(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646646
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】筋肉の機能パラメータを入手する方法、装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
A61B8/08ZDM
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-502257(P2017-502257)
(86)(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公表番号】特表2017-520349(P2017-520349A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2015066440
(87)【国際公開番号】WO2016009057
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年6月20日
(31)【優先権主張番号】14306160.4
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】596076573
【氏名又は名称】ユニヴエルシテ・ピエール・エ・マリー・キユリー・パリ・シス
(73)【特許権者】
【識別番号】508266546
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ ディドロ−パリ 7
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DIDEROT−PARIS 7
(73)【特許権者】
【識別番号】515232158
【氏名又は名称】エコール・スーペリウール・ドゥ・フィジック・エ・ドゥ・シミ・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ビル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】タンテル,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ペルノット,マテュー
【審査官】
後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−528614(JP,A)
【文献】
特開2001−286473(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0049824(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0211256(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0059220(US,A1)
【文献】
Peter N. T. Wells et al.,Medical ultrasound: imaging of soft tissue strain and elasticity,Journal of the royal society interface,2011年11月 7日,vol.8, no.64,p.1521-1549
【文献】
五明 美香子,剪断波による組織粘性・弾性分布の画像化の検討,超音波医学,2014年 4月15日,第41巻、増刊号,第S452頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
医中誌Web
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部分を有する筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法であって、方法は:
a)超音波を筋肉に印加する工程と、
b)収集された超音波を入手するために、筋肉によって逆拡散された超音波を複数時間において収集する工程とを含み、
方法が:
c)収集された超音波に基づくせん断波の速度を使用することによって、筋肉の部分の少なくとも一部分の硬度値を表す第一の複数の値を、第一の複数時間が複数時間に包含される第一の複数時間において判定する工程と、
d)収集された超音波を使用することによって、部分の変形値を表す第二の複数の値を、第二の複数時間が複数時間に包含され、1対1の関係で第一の複数時間と関連する第二の複数時間において判定する工程と、
e)第一の複数の値および第二の複数の値に基づいて少なくとも一つの機能パラメータを推定する工程と、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程a)およびb)がインビボで実施される、請求項1記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項3】
