【文献】
Cancer Research, 2010, vol.70, S3-2, [online],[2015/07/15検索],URL,http://cancerres.aacrjournals.org/content/70/24_Supplement/S3-2.short
【文献】
N. ENGL. J. MED., 2011.10.6, vol.365, No.14, p.1273-1283
【文献】
Asia-Pac. J. Clin. Oncol., 2011.3, vol.7, No.1, p.4-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0047】
本明細書中で使用する一部の略語の用語解説:薬物有害反応(ADR)、有害事象(AE)、アルカリホスファターゼ(ALP)、絶対好中球数(ANC)、濃度時間曲線下面積(AUC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、色、外観及び透明度(CAC)、ペルツズマブ及びトラスツズマブの臨床評価(CLinical Evaluation Of Pertuzumab And TRAstuzumab;CLEOPATRA)、信頼区間(CI)、発色性インサイツハイブリダイゼーション(CISH)、最大濃度(C
max)、完全奏効(CR)、症例報告書(CRF)、コンピュータ断層撮影法(CT)、有害事象共通用語基準(CTCAE)、ドセタキセル(D)、用量制限毒性(DLT)、倫理委員会(EC)、エピルビシン、シスプラチン及び5−フルオロウラシル(ECF)、心エコー図(ECHO)、上皮成長因子受容体(EGFR)、欧州連合(EU)、エストロゲン受容体(ER)、5−フルオロウラシル、メトトレキサート及びドキソルビシン(FAMTX)、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、5−フルオロウラシル(5−FU)、ハザード比(HR)、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)、胃癌(GC)、優良臨床試験基準(good clinical practice;GCP)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、免疫組織化学的検査(IHC)、独立審査機関(IRF)、施設内審査委員会(IRB)、インサイツハイブリダイゼーション(ISH)、静脈内又は点滴静注(IV)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)、左室駆出率(LVEF)、マイトマイシンC、シスプラチン及び5−フルオロウラシル(MCF)、磁気共鳴画像法(MRI)、転移性乳癌(MBC)、マルチゲート収集(MUGA)、有意差なし(NS)、全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(pCR)、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、増悪(PD)、無増悪生存期間(PFS)、薬物動態(PK)、部分奏効(PR)、プロゲステロン受容体(PgR)、固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(response evaluation criteria in solid tumors;RECIST)、重篤有害事象(SAE)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、安定(SD)、研究管理チーム(SMT)、注射用滅菌水(SWFI)、最大血漿中濃度到達時間(t
max)、正常上限(ULN)。
【0048】
I.定義
本明細書中で使用する用語「化学療法(剤)」は、以下で定義する化学療法剤の投与を含む治療を指す。
【0049】
「生存(期間)」は、患者が生き続けていることを指し、全生存(期間)及び無増悪生存(期間)を含む。
【0050】
「全生存(期間)」又は「OS」は、診断又は治療の時から一定期間、例えば、1年、5年などの期間、患者が生き続けていることを指す。実施例中に記載する臨床試験の解釈上、全生存期間(OS)は、患者集団の無作為化の日から、全死因死亡(death from any cause)の日までの期間と定義する。
【0051】
「無増悪生存(期間)」又は「PFS」は、患者が、癌が増悪又はさらに悪化することなく生き続けていることを指す。実施例中に記載する臨床試験の解釈上、無増悪生存期間(PFS)は、研究対象集団の無作為化から、最初に実証された増悪もしくは管理不可能な毒性又は全死因死亡の何れか早く到来する方までの期間と定義する。増悪の実証は、臨床的に許容される任意の方法、例えば、固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)(Therasseら、J Natl Ca Inst 2000年;92巻(3号):205〜216頁)によって判定されるX線写真上の増悪、脳脊髄液の細胞学的評価によって診断される癌性髄膜炎、及び/又は皮下病変の胸壁再発をモニターするための医学写真撮影によって行い得る。
【0052】
「生存期間を延長する」とは、未治療の患者と比較して及び/又は1種もしくは複数の承認された抗腫瘍薬で治療されるが本発明に従う治療を受けない患者と比較して、本発明に従って治療される患者において全生存期間又は無増悪生存期間を増加させることを意味する。特定の例において、「生存期間を延長する」とは、トラスツズマブ及び化学療法剤のみで治療される患者と比較して、本発明の併用療法(例えば、ペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤による併用治療)を受ける癌患者の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長することを意味する。別の特定の例において、「生存期間を延長する」とは、ペルツズマブ及び化学療法剤のみで治療される患者と比較して、本発明の併用療法(例えば、ペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤による併用治療)を受ける癌患者の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長することを意味する。
