリーニングブレード47とを含んでいる。
【0029】
中間転写ベルト41は、媒体Mにトナーが転写される前に、そのトナーが一時的に転写される媒体(中間転写媒体)であり、例えば、無端の弾性ベルトなどである。この中間転写ベルト41は、例えば、ポリイミドなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、中間転写ベルト41は、駆動ローラ42、従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれにより張架された状態において、その駆動ローラ42の回転に応じて移動可能である。
【0030】
駆動ローラ42は、例えば、後述するローラモータ85(
図3参照)の駆動力を利用して回転可能である。従動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれは、例えば、駆動ローラ42の回転に応じて回転可能である。
【0031】
1次転写ローラ45は、静電潜像に付着されたトナーを中間転写ベルト41に転写(1次転写)させる。この1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41を介して現像部30(後述する感光体ドラム32:
図2参照)に圧接されている。なお、1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41の移動に応じて回転可能である。
【0032】
ここでは、転写部40は、例えば、上記した4個の現像部30(30K,30C,30M,30Y)に対応して、4個の1次転写ローラ45(45K,45C,45M,45Y)を含んでいる。また、転写部40は、1個のバックアップローラ44に対応して、1個の2次転写ローラ46を含んでいる。
【0033】
2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41に転写されたトナーを媒体Mに転写(2次転写)させる。この2次転写ローラ46は、バックアップローラ44に対して圧接されており、例えば、金属製の芯材と、その芯材の外周面を被覆する発泡ゴム層などの弾性層とを含んでいる。なお、2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41の移動に応じて回転可能である。
【0034】
クリーニングブレード47は、中間転写ベルト41に対して圧接されており、その中間転写ベルト41の表面に残留した不要なトナーなどを掻き取る。
【0035】
[定着部]
定着部50は、転写部40により媒体Mに転写されたトナーを用いて定着処理を行う。具体的には、定着部50は、例えば、転写部40により媒体Mに転写されたトナーを加熱しながら加圧することにより、そのトナーを媒体Mに定着させる。
【0036】
この定着部50は、例えば、加熱ローラ51と、加圧ローラ52とを含んでいる。
【0037】
加熱ローラ51は、トナーを加熱する。この加熱ローラ51は、例えば、中空円筒状の金属芯と、その金属芯の表面を被覆する樹脂コートとを含んでいる。金属芯は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。樹脂コートは、例えば、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0038】
加熱ローラ51(金属芯)の内部には、例えば、後述するヒータ93(
図3参照)が設置されており、そのヒータ93は、例えば、ハロゲンランプなどである。加熱ローラ51の近傍には、例えば、その加熱ローラ51から離間されるように、後述するサーミスタ94(
図3参照)が配置されている。このサーミスタ94は、例えば、加熱ローラ51の表面温度を測定する。
【0039】
加圧ローラ52は、加熱ローラ51に対して圧接されており、トナーを加圧する。この加圧ローラ52は、例えば、金属棒などである。金属棒は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0040】
[搬送ローラ]
搬送ローラ61〜68のそれぞれは、媒体Mの搬送経路R1〜R5を介して互いに対向するように配置された一対のローラを含んでおり、送り出しローラ20により取り出された媒体Mを搬送させる。
【0041】
媒体Mの片面だけに画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61〜64により搬送経路R1,R2に沿って搬送される。また、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61〜68により搬送経路R1〜R5に沿って搬送される。
【0042】
[搬送路切り替えガイド]
搬送路切り替えガイド69,70は、媒体Mに形成される画像の様式(媒体Mの片面だけに画像が形成されるか、または媒体Mの両面に画像が形成されるか)などの条件に応じて、その媒体Mの搬送方向を切り替える。
【0043】
[温度センサ]
温度センサ78は、後述する電位差ΔVの補正動作を実行可能とするために、画像形成装置の内部の温度(装置内温度T)を検出する。この温度センサ78は、例えば、温度計および熱電対などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0044】
装置内温度Tは、後述するように、電位差ΔVの変動に起因するトナーの付着量(またはトナーの膜厚)の変動を判定するために測定される。電位差ΔVの変動に起因してトナーの付着量が変動している場合において、その電位差ΔVを補正することにより、トナーの付着量を適正量となるようにシフトさせるためである。
【0045】
これに伴い、温度センサ78の位置は、装置内温度Tを測定可能である位置であれば、特に限定されない。具体的には、温度センサ78は、例えば、装置内温度Tとして、トナーが収納されている現像部30の温度を直接的に測定するために、その現像部30自体に設けられていてもよい。または、温度センサ78は、例えば、装置内温度Tとして、トナーが収納されている現像部30の温度を間接的に測定するために、その現像部30の周辺に配置されていてもよい。
【0046】
ここでは、温度センサ78は、例えば、装置内温度Tとして、トナーが収納されている現像部30の温度を間接的に測定するために、中間転写ベルト41の近傍に配置されている。この場合には、温度センサ78は、例えば、装置内温度Tとして、転写部40(中間転写ベルト41)の温度を測定する。
【0047】
<1−2.現像部の構成>
次に、現像部30の構成に関して説明する。
【0048】
図2は、
図1に示した現像部30(30K,30C,30M,30Y)の平面構成を拡大している。
【0049】
現像部30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、
図2に示したように、筐体31の内部に、感光体ドラム32と、帯電ローラ33と、本発明の一実施形態の「現像剤担持体」である現像ローラ34と、本発明の一実施形態の「供給部材」である供給ローラ35と、現像ブレード36と、クリーニングブレード37と、光源38とを備えている。この筐体31には、例えば、カートリッジ39が着脱可能に装着されている。
【0050】
[感光体ドラム]
感光体ドラム32は、例えば、円筒状の導電性支持体と、その導電性支持体の外周面を被覆する光導電層とを含む有機系感光体であり、後述するドラムモータ87(
図3参照)などの駆動源を介して回転可能である。導電性支持体は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属パイプである。光導電層は、例えば、電荷発生層および電荷輸送層などを含む積層体である。感光体ドラム32の一部は、筐体31に設けられた開口部31K1から露出している。
【0051】
なお、感光体ドラム32を含む現像部30は、必要に応じて、上下に移動可能である。具体的には、現像部30は、例えば、画像の形成時において、感光体ドラム32が中間転写ベルト41に接触するまで下方に移動する。一方、現像部30は、例えば、画像の非形成時において、感光体ドラム32が中間転写ベルト41から離間されるように上方に移動する。
【0052】
[帯電ローラ]
帯電ローラ33は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを含んでいる。この帯電ローラ33は、感光体ドラム32を帯電させるために、その感光体ドラム32に対して圧接されている。
【0053】
[現像ローラ]
現像ローラ34は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性ウレタンゴム層とを含んでいる。この現像ローラ34は、供給ローラ35から供給されるトナーを担持すると共に、感光体ドラム32の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。
【0054】
[供給ローラ]
供給ローラ35は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性発泡シリコンスポンジ層とを含んでおり、いわゆるスポンジローラである。この供給ローラ35は、現像ローラ34に摺接しながら、感光体ドラム32の表面にトナーを供給する。
【0055】
[現像ブレード]
現像ブレード36は、現像ローラ34の表面に供給されたトナーの厚さを規制する。この現像ブレード36は、例えば、現像ローラ34から所定の距離を隔てた位置に配置されており、その現像ローラ34と現像ブレード36との間の距離(間隔)に基づいてトナーの厚さが制御される。また、現像ブレード36は、例えば、ステンレスなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0056】
[クリーニングブレード]
クリーニングブレード37は、感光体ドラム32の表面に残留した不要なトナーなどを掻き取る。このクリーニングブレード37は、例えば、感光体ドラム32の延在方向と略平行な方向に延在しており、その感光体ドラム32に対して圧接されている。また、クリーニングブレード37は、例えば、ウレタンゴムなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0057】
[光源]
光源38は、筐体31に設けられた開口部31K2を通じて感光体ドラム32の表面を露光することにより、その感光体ドラム32の表面に静電潜像を形成する露光装置である。この光源38は、例えば、発光ダイオード(LED)ヘッドであり、LED素子およびレンズアレイなどを含んでいる。LED素子およびレンズアレイは、そのLED素子から出力された光(照射光)が感光体ドラム32の表面において結像するように配置されている。
【0058】
[カートリッジ]
カートリッジ39は、トナーを収納している。カートリッジ39に収納されているトナーの種類(色)は、例えば、以下の通りである。
【0059】
ここでは、例えば、4種類(4色)のトナーが用いられている。具体的には、現像部30Kのカートリッジ38は、例えば、ブラックトナーを収納している。現像部30Cのカートリッジ38は、例えば、シアントナーを収納している。現像部30Mのカートリッジ38は、例えば、マゼンタトナーを収納している。現像部30Yのカートリッジ38は、例えば、イエロートナーを収納している。
【0060】
<1−3.ブロック構成>
次に、画像形成装置のブロック構成に関して説明する。
【0061】
図3および
図4のそれぞれは、画像形成装置のブロック構成を表している。
図3では、画像の形成動作に関わる主要な構成要素を示していると共に、
図4では、電位差ΔVの補正動作に関わる主要な構成要素を示している。ただし、
図3および
図4のそれぞれでは、既に説明した画像形成装置の構成要素の一部を示している。また、
図3および
図4では、一部の構成要素が重複している。
【0062】
図5は、温度差ΔTに基づく補正用の係数(第1補正係数である温度差係数C1)を決定するために用いられるテーブルデータTAB1を表している。
【0063】
[画像の形成動作に関わる主要な構成要素]
画像形成装置は、例えば、
図3に示したように、画像の形成動作に関わる主要な構成要素として、画像形成制御部71と、インターフェース(I/F)制御部72と、受信メモリ73と、編集メモリ74と、パネル部75と、操作部76と、各種センサ77と、帯電電圧制御部79と、光源制御部80と、現像電圧制御部81と、供給電圧制御部82と、転写電圧制御部83と、ローラ駆動制御部84と、ドラム駆動制御部86と、移動制御部88と、ベルト駆動制御部90と、定着制御部92とを備えている。
【0064】
画像形成制御部71は、主に、画像形成装置の全体の動作を制御する。この画像形成制御部71は、例えば、中央演算処理装置(CPU)などの制御回路のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0065】
