(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2、及び
図5に、本実施の形態の対象物移動装置1を備える歩行支援装置100の全体を示す。本実施の形態の対象物移動装置1は、移動対象物の傾きを抑制した状態で移動させる装置である。歩行支援装置100において、対象物移動装置1が備える移動部材20により移動させられる移動対象物は、移動部材20に接続された支柱部62、支柱部62の終端側(上方)に取り付けられたハンドル部64、および、後述するユーザである。なお、
図1及び
図2では、移動部材20が最も基端側に位置する状態の各部を実線で示し、最も終端側に位置する状態の各部を破線で示す。ただし、
図1及び
図2において、対象物移動装置1が取り付けられる部分(支持筒部74、75)など、移動部材20の移動により位置や形状が変化しない部材については、便宜上実線で示す。また、
図1、
図2、
図4においては、内部の構造を説明できるよう、一部の構造を透過させて図示している。
【0011】
ここで、基端側と終端側とは、対象物移動装置1全体における装置の基端側と終端側であり、これにより移動部材20の移動方向を示している。また、移動部材20の移動範囲を示す基端側と終端側とは、後述する駆動機構30により移動される移動部材の移動範囲とし認識されてもよい。
図1及び
図2では、基端側を対象物移動装置1の下側、終端側を対象物移動装置1の上側としているが、基端及び終端を水平方向に配置したり、基端及び終端を水平方向に対して傾斜する方向に配置してもよい。
【0012】
また、移動部材20が傾くとは、移動部材20の移動初期の状態に対して傾斜した状態となることを意味し、例えば、水平方向や垂直方向などの基準方向に対する移動部材20が延びる方向の成す角が変化することである。傾かせることなく移動させるとは、移動部材20の姿勢を移動方向に対してほぼ維持したまま、基端側と終端側との間を移動部材20が移動させることを意味する。例えば、移動方向に対して直交する方向へ移動する移動部材3が傾斜しても、移動方向に対して直交した状態にして移動させることを意味する。
【0013】
以下では、初めに対象物移動装置1について説明し、その後、この対象物移動装置1を備える歩行支援装置100について説明する。対象物移動装置1は、移動部材20と、移動部材20を移動させる駆動機構30と、前記移動部材の傾きを防止する傾き防止機構40と、を備える。
【0014】
<移動部材の構成>
移動部材20は、基端側と終端側の間を移動し、移動対象物を移動させる。移動部材20は、駆動機構30を駆動させることで移動する。移動部材20は、移動対象物と接続されることで移動対象物を移動させることができる。移動部材20は、移動対象物の一部、或いは、移動対象物と一体であってもよい。移動部材20は、支柱部62が組合せられており、対象物移動装置1は、移動部材20の外側に支柱部62が配置され、移動部材20の内面においては駆動機構30によって移動部材20が移動可能なように構成されている。
支柱部62は、レール部72に対して移動自在に設けられ、上端にハンドル部64が固定される。支柱部62は、レール部72の外側に配置されているが、移動部材20がレール部72に対して移動することによって支柱部62が移動するように構成されていれば、レール部72の内側に設けられてもよい。
移動部材20は、本実施の形態では、長尺のレール部72内を、レール部72に沿って長手方向に移動自在に摺動するスライダーである。移動部材20は、レール部72内において、レール部72の内壁によって、レール部72の長手方向以外の方向への移動を規制された状態で配置されている。本実施の形態では、
図3に示すように、移動部材20に取り付けられた支柱部62とレール部72との間に、軸方向と直交する方向において、摺動可能な程度に間隔が設けられている。
図2に示すように、レール部72の上端側では、移動部材20は、上端側移動規制部78により上端側への移動を規制され、下端側では、基台の下端規制部で下端側への移動を規制される。上端側移動規制部78は、レール部72の案内部分を上端側で閉塞する。
【0015】
