特許第6646735号(P6646735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646735
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】可変流体流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   A61M5/168 502
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-510795(P2018-510795)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公表番号】特表2018-525161(P2018-525161A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】US2015047143
(87)【国際公開番号】WO2017030594
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャファー、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】メンディロ、マーク・ディー
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭62−501822(JP,A)
【文献】 特開2006−037985(JP,A)
【文献】 実開平06−012876(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61F 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量を選択的に制御するための流量セレクタであって、
入口チューブと、
出口チューブと、
遠位端部及び近位端部を有するシャフト、及び前記シャフトの前記遠位端部を受容するシート部を含むニードルバルブであって、前記シャフトの前記遠位端部がテーパ形状に形成され、前記シート部が前記シャフトの前記遠位端部の形状と相補的な形状に形成されたリセス部を有する、該ニードルバルブと、
前記入口チューブを受容するための入口開口部、前記出口チューブを受容するための出口開口部、及び前記ニードルバルブの前記シャフトを受容するためのシャフト開口部を有し、前記入口チューブ、前記出口チューブ、及び前記ニードルバルブを互いに対して所定の位置に保持するための筐体とを備え、
前記ニードルバルブの遠位端部は、前記流体が前記入口チューブから入って前記出口チューブから出ていくことができるように、前記筐体内における前記入口チューブ及び前記出口チューブ間に配置され
前記シャフトの前記遠位端部は、前記シート部の前記リセス部内に受容され、
前記シャフトと前記シート部は、それぞれに設けられたねじ部により、互いに結合され、
前記シャフトは回転されて、前記シャフトの前記遠位端部は、前記リセス部内で軸方向に沿って変位し、前記リセス部内の流体が利用可能な容積が変化することによって、流量値の連続的な全範囲にわたって流量が調節されるように構成されることを特徴とする流量セレクタ。
【請求項2】
前記ニードルバルブの前記シャフトは、選択された流量を前記流量セレクタのユーザに対して示すための目印を有することを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【請求項3】
前記目印は、前記流量セレクタを使用して選択可能な流量の範囲を表示する一連の数字を含むことを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【請求項4】
前記ニードルバルブの前記シャフトは、前記流量セレクタのユーザが前記流体の前記流量を手動で調節するための調節ノブを有することを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【請求項5】
前記筐体は、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記第1の面により、前記入口開口部及び前記シャフト開口部が画定され、
前記第2の面により、前記出口開口部が画定されることを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【請求項6】
前記筐体は、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記第1の面により、前記入口開口部が画定され、
前記第2の面により、前記出口開口部及び前記シャフト開口部が画定されることを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【請求項7】
前記筐体は、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記第1の面により、前記入口開口部及び前記出口開口部が画定され、