インターフェース(I/F)制御部72は、主に、外部装置から画像形成装置に送信されたデータなどの情報を受信する。この外部装置は、例えば、画像形成装置のユーザが使用可能であるパーソナルコンピュータなどであり、その外部装置から画像形成装置に送信される情報は、例えば、画像形成するための画像データなどである。
【0066】
受信メモリ73は、主に、画像形成装置において受信されたデータなどの情報を格納する。
【0067】
編集メモリ74は、主に、画像データが編集処理されたデータ(編集画像データ)などを格納する。この編集画像データは、例えば、画像形成装置において画像を形成するために用いられる。この他、編集メモリ74は、画像形成装置の動作に必要なパラメータなどの情報を格納していてもよい。編集メモリ74に格納されている情報は、例えば、必要に応じて書き換え可能である。編集メモリ74に格納されている情報は、例えば、後述するガラス転移開始温度TGSおよびテーブルデータTAB1などである。このガラス転移開始温度TGSに関しては、後述する(
図6〜
図9参照)。
【0068】
パネル部75は、主に、ユーザが画像形成装置を操作するために必要な情報を表示する表示パネルなどを含んでいる。この表示パネルの種類は、特に限定されないが、例えば、液晶パネルなどである。操作部76は、主に、画像形成装置の操作時においてユーザにより操作されるボタンなどを含んでいる。
【0069】
各種センサ77は、主に、上記した温度センサ78などを含んでいる。ただし、各種センサ77の種類は、特に限定されないため、温度センサ78の他、湿度センサなどの他のセンサのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0070】
帯電電圧制御部79は、主に、帯電ローラ33に印加される電圧などを制御する。光源制御部80は、主に、光源38の露光動作などを制御する。
【0071】
現像電圧制御部81は、主に、現像ローラ34に印加される現像電圧V1などを制御する。具体的には、現像電圧制御部81は、例えば、現像ローラ34に一定の現像電圧V1を印加する。
【0072】
供給電圧制御部82は、主に、供給ローラ35に印加される供給電圧V2などを制御する。具体的には、供給電圧制御部82は、例えば、供給ローラ35に供給電圧V2を印加すると共に、その供給電圧V2を可変可能である。
【0073】
転写電圧制御部83は、主に、1次転写ローラ45に印加される電圧などを制御する。
【0074】
なお、
図3では図示内容を簡略化しているが、画像形成装置は、例えば、現像部30K,30C,30M,30Yに対応する4個の帯電電圧制御部79を含んでいる。具体的には、例えば、現像部30Kに搭載されている帯電ローラ33の印加電圧を制御する帯電電圧制御部79と、現像部30Cに搭載されている帯電ローラ33の印加電圧を制御する帯電電圧制御部79と、現像部30Mに搭載されている帯電ローラ33の印加電圧を制御する帯電電圧制御部79と、現像部30Yに搭載されている帯電ローラ33の印加電圧を制御する帯電電圧制御部79とである。
【0075】
ここで帯電電圧制御部79に関して説明したことは、例えば、光源制御部80、現像電圧制御部81、供給電圧制御部82および転写電圧制御部83に関しても同様である。すなわち、画像形成装置は、例えば、現像部30K,30C,30M,30Yに対応して、4個の光源制御部80と、4個の現像電圧制御部81と、4個の供給電圧制御部82と、4個の転写電圧制御部83とを含んでいる。
【0076】
ローラ駆動制御部84は、主に、ローラモータ85を介して帯電ローラ33、現像ローラ34および供給ローラ35などの一連のローラの回転動作などを制御する。ドラム駆動制御部86は、主に、ドラムモータ87を介して感光体ドラム32の回転動作などを制御する。移動制御部88は、主に、移動モータ89を介して現像部30の移動動作などを制御する。ベルト駆動制御部90は、主に、ベルトモータ91を介して中間転写ベルト41の移動動作などを制御する。定着制御部92は、主に、サーミスタ94により測定された温度に基づいてヒータ93の温度を制御すると共に、定着モータ95を介して加熱ローラ51および加圧ローラ52のそれぞれの回転動作などを制御する。
【0077】
帯電電圧制御部79に関して上記したことは、例えば、ローラ駆動制御部84、ドラム駆動制御部86および移動制御部88に関しても同様である。すなわち、画像形成装置は、例えば、4個のローラ駆動制御部84と、4個のドラム駆動制御部86と、4個の移動制御部88とを含んでいる。
【0078】
[電位差ΔVの補正動作に関わる主要な構成要素]
また、画像形成装置は、例えば、
図4に示したように、電位差ΔVの補正動作に関わる主要な構成要素として、時間計測部96と、時間判定部97と、温度差算出部98と、本発明の一実施形態の「第1係数決定部」である温度差係数決定部99と、補正量決定部100と、電位差補正部101とを備えている。画像形成制御部71、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100および電位差補正部101は、本発明の一実施形態の「制御部」である。
【0079】
時間計測部96は、主に、画像形成装置の電源が投入されたのち、経過時間Eを計測する。より具体的には、時間計測部96は、例えば、画像の形成開始後の経過時間Eを計測する。この時間計測部96は、例えば、タイマなどの計測機器のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0080】
なお、時間計測部96は、例えば、後述する電位差ΔVの補正動作が完了したのち、経過時間Eがリセットされた場合には、あらためて経過時間Eを計測し直すことが可能である。
【0081】
時間判定部97は、主に、所定の判定タイミングごとに、時間計測部96により計測された経過時間Eが目標時間ESに到達したか否かを判定する。この時間判定部97は、例えば、経過時間Eが目標時間ESに到達したと判定した際に、後述する電位差補正部101による電位差ΔVの補正動作を許可するために、その電位差補正部101に許可信号を出力する。
【0082】
温度差算出部98は、主に、温度センサ78により検出された装置内温度Tとガラス転移開始温度TGSとの温度差ΔT(=T−TGS)を算出する。ガラス転移開始温度TGSの詳細に関しては、後述する(
図6〜
図9参照)。
【0083】
温度差係数決定部99は、主に、温度差算出部98により算出された温度差ΔTに基づいて、その温度差ΔTに対応する温度差係数C1を決定する。具体的には、温度差係数決定部99は、例えば、あらかじめ編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB1に基づいて、温度差ΔTに対応する温度差係数C1を特定する。
【0084】
このテーブルデータTAB1は、例えば、
図5に示したように、温度差ΔTと温度差係数C1との対応関係を表すデータであり、その対応関係は、例えば、トナーの色ごとに設定されている。
図5に示した「K,C,M,Y」は、例えば、上記した4種類のトナーの種類を表している。具体的には、「K」はブラックトナー、「C」はシアントナー、「M」はマゼンタトナー、「Y」はイエロートナーをそれぞれ表している。このことは、後述するテーブルデータTAB2(
図14参照)およびテーブルデータTAB3(
図18参照)に関しても同様である。
図5では、例えば、温度差ΔTごとに設定される温度差係数C1の値がトナーの色に依存せずに共通している場合を示している。もちろん、温度差ΔTごとに設定される温度差係数C1の値は、例えば、トナーの色ごとに異なっていてもよい。
【0085】
補正量決定部100は、主に、温度差係数決定部99により決定された温度差係数C1に基づいて、現像電圧制御部81により現像ローラ34に印加される現像電圧V1と供給電圧制御部82により供給ローラ35に印加される現像電圧V2との電位差ΔV(=|V1−V2|)に関する補正量VRを決定する。
【0086】
具体的には、補正量決定部100は、例えば、温度差係数C1の値を補正量VRとすることにより、温度差ΔTに応じた適正な補正量VRを決定する。この補正量VRは、上記したように、温度差ΔTに起因する電位差ΔVの変動要因を加味して、その電位差ΔVの変動による影響が抑制または解消されるように設定された電圧シフト量である。
【0087】
電位差補正部101は、補正量決定部100により決定された補正量VRに基づいて、電位差ΔTを補正する。具体的には、電位差補正部101は、例えば、供給ローラ35に印加されている供給電圧V2を適宜変更可能である。この電位差補正部101が供給電圧V2を変更することにより、その供給電圧V2が現像電圧V1に対して変化するため、電位差ΔVが変化する。これにより、電位差ΔVが補正される。この場合には、例えば、供給電圧V2の変化に応じて電位差ΔVが小さくなるように補正され、より具体的には、変動後の電位差ΔVが変動前(設定当初)の電位差ΔVに近づくように補正される。この場合には、変動後の電位差ΔVが変動前の電位差ΔVに一致するように補正されることが好ましい。
【0088】
<1−4.ガラス転移開始温度の特定手順>
次に、ガラス転移開始温度TGSに関して説明する。
【0089】
図6および
図7のそれぞれは、トナーAに関するガラス転移開始温度TGSの特定手順を説明するために、そのトナーAを用いて測定されたDSC曲線の微分曲線(DDSC曲線D)を表している。また、
図8および
図9のそれぞれは、トナーBに関するガラス転移開始温度TGSの特定手順を説明するために、そのトナーBを用いて測定されたDSC曲線の微分曲線(DDSC曲線D)を表している。
【0090】
ただし、
図7では、
図6に示したDDSC曲線Dの一部を拡大していると共に、
図9では、
図8に示したDDSC曲線Dの一部を拡大している。
【0091】
ここで説明するトナーA,Bは、結着剤の種類が互いに異なることに起因してガラス転移温度Tgが互いに異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。具体的には、トナーAは、例えば、結着剤として非晶質ポリエステルと共に結晶性ポリエステルを含んでいるのに対して、トナーBは、例えば、結着剤として非晶質ポリエステルだけを含んでいる。
【0092】
ガラス転移開始温度TGSとは、上記したように、トナーのDDSC曲線D(横軸:温度(℃),縦軸:熱流微分値(μW/℃))に基づいてベースラインL1、ガラス転移開始判定ラインL2およびガラス転移開始判定接線Sを特定した際に、そのベースラインL1とガラス転移開始判定接線Sとの交点Bに対応する温度である。ただし、ベースラインL1は、熱量微分値がほぼ一定である初期のDDSC曲線Dに沿ったラインである。ガラス転移開始判定ラインL2は、ベースラインL1の熱流微分値の1.5倍に相当する熱流微分値のラインである。ガラス転移開始判定接線Sは、DDSC曲線Dとガラス転移開始判定ラインL2との交点AにおいてDDSC曲線Dに接する接線である。
【0093】
トナーAに関するガラス転移開始温度TGSの特定手順は、以下の通りである。
【0094】
最初に、DSC法を用いてトナーAを分析することにより、そのトナーAに関するDSC曲線を得る。このDSC曲線は、横軸に温度(℃)がプロットされると共に縦軸に熱流値(μW)がプロットされた曲線である。DSC曲線を得るために用いる分析装置の種類は、特に限定されないが、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量計 EXSTAR DSC6000などである。
【0095】
DSC法を用いてトナーAを分析する場合には、例えば、10℃/分の昇温速度でトナーAの温度を20℃から200℃まで昇温させたのち、90℃/分の降温速度でトナーAの温度を200℃から0℃まで降温させる。続いて、例えば、60℃/分の昇温速度でトナーAの温度を0℃から20℃まで昇温させたのち、10℃/分の昇温速度でトナーAの温度を20℃から200℃まで昇温させる。上記した説明するDSC曲線は、1回目の昇温過程において測定される。
【0096】
続いて、縦軸の熱流値を微分することにより、
図6に示したように、DDSC曲線Dを得る。このDDSC曲線Dは、横軸に温度(℃)がプロットされると共に縦軸に熱流微分値(μW/℃)がプロットされた曲線である。
【0097】
図6に示したDDSC曲線Dでは、熱流微分値は、序盤では温度の上昇に応じて変化しないが、中盤以降では温度の上昇にしたがって緩やかに増加したのちに緩やかに減少している。
【0098】
続いて、
図7に示したように、
図6に示したDDSC曲線Dの一部、具体的には熱流微分値が増加し始める箇所およびその近傍におけるDDSC曲線Dを拡大する。ここでは、例えば、温度が40.00℃〜50.00℃であると共に熱流の微分値が100.00μW/℃〜200.00μW/℃である範囲を拡大している。