筋肉が時間的期間、筋肉の周期の時間的期間を法として、200ミリ秒以下である第一の複数時間の時間と第二の複数時間の関連する時間との間の差の絶対値を有する周期を有する、請求項1または2記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項4】
機能パラメータが部分の機械的仕事量を表し、第一の複数の値および第二の複数の値が硬度−変形ループを形成し、工程e)において、機能パラメータが硬度−変形ループの面積である、請求項1〜3のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項5】
第一の複数の値および第二の複数の値が四つの変曲点を持つ硬度−変形ループを形成し、工程e)が変曲点の少なくとも一つに対して硬度値を表す第一の値および変形値を表す第二の値を判定することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項6】
第一の複数の値および第二の複数の値が四つの部分によって関連付けられた四つの変曲点を持つ硬度−変形ループを形成し、係数が機能パラメータである指数関数によって、工程e)が部分の少なくとも一つを曲線当てはめすることを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項7】
筋肉が反射粒子を有し、工程a)において、筋肉に弾性せん断波を発生させるために少なくとも一つの集束超音波が印加され、一連の超音波が印加されて、超音波の少なくとも一部が筋肉のエリアに侵入する一方でせん断波が同じエリアに伝わっており、工程b)において、収集された超音波が筋肉の反射粒子と相互作用する超音波圧縮波によって発生させられたエコーである、請求項1〜6のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項8】
方法が少なくとも一つの推定された機能パラメータをメモリユニット(20)に保存する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項9】
方法が少なくとも一つの推定された機能パラメータをディスプレイユニット(22)上にディスプレイする工程をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項10】
筋肉が心筋であり、部分が少なくとも心筋のセグメントであり、機能パラメータが拡張終期受動心筋硬度、心筋仕事量、変形のある受動心筋硬度変動および収縮終期心筋硬度の少なくとも一つである、請求項1〜9のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項11】
機能パラメータに対する複数の値を入手するために工程a)〜e)が反復される、請求項1〜10のいずれか1項記載の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法。
【請求項12】
筋肉の状態を監視する方法であって、方法は:
−請求項10または11記載の筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法を、前記筋肉の少なくとも一つの機能パラメータに対する複数の値を入手するために実施する工程と、
−比較基準によって機能パラメータに対する複数の値を機能パラメータに対する複数の期待値と比較する工程と、
−比較基準を満たさないケースでは警報を発する工程と
を含む方法。
【請求項13】
筋肉が心筋であり、状態が健康、スタンニング状態、虚血および梗塞からなるグループの中で選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一部分を有する筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する装置(10)であって、装置(10)は:
−超音波を筋肉に印加するように適合された印加ユニット(12)と、
−収集された超音波を入手するために、筋肉によって逆拡散された超音波を複数時間において収集するように適合された収集ユニット(14)と、
−以下の工程を実施するように適合された計算機(18)と:
−収集された超音波に基づくせん断波の速度を使用することによって、筋肉の部分の少なくとも一部分の硬度値を表す第一の複数の値を、第一の複数時間が複数時間に包含される第一の複数時間において判定する工程と、
−収集された超音波を使用することによって、部分の変形値を表す第二の複数の値を、第二の複数時間が複数時間に包含され、1対1の関係で第一の複数時間と関連する第二の複数時間において判定する工程と、