前記第2の面により、前記シャフト開口部が画定されることを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【請求項8】
前記筐体は、第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面と、前記第1の面及び前記第2の面間に位置する第3の面とを有し、
前記第1の面により、前記入口開口部が画定され、
前記第2の面により、前記出口開口部が画定され、
前記第3の面により、前記シャフト開口部が画定されることを特徴とする請求項に記載の流量セレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを調節するための流体ディスペンスシステム及び装置に関する。より詳細には、本発明は、流量制御装置に関し、とりわけ、液体を患者の体内に、正確に調節された流量で注入(輸液)するためのカテーテルベースのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、治療用または医療用の液体は多くの場合、注入システムによって患者に投与される。カテーテルまたはニードルに液体を送達するための様々なタイプの注入システムが存在する。例えば、あるシステムでは、液体は、典型的には、患者の上方に懸吊された容器(バッグまたはボトル)に入れられ、重力によってチューブを通じて送達される。あるいは、液体は、注入ポンプによって容器から送達される。
【0003】
とりわけ液体を長時間にわたって連続的に投与する場合には、患者に液体を送達する流量を制御することが必要となる場合がある。流量は、例えば、特定の医療処置、薬剤(治療薬)の種類、特定の患者の特定のニーズなどに応じて様々であり得る。実際、特定の薬剤または他の薬剤に対する特定の患者のニーズまたは要求は、時間の経過とともに変化し得る。さらに、多くの場合、流量は比較的低く、1時間あたり約0.5〜14立方センチメートルの範囲であり、圧力も比較的低く、例えば、28キロパスカル(4ポンド/平方インチ)未満である。
【0004】
液体を送達する流量を制御するための様々な装置及び技術が考案されてきた。例示的な装置が、1994年7月7日にWilkに付与された「Intravenous Flow Regulator Device and Associated Method」なる標題の米国特許第5、318、515号明細書(特許文献1)に記載されている。この装置は、個別の流量範囲から所望の流量を選択するための、自由にアクセス可能なスライダ部材を備えている。別の装置が、2004年11月25日にMabryに付与された「Device for Selectively Regulating the Flow Rate of a Fluid」なる標題の米国特許第7、455、072号明細書(特許文献2)に記載されている。この装置は、個別の流量に各々に対応する複数の位置の間で回転可能な流量選択機構を備えている。個別の流量は、断面積は同一であるが長さが互いに異なる複数の流量制御チューブを使用して実現される。このような装置では、所定の径を有するチューブにおいて、予め定められた流量を実現するのに必要な長さを決定するために、ポアズイユの法則を使用することを必要とする。しかし、ポンプの出力圧力はロット間で異なるので、ポンプの出力圧力に適合するチューブの正確な長さを決定するためには、大変手間がかかった。そのため、製造時間及び費用を低減するために、このような装置の製造の複雑さを減らすことが望ましい。
【0005】
製造の複雑さを減らすことに加えて、流量をより正確に制御することが望ましい。例えば、流量の調節(制御)は、流量の規定の増減範囲ではなく、流量の連続的な範囲にわたって行うことが望ましいまたは有用である。したがって、とりわけ比較的低い流量を用いる装置において、装置の信頼性を維持するともに、利用可能な流量の全範囲にわたって流量を選択することを可能にする装置が求められている。また、選択された流量が、装置のユーザ(例えば、患者及び/または医療提供者)に対して明確に示される装置がさらに求められている。加えて、このような装置は、使用時の高信頼性を提供するとともに、使い捨て式物品として経済的に製造できるように、容易かつ安価に製造できるようにするべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5、318、515号明細書
【特許文献2】米国特許第7、455、072号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体の流量を、流量の連続的な範囲にわたって選択的に制御するための特徴を有する流量セレクタを提供する。とりわけ、流体の流量をより正確に制御可能な流量選択機構を備えた流量セレクタが提供される。本発明はまた、流体の流量を、流量の連続的な範囲にわたって選択的に制御するためのニードルバルブを備えた流量セレクタを提供する。本発明のさらなる態様及び利点は、その一部が以下の説明に記載されており、あるいは以下の説明から明らかであり、あるいは本発明の実施により学ぶことができるであろう。
【0008】
