特許第6646689号(P6646689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646689機能性物質を含有するカプセル及びその製造方法
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  • 特許6646689-機能性物質を含有するカプセル及びその製造方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646689
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】機能性物質を含有するカプセル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/14 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   B01J13/14
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-564292(P2017-564292)
(86)(22)【出願日】2017年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2017002464
(87)【国際公開番号】WO2017131003
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-11485(P2016-11485)
(32)【優先日】2016年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】別府 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】松尾 嘉英
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−167222(JP,A)
【文献】 特開2007−226059(JP,A)
【文献】 特開2007−144282(JP,A)
【文献】 国際公開第94/027630(WO,A1)
【文献】 特表2014−527028(JP,A)
【文献】 特表2008−510688(JP,A)
【文献】 ADHIRAJAN, N. et al.,Gelatin microspheres cross-linked with EDC as a drug delivery system for doxycyline : Development and characterization,Journal of Microencapsulation,2007年11月,Vol.24, No.7,p.659-671
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/14
A23L 5/00
A23L 29/281
A61K 8/65
A61K 47/42
A61Q 19/00
C08J 3/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンと機能性物質を混合する工程、該ゼラチンは100g以上のゼリー強度を有する
カルボジイミド架橋剤を添加し、ゼラチンをカルボジイミド架橋剤により架橋する工程、該カルボジイミド架橋剤は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、及びこれらの塩からなる群から選択される
架橋されたゼラチンを固化する工程;及び
固化したゼラチンを粉砕する工程;
を含む、カプセルの製造方法。
【請求項2】
前記カルボジイミド架橋剤を5mM〜200mMの濃度で含有する溶液中でゼラチンを架橋する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ゼラチンと前記カルボジイミド架橋剤を、1:0.06〜1:0.2の重量比で反応させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記機能性物質は10g/L以下の水溶性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ゼラチンが、110〜180gのゼリー強度を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
機能性物質及びカルボジイミド架橋剤により架橋されたゼラチンを含んでなる、カプセルであって、
該機能性物質は10g/L以下の水溶性を有し、
該ゼラチンは100g以上のゼリー強度を有し、そして
該カルボジイミド架橋剤は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、及びこれらの塩からなる群から選択される、
前記カプセル
【請求項7】
前記ゼラチンが、110〜180gのゼリー強度を有する、請求項6に記載のカプセル。
【請求項8】
