(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記第一の工程の後であって第二の工程の前に、フィルターの液体導入口から生理食塩水又は緩衝液を導入して、フィルターの液体導出口から導出することにより、フィルター内の夾雑成分を除去する工程を含む、請求項7〜9のいずれかに記載の細胞分離方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のフィルターは、細胞分離材が充填された容器を有し、該容器の上部又は下部のいずれかに液体導入口、その反対側に液体導出口を備えたフィルターであって、
充填された前記細胞分離材の表面に、液体導入口側又は液体導出口側の少なくとも1方向へ向けて隆起している隆起部を有しており、
前記隆起部の高さyと長さxが式(1)及び/又は式(2):
y=−ax
2+bx 式(1)
y=ax
2−bx 式(2)
の関係を満たし、且つaとbの比率(a/b)が0.03〜0.25の範囲である隆起部を1つ以上有することを特徴とする。
【0028】
(細胞分離材)
本発明で使用される細胞分離材の形態は、特に限定されず、連通孔構造の多孔質体、繊維の集合体、織物等が挙げられる。好ましくは繊維で構成されるものであり、より好ましくは不織布である。
【0029】
前記細胞分離材の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン、レーヨン、ビニロン、ポリスチレン、アクリル(ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリレート等)、ナイロン、ポリウレタン、ポリイミド、アラミド、ポリアミド、キュプラ、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、カーボン、フェノール、テトロン、パルプ、麻、セルロース、ケナフ、キチン、キトサン、ガラス、綿等を挙げることができる。中でも、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、ナイロン、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート等の高分子を好適に用いることができる。前記細胞分離材は、これらの材質のうち、単一の材質からなってもよいし、複数の材質を組み合わせた複合材からなってもよい。
【0030】
本発明で用いられる細胞分離材の平均繊維径としては、目的の細胞の種類に合わせて適宜選択すればよく特に限定はない。
【0031】
前記細胞分離材の性能をより向上させるために、細胞分離材に親水化処理を行ってもよい。親水化処理することにより、目的とする必要細胞以外の細胞における非特異的な捕捉の抑制、細胞含有液を偏り無く細胞分離材中に通過させ、性能の向上、必要細胞の回収効率向上等を付与することができる。親水化処理方法としては、水溶性多価アルコール、又は水酸基、カチオン基もしくはアニオン基を有するポリマー、あるいはその共重合体(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、あるいはその共重合体等)を吸着させる方法、水溶性高分子(ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)を吸着させる方法、疎水性膜に親水性高分子を固定する方法(例えば、表面に親水性モノマーを化学的に結合させる方法等)、電子線照射する方法、含水状態で細胞分離フィルターに放射線を照射することで親水性高分子を架橋不溶化する方法、乾燥状態で熱処理することにより親水性高分子を不溶化し固定する方法、疎水性膜の表面をスルホン化する方法、親水性高分子と疎水性ポリマードープとの混合物から膜をつくる方法、アルカリ水溶液(NaOH、KOH等)処理により膜表面に親水基を付与する方法、疎水性多孔質膜をアルコールに浸漬した後、水溶性ポリマー水溶液で処理乾燥後、熱処理や放射線等で不溶化処理する方法、又は界面活性作用を有する物質を吸着させる方法等が挙げられる。
【0032】
親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、多糖類(セルロース、キチン、キトサン等)、水溶性多価アルコール等が挙げられる。
【0033】
疎水性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アクリル、ウレタン、ビニロン、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。
【0034】
