特許第6646767号(P6646767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646767傍熱型陰極イオン源及びベルナス(BernAs)イオン源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646767
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】傍熱型陰極イオン源及びベルナス(BernAs)イオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/14 20060101AFI20200203BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20200203BHJP
   H05H 1/48 20060101ALN20200203BHJP
【FI】
   H01J27/14
   H01J37/08
   !H05H1/48
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-567705(P2018-567705)
(86)(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公表番号】特表2019-525392(P2019-525392A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017033981
(87)【国際公開番号】WO2018004878
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年2月6日
(31)【優先権主張番号】15/198,723
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アール ティーガー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アルバラド
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0242793(US,A1)
【文献】 特開平10-340701(JP,A)
【文献】 特表2003-533848(JP,A)
【文献】 特開2007-184218(JP,A)
【文献】 特表2008-536261(JP,A)
【文献】 特開2009-211955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/14
H01J 37/08
H05H 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傍熱型陰極イオン源であって、該傍熱型陰極イオン源は、
その中にガスが導入される複数の導電性壁を備えるチャンバと、
該チャンバの一端部の上に配置される陰極と、
該陰極の後方に配置されるフィラメントと、
前記チャンバを通過する磁界と、
引き出しアパーチャを有する頂部の壁と、
前記チャンバの中に前記チャンバの壁に沿って配置される電極と、を備え、
電圧が、前記チャンバに対して、前記電極に印加され、前記陰極は前記チャンバに電気的に接続される、傍熱型陰極イオン源。
【請求項2】
反射電極は、前記陰極と反対側の前記チャンバの第2の端部の上に配置され、前記チャンバに電気的に接続される、請求項1記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項3】
前記電極は、前記チャンバに対して正にバイアスをかけられる、請求項1記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項4】
前記電極は、前記磁界に平行に、側壁の上に配置される、請求項1記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項5】
前記電極と反対側の側壁の上の第2の電極を、さらに、備え、前記電極と前記第2の電極との間の電界と前記磁界は、互いに、垂直である、請求項4記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項6】
前記磁界及び前記電界は、前記引き出しアパーチャの方への力を正のイオンに加えるように構成される、請求項5記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項7】
前記第2の電極は、前記チャンバと電気通信する、請求項5記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項8】
前記電極は、前記引き出しアパーチャの反対側の前記頂部の壁の上に配置される、請求項1記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項9】
