(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜6の何れか一つに記載の感光性組成物を基材上に付与して、光硬化およびエッチング処理を行った後、焼成して、前記感光性組成物の焼成体からなる導電層を形成する工程を含む、電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば感光性組成物に含まれる導電性粉末)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば感光性組成物の調製方法、導電膜や導電層の形成方法、電子部品の製造方法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
なお、以下の説明では、導電性組成物を、ベンゾトリアゾール系化合物の沸点以下の温度(概ね200℃以下、例えば100℃以下)で乾燥した膜状体(乾燥物)を「導電膜」という。導電膜は、未焼成(焼成前)の膜状体全般を包含する。導電膜は、光硬化前の未硬化物であってもよく、光硬化後の硬化物であってもよい。また、以下の説明では、導電性組成物を、導電性粉末の焼結温度以上で焼成した焼結体(焼成物)を「導電層」という。導電層は、配線(線状体)と、配線パターンと、ベタパターンと、を包含する。
また、本明細書において範囲を示す「A〜B」の表記は、A以上B以下を意味する。
【0020】
≪感光性組成物≫
ここに開示される感光性組成物は、必須の成分として、導電性粉末と感光性有機成分とを含んでいる。以下、各構成成分について順に説明する。
【0021】
<導電性粉末>
導電性粉末は、感光性組成物を焼成して得られる導電層に電気伝導性を付与する成分である。ここに開示される技術において、導電性粉末は、少なくとも第1導電性粉末と第2導電性粉末とを含む混合粉末である。そして、第1導電性粉末と第2導電性粉末との合計が、導電性粉末の全体を100質量%としたときに、90質量%以上を占めている。このことにより、ファインラインの導電層を高解像度で形成することができる。
【0022】
導電性粉末は、第1導電性粉末と第2導電性粉末とで構成されていてもよいし、それら以外の導電性粉末を含んでいてもよい。ここに開示される技術の効果をさらに高いレベルで発揮する観点からは、第1導電性粉末と第2導電性粉末との合計が、導電性粉末全体の95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。
【0023】
第1導電性粉末は、有機成分量が低く抑えられている導電性粉末である。導電性粉末に含まれる有機成分は、主に、導電性粉末の表面に付着している有機表面被覆剤や、導電性粉末の製造に使用された残留有機成分、例えば有機溶剤に由来する。なお、有機表面被覆剤については、後述する第2導電性粉末の欄で詳しく説明する。
【0024】
ここに開示される技術において、第1導電性粉末は、有機成分量が0.1質量%以下である。第1導電性粉末は、有機成分量が0.1質量%以下であること以外、特に限定されない。このように有機成分量の抑えられた第1導電性粉末を導電性粉末に含むことで、導電膜の耐エッチング性を向上することができ、硬化させた導電膜部分をエッチング処理後においても適切に基材上に留めることできる。そのため、導電膜が剥離したり、配線が細くなり過ぎたりすることを抑制することができる。上記観点からは、第1導電性粉末の有機成分量が、例えば0.08質量%以下であってもよい。
【0025】
第1導電性粉末は、意図的にあるいは不可避的に有機成分を含んでいてもよく、含んでいなくても(検出下限値以下であっても)よい。第1導電性粉末の有機成分量は、概ね0.01質量%以上、例えば0.03質量%以上であってもよい。言い換えれば、第1導電性粉末は、表面に有機表面被覆剤が付着していてもよいし、残留溶剤を含んでいてもよい。第1導電性粉末が有機表面被覆剤を含む場合は、第2導電性粉末の有機表面被覆剤と同種のものを含むことが好ましい。例えば、ベンゾトリアゾール系化合物を含むことが好ましい。
【0026】
なお、本明細書において「有機成分量」とは、下記の測定方法によって測定した質量減衰率をいう。すなわち、まず、測定用試料として、所定量の導電性粉末を秤量し、熱重量測定装置(TG)を用いて、この測定用試料を、大気雰囲気において、昇温速度10℃/分で、室温(25℃)から600℃まで加熱する。そして、次の式:有機成分量(%)=〔(加熱前の質量)−(600℃まで加熱後の質量)〕/(加熱前の質量)×100;で加熱前後の質量変化(質量減衰率)を算出する。このように求められる質量減衰率を、有機成分量という。単位は質量%である。
【0027】
第2導電性粉末は、第1導電性粉末に比べて有機成分量が高い導電性粉末である。