前記ゼラチンが酸処理ゼラチンである、請求項6又は7に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性物質を含有するカプセル及びその製造方法に関する。より詳細には、機能性物質を含有する、架橋ゼラチンカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、様々な機能性物質が天然素材から発見され又は人工的に合成され、飲食品、化粧品、及び医薬品などの様々な分野で利用されてきている。しかし、機能性物質は、酸、アルカリ、熱、又は酸素などに対して不安定であったり、或いは溶媒に対する溶解性や分散性が良くないなどの性質を有するものも多い。このため、機能性物質の使用が制限されることがある。この問題に対処する手段として、機能性物質をカプセルで包んで安定化させ、必要なときにカプセルを破壊して内容物を放出させるシェル型カプセルに関する技術が知られており、カプセルの壁物質を架橋剤で架橋させた、架橋型カプセルに関する技術が報告されている。例えば、生体高分子をトランスグルタミナーゼなどの架橋剤により架橋することで、強度の高いカプセルを得る方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/072379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、強度の高いカプセルによっては、使用時に機能性物質が適切に放出されない場合がある。強度の高いカプセルを皮膚等に適用した場合は、皮膚へのなじみがよくなかったり、ざらざらした触感を生じさせるなど、使用感に改善の余地がある。また、飲食品に適用した場合は、摂食時のざらついた食感や機能性物質の放出等について改善の余地がある。本発明は、長期保存しても形状を維持し得る強度を有しながら、使用の際に容易に壊すことができる、使用感のよいカプセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、カプセルの壁剤であるゼラチンをカルボジイミド架橋剤で架橋することにより、カプセルの形状が安定化されることを見出した。そして、当該カプセルは使用時に容易に崩壊することができ、使用感が良いことも見出した。当該事項に基づき、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、限定されないが、以下を提供する。
(1)ゼラチンと機能性物質を混合する工程;
カルボジイミド架橋剤を添加し、ゼラチンをカルボジイミド架橋剤により架橋する工程;
架橋されたゼラチンを固化する工程;及び
固化したゼラチンを粉砕する工程;
を含む、カプセルの製造方法。
(2)前記カルボジイミド架橋剤を5mM〜200mMの濃度で含有する溶液中でゼラチンを架橋する、(1)に記載の製造方法。
(3)前記ゼラチンと前記カルボジイミド架橋剤を、1:0.06〜1:0.2の濃度比で反応させる、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記カルボジイミド架橋剤が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、及びこれらの塩からなる群から選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記ゼラチンが、100g以上のゼリー強度を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)機能性物質及びカルボジイミド架橋剤により架橋されたゼラチンを含んでなる、カプセル。
(7)前記ゼラチンが、100g以上のゼリー強度を有する、(6)に記載のカプセル。
(8)前記ゼラチンが酸処理ゼラチンである、(6)又は(7)に記載のカプセル。
【発明の効果】
【0007】
ゼラチンをカルボジイミド架橋剤により架橋することにより得られるカプセルは、長期間安定でありながら、使用時には容易に崩壊され、包接した機能性物質を適切に放出し、かつ使用感も良好である。当該カプセルは、化粧品や医薬部外品などの皮膚用外用剤並びに飲食品に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、カプセルのテクスチャーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<カプセル>
本明細書でいうカプセルとは、ゼラチン及びカルボジイミド架橋剤により構成されるカプセル、及び当該カプセルに包接された機能性物質を含んでなる。理論に拘束されないが、カプセルに機能性物質を包接することにより、機能性物質の活性や安定性を妨げる物質や環境と、機能性物質との接触を避け得、及び/又は機能性物質の溶媒に対する溶解性や分散性を改善し得る。
【0010】
機能性物質