傍熱型陰極イオン源であって、該傍熱型陰極イオン源は、
その中にガスが導入される複数の導電性壁を備えるチャンバと、
該チャンバの1つの壁の上に配置される陰極と、
該陰極の後方に配置されるフィラメントと、
前記チャンバを通過する磁界と、
前記チャンバの中に前記陰極と反対側の壁の上に配置される電極と、を備え、
前記陰極は前記磁界に平行に壁の上に配置される、傍熱型陰極イオン源。
【請求項10】
前記陰極は前記チャンバに電気的に接続される、請求項9記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項11】
前記電極は、前記チャンバに対して正にバイアスをかけられる、請求項9記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項12】
ベルナス(Bernas)イオン源であって、該ベルナスイオン源は、
その中にガスが導入される複数の導電性壁を備えるチャンバと、
該チャンバの一端部の上に配置されるフィラメントと、
前記チャンバを通過する磁界と、
引き出しアパーチャを有する頂部の壁と、
前記チャンバの壁に沿って配置される電極と、を備え、
電圧が、前記チャンバに対して、前記電極に印加され、前記フィラメントの1つのリード線は前記チャンバに電気的に接続される、ベルナスイオン源。
【請求項13】
前記電極は、前記磁界に平行に、側壁の上に配置される、請求項12記載のベルナスイオン源。
【請求項14】
前記電極と反対側の側壁の上の第2の電極を、さらに、備え、前記電極と前記第2の電極との間の電界と前記磁界は、互いに、垂直である、請求項13記載のベルナスイオン源。
【請求項15】
前記第2の電極は、前記チャンバと電気通信する、請求項14記載のベルナスイオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はイオン源に関し、特に、本発明は、イオン源の寿命を向上するために、チャンバの壁に電気的に接続された陰極を有するイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体処理装置に用いられるイオンを創生するために、様々なタイプのイオン源を用いることができる。例えば、ベルナス(Bernas)イオン源は、電流がチャンバの中に配置されたフィラメントを通過することにより、動作する。フィラメントは、チャンバに導入されるガスを励起する電子を放出する。電子の経路を制限するために、磁界を用いることができる。特定の実施態様において、電極は、また、チャンバの1つ以上の壁の上に配置される。チャンバの中心の近くのイオン密度を増大するために、イオン及び電子の位置を制御するように、これらの電極は、正に又は負にバイアスをかけることができる。そこを通ってイオンを引き出すことができる引き出しアパーチャは、チャンバの中心の最も近くの別の側面に沿って配置される。
【0003】
ベルナス(Bernas)イオン源に関連する1つの問題点はフィラメントの寿命である。フィラメントは、チャンバの中でさらされるため、その寿命を低減するスパッタリング及び他の現象を受けることになる。いくつかの実施態様において、ベルナス(Bernas)イオン源の寿命は、フィラメントの寿命により決定される。
【0004】
イオン源の第2のタイプは、傍熱型陰極(IHC)イオン源である。IHCイオン源は、陰極の後方に配置されたフィラメントに電流を供給することにより、動作する。フィラメントは熱電子を放出し、熱電子は、陰極の方へ加速され陰極を加熱し、次に、陰極に電子をイオン源のチャンバの中へ放出させる。フィラメントは陰極により保護されるため、その寿命はベルナスイオン源に対して、延ばすことができる。陰極はチャンバの一端部に配置される。反射電極は、通常、陰極の反対側の端部に配置される。陰極及び反射電極は、電子を、反発し、チャンバの中心の方へ戻すように、バイアスをかけることができる。いくつかの実施態様において、さらに電子をチャンバ内に制限するために、磁界を用いる。
【0005】
特定の実施態様において、電極は、また、チャンバの1つ以上の側壁の上に配置される。チャンバの中心の近くのイオン密度を増大するために、イオン及び電子の位置を制御するように、これらの電極は、正に又は負にバイアスをかけることができる。そこを通ってイオンを引き出すことができる引き出しアパーチャは、チャンバの中心の最も近くの別の側面に沿って配置される。
【0006】