移動部材20は、駆動機構30の接続部32に接続される。より具体的には、駆動機構30が駆動した際に、接続部32を介して移動部材20に駆動力が伝達されて、移動部材20が移動するように、移動部材20と駆動機構30の接続部32とが接続される。本実施の形態では、移動部材20は、駆動機構30の駆動により、接続部32が直線状に移動して移動部も直線状に移動するように、接続部32と接続される。
移動部材20は、接続部32において接続し、また、後述する駆動機構30のナット部材38とも接続しているが、本実施形態においてはナット部材38と一体的に構成されている。接続部32は、移動部材20と接続して、移動部材20に駆動力が伝達する部位とである。
また、移動部材20は、傾き防止機構40に接続されている。
【0016】
<駆動機構の構成>
駆動機構30は、移動部材20と接続する接続部32を有し、移動部材20を移動させる。本実施の形態では、駆動機構30は、駆動することにより、接続部32を介して接続された移動部材20を基端側と終端側との間で移動させる。駆動機構30は、駆動して移動部材20を移動させるものであれば、どのように構成されてもよい。駆動機構において駆動する駆動体としては、発動機、電動機(モータ)等が挙げられるが、本実施の形態では、電動機34を備える。
駆動機構30は、電動機34のほかに、電動機34の駆動により回転するスピンドル部材36と、ナット部材38と、を有する。駆動機構30では、接続部32は、ナット部材38に構成される。
【0017】
電動機34は、図示しないバッテリなどの駆動源に接続され、駆動源からの電力により駆動する。
本実施の形態では、
図1及び
図2に示すように、電動機34は、対象物移動装置1の基端側に配置され、電動機34の回転軸とスピンドル部材36とが同軸上で接続されている。電動機34は、電動機34の駆動によってスピンドル部材36が回転駆動するように、スピンドル部材36と接続されていれば、直接接続しても変速機を介して接続しても良い。具体的には、電動機34は、上面にレール部72が立設される架台の下面に取り付けられている。電動機34は、レール部72内のスピンドル部材36と同軸上に回転軸を合わせて結合部35を介して固定される。
【0018】
スピンドル部材36は、移動部材20の移動方向に延びるように配置される。スピンドル部材36は、本実施の形態では、レール部72内に、レール部72の延在方向に沿って配置され、ナット部材38に螺合する。レール部72は、移動部材20のスピンドル部材36の軸周りの回転を抑制して、スピンドル部材36の長手方向(レール部72の延在方向)に移動部材20を案内する。レール部72は、移動部材20をスピンドル部材36の全長にわたって回転を抑制しつつ移動させるために、スピンドル部材36の長さに対応した長さを有する。本実施形態においては、移動部材20から突出し、連結部材44に接続する突出部が、レール部72の軸周り方向において、レール部72と干渉するように構成させているので、移動部材20は、回転することなく、レールの軸方向へと移動する。具体的には、レール部72の内側から、レール部72の軸方向に延びるスリットより外側へ突出する突出部材によって、ナット部材38と連結部材44とが接続されて、その突出部材がスリットの端部と接触することで回転規制されている。ナット部材38は、スピンドル部材36と螺号して、スピンドル部材36の軸周り回転によりスピンドル部材36の軸方向に移動する。これにより、ナット部材38の移動に伴って、ナット部材38に接続された移動部材20が移動し、ひいては移動部材20に接続された移動対象が移動する。なお、ナット部材38と移動部材20とは、別部材であってもよいし、一体であってもよい。例えば、移動部材20にスピンドル部材36と螺合するねじ溝を有する貫通孔を形成し、このねじ溝を接続部としてもよい。本実施の形態では、ナット部材38は、雌ねじ部を有しており、雄ねじ部を有するスピンドル部材36と螺号して、スピンドル部材36の軸周り回転によりスピンドル部材36の軸方向に移動する。スピンドル部材36が回転しない場合には、スピンドル部材36とナット部材38とによる自己拘束機能によって移動部材20の移動が抑制される。
【0019】
<傾き防止機構の構成>
