(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646728
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】空気式車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
B60C5/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-506345(P2018-506345)
(86)(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公表番号】特表2018-527232(P2018-527232A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016057961
(87)【国際公開番号】WO2017028962
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】102015215738.5
(32)【優先日】2015年8月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シュルマン・オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】タイバースキー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス・エドゥアルダ
(72)【発明者】
【氏名】ガルグラーク・トマーシュ
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/076380(WO,A1)
【文献】
特開2013−032009(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02006125(EP,A1)
【文献】
特開2015−128893(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/103989(WO,A1)
【文献】
特開2005−001428(JP,A)
【文献】
特開2007−022445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウオール(3、4)に両側で合流する形状化トレッド(2)を有し、前記サイドウオール(3、4)の端部が、車両ホイール(8)のホイールリム(7)に気密式の態様で挿入可能なタイヤビード(5、6)によって形成された空気式車両用タイヤ(1)であって、吸音するために、前記空気式車両用タイヤ(1)の内側面(9)に密着結合される吸収体(10)が組み込まれた空気式車両用タイヤ(1)において、
前記空気式車両用タイヤ(1)の内側面(9)と前記吸収体(10)との間に形成される密着結合部は、前記吸収体(10)と前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)との間の全領域にわたって分布しない配置の結合剤(11)からなること、および、前記結合剤(11)は、前記吸収体(10)の投影領域内に、およびそれを越えて塗布されていることを特徴とする空気式車両用タイヤ(1)。
【請求項2】
前記結合剤(11)は、前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)の周囲に、一様に繰り返して分布することを特徴とする、請求項1に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項3】
前記結合剤(11)は、前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)の前記周囲に一様でなく、様々に分布することを特徴とする、請求項1に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項4】
前記結合剤(11)は、ストリップパターンからなるか、波状線の形態を取るか、またはドットマトリクスを形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項5】
前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)の前記周囲の、および/または前記内側面(9)の周方向に対して交差する方向の前記結合剤(11)の量および/または幅は、一様に、または様々に分布することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項6】
前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)と吸収体(10)との間の結合剤の全領域は、前記吸収体(10)の前記投影領域の10%〜90%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項7】