【0099】
続いて、DDSC曲線Dに基づいて、ベースラインL1を特定する。このベースラインL1は、上記したように、熱流微分値がほぼ一定である初期部分に沿ったラインである。具体的には、ベースラインL1の特定方法は、例えば、JIS K7121に準拠する。
図7では、ベースラインL1を破線で示している。
【0100】
続いて、ベースラインL1に基づいて、ガラス転移開始判定ラインL2を特定する。このガラス転移開始判定ラインL2は、上記したように、ベースラインL1の熱流微分値の1.5倍に相当する熱流微分値のラインである。ベースラインL1の熱流微分値の1.5倍となるようにガラス転移開始判定ラインL2の熱流微分値を設定しているのは、経験上、トナーAに関するDDSC曲線Dを複数回取得した際、複数のベースラインL1の熱流微分値の平均値とその平均値の標準偏差の3倍との和よりも、各ベースラインL1の熱流微分値を1.5倍した値の方が大きくなるからである。この傾向は、トナーAに限らず、トナーBを含む多様なトナーに関して広く一般的に得られる。このため、平均値からのばらつき具合を表す指標であるシックスシグマの考え方から、ベースラインL1の熱流微分値の1.5倍となるようにガラス転移開始判定ラインL2の熱流微分値を設定することは、ガラス転移開始温度TGSを特定する上で有効であると考えられる。
図7では、ガラス転移開始判定ラインL2を破線で示している。
【0101】
続いて、DDSC曲線Dおよびガラス転移開始判定ラインL2に基づいて、ガラス転移開始判定接線Sを引く。このガラス転移開始判定接線Sは、上記したように、DDSC曲線Dとガラス転移開始判定ラインL2との交点Aにおいて、そのDDSC曲線Dに接する接線である。
図7では、ガラス転移開始判定接線Sを一点鎖線で示している。
【0102】
最後に、ガラス転移開始判定接線SとベースラインL1との交点Bを特定したのち、その交点Bに対応する温度をガラス転移開始温度TGSとする。これにより、DDSC曲線Dに基づいてベースラインL1、ガラス転移開始判定ラインL2、交点A,Bおよびガラス転移開始判定接線Sが特定されるため、その交点Bに基づいてガラス転移開始温度TGSが特定される。
【0103】
トナーAを用いた場合(
図6および
図7)のガラス転移開始温度TGSは、例えば、約46℃である。
【0104】
このガラス転移開始温度TGSは、トナーに関するDDSC曲線Dから求められる温度(本発明に固有のパラメータ)であり、電位差ΔVの変動に起因するトナーの付着量の変動を判定するために装置内温度Tと比較される基準値(閾値)である。すなわち、ガラス転移開始温度TGSは、上記したように、実際のトナーのガラス転移温度Tgよりも低い温度であるため、装置内温度Tの上昇に応じてトナーが実質的に相転移(ガラス転移)し始める前の温度である。
【0105】
上記したガラス転移開始温度TGSの特定手順は、トナーの種類が変更されても同様に適用可能である。
【0106】
具体的には、トナーAに代えてトナーBを用いた場合においても、
図8および
図9に示したように、ガラス転移開始温度TGSを特定可能である。
【0107】
トナーBに関するDDSC曲線Dでは、上記したトナーAに関するDDSC曲線Dとは異なり、
図8に示したように、熱流微分値は、序盤では温度の上昇に応じて変化しないが、中盤以降では温度の上昇にしたがって急激に増加したのちに急激に減少している。
【0108】
この場合においても、
図9に示したように、DDSC曲線Dに基づいてベースラインL1、ガラス転移開始判定ラインL2、交点A,Bおよびガラス転移開始判定接線Sを特定することにより、その交点Bに基づいてガラス転移開始温度TGSを特定することができる。
【0109】
トナーBを用いた場合(
図8および
図9)のガラス転移開始温度TGSは、例えば、約51℃である。
【0110】
<1−5.トナーの構成>
次に、トナーの構成に関して説明する。
【0111】
イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナーのそれぞれは、例えば、一成分現像方式のトナーであり、より具体的には、負帯電のトナーである、
【0112】
一成分現像方式とは、トナーに電荷を付与するためのキャリア(磁性粒子)を用いずに、そのトナー自身に適切な帯電量を付与する方式である。これに対して、二成分現像方式とは、上記したキャリアとトナーとを混合することにより、そのキャリアとトナーとの摩擦を利用してトナーに適切な帯電量を付与する方式である。
【0113】
イエロートナーは、例えば、イエロー着色剤を含んでいる。ただし、イエロートナーは、イエロー着色剤と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0114】
イエロー着色剤は、例えば、イエロー顔料およびイエロー染料(色素)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。イエロー顔料は、例えば、ピグメントイエロー74などである。イエロー染料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー74およびカドミウムイエローなどである。
【0115】
他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、結着剤、外添剤、離型剤および帯電制御剤などである。
【0116】
結着剤は、主に、イエロー着色剤などを結着させる。この結着剤は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂およびスチレン−ブタジエン系樹脂などの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0117】
中でも、結着剤は、ポリエステル系樹脂を含んでいることが好ましい。ポリエステル系樹脂は、紙などの媒体Mに対して高い親和性を有するため、結着剤としてポリエステル系樹脂を含むトナーは、媒体Mに定着しやすくなるからである。また、ポリエステル系樹脂は、比較的分子量が小さい場合においても高い物理的強度を有するため、結着剤としてポリエステル系樹脂を含むトナーは、優れた耐久性を有するからである。
【0118】
ポリエステル系樹脂の結晶状態は、特に限定されない。このため、ポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステル系樹脂でもよいし、非晶質ポリエステル系樹脂でもよいし、双方でもよい。中でも、ポリエステル系樹脂の種類は、結晶性ポリエステルであることが好ましい。イエロートナーが媒体Mにより定着しやすくなると共に、そのイエロートナーの耐久性がより向上するからである。
【0119】
このポリエステル系樹脂は、例えば、1または2以上のアルコールと1または2以上のカルボン酸との反応物(縮重合体)である。
【0120】
アルコールの種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のアルコールおよびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のアルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ソルビトールおよびグリセリンなどである。
【0121】
カルボン酸の種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のカルボン酸およびその誘導体などであることが好ましい。この2価以上のカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸およびドデセニル無水コハク酸などである。
【0122】
外添剤は、主に、イエロートナー同士の凝集などを抑制することにより、そのイエロートナーの流動性を向上させる。この外添剤は、例えば、無機材料および有機材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機材料は、例えば、疎水性シリカなどである。有機材料は、例えば、メラミン樹脂などである。
【0123】
離型剤は、主に、イエロートナーの定着性および耐オフセット性などを向上させる。この離型剤は、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物などのワックスのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この他、離型剤は、例えば、上記した一連のワックスのブロック共重合物などでもよい。
【0124】
脂肪族炭化水素系ワックスは、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスなどである。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物は、例えば、酸化ポリエチレンワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスは、例えば、カルナバワックスおよびモンタン酸エステルワックスなどである。脂肪酸エステル系ワックスの脱酸化物は、その脂肪酸エステル系ワックスのうちの一部または全部が脱酸化されたワックスであり、例えば、脱酸カルナバワックスなどである。
【0125】
帯電制御剤は、主に、イエロートナーの摩擦帯電性などを制御する。負帯電のイエロートナーに用いられる帯電制御剤は、例えば、アゾ系錯体、サリチル酸系錯体およびカリックスアレン系錯体などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0126】
マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナーのそれぞれは、例えば、イエロー着色剤に代えてマゼンタ着色剤、シアン着色剤およびブラック着色剤のそれぞれを含んでいることを除いて、上記したイエロートナーと同様の構成を有している。マゼンタ顔料は、例えば、キナクリドンなどである。シアン顔料は、例えば、フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3)などである。ブラック顔料は、例えば、カーボンなどである。マゼンタ染料は、例えば、C.I.ピグメントレッド238などである。シアン染料は、例えば、ピグメントブルー15:3などである。ブラック染料は、例えば、カーボンブラックなどであり、そのカーボンブラックは、例えば、ファーネスブラックおよびチャンネルブラックなどである。
【0127】
なお、トナーの製造方法は、特に限定されない。この製造方法は、例えば、粉砕法でもよいし、重合法でもよいし、それら以外の方法でもよい。もちろん、上記した製造方法のうちの2種類以上を併用してもよい。重合法は、例えば、溶解懸濁法などである。
【0128】
<1−6.動作>
次に、画像形成装置の動作に関して説明する。
【0129】
以下では、画像の形成動作に関して説明したのち、電位差ΔVの補正動作に関して説明する。
【0130】
[画像の形成動作]
媒体Mの表面に画像を形成する場合には、画像形成装置は、例えば、以下で説明するように、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理をこの順に行うと共に、必要に応じてクリーニング処理を行う。以下の説明では、随時、
図1〜
図3を参照する。
【0131】
(現像処理)
最初に、トレイ10に収納された媒体Mは、送り出しローラ20により取り出される。この送り出しローラ20により取り出された媒体Mは、搬送ローラ61,62により搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送される。
【0132】
現像処理では、現像部30Kにおいて、感光体ドラム32が回転すると、帯電ローラ33が回転しながら感光体ドラム32の表面に直流電圧を印加する。これにより、感光体ドラム32の表面が均一に帯電する。
【0133】
続いて、編集画像データに基づいて、光源38が感光体ドラム32の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム32の表面では、光の照射部分において表面電位が減衰(光減衰)するため、その感光体ドラム32の表面に静電潜像が形成される。
【0134】
一方、現像部30Kでは、カートリッジ39に収納されているブラックトナーが供給ローラ35に向けて放出される。
【0135】
供給電圧制御部82により供給ローラ35に供給電圧V2が印加されたのち、その供給ローラ35が回転する。これにより、カートリッジ39からブラックトナーが供給ローラ35の表面に供給される。
【0136】