傾き防止機構40は、移動部材20の傾きを抑制する機構であり、特には、移動中における移動方向に対する移動部材20の傾きを防止する。傾き防止機構40は、弾性部材42と、連結部材44と、を有する。傾き防止機構40は、移動部材20が移動する際に傾こうとしたときに、複数の連結部材固定部42aのそれぞれが弾性部材42から受ける付勢力の均衡が崩れようとすると、弾性部材42が複数の連結部材固定部の少なくとも一つの付勢力が増減することで、複数の連結部材固定部のそれぞれが連結部材44から受ける付勢力を均衡した状態に戻ることとなって、連結部材44を介して移動部材20の傾きが抑制される。そのため、傾き防止機構40では、移動部材20と弾性部材42とが連結部材44を介して連結され、移動部材20が傾く際、例えば、移動方向に沿う軸(移動軸L)に対して水平な方向や軸周り方向にぶれる際にも、移動部材20の傾きを弾性部材42の付勢力によって矯正することもできる。
【0020】
弾性部材42は、移動部材の移動方向に沿って伸縮する。弾性部材42は、連結部材44が固定される連結部材固定部42aを有する(
図1等参照)。また、弾性部材42は、弾性部材42が移動部材20の移動に合わせて伸縮するように他端が固定される。より具体的には、弾性部材42は、一端側で移動部材20に固定され、他端側でフレームや設置面といった移動部材20に対して相対的に移動しない箇所に固定される。弾性部材42は、連結部材固定部42aにより連結部材44を付勢する。本実施の形態では、弾性部材42は、移動部材20が基端側から終端側に移動するときに収縮し、終端側から基端側へ移動するときに伸長する。複数の連結部材固定部42aは、移動部材20を挟むように構成されることが好ましい。移動部材20の一方側に配置されるように連結部材44と弾性部材42とが固定される場合と比べて、より移動部材20の傾きを抑制できるからである。弾性部材42は、連結部材44に位置する複数の支点で、移動部材20を先端側に付勢するように配置される。弾性部材42は、複数の支点を介して、複数の支点のそれぞれで移動部材20を支持することで均衡を保ち、移動方向の軸に対して傾くこと無く、移動方向の軸に沿う姿勢となるように、終端側へ付勢する。
具体的に複数の支点とは、移動部材20に重心を通る移動方向に沿った軸を挟み、且つ、当該軸から所定間隔空けた位置に位置する。複数の支点は、当該軸を挟んでバランスのとれた位置であれば、必ずしも対称となる位置である必要はない。
【0021】
本実施の形態では、複数の弾性部材42は、レール部72を挟むようにレール部72と離間して配置された複数の筒状の支持筒部74、75内に配置される。支持筒部74、75は、弾性部材42を支持する支持体として機能し、本実施例においてはレール部72を挟んで対称となる位置に配置されている。支持筒部74、75は、互いに離間して、移動部材20の移動方向に沿って弾性部材42が伸縮可能な様に支持する。支持筒部74、75の形状は、本実施の形態では、レール部72を挟む側の面部分が開口した断面C字状であり、内部に弾性部材42を収納可能な空間を有している。弾性部材42は、支持筒部74、75の内部に収容された状態で、他端が、それぞれ支持筒部74、75の一端部と接続し、一端が、レール部72側からそれぞれ延出して支持筒部74、75内へと延びた連結部材44の両側の端部44aとに接続される。本実施の形態では、弾性部材42の他端である連結部材固定部42aが支持筒部74、75内において連結部材44と接続しており、連結部材44と接続する連結部材固定部42aが複数存在することとなる。なお、本実施の形態においては、弾性部材42が同様の付勢力を有しているため、弾性部材固定部または支点として機能する端部44aの位置は、移動部材20に対して対称位置に配置されているが、移動部材20の傾きを防止する構成であれば、例えば、弾性部材42の付勢力に応じた位置、つまり非対称な位置であってもよい。
【0022】
連結部材44は、移動部材20と弾性部材42と連結する部材であり、弾性部材42の一端が固定される。本実施の形態では、連結部材44は、移動部材20にボルトを介して一体的に止着されてもよく、移動部材20と共に傾くように固定されて、連結部材44に力が作用した場合には移動部材20にも力が及ぶように固定されている。本実施の形態では、弾性部材42は、移動部材20を一方の移動側へ付勢するように構成され、例えば、レール部72の基端側から、支柱部62が延びる側である終端側へ付勢するように構成される。弾性部材42としては、例えば、引っ張りコイルバネが用いられる。弾性部材42は、一端が支持筒部74、75の上端側に固定している。本実施の形態では、移動部材20が所定の移動方向へ移動する際に、弾性部材44がその移動方向へ移動部材22を付勢できるように、レール部72が設けられた基台に支持筒部74、75を支持体として設け、弾性部材44が支持体へ固定された部位と移動部材22との間で伸縮するように設けられている。しかし、支持体(支持筒部74,75)に固定された弾性部材44が移動部材22を付勢するのに替えて、基台に設けられた弾性部材44が移動部材22を所定の移動方向へ付勢するように構成してもよい。