さらに回収目的とする細胞の細胞分離材への付着性を向上させるために、細胞付着性のタンパク質や、目的とする幹細胞上に発現されている特異的抗原に対する抗体を、細胞分離材上に固定化してもよい。細胞付着性のタンパク質としては、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲン等が挙げられる。抗体としては、CD73、CD90、CD105、CD166、CD140a、CD271等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、固定化方法としては、例えば、一般的なタンパク質の固定化方法である、臭化シアン活性化法、酸アジド誘導体法、縮合試薬法、ジアゾ法、アルキル化法、架橋法等の方法を任意に用いることができる。
【0035】
(容器)
前記細胞分離材を充填する容器は、上部又は下部のいずれかに液体導入口、その反対側に液体導出口を備える。
液体導入口とは前記容器外部から前記容器内部に目的の細胞を含有する液体(細胞含有液ともいう)を導入する口をいう。
液体導出口とは、前記液体導入口の上下方向に対して反対側に設けられる口であり、主に細胞分離操作の際に細胞分離材を通過した液体を容器外部へ排出するための口をいう。
前記液体導入口及び液体導出口はそれぞれ1つ以上あればよく、数については特に限定はない。
また、前記液体導入口又は液体導出口が設けられる上部又は下部の位置としては、特に限定はない。
なお、細胞分離材に捕捉された細胞は、本発明のフィルターを組み合わせた細胞分離デバイスの構成によっては、前記液体導入口から容器外部に排出される場合もある。
【0036】
前記容器の形状としては、前記細胞分離材を内蔵できる形状であればよく、球、コンテナ、カセット、バッグ、チューブ等、任意の形態であってよい。好ましい具体例としては、例えば、容量約0.1〜400mL程度、直径0.1〜15cm程度の筒状容器や、一片の長さ0.1〜20cm程度の正方形又は長方形で、厚みが0.1〜5cm程度の四角柱状容器等が挙げられる。
【0037】
例えば、
図1、2(a)、2(b)に示すように円筒形状のフィルター1では、円筒状の本体3と、その上部及び下部にある開口部に蓋をすることができるノズル付押え部材4、5と、前記本体3とノズル付押え部材4、5とを固定するためのキャップ6、7とで構成される。
前記ノズル付押え部材4、5には、容器2内部に液体を導入するための液体導入口9、容器2から液体を排出するための液体導出口10がそれぞれ設けられている。なお、前記液体導入口9及び液体導出口10は液体を送液するためのチューブを接続しやすくするために、ノズルで構成されている。前記ノズルの形状や大きさについては特に限定はない。
前記ノズル付押え部材4、5は栓型になっており、円筒状の前記本体3の内腔に押し込むことで、本体3の内面と接して固定される。
前記ノズル付押え部材4、5と本体3との接触面にはシール8が設けられている。このシール8により、ノズル付押え部材4、5と本体3との気密性を確実にして外部からの微生物等の侵入を防ぐことができる。前記シール8としては、例えば、
図2(b)に示すように、ノズル付押え部材4、5の表面に設けた溝の周囲に樹脂製のパッキンを設けることが挙げられるが、シール8の配置や構成については特に限定はない。
【0038】
前記ノズル付き押え部材4、5は、前記本体3に直接固定できるようにしてもよい(図示せず)。ノズル付き押え部材と本体とが接触する面に、例えば、ネジを設けることでノズル付き押え部材と本体とを固定することができる。この場合、
図2(b)に示す前記キャップ6、7は不要となる。
【0039】
前記容器2内では、前記細胞分離材11が積層されて充填される。例えば、繊維径の異なる細胞分離材11を2層以上積層したフィルターとすることにより、細胞を捕捉する箇所が分散され、目詰まりの発生が抑制されるとともに、フィルターからの細胞の分離・回収も効率的に行うことができる。なお、繊維径が同じ細胞分離材が連続して積層された部分は、積層された細胞分離材の枚数によらず1層として扱う。
【0040】
また、前記容器2には、液体導入口9側に独立して細胞分離材11内に留まっている非付着細胞を洗浄するための洗浄液導入口を設けたり(図示せず)、液体導出口10側に独立して細胞分離材に捕捉された細胞を回収するための細胞回収液導入口(細胞含有液及び洗浄液の流れとは逆方向から細胞回収液を流すため)を備えたりしてもよい(図示せず)。
【0041】
前記容器2は、任意の構造材料を使用して作製することができる。構造材料としては、具体的には非反応性ポリマー、生体親和性金属、合金、ガラス等が挙げられる。非反応性ポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。容器の材料として有用な金属材料(生体親和性金属、合金)としては、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、及びそれらの合金、並びに金メッキ合金鉄、白金メッキ合金鉄、コバルトクロミウム合金、窒化チタン被覆ステンレス鋼等が挙げられる。特に好ましくは、耐滅菌製を有する素材であるが、具体的には、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0042】