現像電圧制御部81により現像ローラ34に現像電圧V1が印加されたのち、その現像ローラ34が供給ローラ35に対して圧接されながら回転する。これにより、電位差ΔV(=|V1−V2|)が発生するため、供給ローラ35の表面に供給されたブラックトナーが現像ローラ34の表面に吸着すると共に、そのブラックトナーが現像ローラ34の回転を利用して搬送される。この場合には、現像ローラ34の表面に吸着されているブラックトナーの一部が現像ブレード36により除去されるため、その現像ローラ34の表面に吸着されたブラックトナーの厚さが均一化される。
【0137】
現像ローラ34に対して圧接されながら感光体ドラム32が回転したのち、その現像ローラ34の表面に吸着されていたブラックトナーが感光体ドラム32の表面に移行する。これにより、感光体ドラム32の表面(静電潜像)にブラックトナーが付着する。
【0138】
(1次転写処理)
転写部40において、駆動ローラ42が回転すると、その駆動ローラ42の回転に応じて従動ローラ43およびバックアップローラ44が回転する。これにより、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する。
【0139】
1次転写処理では、1次転写ローラ45Kに電圧が印加されている。この1次転写ローラ45Kは、中間転写ベルト41を介して感光体ドラム32に対して圧接されているため、上記した現像処理において感光体ドラム32の表面(静電潜像)に付着されたブラックトナーは、中間転写ベルト41の表面に転写される。
【0140】
こののち、ブラックトナーが転写された中間転写ベルト41は、引き続き矢印F5の方向に移動する。これにより、現像部30C,30M,30Yおよび1次転写ローラ45C,45M,45Yにおいて、上記した現像部30Kおよび1次転写ローラ45Kと同様の手順により現像処理および1次転写処理が行われる。よって、中間転写ベルト41の表面にシアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーが転写される。
【0141】
具体的には、現像部30Cおよび1次転写ローラ45Cにより、中間転写ベルト41の表面にシアントナーが転写される。続いて、現像部30Mおよび1次転写ローラ45Mにより、中間転写ベルト41の表面にマゼンタトナーが転写される。続いて、現像部30Yおよび1次転写ローラ45Yにより、中間転写ベルト41の表面にイエロートナーが転写される。
【0142】
もちろん、実際に現像部30C,30M,30Yおよび1次転写ローラ45C,45M,45Yのそれぞれにおいて現像処理および1次転写処理が行われるかどうかは、画像を形成するために必要な色(色の組み合わせ)に応じて決定される。
【0143】
(2次転写処理)
搬送経路R1に沿って搬送される媒体Mは、バックアップローラ44と2次転写ローラ46との間を通過する。
【0144】
2次転写処理では、2次転写ローラ46に電圧が印加されている。この2次転写ローラ46は、媒体Mを介してバックアップローラ44に対して圧接されるため、上記した1次転写処理において中間転写ベルト41に転写されたトナーは、媒体Mに転写される。
【0145】
(定着処理)
2次転写処理において媒体Mにトナーが転写されたのち、その媒体Mは、引き続き搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送されるため、定着部50に投入される。
【0146】
定着処理では、加熱ローラ51の表面温度が所定の温度となるように制御されている。加熱ローラ51に対して圧接されながら加圧ローラ52が回転すると、その加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を通過するように媒体Mが搬送される。
【0147】
これにより、媒体Mの表面に転写されたトナーが加熱されるため、そのトナーが溶融する。しかも、溶融状態であるトナーが媒体Mに対して圧接されるため、そのトナーが媒体Mに対して強固に付着する。
【0148】
よって、編集画像データに応じて、媒体Mの表面のうちの特定の領域に特定のパターンとなるようにトナーが定着するため、画像が形成される。
【0149】
画像が形成された媒体Mは、搬送経路R2に沿って搬送ローラ63,64により矢印F2の方向に搬送される。これにより、媒体Mは、排出口1Hからスタッカ部2に排出される。
【0150】
なお、媒体Mの搬送手順は、その媒体Mの表面に形成される画像の様式に応じて変更される。
【0151】
例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3〜R5に沿って搬送ローラ65〜68により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド69,70により制御される。これにより、媒体Mの裏面(未だ画像が形成されていない面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が行われる。
【0152】
(クリーニング処理)
現像部30K,30C,30M,30Yのそれぞれでは、感光体ドラム32の表面に不要なトナーが残留する場合がある。この不要なトナーは、例えば、1次転写処理において用いられたトナーの一部であり、中間転写ベルト41に転写されずに感光体ドラム32の表面に残留したトナーなどである。
【0153】
そこで、現像部30K,30C,30M,30Yのそれぞれでは、クリーニングブレード37に対して圧接されている状態において感光体ドラム32が回転するため、その感光体ドラム32の表面に残留しているトナーがクリーニングブレード37により掻き取られる。よって、感光体ドラム32の表面から不要なトナーが除去される。
【0154】
また、転写部40では、1次転写処理において中間転写ベルト41の表面に移行したトナーの一部が2次転写処理において媒体Mの表面に移行されずに、その中間転写ベルト41の表面に残留する場合がある。
【0155】
そこで、転写部40では、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する際に、その中間転写ベルト41の表面に残留したトナーがクリーニングブレード47により掻き取られる。よって、中間転写ベルト41の表面から不要なトナーが除去される。
【0156】
これにより、画像形成動作が完了する。
【0157】
[電位差ΔVの補正動作]
画像形成装置は、上記した画像形成動作を行いながら、以下で説明するように、必要に応じて電位差ΔVの補正動作を行う。
【0158】
図10は、画像形成装置の動作を説明するための流れを表している。ただし、
図10では、画像形成装置が電位差ΔVの補正動作を1回だけ行う場合の流れを示している。以下の説明では、随時、
図1〜
図9を参照する。
【0159】
以下では、ブラックトナーを搭載している現像部30Kに関して電位差ΔVの補正動作を行う場合を例に挙げる。以下で説明する括弧書きのステップ番号は、
図10に示したステップ番号に対応している。
【0160】
画像形成装置の使用前において、その画像形成装置がガラス転移開始温度TGSに基づいて電位差ΔVの補正動作を行うことができるようにするために、トナーの種類(ガラス転移温度Tg)に応じて特定されたガラス転移開始温度TGSが編集メモリ74に格納されている。
【0161】
すなわち、画像を形成するためにトナーAを用いる場合には、上記したガラス転移開始温度TGS=46℃が編集メモリ74に登録されている。また、画像を形成するためにトナーBを用いる場合には、上記したガラス転移開始温度TGS=51℃が編集メモリ74に登録されている。
【0162】
また、温度差ΔTに基づいて温度差係数C1を選択できるようにするために、テーブルデータTAB1が編集メモリ74に格納されている。このテーブルデータTAB1では、例えば、温度差ΔTと感光体ドラム32の表面に対するトナーの付着量との関係などに基づいて、その温度差ΔTごとに適正な温度差係数C1があらかじめ決定されている。
【0163】
画像形成装置の電源が投入されると、時間計測部96は、経過時間Eの計測を開始する。こののち、必要に応じて、上記した画像の形成動作が行われることにより、媒体Mの表面に画像が形成される。画像の形成回数は、任意であるため、1回だけでもよいし、2回以上でもよい。この場合には、上記したように、現像電圧制御部81により現像ローラ34に現像電圧V1が印加されていると共に、供給電圧制御部82により供給ローラ35に供給電圧V2が印加されているため、電位差ΔV(=|V1−V2|)が発生している。現像電圧V1および供給電圧V2のそれぞれの値は、特に限定されない。具体的には、現像電圧V1は、例えば、−200Vであると共に、供給電圧V2は、例えば、−300Vである。
【0164】
電位差ΔVの補正動作を行う場合には、最初に、時間計測部96は、経過時間Eを計測する(ステップS101)。
【0165】
続いて、時間判定部97は、経過時間Eが目標時間ESに到達したか否かを判定する(ステップS102)。目標時間ESは、特に限定されないが、例えば、30分間などである。
【0166】
経過時間Eが目標時間ESに到達していない場合(ステップS102N)には、未だ電位差ΔVの補正動作を行うタイミングでないため、時間計測部96による時間計測動作に回帰する(ステップS101)。
【0167】
一方、経過時間Eが目標時間ESに到達している場合(ステップS102Y)には、電位差ΔVの補正動作を行うタイミングであるため、温度センサ78は装置内温度Tを検出する(ステップS103)。画像形成装置が使用されておらず、または画像形成装置が使用されていても使用頻度が少ないため、その画像形成装置が十分に冷却されている場合には、装置内温度Tは上昇しにくくなる傾向にある。これに対して、画像形成装置の使用頻度が高いため、現像処理を継続的に行っている現像部30が摩擦熱などに起因して発熱している場合には、装置内温度Tが上昇しやすくなる傾向にある。
【0168】
この場合には、時間判定部97は、後述する電位差補正部101による電位差ΔVの補正動作を許可するために、その電位差補正部101に許可信号を出力する。
【0169】
続いて、温度差算出部98は、編集メモリ74に格納されているガラス転移開始温度TGSに基づいて、装置内温度Tとガラス転移開始温度TGSとの温度差ΔT(=T−TGS)を算出する(ステップS104)。画像形成装置が使用されておらず、または画像形成装置が使用されていても使用頻度が少ない場合には、上記したように、装置内温度Tが上昇しにくくなるため、その装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以上になりにくい傾向にある。これに対して、画像形成装置の使用頻度が高い場合には、上記したように、装置内温度Tが上昇しやすくなるため、その装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以上になりやすい傾向にある。
【0170】
続いて、温度差係数決定部99は、温度差ΔTと、編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB1とに基づいて、その温度差ΔTに対応する温度差係数C1を決定する(ステップS105)。
【0171】
具体的には、例えば、装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも低いため、温度差ΔTが負の値である場合には、温度差係数決定部99は、テーブルデータTAB1のうちのブラックトナー(K)に対応する一連の値のうち、温度差ΔT≦0に対応する値(=2)を温度差係数C1として選択する。また、例えば、装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも高いため、温度差ΔTが正の値(例えば、温度差ΔT=3)である場合には、温度差係数決定部99は、テーブルデータTAB1のうちのブラックトナー(K)に対応する一連の値のうち、温度差ΔT=3に対応する値(=15)を温度差係数C1として選択する。
【0172】
温度差係数C1は、後述する電位差ΔVの補正量VRを決定する因子である。具体的には、例えば、装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以下である(温度差ΔTが負の値または0である)場合には、感光体ドラム32に対するトナーの付着量が大幅に変動する程度まで電位差ΔVが装置内温度Tに起因して変動していないと考えられる。この場合には、補正量VRの値を小さくするために、温度差係数C1も小さな値となるように設定されている。また、装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも高い(温度差ΔTが正の値である)場合には、感光体ドラム32に対するトナーの付着量が大幅に変動する程度まで電位差ΔVが装置内温度Tに起因して変動していると考えられる。この場合には、補正量VRの値を大きくするために、温度差係数C1は大きな値となるように設定されている。