【0053】
「客観的腫瘍縮小効果(objective response)」は、完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)を含む測定可能な奏効を指す。
【0054】
「完全奏効」又は「CR」は、治療に応答して癌の全ての徴候が消失することを意図する。これは、癌が治癒したことを必ずしも意味しない。
【0055】
「部分奏効」又は「PR」は、1つもしくは複数の腫瘍もしくは病変のサイズ、又は体内の癌の程度が、治療に応答して減少することを指す。
【0056】
「HER受容体」は、HER受容体ファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼであって、EGFR、HER2、HER3及びHER4受容体を含む。HER受容体は一般に、HERリガンドと結合しかつ及び/又は別のHER受容体分子と二量体化し得る細胞外ドメイン;親油性膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;リン酸化され得るいくつかのチロシン残基を持つカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含む。HER受容体は、「ネイティブ配列」HER受容体又はその「アミノ酸配列バリアント」であることができる。好ましくは、HER受容体は、ネイティブ配列ヒトHER受容体である。
【0057】
「ErbB2」及び「HER2」という表現は、本明細書中において同義で使用し、例えば、Sembaら、PNAS(USA)82巻:6497〜6501頁(1985年)及びYamamotoら Nature 319巻:230〜234頁(1986年)に記載されたヒトHER2タンパク質(Genebank受託番号X03363)を指す。用語「erbB2」は、ヒトErbB2をコードする遺伝子を指し、「neu」は、ラットp185
neuをコードする遺伝子を指す。好ましいHER2は、ネイティブ配列ヒトHER2である。
【0058】
本明細書中において、「HER2細胞外ドメイン」又は「HER2 ECD」は、細胞膜にアンカリングされているか又は循環中の何れかである、細胞の外側にあるHER2のドメインを指し、その断片を含む。HER2のアミノ酸配列は、
図1に示されている。一実施形態において、HER2の細胞外ドメインは、4つのドメイン:「ドメインI」(約1〜195のアミノ酸残基;配列番号1)、「ドメインII」(約196〜319のアミノ酸残基;配列番号2)、「ドメインIII」(320〜488のアミノ酸残基:配列番号3)及び「ドメインIV」(約489〜630のアミノ酸残基;配列番号4)を含み得る(残基のナンバリングはシグナルペプチドを含まない)。Garrettら Mol.Cell. 11巻:495〜505頁(2003年);Choら Nature 421巻:756〜760頁(2003年);Franklinら Cancer Cell 5巻:317〜328頁(2004年);及びPlowmanら Proc.Natl.Acad.Sci. 90巻:1746〜1750頁(1993年)、並びに本明細書中の
図6を参照のこと。
【0059】
本明細書中の「HER3」又は「ErbB3」は、例えば、米国特許第5,183,884号及び第5,480,968号並びにKrausら PNAS(USA)86巻:9193〜9197頁(1989年)に開示されているような受容体を指す。
【0060】
「低HER3」癌は、HER3発現の中央値レベルより低いレベルでHER3を発現する癌型の癌である。一実施形態において、低HER3癌は、上皮性卵巣癌、腹膜癌又は卵管癌である。癌のHER3 DNA、タンパク質及び/又はmRNAレベルを評価して、癌が低HER3癌であるかどうかを判定できる。低HER3癌に関する追加情報については、例えば、米国特許第7,981,418号を参照のこと。場合によっては、癌が低HER3癌であることを判定するために、HER3 mRNA発現アッセイを行う。一実施形態において、癌のHER3 mRNAレベルの評価は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、定量逆転写PCR(qRT−PCR)を用いて行う。場合によっては、癌は、例えば、COBASz480(登録商標)装置を用いてqRT−PCRで評価された場合、約2.81以下の濃度比でHER3を発現する。
【0061】
本明細書中の「HER二量体」は、少なくとも2つのHER受容体を含む、非共有結合した二量体である。このような複合体は、2つ以上のHER受容体を発現する細胞がHERリガンドに曝露された場合に形成される可能性があり、免疫沈降法によって単離して、SDS−PAGEによって分析することができる(例えば、Sliwkowskiら、J.Biol.Chem.、269巻(20号)14661〜14665頁(1994年)に記載)。他のタンパク質、例えば、サイトカイン受容体サブユニット(例えば、gp130)が、二量体と結合し得る。好ましくは、HER二量体は、HER2を含む。
【0062】
本明細書の「HERへテロ二量体」は、少なくとも2種の異なるHER受容体を含む非共有結合したヘテロ二量体、例えば、EGFR−HER2、HER2−HER3又はHER2−HER4ヘテロ二量体である。
【0063】
「HER抗体」は、HER受容体に結合する抗体である。場合によっては、HER抗体は、HERの活性化又は機能をさらに妨げる。好ましくは、HER抗体は、HER2受容体に結合する。本明細書中の、対象のHER2抗体は、ペルツズマブ及びトラスツズマブである。
【0064】
「HER(の)活性化」は、任意の1種又は複数の任意のHER受容体の活性化又はリン酸化を指す。一般に、HERの活性化は、シグナル伝達(例えば、HER受容体又は基質ポリペプチド中のチロシン残基をリン酸化するHER受容体の細胞内キナーゼドメインによって引き起こされるもの)をもたらす。HERの活性化は、対象のHER受容体を含むHER二量体に結合するHERリガンドによって媒介され得る。HER二量体に結合するHERリガンドは、二量体中の1種又は複数のHER受容体のキナーゼドメインを活性化し、それによって、1種もしくは複数のHER受容体中のチロシン残基のリン酸化及び/又はAktもしくはMAPK細胞内キナーゼなどのさらなる基質ポリペプチド(複数可)中のチロシン残基のリン酸化をもたらし得る。