(隆起部)
本発明のフィルターは、前記容器内に充填された前記細胞分離材の表面に、液体導入口側又は液体導出口側の少なくとも1方向へ向けて隆起している隆起部を有する。
前記隆起部とは、
図2(b)、3(a)、3(b)に示すように、細胞分離材11の表面における隆起した部分(12a、12a’、12a’’、12b、12b’、12b’’)をいう。より詳細には、
図3(a)、3(b)に示すように、フィルターの液体導入口9及び液体導出口10に対して平行な細胞分離材11の縦断面において、液体導入口9側又は液体導出口10側の細胞分離材11の表面の最も低い部分(液体導入口9側であれば部分13)から盛り上がった部分であり、液体導入口9側であれば、頂点(14a、14a’、14a’’)を有する部分をいう。例えば、
図2(b)、3(a)、3(b)では、頂点14aを有する隆起部12a、頂点14a’を有する12a’、頂点14a’’を有する12a’’という3つの隆起部が、凹部15a、15a’を境としてつながった形状をしている。
【0043】
前記隆起部間の凹部とは、隆起部同士の間の凹んだ部分をいう。例えば、
図2(b)に示すフィルター1は、液体導入口9側の細胞分離材11の表面に3つの隆起部12a、12a’、12a”、その間に2つの凹部15a、15a’を有する。また液体導出口10側の細胞分離材11の表面に3つの隆起部12b、12b’、12b”、その間に2つの凹部15b、15b’を有する、
前記隆起部間の凹部15a、15bは、いずれも略山形の2つの隆起部の間で、曲線状に凹んだ谷形状となっている。なお、本発明では、前記凹部はフィルター内に導入される細胞含有液と直接接触できる状態の凹部をいう。したがって、後述のように、前記ノズル付押え部材4、5に突起部16を設けることで、前記細胞分離材11の表面を押圧して生じた凹んだ部分では、突起部と細胞分離材の表面とが接触しているため、隆起部間凹部には該当しない。
【0044】
前記のような隆起部や隆起部間凹部を細胞分離材の表面に形成する方法としては、前記細胞分離材の表面に予め隆起部や隆起部間凹部が形成される加工、例えば、エンボス加工等が施された細胞分離材を用いることが挙げられる。
【0045】
また、細胞分離材の材質等によらずに簡便に隆起部等を形成できる観点から、ノズル付押え部材4、5の容器2の本体3の内腔に差し込む先端面に、
図5に示すように、突起部16a、16bを設けることで、容器2内に充填した前記細胞分離材11の表面を押圧することができる。そして、前記突起部16a、16bは、前記容器2の内腔側に突き出ており、前記容器2に充填している前記細胞分離材11の上部側又は下部側の表面を押圧することで、隆起部を形成することができる。
【0046】
前記突起部16a、16bの先端面の形状としては、特に限定はないが、線形、棒形、多角形、楕円形、円形又はこれらの形状のうち2種以上を組み合わせた形状が挙げられる。
中でも、前記突起部を少なくとも2つ以上組み合わせると、突起部で細胞分離材の表面を押圧した際に、隆起部間にひずみが生じて隆起部間凹部を形成しやすくなる。
例えば、
図2(a)に示すように、略円形の突起部16aで細胞分離材11の周囲を丸形に押圧し、さらに略120°間隔で周囲から中心部方向にかけて棒形の突起部16bで押圧すると、押圧されていない細胞分離材11の表面にひずみが生じて、
図2(b)、
図3(a)、3(b)に示すように複数の隆起部及びこれらの隆起部の間に略谷状の複数の凹部が形成される。具体的には、隆起部12a、12a’’は、略円形の突起部16a及び突起部16b同士で3方向を囲まれた細胞分離材11の表面に生じる大きい隆起部であり、隆起部12a’は液体導入口9の下方向にある中央付近の小さい隆起部である。したがって、液体導入口9側の細胞分離材11の表面には隆起部が4つ生じている。また、前記大きい隆起部12aと小さい隆起部12a’との間(前記隆起部12a’’と12a’との間も同じ)には凹部15aが生じるので、液体導入口9側の細胞分離材11の表面には凹部が全部で3つ生じている。
【0047】
前記突起部の先端面の面積としては、隆起部、特に隆起部間凹部の形成をし易くする観点から、前記細胞分離材の表面積の30%以下であることが好ましい。
なお、突起部の先端面の面積は、定規等を用いて測定して計算すればよいし、また、先端面の断面積における縦の長さ(y)、横の長さ(x)を測定するための原点(0、0)を定め、原点以外の複数点を測定し、エクセルを用いて積分計算することで近似面積を算出すればよい。
【0048】
なお、前記突起部の先端面は、