【0173】
続いて、補正量決定部100は、温度差係数C1に基づいて、電位差ΔVを補正するために用いられる補正量VRを決定する(ステップS106)。
【0174】
具体的には、補正量決定部100は、例えば、温度差係数C1の値を補正量VRの値とするすることにより(VR=C1)、その補正量VRを決定する。
【0175】
最後に、電位差補正部101は、補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正する(ステップS107)。上記したように、経過時間Eが目標時間ESに到達している場合には、時間判定部97から電位差補正部101に許可信号が出力されているため、その電位差補正部101は、許可信号に応じて電位差ΔVの補正動作を行うことが可能である。
【0176】
具体的には、電位差補正部101は、例えば、現像ローラ34に一定の現像電圧V1が印加されている状態において、供給ローラ35に印加されている供給電圧V2を変更することにより、電位差ΔVを小さくなるようにシフトさせる。
【0177】
詳細には、上記したように、装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも高い(温度差ΔTが正の値である)場合には、その装置内温度Tに起因して電位差ΔVが増加するため、供給ローラ35から現像ローラ34に供給されるトナーの量が増加しやすくなる。この場合には、現像ローラ34の表面から感光体ドラム32の表面(静電潜像)に移行されるトナーの量(感光体ドラム32の表面に対するトナーの付着量)が増加すると、画像の濃度が所望の濃度からずれてしまう。もちろん、電位差ΔVの増加量は装置内温度Tに応じて変動するため、その装置内温度Tの変換に応じて電位差ΔVが変動すると、画像間において濃度がばらつきやすくなる。
【0178】
これに対して、装置内温度Tに起因して電位差ΔVが増加しても、その電位差ΔVを小さくなるように補正し、より具体的には、変動後の電位差ΔVの値を変動前(設定当初)の適正な電位差ΔVの値に近づくようにシフトさせることにより、供給ローラ35から現像ローラ34に供給されるトナーの量が維持されやすくなる。よって、トナーの付着量が維持されやすくなるため、画像の濃度が所望の濃度からずれにくくなると共に、画像間において濃度がばらつきにくくなる。
【0179】
これにより、電位差ΔVの補正動作が完了する。
【0180】
なお、装置内温度Tは経時的に変化するため、上記した電位差ΔVの補正動作は繰り返して行われることが好ましい。よって、電位差ΔVの補正動作を繰り返すために、電位差補正部101が電位差ΔVを補正したのち(ステップS107)、経過時間Eをリセットしてから、その経過時間Eの計測動作(ステップS101)に回帰することが好ましい。
【0181】
<1−7.作用および効果>
本実施形態の画像形成装置では、トナーに関するDDSC曲線Dに基づいてガラス転移開始温度TGSを特定しておき、温度差ΔT(=T−TGS)に基づいて電位差ΔTを補正している。よって、以下で説明する理由により、高品質な画像を安定して得ることができる。
【0182】
上記したように、画像の濃度は、感光体ドラム32の表面に対するトナーの付着量に依存するところ、そのトナーの付着量に影響を与える電位差ΔVは、装置内温度Tに起因して変動する。そこで、電位差ΔVの変動に起因するトナーの付着量の変動を抑制するために、上記した背景技術において説明したように、装置内温度Tが所定の閾値以上になった際に電位差ΔVを補正する比較例の画像形成装置が考えられる。
【0183】
しかしながら、比較例の画像形成装置では、閾値である装置内温度Tを境界として電位差ΔVが急激に変化するため、トナーの付着量が急激に変化することに起因して、画像の濃度が極端に変化する。この場合には、画像の濃度が変化したことに関して、画像形成装置の使用者が気付きやすくなる。また、何らかの要因に起因して装置内温度Tが閾値の前後において頻繁に変化すると、画像ごとに濃度がばらつきやすくなる。
【0184】
しかも、装置内温度Tが閾値未満である場合には、何らかの要因に起因して電位差ΔVが変化していたとしても、その電位差ΔVが補正されないため、濃度が所望の濃度からずれた状態のままで画像が継続的に形成されることになる。
【0185】
よって、比較例の画像形成装置では、画像の濃度が極端に変化すると共にばらつきやすくなるだけでなく、その濃度が所望の濃度からずれた状態のままで画像が継続的に形成されやすくなるため、高品質な画像を安定して得ることが困難である。
【0186】
これに対して、本実施形態の画像形成装置では、温度差ΔTに基づいて電位差ΔTを補正しているため、装置内温度Tの測定時ごとに電位差ΔVが補正される。
【0187】
この場合には、装置内温度Tが閾値以上になった際に電位差ΔVを補正する場合と比較して、その電位差ΔVの補正頻度が増加するため、その電位差ΔVが段階的に補正される。これにより、電位差ΔVの補正に応じて画像の濃度が変化したとしても、その濃度は極端に変化せずに徐々に変化する。この場合には、画像の濃度が変化したことに関して、画像形成装置の使用者が気付きにくくなる。また、濃度が所望の濃度からずれた状態のままで画像が形成され続けることも抑制される。
【0188】
しかも、電位差ΔVを補正するために、ガラス転移開始温度TGSに由来する温度差ΔTを加味しているため、トナーの凝集状態まで加味した上で電位差ΔVが適正に補正される。具体的には、ガラス転移開始温度TGSは、微視的なトナーの凝集物が発生し始める温度である。これにより、ガラス転移開始温度TGS以上では、トナーの状態が流動状態となるように変化し始めるため、そのトナーが微視的に凝集(軟凝集)し始めたのち、巨視的にも凝集し始めることになる。この場合には、装置内温度Tとガラス転移開始温度TGSとの関係(温度差ΔT)を加味した上で電位差ΔVを補正することにより、凝集物の発生に起因するトナーの移行しやすさ(またはトナーの移行しにくさ)まで加味した上で電位差ΔVが補正されるため、より適正な値となるように電位差ΔVが補正されやすくなる。これにより、電位差ΔVの補正精度が向上する。
【0189】
よって、本実施形態の画像形成装置では、画像の濃度が極端に変化しにくくなると共にばらつきにくくなるだけでなく、その濃度が所望の濃度からずれた状態のままで画像が形成され続けることは抑制される。しかも、ガラス転移開始温度TGSを加味しながら電位差ΔVを補正することにより、その電位差ΔVの補正精度が根本的に向上する。これにより、高品質な画像を安定して得ることができる。
【0190】
この他、本実施形態の画像形成装置では、温度差ΔTに基づいて温度差係数C1を決定したのち、その温度差係数C1に基づいて補正量VRを決定することにより、その補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正している。この場合には、補正量VRを決定するために温度差ΔT(ガラス転移開始温度TGS)が加味されるため、その補正量VRの決定精度が向上する。よって、より高い効果を得ることができる。
【0191】
また、時間計測部96および時間判定部97を用いることにより、経過時間Eが目標時間ESに到達した際に、電位差補正部101による電位差ΔVの補正動作を行っている。これにより、経過時間Eが目標時間ESに到達する度に電位差ΔVが補正されるため、経過時間Eが目標時間ESに到達したか否かに関係なく電位差ΔVを補正する場合と比較して、その電位差ΔVが補正される回数を適正に少なくすることができる。もちろん、経過時間Eに基づいて電位差ΔVを補正する場合には、その経過時間Eを変更することにより、その電位差ΔVが補正されるタイミング(間隔)を任意に調整することができる。
【0192】
ここで、電位差ΔVおよび装置内温度Tに起因してトナーの付着量が変動すると共に、その装置内温度T(ガラス転移開始温度TGS)を加味しながら補正量VRを決定することに応じて電位差ΔVの補正精度が向上することは、
図11および
図12から明らかである。
【0193】
図11は、電位差ΔV(V)とトナーの付着量(mg/cm
2 )との相関を表していると共に、
図12は、装置内温度T(℃)とトナーの付着量(mg/cm
2 )との相関を表している。
図12では、ガラス転移開始温度TGSを破線で示している。なお、トナーの付着量を測定するためには、例えば、現像ローラ34の表面に対してプローブ(面積=1cm
2 )を接近させると共に、電源を用いてプローブに直流電圧(=300V)を印加することにより、そのプローブにトナーを付着させたのち、そのトナーの付着量(mg)を測定する。上記した2つの相関を調べるために用いたトナーは、例えば、トナーAである。
【0194】
図11から明らかなように、トナーの付着量は、電位差ΔVに応じて変化する。具体的には、トナーの付着量は、電位差ΔVが増加するにしたがって増加する。この結果は、画像形成装置の使用開始後、装置内温度Tの変化に応じて電位差ΔVが変化すると、その電位差ΔVの変化に起因してトナーの付着量が変化するため、画像の濃度も変化することを表している。
【0195】
また、
図12から明らかなように、トナーの付着量は、装置内温度Tに応じて変化する。具体的には、トナーの付着量は、装置内温度Tが上昇するにしたがって、前半ではほとんど変化しないが、後半では急激に増加する。この結果は、画像形成装置の使用開始後、その画像形成装置が繰り返して使用されることに応じて装置内温度Tが変化すると、その装置内温度Tが相対的に低い場合にはトナーの付着量がほとんど変動しないため、画像の濃度もほとんど変動しないが、その装置内温度Tが相対的に高い場合にはトナーの付着量が大幅に増加するため、画像の濃度が急激に変化することを表している。
【0196】
特に、
図12から明らかなように、トナーの付着量が急激に増加し始める温度は、ガラス転移開始温度TGSとほぼ一致している。この結果は、装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以上になると、電位差ΔVの変動に起因してトナーの付着量が増加しやすくなるため、画像の濃度を安定化させるためには、その電位差ΔVの補正動作を利用してトナーの付着量を制御しなければならないことを表している。この結果を踏まえると、ガラス転移開始温度TGSを加味して補正量VRを決定することにより、電位差ΔVを積極的に補正する必要がない(装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以下である)場合には、補正量VRを小さな値となるように設定すればよい。これに対して、ガラス転移開始温度TGSを加味して補正量VRを決定することにより、電位差ΔVを積極的に補正する必要がある(装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも高い)場合には、補正量VRを大きな値となるように設定しなければならない。
【0197】
このため、
図5に示したテーブルデータTAB1では、温度差ΔTが0℃以下である場合には、相対的に小さな値となるように温度差係数C1が設定されているのに対して、温度差ΔTが0℃よりも高い場合には、相対的に大きな値となるように温度差係数C1が設定されている。
【0198】
<2.画像形成装置(第2実施形態)>
次に、本発明の第2実施形態の画像形成装置に関して説明する。
【0199】
<2−1.構成>
本実施形態の画像形成装置は、電位差ΔVの補正動作に関わる構成が異なると共に、その電位差ΔVの補正手順が異なることを除いて、第1実施形態の画像形成装置と同様の構成を有している。以下の説明では、随時、既に説明した第1実施形態の画像形成装置の構成要素を引用する。
【0200】
図13は、画像形成装置のブロック構成を表しており、
図4に対応している。
図14は、回数Fに基づく補正用の係数(第2補正係数である回数係数C2)を決定するために用いられるテーブルデータTAB2を表しており、
図5に対応している。
【0201】
電位差ΔVの補正動作に関わる画像形成装置の構成は、例えば、以下で説明することを除いて、電位差ΔVの補正動作に関わる第1実施形態の画像形成装置の構成(
図4参照)と同様である。
【0202】
具体的には、画像形成装置は、例えば、
図13に示したように、電位差ΔVの補正動作に関わる主要な構成要素として、さらに、回数計測部102と、本発明の一実施形態の「第2係数決定部」である回数係数決定部103とを備えている。画像形成制御部71、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102および回数係数決定部103は、本発明の一実施形態の「制御部」である。
【0203】