【0065】
「リン酸化」は、タンパク質、例えば、HER受容体又はその基質への1つ又は複数のリン酸基の付加を指す。
【0066】
「HER二量体化を阻害する」抗体は、HER二量体の形成を阻害するか又は妨げる抗体である。好ましくは、このような抗体は、HER2と、そのヘテロ二量体結合部位において結合する。本発明において最も好ましい二量体化阻害抗体は、ペルツズマブ又はMAb 2C4である。HER二量体化を阻害する抗体の他の例としては、EGFRに結合して、1種又は複数の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体(例えば、活性化された又は「つながれていない(untethered)」EGFRに結合するEGFRモノクローナル抗体806、MAb 806;Johnsら、Biol.Chem.279巻(29号):30375〜30384頁(2004年)を参照のこと);HER3と結合して、1種又は複数の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体;及びHER4と結合して、1種又は複数の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体が挙げられる。
【0067】
「HER2二量体化阻害剤」は、HER2を含む二量体又はヘテロ二量体の形成を阻害する薬剤である。
【0068】
HER2の「ヘテロ二量体結合部位」は、それらとの二量体の形成時に、EGFR、HER3又はHER4の細胞外ドメイン中の領域と接触又は連係するHER2の細胞外ドメイン中の領域を指す。この領域は、HER2のドメインIIにみられる(配列番号15)。Franklinら Cancer Cell 5巻:317〜328頁(2004年)。
【0069】
HER2の「ヘテロ二量体結合部位に結合する」HER2抗体は、ドメインII(配列番号2)の残基に結合し、場合によっては、HER2細胞外ドメインの他のドメイン、例えば、ドメインI及びIII(配列番号1及び3)の残基にも結合し、HER2−EGFR、HER2−HER3又はHER2−HER4ヘテロ二量体の形成に少なくともある程度、立体障害をもたらし得る。Franklinら(Cancer Cell 5巻:317〜328頁(2004年))は、RCSB Protein Data Bank(IDコードIS78)に寄託されたHER2−ペルツズマブの結晶構造を特定し、HER2のヘテロ二量体結合部位に結合する例示的な抗体を示している。
【0070】
HER2の「ドメインIIに結合する」抗体は、ドメインII(配列番号2)の残基並びに場合によってはHER2の他のドメイン(複数可)、例えば、ドメインI及びIII(それぞれ、配列番号1及び3)の残基に結合する。好ましくは、ドメインIIに結合する抗体は、HER2のドメインI、II及びIIIの間の接合部に結合する。
【0071】
本明細書中での解釈上、同義で使用する「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」は、軽鎖可変アミノ酸配列及び重鎖可変アミノ酸配列(それぞれ、配列番号7及び8)を含む抗体を指す。ペルツズマブは、完全抗体である場合には、好ましくはIgG1抗体を含み;一実施形態において、配列番号11又は15の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号12又は16の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、場合によっては、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。本明細書中の用語「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」は、米国一般名(United States Adopted Name;USAN)又は国際一般名(International Nonproprietary Name;INN):ペルツズマブを有する薬物のバイオシミラー版を包含する。
【0072】
本明細書中での解釈上、同義でする「トラスツズマブ」及びrhuMAb4D5」は、軽鎖可変アミノ酸配列及び重鎖可変アミノ酸配列(それぞれ、配列番号13及び14)を含む抗体を指す。トラスツズマブが完全抗体である場合には、好ましくはIgG1抗体を含み;一実施形態において、それは、配列番号13の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号14の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は場合によっては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。本明細書中の用語「トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5」は、米国一般名(USAN)又は国際一般名(INN):トラスツズマブを有する薬物のバイオシミラー版を包含する。
【0073】
本明細書中の用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的には、所望の生物活性を示しさえすれば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)及び抗体断片を包含する。