図5に示すように、全ての突起部の高さを一致するように調整してもよいし、突起部の高さを変えるように調整して先端面に立体的な段差があるように調整してもよい。
【0049】
本発明では、前記隆起部のうち少なくとも1つの隆起部の高さyと長さxが式(1)及び/又は式(2):
y=−ax
2+bx 式(1)
y=ax
2−bx 式(2)
の関係を満たし、且つaとbの比率(a/b)が0.03〜0.25の範囲であることを特徴とする。
なお、a、bはともに定数であり、0を超える数値である。
【0050】
前記式(1)は、細胞分離材の上下方向に平行な縦断面において、上側表面にある略放物線状の隆起部の外形を示す式である。
また、前記式(2)は、細胞分離材の上下方向に平行な縦断面において、下側表面にある略放物線状の隆起部の外形を示す式である。
したがって、本発明のフィルターとは、前記細胞分離材の上下表面のいずれかに形成される隆起部の少なくとも1つの隆起部の外形が前記式(1)及び/又は式(2)を満たすフィルターをいう。
【0051】
前記隆起部の外形を確認するための縦断面の位置としては、略放物線状の断面が確認できればよく、特に限定はない。
前記縦断面に示される隆起部の断面の高さと長さが、それぞれ隆起部の高さy、隆起部の長さxとなる。y、xともに、隆起部の最も低い位置を原点(0、0)として設定し、yについては上方向の高さを「+」、下方向の高さを「−」で示す。
【0052】
前記aは、前記式(1)又は式(2)を満たす隆起部における隆起の大きさを示す指標であり、前記aの値が大きくなるほど、上方向又は下方向に高く隆起していることになる。一方、aの値が小さくなるほど、上方向又は下方向に低く隆起していることになる。
フィルター自体の構造及び機能を維持し、細胞回収時の理想的な通液を行う観点から、前記aとしては0.030〜0.120であることが好ましく、0.036〜0.115であることがより好ましい。また、前記bとしては0.3〜1.5であることが好ましく、0.4〜1.4であることがより好ましい。
【0053】
前記隆起部の縦断面におけるy、xの原点(0、0)を定め、原点以外の複数点を測定し、それらの数値を計算ソフトに入力して近似曲線を計算することでa、bを含む前記式(1)又は式(2)を算出することができる。
測定する点としては、原点を含めて少なくとも5点以上が好ましい。
なお、前記原点は、縦断面における隆起部が生じる最も低い位置に設定すればよい。また前記原点は隆起部毎に定める。
【0054】
例えば、
図4(a)に示す上方向の隆起部12aの外形を測定する場合、まず原点O1を定め、次いで、この原点O1から4点(R1、R2、R3、R4)の位置を、R1(y1、x1)、R2(y2、x2)、R3(y3、x3)、R4(y4、x4)として測定する。そして、これらの数値を表計算ソフトに入力して近似曲線を計算することで式(1)を算出することができる。
【0055】
一方、
図4(b)に示す下方向の隆起部12bの外形を測定する場合、隆起部12aとは別の原点O2を定め、次いで、この原点O2から4点(R5、R6、R7、R8)の位置を、R5(−y5、x5)、R6(−y6、x6)、R7(−y7、x7)、R8(−y8、x8)として測定する。
そして、これらの数値を表計算ソフトに入力して近似曲線を計算することで式(2)を算出することができる。
【0056】
本発明のフィルターでは、前記式(1)又は式(2)において、aとbの比率(a/b)が0.03〜0.25の範囲に調整される。
前記a/bを前記の範囲に調整することで、細胞の回収効率が高くなるという効果が奏される。
前記a/bと細胞の回収率との技術的な関係については、細胞分離材には細胞回収に適した理想的な形があり、複数の連なった隆起部を有したような形状を表面に有することで細胞回収を行う際に理想的な通液がなされ、結果として細胞回収効率が向上するということが考えられる。
前記a/bとしては、0.05〜0.10がより好ましく、0.06〜0.093がさらに好ましい。
【0057】
本発明のフィルターでは、細胞の回収効率が高くなる観点から、液体導入口側又は液体導出口側の少なくとも1つの表面に、隆起部を少なくとも2つ及び隆起部の間に凹部を少なくとも1つ有することが好ましい。
【0058】
本発明では、前記細胞分離材の表面の前記隆起部の数をn、前記隆起部間凹部の数をmとした場合において、以下の(c)又は(d):
(c)n=m+1;
(d)n=m+2;
の関係を満たすようにすることで、細胞回収効率を高くすることが可能になる。
なお、n、mは整数であり、n≧2、m≧1である。
【0059】
なお、前記式(c)、(d)でいう隆起部及び隆起部間凹部は、フィルターに充填した細胞分離材の縦断面に見られる隆起部及び隆起部間凹部である。
【0060】