【0023】
なお、弾性部材42は、伸縮自在であり、移動部材20を基端側から終端側に付勢する構成であれば、どのように構成されてもよく、コイルバネの他、ガススプリングエアダンパー或いはオイルダンパー等のダンパー等を用いてもよい。
例えば、ダンパー等のように両端部が互いに離間する方向に付勢される構成の弾性部材であれば、弾性部材42の基端側の一端部を、装置の終端側に固定し、弾性部材42の終端側の他端部を、連結部材44を介して移動部材20に接続すれば、移動部材20を押圧して付勢することで、移動部材20の傾きを防止できる。
【0024】
本実施の形態では、移動部材20を終端側に付勢する構成として、2つの弾性部材42で移動部材20を付勢する構成としたが、3つ以上であっても1つであってもよい。
一つの弾性部材42を用いる構成では、弾性部材として、移動部材20を囲むように配置可能な径の引っ張りコイルバネを用いて、このコイルバネの上端を終端側に固定し、下端を、連結部材44を介して移動部材20と接続する構成が挙げられる。例えば、スピンドル部材にコイルバネを挿通し、終端側(基端側)を固定し、基端側(終端側)を移動部材に接続する。この場合、弾性部材であるコイルバネの端部が、移動部材と一体的に構成された連結部材に対して周回り方向に接続し、軸に対して複数の径方向において接続することとなり、複数個所で付勢することとなる。
【0025】
<移動部材の動作>
まず、移動部材20が基端側に位置する状態において、駆動機構30を駆動する。具体的には、駆動機構30のモータユニットの電動機34を駆動して、スピンドル部材36を回転駆動する。スピンドル部材36は、スピンドル部材36の外周に形成された雄ねじ部に螺合するナット部材38を回転させる。
【0026】
ナット部材38と接続部32により接続する移動部材20は、レール部72により、スピンドル部材36の回転方向である軸周りの移動が規制されているため、ナット部材38は、スピンドル部材36上をスピンドル部材36の軸方向に移動し、これに伴い移動部材20も移動する。
移動部材20がレール部72に沿って移動すると、連結部材44も移動する。本実施の形態では、弾性部材42は、移動部材20の基端側から終端側への移動に合わせて自然長よりも伸長した状態から収縮するように他端が固定されている。よって、弾性部材42は移動部材20が終端側へ移動すると収縮する。
【0027】
終端側への移動において、移動部材20に対して移動方向と交わる方向の力がかかることがある。例えば、移動対象物の重心の変化や駆動機構の特性により、移動部材20が傾くような力が移動部材20に加わる場合がある。移動部材20が傾いた場合には移動対象物の安定した移動が難しくなる。また、このような、移動部材を傾かせる力は、移動部材20が視覚的に傾く場合だけではなく、移動部材20が傾いていないように見える場合であっても、移動部材20に対する荷重となって、レール部72との摩擦が大きくなり、移動部材20の移動の障害となる場合もある。
このように、移動部材20が移動する際に傾こうとすると、複数の付勢部材による連結部材44への付勢状態の均衡が崩れようとする。例えば、
図4において2点鎖線で示す状態となるように、図面中時計回りに移動部材20が回転して支柱部62および移動部材20が傾くと、連結部材44も同方向へ傾く。このとき、図中右側の弾性部材42−2の長さは、図中右側の弾性部材42−1の長さに比べて長くなる。そのため、弾性部材44−2の付勢力の大きさは、弾性変形による復元力によって更に大きくなり、弾性部材42−1よりも大きくなる。したがって、連結部材44は、与えられた力と反対である、反時計回りとなるような力を、弾性部材42−2から受けることとなり、元の状態である水平な状態に戻ろうとする。連結部材44が水平な状態に戻ると、弾性部材44が収縮しようとする力の大きさは、弾性部材42−1と弾性部材42−1とで等しくなる。このように、複数の連結部材固定部42aを付勢する付勢力の少なくとも一つを増減させて複数の連結部材固定部42aのそれぞれが連結部材44へ与える付勢力を均衡した状態に戻す。このように、付勢力の均衡が保たれた状態とすることができるため、移動部材20は、安定した状態で移動することができる。