−第一の複数の値および第二の複数の値に基づいて少なくとも一つの機能パラメータを推定する工程
を含む装置。
【請求項15】
筋肉の状態を監視するシステム(23)であって、システムは:
−筋肉の少なくとも一つの機能パラメータに対する複数の値を入手するように適合された、請求項14記載の筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する装置(10)と、
−比較基準によって機能パラメータに対する複数の値を機能パラメータに対する複数の期待値と比較するように適合されたコンパレータ(24)と、
−比較基準を満たさないケースでは警報を発するように適合された警報ユニット(26)と
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法に関する。本発明は、機能パラメータを入手するそのような方法を使用して筋肉の状態を監視する方法にも関係する。本発明は、関連する装置およびシステムにも関する。
【0002】
発明の背景
拡張左室の機能の評価は、心不全および虚血性心筋症の評価にとって重大である。心筋硬度は、拡張機能において重要な役割を担うと考えられている。保持された駆出率(以下本明細書においてはEFと表記する)、左室(以下本明細書においてはLVと表記する)の異常を持つ心不全患者にとって、弛緩およびLV硬度は、重要な病態生理学的メカニズムの一つである。心筋硬度は、肥大型および拡張型心筋症の非常に強い予後パラメータでもあることが公知である。
【0003】
心筋梗塞のケースでは、組織ドプラおよびストレイン心エコー法は、収縮機能の評価のために心筋変形を追跡する確立された方法である。
【0004】
せん断波エラストグラフィ(SWE)は、軟部組織のせん断弾性率(すなわち硬度)をリアルタイムで定量的に計測することができるより最近の超音波技術である。SWEは、心筋硬度および心周期間のその変動を定量化することができる。
【0005】
しかし、心筋の完全なキャラクタリゼーションは、少なくとも二つの機能パラメータ、例えば、心筋硬度および心筋変形の計測を要する。
【0006】
発明の概要
本発明は、心筋機能または筋肉機能の非侵襲的キャラクタリゼーションの提供を可能にすることを目的とする。
【0007】
このために、本発明は、少なくとも一部分を有する筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法に関係し、方法は、:
a)超音波を筋肉に印加する工程と、
b)収集された超音波を入手するために、筋肉によって逆拡散された超音波を複数時間において収集する工程とを含み、
方法は、:
c)収集された超音波を使用することによって、筋肉の部分の少なくとも一部分の硬度値を表す第一の複数の値を、第一の複数時間が複数時間に包含される第一の複数時間において
判定する工程と、
d)収集された超音波を使用することによって、前記部分の変形値を表す第二の複数の値を、第二の複数時間が複数時間に包含され、1対1の関係で第一の複数時間と関連する第二の複数時間において
判定する工程と、
e)第一の複数の値および第二の複数の値に基づいて少なくとも一つの機能パラメータを推定する工程と
をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の採用で、拡張心筋硬度は、非侵襲的にアクセス可能である。
【0009】
そのようなアクセスは、同時に、硬度値を表す値および変形値を表す値が筋肉上で実施される計測のシーケンスによってそれぞれ入手される、とりわけ二つの個別の工程c)およびd)によって可能にされる。各計測は、収集された超音波を使用することによって達成される。
【0010】
そのような手法は、応力−ストレイン関係の推測を回避することを可能にする。応力は、非侵襲的に計測されることができず、ストレイン計測のみから得るには線形近似(フックの法則)を要する。そのようなフックの法則は、生体組織のケースにおいて、さらに筋肉のケースにおいて、近似である。換言すると、フックの法則の使用を回避することによって、線形関係と実際の関係との間に観察される変動は、筋肉の機能パラメータへのアクセスを与える。
【0011】
そのような変動は、超音波を使用することのみによって非侵襲的に入手されるため、筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法は、非侵襲的方法である。
【0012】
有利であるが強制的ではない本発明のさらなる態様によると、少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法は、任意の技術的に許容できる組み合わせで取り入れられる以下のフィーチャの一つまたは数個を具現化することができる:
−工程a)およびb)がインビボで実施される。
−筋肉が時間的期間、筋肉の周期の時間的期間を法として、200ミリ秒以下である第一の複数時間の時間と第二の複数時間の関連する時間との間の差の絶対値を有する周期を有する。
−機能パラメータが部分の機械的仕事量を表し、第一の複数の値および第二の複数の値が硬度−変形ループを形成し、工程e)において、機能パラメータが硬度−変形ループの面積である。
−第一の複数の値および第二の複数の値が四つの変曲点を持つ硬度−変形ループを形成し、工程e)が変曲点の少なくとも一つに対して硬度値を表す第一の値および変形値を表す第二の値を
判定することを含む。
−第一の複数の値および第二の複数の値が四つの部分によって関連付けられた四つの変曲点を持つ硬度−変形ループを形成し、係数が機能パラメータである指数関数によって、工程e)が部分の少なくとも一つを曲線当てはめすることを含む。
−筋肉が反射粒子を有し、工程a)において、筋肉に弾性せん断波を発生させるために少なくとも一つの集束超音波が印加され、一連の超音波が印加されて、前記超音波の少なくとも一部が筋肉の
エリアに侵入する一方でせん断波が同じ
エリアに伝わっており、工程b)において、収集された超音波が筋肉の反射粒子と相互作用する超音波圧縮波によって発生させられたエコーである。
−方法が少なくとも一つの推定された機能パラメータをメモリユニットに保存する工程をさらに含む。
−方法が少なくとも一つの推定された機能パラメータをディスプレイユニット上にディスプレイする工程をさらに含む。
−筋肉が心筋であり、部分が少なくとも心筋のセグメントであり、機能パラメータが拡張終期受動心筋硬度、心筋仕事量、変形のある受動心筋硬度変動および収縮終期心筋硬度の少なくとも一つである。
−機能パラメータに対する複数の値を入手するために工程a)〜e)が反復される。
−工程a)〜e)の各反復が筋肉の異なる動作コンディションに対応する。
【0013】
筋肉の状態を監視する方法が既に記載したように前記筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する方法を、前記筋肉の少なくとも一つの機能パラメータに対する複数の値を入手するために実施する工程を含むことも提案される。筋肉の状態を監視する方法は、比較基準によって機能パラメータに対する複数の値を機能パラメータに対する複数の期待値と比較する工程および比較基準を満たさないケースでは警報を発する工程も含む。
【0014】
好ましい実施態様によると、筋肉は、心筋であり、状態は、健康、スタンニング状態、虚血および梗塞からなるグループに選択される。
【0015】
それは、少なくとも一部分を有する筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する装置にも関係し、装置は、超音波を筋肉に印加するように適合された印加ユニットと、収集された超音波を入手するために、筋肉によって逆拡散された超音波を複数時間において収集するように適合された収集ユニットとを含む。装置は、収集された超音波を使用することによって、筋肉の部分の少なくとも一部分の硬度値を表す第一の複数の値を、第一の複数時間が複数時間に包含される第一の複数時間において
判定する工程を実施するように適合された計算機も含む。計算機は、収集された超音波を使用することによって、前記部分の変形値を表す第二の複数の値を、第二の複数時間が複数時間に包含され、1対1の関係で第一の複数時間と関連する第二の複数時間において
判定するようにさらに適合される。計算機は、第一の複数の値および第二の複数の値に基づいて少なくとも一つの機能パラメータを推定するようにも適合される。
【0016】
筋肉の状態を監視するシステムが既に記載したように筋肉の少なくとも一つの機能パラメータを入手する装置を含み、装置が前記筋肉の少なくとも一つの機能パラメータに対する複数の値を入手するように適合されることも提案される。システムは、比較基準によって機能パラメータに対する複数の値を機能パラメータに対する複数の期待値と比較するように適合されたコンパレータおよび比較基準を満たさないケースでは警報を発するように適合された警報ユニットも含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、本発明の目的を制限することなく、付属図と一致して実例として与えられている以下の記載を基にしてよりよく理解される。付属図において:
【
図1】少なくとも一つの心筋機能パラメータを入手する装置の模式図である。
【
図2】心筋の状態を監視するシステムの模式図であり、システムが
図1の装置を含む。
【
図3】硬度−セグメントループの例を図示するグラフである。
【
図4】
図3に基づく検査された心筋セグメントの機械的仕事量の変遷を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施態様を実施するための形態