ここに開示される技術において、第2導電性粉末の表面には、ベンゾトリアゾール系化合物が付着している。ベンゾトリアゾール系化合物は、有機表面被覆剤である。第2導電性粉末は、有機成分量が少なくとも0.5質量%である。第2導電性粉末は、表面にベンゾトリアゾール系化合物が付着しており、かつ、有機成分量が少なくとも0.5質量%であること以外、特に限定されない。このような第2導電性粉末を導電性粉末中に含むことで、エッチング処理の際に未硬化部分の剥離性を向上して、配線が太くなり過ぎることを抑制することができる。また、配線間のスペース部分に線間残渣が残存し難くなり、配線間に安定してスペースを確保することができる。そのため、漏れ電流を低減すると共にショート不良の発生を抑制することができる。
【0028】
上記観点からは、第2導電性粉末の有機成分量が、0.7質量%以上であることが好ましく、0.75質量%以上であることが好ましく、例えば0.8質量%以上であってもよい。また、特に限定されるものではないが、第2導電性粉末の有機成分量の上限は、市販の導電性粉末の有機成分量の範囲に鑑みると、概ね2質量%以下である。第2導電性粉末の有機成分量の上限は、導電層の緻密化や低抵抗化の観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
第2導電性粉末の表面に付着しているベンゾトリアゾール系化合物は、導電性粉末の安定性や保存性を向上する有機表面被覆剤である。ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であればよい。一好適例として、下記(1)の1H−ベンゾトリアゾールの構造部分を1つまたは2つ以上有する化合物が挙げられる。
【0031】
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例として、1H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。なかでも、ハロゲン元素(例えばフッ素や塩素)を含まないものが好ましい。
【0032】
第2導電性粉末に含まれる有機成分は、典型的にはベンゾトリアゾール系化合物を主体(モル比で50モル%以上を占める成分)とする。第2導電性粉末の有機成分は、ベンゾトリアゾール系化合物が80モル%以上を占めるとよく、さらにはベンゾトリアゾール系化合物で構成されているとよい。第2導電性粉末は、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、意図的にあるいは不可避的に、ベンゾトリアゾール系化合物に加えて、有機表面被覆剤として使用し得ることが知られている他の有機表面被覆剤をさらに含んでもよい。例えば、第2導電性粉末の有機成分量の全体を100モル%としたときに、ベンゾトリアゾール系化合物に加えて、他の有機表面被覆剤を、概ね50モル%未満、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下の割合で含んでもよい。第2導電性粉末は、カルボン酸等の脂肪酸を含まないことがより好ましい。このことにより、ここに開示される技術の効果を一層高いレベルで発揮することができる。なお、有機表面被覆剤がベンゾトリアゾール系化合物を含むことは、例えば、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)法によって確認することができる。
【0033】
特に限定されるものではないが、第1導電性粉末と第2導電性粉末との質量比率は、概ね95:5〜5:95、典型的には90:10〜10:90、好ましくは85:15〜20:80、より好ましくは60:40〜20:80、なかでも60:40〜40:60であるとよい。このことにより、ここに開示される技術の効果を一層高いレベルで発揮することができる。例えば、ファインライン化が一層進んだ導電層であっても、高解像度で精度よく形成することができる。また、第1導電性粉末を所定値以上の割合で含むことにより、焼成時に燃え抜ける成分の割合を低減して、緻密性が高く低抵抗な導電層を好適に実現することができる。
【0034】
第1導電性粉末および第2導電性粉末の種類は特に限定されない。第1導電性粉末および第2導電性粉末としては、それぞれ、従来公知のものの中から、用途等に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。一好適例として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等の金属の単体、およびこれらの混合物や合金等が挙げられる。合金としては、例えば、銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−白金(Ag−Pt)、銀−銅(Ag−Cu)等の銀合金が挙げられる。
【0035】