本発明における「機能性物質」とは、本発明のカプセルに包接し得る物質であればよく、使用目的に応じて適宜選択することができる。活性や安定性の維持、又は分散性や溶解性の改善等、カプセルに包接することにより何らかの利益がもたらされるものを機能性物質として選択するのが好ましい。機能性物質は、物質の水溶性に基づいて選択することができ、好ましくは水溶性の低い物質を選択する。ここで、水溶性の低い物質とは、水に溶けにくい(溶質1gを溶かすために必要な溶媒量が100mL以上1000mL未満(日本薬局方解説書))物質、水に極めて溶けにくい(溶質1gを溶かすために必要な溶媒量が1000mL以上10000mL未満(日本薬局方解説書))物質、又は水にほとんど溶けない(溶質1gを溶かすために必要な溶媒量が10000mL以上(日本薬局方解説書))物質をいう。機能性物質として選択することのできる物質の水溶性は、例えば、10g/L以下、5g/L以下、2g/L以下、1.5g/L以下、又は1.0g/L以下であればよい。当該水溶性の下限を設定する必要はないが、例示するとすれば、0.0001g/L以上、0.001g/L以上、又は0.005g/L以上としてもよい。また、機能性物質は、物質のオクタノール/水分配係数(LogPow)に基づいて選択することもできる。例えば、オクタノール/水分配係数が1.0以上、1.2以上、1.4以上の物質を機能性物質として選択することができる。当該係数の上限を設定する必要はないが、例示するとすれば、20以下、15以下、10以下、5以下としてもよい。
【0011】
機能性物質として、限定されないが、ポリフェノール類が挙げられる。ポリフェノール類として、例えば、リグナン類、カテキン類、フラボノール類、アントシアニン類、イソフラボン類、フェルラ酸、エラグ酸又はその誘導体等が挙げられる。リグナン類としては、セサミン、セサミノール、エピセサミン、エピセサミノール、セサモリン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2,6−ビス−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2,6−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン等を挙げることができ、セサミンを好適に用いることができる。カテキン類として、例えば、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートなどが挙げられる。
【0012】
カプセルにおける機能性物質の含有量は特に限定されないが、カプセル全体量に対して、例えば、0.15〜50重量%、好ましくは1.0〜40重量%、より好ましくは2.0〜35重量%とすることができる。
【0013】
ゼラチン
本発明において「ゼラチン」は、カプセルの壁剤として用いられる。ゼラチンの由来は特に限定されないが、豚由来(例えば、豚皮、豚骨)、魚由来(例えば、魚鱗、魚皮)、牛由来(例えば、牛骨、牛皮)などが挙げられ、豚由来、特に豚皮由来のゼラチンが好ましい。また、ゼラチンの製法も特に限定されず、酸処理ゼラチン、化学修飾ゼラチン、両性処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンなどがあってもよい。例えば、豚、魚、牛などからコラーゲンを加熱抽出し、酸又はアルカリで前処理した後、加水分解による可溶化を経て、ゼラチンを製造することができる。本発明においては、アルカリ処理ゼラチン及び酸処理ゼラチンのいずれを用いてもよいが、酸処理ゼラチンが特に好ましい。ゼラチンにはAタイプとBタイプがあり、Aタイプの等イオン点はpH8〜9であり、Bタイプの等イオン点はpH5である。中性から弱酸性のpH領域では、Aタイプゼラチンはプラス、Bタイプゼラチンはマイナスに荷電する。従って、本発明においては、Aタイプのゼラチンが好ましく、酸処理されたAタイプゼラチンがより好ましい。本発明においては、一般的に入手可能なゼラチンを用いてもよく、ゼラチン(ナカライテスク製)、ゼラチン(和光純薬工業製)、ゼラチン(三光純薬製)、ゼラチン(株式会社ニッピ)、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社)などを用いてもよい。
【0014】
カプセルに用いることのできるゼラチンは、ゼリー強度に基づいて選択することもできる。ここで、ゼラチンのゼリー強度は、特に限定されないが、例えば、100g以上、好ましくは110〜180g、より好ましくは135〜165gとすることができる。ここでゼリー強度は、品質規格「にかわ及びゼラチン」JIS K6503−1996に定められているように、6.67%ゼラチン溶液を、10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を、2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重として定義することができる。本明細書においては、ゼリー強度は、当該方法に基づいて測定されるものとする。
【0015】
ゼラチンの含有量はカプセルが形成される限り特に限定されないが、カプセル全体量に対して、例えば、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%である。機能性物質とゼラチンとの含有比[機能性物質の重量:ゼラチンの重量]は、1:0.01〜1:1000、好ましくは1:0.1〜1:500、より好ましくは1:1〜1:200である。
【0016】
カルボジイミド架橋剤