IHCイオン源に関連する1つの問題点は陰極が限られた寿命を有し得ることである。陰極は、電子からの衝撃を後面に受け、正に帯電したイオンからの衝撃を前面に受けることになる。イオンからの衝撃はスパッタリングをもたらし、スパッタリングは陰極の浸食を引き起こす。多くの実施態様において、IHCイオン源の寿命は、陰極の寿命により決定される。特定の実施態様において、プラズマからの化学蒸着により、負に帯電した陰極に、イオン源の接地壁に電気的に接続になるようにさせて、イオン源の機能停止を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、寿命が増大したイオン源は有用であり得る。さらに、イオン源が、電子生成のために用いるコンポーネントの上へのスパッタリングが、より少なくなれば、有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
向上した寿命を有するイオン源が開示される。特定の実施態様において、イオン源はチャンバを備えるIHCイオン源であり、チャンバは、複数の導電性壁を有し、前記イオン源の壁に電気的に接続される陰極を有する。電極は前記イオン源の1つ以上の壁の上に配置される。バイアス電圧が、チャンバの壁に対して、少なくとも1つの電極に印加される。特定の実施態様において、より少ない正のイオンが陰極に引き付けられ、陰極が受けるスパッタリングの量を低減する。有利に、この技術を用いて、陰極の寿命は向上する。別の実施態様において、イオン源は、イオン源の壁に接続されたフィラメントの一側面を持つフィラメントを有するチャンバを備えるベルナス(Bernas)イオン源を含む。
【0009】
一実施態様により、傍熱型陰極イオン源が開示される。該傍熱型陰極イオン源は、その中にガスが導入される複数の導電性壁を備えるチャンバと、該チャンバの一端部の上に配置される陰極と、該陰極の後方に配置されるフィラメントと、前記チャンバを通過する磁界と、引き出しアパーチャを有する頂部の壁と、前記チャンバの中に前記チャンバの壁に沿って配置される電極と、を備え、電圧が、前記チャンバに対して、前記電極に印加され、前記陰極は前記チャンバに電気的に接続される。いくつかの実施態様において、前記電極は、前記磁界に平行に、側壁の上に配置される。さらなる実施態様において、前記電極と反対側の側壁の上の第2の電極を、さらに、備え、前記電極と前記第2の電極との間の電界と前記磁界は、互いに、垂直である。特定の実施態様において、前記電極は、前記引き出しアパーチャの反対側の前記頂部の壁の上に配置される。
【0010】
第2の実施態様において、傍熱型陰極イオン源が開示される。該傍熱型陰極イオン源は、その中にガスが導入される複数の導電性壁を備えるチャンバと、該チャンバの1つの壁の上に配置される陰極と、該陰極の後方に配置されるフィラメントと、前記チャンバを通過する磁界と、前記チャンバの中に前記陰極と反対側の壁の上に配置される電極と、を備え、前記陰極は前記磁界に平行に壁の上に配置される。特定の実施態様において、前記陰極は前記チャンバに電気的に接続される。特定の実施態様において、前記電極は、前記チャンバに対して正にバイアスをかけられる。
【0011】
第3の実施態様において、ベルナスイオン源が開示される。該ベルナスイオン源は、その中にガスが導入される複数の導電性壁を備えるチャンバと、該チャンバの一端部の上に配置されるフィラメントと、前記チャンバを通過する磁界と、引き出しアパーチャを有する頂部の壁と、前記チャンバの壁に沿って配置される電極と、を備え、電圧が、前記チャンバに対して、前記電極に印加され、前記フィラメントの1つのリード線は前記チャンバに電気的に接続される。特定の実施態様において、前記電極は、前記磁界に平行に、側壁の上に配置される。特定の実施態様において、第2の電極は、前記電極と反対側の側壁の上に配置され、前記電極と前記第2の電極との間の電界と前記磁界は、互いに、垂直である。
【0012】
本発明のより良い理解のために、参照により本明細書に組み込まれる添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による傍熱型陰極(IHC)イオン源である。
図2】別の実施形態によるIHCイオン源である。
図3】別の実施形態によるIHCイオン源である。
図4図1のIHCイオン源の断面図である。
図5】別の実施形態によるIHCイオン源の断面図である。
図6】別の実施形態によるIHCイオン源である。
図7】別の実施形態によるイオン源である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記のように、特に、電子を生成するために用いるコンポーネントの上へのスパッタリングの効果により、イオン源は寿命が短くなることの影響をうけやすくなり得る。通常は、時間と共に、これらのコンポーネントは機能停止となる。特定の実施形態において、IHCイオン源の機能停止は、陰極とイオン源の壁との間の電気短絡により、又は、反射電極とイオン源の壁との間の電気短絡により、引き起こされる。同様に、ベルナス(Bernas)イオン源は、フィラメントの上へのスパッタリングの効果により、寿命が短くなることの影響をうけやすくなり得る。
【0015】