第1の例示的な実施形態では、流体の流量を選択的に制御するための流量セレクタが提供される。この流量セレクタは、入口チューブと、出口チューブと、流量選択機構とを備える。前記流量選択機構は、遠位端部及び近位端部を有するシャフトと、前記シャフトの前記遠位端部を受容するシート部とを含む。前記流量選択機構は、前記流体が前記入口チューブから入って前記出口チューブから出ていくことができるように、前記入口チューブ及び前記出口チューブ間に配置される。前記流量セレクタは、前記入口チューブ、前記出口チューブ、及び前記流量選択機構を互いに対して所定の位置に保持するための筐体をさらに備える。前記筐体は、前記入口チューブを受容するための入口開口部と、前記出口チューブを受容するための出口開口部と、前記流量選択機構の前記シャフトを受容するための出口開口部とを有する。
【0009】
第2の例示的な実施形態では、流体の流量を選択的に制御するための流量セレクタが提供される。この流量セレクタは、入口チューブと、出口チューブと、ニードルバルブとを備える。前記ニードルバルブは、遠位端部及び近位端部を有するシャフトと、前記シャフトの前記遠位端部を受容するシート部とを含む。前記シャフトの前記遠位端部はテーパ形状に形成され、前記シート部は前記シャフトの前記遠位端部の形状と相補的な形状に形成されたリセス部を有する。前記流量セレクタはまた、前記入口チューブ、前記出口チューブ、及び前記流量選択機構を互いに対して所定の位置に保持するための筐体を備える。前記筐体は、前記入口チューブを受容するための入口開口部と、前記出口チューブを受容するための出口開口部と、前記流量選択機構の前記シャフトを受容するための出口開口部とを有する。前記ニードルバルブの遠位端部は、前記流体が前記入口チューブから入って前記出口チューブから出ていくことができるように、前記筐体内における前記入口チューブ及び前記出口チューブ間に配置される。
【0010】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を参照することにより、より良く理解できるであろう。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を図示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
当業者を対象にした本開示の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【0012】
図1】本開示の例示的な実施形態に係る、患者に対して流体をディスペンスするための装置の概略図
図2】本開示の例示的な実施形態に係る、ハウジング及び筐体を有する流量セレクタの斜視図
図3】本開示の例示的な実施形態に係る図1の筐体の端面図
図4】本開示の例示的な実施形態に係る図1の筐体の上面図
図5】本開示の例示的な実施形態に係る流量セレクタのための流量選択機構の斜視図
図6】本開示の例示的な実施形態に係る図5の流量選択機構の側面図
図7】本開示の例示的な実施形態に係る流量選択機構のシート部の断面図
図8】本開示の例示的な実施形態に係る流量選択機構の断面図
図9】本開示の例示的な実施形態に係る流量セレクタの概略図
図10】本開示の例示的な実施形態に係る流量セレクタの概略図
図11】本開示の例示的な実施形態に係る流量セレクタの概略図
図12】本開示の例示的な実施形態に係る流量セレクタの概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の様々な実施形態及びその1以上の実施例を詳細に説明する。各実施例は、本発明を説明するために提示されたものであり、本発明を限定するものではない。実際、本発明において、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な変更形態及び変形形態が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として例示または説明された特徴を、別の実施形態において用いて、さらなる別の実施形態を創出することもできる。したがって、本発明は、添付された特許請求の範囲及びその均等物の範囲に含まれる限り、そのような変更形態及び変形形態を包含することを意図している。
【0014】
図1及び2を参照して、本発明は、流体を患者Pにディスペンスするための装置であって、該装置を流れる流体の流量を制御するための装置100を包含する。装置100は、局所麻酔薬などの医薬流体を収容する加圧流体源またはポンプとしての役割を果たし、かつ流体源を加圧下で提供するように構成された流体貯留容器102(以降、「ポンプ」と称する)を含む。ポンプ102は、導管104を通じて医薬流体を送出する。導管104は、患者Pの創傷部位神経束または血流中に流体を送達するための連続流路106を形成する。
【0015】
ある構成では、ディスペンス装置100は、ボーラス送達のために提供され得る。このような実施形態では、導管104は、連続的または主要流路106と、患者Pの創傷部位神経束または血流中に流体を送達するための制御されたボーラス流路(図示せず)とに分岐する。ボーラス送達の他の態様は、本明細書中により詳細に説明される。