好適な一態様では、第1導電性粉末および/または第2導電性粉末が、銀系粒子を含んでいる。銀は、比較的コストが安く、電気伝導度が高い。このため、銀系粒子を含むことで、コストと低抵抗とのバランスに優れた導電層を実現することができる。銀系粒子は、銀成分を含むものであればよい。一例として、銀の単体、上記した銀合金、銀系粒子をコアとするコアシェル粒子等が挙げられる。
【0036】
他の好適な一態様では、第1導電性粉末および/または第2導電性粉末が、金属−セラミックのコアシェル粒子を含んでいる。金属−セラミックのコアシェル粒子は、金属材料を含むコア部と、コア部の表面の少なくとも一部を被覆し、セラミック材料を含む被覆部と、を有する。セラミック材料は、化学的安定性や耐熱性、耐久性に優れる。このため、金属−セラミックのコアシェル粒子の形態を採用することにより、感光性組成物中での導電性粉末の安定性をより良く向上すると共に、高耐久性な導電層を実現することができる。また、例えばセラミック製の基材上に導電層を形成して、セラミック電子部品を製造する用途では、金属−セラミックのコアシェル粒子を含むことにより、セラミック基材との一体性を高めることができ、焼成後の導電層の剥離や断線を好適に抑えることができる。
【0037】
なかでも、有機成分量の少ない第1導電性粉末が金属−セラミックのコアシェル粒子を含むことが好ましく、第1導電性粉末が金属−セラミックのコアシェル粒子で構成されていることがより好ましい。有機成分量が少ない第1導電性粉末は、有機成分量が多い第2導電性粉末に比べて、相対的に導電性組成物中での安定性や保存性が低くなりがちである。第1導電性粉末が金属−セラミックのコアシェル粒子を含むことで、有機成分量の低さを補って、導電性組成物全体の安定性や保存性をより良く向上することができる。
【0038】
金属−セラミックのコアシェル粒子において、コア部を構成する金属材料としては、例えば上記した金属の単体、およびこれらの混合物や合金が挙げられる。なかでも、上述の理由から銀系粒子が好ましい。言い換えれば、第1導電性粉末および/または第2導電性粉末が、銀−セラミックのコアシェル粒子を含むことが好ましい。
【0039】
特に限定されるものではないが、金属−セラミックの被覆部を構成するセラミック材料としては、例えば、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化セリウム(セリア)、酸化イットリウム(イットリア)、チタン酸バリウム等の酸化物系材料;コーディエライト、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、サイアロン、ジルコン、フェライト等の複合酸化物系材料;窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化アルミニウム(アルミナイトライド)等の窒化物系材料;炭化ケイ素(シリコンカーバイド)等の炭化物系材料;ハイドロキシアパタイト等の水酸化物系材料;等が挙げられる。例えばセラミック製の基材上に導電層を形成して、セラミック電子部品を製造する用途では、セラミック基材と同じあるいは親和性に優れたセラミック材料が好ましい。
【0040】
特に限定されるものではないが、セラミック材料の含有比率は、例えばコア部の金属材料100質量部に対して、例えば0.01〜5.0質量部であってもよい。なお、金属−セラミックのコアシェル粒子は、従来公知の手法によって作製することができる。例えば、本願出願人の先願である特許第5075222号の段落0025〜0028に記載されるように、金属材料と、目的の金属元素有する有機系金属化合物(例えば金属アルコキシド又はキレート化合物)あるいは酸化物ゾルと、を反応させることによって、作製することができる。
【0041】
導電性粉末は、露光性能との兼ね合いから、D
50粒径が1〜5μmである。すなわち、D
50粒径を上記範囲とすることで、未硬化の導電膜の露光性能を向上して、ファインラインの導電層を安定的に形成することができる。第1導電性粉末および第2導電性粉末は、それぞれ、D
50粒径が上記範囲にあるとよい。導電性粉末の凝集を抑制して導電性組成物の安定性を向上する観点からは、導電性粉末のD
50粒径が、例えば、1.5μm以上、2.0μm以上であってもよい。導電層のファインライン化や緻密化、低抵抗化を進める観点からは、導電性粉末のD
50粒径が、例えば、4.5μm以下、4.0μm以下であってもよい。なお、本明細書において「D
50粒径」とは、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒径をいう。
【0042】
特に限定されるものではないが、第1導電性粉末と第2導電性粉末とのD
50粒径は、少なくとも0.5μm、典型的には0.5〜3.0μm、例えば1.0〜2.0μm程度離れているとよい。言い換えれば、導電性粉末全体の粒度分布が多峰性を有しているとよい。一具体例では、有機成分量が少ない第1導電性粉末のD
50粒径が、概ね3〜5μm、例えば3.5〜4.5μmの範囲にあり、有機成分量が多い第2導電性粉末のD