本発明において、「カルボジイミド架橋剤」とは、−N=C=N−で表される官能基を含み、縮合剤として働いて、ゼラチンを架橋することができる化合物をいう。本発明においては、水溶性のカルボジイミド架橋剤又はその塩を用いることが好ましい。当該塩には、塩酸塩、スルホン酸塩などが含まれる。例えば、本発明におけるカルボジイミド架橋剤又はその塩には、水溶性カルボジイミド(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド:WSC)又はその塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド(CME−カルボジイミド)又はその塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はその塩、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)又はその塩などが含まれ、塩化合物としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホナートなどが含まれるが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いることが特に好ましい。
【0017】
カルボジイミド架橋剤の含有量は特に限定されないが、架橋反応前の濃度を5〜200mM、好ましくは10〜150mM、より好ましくは20〜100mMとすることができる。或いは、カルボジイミド架橋剤の含量は、架橋反応前におけるゼラチンとの関係で規定することができる。架橋反応前におけるゼラチンとカルボジイミド架橋剤の重量比[ゼラチンの重量:カルボジイミド架橋剤の重量]は、例えば、1:0.06〜1:0.2、好ましくは1:0.08〜1:0.187、より好ましくは1:0.09〜1:0.1とすることができる。
【0018】
その他の成分
本発明のカプセルは、さらなる機能性物質を含有してもよい。当該機能性物質としては、例えば、ビタミン類やポリフェノール類などが挙げられる。さらなる機能性物質の含有量は適宜設定することができる。また、これに加え、飲食品、医薬、化粧料の分野で一般的に用いられる賦形剤をカプセルに含有させることもできるが、これに限定されない。例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、水などを配合することができる。
【0019】
カプセルの特性
本発明のカプセルの特性は、当業者に知られたずれの手法によって評価してもよい。例えば、カプセルの形状については、カプセルを保存した後、カプセルの形状を観察することによって行うことができる。当該保存は、室温であってもよいが、温度や湿度などが制御された条件で行うことが好ましい。例えば、加速条件(例えば、40℃、75%RH)や苛酷条件(例えば、50℃±2℃、75%RH±5%RH)の下でカプセルを保存し、所定期間経過後に、カプセルの形状を観察することができる。
【0020】
カプセルの使用感についても、上記と同様の条件下でカプセルを保存した後、評価することができる。カプセルの使用感は、例えば、カプセルを指、手の甲や前腕内側部などの皮膚に接触させ、塗布することにより得られる触感に基づいて、又はカプセルを摂食した際の感覚に基づいて評価することができる。
【0021】
カプセルのその他の物性、例えば、テクスチャー、硬さ、もろさ、付着性、凝縮性、ガム性、そしゃく性、及び弾力性などを解析し、カプセルが使用目的に適した性質を有しているか評価することもできる。このような解析は、例えば、テクスチャーアナライザー(島津製作所社製、EZ-X)を使用することにより行うことができる。
【0022】
<組成物>
本発明のカプセルを配合して組成物としてもよい。例えば、本発明のカプセルを含有する飲食品、医薬品、又は化粧料などが挙げられる。当該組成物における本発明のカプセルの含有量は特に限定されないが、組成物全体量に対して、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%とすることができる。
【0023】
本発明の組成物は、1種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、飲食品、医薬、化粧料の分野で一般に用いられるものであればよい。例えば、非イオン性界面活性剤、特に、グリセリン系界面活性剤、ソルビタン系界面活性剤などが挙げられる。グリセリン系界面活性剤としては、モノオレイン酸ポリグリセリルなどが挙げられ、ソルビタン系界面活性剤としては、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)などが挙げられる。
【0024】
本発明の組成物はさらなる機能性物質を含んでいてもよい。当該機能性物質としては、例えば、ビタミン類やポリフェノール類などが挙げられる。さらなる機能性物質の含有量は適宜設定することができる。またこれに加え、飲食品、医薬、化粧料の分野で一般的に用いられる賦形剤を含むことができるが、これに限定されない。例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、水などを配合することができる。
【0025】
使用態様
本発明の組成物は、限定されないが、化粧品、飲食品、医薬品などに適用できる。例えば、美白化粧料や医薬部外品などの皮膚外用剤、並びに特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、及びサプリメント等の飲食品として用いることができる。組成物は、クリーム、軟膏、乳液、ローション、溶液、ゲル、パック、スティックなど、いずれの形状であってもよい。
【0026】