【0074】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギ又はヒト以外の霊長類の超可変領域由来の残基に置き換えられている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられている。さらにまた、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にもみられない残基を含み得る。これらの改変は、さらに抗体の性能をさらに精巧にするために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全ての超可変ループが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに相当しかつ全て又は実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。また、ヒト化抗体は場合によっては、少なくとも一部の免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature 332巻:323〜329頁(1988年);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol. 2巻:593〜596頁(1992年)を参照のこと。ヒト化HER2抗体としては、具体的には、参照によって本明細書中に明示的に組み込まれる米国特許5,821,337号の表3に記載されかつ本明細書中で定義されるトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標));及び本明細書中に記載かつ定義されるヒト化2C4抗体、例えば、ペルツズマブが挙げられる。
【0075】
本明細書中の「完全抗体」は、2つの抗原結合領域及び1つのFc領域を含むものである。好ましくは、完全抗体は、機能的Fc領域を有する。
【0076】
「抗体断片」は、完全抗体の一部であり、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2及びFv断片;二重特異性抗体(diabody);線形抗体(linear antibodiy);単鎖抗体分子;及び抗体断片(複数可)から形成された多重特異的抗体が挙げられる。
【0077】
「ネイティブ抗体」は通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とからなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間では異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V
H)とそれに続く複数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V
L)を有し、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列しており、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。
【0078】
用語「超可変領域」は、本明細書中で使用する場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、「相補性決定領域」もしくは「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)並びに重鎖可変ドメインの31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991年))、並びに/又は「超可変ループ」からのそれらの残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)並びに重鎖可変ドメインの26〜32(H1)、53〜55(H2)及び96〜101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196巻:901〜917頁(1987年))を含む。「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書中で定義した超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
【0079】
本明細書中の用語「Fc領域」は、Fc領域及びバリアントFc領域のネイティブ配列を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに用いる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動する可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から又はPro230位から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リシン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去される可能性がある。したがって、完全抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体とK447残基を有さない抗体の両方を有する抗体集団を含み得る。
【0080】
特に明記しない限り、本明細書中において、免疫グロブリン重鎖の残基のナンバリングは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991年)(この文献を参照することによって本明細書中に明示的に組み込む)にみられるようなEUインデックスのナンバリングである。「KabatにみられるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングに指す。
【0081】
「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の「エフェクター機能」を持っている。
例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合;補体依存細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存細胞媒介細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが挙げられる。このようなエフェクター機能は一般に、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされるFc領域を必要とし、例えば、本明細書中に開示したような種々のアッセイを用いて評価できる。
【0082】
「ネイティブ配列Fc領域」は、自然界においてみられるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。ネイティブ配列ヒトFc領域としては、ネイティブ配列ヒトIgG1 Fc領域(非Aアロタイプ及びAアロタイプ);ネイティブ配列ヒトIgG2 Fc領域;ネイティブ配列ヒトIgG3 Fc領域;及びネイティブ配列ヒトIgG4 Fc領域並びに天然に存在するそれらのバリアントが挙げられる。