図1は、これらの問題点を克服するIHCイオン源10を示す。図4はIHCイオン源10の断面図である。IHCイオン源10は、2つの向かい合った端部、及び、これらの端部を接続する側壁101を備えるチャンバ100を含む。チャンバ100は、また、底部の壁102及び頂部の壁103を含む。チャンバの壁は導電性材料から作ることができ、互いに電気通信することができる。陰極110は、チャンバ100の第1端部104におけるチャンバ100の中に配置される。フィラメント160は陰極110の後方に配置される。フィラメント160はフィラメントの電源165に連通する。フィラメントの電源165は、フィラメント160が熱電子を放出するように、電流をフィラメント160に通すように構成される。陰極バイアス電源115は、フィラメント160に、陰極110に対して負にバイアスをかけ、それ故に、熱電子が陰極110の後面に当たるときに、これらの熱電子は、フィラメント160から陰極110の方へ加速され、陰極110を加熱する。陰極バイアス電源115は、フィラメント160にバイアスをかけることができ、それ故に、フィラメント160は、陰極110の電圧よりもっと負の、例えば、200Vと1500Vとの間の電圧を有する。陰極110は、次いで、熱電子をその前面に放出しチャンバ100の中に入れる。
【0016】
したがって、フィラメントの電源165は、電流をフィラメント160に供給する。陰極バイアス電源115は、フィラメント160に陰極110よりもっと負のバイアスをかけ、それ故に、電子はフィラメント160から陰極110の方へ引き付けられる。さらに、陰極110は、チャンバ100の壁と同じ電圧になるように、チャンバ100に電気的に接続される。特定の実施形態において、チャンバ100は電気接地に接続される。
【0017】
本実施形態において、反射電極120は、陰極110と反対側のチャンバ100の第2端部の上でチャンバ100の中に、配置される。反射電極120は反射電極電源125と連通することができる。名称が示唆するように、反射電極120は、陰極110から放出された電子を反発して、チャンバ100の中心の方へ戻すのに役立つ。例えば、反射電極120は、電子を反発するために、チャンバ100に対して負の電圧にバイアスをかけられ得る。例えば、反射電極電源125は、他の電圧を用いることができるけれども、0Vから−150Vの範囲の出力を有することができる。特定の実施形態において、反射電極120は、チャンバ100に対して0Vと−150Vとの間でバイアスをかけられる。特定の実施形態において、反射電極120は、チャンバ100に対して浮かすことができる。言い換えれば、浮かんでいるとき、反射電極120は、反射電極電源125に、又は、チャンバ100に、電気的に接続されていない。本実施形態において、反射電極120の電圧は、陰極110の電圧に近い電圧の方に漂う傾向がある。
【0018】
特定の実施形態において、磁界190がチャンバ100の中に生成される。この磁界は、電子を一方向に制限することを目的としている。磁界190は、通常、第1端部104から第2端部105へ側壁101に平行に及ぶ。例えば、電子は、陰極110から反射電極120の方向に平行な(すなわち、y方向)列の中に制限することができる。したがって、電子は、y方向に動かすためのどんな電磁力も受けない。しかしながら、他の方向への電子の動きは、電磁力を受けることができる。
【0019】
図1に示す実施形態において、電極130、130は、電極130、130がチャンバ100内にあるように、チャンバ100の側壁101の上に配置することができる。電極130、130は、電源により、バイアスをかけることができる。特定の実施形態において、電極130、130は、共通電源と連通することができる。しかしながら、他の実施形態において、IHCイオン源の出力を調整するため、最大の順応性及び機能性を可能にするために、電極130、130は、各々、それぞれの電極の電源135、135に連通することができる。
【0020】
反射電極電源125のように、電極電源135、135は、チャンバ100に対して電極130、130にバイアスをかけるために役立つ。特定の実施形態において、電極電源135、135は、チャンバ100に対して正に又は負に電極130、130にバイアスをかけることができる。特定の実施形態において、少なくとも1つの電極130、130に、チャンバ100に対して40ボルトと500ボルトとの間で、バイアスをかけることができる。
【0021】
陰極110、反射電極120及び電極130、130の各々は、金属などの電導材料から作ることができる。
【0022】
頂部の壁103といわれるチャンバ100の別の側面の上に配置することができるのは、引出しアパーチャ140である。図1において、引出しアパーチャ140は、X−Y平面に平行な(ページに平行な)側面の上に配置される。さらに、図示されないが、IHCイオン源10は、また、イオン化すべきガスがそこを通ってチャンバ100へ導入されるガス注入口を備える。
【0023】