【0016】
ポンプ102は、約100〜500mlの流体を10〜15psi(68.9〜103.4kPa)の圧力下で収容することが好ましい。ポンプ102は、ハウジング112内でエラストマー性チャンバ110により取り囲まれた内側コア108を有する。内側コア108は、ポンプ102に流体を充填するための入口ポート114と、導管またはチューブ104に流体連通された出口ポート116とを有することが好ましい。エラストマー性チャンバ110は、加硫合成ポリイソプレン、天然ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴムなどの当分野で周知の様々なエラストマー性組成物を含み得る弾性材料から構成されることが好ましい。例示的なポンプは、この参照により本明細書に援用される米国特許第5、254、481号明細書に記載されている。流体に対して所望の圧力を付与することができる限りは、他の様々な従来のポンプを使用することができる。例えば、当業者であれば理解できるように、この参照により本明細書に援用される米国特許第5、080、652号明細書及び同第5、105、983号明細書に記載されているポンプ、並びに、他の製造業者から提供される他の適切な電気的ポンプまたは機械的ポンプを使用することもできる。
【0017】
流体は、エラストマー性チャンバ110内に加圧下で保持され、出口ポート116を通ってエラストマー性チャンバ110から導管104に、制御されたかつ予測可能な流量で流れる。あるいは、導管104が、流量制限器としての役割を果たすようなサイズに形成され得る。
【0018】
任意選択のクランプ118が、導管104の下流の流路106に配置される。クランプ118は、流路106を圧迫して、ポンプ102からの流体の流れを遮断することができる。このような遮断は、本明細書で説明される流体送達またはディスペンス装置100の輸送や準備に都合がよい。例示的なクランプ118は、この参照により本明細書に援用される米国特許第6、350、253号明細書に記載されている。なお、流路106を流れるポンプ102からの流体の流れを遮断するために、圧縮クランプ、C型クランプ、ローラークランプなどの当分野で既知の他の様々な従来のクランプを使用してもよい。
【0019】
クランプ118の下流に配置された任意選択のフィルタ120により、流体から、汚染物質及び流体中に存在し得る他の望ましくない粒子が分離される。フィルタ120はまた、流路106から空気を除去できることが好ましい。このようなフィルタ120の1つが、この参照により本明細書に援用される米国特許第6、350、253号明細書に記載されている。望ましくない粒子を捕えるため及び/または当該システムから空気を除去するために、当分野で認められている他の適切なフィルタを使用してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、患者Pに流体をディスペンスするための装置100は、流れ状態を示すための流れ検出器を含む少なくとも1つの流れ検出アセンブリ122を用いる。図1に示すように、1つの流れ検出アセンブリ122を流量セレクタ200の上流に設け、もう1つの流れ検出アセンブリ122を流量セレクタ200の下流に設けることが望ましい。本明細書で説明した、クランプ118、フィルタ120及び流量セレクタ200の特定の配置は、単なる例示である。クランプ118及びフィルタ120は(存在する場合)、当業者であれば容易に理解できるように、流量セレクタ200及びディスペンス装置100の他の構成要素に対して任意の順番で配置することができる。
【0021】
流れ検出器122は、連続流路106内の流体の流れ状態が所定の流れ状態から変化したときに信号を提供する。概して言えば、連続流路106内の流量は、流体の流れ状態、例えば連続的及び定常的な流量と関係し得る。例えば、流れ検出器122は、連続流路106内の流体の流量が、予め定められた流量未満である、または予め定められた流量の範囲である、または予め定められた流量を超えたことを示す信号を提供するように構成され得る。
【0022】
図1にさらに示すように、導管104は、出口または接続部124を含み得る。出口124は、連続流路106をカテーテル125に接続する。カテーテル126は、流体を、患者Pの創傷部位神経束または血流中に送達する。
【0023】