【0083】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変(好ましくは1つ又は複数のアミノ酸置換)によって、ネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域と比較して又は親のポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、約1〜約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1〜約5個のアミノ酸置換を、ネイティブ配列Fc領域に又は親のポリペプチドのFc領域に有する。本明細書中のバリアントFc領域は好ましくは、ネイティブ配列Fc領域及び/又は親のポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の、最も好ましくは少なくとも約90%の、より好ましくは少なくとも95%の相同性を有するであろう。
【0084】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、完全抗体は、異なる「クラス」に割り当てることができる。完全抗体には、5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかはさらに、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分類できる。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ及びμと称される。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元配置は周知である。
【0085】
「裸の抗体」は、異種分子、例えば、細胞毒性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0086】
「親和性成熟」抗体は、その1つ又は複数の超可変領域に、変更のない親の抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性に改善をもたらす1つ又は複数の変更を有するものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はさらにはピコモル親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の方法によって作製される。Marksら Bio/Technology 10巻:779〜783頁(1992年)は、V
HとV
Lドメインシャフリングによる親和性成熟を記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発が、Barbasら Proc Nat.Acad.Sci、USA91巻:3809〜3813頁(1994年);Schierら Gene 169巻:147〜155頁(1995年);Yeltonら J.Immunol. 155巻:1994〜2004頁(1995年);Jacksonら、J.Immunol. 154巻(7号):3310〜9頁(1995年);及びHawkinsら、J.Mol.Biol. 226巻:889〜896頁(1992年)によって記載されている。
【0087】
「脱アミド化」抗体は、その1つ又は複数のアスパラギン残基が、例えば、アスパラギン酸、スクシンイミド又はイソアスパラギン酸に誘導体化されているものである。
【0088】
用語「癌」及び「癌性」は、制御されていない細胞増殖を典型的な特徴とする哺乳動物における生理的状態を指す又は記載する。
【0089】
「胃癌」は具体的には、転移性又は局所進行性の切除不可能な胃癌、例えば限定するものではないが、治癒的療法を受け入れられない、手術不能な(切除不可能な)局所進行性又は転移性疾患を有する胃又は胃食道接合部の組織学的に確認された腺癌、及び手術の意図が疾患を治癒されることであった場合の術後再発性の進行性胃癌、例えば、胃又は胃食道接合部の腺癌が挙げられる。
【0090】
「進行性(の)」癌は、局所浸潤又は転移の何れかによって元の部位又は器官の外側に広がったものである。したがって、「進行性(の)」癌という用語は、局所進行性疾患及び転移性疾患の両方を含む。
【0091】
「不応性」癌は、抗腫瘍薬、例えば、化学療法剤が癌患者に投与されていても、増悪する癌である。不応性癌の一例は、白金不応性の癌である。
【0092】
「再発性」癌は、初期療法、例えば、手術に対する応答後に初発部位又は遠隔部位で再成長した癌である。
【0093】
「局所再発性」癌は、以前に治療された癌と同一の場所に治療後に再び現れる癌である。
【0094】
「切除不可能な」又は「切除不能な」癌は、手術によって除去(切除)できない。
【0095】
本明細書中の「早期乳癌」は、乳房又は腋窩リンパ節を越えて広がっていない乳癌を指す。このような癌は一般に、ネオアジュバント又はアジュバント療法で治療される。
【0096】
「ネオアジュバント療法」は、手術前に施される全身療法を指す。
【0097】
「アジュバント療法」は、手術後に施される全身療法に指す。
【0098】
「転移性」癌は、身体(例えば、乳房)の一部から身体の別の部分に広がった癌を指す。
【0099】
本明細書中の「患者」又は「対象」は、ヒト患者である。患者は、「癌患者」、即ち、癌、特に胃又は乳房癌の1つ又は複数の症状が生じている又は生じるリスクがある患者であり得る。
【0100】
「患者集団」は、一群の癌患者に指す。このような集団は、薬物、例えばペルツズマブの統計的に有意な有効性及び/又は安全性を実証するのに使用できる。
【0101】
「再発」患者は、寛解後に癌の徴候又は症状がある患者である。場合によっては、患者は、アジュバント又はネオアジュバント療法後に再発している。
【0102】
「HER発現、増幅又は活性化を示す」癌又は生体試料は、診断検査においてHER受容体を発現(過剰発現を含む)し、HER遺伝子を増幅し、及び/又はそうでなければ、HER受容体の活性化もしくはリン酸化を示すものである。
【0103】