50粒径が、概ね1〜3.5μm、例えば1.5〜3μmの範囲にあるとよい。このことにより、第1導電性粉末と第2導電性粉末とのD
50粒径の差が小さい場合に比べて、導電層の緻密性や充填性を向上することができる。その結果、導電層の低抵抗化を好適に高めることができる。
【0043】
特に限定されるものではないが、導電性粉末を構成する導電性粒子の形状は、典型的には、平均アスペクト比(長径/短径比)が概ね1〜2の略球状、好ましくは1〜1.5、例えば1〜1.2の球状である。このことにより、露光性能をより安定的に実現することができる。第1導電性粉末および第2導電性粉末は、それぞれ、平均アスペクト比が上記範囲にあるとよい。なお、本明細書において「平均アスペクト比」とは、電子顕微鏡で複数の導電性粒子を観察し、得られた観察画像から算出されるアスペクト比の算術平均値をいう。また、本明細書において「球状」とは、全体として概ね球体(ボール)と見なせる形態であることを示し、楕円状、多角体状、円盤球状等を含み得る用語である。
【0044】
特に限定されるものではないが、導電性粉末の全体は、JIS Z 8781:2013年に基づくL
*a
*b
*表色系において、明度L
*が、50以上であるとよい。このことにより、未硬化の導電膜の深部まで安定して照射光が届くようになり、例えば、膜厚が5μm以上、さらには10μm以上のような厚めの導電層をも安定的に実現することができる。上記観点からは、導電性粉末の明度L
*が、概ね55以上、例えば60以上であってもよい。明度L
*は、例えば上記した導電性粉末の種類やD
50粒径によって調整することができる。なお、明度L
*の測定は、例えばJIS Z 8722:2009年に準拠する分光測色計で行うことができる。
【0045】
特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める導電性粉末の割合は、概ね50質量%以上、典型的には60〜95質量%、例えば70〜90質量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、緻密性や電気伝導性の高い導電層を形成することができる。また、感光性組成物の取扱性や導電膜を成形する際の作業性を向上することができる。
【0046】
<感光性有機成分>
感光性有機成分は、導電膜に光硬化性を付与する成分である。感光性有機成分は、紫外線等の光エネルギーの照射によって硬化する性質を有する成分である。本明細書において、「感光性有機成分」とは、光重合性または光変性の有機化合物全般をいう。一好適例として、不飽和結合を有する感光性樹脂と、活性種を発生させる光重合開始剤と、を含む混合物;所謂、ジアゾ樹脂(例えば、芳香族ビスアジドとホルムアルデヒドとの縮合体);エポキシ化合物等の付加重合性化合物と、ジアリルヨウドニウム塩等の光酸発生剤と、を含む混合物;ナフトキノンジアジド系化合物;等が挙げられる。なかでも、安定性等の観点から、感光性樹脂と光重合開始剤とを含む混合物が好ましい。
【0047】
感光性樹脂は、光重合開始剤の分解によって生じた活性種によって重合し、硬化する成分である。感光性樹脂は、不飽和結合を1つ以上有するモノマー、ポリマー、オリゴマーを包含する。感光性樹脂としては、従来公知のものの中から、用途や基材の種類等に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。一好適例として、(メタ)アクリロイル基やビニル基のようなラジカル重合性反応基を1つ以上有するラジカル重合性のモノマーが挙げられる。なかでも、導電膜の剥離を抑制する観点からは、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「メタクリロイル」および「アクリロイル」を包含し、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」および「アクリレート」を包含する用語である。
【0048】
(メタ)アクリレートモノマーは、1分子あたり1つの官能基を有する単官能(メタ)アクリレートと、1分子あたり2つ以上の官能基を有する多官能(メタ)アクリレートと、それらの変性物とを包含する。具体例として、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートや、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。このことにより、導電膜の伸縮性や柔軟性を一層向上することができ、基材との一体性を高めることができる。感光性樹脂全体に占めるウレタン(メタ)アクリレートの割合は、体積基準で、好ましくは30体積%以上、例えば50体積%以上であるとよい。
【0049】