上述したように、ディスペンス装置100のいくつかの実施形態は、ボーラス送達システムを含み得る。例示的な実施形態では、ボーラス送達システムは、流体貯留容器102から延びているボーラス流路から大量の流体を収容し、前記流体を患者Pに放出するための患者が操作可能なアクチュエータによってボーラス投与がトリガーされるまでは、前記流体を加圧下で保持する。このような大量ボーラス送達システムは、流体を受け取り、流体に圧力を加えるために弾性的に膨張し、加圧された流体を貯蔵し、加圧された流体をディスペンスし、かつ、ボーラス送達中またはボーラス送達後にその後の送達サイクルにおいて弾性伸張が可能になる前にボーラス再充填されないように構成されている。アクチュエータは、ボーラス流体貯留容器から流体を押し出す力を必要とせず、患者によって駆動されたとき、患者によるさらなる動作を必要とすることなく、流体がボーラス流体貯留容器から患者に流れ出すことができるように構成されている。大量ボーラス送達システムは、例えば、2005年8月30日にRakeらに付与された「Patient Controlled Drug Administration Device」なる標題の米国特許第6、936、035号明細書、または2012年11月13日にValleらに付与された「Large-Volume Bolus Patient Controlled Drug Administration Device」なる標題の米国特許第8、308、688号明細書(両特許文献の内容は、この参照により本明細書に援用される)に記載されているPCA装置であることが望ましい。
【0024】
大量ボーラス送達システムの下流では、連続流路106及びボーラス投与流路は合流し、患者Pに向かう単一の流路となる。任意選択のクランプ及び任意選択のフィルタが、導管104の下流のボーラス投与流路に配置され得る。クランプは、ボーラス投与流路を圧迫して、ポンプ102からの流体の流れを遮断することができる。このような遮断は、本明細書で説明される流体送達装置100の輸送や準備に都合がよい。
【0025】
患者Pに対してのボーラス投与の放出量は、弾性ボーラス流体貯留容器310の減圧により、アクチュエータでの圧力勾配により、またはカテーテル126の直径により制御することができる。好ましいことに、患者Pは、大量ボーラス送達システムからより狭いボーラス流路に流体を押し出すための圧力を提供する必要がない。それどころか、患者Pは、ストップコックを回転させるか、またはプッシュボタンを解除することによって、ボーラス投与を行うことができる。ボーラス流体貯留容器がその限度容量まで充填される前に、患者Pがボーラスアクチュエータまたはバルブを駆動した場合、患者Pは、ボーラス投与の全量よりも少ない量を受け取る。実際には、このことにより、患者Pが、大量ボーラス用量として規定される、時間当たりの流体の望ましい最大量を上回る量を自己投与することが防止される。
【0026】
流れ検出器を含む流れ検出アセンブリ122は、連続流路106及びボーラス投与流路が合流して単一の流路となる位置の下流に配置され得る。この位置では、流れ検出器122は、単一の流路内の流体の流量が、予め定められた流量未満であることを示す信号を提供するように構成され得る。このような信号は、流れ状態が、流体の連続的及び定常的な流量未満であることを示す。
【0027】
図2を参照して、流量セレクタ200について、より詳細に説明する。流量セレクタ200は、ポンプ102からチューブ104を介して患者Pへ流れる流体の連続的かつ実質的に一定の流量を設定する。流量は、約0.5〜14cm/時間の範囲で設定される。望ましくは、流量は、約0.5〜7cm/時間の範囲、または約1〜12cm/時間の範囲で設定される。流量セレクタ200は、手動で調節するか、または制御アセンブリなどによって自動的に調節される。
【0028】
図2に示す例示的な実施形態では、流量セレクタ200は、ハウジング202を含む。図2では、ハウジング202の下側半分202bだけが示されている。ハウジング202は、下側半分202bと、この下側半分202bの形状と相補的な形状を有する上側半分とにより構成される。なお、別の実施形態では、ハウジング202は、別の構成を有するか、または省略され得る。
【0029】
流量セレクタ200はまた、入口チューブ206及び出口チューブ208(図4、7−10)を、シャフト212を有する流量選択機構210に対して所定の位置に保持するための筐体204を含む。いくつかの実施形態では、入口チューブ206は、筐体204に入る流体を提供する導管104の一部であり得、出口チューブ208は、筐体204から出る流体を受け取る導管104の一部であり得る。すなわち、入口チューブ206及び出口チューブ208は、別個に設けられたチューブではなく、導管104における、筐体204に対する上流側の部分及び下流側の部分であり得る。しかしながら、別の実施形態では、入口チューブ206及び出口チューブ208は、任意の適切な手段によって導管104に接続されるかまたは流体連通された別個のチューブであり得る。この場合、連続流路106は、入口チューブ206、筐体204、及び出口チューブ208を介して、流量セレクタ200の上流側の導管104から流量セレクタ200の下流側の導管104まで延在し、患者Pに流体を送達するように構成されている。
【0030】
図2に示すように、ハウジング202を含む流量セレクタ200の実施形態では、筐体204はハウジング202内に配置される。別の実施形態では、筐体204は、ハウジング202を必要としないように、入口チューブ206及び出口チューブ208、並びに流量選択機構210を支持するともに、互いに対して位置決めするように構成される。さらに、筐体204は、略八角形の形状を有するように図示されているが、筐体204は、任意の適切なまたは所望の形状を有し得る。
【0031】