前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)と吸収体(10)との間の結合剤の前記全領域は、前記吸収体(10)の前記投影領域の30%〜70%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項8】
前記空気式車両用タイヤ(1)の前記内側面(9)と吸収体(10)との間の結合剤の前記全領域は、前記吸収体(10)の前記投影領域の40%〜50%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項9】
前記結合剤(11)は接着剤であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項10】
前記結合剤(11)は、ポリウレタンゲルであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【請求項11】
あらゆる領域成分X
*Yにおける投影領域に対する結合剤領域の比率f(x)は、以下の関数に従うことを特徴とし、
【数1】
XおよびYは、前記空気式車両用タイヤ(1)の周方向および横方向の座標であり、
0 <= X <= U、
0 <= Y <= B、
0 <= x <= U、
0 <= y <= B、
Vn > 0、
である、請求項1〜
10のいずれか1項に記載の空気式車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルによる空気式車両用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
この場合に当該するタイプの空気式車両用タイヤは、車両ホイールが空気式車両用タイヤを装備した自転車用か、または乗用車、農業用車両、および/もしくは重量積載物車両用かのいずれかに使用することができ、空気式車両用タイヤは、予測される地面状態および気象状態に適切に適合した形状を有する構造化トレッドを有する。それ自体公知の態様で、空気式車両用タイヤのトレッドは、各端部がタイヤビードによって形成されたサイドウオールに両側部で合流する。タイヤビードは、空気式車両用タイヤの様々なゴム混合物で構成された部分を、空気式車両用タイヤを装備した車両ホイールのホイールリムに気密式に固定するように機能する。同様に公知の態様で、タイヤビードに対応する態様のホイールリムは、空気空洞がチューブレス空気式車両用タイヤによって密封され、ホイールリムに圧縮空気が充填された場合に、封止する態様でタイヤビードを支持するホイールリムエッジを有する。
【0003】
現代の空気式車両用タイヤは、最近では、環境条件が変化する中で、自動車両で発生した運動エネルギを常に最適な態様で地面に伝達するだけでなく、乗り心地に関する高い要求をいっそう満足させなければならない。これに関連して、空気式車両用タイヤが路面に押し付けられたのに伴って、空気が圧縮されたときに、空気の振動によって発生する空気式車両用タイヤの転がり騒音も重要である。このようにして発生する転がり騒音は、空気式車両用タイヤからホイールハブに伝達されて、最終的に、ステアリングシステムおよびサスペンション装置を通って車室に至る。一方、走行中に発生する転がり騒音に音響的にさらされることは、自動車両の中だけでなく外においても不快なことと認識され、これは、例えば、都市においていっそう重要になっている。
【0004】
転がり騒音は、すでに公知であり、一部の自動車両で使用されている技術を用いて大幅に低減することができる。この技術は、空気式車両用タイヤ内に配置され、多くの場合発泡体として作製される吸収体を吸音媒体として使用することを含み、この発泡体は、空気式車両用タイヤのトレッドの内側に密着して取り付けられる、すなわち、例えば、接着剤で取り付けられる。吸収体が車両ホイールのホイールリムに固定される公知の問題解決策もある。通常ポリウレタンからなるこの吸収体の構造は、極度の温度変動のもとでさえ維持される。ポリウレタンは、ジアルコールまたはポリオールとポリイソシアネートとの重付加反応から形成されるプラスチックまたは合成レジンである。自動車両のタイプ、自動車両の速度、および路面に応じて、前述の方策を用いることで、空気式車両用タイヤに吸収体を導入した結果として、空気式車両用タイヤで達成可能な走行特性または走行性能も、耐荷重能力も、速度もいずれも制限することなく、自動車両の内部の車両騒音を最大で9dB(A)だけ低減することが可能である。
【0005】
車両ホイールのそのような空気式車両用タイヤは、例えば、特許文献1から公知である。この文献は、発泡体として作製された吸収体が、空気式車両用タイヤの内側面に付着した塗布済みの自動封止型シーラントを用いて、空気式車両用タイヤ内に固定されると記載している。この場合に使用されるシーラントはポリウレタンゲルであり、全面にわたって接着される。
【0006】