光重合開始剤は、光照射によって分解し、ラジカルや陽イオン等の活性種を発生させ、感光性樹脂の重合反応を開始させる成分である。光重合開始剤としては、従来公知のものの中から、感光性樹脂の種類等に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。一好適例として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0050】
特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める感光性有機化合物の割合は、概ね0.1〜25質量%、典型的には0.5〜20質量%、例えば1〜15質量%であってもよい。また、感光性樹脂の含有比率は、導電性粉末100質量部に対して、例えば0.1〜30質量部であってもよい。また、光重合開始剤の含有比率は、感光性樹脂100質量部に対して、概ね0.001〜100質量部、例えば0.01〜10質量部であってもよい。
【0051】
<有機系分散媒>
感光性組成物は、上記した必須の成分に加えて、これらを分散させる有機系分散媒を含有してもよい。有機系分散媒は、感光性組成物に適度な粘性や流動性を付与して、感光性組成物の取扱性や導電膜を成形する際の作業性を向上する成分である。有機系分散媒としては、従来公知のものの中から、感光性有機化合物の種類等に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。一好適例として、ターピネオール、ジヒドロターピネオール(メンタノール)、テキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤;ジプロピレングリコールメチルエーテル、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、セロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)等のエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)、イソボルニルアセテート等のエステル系溶剤;トルエン、キシレン、ナフサ、石油系炭化水素等の炭化水素系溶剤;ミネラルスピリット;等の有機溶剤が挙げられる。
【0052】
なかでも、感光性組成物の保存安定性や導電膜形成時の取扱性を向上する観点からは、沸点が150℃以上の有機溶剤、さらには170℃以上の有機溶剤が好ましい。また、他の一好適例として、導電膜を印刷した後の乾燥温度を低く抑える観点からは、沸点が250℃以下の有機溶剤、さらには沸点が220℃以下の有機溶剤が好ましい。このことにより、生産性を向上すると共に、生産コストを低減することができる。
【0053】
また、例えばセラミック製の基材上に導電層を形成して、セラミック電子部品を製造する用途では、セラミックグリーンシートへの浸透性が低い有機溶剤が好ましい。セラミックグリーンシートへの浸透性が低い有機溶剤としては、例えば、シクロヘキシル基やtert−ブチル基等のように立体的に嵩高い構造を有する有機溶剤や、分子量の比較的大きな有機溶剤が挙げられる。さらに、例えば上記したようなセラミックグリーンシートへの浸透性が低い有機溶剤と、感光性組成物に含有される成分(例えば感光性有機成分)を好適に溶解し得る有機溶剤とを、任意の割合で混合して、有機系分散媒として用いることも好ましい。
【0054】
上記したような性状(沸点およびセラミックグリーンシートへの浸透性)を有する有機溶剤としては、例えば、ダワノールDPM(商標)(沸点:190℃、ダウ・ケミカル・カンパニー製)、ダワノールDPMA(商標)(沸点:209℃、ダウ・ケミカル・カンパニー製)、メンタノール(沸点:207℃)、メンタノールP(沸点:216℃)、アイソパーH(沸点:176℃、関東燃料株式会社製)、SW−1800(沸点:198℃、丸善石油株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
感光性組成物に有機系分散媒を含む場合、特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める有機系分散媒の割合は、概ね1〜50質量%、典型的には3〜30質量%、例えば5〜20質量%であってもよい。
【0056】
<有機バインダ>
感光性組成物は、上記した必須の成分に加えて、有機バインダを含有してもよい。有機バインダは、未硬化の導電膜と基材との接着性を高める成分である。有機バインダとしては、従来公知のものの中から、感光性有機化合物や基材の種類等に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。一好適例として、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系高分子、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。なかでも、エッチングで除去し易い観点から、セルロース系高分子やアクリル樹脂等の親水性の有機バインダが好ましい。
