(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646762
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】骨除去器具のガイド保護エレメントおよびこのエレメントを備える骨除去器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
A61B17/16
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-551363(P2018-551363)
(86)(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公表番号】特表2019-512353(P2019-512353A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】IB2017051350
(87)【国際公開番号】WO2017168273
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年11月27日
(31)【優先権主張番号】102016000032872
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ベルベリッヒ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
【審査官】
後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−145053(JP,A)
【文献】
米国特許第05084052(US,A)
【文献】
特開昭63−197445(JP,A)
【文献】
米国特許第05569284(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16−17/17
A61B 17/32−17/326
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨除去器具のためのガイド保護エレメントであって、
骨除去器具(3)に取り付けられるよう構成されるとともに、完全に開口している第一端部(2a)と少なくとも部分的に閉鎖している第二端部(2b)とを有する円筒状本体(2)を備え、
前記円筒状本体(2)は、治療すべき骨に対して骨除去器具によって手術を行うことを可能にするよう、側面(2c)に少なくとも一つの窓部(5)が形成されており、
前記第一端部(2a)に面するとともに前記円筒状本体(2)の長手方向軸(1a)と一直線に並んで配置される内部ピン(4)を、前記第二端部(2b)に、有しており、
前記器具(3)に前記エレメントを固定し、前記器具が進路から外れるのを防止し、そして互いの軸の並びを維持するよう、前記ピン(4)は骨除去器具(3)の先端(3b)と係合する、
ガイド保護エレメント。
【請求項2】
少なくとも二つの窓部(5’,5”)を有している、
請求項1に記載のガイド保護エレメント。
【請求項3】
前記二つの窓部(5’,5”)は互いに寸法および幅が異なる、
請求項2に記載のガイド保護エレメント。
【請求項4】
前記円筒状本体(2)の長手方向軸(1a)と一方の窓部(5’)の境界を定める上側縁部(5a)との間の距離(d1)は、前記長手方向軸(1a)と他方の窓部(5”)の境界を定める上側縁部(5a)との間の距離(d2)とは異なる、
請求項2または3に記載のガイド保護エレメント。
【請求項5】
前記窓部は両方とも同じ寸法を有する、
請求項2に記載のガイド保護エレメント。
【請求項6】
前記円筒状本体(2)は断面が円形状である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のガイド保護エレメント。
【請求項7】
前記円筒状本体(2)は断面が楕円形状である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のガイド保護エレメント。
【請求項8】
スピンドル(7)と、
切断ヘッド(6)と、
請求項1から7のいずれか1項に記載のガイド保護エレメントと、
を備える骨除去器具。
【請求項9】
前記切断ヘッド(6)は電動ロータリー・カッターである、
請求項8に記載の骨除去器具。
【請求項10】
望ましくない骨組織の除去のための吸引システムを備える、
請求項8または9に記載の骨除去器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨除去器具のためのガイド保護エレメントに関する。
【0002】
本発明はまた、前記ガイド保護エレメントを備える骨除去器具に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の両方の目的は、骨増殖体、骨の突起もしくは骨瘢痕組織の切除が必要とされる骨手術において特に関節鏡手術または直視下手術手術において特に役に立てることにある。
【0004】
この異常(pathology)が起こりやすい解剖学的な部分は、例えば股関節部、肩、および足首(つまり最も損傷しやすい身体の部分)である。