【0028】
なお、上記の実施の形態では、複数の弾性部材はどちらも同じ付勢力を有するもの用いたが、複数の弾性部材のそれぞれの弾性力は異なっていても構わない。また、連結部材固定部の位置も、移動方向で同一の位置としたが、異なっていても構わない。すなわち、複数の弾性部材は、それぞれの付勢力が一定の関係性を保つように構成されており、かつ、その関係性が崩れようとすると、弾性部材が複数の連結部材固定部を付勢する付勢力の少なくとも一つを増減させて、複数の連結部材固定部のそれぞれが連結部材へ与える付勢力をもとの一定の関係性に戻すことができるように構成されていればよい。
【0029】
対象物移動装置1は、移動部材20を移動させる際に、移動部材20の傾きが生じにくく、ひいては移動対象物が傾きにくくなる。よって、移動対象物を安定して移動させることが容易となり、例えば、移動部材20に載置された人や物の落下の不安を与えることを抑制することができる。
また、移動部材20が傾くことを抑制した状態で移動することができるので、駆動時において、スピンドル部材36とナット部材38との螺合部分に、螺合する軸と交差する荷重が加わることがなく、螺合部分にかかる負荷を減少できる。
【0030】
また、移動部材20の移動において移動方向に沿うスピンドル部材36或いはレール部 72に対する負荷が軽減されることにより、移動部材20のスムーズな移動が実現できる。ここでは、上下に位置する終端と基端との間を移動部材20が移動するので、移動部材20は、連結部材44を介して連結される弾性部材42によって、上面を水平に保持しつつ移動する。
【0031】
連結部材44は、終端側に付勢する弾性部材42に接続されているので、弾性部材42は、連結部材44を介して、終端側への移動する移動部材20の終端側への移動を補助している。
これにより、駆動機構30の駆動により移動部材20が基端側から終端側に移動する際には、付勢力が無い場合と比較して、駆動機構の駆動力を低減しつつ安定して移動させることができる。つまり、弾性部材42が付勢する方向である終端側への移動部材20の移動を弾性部材42がアシストするので、移動部材20が付勢方向へ移動する際の電動機34の駆動力を小さくでき、また、移動部材20が傾くことによる負荷も抑制できるために、電動機への電気的エネルギーも軽減できる。つまりは、電動機34に電気的エネルギーを供給するためにバッテリを搭載する構成に自由度を与えることができ、駆動機構としての設計の範囲も広がるために、小型や軽量化も可能となる。
【0032】
また、駆動機構30の電動機34を駆動して、スピンドル部材36を逆方向に回転すると、ナット部材38は、終端側から基端側に移動し、これに伴い移動部材20も終端側から基端側に移動する。このとき、移動部材20は、弾性部材42の付勢力に抗して移動する。移動部材20が基端側に移動する際には、弾性部材42が抵抗になるので、例えば、移動部材20に荷物が載置された際などの急降下を防止できる。なお、このような効果は、弾性部材の付勢方向が反対となった場合でも同様である。
【0033】
そして、スピンドル部材36が回転しない場合には、スピンドル部材36とナット部材38とによる自己拘束機能によって移動部材20の移動が抑制され、移動部材20は、停止した位置で保持される。
【0034】
<歩行支援装置>
次に、対象物移動装置1を適用した歩行支援装置100を
図5について説明する。
図5に示す歩行支援装置100は、移動可能な基台110と、基台110に固定され、基台110の移動を補助する基台移動補助部材112と、基台110に固定された対象物移動装置1とを備える。
歩行支援装置100は、ユーザが着座状態から立ち上がる際の立ち上がりを支援する機能と、ユーザの歩行とを支援するする機能とを有する。
歩行支援装置100では、上端部にハンドル部64が取り付けられた中空の支柱部62が、レール部72の外側で移動自在に取り付けられ、且つ、下端部で、レール部72内のレール部72内の移動部材20(
図1〜