【0057】
<その他の成分>
感光性組成物は、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記した必須の成分に加えて、さらに必要に応じて種々の添加成分を加えることができる。添加成分としては、従来公知のものの中から、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。添加成分の一例としては、例えば、無機フィラー、光増感剤、重合禁止剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、ゲル化防止剤、安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、顔料等が挙げられる。特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める添加成分の割合は、概ね5質量%以下、例えば3質量%以下とするとよい。
【0058】
<感光性組成物の用途>
ここに開示される感光性組成物によれば、線間残渣の少なく、かつ、例えばライン幅が30μmよりも微細な、さらにはライン幅が20μmよりも微細な、ファインラインの導電層を、高解像度で安定して形成することができる。また、導電層の剥離や断線等を低減することができる。また、漏れ電流を低減すると共にショート不良の発生を抑制することができる。そのため、ここに開示される感光性組成物は、例えば、インダクタンス部品やコンデンサ部品、多層回路基板等の様々な電子部品における導電層の形成に好適に利用することができる。
【0059】
電子部品は、表面実装タイプやスルーホール実装タイプ等、各種の実装形態のものであってよい。電子部品は、積層型であってもよいし、巻線型であってもよいし、薄膜型であってもよい。インダクタンス部品の典型例としては、高周波フィルタ、コモンモードフィルタ、高周波回路用インダクタ(コイル)、一般回路用インダクタ(コイル)、高周波フィルタ、チョークコイル、トランス等が挙げられる。
【0060】
また、導電性粉末が金属−セラミックのコアシェル粒子を含む感光性組成物は、セラミック電子部品の導電層の形成に好適に利用することができる。なお、本明細書において、「セラミック電子部品」とは、非晶質のセラミック基材(ガラスセラミック基材)あるいは結晶質(すなわち非ガラス)のセラミック基材を有する電子部品全般を包含する。典型例として、セラミック製の基材を有する高周波フィルタ、セラミックインダクタ(コイル)、セラミックコンデンサ、低温焼成積層セラミック基材(Low Temperature Co-fired Ceramics Substrate:LTCC基材)、高温焼成積層セラミック基材(High Temperature Co-fired Ceramics Substrate:HTCC基材)等が挙げられる。
【0061】
図1は、積層チップインダクタ1の構造を模式的に示した断面図である。なお、
図1における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、図面中の符号X、Yは、それぞれ左右方向、上下方向を表す。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎない。
【0062】
積層チップインダクタ1は、本体部10と、本体部10の左右方向Xの両側面部分に設けられた外部電極20とを備えている。積層チップインダクタ1の形状は、例えば、1608形状(1.6mm×0.8mm)、2520形状(2.5mm×2.0mm)等のサイズである。
【0063】
本体部10は、セラミック層(誘電体層)12と内部電極層14とが一体化された構造を有する。セラミック層12は、例えば、導電性粉末の被覆部を構成し得るものとして上記したようなセラミック材料で構成されている。上下方向Yにおいて、セラミック層12の間には、内部電極層14が配置されている。内部電極層14は、上述の感光性組成物を用いて形成されている。セラミック層12を挟んで上下方向Yに隣り合う内部電極層14は、セラミック層12に設けられたビア16を通じて導通されている。このことにより、内部電極層14は、3次元的な渦巻き形状(螺旋状)に構成されている。内部電極層14の両端はそれぞれ外部電極20と接続されている。
【0064】
このような積層チップインダクタ1は、例えば、以下の手順で製造することができる。
すなわち、まず、原料となるセラミック材料とバインダ樹脂と有機溶剤とを含むペーストを調製し、これをキャリアシート上に供給して、セラミックグリーンシートを形成する。次いで、このセラミックグリーンシートを圧延後、所望のサイズにカットして、複数のセラミック層形成用グリーンシートを得る。次いで、複数のセラミック層形成用グリーンシートの所定の位置に、穿孔機等を用いて適宜ビアホールを形成する。
【0065】