<カプセルの製造方法> 本発明のカプセルの製造方法は限定されないが、化学的方法、物理化学的方法、機械的方法、又はこれらの組み合わせのいずれによっても調製することができる。例えば、ゼラチンと機能性物質を混合し、カルボジイミド架橋剤を添加することによりゼラチンを架橋し、固化させ、固化したゼラチンを粉砕し、粉砕物を回収することにより、カプセルを得ることができる。
【0027】
一態様として、ゼラチンと機能性物質を精製水の中で混合し、60℃に加熱してゼラチンを溶解し、その後カルボジイミド架橋剤を添加、混合し、ゼラチンを架橋し、固化させる。固化したゼラチンを細切後、ディストロミクスで粉砕(例えば、7000rpm、2分間、室温)後、粉砕物を1mmの篩に移し、未粉砕物を除去した後、100μmの篩に移し、篩を通過しない画分をカプセルとして回収することができる。
【0028】
機能性物質は、本発明のカプセルに包接し得る物質であればよく、使用目的に応じて適宜選択することができる。機能性物質は、物質の水溶性に基づいて選択することができ、好ましくは水溶性の低い物質を選択する。ここで、水溶性の低い物質とは、水に溶けにくい(溶質1gを溶かすために必要な溶媒量が100mL以上1000mL未満(日本薬局方解説書))物質、水に極めて溶けにくい(溶質1gを溶かすために必要な溶媒量が1000mL以上10000mL未満(日本薬局方解説書))物質、又は水にほとんど溶けない(溶質1gを溶かすために必要な溶媒量が10000mL以上(日本薬局方解説書))物質をいう。機能性物質として選択することのできる物質の水溶性は、例えば、10g/L以下、5g/L以下、2g/L以下、1.5g/L以下、又は1.0g/L以下であればよい。当該水溶性の下限を設定する必要はないが、例示するとすれば、0.0001g/L以上、0.001g/L以上、又は0.005g/L以上としてもよい。また、機能性物質は、物質のオクタノール/水分配係数(LogPow)に基づいて選択することもできる。例えば、オクタノール/水分配係数が1.0以上、1.2以上、1.4以上の物質を機能性物質として選択することができる。当該係数の上限を設定する必要はないが、例示するとすれば、20以下、15以下、10以下、5以下としてもよい。
【0029】
機能性物質として、限定されないが、ポリフェノール類が挙げられる。ポリフェノール類には、上記したように、リグナン類、カテキン類、フラボノール類、アントシアニン類、イソフラボン類、フェルラ酸、エラグ酸又はその誘導体等が含まれる。
【0030】
機能性物質の添加量は、最終産物のカプセル中の機能性物質の含量に基づいて設定することができる。例えば、カプセル全体に占める機能性物質の含量が、0.15〜50重量%、好ましくは1.0〜40重量%、より好ましくは2.0〜35重量%となるように、機能性物質を添加することができる。
【0031】
カプセルの製造において、ゼラチンが添加される。ゼラチンの由来は特に限定されず、豚由来(例えば、豚皮、豚骨)、魚由来(例えば、魚鱗、魚皮)、牛由来(例えば、牛骨、牛皮)などが挙げられ、豚由来、特に豚皮由来のゼラチンが好ましいこと等は、上記した通りである。
【0032】
カプセルの製造に用いるゼラチンは、ゼリー強度に基づいて選択することもできる。限定されないが、例えば、100g以上、好ましくは110〜180g、より好ましくは135〜165gのゼリー強度を有するゼラチンを用いることができる。ここでゼリー強度は、上記したように、「にかわ及びゼラチン」JIS K6503−1996に定められた方法により定義することができる。
【0033】
ゼラチンの添加量は、最終産物のカプセル中のゼラチン含量に基づいて設定することができる。例えば、カプセル全体に占めるゼラチンの含量が、例えば、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%となるように、ゼラチンを添加する。或いは、ゼラチンの添加量は、機能性物質との関係で規定することもできる。機能性物質とゼラチンとの重量比[機能性物質の重量:ゼラチンの重量]は、1:0.01〜1:1000、好ましくは1:0.1〜1:500、より好ましくは1:1〜1:200に調整される。
【0034】
本発明のカプセルの製造においては、カルボジイミド架橋剤を添加し、ゼラチンを架橋化する。本発明のカプセルの製造においては、水溶性のカルボジイミド架橋剤又はその塩を用いることが好ましい。当該塩には、限定されないが、塩酸塩、スルホン酸塩などが含まれることは上記した通りである。
【0035】
カルボジイミド架橋剤は、限定されないが、ゼラチンとの架橋反応前の濃度として、5〜200mM、好ましくは10〜150mM、より好ましくは20〜100mMで添加することができる。或いは、カルボジイミド架橋剤の添加量は、架橋反応前におけるゼラチンとの関係で規定することができる。架橋反応前におけるゼラチンとカルボジイミド架橋剤の重量比[ゼラチンの重量:カルボジイミド架橋剤の重量]が、例えば、1:0.06〜1:0.2、好ましくは1:0.08〜1:0.187、より好ましくは1:0.09〜1:0.1となるように、カルボジイミド架橋剤を添加することができる。
【0036】
カプセルの製造において、機能性物質に加え、さらなる機能性物質を添加することもできる。当該さらなる機能性物質としては、ビタミン類やポリフェノール類などが挙げられることは上記した通りである。また、カプセルの製造において、上記成分に加え、飲食品、医薬、化粧料の分野で一般的に用いられる賦形剤を添加することができることも上記した通りである。