コントローラ180は、これらの電源により供給される電圧又は電流を変更することができるように、1つ以上の電源と連通することができる。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パソコン、専用コントローラ、又は、別の適切な処理装置などの処理装置を含むことができる。コントローラ180は、また、半導体メモリ、磁気メモリ、又は、別の適切なメモリなどの非一時的記憶要素も含むことができる。この非一時的記憶要素は、コントローラ180に、本明細書において説明する機能を実施させる命令及び他のデータを含むことができる。
【0024】
コントローラ180は、陰極バイアス電源115、フィラメントの電源165、電極電源135、135、及び、反射電極電源125により供給されるべき最初の電圧又は電流を選択するために、用いることができる。この最初の電圧は、用いられているガスのタイプに基づくことができ、又は、IHCイオン源10から引き出すべきイオンのタイプに基づくことができる。さらに、特定の実施形態において、コントローラ180は、また、引き出したイオンビームの電流をモニターすることができる。モニターした引き出し電流に基づいて、所望の引き出し電流を達成するために、フィラメントの電源165により供給される少なくとも電流を変えることができる。
【0025】
動作中、フィラメントの電源165は、電流をフィラメント160に通し、電流は、フィラメント160に熱電子を放出させる。これらの電子は、陰極110の後面に当たり、陰極110は、フィラメント160よりもっと正であり得て、陰極110を加熱させ、次に、陰極110に電子を放出させて、チャンバ100の中へ入れる。これらの電子は、ガス分子と衝突し、ガス分子は、ガス注入口を通ってチャンバ100の中へ供給される。これらの衝突は、プラズマ150を形成する正のイオンを創生する。プラズマ150は、反射電極120及び電極130、130により創生される電界により、閉じ込め、かつ、操作することができる。さらに、特定の実施形態において、電子及び正のイオンは、磁界190により少し閉じ込めることができる。特定の実施形態において、プラズマ150は、チャンバ100の中心の近くで、引出しアパーチャ140の最も近くに閉じ込められる。
【0026】
陰極110は、チャンバ100に対して、バイアスをかけられないため、より少ない正のイオンが陰極110に引き付けられ、これらのイオンはより低いエネルギーを有し、それ故、より少なくスパッタする。したがって、スパッタリングの量は低減することができ、陰極110の寿命は延ばすことができる。さらに、スパッタリングがあるとしてでも、陰極110はチャンバ100の壁と同じ電圧なので、電気短絡のリスクは除去される。
【0027】
本実施形態において、電子は、チャンバ100に対して、正にバイアスをかけられ得る電極130に引き付けられる。しかしながら、電子は、磁界90を横切るために、電磁力を克服する必要がある。したがって、磁界90の強さ、及び、電極電源135により加えられる正の電圧を選択することにより、電子が電極130に引き付けられるときの、電子の速度及びエネルギーを決定する。電極130に加えられる低い正のバイアス電圧を有する、より大きい磁界により、磁界90を横切ることができる電子の量を低減する。対照的に、電極130に加えられる、より大きいバイアス電圧を有する、弱い磁界により、より高速で動くより多くの電子に、電極130の方に向かわさせる。
【0028】
したがって、磁界190の強さ、及び、電極電源135により加えられる電圧を変えることにより、電子の速度及びエネルギーを操作することができる。これにより、IHCイオン源10が、多数の電荷イオン、モノマー及びイオン化分子に対して、有用であることを可能にする。
【0029】
例えば、単一電荷イオンに対して、弱い磁界と共に、濃厚ガスを用いることができる。特定の実施形態において、電極電源135により第1の電圧を加えることができる。多数の電荷イオンに対して、強い磁界と共に、希薄ガスを用いることができる。本実施形態において、電極130に加えられる電圧は、第1の電圧より大きくすることができる。より強い磁界により、より多くの衝突が起きることを引き起こし、多数の電荷種を創生する。
【0030】
図1は、IHCイオン源10の実施形態を示し、陰極110はチャンバ100に電気的に接続され、一方、反射電極120及び電極130、130は、全て、それぞれ、反射電極電源125及び電極電源135、135を用いて、チャンバ100に対して、個々にバイアスをかけられる。図2は、別の実施形態によるIHCイオン源11である。同様のコンポーネントには、同一の参照番号を与えている。IHCイオン源11は、両方ともに、チャンバ100に電気的に接続される、陰極110及び反射電極120を有する。さらに、電極130の内の1つも、チャンバ100に電気的に接続される。言い換えれば、陰極110、反射電極120、電極130及びチャンバ100の壁は、全て、同じ電圧である。それ故に、電極電源135及び反射電極電源125は除去することができる。