少なくとも一つの心筋機能パラメータを入手する装置10を
図1上に表す。
【0019】
そのような装置10は、心筋機能パラメータを入手するように適合される。定義によれば、機能パラメータは、筋肉の特性に対するパラメータ、筋肉の代謝に対するパラメータまたは筋肉の働きに対するパラメータである。
【0020】
心筋機能パラメータは、例として、拡張終期受動心筋硬度、心筋の具体的なセグメントの心筋仕事量、変形のある受動心筋硬度変動または収縮終期心筋硬度である。
【0021】
装置10は、印加ユニット12と、収集ユニット14と、コンピュータユニット16とを含む。
【0022】
印加ユニット12は、超音波を心筋に印加するように適合される。
【0023】
図1の例によると、印加ユニット12は、多くのトランスデューサを含む。
【0024】
あるいは、印加ユニット12は、一つのトランスデューサのみを含む。
【0025】
収集ユニット14は、筋肉によって逆拡散された超音波を収集するように適合される。
【0026】
図1の例によると、収集ユニット14は、多くのトランスデューサを含む。
【0027】
あるいは、収集ユニット14は、一つのトランスデューサのみを含む。
【0028】
もう一つの実施態様によると、印加ユニット12と収集ユニット14は、同じユニットである。
【0029】
コンピュータユニット16は、計算機18と、メモリユニット20と、ディスプレイユニット22とを含む。
【0030】
計算機18は、計算を実施するように適合される。
【0031】
図1の例によると、計算機18は、プロセッサである。
【0032】
メモリユニット20は、データを保存するように適合される。
【0033】
ディスプレイユニット22は、データをディスプレイするように適合される。
【0034】
例として、ディスプレイユニット22は、スクリーンである。
【0035】
もう一つの実施態様によると、計算機18と、メモリユニット20と、ディスプレイユニット22は、腕時計に含まれる。これは、持ち運び可能な装置10を入手することを可能にする。
【0036】
ここで、少なくとも一つの心筋機能パラメータを入手する方法を参照して、装置10の働きを記載する。
【0037】
印加ユニット12は、印加ユニット12を使用して、一つの集束超音波を心筋に印加する。集束超音波は、筋肉に弾性せん断波を発生させる。
【0038】
印加ユニット12は、次に、一連の超音波を印加して、少なくとも一部の前記超音波が心筋のセグメントに侵入する一方でせん断波が心筋の同じセグメントに伝わっている。
【0039】
心筋が反射粒子を有するため、エコーは、心筋の反射粒子と相互作用する超音波圧縮波によって発生させられる。そのようなエコーは、逆拡散された超音波と呼ばれる。
【0040】
具体的な実施態様では、一連の超音波は、一連の集束超音波である。これは、とりわけ超高速イメージングのケースである。
【0041】
もう一つの実施態様では、一連の超音波は、一連の非集束超音波である。これは、とりわけカルジオスコープのケースである。
【0042】
収集ユニット14は、次に、逆拡散された超音波を複数時間において収集する。
【0043】
そのような収集は、値を
判定するために分析されることができる複数の画像を入手することを可能にする。
【0044】
計算機18は、次に、収集された超音波を使用することによって、筋肉の部分の少なくとも一部分の硬度値を表す第一の複数の値を、第一の複数時間が複数時間に包含される第一の複数時間において
判定する。
【0045】
値は、硬度を表し、硬度に関連付けられる任意の物理量である。
【0046】
例として、心筋のせん断弾性率μは、硬度を表す値である。せん断波が筋肉で異方的に伝わるため、そのようなせん断弾性率Eは、数方向に沿った心筋の数個のせん断弾性率μ
directionの平均値である。
【0047】
あるいは、具体的な方向への心筋のせん断弾性率μ
directionも、硬度を表す値である。μ
parallelと表記される心筋の繊維の方向に沿ったせん断弾性率およびμ
perpendicularと表記される心筋の繊維の方向と垂直な方向に沿ったせん断弾性率は、具体的な方向への心筋のせん断弾性率の例である。
【0048】
もう一つの例としては、心筋のヤングの弾性率Eは、硬度を表す値である。その名の通り、ヤングの弾性率Eは、関係E=3μによってせん断弾性率μと関連付けられる。せん断波が筋肉で異方的に伝わるため、そのようなヤングの弾性率μは、数方向に沿った心筋の数個のヤングの弾性率E
directionの平均値である。
【0049】
あるいは、具体的な方向への心筋のヤングの弾性率E
directionも、硬度を表す値である。E
parallelと表記される心筋の繊維の方向に沿ったヤングの弾性率およびE