【0005】
大腿骨の首部は、例えば円柱構造であるが、ときに、取り除く必要があり股関節インピンジメント(femoral acetabular impingement)を引き起こす虞がある異常骨棘(pathological bone spurs)を有することがある。
【0006】
関節鏡による股関節部の手術の際に、大腿骨の頭部−首部結合の領域における骨の伸び出たもの(bony outgrowth)を取り除くことが必要な場合がある。
【0007】
股関節インピンジメントは、一連の先天性または後天性股関節部異常に起因する。主な病状の要因は、股関節の二つの部分の(寛骨臼と大腿骨の近接側部分との)間の正常でない接触である。
【0008】
このタイプの異常なまたは後天性インピンジメントを除去することは重要である。インピンジメントが股関節の関節症の最もよくある原因のうちの一つであることが分かっているからである。
【0009】
後天性インピンジメントは、典型的には、外傷によって生じる生成された骨の伸び出たものの結果発生する。特にスポーツ選手に影響を与える状態となる。
【0010】
またこのタイプの異常は、例えば肩など身体の他の部分に影響する場合がある。この場合は肩峰下インピンジメント(subacromial impingement)として知られている。
【0011】
この特定の異常において、肩における痛みは通常、回旋筋蓋腱(rotator cuff tendons)の高さの問題による。腱は、筋肉を骨に取り付ける繊維構造である。
【0012】
回旋筋蓋腱は、肩における二つの骨の間に位置する。
【0013】
繰り返された微小外傷、一回の挫傷、または長年にわたる通常の疲労(ordinary wear)などによって、腱が厚くなり、二つの骨の摩擦またはインピンジメントを生じさせる。
【0014】
またちょうど大腿骨と肩のように、足首も、捻挫、繰り返された微小外傷または骨折を受けやすく、繊維質インピンジメント(fibrous impingement)として知られているものが生じる虞がある。
【0015】
これらのすべての場合において、第一診断段階の後、骨増殖体または瘢痕組織を外科手術で取り除く必要がある。
【0016】
大多数の場合において、外科手術は、炎症または瘢痕組織および骨棘を切除するために関節鏡と特別な器具とを挿入する工程を含む関節鏡手法を用いて実行される。特に、小さい電動器具が、一般に小さいカッターが、組織の余分な部分を切断して引き出すよう挿入される。
【0017】
周囲の神経脈管構造または他の軟部組織を損傷させることなく余分な骨をすべて取り除くために注意を払わなければならない。
【0018】
カッターは、単に目で確認しながら用いられる。したがって、外科医には、取り除く骨の量の決定に関して基準となるものがない。取り除く骨の量の評価が正しくない場合は、外科的処置の時間を増加させることもあり、あるいは一方では、残りの骨を薄くし過ぎる虞がある。
【0019】
上述した不都合さから、そのような問題を改善することができる骨除去器具のための案内・保護装置を提供するニーズがあることは明らかであろう。
【0020】
以上の点に鑑み、本発明の一の目的は、骨除去器具を安全に用いることができるガイド保護エレメントを提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、損傷されてはならない周囲の軟部組織を保護する骨除去器具のためのガイド保護エレメントを提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる他の目的は、外科的処置の際に外科医に視覚的な基準を提供する骨除去器具のためのガイド保護エレメントを提供することにある。
【0023】
最後に、本発明の目的は、外科医が手術を素早く安全に、患者に損傷を与える虞なく、手術を行うことができる骨除去器具を実現することにある。
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明は、請求項1に特徴が記載される骨除去器具のためのガイド保護エレメントを開示する。
【0025】
本発明のさらなる目的は、添付の特許請求の範囲の一の請求項に開示する骨切除器具である。
【0026】
さらなる有用な特徴は従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明を、単なる具体例としてのみ提供する以下の添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【
図1】本発明にかかるガイド保護エレメントの斜視図を示す。
【
図2】
図1に示すガイド保護エレメントの上からの図を示す。
【
図3】本発明にかかるガイド保護エレメントの他の実施形態の斜視図である。
【
図5】
図1のガイド保護エレメントを備える骨除去器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面において、参照符号1は、骨除去器具のためのガイド保護エレメントを概略的に示す。
【0029】
前記ガイド保護エレメント1は、
図4に示すタイプの骨除去器具3に取り付けられるよう構成される円筒状本体2を備える。
【0030】