【0037】
<組成物の製造方法>
本発明のカプセルを配合することにより、組成物を製造することができる。本発明のカプセルは、組成物全体量に対して、例えば、0.15〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%で配合することができる。
【0038】
組成物の製造において、飲食品、医薬、化粧料の分野で一般に用いられる界面活性剤を更に配合できることは、上記した通りである。
【0039】
組成物の製造において、ビタミン類やポリフェノール類などのさらなる機能性物質を配合できること、並びに飲食品、医薬、及び化粧料の分野で一般的に用いられる賦形剤を配合できることは、上記した通りである。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1:カプセル壁材の検討
種々の原料を用いて、下記のように機能性物質含有カプセルを調製した。調製したカプセルは化粧品製剤中に配合し、40℃、75%RHの恒温槽で保存し、色の変化及び使用感の2つの指標で評価した。尚、前記化粧品製剤として、ポリソルベート80、セスキオレイン酸ソルビタン、トリエタノールアミンを含む、下記製造例1に示す化粧品製剤を用いた。本検討において使用した機能性物質の物性は、水溶性0.82g/L、オクタノール/水分配係数(LogPow)1.6−2.3である。
【0042】
<油脂カプセルの調製>
食品硬化油脂(融点41℃、融点43℃、融点45℃、融点59℃の牛脂;融点63℃の菜種硬化油;その他蝋やワックス、8.8g)に機能性物質(1g)、及び親油性乳化剤(レシチン又はP−100、0.2g)を混合し、43℃、45℃、もしくは47℃で加温した後、攪拌機を用いて750rpmで10分間撹拌して分散相を調製した。乳化剤MS−3S、水、増粘剤としてメチルセルロースを混合して30℃、32℃、もしくは34℃で加温し、攪拌機を用いて250rpmで10分間撹拌して連続相を調製した。連続相に分散相を添加し、攪拌機を用いて250rpmで10分間撹拌し、油脂カプセルを調製した。
【0043】
<多糖類カプセルの調製>
(1)ジェランガムカプセル
70℃で融解させたジェランガム(1.25g/20ml)に、機能性物質(2g)を含有する0.1M乳酸カルシウム(150ml)溶液を添加し、ディストロミクスを用いて6000rpmで5分間粉砕した。当該粉砕物を100μmの篩に移し、篩を通過しない画分を回収した。当該画分を、機能性物質が包接されたジェランガムカプセルとした。
【0044】
(2)カードランカプセル
機能性物質(2g)を含有する3%カードラン溶液(0.9g/30ml)を室温にて調製し、80℃〜90℃で固化させた後、ディストロミクスを用いて6000rpmで5分間粉砕した。当該粉砕物を100μmの篩に移し、篩を通過しない画分を回収した。当該画分を、機能性物質が包接されたカードランカプセルとした。
【0045】
<ゼラチンカプセルの調製>
表3に示すように、ゼリー強度の異なる2種類のゼラチンを用いた。ゼラチン10%水溶液(3g/30ml水)に、機能性物質(3.0g)を懸濁させ、加温溶解した。当該溶解液に水溶性カルボジイミドを最終濃度20mMとなるように添加し、固化させた。固化物を一晩冷却した後、予備裁断後にIKA湿式粉砕機(19,800min−1)を用いて粉砕した。得られた粉砕物を100μmの篩にかけ、篩の上に残った画分を機能性物質が包接されたゼラチンカプセルとして回収した。
【0046】
<試験結果−1>
結果を表1に示す。低融点の油脂(41℃、43℃、45℃)を壁剤とするカプセルは、時間が経過するにつれて変色した。試験期間中、カプセルの形状が維持されなかったため、機能性物質が溶出し、変色が起こったことが示唆される。高融点の油脂(52℃、63℃)を壁剤とするカプセルの色調の変化は、低融点の油脂カプセルのものよりも改善された。このことから、カプセルの被膜油脂の融点が機能性物質又はその誘導体の変色抑制に寄与することが判明した。一方で、高融点油脂カプセルの使用感を評価したところ、ざらざら感が残り、触感が悪いことも判明した。
【0047】
以上の結果から、油脂を用いて調製したカプセルでは、色調の安定性と使用感を両立させることは困難であることが明らかとなった。
【0048】
【表1】
【0049】
<試験結果−2>
表2に示すように、ジェランガムを用いて調製したカプセルを配合したクリームは、試験開始後1週間で変色が確認されたが、使用感は良好であった。そして、カードランを用いて調製したカプセルを配合したクリームは、試験開始後2週間で変色が確認されたが、使用感が良くなかった。いずれのカプセルを配合した場合でも、色調の安定性と使用感を両立するクリームは得られなかった。
【0050】
【表2】
【0051】
<試験結果−3>
表3に示すように、ゼラチンを用いて調製したカプセルを配合したクリームは、試験開始後1カ月を経過してもクリーム製剤の色調は安定であった。これは、クリーム製剤に配合したカプセルに包接された機能性物質の変色が抑制されたことによる。さらに、他の壁材で調製したカプセルと比較しても使用感は良好であった。
【0052】
【表3】