さらに、特許文献2は、車両ホイールに適した空気式車両用タイヤと、この種の空気式車両用タイヤを製造する方法とを開示しており、同様に発泡体として作製された吸収体は、空気式車両用タイヤの内側面に貼り付けられる直前に、成形プロセスを用いて用途に適した形態に形成され、次いで、空気式車両用タイヤの内側に面した側に、さらなる吸音構造を設けられる。この場合に、発泡層に付加された構造は、それぞれが表面積を増大させるのに適した直線状の形態または波状の形態とすることができ、表面積が増大することで、いっそうの吸音効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 028 932A1号明細書
【特許文献2】独国特許発明第198 06 953C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸収体と空気式車両用タイヤの内側面との間の全領域にわたって、現在まで常に接着されていることが重要であり、その理由は、全領域結合のみが、十分な確実性で、空気式車両用タイヤの内側面からの吸収体の望ましくない不随意の脱離を阻止することができると一般的に考えられるからである。さらに、空気式車両用タイヤの内側面全体に接着促進剤または結合剤を付加し、次いで、内側面のうちの用途に対して対象となる部分に吸収体を固定することは、製造技術の観点から最も簡単な問題解決策であるとみなされた。しかし、現在では、全領域結合は、空気式車両用タイヤの重量に関して欠点をもたらし、ひいては、影響が比較的小さいとしても、空気式車両用タイヤを装備した車両ホイールの走行特性に影響を及ぼすと分かった。さらに、結合の準備に含まれるコストおよび不便性、この場合に、特に、結合される面から不純物を除去するための清浄のコストおよび不便性は比較的高く、そのため、これらを削減および軽減することが望ましい。最後に、全領域結合はまた、かなりの量の結合剤を必要とし、これは、経済的に不利である。
【0009】
本発明の目的は、吸音に適した吸収体を有する空気式車両用タイヤを提供することであり、この空気式車両用タイヤでは、吸収体と空気式車両用タイヤとの間の結合は、最適化され、重量を最大限まで節減し、製造技術の観点から実施するのが簡単である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明により、請求項1の特徴を用いて達成される。
【0011】
本発明のさらなる構成は、その次の従属請求項の対象である。
【0012】
サイドウオールに両側で合流する形状化トレッドを有し、サイドウオールの端部が、車両ホイールのホイールリムに気密式の態様で挿入可能なタイヤビードによって形成された空気式車両用タイヤであって、吸音するために吸収体が組み込まれた空気式車両用タイヤは、密着結合部が、吸収体と空気式車両用タイヤの内側面との間の全領域にわたって分布しない配置の結合剤からなるという点で本発明に従って進化した。
【0013】
吸収体と空気式車両用タイヤの内側面との間の全領域にわたらずに接着する本発明の問題解決策では、同時に複数の利点が得られる。すなわち、第1に、高価な結合剤の節減は、経済的な利点であり、さらにまた、空気式車両用タイヤの総重量、ひいては、空気式車両用タイヤを装備した車両ホイールの総重量も削減し、これは、最終的に、さらに自動車両の燃料消費にプラスの全体的効果をもたらす。さらに、結合される面の前処理と結合作業の両方がそれ自体大幅に簡略化され、そのため、空気式車両用タイヤは、より短い時間内に製造でき、したがって、より経済的に製造できるように装備を施されるので、製造関連の利点も生じる。
【0014】
本発明の第1の構成では、結合剤は、空気式車両用タイヤの内側面の周囲に、一様に繰り返して分布する。言い換えると、結合剤は、空気式車両用タイヤの内側面、および/または吸収体の結合剤面に、続いて繰り返される同一パターンで塗布される。結合剤の一様な塗布は、接着作業の自動化処理さえ可能にし、これは、結果的に、この方法で製造される空気式車両用タイヤの製造上の複雑性を軽減する。
【0015】
この提案に対する代替案として、本発明による別のきわめて有益な問題解決策では、結合剤は、空気式車両用タイヤの内側面の周囲に一様でなく、様々に分布する。結合剤のこの塗布方法では、空気式車両用タイヤの内側面、および/または吸収体の結合剤面への結合剤の特定の塗布パターンおよび特定の塗布シーケンスは想定されない。したがって、この場合に、結合剤は、無作為に、または好ましい別形に対応した態様で塗布することができ、結合剤の特定の塗布シーケンスは想定されるが、空気式車両用タイヤの内側面に沿って、または吸収体の面に沿って塗布される結合剤の分布に変化がある。
【0016】
例えば、本発明のこの考え方の延長に基づき、結合剤は、ストリップパターンからなるか、波状線の形態を取るか、またはドットマトリクスを形成することができる。結合剤を塗布するための次の例は、空気式車両用タイヤの周方向か、または空気式車両用タイヤの周方向に交差する方向かのいずれかを基本とする。
【0017】
本発明に従って結合剤塗布部の輪郭を選択するための不可欠な要素は、吸収体および空気式車両用タイヤが、確実に、かつ永続的に互いに堅固に結合され、同時に、最大量の結合剤が節減されるように、塗布された結合剤が途切れを有することである。
【0018】
波状線の形態で塗布した結合剤は、この場合に、吸収体の全幅にわたって、すなわち、空気式車両用タイヤの周方向に交差して延びるか、または少なくとも、吸収体の幅の大部分にわたって延びることができる。