次いで、上述の感光性組成物を用いて、複数のセラミック層形成用グリーンシートの所定の位置に、所定のコイルパターンの導電膜を形成する。一例として、以下の工程:(ステップS1)感光性組成物をセラミック層形成用グリーンシート上に付与して乾燥することにより、感光性組成物の乾燥体からなる膜状体を成形する工程;(ステップS2)膜状体に所定の開口パターンのフォトマスクを被せ、フォトマスクを介して露光し、膜状体を部分的に光硬化させる工程:(ステップS3)光硬化後の膜状体をエッチングしての未硬化の部分を除去する工程;を包含する製造方法によって、未焼成の状態の導電膜を形成することができる。
【0066】
なお、上記感光性組成物を用いて導電膜を形成するにあたっては、従来公知の手法を適宜用いることができる。例えば、(ステップS1)において、感光性組成物の付与は、スクリーン印刷等の各種印刷法や、バーコータ等を用いて行うことができる。感光性組成物の乾燥は、典型的には50〜100℃で行うとよい。(ステップS2)において、露光には、例えば10〜400nmの波長範囲の光線を発する露光機、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線照射灯を用いることができる。(ステップS3)において、エッチングには、例えば水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ成分を含む水溶液を用いることができる。
【0067】
次いで、未焼成の状態の導電膜が形成されているセラミック層形成用グリーンシートを複数枚積層し、圧着する。このことによって、未焼成のセラミックグリーンシートの積層体を作製する。次いで、セラミックグリーンシートの積層体を、例えば600〜1000℃で焼成する。これによって、セラミックグリーンシートが一体的に焼結され、セラミック層12と、感光性組成物の焼成体からなる内部電極層14とを備えた本体部10が形成される。そして、本体部10の両端部に適当な外部電極形成用ペーストを付与し、焼成することによって、外部電極20を形成する。
以上のようにして、積層チップインダクタ1を製造することができる。
【0068】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0069】
(銀粉末の用意)
まず、市販の7種類の銀粉末(銀粉末a〜g)を用意した。なお、これらの銀粉末は、全てJIS Z 8781:2013年に基づくL
*a
*b
*表色系において、明度L
*が50〜80である。
また、銀粉末aを用いて、銀粉末hを用意した。具体的には、まず、メタノールにジルコニウムブトキシドを添加して、コーティング液を調製した。次に、このコーティング液に銀粉末aを添加して1時間撹拌した。次に、コーティング液から固形分を回収し、100℃で乾燥した。これにより、銀粉末100質量部に対して、酸化ジルコニウム(ZrO
2)換算で0.5質量部となる量のジルコニウムブトキシドで表面コートされた銀粉末(銀−ジルコニアのコアシェル粒子)を得た。このようにして、銀粉末hを用意した。
【0070】
次に、熱重量測定装置を用いて、上記した加熱条件で銀粉末a〜hの有機成分量をそれぞれ測定した。結果を表1,2の「有機成分量」の欄に示す。また、表1,2には、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)によって検出される表面処理剤の種類と、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準のD
50粒径と、をあわせて示す。なお、表面処理剤の欄に「BTA系」とあるのは、ベンゾトリアゾール系化合物を表している。
【0071】
(感光性組成物の調製)
まず、表1,2に示す銀粉末と、ベヒクルとを用意した。ベヒクルは、感光性樹脂としてのウレタンアクリレートモノマーと、光重合開始剤としてのイルガキュア369(登録商標)(チバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)と、有機バインダと、重合禁止剤と、増感剤と、ゲル化防止剤と、紫外線吸収剤とを、有機溶媒としてのジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよびジヒドロターピネオールとに溶解させて調製した。そして、銀粉末とベヒクルとを77:23の質量比で混合することにより、感光性組成物(例1〜8、比較例1〜7)を調製した。
【0072】
(配線パターンの作製)
まず、ステンレス製のスクリーンを使用して、上記調製した感光性組成物を、市販のセラミックグリーンシート上にそれぞれ塗布した。次に、これを60℃で15分間乾燥させて、グリーンシート上に膜状体を成形した。次に、膜状体の上からフォトマスクを被せた。このとき、フォトマスクとしては、配線パターンのライン幅が20μmであり、隣り合ったラインの間隔部分(スペース)20μmであるもの(L/S=20μm/20μmのもの)を使用した。このフォトマスクを被せた状態で、露光機により2500mJ/cm