perpendicularと表記される心筋の繊維の方向と垂直な方向に沿ったヤングの弾性率は、具体的な方向への心筋のヤングの弾性率の例である。
【0050】
もう一つの例としては、心筋におけるせん断波の伝播速度c
Sは、硬度を表す値である。心筋におけるせん断波の伝播速度c
Sは、以下の関係により、ヤングの弾性率E
directionに関連付けられる:
【数1】
ここで、ρは、心筋の密度である。
【0051】
せん断波が筋肉で異方的に伝わるため、心筋におけるせん断波のそのような伝播速度c
Sは、数方向に沿った心筋におけるせん断波の数個の伝播速度c
S_directionの平均値である。
【0052】
あるいは、具体的な方向への心筋におけるせん断波の伝播速度c
S_directionも、硬度を表す値である。c
S_parallelと表記される心筋における繊維の方向に沿ったせん断波の伝播速度およびc
S_perpendicularと表記される心筋における繊維の方向と垂直な方向に沿ったせん断波の伝播速度は、具体的な方向への心筋におけるせん断波の伝播速度c
S_directionの例である。
【0053】
計算機18は、次に、収集された超音波を使用することによって、前記部分の変形値を表す第二の複数の値を、第二の複数時間において
判定する。
【0054】
値は、変形を表し、変形に関連付けられる任意の物理量である。
【0055】
累積変形は、変形を表す値の例である。
【0056】
セグメントの長さは、変形を表す値の例である。
【0057】
そのような長さは、任意の方向に沿って計測される。繊維の方向に沿った長さや、繊維の方向と垂直な方向に沿った長さは、考慮されることができるセグメントの長さの具体的な例である。
【0058】
基準長さに正規化されるセグメントの長さは、変形を表す値のもう一つの例である。
【0060】
第二の複数時間は、複数時間に包含され、1対1の関係で第一の複数時間と関連する。
【0061】
好ましくは、第一の複数時間の時間と第二の複数時間の関連する時間との間の差の絶対値は、心周期の時間的期間を法として、100ミリ秒以下である。
【0062】
同じ心周期の間に計測が実施されるケースでは、第一の複数時間の時間と第二の複数時間の関連する時間との間の差の絶対値は、200ミリ秒以下である。
【0063】
より好ましくは、第一の複数時間の時間と第二の複数時間の関連する時間との間の差の絶対値は、心周期の時間的期間を法として、20ミリ秒以下である。
【0064】
同じ心周期の間に計測が実施されるケースでは、第一の複数時間の時間と第二の複数時間の関連する時間との間の差の絶対値は、20ミリ秒以下である。
【0065】
図3上で可視であるように、第一の複数の値および第二の複数の値は、硬度−変形ループを形成する。
図3は、硬度−セグメントループの例を図示する。SWEによって計測された硬度は、基準線(点線)、冠閉塞の5分後(実線)、閉塞の2時間後(太線)および再かん流の40分後(破線)に対するセグメント長さの関数としてプロットされる。
【0066】
そのようなループは、下側部分、上側部分および二つの側面部分の四つの部分によって関連付けられた四つの変曲点を含む。ループが下側部分から開始して連続的にたどられるとき、下側部分がたどられ、次に、第一の側面部分がたどられ、次に、上側部分がたどられ、次に、第二の側面部分がたどられる。
【0067】
心筋の具体的なケースでは、下側部分と第一の側面部分とに共通する変曲点は、拡張終期点と呼ばれるが、上側部分と第二の側面部分とに共通する変曲点は、収縮終期点と呼ばれる。
【0068】
計算機18は、次に、第一の複数の値および第二の複数の値に基づいて少なくとも一つの心筋機能パラメータを推定する。
【0069】
例によると、心筋機能パラメータは、セグメントの機械的仕事量を表す。そのようなケースでは、心筋機能パラメータは、硬度−変形ループの面積を計算することによって入手される。そのような計算は、
図3のデータを所与として、
図4上に概略的に図示される。
【0070】
もう一つの例によると、推定の工程において、少なくとも一部分は、係数が心筋機能パラメータである指数関数によって曲線当てはめされる。
【0071】
例として、心筋機能パラメータは、拡張終期受動心筋硬度を表し、そのような心筋機能パラメータは、下側部分を曲線当てはめすることによって入手される。
図3は、二つのループの下側部分に当てはまる二つの例示的な指数関数を示すことによって、そのような曲線当てはめの工程を図示する。これら二つの例示的な指数関数は、β1およびβ2と表記される二つの係数をそれぞれ有する。
【0072】
もう一つの例によると、推定の工程は、変曲点の少なくとも一つに対して、硬度値を表す第一の値(硬度座標)および変形値を表す第二の値(変形座標)を
判定することを含む。