前記式(c)の関係を満たす細胞分離材としては、液体導入口側又は液体導出口側の一方に隆起部がある細胞分離材が挙げられる。例えば、
図5に示すノズル付押え部材4をフィルター1の液体導入口側又は液体導出口側に用いた場合、細胞分離材11の表面において、4つの隆起部及び3つの隆起部間凹部が生じるため、前記式(c)の関係を満たすことになる。
前記式(c)の関係を満たす他形態の細胞分離材としては、例えば、ノズル付押さえ部材4に存在する突起部16bの数が
図5記載の数とは異なったノズルを用いた場合等が挙げられる。例えば、前記突起部16bが2つある場合、突起部同士の間に2つの楕円形隆起部及び中央部に1つの円形隆起部があり、楕円形隆起部と円形隆起部との間に凹部が1つあるため、細胞分離材の表面には隆起部3つ隆起部間凹部2つが生じる。
また、前記突起部16bが4つある場合、突起部同士の間に4つの楕円形隆起部及び中央部に円形隆起部があり、楕円形隆起部と円形隆起部との間に凹部が1つあるため、細胞分離材の表面には隆起部5つ、隆起部間凹部4つが生じる。
【0061】
前記式(d)の関係を満たす細胞分離材としては、液体導入口側及び液体導出口側の両方に隆起部がある細胞分離材が挙げられる。例えば、
図5に示すノズル付押え部材4をフィルター1の液体導入口側及び液体導出口側に用いた場合、上下の両面の表面上に隆起部及び隆起部間凹部が生じるため、隆起部が8個、隆起部間凹部6個を有する細胞分離材となり、前記式(d)の関係を満たすことになる。
前記式(d)の関係を満たす他形態の細胞分離材としては、例えば、上記と同様、
図5に記載の突起部16bの数とは異なったノズルを用いた場合等が挙げられる。例えば、前記突起部16bが2個あるノズル付押え部材4を用いた場合、上下の細胞分離材の表面には隆起部6つ隆起部間凹部4つが生じる
また、前記突起部16bが4個あるノズル付押え部材4を用いた場合、細胞分離材の表面には隆起部10個、隆起部間凹部8個が生じる。
【0062】
従来の細胞分離用フィルターでは、充填される細胞分離材の表面は、蓋や隔壁等により上下方向に対して略平面状に抑えられているのが一般的である。したがって、前記隆起部、中でも隆起部間凹部は、従来のフィルターに充填される細胞分離材表面には見られない形状である。
【0063】
本発明のフィルターでは、前記細胞分離材の厚みの最小値としては、1.20×10〜1.26×10mmであることが好ましい。また、細胞分離材の厚みの最大値としては、1.26×10〜2.10×10mmが好ましく、1.55×10〜2.05×10mmであることがより好ましい。
【0064】
本発明のフィルターでは、前記細胞分離材の厚みの最大値について、例えば、
図2(b)では、隆起部12a、12bを含む細胞分離材の厚みが他の隆起部を含む細胞分離材の厚みより大きい場合、この厚みXが細胞分離材11の最大値となる。
また、細胞分離材11の厚みの最小値とは、例えば、
図2(b)では、前記突起部16aで押えられた部分の細胞分離材11の表面同士の厚みYとなる。
細胞分離材11の表面上の隆起部は、立体的な形状で存在しているため、細胞分離材の中心に対して様々な角度で細胞分離材11の縦断面を観察して、その中で最大の厚み、最小の厚みを計測すればよい。
なお、フィルターの縦断面はX線CTによる撮影を行うことで観察しており、細胞分離材11の縦断面の各部の長さについては、CTデータビューアー(ボリュームグラフィックス社製、商品名「myVGL2.2」)を用いて測定すればよい。
【0065】
また、本発明のフィルターでは、前記隆起部の断面積の和が2.08×10〜1.09×10
2mm
2、隆起部以外の断面積が5.40×10
2〜5.61×10
2mm
2とすることでより細胞回収に適した隆起部の外形に調整することができるという利点がある。
【0066】
前記細胞分離材の断面積とは、前記容器の上下方向に対して平行に前記細胞分離材を切断したときの縦断面積をいう。
前記隆起部の断面積とは、上方向又は下方向に対して隆起部の高さが最大となる位置を含む部分で前記細胞分離材を上下方向に切断したときの断面積をいう。また、前記隆起部以外の断面積とは、前記のように細胞分離材を上下方向に切断して測定した総断面積から、隆起部の断面積を引いた面積をいう。
例えば、
図2(b)に示すフィルター1の細胞分離材11の縦断面を
図6に示す。
細胞分離材の断面積は、図示される全ての断面積(α+β+α’)である。
一方、隆起部の断面積については、液体導入口9側の断面積αと液体導出口10側の断面積α’とがあり、これらの和(α+α’)が隆起部の断面積となる。
そして、前記細胞分離材の断面積から隆起部の断面積を引いた残りの断面積(β)が隆起部以外の断面積となる。
前記比率(α+α’)/βは、0.23〜0.42の範囲に調整することがより好ましい。
【0067】
(細胞)