【0053】
実施例2:ゼリー強度によるカプセルの特性への影響
<試料の調製>
表4に示すように、ゼリー強度の異なるゼラチンの10%水溶液(3g/30ml水)を加温して溶解させた。該溶解液に水溶性カルボジイミドを最終濃度50mMとなるように添加することにより固化させた。固化物を一晩冷却し、予備裁断後にIKA湿式粉砕機(19,800min−1)を用いて粉砕した。得られた粉砕物を100μmの篩にかけ、篩の上に残存した画分を架橋されたゼラチンカプセル(15g)として回収した。なお、表4に示したゼラチンのゼリー強度は、品質規格「にかわ及びゼラチン」JIS K6503−1996に定められているように、6.67%ゼラチン溶液を、10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を、2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重として定義される。
【0054】
<試験方法>
乳液製剤中に、上記のように調製したカプセルを20重量%で配合した。当該配合物を40℃±2℃、75%RH±5%RHの加速安定性試験及び50℃±2℃、75%RH±5%RHの苛酷試験に供し、カプセルの形状及び使用感を評価した。尚、前記乳液製剤として、下記製造例2に示す乳液を用いた。
【0055】
<試験結果>
結果を表4に示す。試験したカプセルはいずれも、カプセルの形状を維持した。そして、試験したカプセルのいずれも、使用感が良好であったが、ゼリー強度135〜165gのゼラチンを用いて製造したカプセルが最も良かった。この結果より、カプセルは形状の安定性と使用感を両立することが示唆された。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例3:カプセルのテクスチャー評価
<試料の調製>
各種ゼラチンを懸濁した水溶液(表5)を65℃で5分間撹拌することによりゼラチンを溶解させた。当該溶解液に、水溶性カルボジイミド(WSC)を表5に示す最終濃度(50mM又は100mM)で添加し、固化させた。これを粉砕することなく、カプセル(試料4〜12)として以下の試験に供した。
【0058】
【表5】
【0059】
<試験方法>
テクスチャーアナライザー(株式会社島津テクノリサーチ社)を使用して、上記で調製した試料4〜12のテクスチャー、硬さ、もろさ、付着性、凝縮性、ガム性、そしゃく性、及び弾力性について解析した。テクスチャーの解析は、高齢者用の食品の解析方法として用いられているゲルに2回圧力をかけて行うツーバイト法を用いた。解析条件を以下に示す。
機種:EZ−X(島津テクノリサーチ株式会社製)
速度:1mm/sec
試験治具:ユニバーサルデザインフード
進入距離:13.3mm
温度:室温(23℃)
ロードセル容量:500N
試験種類:圧縮(2回圧縮)
伸び原点:試験力1gf
プランジャー:直径(φ)20mm
【0060】
<解析結果>
図1にテクスチャー解析の結果を示す。試料7〜9のゲル強度は低く、かつ1回目の圧縮におけるよりも、2回目の圧縮によりゲル強度はさらに低下した。これらの結果から、100mMのWSCで固化したカプセルは、保存中は形状を安定に維持するが、使用時にカプセルに力が加わる度に、ゲル強度が低下し、最終的にカプセルが破壊されることが示唆される。このような特性は、ざらざら感を生じることなく、皮膚表面全体に素早く広げることを可能とする。また、ざらついた食感を生じることなく摂食し、咀嚼や体内での消化等によりカプセルを徐々に破壊することも可能とする。本発明のカプセルは、使用感に優れ、飲食品並びに化粧品や医薬部外品などの皮膚外用剤へ適用が可能である。
【0061】
そして、試料4〜12の硬さ、もろさ、付着性、凝縮性、ガム性、そしゃく性、及び弾力性について解析した結果を表6に示す。試料7〜9は、他の試料に比べて、そしゃく性、もろさ、凝集性、ガム性、及び弾力性の数値が顕著に低いことが判明した。そしゃく性ともろさの数値の低さは、試料7〜9がもろく崩れやすいことを意味する。そして、ガム性や弾力性の数値の低さは、試料7〜9が付着性を有することを意味する。すなわち、試料7〜9を化粧品や皮膚外用剤とした場合、皮膚上でカプセルに摩擦を加えることにより、カプセルを容易に崩すことができるため、ざらつきを感じにくく、かつ、皮膚へ粘着しやすいため、肌になじみやすいことが示唆される。そして、試料7〜9を飲食品とした場合、ざらついた食感を生じることなく摂食し、咀嚼や体内での消化等によりカプセルを徐々に破壊できることが示唆される。したがって、機能性物質を包接させない場合において好ましくは100mMのWSCで固化したカプセルは、皮膚外用剤として皮膚に適用した時や飲食品として飲用した時の使用感に優れることが示唆される。そして、カプセルに機能性物質を包接させると、機能性物質を包接させない場合に比べて、カプセルの弾性が増減することも考えられる。従って、カプセルに機能性物質を包接させる場合には、上記の優れた使用感に加えて機能性物質の効率良い放出を達成するために、必要に応じてWSCの濃度を100mM以下に調整してカプセルを固化させることもできる。
【0062】