【0031】
本実施形態において、電極130のみが、チャンバ100に対して、バイアスをかけられる。電極130は、チャンバ100に対して、40ボルトと500ボルトとの間で正にバイアスをかけることができる。したがって、チャンバ100内の電界が、電極130だけにより、創生される。さらに、電極130、130間の電界は、磁界190に対して垂直である。特に、磁界190はY方向であり、一方、電極130、130間の電界は、X方向である。それ故に、電磁力は主として、Z方向である。いくつかの実施形態において、電磁力は、引出しアパーチャ140に向かって上昇する。
【0032】
図3は、図2に例示するIHCイオン源11の変形を示す。図3において、IHCイオン源12の反射電極は除去されている。図2に示す反射電極120は、チャンバ100と同じ電圧のため、図3における反射電極の除去により、IHCイオン源12の動作を変更しない。言い換えれば、陰極110と反対側の第2端部105は、両方の実施形態において、チャンバ100の壁と同じ電圧でバイアスをかけられる。
【0033】
図4は、図1の線AAに沿ってとられた図1のIHCイオン源10の断面図を示す。本図において、陰極110をIHCイオン源10の第1端部104を背景に示す。電極130、130は、チャンバ100の向かい合う側壁101の上に示される。磁界190はY方向に、ページから外へ向けて示される。特定の実施形態において、電極130、130は、それぞれ、絶縁体133、133の使用により、チャンバ100の側壁101から離すことができる。電極電源135、135から電極130、130への電気的接続は、導電材料をチャンバ100の外部から絶縁体133、133を通って、各々の電極130、130へ通すことにより、することができる。特定の実施形態において、電極130はチャンバ100と電気通信することができる。これらの実施形態において、絶縁体133を用いなくともよく、電極130を側壁101に対して配置することができる。さらに、特定の実施形態において、電極130は側壁101と同じ電圧であるため、電極130は除去することができる。
【0034】
さらに、特定の実施形態において、絶縁体133、133は用いない。むしろ、電極130にチャンバ100に対してバイアスをかける場合、電極130は、チャンバ100の壁から相隔たることができる。
【0035】
図1〜4は、全て、電極130、130が、チャンバ100の向かい合う側壁101に沿って配置されることを示すが、他の実施形態も可能である。図5はそのような実施形態を示す。図5は、IHCイオン源14の断面図である。このIHCイオン源14は、電極230の配置を除いて、ほとんどの点において、他のIHCイオン源と類似である。本実施形態において、電極230は、引出しアパーチャ140が配置される、チャンバ100の頂部の壁103の上に配置される。電極230は、絶縁体233を用いて、頂部の壁103から絶縁することができる。いくつかの実施形態において、電極230はチャンバ100内に配置することができ、引出しアパーチャ140の全体を包囲することができる。他の実施形態において、電極230はチャンバ100内の引出しアパーチャ140の向かい合う側面の上に配置することができる。したがって、電界は、引出しアパーチャ140に近接して最も強い。この構成は、図4の構成に対して、イオンビームの電流又はエネルギーを増大することができる。
【0036】
図6は、IHCイオン源15の別の実施形態を示す。本実施形態において、陰極210及びフィラメント160は、IHCイオン源15の端部から、電極130と反対側の側壁101へ動かしている。言い換えれば、陰極210は、磁界190に平行である側壁101の上へ配置される。したがって、より前の実施形態とは異なって、陰極210から放出される電子は、磁界190に直ちに接触する。したがって、電極電源135により電極130へ印加される電圧は、磁界190を横切って放出した電子を引きつけるために、十分に大きくすることができる。あるいは、又は、さらに、磁界190は、電子に、電極130の方へ磁界を横切らせるには、比較的、弱くすることができる。本実施形態において、通常は、陰極及び反射電極を含む、IHCイオン源15の2つの端部は、存在しないかもしれない。
【0037】
本願の上記の実施形態は、多くの優位性を有することができる。第1に、陰極はチャンバに電気的に接続されているため、陰極とチャンバの壁との間の短絡は問題ではなく、IHCイオン源の機能停止の一般的原因を除去する。第2に、陰極はチャンバに電気的に接続されているため、より少ない正のイオンが陰極に引き付けられて、陰極がさらされるスパッタリングの量を低減する。第3に、イオン源の電力は、同等の引出し電流に対して、従来のIHCイオン源と比べて、低減され、その上、より長いイオン源の寿命に寄与する。さらに、本明細書において説明する実施形態によるイオン源は、多価の、モノマー及び分子の種に対して、等しく良く機能する。実験によって得られるデータは、本明細書において説明するイオン源が、最大で30%まで、より少ないイオン源の電力で、最大で40%まで、より多いビーム電流を供給することを示している。