【0019】
例えば、波状線の形態に関しては、空気式車両用タイヤの周方向に見て、波状線は、一様な結合剤塗布で構成する、すなわち、略正弦波状の波で構成することができる。
【0020】
この波状線の形態の別の変形型では、結合剤塗布の個々の互いに交互に繰り返す波のピークおよび波の谷は、互いからの距離が増減する。
【0021】
本発明の意図するドットマトリクスとは、結合剤が、空気式車両用タイヤの内側面にわたって、または吸収体の面にわたって、ドットの形態で分布するようなものと解釈されたい。より簡単な言葉で記すと、結合剤は、接触面の少なくとも1つに軽く塗りつけられる。
【0022】
ストリップパターンに関して、空気式車両用タイヤの内側面、または吸収体の対応する結合剤領域への結合剤の塗布の多数の異なる変形型がある。これは、例えば、ストリップがそれぞれ、等しい、または不等の間隔、あるいは等しい、または不等の寸法を有するストリップパターンを意味すると解釈することができる。さらに、ストリップパターンはまた、様々なストリップが、結合剤を付加される面で交差するような格子構造を形成することができる。
【0023】
さらなる変形型では、空気式車両用タイヤの周方向に連続する結合剤ストリップが様々な幅を有したり、または結合剤ストリップ間の間隔が様々な幅を取ったりする。さらに、上記のストリップパターンとは、2つの連続するあらゆる結合剤ストリップが、空気式車両用タイヤの周方向に対して直角に見て、互いに対してずれた施工を意味するとも解釈される。結合剤の配置に対するこれらの、および多数のさらなるオプションが本発明の概念に包含され、オプションの多様性のために、この時点でオプションの全範囲にわたってオプションについて記すことができない。
【0024】
塗布した結合剤が有することができる上記のきわめて多彩な幾何形状だけでなく、本発明によれば、結合剤が厚肉部を含む領域を有することもできるように、所定量の結合剤を空気式車両用タイヤの内側面の円周に沿って、または空気式車両用タイヤの内側面の円周方向に交差する方向に、一様な、または様々な分布で付加することも可能である。この場合に、結合剤ストリップの幾何形状が変わるか、または結合剤ストリップの量が変わるかのいずれかである。より簡単な言葉で記すと、結合剤の塗布が増量された部分と、結合剤の塗布が減量された部分とが、空気式車両用タイヤの内側面、または吸収体の対応する面に設けられる。結合剤の塗布が増量された部分は、互いに接触する面のうちの最大応力が予測される領域にあるのが好ましい。
【0025】
空気式車両用タイヤの内側面と吸収体との間の全結合剤領域は、吸収体の投影領域の10%〜90%であることが、本発明のさらなる特徴である。これを説明するために、ここで、例えば、空気式車両用タイヤの内側面と吸収体との間の全結合剤領域が80%の場合に、吸収体の投影領域の20%は、相応して空いたままである、すなわち、結合剤を付加されないことに留意されたい。これらの値の場合、きわめて良好な結果を得ることがすでに可能である。
【0026】
これと比べて、好ましい変形型では、空気式車両用タイヤの内側面と吸収体との間の全結合剤領域は、吸収体の投影領域の30%〜70%である。
【0027】
きわめて特有の、範囲を限定した問題解決策によれば、空気式車両用タイヤの内側面と吸収体との間の全結合剤領域は、吸収体の投影領域の40%〜50%である場合さえある。言い換えると、この提案によれば、全結合剤領域の約半分だけが結合剤を付加される。残りの半分は、結合剤がないままである。この手順は、これまでの最良の結果をもたらした。
【0028】
吸収体に結合する前に、結合剤が、吸収体の結合剤領域か、または空気式車両用タイヤの内側面のいずれかに塗布される。結合剤を空気式車両用タイヤの内側面に塗布する場合に、これまで目指したのは、主に、吸収体の結合剤領域に完全に合わせて塗布することであった。これは、高い製造精度を必要とし、その結果、比較的コストがかかり、扱いにくくなる。結合剤が、空気式車両用タイヤの内側面に塗布され、結合剤が、吸収体の投影領域内だけでなく、さらに、投影領域を越えて無差別に塗布されると、それは、空気式車両用タイヤの製造の大幅な簡略化になることが今や分かった。
【0029】
特に適した結合剤は、ポリウレタンゲルであると判明し、ポリウレタンゲルは、本発明の実施に当たって優先的に使用される。
【0030】
本発明の空気式車両用タイヤのきわめて特有の特性は、各領域成分X
*Yにおける投影領域に対する結合剤領域の比率f(x)が、以下の関数に従うことであり、
【0031】
【数1】
XおよびYは、空気式車両用タイヤ(1)の周方向および横方向の座標であり、
0 <= X <= U、
0 <= Y <= B、
0 <= x <= U、
0 <= y <= B、
Vn > 0、
である。
【0032】
ここで、「a
n」、「b
n」、「c
n」、および「u
n」は、自由に選択可能なパラメータである。結合剤はまた、上記の変形型の1つまたは複数からなる任意の所望する組み合わせを構成することができる。
【0033】