【0073】
例として、心筋のケースでは、拡張終期点の硬度座標および変形座標ならびに収縮終期点の硬度座標および変形座標を入手することは、有益である。
【0074】
推定工程の最後において、少なくとも一つの心筋機能パラメータが推定される。
【0075】
そのような推定された心筋機能パラメータは、メモリユニット20に保存され、ディスプレイユニット22上にディスプレイされる。
【0076】
少なくとも一つの心筋機能パラメータを入手する方法は、硬度−変形ループを使用することによって、心筋機能パラメータを入手することを可能にする。
【0077】
そのような硬度−変形ループは、非侵襲的に入手可能である。実際に、好ましい実施態様によると、入手する方法に示唆された計測は、インビボで実施される。
【0078】
加えて、少なくとも一つの心筋機能パラメータを入手する方法は、先行技術に属する方法では容易にアクセス可能でない心筋機能パラメータにアクセスすることを可能にする。とりわけ、心筋のセグメントの機械的仕事量は、先行技術の方法にとってアクセスすることが困難な量である。
【0079】
さらに、少なくとも一つの心筋機能パラメータを入手する方法が侵襲的方法と同様に正確であることを示すことができる。
【0080】
そのような正確さは、実験的に実証された。実際に、装置10を使用した実験は、開胸羊モデルで行われた。胸骨切開後、印加ユニット12の超音波トランスデューサが左室の自由壁の前に設置された。せん断波イメージングおよびストレインイメージングを組み合わせたシーケンスが使用された。せん断波イメージングは、心周期にわたる心筋硬度変化を定量化するために、1秒間に15Hzの繰り返し数で行われた。心筋ストレインは、同じ心周期の間、超音波画像上で計測された。硬度−ストレイン曲線ループは、これら二つの非侵襲的超音波に基づく計測から入手された。冠閉塞の間、同じ実験が虚血壁上で行われた。ループの面積は、基準線と比較して大幅に減少した(ほぼ0に等しい)。硬度−ストレインループの面積は、セグメントの仕事量と相関関係があった。
【0081】
機能パラメータを入手するそのような方法は、他の筋肉にも適用可能である。例として、筋肉は、子宮またはスポーツの実践に関わる筋肉である。
【0082】
実施態様によると、機能パラメータを入手するそのような方法は、心筋機能パラメータに対する複数の値を入手するために、数回反復される。
【0083】
そのようなケースでは、比較が達成可能である。
【0084】
比較は、心筋の異なる動作コンディションに対して実施されることができる。例として、心筋は、医薬品にさらされているまたは人が身体的努力の異なる段階にいる場合がある。
【0085】
比較は、時間的であることもでき、機能パラメータの変遷は、心筋の動作の異常を示すことができる。
【0086】
これに対して、
図2上に表すように、心筋の状態を監視するシステム23を提案する。「状態」という表現は、心筋の動作の評価を意味する。悪いおよび良いは、心筋の状態である。中間の状態は、存在する。例として、心雑音も心筋の状態である。
【0087】
システム23は、
図1上に図示されたような少なくとも心筋を入手する装置10と、コンパレータ24と、警報ユニット26とを含む。
【0088】
装置10は、心筋の少なくとも一つの心筋機能パラメータに対する複数の値に適合される。
【0089】
コンパレータ24は、比較基準によって、心筋機能パラメータに対する複数の値を心筋機能パラメータに対する複数の期待値と比較するように適合される。
【0090】
コンパレータ24は、例として、プロセッサである。
【0091】
比較基準は、監視の種類によって異なることができる。
【0092】
例としては、比較基準は、所定の閾値である。例として、セグメントの機械的仕事量が所与の値未満である場合、これは、当該セグメントが良い状態にないことを意味する。
【0093】
例としては、比較基準は、経時的心筋機能パラメータおよび、とりわけ、所与の時刻における経時的心筋機能パラメータの微分の値の変遷に対するものである。
【0094】
梗塞の予防については、拡張終期受動心筋硬度に関する比較基準は、拡張終期受動心筋硬度と梗塞との間で強い相関関係を示した。
【0095】
虚血の発見については、セグメントの機械的仕事量の変遷に関する比較基準が考慮される。
【0096】
警報ユニット26は、比較基準を満たさないケースでは警報を発するように適合される。
【0097】
警報は、可聴アラームまたは可視アラームであることができる。
【0098】
そのようなシステム23は、効率的に心筋の状態を監視することを可能にする。
【0099】
好ましくは、システム23は、持ち運び可能である。
【0100】
本明細書において先に考慮された実施態様および代替実施態様は、本発明のさらなる実施態様を発生させるために組み合わされることができる。