本発明で目的とされる細胞とは、白血球や単核球であればよく、特に限定されないが、例えば人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系細胞、脂肪由来間質幹細胞、多能性成体幹細胞、骨髄ストローマ細胞、造血幹細胞等の多分化能を有する生体幹細胞、T細胞、B細胞、キラーT細胞(細胞障害性T細胞)、NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞等のリンパ球系の細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、顆粒球、赤血球、血小板等、神経細胞、筋細胞、線維芽細胞、肝細胞、心筋細胞等の体細胞又は、遺伝子の導入や分化等の処理を行った細胞が例示される。
【0068】
(細胞分離方法)
本発明のフィルターは、前記のように様々な細胞、特に、白血球、造血幹細胞及び/又は単核球の回収に好適に使用される。
白血球としては、末梢血中の好中球、好酸球、好塩基球等の顆粒球及び単球、リンパ球等の単核球が例示される。
【0069】
前記フィルターを用いる細胞分離方法としては、前記フィルターの液体導入口から細胞含有液を導入し、フィルター内に充填されている細胞分離材と接触させて、白血球及び/又は単核球を細胞分離材に捕捉させる第一の工程、及び、
前記フィルター内に回収液を導入し、白血球及び/又は単核球を細胞分離材から回収する第二の工程
を含む方法が挙げられる。
【0070】
前記細胞含有液としては、前記白血球、造血幹細胞及び/又は単核球を含む細胞を含む懸濁液であれば特に限定されず用いることができるが、例えば、臍帯等の生体組織を酵素処理や破砕処理や抽出処理や分解処理や超音波処理等をした後の懸濁液、血液や骨髄液、臍帯血等の体液、血液や骨髄液を密度勾配遠心処理やろ過処理や酵素処理や分解処理や超音波処理等の前処理をして調製された懸濁液等が例示される。
【0071】
また、前記に例示した白血球等の細胞を生体外で培養液や刺激因子等を用いて培養や増殖等をした後の懸濁液であってもよい。
【0072】
前記第一の工程において、前記フィルターの液体導入口から前記細胞含有液を導入する際には、前記細胞含有液を加圧することでフィルター内への細胞含有液の導入を行い、細胞含有液をフィルター内に充填されている細胞分離材と接触させて、白血球及び/又は単核球を前記細胞分離材に捕捉させる。前記加圧の程度としては、特に限定はない。
【0073】
前記細胞分離材は、白血球及び/又は単核球を捕捉できるものを使用すればよい。
なお、白血球以外の血液成分については、不要成分として除いてもよいし、必要に応じて回収してもよく、特に限定はない。
【0074】
前記第二の工程において、白血球等を捕捉したフィルターには回収液を導入することで、フィルターから白血球等を回収液中に分離させ、この白血球等を含む回収液を液体導入口から回収専用のバッグ等に導入することで白血球等を回収することができる。
前記回収液は、フィルターの液体導出口からフィルター内に導入される。
【0075】
前記回収液は、細胞と等張である溶液であれば特に限定はないが、生理食塩液やリンゲル液等の注射溶剤として使用実績のあるものや、緩衝液、細胞培養用の培地等が挙げられる。特に、培養工程を経る際はそのまま培養が行える培地が好ましく、培養工程を経ずそのまま治療に用いる際は、生理食塩液等の点滴等に使用実績のある等張液等、安全性が保証されている回収液を使用することが好ましい。
【0076】
本発明において前記第一工程及び第二工程は、前記室温下で行ってもよいし、冷蔵温度下で行ってもよい。冷蔵温度下で行う場合、冷蔵された細胞含有液を処理することが挙げられる。細胞含有液の保管としては、冷蔵温度に設定した冷蔵庫による保管、ウォーターバスによる保管、及びドライアイスによる保管等が挙げられる。汎用性から冷蔵庫で保存することが好ましい。冷蔵温度としては、1℃以上6℃以下が好ましく、より好ましくは3℃以上5℃以下が好ましい。冷蔵温度が1℃未満では細胞は死滅し、6℃を超えて保存すると細菌が繁殖しコンタミネーションを起こす可能性がある。
【0077】
また、細胞分離材の状態を整えて、細胞を捕捉しやすくする観点から、前記第一の工程の前に、フィルターの液体導入口から生理食塩水又は緩衝液を導入し、細胞分離材と生理食塩水又は緩衝液とを接触させてもよい。
【0078】
また、前記第一の工程の後であって第二の工程の前に、フィルターの液体導入口から生理食塩水又は緩衝液を導入して、フィルターの液体導出口から導出することにより、フィルター内の夾雑成分を除去することで、回収される細胞内へ不要成分を低減することができる。
【0079】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