図3参照)に固定されている。支柱部62は、ハンドル部64を支持し、また、ハンドル部64を移動させる。歩行支援装置100は、ハンドル部64に腕や上半身などを載置することで、ユーザに使用される。
【0035】
基台110は、平面視で略U字状に形成されている。基台110は、使用者側が凹状となるように設けられ、基台110がユーザを囲んだ状態で、基台110の内側でユーザが歩行できる空間を有している。基台移動補助部材112は、基台110の移動を円滑に行わせる部材112であり、例えば、キャスター等の転動部材であり、基台110の下面に取り付けられる。基台110を移動すると転動し、基台110の移動を円滑に行わせる。
【0036】
歩行支援装置100の使用方法の一例としては、着座状体のユーザが基端側位置にあるハンドル部64に上半身を預けた状態において、対象物移動装置1の駆動機構30を駆動させる。すると、移動部材20は、終端側である上端側に移動し、これに伴い移動部材20に支柱部62を介して固定されたハンドル部64は、ユーザによる荷重がかかった状態で上昇する。このとき、ハンドル部64は、駆動機構30の駆動力と弾性部材42の付勢力とを受けて上昇することにより、ユーザが上半身を預けることで付加される荷重やハンドル部材の重量により負荷される荷重に抗して終端側に移動する。そのため、ユーザは、ハンドル部64に乗せた上半身が上昇することになり、容易に足を伸ばして立ち上がることが容易となる。そして立ち上がったユーザは、ハンドル部64につかまった状態で歩行することができる。
【0037】
また、ハンドル部64を下降する場合、移動部材20を終端から基端へ移動する場合、駆動機構30の電動機34によるスピンドル部材36の回転を、上昇方向とは逆方向にする。すると、移動部材20は、弾性部材42の付勢力に抗して、基端側に移動する。そのため、弾性部材42が抵抗になるので、移動部材20に、ユーザが体重を掛けた状態或いは荷物が載置された際などの急降下を防止できる。
【0038】
また、対象物移動装置1において、駆動機構30が駆動しない状態、具体的には、スピンドル部材36が回転しない状態では、スピンドル部材36とナット部材38とによる自己拘束機能によって移動部材20の移動が抑制され、移動部材20は、停止した位置で保持される。これにより、歩行支援装置100におけるハンドル部64の高さは、ハンドル部64の移動範囲内のどの高さでも調整できる。
【0039】
このような移動部材20の移動中或いは停止中においても、弾性部材42により、移動方向、詳細には、移動方向を示す軸に対する移動部材20の傾きがを防止されている。よって、ユーザがハンドル部64に体重をかける等して、ハンドル部64に荷重がかかることでレール部72に対して傾こうとする場合でも、弾性部材42の付勢により、移動部材20の傾きが防止される。
【0040】
なお、本実施の形態では、歩行支援装置100における移動部材20の移動方向は上下方向としたが、水平方向とし、扉の開閉機構などに適用することも可能である。
また、傾き防止機構40は、連結部材44を介して移動部材20と弾性部材42と接続し、弾性部材42の付勢力により移動部材20自体に対して傾きを防止している。これにより、支柱部62を介して移動部材20の上方に離れた位置に配置されたハンドル部64の傾きを防止できる。また、弾性部材42が伸縮することでハンドル部64にかかる荷重を軽減でき、ひいては、駆動機構30にかかる負荷を軽減できる。
【0041】
本実施の形態では、駆動機構30は、電動機34により回転するスピンドル部材36を用いて、移動部材20を移動させる構成としたが、駆動機構30は、移動部材20を基端側と終端側との間を移動させる構成であればどのように構成されてもよい。例えば、基端側と終端側とに設けたスプロケットにチェーン或いはベルトを巻回し、このチェーン或いはベルトに移動部材を固定して、チェーン或いはベルトの周回に伴い、基端側と終端側との間を移動部材20が移動するように構成してもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の実施の形態の一例であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、本発明の範囲において上記の例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。