回数計測部102は、主に、トナーを用いて画像が形成された回数Fを計測する。この回数計測部102が回数Fを計測し始めるタイミングは、特に限定されないが、例えば、画像形成装置の電源投入直後および電位差ΔVの補正動作の完了後などである。これらのタイミングでは、例えば、後述するように、回数Fがリセットされるため、回数計測部102があらためて回数Fの計測を開始する。
【0204】
回数係数決定部103は、主に、回数計測部102により計測された回数Fに基づいて、その回数Fに対応する回数係数C2を決定する。具体的には、回数係数決定部103は、例えば、あらかじめ編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB2に基づいて、回数Fに対応する回数係数C2を特定する。
【0205】
このテーブルデータTAB2は、例えば、
図14に示したように、回数Fと回数係数C2との対応関係を表すデータであり、その対応関係は、例えば、トナーの色ごとに設定されている。
図14では、例えば、回数Fごとに設定される回数係数C2の値がトナーの色に依存せずに共通している場合を示している。もちろん、回数Fごとに設定される回数係数C2の値は、例えば、トナーの色ごとに異なっていてもよい。
【0206】
補正量決定部100は、主に、温度差係数決定部99により決定された温度差係数C1と、回数係数決定部103により決定された回数係数C2とに基づいて、補正量VRを決定する。
【0207】
具体的には、補正量決定部100は、例えば、温度差係数C1および回数係数C2に基づいて、その温度差係数C1と回数係数C2との積(=C1×C2)を演算することにより、温度差ΔTおよび回数Fに応じた適正な補正量VRを決定する。この補正量VRは、上記したように、温度差ΔTおよび回数Fのそれぞれに起因する電位差ΔVの変動要因を加味して、その電位差ΔVの変動による影響が抑制または解消されるように設定された電圧シフト量である。
【0208】
<2−2.動作>
画像形成装置の動作は、例えば、電位差ΔVの補正動作の内容が異なることを除いて、第1実施形態の画像形成装置の動作と同様である。この画像形成装置は、上記した画像形成動作を行いながら、以下で説明するように、必要に応じて電位差ΔVの補正動作を行う。
【0209】
図15は、画像形成装置の動作を説明するための流れを表しており、
図10に対応している。ただし、
図15では、画像形成装置が現像部30Kに関して電位差ΔVの補正動作を1回だけ行う場合の流れを示している。以下の説明では、随時、
図1〜
図5、
図13および
図14を参照する。以下で説明する括弧書きのステップ番号は、
図15に示したステップ番号に対応している。
【0210】
画像形成装置の使用前において、例えば、ガラス転移開始温度TGSおよびテーブルデータTAB1と共にテーブルデータTAB2が編集メモリ74に格納されている。
【0211】
画像形成装置の電源が投入されると、時間計測部96は、経過時間Eの計測を開始する。こののち、必要に応じて、上記した画像の形成動作が行われることにより、媒体Mの表面に画像が形成される。
【0212】
電位差ΔVの補正動作を行う場合には、最初に、時間計測部96は、経過時間Eを計測する(ステップS201)。続いて、時間判定部97は、経過時間Eが目標時間ESに到達したか否かを判定する(ステップS202)。
【0213】
経過時間Eが目標時間ESに到達していない場合(ステップS202N)には、未だ電位差ΔVの補正動作を行うタイミングでないため、時間計測部96による時間計測動作に回帰する(ステップS201)。一方、経過時間Eが目標時間ESに到達している場合(ステップS202Y)には、電位差ΔVの補正動作を行うタイミングであるため、その電位差ΔVの補正動作を行う。
【0214】
この場合には、第1実施形態の画像形成装置と同様の動作手順により、装置内温度Tに基づいて温度差ΔTを算出したのち、その温度差ΔTに基づいて温度差係数C1を決定する。すなわち、温度センサ78は、装置内温度Tを検出する(ステップS203)。続いて、温度差算出部98は、温度センサ78により検出された装置内温度Tと、編集メモリ74に格納されているガラス転移開始温度TGSとに基づいて、温度差ΔT(=T−TGS)を算出する(ステップS204)。続いて、温度差係数決定部99は、温度差ΔTと、編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB1とに基づいて、その温度差ΔTに対応する温度差係数C1を決定する(ステップS205)。
【0215】
また、上記した温度差係数C1の決定動作と並行して、回数係数C2を決定する。
【0216】
具体的には、回数計測部102は、画像が形成された回数Fを計測する(ステップS206)。
【0217】
続いて、回数係数決定部103は、回数計測部102により計測された回数Fと、編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB2とに基づいて、その回数Fに対応する回数係数C2を決定する(ステップS207)。
【0218】
具体的には、例えば、回数Fが50回未満である場合には、回数係数決定部103は、テーブルデータTAB2のうちのブラックトナー(K)に対応する一連の値のうち、回数F=〜50に対応する値(=0.5)を回数係数C2として選択する。また、例えば、回数Fが150回である場合には、回数係数決定部103は、テーブルデータTAB2のうちのブラックトナー(K)に対応する一連の値のうち、回数F=〜150に対応する値(=0.8)を回数係数C2として選択する。
【0219】
回数係数C2は、上記した温度差係数C1と同様に、電位差ΔVの補正量VRを決定する因子である。具体的には、例えば、回数Fが少ない場合には、感光体ドラム32に対するトナーの付着量が大幅に変動する程度まで電位差ΔVが回数Fに起因して変動していないと考えられる。この場合には、補正量VRの値を小さくするために、回数係数C2は小さな値となるように設定されている。また、回数Fが多い場合には、感光体ドラム32に対するトナーの付着量が大幅に変動する程度まで電位差ΔVが回数Fに起因して変動していると考えられる。この場合には、補正量VRの値を大きくするために、回数数C2は大きな値となるように設定されている。
【0220】
続いて、補正量決定部100は、温度差係数C1および回数係数C2に基づいて、補正量VRを決定する(ステップS208)。具体的には、補正量決定部100は、例えば、温度差係数C1と回数係数C2との積(=C1×C2)を算出することにより、補正量VRを決定する。
【0221】
最後に、電位差補正部101は、補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正する(ステップS209)。すなわち、電位差補正部82は、例えば、上記したように、許可信号に応じて、現像電圧V1が一定である場合において供給電圧V2を変更することにより、電位差ΔVを小さくなるようにシフトさせる。
【0222】
詳細には、上記したように、回数Fが多い場合には、現像部30の内部において発生した摩擦熱などに起因して装置内温度Tが上昇しやすいため、電位差ΔVが増加すると共に、その電位差ΔVの増加に応じてトナーの付着量が増加しやすくなる。これにより、画像の濃度が所望の濃度からずれやすくなると共に、画像間において濃度がばらつきやすくなる。
【0223】
これに対して、装置内温度Tに起因して電位差ΔVが増加しても、その電位差ΔVを小さくなるようにシフトさせることにより、トナーの付着量が維持されやすくなる。よって、画像の濃度が所望の濃度からずれにくくなると共に、画像間において濃度がばらつきにくくなる。
【0224】
これにより、電位差ΔVの補正動作が完了する。
【0225】
なお、装置内温度Tおよび回数Fのそれぞれは経時的に変化するため、上記した電位差ΔVの補正動作は繰り返して行われることが好ましい。よって、電位差ΔVの補正動作を繰り返すために、電位差補正部101が電位差ΔVを補正したのち(ステップS209)、経過時間Eおよび回数Fのそれぞれをリセットしてから、その経過時間Eの計測動作(ステップS201)に回帰することが好ましい。
【0226】
<2−3.作用および効果>
本実施形態の画像形成装置では、温度差ΔTおよび回数Fに基づいて電位差ΔTを補正している。
【0227】
この場合には、電位差ΔVを補正するために、温度差ΔTに起因する電位差ΔVの変動要因だけでなく、回数Fに起因する電位差ΔVの変動要因も加味される。これにより、温度差ΔTだけに基づいて電位差ΔVを補正する場合と比較して、その補正の精度が向上する。よって、より高品質な画像をより安定して得ることができる。
【0228】
特に、温度差ΔTに基づいて温度差係数C1を決定すると共に、回数Fに基づいて回数係数C2を決定したのち、その温度差係数C1および回数係数C2に基づいて補正量VRを決定することにより、その補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正している。この場合には、補正量VRを決定するために温度差ΔT(ガラス転移開始温度TGS)だけでなく回数Fも加味されるため、その補正量VRの決定精度が向上する。よって、より高い効果を得ることができる。
【0229】
本実施形態の画像形成装置に関する他の作用および効果は、第1実施形態の画像形成装置に関する作用および効果と同様である。
【0230】
ここで、回数Fに起因してトナーの付着量が変動すると共に、その回数Fを加味しながら補正量VRを決定することに応じて電位差ΔVの補正精度が向上することは、
図16から明らかである。
【0231】
図16は、画像の形成速度を変化させた場合における電位差ΔV(V)とトナーの付着量(mg/cm
2 )との相関を表している。
図16では、ガラス転移開始温度TGSを破線で示している。ここでは、画像の形成速度を200回/30分間および50回/30分間としている。上記した相関を調べるために用いたトナーは、例えば、トナーAである。
【0232】
図16から明らかなように、トナーの付着量は、画像の形成速度(言い替えれば、単位時間当たりにおいて画像が形成された回数F)に依存せずに、装置内温度Tが上昇するにしたがって、前半ではほとんど変化しないが、後半では急激に増加する。しかしながら、トナーの付着量が後半において急激に増加する傾向は、回数Fが少ない場合よりも回数Fが多い場合においてより顕著になる。すなわち、回数Fが多い場合におけるトナーの付着量は、回数Fが少ない場合におけるトナーの付着量よりも著しく増大しやすくなる。
【0233】
この場合においても、トナーの付着量が急激に増加し始める温度は、回数Fに依存せずに、ガラス転移開始温度TGSとほぼ一致している。よって、
図12および
図16に示した結果を踏まえると、装置内温度T(ガラス転移開始温度TGS)共に回数Fを加味して補正量VRを決定することにより、電位差ΔVを積極的に補正する必要がない(装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以下であると共に回数Fが少ない)場合には、補正量VRを小さな値となるように設定すればよい。これに対して、装置内温度T(ガラス転移開始温度TGS)共に回数Fを加味して補正量VRを決定することにより、電位差ΔVを積極的に補正する必要がある(装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも高いと共に回数Fが多い)場合には、補正量VRを大きな値となるように設定しなければならない。
【0234】
このため、
図14に示したテーブルデータTAB2では、回数Fが少ない場合には、相対的に小さな値となるように回数係数C2が設定されているのに対して、回数Fが多い場合には、相対的に大きな値となるように回数係数C2が設定されている。
【0235】
<3.画像形成装置(第3実施形態)>
次に、本発明の第3実施形態の画像形成装置に関して説明する。
【0236】
<3−1.構成>
本実施形態の画像形成装置は、電位差ΔVの補正動作に関わる構成が異なると共に、その電位差ΔVの補正手順が異なることを除いて、第2実施形態の画像形成装置と同様の構成を有している。以下の説明では、随時、既に説明した第2実施形態の画像形成装置の構成要素を引用する。
【0237】
図17は、画像形成装置のブロック構成を表しており、
図13に対応している。
図18は、印字率Rに基づく補正用の係数(第3補正係数である印字率係数C3)を決定するために用いられるテーブルデータTAB3を表しており、
図14に対応している。
【0238】
電位差ΔVの補正動作に関わる画像形成装置の構成は、例えば、以下で説明することを除いて、電位差ΔVの補正動作に関わる第2実施形態の画像形成装置の構成(
図13参照)と同様である。
【0239】
具体的には、画像形成装置は、例えば、