円筒状本体2は、骨除去器具3が挿入される完全に開口している第一端部2aと、ガイド保護エレメント1に十分に挿入されるとき器具が当接する少なくとも部分的に閉鎖している第二端部2bと、を有する。
【0031】
円筒状本体2の内部には、第二端部2bから軸方向に突出するとともに第一端部2aに向かって突き出るピン4が配置される。
【0032】
ピン4は、円筒状本体2の長手方向軸1aと一直線に並んで配置され、骨除去器具3と軸方向に係合する。
【0033】
こうして、ガイド保護エレメント1は器具3に接続され、これら二つの間の互いの軸の並びが保証され、そして器具3がその長手方向軸3aの回りの回転の際に進路から外れること防止できる。
【0034】
骨除去器具3は、該骨除去器具の動作中にも静止状態にあるガイド保護エレメント1に対して回転する。
【0035】
円筒状本体2には、第一端部2aと第二端部2bとの間に配置される少なくとも一つの窓部5が、一の側面2cに、形成される。
【0036】
切断ヘッド6が制御され案内された状態で治療すべき骨に対して動作することができるよう、骨除去器具3は、この窓部5を通じて、少なくとも部分的に、特に器具の切断ヘッド6の一部において、外側に面する。
【0037】
言い換えれば、切断ヘッド6は完全には露出していない。その一部だけが骨と作用することができる。
【0038】
窓部5が外科医のために視覚的な基準(ビジュアル・レファレンス)を与えることに加えて、窓部5の境界は、取り除くべき骨の部分を囲む解剖学的な部分が当たる当接要素を構成する上側縁部5aと下側縁部5bと二つの側方縁部5cとによって定められる。
【0039】
好適には、円筒状本体2には、側面2cに少なくとも二つの窓部5’,5”が形成される。二つの窓部5’,5”は好ましくは、ガイド保護エレメント1の軸1aに対して互いの反対側に配置される。
【0040】
好適には、二つの窓部5’,5”は、側面2c上の幅および/または深さの点で、サイズが互いに異なる。
【0041】
言い換えれば、窓部はそれぞれ、円筒状本体の第一端部2aと第二端部2bとの間でそれらの全体的寸法の点で、他方とはサイズを異ならせることができる。
【0042】
さらに、また横方向寸法を異ならせることもでき、側面2cにおいて窓部が広がる円弧領域(サーキュラー・セクター)をより大きくまたはより小さくすることもできる。
【0043】
この後者の場合において、窓部は、側面2cから円筒状本体1aの軸に向かって異なる深さとできる。一方の窓部5’の第二端部2bから第一端部2aへの上からの平面図は、他方の窓部5”の同じ平面図とは異なる。
【0044】
したがって、第二端部2bは、円筒状本体2の軸1aに対して非対称とできる。言い換えれば、円筒状本体2の長手方向軸1aと一方の窓部5’の境界を定める上側縁部5aとの間の距離d1は、長手方向軸1aと他方の窓部5”の境界を定める上側縁部5aとの間の対応する距離d2とは異なる。
【0045】
こうして、骨除去器具3の切断ヘッド6は、一方の窓部からの方が他方よりもより大きく露出する。
【0046】
これにより、外科的な必要性に応じて切断深さを異ならせることができる。
【0047】
図示しない他の構成において、窓部は両方とも同じ寸法を有することもできる。
【0048】
図1および
図2に示す構成において、円筒状本体2の断面は円形状である。
【0049】
他の構成として、
図3に示すような断面が楕円形状である円筒状本体2も可能である。
【0050】
骨除去器具3は好ましくは、電動ロータリー・カッターである。
【0051】
この器具は、スピンドル7と、切断ヘッド6の軸方向長に沿って螺旋状に延設される軸方向に細長いブレード8を有する断面が円形状である円筒状の切断ヘッド6と、を備える。
【0052】
先端部3bに、切断ヘッド6は、円筒状本体2のピン4を挿入するための受け部9を有する。
【0053】
骨除去器具3はさらに、望ましくない骨組織の除去のための一体的吸引システムを備える。
【0054】
上述したガイド保護エレメント1は、切断ヘッド6を保護しその一部分だけを露出させるよう骨除去器具3上に嵌められる。特に、取り除くべき骨の部分に作用する部分のみが露出する。
【0055】
それぞれの窓部5’,5”の縁部5a,5b,5cは、ブレードがそれを越えて切断できない当接要素として機能する。
【0056】
窓部5は、このように、取り除く必要がある骨の量の正確な基準を外科医に提供し、これにより、過剰な骨除去を回避できる。
【0057】
さらに、切断してはならない腱、神経脈管構造または他の軟部組織など周囲の解剖学的な部分を保護するよう、ガイド保護エレメント1は、切断には関係ないブレードの部分を覆う。
【0058】
ここで説明した本発明により、提案の目的を達成し、顕著な利点が得られる。
【0059】
ガイド保護エレメントは、既に記載した通り、外科医に視覚的な基準を提供し、外科的処置の各段階を円滑化できる。
【0060】
さらに、ガイド保護エレメントは、骨の周囲の領域を保護し、偶発的な損傷の虞を取り除くことができる。
【0061】
このガイド保護エレメントを有する骨除去器具はより扱いやすく、そしてこのガイド保護エレメントを有する骨除去器具によって安全性をより高めて外科医が手術することが可能となる。