図3は、本発明の例示的な実施形態に係る筐体204の端面図であり、図4は、その筐体204の上面図である。図3に示すように、筐体204は、入口チューブ206を受容するための入口開口部206aを有する。また、筐体204は、出口チューブ208を受容するための出口開口部208aと、流量選択機構210のシャフト212を受容するためのシャフト開口部212aとを有する。なお、後述するように、入口開口部206a、出口開口部208a、及びシャフト開口部212aは、筐体204の他の位置に設けてよい。
【0032】
図3及び図4に示すように、流量選択機構210は、入口チューブ206と出口チューブ208との間に設置または配置される。より具体的には、流量選択機構210の遠位端部214は、シャフト212を受容するためのシート部218を含み、筐体204内における入口チューブ206と出口チューブ208との間に配置される。入口チューブ206と出口チューブ208との間に流量選択機構210を配置または設置することにより、流体が入口チューブ206から流量選択機構210に入り、その流体が流量選択機構210から出口チューブ208へ出ていくことが可能となる。いくつかの実施形態では、クロスチューブまたは延長チューブ220が、入口チューブ206から出口チューブ208まで延在している。この場合、流量選択機構210は、入口チューブ206から流体を受け取るためにクロスチューブ220と流体連通しており、受け取った流体が出口チューブ208へ出ていくことができるように構成されている。別の実施形態では、流量選択機構210は、入口チューブ206から流体を直接的に受け取り、その流体を出口チューブ208に排出する。すなわち、入口チューブ206及び出口チューブ208は、それらと流量選択機構210との間で流体が直接的に流れることができるように、屈曲、湾曲、または他の方法で配置されている。
【0033】
図5は、本発明の例示的な実施形態に係る流量選択機構210の斜視図を示し、図6は、その流量選択機構210の側面図を示す。図5及び図6に示すように、流量選択機構210は、遠位端部214と、その反対側の近位端部216とを有する。シート部218は、流量選択機構210の遠位端部214に配置されており、シャフト212の遠位端部222を受容する。すなわち、図7及び図8の断面図に示すように、シート部218は、容積Vを有するリセス部(凹部)219を含む。図8に示すように、リセス部219は、シャフト212の遠位端部222を受容する。
【0034】
図5及び図6を再び参照して、シャフト212は、近位端部224及び遠位端部222を有し、軸方向Aに沿って近位端部224から遠位端部222まで延在している。ねじ部226により、シャフト212及びシート部は互いに結合されるとともに、詳細については後述するように、シート部218内でシャフト212が回転して軸方向Aに沿って変位することが可能となる。しかしながら、ねじ部226が一例にすぎないことは容易に理解できるであろう。別の例では、シャフト212及びシート部218は、別の方法で結合され、シャフト212は、別の方法でシート部218に対して軸方向に変位することができる。
【0035】
流量選択機構210はまた、突出部230を有する調節ノブ228を含む。調節ノブ228は、シャフト212の近位端部234に配置される。突出部230は、例えば、流量セレクタ200のユーザがシャフト212の回転を視認するのに、あるいは、流量セレクタ200を使用して流量を手動で調節するためにユーザが調節ノブ228を把持するのに役立つ。また、調節ノブ228は、他の構成を有し得、いくつかの実施形態では、例えば、流量セレクタ200が制御アセンブリなどを使用して自動的に調節される場合は、調節ノブ228は省略され得る。
【0036】
図5−8に示すように、流量選択機構210は、ニードルバルブまたはピンバルブであり得る。このような実施形態では、シャフト212の遠位端部222はテーパ状に形成され、シート部218のリセス部219は、シャフト212の遠位端部222の形状と相補的な形状に形成される。すなわち、シート部218における、シャフト212の遠位端部222を受容する部分であるリセス部219は、テーパ状の凹部であり、略円錐台状の形状を有する。他の形状のシャフト212及びリセス部219も使用され得る。
【0037】
前述したように、ねじ部226は、例えば、電気機械的な手段を用いるか、または流量セレクタ200のユーザが調節ノブ228に対して回転力を加えることによって、シャフト212を回転させることを可能にする。シート部218のリセス部219内に受容されたシャフト212は、回転したときは、リセス部219内で、軸方向Aに沿って前進または後退する。すなわち、シャフト212は、一方の方向に回転させた場合には、流量選択機構210の遠位端部214に向かって前進し、他方に回転させた場合には、遠位端部214から離れる方向に後退する。したがって、シャフト212を回転させることにより、シャフト212のより少ない部分またはより多くの部分が、シート部218のリセス部219内に受容され、リセス部219のより多くのまたはより少ない容積Vが、シャフト212により占められる。