図17に示したように、電位差ΔVの補正動作に関わる主要な構成要素として、さらに、ドット数計測部104と、印字率算出部105と、本発明の一実施形態の「第3係数決定部」である印字率係数決定部106とを備えている。画像形成制御部71、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102、回数係数決定部103、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106は、本発明の一実施形態の「制御部」である。
【0240】
ドット数計測部104は、主に、トナーを用いた画像の形成に伴うドット数Dを計測する。ドット数Dとは、画像データ(または編集画像データ)を光源38の発光ドット数に変換した値である。このドット数計測部104がドット数Dを計測し始めるタイミングは、特に限定されないが、例えば、画像形成装置の電源投入直後および電位差ΔVの補正動作の完了後などである。これらのタイミングでは、例えば、後述するように、ドット数Dがリセットされるため、ドット数計測部104があらためてドット数Dの計測を開始する。
【0241】
印字率算出部105は、主に、ドット数計測部104により計測されたドット数Dに基づいて、印字率Rを算出する。具体的には、印字率算出部105は、例えば、所定の面積内における全ドット数DAとドット数Dとに基づいて、印字率R(%)=(ドット数D/全ドット数DA)×100を演算する。所定の面積とは、例えば、媒体Mの表面のうち、画像を形成することが可能である領域の面積である。全ドット数DAとは、所定の面積内において、画像を形成するために用いることが可能である全てのドットの数である。ドット数Dとは、所定の面積内において、実際に画像を形成するために用いられた全てのドットの数である。もちろん、画像形成装置を用いて複数の媒体Mに画像が形成される場合には、その複数の媒体Mに関して印字率Rが積算される。なお、所定の面積は、例えば、感光体ドラム32の3回転分に相当する面積などでもよい。
【0242】
印字率係数決定部106は、主に、印字率算出部105により算出された印字率Rに基づいて、その印字率Rに対応する印字率係数C3を決定する。具体的には、印字率係数決定部106は、例えば、あらかじめ編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB3に基づいて、印字率Rに対応する印字率係数C3を特定する。
【0243】
このテーブルデータTAB3は、例えば、
図18に示したように、印字率Rと印字率係数C3との対応関係を表すデータであり、その対応関係は、例えば、トナーの色ごとに設定されている。
図18では、例えば、印字率Rごとに設定される印字率係数C3の値がトナーの色に依存せずに共通している場合を示している。もちろん、印字率Rごとに設定される印字率係数C3の値は、例えば、トナーの色ごとに異なっていてもよい。
【0244】
補正量決定部100は、主に、温度差係数決定部99により決定された温度差係数C1と、回数係数決定部103により決定された回数係数C2と、印字率係数決定部106により決定された印字率係数C3とに基づいて、補正量VRを決定する。
【0245】
具体的には、補正量決定部100は、例えば、温度差係数C1、回数係数C2および印字率係数C3に基づいて、その温度差係数C1と回数係数C2と印字率係数C3との積(=C1×C2×C3)を演算することにより、温度差ΔT、回数Fおよび印字率Rに応じた適切な補正量VRを決定する。この補正量VRは、上記したように、温度差ΔT、回数Fおよび印字率Rのそれぞれに起因する電位差ΔVの変動要因を加味して、その電位差ΔVの変動による影響が抑制または解消するように設定された電圧シフト量である。
【0246】
<3−2.動作>
画像形成装置の動作は、例えば、電位差ΔVの補正動作の内容が異なることを除いて、第2実施形態の画像形成装置の動作を同様である。この画像形成装置は、上記した画像形成動作を行いながら、以下で説明するように、必要に応じて電位差ΔVの補正動作を行う。
【0247】
図19は、画像形成装置の動作を説明するための流れを表しており、
図15に対応している。ただし、
図19では、画像形成装置が現像部30Kに関して電位差ΔVの補正動作を1回だけ行う場合の流れを示している。以下の説明では、随時、
図1〜
図5、
図17および
図18を参照する。
【0248】
画像形成装置の使用前において、例えば、ガラス転移開始温度TGSおよびテーブルデータTAB1,TAB2と共にテーブルデータTAB3が編集メモリ74に格納されている。
【0249】
画像形成装置の電源が投入されると、時間計測部96は、経過時間Eの計測を開始する。こののち、必要に応じて、上記した画像の形成動作が行われることにより、媒体Mの表面に画像が形成される。
【0250】
電位差ΔVの補正動作を行う場合には、最初に、時間計測部96は、経過時間Eを計測する(ステップS301)。続いて、時間判定部97は、経過時間Eが目標時間ESに到達したか否かを判定する(ステップS302)。
【0251】
経過時間Eが目標時間ESに到達していない場合(ステップS302N)には、未だ電位差ΔVの補正動作を行うタイミングでないため、時間計測部96による時間計測動作に回帰する(ステップS301)。一方、経過時間Eが目標時間ESに到達している場合(ステップS302Y)には、電位差ΔVの補正動作を行うタイミングであるため、その電位差ΔVの補正動作を行う。
【0252】
この場合には、第1実施形態の画像形成装置と同様の動作手順により、装置内温度Tに基づいて温度差ΔTを算出したのち、その温度差ΔTに基づいて温度差係数C1を決定する。すなわち、温度センサ78は、装置内温度Tを検出する(ステップS303)。続いて、温度差算出部98は、温度センサ78により検出された装置内温度Tと、編集メモリ74に格納されているガラス転移開始温度TGSとに基づいて、温度差ΔT(=T−TGS)を算出する(ステップS304)。続いて、温度差係数決定部99は、温度差ΔTと、編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB1とに基づいて、その温度差ΔTに対応する温度差係数C1を決定する(ステップS305)。
【0253】
また、上記した温度差係数C1の決定動作と並行して、第2実施形態の画像形成装置と同様の動作手順により、回数Fに基づいて回数係数C2を決定する。すなわち、回数計測部102は、画像が形成された回数Fを計測する(ステップS306)。続いて、回数係数決定部103は、回数計測部102により計測された回数Fと、編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB2とに基づいて、その回数Fに対応する補正用の回数係数C2を決定する(ステップS307)。
【0254】
さらに、上記した温度差係数C1の決定動作および回数係数C2の決定動作と並行して、印字率係数C3を決定する。
【0255】
具体的には、ドット数計測部104は、画像の形成に伴うドット数Dを計測する(ステップS308)。
【0256】
続いて、印字率算出部105は、ドット数計測部104により計測されたドット数Dに基づいて、印字率Rを算出する(ステップS309)。
【0257】
続いて、印字率係数決定部106は、印字率算出部105により算出された印字率Rと、編集メモリ74に格納されているテーブルデータTAB3とに基づいて、その印字率Rに対応する印字率係数C3を決定する(ステップS310)。
【0258】
具体的には、例えば、印字率Rが1%未満である場合には、印字率係数決定部106は、テーブルデータTAB3のうちのブラックトナー(K)に対応する一連の値のうち、印字率R=〜1に対応する値(=1.0)を印字率係数C3として選択する。また、例えば、印字率Rが30%よりも大きいと共に50%以下である場合には、印字率係数決定部106は、テーブルデータTAB3のうちのブラックトナー(K)に対応する一連の値のうち、印字率R=〜50に対応する値(=0.5)を印字率係数C3として選択する。
【0259】
印字率係数C3は、上記した温度差係数C1および回数係数C2と同様に、電位差ΔVの補正量VRを決定する因子である。
【0260】
具体的には、例えば、印字率Rが小さい場合には、感光体ドラム32に対するトナーの付着量が大幅に変動する程度まで電位差ΔVが印字率Rに起因して変動していると考えられる。トナーの消費量が少ないことに起因して、感光体ドラム32の回転などに起因する摩擦熱の発生量が増大するため、装置内温度Tが上昇しやすいからである。そこで、補正量VRの値を大きくするために、印字率係数C3は大きな値となるように設定されている。
【0261】
また、印字率Rが大きい場合には、感光体ドラム32に対するトナーの付着量が大幅に変動する程度まで電位差ΔVが回数Fに起因して変動していないと考えられる。トナーの消費量が多いことに起因して、感光体ドラム32の回転などに起因する摩擦熱の発生量が少ないため、装置内温度Tが上昇しにくいからである。そこで、補正量VRの値を小さくするために、印字率係数C3は小さな値となるように設定されている。
【0262】
続いて、補正量決定部100は、温度差係数C1、回数係数C2および印字率係数C3に基づいて、補正量VRを決定する(ステップS311)。具体的には、補正量決定部100は、例えば、温度差係数C1と回数係数C2と印字率係数C3との積(=C1×C2×C3)を演算することにより、補正量VRを決定する。
【0263】
最後に、電位差補正部101は、補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正する(ステップS312)。すなわち、電位差補正部101は、例えば、上記したように、現像電圧V1が一定である場合において供給電圧V2を変更することにより、電位差ΔVを小さくなるようにシフトさせる。
【0264】
詳細には、上記したように、印字率Rが小さい場合には、感光体ドラム32と媒体Mとの摩擦熱などに起因して装置内温度Tが上昇しやすいため、電位差ΔVが増加すると共に、その電位差ΔVの増加に応じてトナーの付着量が増加しやすくなる。これにより、画像の濃度が所望の濃度からずれやすくなると共に、画像間において濃度がばらつきやすくなる。
【0265】
これに対して、装置内温度Tに起因して電位差ΔVが増加しても、その電位差ΔVを小さくなるようにシフトさせることにより、トナーの付着量が維持されやすくなる。これにより、画像の濃度が所望の濃度からずれにくくなると共に、画像間において濃度がばらつきにくくなる。
【0266】
これにより、電位差ΔVの補正動作が完了する。
【0267】
なお、温度T、回数Fおよび印字率Rのそれぞれは経時的に変化するため、上記した電位差ΔVの補正動作は、繰り返して行われることが好ましい。よって、電位差ΔVの補正動作を繰り返すために、電位差補正部101が電位差ΔVを補正したのち(ステップS312)、経過時間E、回数Fおよび印字率Rのそれぞれをリセットしてから、その経過時間Eの計測動作(ステップS301)に回帰することが好ましい。
【0268】
<3−3.作用および効果>
本実施形態の画像形成装置では、温度差ΔT、回数Fおよび印字率Rに基づいて電位差ΔVを補正している。
【0269】
この場合には、電位差ΔVを補正するために、温度差ΔTおよび回数Fのそれぞれに起因する電位差ΔVの変動要因だけでなく、印字率Rに起因する電位差ΔVの変動要因も加味される。これにより、温度差ΔTおよび回数Fだけに基づいて電位差ΔVを補正する場合と比較して、その補正の精度が向上する。よって、さらに高品質な画像をさらに安定して得ることができる。
【0270】
特に、温度差ΔTに基づいて温度差係数C1を決定し、回数Fに基づいて回数係数C2を決定し、印字率Rに基づいて印字率係数C3を決定したのち、その温度差係数C1、回数係数C2および印字率係数C3に基づいて補正量VRを決定することにより、その補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正している。この場合には、補正量VRを決定するために温度差ΔT(ガラス転移開始温度TGS)および回数Fだけでなく印字率Rも加味されるため、その補正量VRの決定精度が向上する。よって、より高い効果を得ることができる。
【0271】
本実施形態の画像形成装置に関する他の作用および効果は、第2実施形態の画像形成装置に関する作用および効果と同様である。
【0272】
ここで、印字率Rに起因してトナーの付着量が変動すると共に、その印字率Rを加味しながら補正量VRを決定することに応じて電位差ΔVの補正精度が向上することは、
図20から明らかである。
【0273】
図20は、印字率Rを変化させた場合における電位差ΔV(V)とトナーの付着量(mg/cm
2 )との相関を表している。
図20では、ガラス転移開始温度TGSを破線で示している。ここでは、印字率Rを0.3%、10%および50%とした。上記した相関を調べるために用いたトナーは、例えば、トナーAである。
【0274】