本発明が、添付図面を参照して下記に詳細に説明される。示す実施例は、説明した変形型を制限するものではなく、単に本発明の原理を説明する助けとなるに過ぎない。
【0034】
同一の、または同様の構成要素は、常に同じ参照符号で示される。本発明による機能を説明できるようにするために、図は、単に、高度に簡略化した概略図を示すに過ぎず、この概略図では、本発明に不可欠でない構成要素は省略した。しかし、これは、そのような構成要素が、本発明による問題解決策に存在しないことを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図10】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図11】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図12】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図13】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図14】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図15】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図16】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図17】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【
図18】結合剤塗布のオプションの様々な図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、例として、全実装された車両ホイール8を断面図で示している。車両ホイール8は、空気式車両用タイヤ1と、空気式車両用タイヤ1を保持したホイールリム7とで構成されている。空気式車両用タイヤ1自体は、形状化トレッド2を含み、形状化トレッド2の形状は、単に、複数の溝状の窪みで
図1に図解で示されている。空気式車両用タイヤ1は、前記トレッド2の下に複数のベルトプライ15を有し、このベルトプライ15は、同様に、単なる表示として
図1に示されている。空気式車両用タイヤ1は、トレッド2の両側で、それぞれ1つのサイドウオール3、4に合流し、サイドウオール3、4の下端は、それぞれタイヤビード5、6によって形成されている。各タイヤビード5、6は、コアプロファイル18に結合したビードコア19を含み、コアプロファイル18は、ゴム材料で覆われている。空気式車両用タイヤ1のタイヤビード5、6は、周囲に対するシールを形成して、ホイールリム7のホイールリムエッジ14に気密式に支持されている。空気式車両用タイヤ1およびホイールリム7は、こうして空気空洞21を共同して囲み、空気空洞21は、弁シャンク13に挿入された、車両ホイール8の弁12を介して圧縮空気を充填される。空気式車両用タイヤ1のサイドウオール3、4は、それ自体公知の態様で、複数のプライで構成され、それにより、空気式車両用タイヤ1を安定化させるための複雑系を形成している。このため、各サイドウオール3、4の内側には、第1に補強プロファイル16があり、補強プロファイル16には、カーカス17が各サイドウオール3、4の外側の方向に隣接し、一方、カーカス17は、
図1に特に示されていないゴム層に埋め込まれる。さらに、サイドウオールは、付加的な個々のプライを含むことができるが、これらのプライについては、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0037】
図1は、本発明の特有の特徴を示しており、その特徴とは、吸収体10が、トレッド2とは反対の側に位置する、空気式車両用タイヤ1の内側面9に配置されることである。前記吸収体10は、結合剤11を使用して、空気式車両用タイヤ1の内側面9に密着結合されている。
図1に図示するように、結合剤11は、この場合に複数の途切れを有し、吸収体10が、対応する結合剤領域を有する内側面9に貼り付けられる前に、例において、空気式車両用タイヤ1の周方向に直線状の形態で、空気式車両用タイヤ1の内側面9に塗布されている。例において、特に、吸収体10の横縁部領域に、それぞれストリップ状の結合剤11が存在して、特に、これらの危険な領域において、特に、吸収体10が空気式車両用タイヤ1の内側面9から不随意に離脱するのを防止することが重要である。
【0038】
図2〜18は、決定的ではないが、結合剤11の配置の様々なオプションを示しており、図示した各例は、空気式車両用タイヤ1の内側面9に結合剤が塗布され、結合剤11と、吸収体10の対応する結合剤面に面する、空気式車両用タイヤ1の内側面9との間の断面形状の図を示している。
【0039】
図2は、第1に、空気式車両用タイヤ1の周方向の結合剤11の波状線形態を示しており、
図2では、結合剤11の波状線の一部は、略正弦波状の形状を有し、一部は、波状線の湾曲形状とは異なる幾何形状を有する。
【0040】