【0038】
上述したように、流量選択機構210は、入口チューブ206から入った流体を受け取り、その流体が出口チューブ208から出ることを可能にする。流量選択機構210の入口から入る流体の圧力は、比較的一定の圧力である。すなわち、流量選択機構210は、比較的一定の圧力で駆動される。流量選択機構210の駆動中に、流量選択機構210に入る流体の一般的な圧力プロファイルは、2015年3月3日にTefer他に付与された「Inflatable Elastomeric Pump for an Infusion Assembly」なる標題の米国特許第8、968、242号明細書に記載されている(この特許文献の内容は、この参照により本明細書に援用される)。Tefer他は、流量選択機構210における駆動圧力プロファイルに特有であり得る、エラストマー性ポンプの下流側での流体環境の圧力プロファイルを示している。
【0039】
図8を参照して、入口チューブ206からの流体の流れは、流量選択機構210のリセス部219内に受容され、その流体は、リセス部219の利用可能な容積Vを満たす。利用可能な容積Vは、リセス部219の開放容積、すなわち、リセス部219における、シャフト212により占められていない容積である。シャフト212を回転させて、シャフト212の遠位端部222を軸方向Aに沿って変位させ、遠位端部222をリセス部219内で変位させることにより、利用可能な容積Vを調節することができる。
【0040】
このようにして、流量セレクタ200は、ディスペンス装置100内の流量を制御する。シャフト212を回転させ、その遠位端部222を流量選択機構210の遠位端部214に向けて前進させることにより、リセス部219内の利用可能な容積Vを減少させることができ、これにより、流量選択機構210を通る流体の流量を減少させることができる。このように、リセス部219内でシャフト212を回転させて前進させた後は、シャフト212を前進させる前と比べて、流量選択機構210を通る流体の流量は減少する。逆に、リセス部219内でシャフト212を回転させ、その遠位端部222を流量選択機構210の遠位端部214から離れる方向に後退させると、リセス部219内の利用可能な容積Vは増加し、これにより、流量選択機構210を通る流体の流量を増加させることができる。このように、リセス部219内でシャフト212を回転させて後退させた後は、シャフト212を後退させる前と比べて、流量選択機構210を通る流体の流量は増加する。したがって、例えば自動的にまたは手動でシャフト212を回転させることにより、流量選択機構210の下流側での流体の流量を選択することができる。
【0041】
流量セレクタ200を上述したように構成することにより、ディスペンス装置100内での流量の正確な制御が容易となる。より具体的には、流量を連続的スケールで調節可能であり、ディスペンス装置100での、例えば静脈内または筋肉内の薬物送達または他の用途のための任意の適切な流量を、ゼロから最大流量まで(すなわち、無流量から、ディスペンス装置100内で実現可能な最大流量まで)選択することができる。すなわち、シャフト212のわずかな回転によっても、リセス部219の利用可能な容積Vを変化させることができ、これにより、流量選択機構210を通る流体の流量を変化させることができる。したがって、流量の個別の範囲ではなく、流量値の連続的な全範囲にわたって、流量を正確に調節することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、流量選択機構210のシャフト212は、選択された流量を流量セレクタ200のユーザに対して示すための目印(indicia)232をシャフト212に沿って有する。図6に示すように、目印232は、流量セレクタ200を使用して選択可能な流量の範囲を示す一連の数字を含む。数字は、シャフト212を回転させてシート部218内で軸方向Aに変位させたときに、シャフト212におけるユーザに見える部分が現在のまたは選択された流量を示すように、シャフト212に沿って順番に配されている。前述したように、現在のまたは選択された流量は、シート部218に対するシャフト212の位置に基づいている。より具体的には、シート部218のリセス部219内におけるシャフト212の遠位端部222の位置により、リセス部219内の利用可能な容積Vが決定され、これにより、流量選択機構210を通る流体の流量が設定される。別の実施形態では、目印232は、選択された流量をユーザに対して示すための任意の手段であり得、流量セレクタ200の任意の適切な部品または構成要素に配置され得る。
【0043】
次に、図9−12の流量セレクタ200の概略図を参照すると、筐体204における入口チューブ206、出口チューブ208、及び流量選択機構210の様々な位置が示されている。図示した各実施形態に示すように、筐体204は、第1の面241、第2の面242、第3の面243、及び第4の面244を含む。第1の面241及び第2の面242は、互いに反対側に位置し、第3の面243及び第4の面244は、互いに反対側に位置する。しかしながら、図示した実施形態は、筐体204の例示的な構成にすぎず、筐体204の他の構成を用いてもよい。