図7に示すように、直径52mmのポリカーボネート製の円筒状容器本体3に、ポリブチレンテレフタラート製の円形の不織布(細胞分離材11)112枚を、積層状態で充填し、前記容器本体3の上下の開口部に
図5で示すノズル付押え部材4、5を差し込み、その上からキャップ6、7でネジ止めすることで
図1、2(a)、2(b)に示すような構造を有するフィルター1を作製した。
【0081】
前記フィルター1では、上下の2つのノズル付押え部材4、5の突起部16b同士の向きを揃えて、突起部16bの先端面で押えた不織布の厚みが細胞分離材の厚みの最小値となるようにした。なお、上下の突起部16bの先端面間の距離は12mm(細胞分離材の厚みの最小値)に調整した。
【0082】
ノズル付押え部材4、5の突起部16bの断面を含む位置で前記細胞分離材11の縦断面を観察したところ、
図8に示すように液体導入口側の表面に隆起部12a、12a’、凹部15a、及び液体導出口側の表面に隆起部12b、12b’、凹部15bが確認された。なお、隆起部12a’、12b’はいずれも突起部16b同士の間にあり、上面から見た形状が略楕円形状の大きな隆起部であり、隆起部12a、12bはいずれも細胞分離材11の中央部に付近にあり、上面から見た形状が略円形状の小さな隆起部であった。したがって、隆起部は全部で8個、隆起部間凹部は6個あった。
その他様々な角度から前記細胞分離材11の縦断面を見た結果、本断面で細胞分離材の厚みが最大となっており、より隆起部の高さが高くなっていた。
次いで、前記4つの隆起部(12a、12a’、12b、12b’)についてそれぞれの高さ及び長さの原点O1、O2、O3、O4を定め、それぞれの原点から、複数の地点の隆起部の高さ及び長さを測定した。その結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
以上の隆起部について、Microsoft社製表計算ソフト「Excel」の表計算機能を利用して、「多項式近似」で「2次」を選択して近似曲線を算出したところ、以下のようになった。
上側隆起部12a :y=−0.0865x
2+1.051x
上側隆起部12a’:y=−0.1153x
2+1.231x
下側隆起部12b :y=0.0729x
2−0.9183x
下側隆起部12b’:y=0.0473x
2−0.8018x
【0085】
また、観察する縦断面の位置を前記細胞分離材の中心から3°程度回転し、上側表面の前記突起部16bの横にある隆起部を含む縦断面を観察し、この隆起部についても新たに原点を定め、その原点から複数の地点の隆起部の高さ及び長さを測定した。その結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
前記隆起部の外形について、Microsoft社製ソフト「Excel」の表計算機能を利用して、近似曲線を算出したところ、以下のようになった。
y=−0.0367x
2+0.4315x
【0088】
なお、フィルター1に充填される細胞分離材の状態は以下の通りであった。
(細胞分離材の厚み)
フィルター内の細胞分離材の厚みの最大値(X):18.46mm
フィルター内の細胞分離材の厚みの最小値(Y):12.09mm
液体導入口側の隆起部間凹部から液体導出口側の隆起部間凹部までの細胞分離材の厚み:13.96〜16.92(mm)
(細胞分離材の断面積)
隆起部の断面積の和:144.93〜182.46mm
2
隆起部以外の断面積:545.86mm
2【0089】
(実施例2)
前記フィルター1における上下の2つのノズル付押え部材4、5の突起部16b同士の向きを揃えず、中心から60°回転させて固定した以外は、実施例1と同様にしてフィルター1を作製した。
【0090】
次いで、上側及び下側にある任意に選択した隆起部(12a、12b)についてそれぞれの高さ及び長さの原点を定め、その原点から、複数の地点の隆起部の高さ及び長さを測定した。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
以上の隆起部の外形について、Microsoft社製ソフト「Excel」の表計算機能を利用して、「多項式近似」で「2次」を選択して近似曲線を算出したところ、以下のようになった。
上側隆起部12a :y=−0.0387x
2+0.6829x
下側隆起部12b :y=0.0362x
2−0.4469x
【0093】
(実施例3)
積層する細胞分離材の枚数を140枚にした以外は、実施例1と同様にしてフィルター1を作製した。細胞分離材の厚みの最小値は変えず、積層枚数を変えることで圧縮を強め、細胞分離材がより隆起し易いようにした。
【0094】
次いで、上側の隆起部12aについてそれぞれの高さ及び長さの原点Oを定め、その原点から、複数の地点の隆起部の高さ及び長さを測定した。その結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