以上説明したように、ツーバイト法によるテクスチャーの解析(図1)から導かれる結論は、硬さ、もろさ、付着性、凝縮性、ガム性、そしゃく性、及び弾力性の解析(表6)から導かれる結論と整合していることが理解できる。したがって、ツーバイト法によるテクスチャーは、カプセル作成(特にカプセルのテクスチャー)のより簡便な指標として適用できることが示唆される。
【0063】
【表6】
【0064】
実施例4:微粉砕した機能性物質を含有するカプセルの調製
<セサミンを含有するカプセルの調製>
H20T(豚皮由来、ニッピ(株)製)(3g/30mLの水)とセサミン(水溶性0.0066g/L、オクタノール/水分配係数(LogPow)4.1)(6.0g)を混合し、65℃で5分間撹拌し、ゼラチンを溶解させた。当該溶解液に水溶性カルボジイミド0.28g(ナカライテスク社製、最終濃度50mM)を添加し、ゼラチンを架橋し、固化させた。精製水を100mL添加し、ディストロミクスを用いて6000rpmで5分間撹拌し、固形物を粉砕した。当該粉砕物を100μmの篩に移し、篩の上に残った画分を、セサミンを含有するカプセルとして回収した。
【0065】
上記のように調製したカプセルにセサミンが含まれていることを確認するため、カプセル1gを遠心チューブに秤量し、ジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに懸濁した。当該懸濁液を80℃で10分間加温した後、遠心チューブをボルテックスにより攪拌した。当該攪拌液を遠心分離(3500rpm、10min、25℃)に供した。上清を回収し、HPLCの試料とした。セサミンを以下の条件で検出し、定量した。その結果、セサミンは、カプセル1gあたり10mgで存在することが判明した。これにより、セサミンがカプセルに包接されていることが確認された。
【0066】
セサミンのHPLC分析条件
カラム Develosil C30 UG-5(4.6mm x 150mm:野村化学製)
移動相 Buffer A:0.1%ギ酸を含む蒸留水
Buffer B:0.1%ギ酸を含む80%アセトニトリル(AcCN)/蒸留水
検出波長 280nm
流速 1ml/min
サンプル量 10μL/injection
プログラム 20%Buffer B→100%Buffer B(リニアグラジエント:40分)
【0067】
<フェルラ酸を含有するカプセルの調製>
H20T(豚皮由来、ニッピ株式会社製)(3g/30mLの水)とフェルラ酸(水溶性0.91g/L、オクタノール/水分配係数(LogPow)1.6−1.7)(6.0g)に混合し、65℃で5分間撹拌し、ゼラチンを溶解させた。当該溶解液に水溶性カルボジイミド0.56g(ナカライテスク社製、最終濃度100mM)を添加し、ゼラチンを架橋し、固化させた。精製水を100mL添加し、ディストロミクスを用いて6000rpmで5分間撹拌し、固形物を粉砕した。当該粉砕物を100μmの篩に移し、篩の上に残った画分を、フェルラ酸を含有するカプセルとして回収した(カプセル2)。
【0068】
上記のように調製したカプセルにフェルラ酸が含まれていることを確認するため、カプセルの1gを遠心チューブに秤量し、上記で示した方法に従って、HPLCの分析試料を調製した。フェルラ酸を以下の条件で検出し、定量した。その結果、フェルラ酸は、カプセル1gあたり6.95mgで存在することが判明した。これにより、フェルラ酸がカプセルに包接されていることが確認された。
【0069】
フェルラ酸のHPLC分析条件
カラム Develosil C30 UG-5(4.6mm x 150mm:野村化学製)
移動相 Buffer A:0.1%ギ酸を含む蒸留水
Buffer B:0.1%ギ酸を含む80%アセトニトリル(AcCN)/蒸留水
検出波長 254nm
流速 1ml/min
サンプル量 10μL/injection
プログラム 5%Buffer B →60%Buffer B(リニアグラジエント:40分)
【0070】
製造例1:クリーム
表7に示す処方でクリームを製造した。油溶性成分である区分A及び水溶性成分である区分Bをそれぞれ75℃に加温溶解した後、区分Aをホモミキサーにおいて5000rpmで攪拌しながら区分Bを添加して乳化させ、O/Wエマルジョンを形成させた。その後60℃まで冷却し、区分Cを添加した。さらに40℃まで冷却し、区分Dを添加することにより、目的とするクリームを製造した。
【0071】
【表7】
【0072】
製造例2:乳液
表8に示す処方で乳液を製造した。水溶性成分である区分A及び油溶性成分である区分Bをそれぞれ75℃に加温溶解した後、区分Aをホモミキサーにおいて5000rpmで攪拌しながら区分Bを添加して乳化させ、O/Wエマルジョンを形成させた。その後60℃まで冷却し、区分Cを添加した。さらに40℃まで冷却し、区分Dを添加することにより、目的とする乳液を製造した。
【0073】
【表8】
【0074】
本実施例に示された本発明の態様により奏される効果
本発明においては、カルボジイミド架橋剤を用いて壁物質であるゼラチンを架橋化することにより、形状が安定なカプセルを製造できることを見出した。そして、当該カプセルは、長期保存しても、皮膚に適用した場合や摂食した場合にざらつき感を生じることがなく、優れた使用感を有する。更に、当該カプセルは、使用時に容易に崩すことができるため、機能性物質を適切に放出することができる。このような特定は、飲食品並びに化粧品や医薬部外品などの皮膚用外用剤に用いる場合に有利である。
図1