【0044】
図9を特に参照して、例示的な一実施形態では、筐体204の第1の面241により、入口開口部206a及びシャフト開口部212aが画定され、筐体204の第2の面242により、出口開口部208aが画定される。したがって、図示した実施形態では、入口チューブ206及び出口チューブ208は、筐体204における互いに反対側の面にそれぞれ配置され、調節ノブ228を有する流量選択機構210のシャフト212は、筐体204における入口チューブ206が配置される面と同じ面に配置される。
【0045】
図10に図示した例示的な一実施形態では、筐体204の第1の面241により、入口開口部206bが画定され、筐体204の第2の面242により、シャフト開口部212b及び出口開口部208bが画定される。したがって、図10に示すように、入口チューブ206及び出口チューブ208は、筐体204における互いに反対側の面にそれぞれ配置され、調節ノブ228を有する流量選択機構210のシャフト212は、筐体204における出口チューブ208が配置される面と同じ面に配置される。
【0046】
次に図11を参照して、別の例示的な実施形態では、筐体204の第1の面241により、シャフト開口部212cが画定され、筐体204の第2の面242により、入口開口部206c及び出口開口部208cが画定される。したがって、図11に図示した実施形態では、入口チューブ206及び出口チューブ208は、筐体204における同じ面に配置され、調節ノブ228を有する流量選択機構210のシャフト212は、筐体204における入口チューブ206及び出口チューブ208が配置される面と反対側の面に配置される。
【0047】
図12に示すように、別の例示的な実施形態では、入口チューブ206及び出口チューブ208は、筐体204における互いに反対側の面にそれぞれ配置され、調節ノブ228を有する流量選択機構210のシャフト212は、入口チューブ206及び出口チューブ208間に位置する、筐体204の第3の面243に配置される。入口チューブ206、出口チューブ208、及びシャフト212のこのような配置は、一般的に、「T字」状配置と呼称及び/または理解されている。より具体的には、筐体204の第1の面241により、入口開口部206dが画定され、筐体204の第2の面242により、出口開口部208dが画定され、筐体204の第3の面243(別の実施形態では、第4の面244)により、シャフト開口部212dが画定される。シャフト開口部212dが第3の面243により画定された場合でも第4の面244のいずれにより画定された場合で、調節ノブ228を有するシャフト212は、筐体204における、入口チューブ206が配置される面と出口チューブ208が配置される面との間に位置する面に配置される。
【0048】
図9−12における筐体204の第1の面241、第2の面242、第3の面243、及び第4の面244についての説明は便宜上のものにすぎないことは容易に理解できるであろう。上述したように、これらの実施形態は、流量選択機構210の入口チューブ206、出口チューブ208、シャフト212の、互いに対する及び筐体204に対する様々な位置を図示している。いくつかの実施形態では、入口チューブ206及びシャフト212は、筐体204における、出口チューブ208が配置される面の反対側の面に配置される。別の実施形態では、出口チューブ208及びシャフト212は、筐体204における、入口チューブ206が配置される面の反対側の面に配置される。さらに別の実施形態では、入口チューブ206及び出口チューブ208は、筐体204における、シャフト212が配置される面の反対側の面に配置される。別の実施形態では、入口チューブ206は、筐体204における、出口チューブ208が配置される面の反対側の面に配置され、シャフト212は、筐体204における、入口チューブ206が配置される面と出口チューブ208が配置される面との間に位置する面に配置される。当然ながら、当業者であれば、入口チューブ206、出口チューブ208、及びシャフト212の他の構成を用いてもよいことを理解できるであろう。
【0049】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに記載内容に組み入れられたあらゆる方法の実施を含む)することを可能にしている。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって特定され、当業者が想到可能な他の実施形態もそれに含まれ得る。そのような他の実施形態は、各請求項の文言と異なっていない構成要素を含む場合、またはそれらが各請求項の文言とは実質的には異ならない均等な構成要素を含む場合、それらの請求項の特定する技術範囲内にあるものとする。
図1
図2
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図10
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図12