2の強度で光を照射し、膜状体を部分的に硬化させた。露光後、セラミックグリーングリーンシートに0.1質量%のNa
2CO
3水溶液を吹き付け、未硬化の膜状体部分をエッチング除去した後、純水で洗浄し、室温で乾燥させた。これにより、配線が渦巻き状に配置された配線パターン(スパイラルパターン)を作製した。
【0073】
(配線パターンの評価)
上記作製した配線パターンについて、残渣、剥離、線幅を評価し、これらの評価に基づいて総合評価を行った。
【0074】
・残渣の評価:
配線パターンを電子顕微鏡で観察し、得られた観察画像から、残渣の評価を行った。観察画像は、倍率200倍で撮影した。そして、観察画像で配線間のスペース部分に残存している線間残渣の数をカウントした。なお、線間残渣のカウントは複数視野について行い、その算術平均値を線間残渣の数とした。結果を、表1,2の「残渣の評価」の欄に示す。当該欄の表記は、下記の通りである。
「○」:線間残渣の数が、0個/視野(線間残渣が確認されなかった)
「△」:線間残渣の数が、1〜3個/視野
「×」:線間残渣の数が、4個以上/視野
【0075】
・剥離の評価:
上記観察画像から、剥離と断線の有無を確認した。結果を、表1,2の「剥離の評価」の欄に示す。当該欄の表記は、下記の通りである。
「○」:剥離なし
「×」:剥離有り
【0076】
・線幅の評価:
上記観察画像から、配線パターンの線幅を計測した。なお、線幅の計測は複数視野について行い、その算術平均値を、線幅とした。結果を、表1,2の「線幅」の欄に示す。また、評価の欄の表記は、下記の通りである。
「○」:20〜25μm(目標値)
「△」:25〜28μm
「×」:28μm以上
【0077】
・総合評価:
「○」:上記した残渣、剥離、線幅の各評価で、×が1つもない
「×」:上記した残渣、剥離、線幅の各評価で、×が1つ以上ある
【0080】
表1に示すように、有機成分量の少ない銀粉末aのみを使用した比較例1では、配線パターンに線幅のバラつきが大きく、所々に線幅の太りが確認された。その結果、平均の線幅が目標値よりも大きくなり過ぎて、安定したファインラインの形成が困難だった。この理由としては、導電膜の光硬化性が高すぎたために、フォトマスクの開口部分から散乱された光で遮光部分の導電膜の一部が硬化されてしまったことや、導電膜の耐エッチング性が高すぎたために、エッチングの際に未硬化部分の除去が不完全だったことが考えられる。
また、有機成分量の相対的に多い銀粉末bのみを使用した比較例2では、配線パターンに剥離や断線が多く確認され、配線パターンの形成が困難だった。この理由としては、エッチングの際に未硬化部分と共に硬化部が流れてしまったことが考えられる。
また、表面に脂肪酸とベンゾトリアゾール系化合物とが付着している銀粉末eのみを使用した比較例3では、配線パターンに剥離や断線が多く確認され、ファインラインの形成が困難だった。さらに、配線間のスペース部分には線間残渣が多く残っていた。
【0081】
これら比較例1〜3に対して、例1〜4では、銀粉末aと銀粉末bとを併用することにより、線間残渣がなく、かつ、ライン幅が28μm以下、さらには25μm以下に抑えられたファインラインの配線パターンを、高解像度で形成することができた。すなわち、配線の剥離や断線、ショート不良が無く、かつ配線間に安定してスペースの確保されたファインラインの配線パターンを形成することができた。
【0082】
表2では、2種類以上の銀粉末の混合系について、さらに検討を行っている。
表2に示すように、銀粉末bにかえて銀粉末cあるいは銀粉末dを使用した例5,6や、銀粉末aと銀粉末bとに加えてさらに銀粉末gを使用した例7、銀粉末aにかえて銀粉末hを使用した例8でも、例1〜3と同様に、ファインラインの配線パターンを高解像度で形成することができた。
一方で、銀粉末bにかえて銀粉末e〜gをそれぞれ使用した比較例4〜6、および銀粉末aと銀粉末bとの合計を銀粉末全体の80%と低減した比較例7では、配線間のスペース部分に線間残渣が多く残っていた。また、比較例5,6では、配線パターンに線幅のバラつきが大きく、線幅がやや目標値よりも大きかった。
【0083】
以上の結果から、熱重量分析に基づく有機成分量が0.1質量%以下である第1導電性粉末と、表面にベンゾトリアゾール系化合物が付着しており、熱重量分析に基づく有機成分量が少なくとも0.5%である第2導電性粉末とを併用し、かつこれらの合計を導電性粉末全体の90質量%以上の割合とすることにより、線間残渣の少ないファインラインの配線パターンを高解像度で形成することができるとわかった。
これらの結果は、ここに開示される技術の意義を示すものである。
【0084】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。