図20から明らかなように、トナーの付着量は、印字率Rに依存せずに、装置内温度Tが上昇するにしたがって、前半ではほとんど変化しないが、後半では急激に増加する。しかしながら、トナーの付着量が後半において急激に増加する傾向は、印字率Rが大きい場合よりも印字率Rが小さい場合においてより顕著になる。すなわち、印字率Rが小さい場合におけるトナーの付着量は、印字率Rが大きい場合におけるトナーの付着量よりも著しく増大しやすくなる。
【0275】
この場合においても、トナーの付着量が急激に増加し始める温度は、印字率Rに依存せずに、ガラス転移開始温度TGSとほぼ一致している。よって、
図12、
図16および
図20に示した結果を踏まえると、装置内温度T(ガラス転移開始温度TGS)および回数Fと共に印字率Rを加味して補正量VRを決定することにより、電位差ΔVを積極的に補正する必要がない(装置内温度Tがガラス転移開始温度TGS以下であり、回数Fが少なく、印字率Rが大きい)場合には、補正量VRを小さな値となるように設定すればよい。これに対して、電位差ΔVを積極的に補正する必要がある(装置内温度Tがガラス転移開始温度TGSよりも高く、回数Fが多く、印字率Rが大きい)場合には、補正量VRを大きな値となるように設定しなければならない。
【0276】
このため、
図18に示したテーブルデータTAB3では、印字率Rが小さい場合には、相対的に大きな値となるように印字率係数C3が設定されているのに対して、印字率Rが大きい場合には、相対的に小さな値となるように印字率係数C3が設定されている。
【0277】
<4.変形例>
画像形成装置の構成および動作は、以下で説明するように、適宜変更可能である。
【0278】
[変形例1]
具体的には、例えば、第1実施形態では温度差係数C1に基づいて補正量VRを決定し、第2実施形態では温度差係数C1および回数係数C2に基づいて補正量VRを決定し、第3実施形態では温度差係数C1、回数係数C2および印字率係数C3に基づいて補正量VRを決定している。
【0279】
しかしながら、温度差係数C1および印字率係数C3に基づいて補正量VRを決定してもよい。この場合には、例えば、
図4および
図17に対応する
図21に示したように、画像形成装置は、電位差ΔVの補正動作に関わる主要な構成要素として、温度センサ78と共に、温度差算出部98と、温度差係数決定部99と、補正量決定部100と、電位差補正部101と、ドット数計測部104と、印字率算出部105と、印字率係数決定部106とを備えている。画像形成制御部71、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106は、本発明の一実施形態の「制御部」である。
【0280】
これ以外の画像形成装置の構成は、第1実施形態および第3実施形態のそれぞれに示した画像形成装置の構成と同様である。
【0281】
この場合には、
図10および
図19に対応する
図22に示したように、画像形成装置は、経過時間Eの計測および判定を行ったのち(ステップS401,S402)、まず、第1実施形態において説明した動作手順により、温度差係数C1の決定動作を行うと共に(ステップS403〜S405)、第3実施形態において説明した動作手順により、印字率係数C3の決定動作を行う(ステップS406〜S408)。続いて、補正量決定部100は、温度差係数C1および印字率係数C3に基づいて補正量VRを決定したのち(ステップS409)、電位差補正部101は、補正量VRに基づいて電位差ΔVを補正する(ステップS410)。具体的には、補正量決定部100は、温度差係数C1と印字率係数C3との積(=C1×C3)を演算することにより、補正量VRを決定する。
【0282】
これ以外の画像形成装置の動作は、第1実施形態および第3実施形態のそれぞれに示した画像形成装置の動作と同様である。
【0283】
この場合には、電位差ΔVを補正するために、温度差ΔTに起因する電位差ΔVの変動要因だけでなく、印字率Rに起因する電位差ΔVの変動要因も加味される。これにより、温度差ΔTだけに基づいて電位差ΔVを補正する場合と比較して、その補正の精度が向上する。よって、より高品質な画像をより安定に得ることができる。
【0284】
[変形例2]
また、例えば、第1〜第3実施形態では、時間計測部96および時間判定部97を用いることにより、経過時間Eが目標時間ESに到達した際に、電位差補正部101による電位差ΔVの補正動作を行っている。
【0285】
しかしながら、時間計測部96および時間判定部97を用いずに、経過時間Eに関係なく電位差補正部101による電位差ΔVの補正動作を行ってもよい。この場合においても、電位差ΔVの補正精度などが向上するため、同様の効果を得ることができる。
【0286】
ただし、上記したように、電位差ΔVの補正動作が行われる回数を少なくするためには、時間計測部96および時間判定部97を用いることにより、経過時間Eが目標時間ESに到達したが否かを判定しながら、電位差補正部101による電位差ΔVの補正動作を行うことが好ましい。
【0287】
[変形例3]
また、例えば、第1〜第3実施形態では、装置内温度Tとして、転写部40(中間転写ベルト41)の温度を測定している。しかしながら、温度センサ78の設置場所は、任意に変更可能である。
【0288】
具体的には、例えば、
図2に対応する
図23〜
図26に示したように、温度センサ78の設置場所を変更してもよい。この場合には、例えば、
図23に示したように、感光体ドラム32の近傍に温度センサ78を設置することにより、装置内温度Tとして、その感光体ドラム32の温度を検出してもよい。例えば、
図24に示したように、現像ローラ34の近傍に温度センサ78を設置することにより、装置内温度Tとして、その現像ローラ34の温度を検出してもよい。例えば、
図25に示したように、現像ブレード36の近傍に温度センサ78を設置することにより、装置内温度Tとして、その現像ブレード36の温度を検出してもよい。例えば、
図26に示したように、筐体31の内部に設けられた空間に温度センサ78を設置することにより、装置内温度Tとして、その空間の温度を検出してもよい。中でも、電位差ΔVを補正していることから明らかなように、現像ローラ34の近傍の温度は電位差ΔVに大きな影響を与えるため、温度センサ78の設置場所は、できるだけ現像ローラ34に近い場所であることが好ましい。
【0289】
これらの場合においても、装置内温度T(温度差ΔT)に基づいて電位差ΔVが補正されるため、同様の効果を得ることができる。
【0290】
[変形例4]
また、例えば、
図6〜
図9を参照しながら説明したように、交点Bに対応する温度(以下、「交点温度」という。)をガラス転移開始温度TGSとしたが、その交点温度に対してガラス転移開始温度TGSを意図的にずらしてもよい。
【0291】
この場合には、交点温度よりもガラス転移開始温度TGSを高くしてもよいし、その交点温度よりもガラス転移開始温度TGSを低くしてもよいが、中でも、交点温度よりもガラス転移開始温度TGSを低くすることが好ましい。交点温度よりも高い温度領域では、上記したように、トナーが微視的に凝集しやすくなるため、そのトナーの凝集に起因する影響を抑制するためには、交点温度よりも低くなるようにガラス転移開始温度TGSを設定することが好ましいからである。すなわち、交点温度よりも低くなるようにガラス転移開始温度TGSを設定することにより、トナーが微視的に凝集しにくい温度領域において電位差ΔVが補正されるため、その補正の精度を担保することができる。
【0292】
ただし、交点温度よりも低くなるようにガラス転移開始温度TGSを設定する場合には、そのガラス転移開始温度TGSを低くしすぎると、電位差ΔVを補正する回数が多くなる可能性がある。よって、交点温度よりも低くなるようにガラス転移開始温度TGSを設定する場合には、例えば、交点温度−1℃となるようにガラス転移開始温度TGSを設定することが好ましく、交点温度−0.5℃となるようにガラス転移開始温度TGSを設定することがより好ましく、交点温度−0.1℃となるようにガラス転移開始温度TGSを設定することがさらに好ましい。電位差ΔVが補正される回数を少なく抑えながら、その電位差ΔVを有効に補正することができるからである。
【0293】
[変形例5]
図4に示した場合には、電位差ΔVの補正動作を行うために、画像形成制御部71と共に、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100および電位差補正部101を用いた。
【0294】
しかしながら、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100および電位差補正部101のうちの1または2以上を用いずに、画像形成制御部71が時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100および電位差補正部101のうちの1または2以上の機能を兼ねるようにしてもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0295】
図13に示した場合には、電位差ΔVの補正動作を行うために、画像形成制御部71と共に、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102および回数係数決定部103を用いた。
【0296】
しかしながら、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102および回数係数決定部103のうちの1または2以上を用いずに、画像形成制御部71が時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102および回数係数決定部103のうちの1または2以上の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0297】
図17に示した場合には、電位差ΔVの補正動作を行うために、画像形成制御部71と共に、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102、回数係数決定部103、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106を用いた。
【0298】
しかしながら、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102、回数係数決定部103、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106のうちの1または2以上を用いずに、画像形成制御部71が時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、回数計測部102、回数係数決定部103、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106のうちの1または2以上の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0299】
図21に示した場合には、電位差ΔVの補正動作を行うために、画像形成制御部71と共に、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106を用いた。
【0300】
しかしながら、時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106のうちの1または2以上を用いずに、画像形成制御部71が時間計測部96、時間判定部97、温度差算出部98、温度差係数決定部99、補正量決定部100、電位差補正部101、ドット数計測部104、印字率算出部105および印字率係数決定部106のうちの1または2以上の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0301】
以上、一実施形態を挙げながら本発明を説明したが、本発明は上記した一実施形態において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0302】
具体的には、例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置の画像形成方式は、中間転写ベルトを用いた中間転写方式に限られず、他の画像形成方式でもよい。他の画像形成方式は、例えば、中間転写ベルトを用いない画像形成方式などである。中間転写ベルトを用いない画像形成方式では、潜像に付着されたトナーが媒体に対して中間転写ベルトを介して間接的に転写されず、その潜像に付着されたトナーが媒体に対して直接的に転写される。
【0303】
また、例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置は、プリンタに限られず、複写機、ファクシミリおよび複合機などでもよい。