前記隆起部の外形について、Microsoft社製ソフト「Excel」の表計算機能を利用して、「多項式近似」で「2次」を選択して近似曲線を算出したところ、以下のようになった。
上側隆起部12a :y=−0.1094x
2+1.4385x
【0097】
実施例1〜3の結果より、フィルター1に充填されている細胞分離材表面にある様々な隆起部の外形について、上側の隆起部の外形は前記式(1)、下側の隆起部の外形は前記式(2)で示すことができることがわかる。
【0098】
(比較例1)
事前に積層状態の高さが12mmとなるようにプレスして、細胞分離材の表面が略平面状として隆起部の高さを抑えた不織布(112枚)を充填した以外は、実施例1と同様にして、フィルター1を作製した。
【0099】
次いで、下側の隆起部12bについて高さ及び長さの原点を定め、その原点から、複数の地点の隆起部の高さ及び長さを測定した。その結果を表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
前記隆起部について、Microsoft社製ソフト「Excel」の表計算機能を利用して、「多項式近似」で「2次」を選択して近似曲線を算出したところ、以下のようになった。
隆起部12b :y=0.0163x
2−0.2543x
【0102】
(試験例1)
次に、実施例1〜3及び比較例1で得られた前記細胞分離フィルター1の液体導入口9と液体導出口10に、
図9で示した回路を接続して細胞分離用デバイス25を作製した。
【0103】
図9に示す前記回路において、前記液体導入口9にはチューブ17aを接続し、このチューブ17aには、細胞懸濁液を収容する手段18及びプライミング用生理食塩水を収容する手段19に接続したチューブ17bと、フィルターを通過した回収液を収容する手段(回収バッグ)20及び回収バッグ等に回収された回収液を回収する手段21に接続したチューブ17cとを、流路切り替え手段22aを介して接続した。
前記チューブ17bには流路切り替え手段22bを介して、細胞懸濁液を収容する手段18とプライミング用生理食塩水を収容する手段19とを接続した。
前記チューブ17cには流路切り替え手段22cを介して、前記フィルターを通過した回収液を収容する手段20と回収バッグ等に回収された回収液を回収する手段21とを接続した。
また、前記液体導出口10にはチューブ17dを接続し、流路切り替え手段22dを介して、フィルターを通過した細胞懸濁液を収容する手段(廃液バッグ)23及び回収液を回収する手段24と接続した。
【0104】
次に前記細胞分離用デバイス25を用いて細胞分離操作を実施した。なお、各流路切り替え手段の操作は、フィルター1に通液する液体の種類、送液する目的の手段に応じて、適宜行った。
【0105】
まず、プライミング用生理食塩水を収容する手段19としてシリンジを用いて手押しで生理食塩水150mLをフィルター1内に通液してプライミング操作を行い、廃液バッグ23にフィルター1を通過した生理食塩水を回収した。
次に細胞懸濁液を収容する手段18からCPD抗凝固の新鮮ウシ血液100mL(血液保存液C液(CPD):血液=1:4で混合した20%CPDを含むウシ抹消血)をフィルター1に重力を利用して通液して、血液中の白血球を細胞分離材に捕捉させた。通過液は廃液バッグ23に回収した。
その後、回収液を回収する手段24としてシリンジを用いて手押しでHES(ヒドロキシエチルスターチ)溶液を液体導出口10からフィルター1内に通液し、液体導入口9から回収バッグ20に白血球を回収した。
処理前血液の血算、回収後の溶液の血算には血球カウンター(商品名「K−4500」、シスメックス社製)を用い、それぞれの測定結果より白血球の回収率を算出した。
【0106】
実施例1及び2で得られたフィルターでは、細胞(白血球)回収率は75%〜82%となった。実施例3で得られたフィルターでは、細胞回収率は76%となり、細胞回収率(性能)の低下は見られなかった。
一方、比較例1では、細胞回収率が65%となり、細胞回収率(性能)の低下が見られた。
【0107】
(試験例2)
白血球回収後の実施例1、3及び比較例1で使用したフィルターからそれぞれ細胞分離材を取り出して、白色の吸収紙の上に置いた。
その結果、
図10に示すように、実施例1及び3で得られた細胞分離材ではほぼ細胞分離材本来の色(白色)となっていたのに対して、比較例1で得られた細胞分離材からは血液由来の成分が多量に残存しており、赤色に染まっていた。
したがって、実施例1及び3で使用したフィルター1のように、充填された前記細胞分離材の表面に、液体導入口側又は液体導出口側の少なくとも1方向へ向けて隆起している隆起部を形成し、且つ前記細胞分離材の外形が所定の式を満たすことで、血液成分の回収ロスを減らすことができ、目的の細胞をより効率よく回収することができることがわかる。