図3は、空気式車両用タイヤ1の周方向の結合剤11のジクザグ状または鋸歯状配置を示している。この場合もまた、個々の幾何形状間の距離が一様な部分が存在し、結合剤11の個々の幾何形状間の距離が異なる部分が存在する。
【0041】
結合剤11の特定の配置パターンが
図4で示されている。この場合に、結合剤11は、ストリップ状に塗布され、空気式車両用タイヤ1の周方向に見て、厚さと、個々の結合剤ストリップ11間の間隔とが異なるために、バーコード状の幾何形状になっている。
【0042】
図5は、ドットマトリクスの様々な変形型を示しており、複数のより小さいドットが、無作為な、または一様な配置で付加されるか、あるいは大きな幾何形状で少数の結合剤11のドットが、一様な、または一様でない間隔で存在するかのいずれかが可能である。この種のドットマトリクスの形で塗布される結合剤の量を変えることもさらに可能である。
【0043】
図6は、空気式車両用タイヤ1の周方向の結合剤11の波線または螺旋形態を示している。
【0044】
図7は、空気式車両用タイヤ1の円周方向に見た、結合剤11の波状線の形態を再度示しており、この場合に、結合剤11の線に途切れがある。
【0045】
同様の態様で、
図8の図解は、上記にすでに説明した結合剤11のジクザグ状の、または鋸歯状の配置を示しており、同様に、結合剤11の線にいくつかの途切れがある。
【0046】
図9は、ストリップパターンを再度示しており、個々のストリップは、空気式車両用タイヤ1の周方向に対して交差して整列しており、一部は、吸収体10の結合剤領域を越えて横に突出している。さらに、
図9の結合剤11の線のバーコード状のパターンは、線間の様々な間隔を有し、結合剤11の線の一部は、互いから横にずれている。
図9の画像の下側部分は、吸収体10の当接縁部の領域に、すなわち、吸収体10が、空気式車両用タイヤ1に導入された後、互いに支え合うようになる吸収体10の面に付加された結合剤11の広い領域を示している。
【0047】
図10は、空気式車両用タイヤ1の周方向のストリップパターンの施工用の様々なオプションを示している。これらのストリップは、互いからの様々な横間隔を有することができ、厚肉部22を有することができ、さらに、吸収体10の結合剤領域を越えて塗布することができ、かつ/または途切れを有することができる。
図10の画像の右手側にはっきりと見える結合剤11のストリップは、吸収体10の縁部領域を横方向に越えて、この部分で完全に連続した態様で施工されており、これは、離脱する傾向がある吸収体10のこの危険な縁部領域が、特定の態様で、空気式車両用タイヤ1の内側面9に固定されるという大きな利点を有する。
【0048】
結合剤11の線構成のさらなる例が
図11から分かる。この場合に、結合剤11の線は、空気式車両用タイヤ1の内側面9を斜めに横切るように、すなわち、空気式車両用タイヤ1の周方向に対して角度をなして配置された。結合剤11の線間の間隔は、様々な幅を有することができ、さらに、線内の途切れが実現可能であることもこの図解から分かる。
【0049】
図12は、結合剤11の線の交差配置を示しており、結合剤11の線間の間隔が少し異なっている。
【0050】
図13は、空気式車両用タイヤ1の内側面9に沿った結合剤11の波線形態を再度示している。この場合の特有の特徴は、線が任意の特定の幾何形状に従わず、さらに、結合剤11の線の一部が、吸収体の縁部を越えて塗布されていることである。
【0051】
図14から分かるように、空気式車両用タイヤ1の円周方向に見て、結合剤11の複数の波線形態が、互いに並んで付加されることも可能である。
【0052】
例として、
図15は、結合剤11のダイヤモンド状、または正方形形状の幾何形状を有するドットパターンの組み合わせさらに示しており、結合剤11の個々のパターンは、単独で使用することもでき、図示した組み合わせが必ずしも使用される必要はない。
【0053】
図16は、厚肉部22をそれぞれ吸収体10の側部領域に付加することができるという特有の特徴をさらに示しており、これは、吸収体10の縁部領域での空気式車両用タイヤ1への接着性を確実に改善する。
【0054】
本発明の範囲は、
図17から分かるように、結合剤11の線配置の施工変形型も含む。この場合に、結合剤11のある種の「ギリシャ風パターン」の線配置が、空気式車両用タイヤ1の内側面9に加えられている。
【0055】
最後に、
図18は、連続線が使用される、結合剤11の斜めの線配置を再度示しており、連続線間の横方向間隔が異なっている。
【0056】
図1〜18に示した結合剤分布のすべての施工変形型では、結合剤11の各幾何形状において、線に途切れを設けること、または結合剤の塗布方向に結合剤11の塗布厚さを変化させることもさらに可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 空気式車両用タイヤ
2 トレッド
3 サイドウオール
4 サイドウオール
5 タイヤビード
6 タイヤビード
7 ホイールリム
8 車両ホイール
9 内側面
10 吸収体
11 結合剤
12 弁
13 弁シャンク
14 ホイールリムエッジ
15 ベルトプライ
16 補強プロファイル
17 カーカス
18 コアプロファイル
19 ビードコア
21 空気空洞
22 厚肉部