【0038】
電子生成のために用いるコンポーネントを、チャンバの電圧に、又はその近くに維持する概念は、他のイオン源にも同様に適用することができる。図7は、一実施形態によるベルナス(Bernas)イオン源300を示す。
【0039】
図3に示すIHCイオン源のように、ベルナスイオン源300は、複数の電気的導電壁を有するチャンバ310を含む。ベルナスイオン源300は、反射電極を有してもよく、又は、有しなくてもよい。さらに、電極330、330を向かい合う側壁301の上に配置することができる。ベルナスイオン源300は、フィラメントの電源365と連通するフィラメント360を含む。フィラメントの電源365の正の端子は、フィラメント360の1つのリード線と連通し、また、チャンバ310の壁とも連通する。フィラメントの電源365の負の端子は、フィラメント360の他のリード線と連通する。フィラメント360のリード線を通した電圧は、10Vより低くすることができる。フィラメント360は、チャンバ310の第1の端部304に配置することができる。
【0040】
磁界390は、また、ベルナスイオン源300の第1の端部304から第1の端部304の反対側の第2の端部305の方へ、加えることができる。上記のIHCイオン源と共のように、電子は、Y方向に置かれた列に少し制限することができる。電極330は、チャンバ310に対し正にバイアスをかけることができ、側壁301の上に配置することができる。
【0041】
動作中、フィラメントの電源365は、電流をフィラメント360に通し、電流は、フィラメント360に熱電子を放出させる。これらの電子はガスの分子と衝突し、ガスの分子は、ガス注入口を通って、チャンバ310の中へ供給される。これらの衝突は、プラズマ350を形成する正のイオンを創生する。プラズマ350は、電極330、330により創生される電界により閉じ込め、操作することができる。IHCイオン源のように、電極330は、電極電源335と連通することができる。さらに、特定の実施形態において、電子及び正のイオンは、磁界390により、少し閉じ込めることができる。特定の実施形態において、プラズマ350は、チャンバ310の中心の近くで、引出しアパーチャ340の最も近くに閉じ込められる。
【0042】
コントローラ180の機能は、上記のようにすることができる。
【0043】
フィラメント360の1つのリード線は、チャンバ310に電気的に接続されるため、より少ない正のイオンがフィラメント360に引き付けられる。したがって、スパッタリングの量を低減することができ、フィラメント360の寿命を延ばすことができる。
【0044】
図7は、チャンバ310に電気的に接続された電極330を有し、反射電極を有しない、ベルナスイオン源300を示すが、他の実施形態も可能である。例えば、図1及び2の陰極110、陰極バイアス電源115、フィラメント160及びフィラメントの電源165は、図7に示すフィラメント360及びフィラメントの電源365に交換することができる。言い換えれば、特定の実施形態において、ベルナスイオン源300は、チャンバ310に接地することができる反射電極、又は、反射電極電源に連通する反射電極を含むことができる。さらに、特定の実施形態において、電極330は電極電源に連通することができる。
【0045】
さらに、図7のベルナスイオン源300は、図5に示すように、電極330を頂部の壁の上に配置することにより、変更することができる。
【0046】
前に説明したIHCイオン源のように、本願の上記のベルナスイオン源の実施形態は、多くの優位性を有することができる。例えば、フィラメントの1つのリード線は、チャンバに電気的に接続されるため、より少ない正のイオンがフィラメント360に引き付けられ、フィラメントがさらされるスパッタリングの量を低減する。このスパッタリングの低減により、フィラメントの寿命を延ばすことができる。
【0047】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態および変更は、前述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本発明の範囲内に含まれるものと意図している。さらに、本発明は、特定の環境における特定の目的のための特定の実装の文脈にて本明細書中で説明したけれども、当業者は、その有用性はそれらに限定されるものでないことを認識するであろう。本発明の実施形態は任意の数の環境における任意の数の目的のために有益に実装し得る。従って、以下に記載する特許請求の範囲は本明細書に記載された本発明の全範囲及び精神に鑑みて解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7