「HER活性化を示す」癌又は生体試料は、診断検査においてHER受容体の活性化又はリン酸化を示すものである。このような活性化は、直接的に(例えば、ELISAによってHERリン酸化を測定することによって)又は間接的に(例えば、遺伝子発現プロファイリングによって又は本明細書中に記載するHERへテロ二量体を検出することによって)判定できる。
【0104】
「HER受容体過剰発現又は増幅」のある癌細胞は、同じ組織型の非癌性細胞と比較して著しく高い、HER受容体タンパク質又は遺伝子レベルを有するものである。このような過剰発現は、遺伝子増幅によって又は転写もしくは翻訳の増加によって引き起こされる可能性がある。HER受容体過剰発現又は増幅は、診断アッセイ又は予後アッセイにおいて、細胞の表面に存在するHERタンパク質レベルの増加を評価することによって(例えば、免疫組織化学的検査アッセイ;IHCによって)判定できる。代替的に又は追加的に、HERをコードする核酸の細胞内レベルを、例えば、インサイツハイブリダイゼーション(ISH)、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月に公開されたWO98/45479を参照のこと)及び発色性インサイツハイブリダイゼーション(CISH;例えば、Tannerら、Am.J.Pathol. 157巻(5号):1467〜1472頁(2000年);Bellaら、J.Clin.Oncol. 26巻:(May 20 suppl;abstr 22147)(2008年)を参照のこと)、サザンブロット法、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、例えば、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)によって測定することもできる。HER受容体過剰発現又は増幅は、体液、例えば、血清中のシェッド抗原(例えば、HER細胞外ドメイン)を測定することによっても研究し得る(例えば、1990年6月12日に発行された米国特許第4,933,294号;1991年4月18日に公開されたWO91/05264;1995年3月28日に発行された米国特許5,401,638号;及びSiasrら J.Immunol.Methods 132巻:73〜80頁(1990年)を参照のこと)。上記のアッセイの他に、当業者ならば、種々のインビボアッセイを利用できる。例えば、患者体内の細胞を、検出可能な標識、例えば、放射性同位体で場合によっては標識された抗体に曝露してもよく、患者体内の細胞への抗体の結合は、例えば、放射能の外部スキャンによって、又は抗体に予め曝露された患者から採取された生検材料を分析することによって評価できる。
【0105】
「HER2陽性」癌は、正常レベルより高いHER2レベルを有する癌細胞を含む。HER2陽性癌の例としては、HER2陽性乳癌及びHER2陽性胃癌が挙げられる。場合によっては、HER2陽性癌は、免疫組織化学的検査(IHC)スコアが2+もしくは3+及び/又はインサイツハイブリダイゼーション(ISH)増幅比が2.0以上である。
【0106】
本明細書中の「抗腫瘍薬」は、癌の治療に使用される薬物を指す。本明細書中の抗腫瘍薬の非限定的な例としては、化学療法剤、HER二量体化阻害剤、HER抗体、腫瘍関連抗原に対する抗体、抗ホルモン化合物、サイトカイン、EGFR標的薬、抗血管新生薬、チロシンキナーゼ阻害剤、成長阻害剤及び抗体、細胞毒性薬、アポトーシスを誘発する抗体、COX阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、癌胎児性タンパク質CA 125と結合する抗体、HER2ワクチン、Raf又はras阻害剤、リポソームドキソルビシン、トポテカン、タキセン(taxene)、二重チロシンキナーゼ阻害剤、TLK286、EMD−7200、ペルツズマブ、トラスツズマブ、エルロチニブ及びベバシズマブが挙げられる。
【0107】
「エピトープ2C4」は、抗体2C4が結合する、HER2の細胞外ドメインの領域である。2C4エピトープと本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、ルーチンの交差遮断アッセイ、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Ed Harlow and David Lane(1988年)に記載されているアッセイを行うことができる。好ましくは、抗体は、HER2との2C4の結合を約50%以上遮断する。別法として、エピトープマッピングを行って、抗体がHER2の2C4エピトープに本質的と結合するかどうかを評価することもできる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメイン中のドメインII(配列番号2)からの残基を含む。2C4及びペルツズマブは、ドメインI、II及びIII(それぞれ、配列番号1、2及び3)の接合部でHER2の細胞外ドメインと結合する。Franklinら Cancer Cell 5巻:317〜328頁(2004年)。
【0108】
「エピトープ4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)及びトラスツズマブが結合する、HER2の細胞外ドメインの領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインに近く、HER2のドメインIV(配列番号4)内にある。4D5 エピトープと本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、ルーチンの交差遮断アッセイ、例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Ed Harlow and David Lane(1988年)に記載されているアッセイを行うことができる。別法として、エピトープマッピングを行って、抗体がHER2の4D5エピトープ(例えば、HER2 ECDを含む、残基約625から残基約529までの領域中の任意の1つ又は複数の残基(残基のナンバリングはシグナルペプチドを含む))と本質的に結合するかどうかを評価することもできる。
【0109】
「治療(処置)」は、治療的処置(therapeutic treatment)及び予防対策又は防止対策を意味する。治療(処置)を必要とする者には、既に癌を持つ者及び癌が防止されるべき者が含まれる。したがって、本明細書中の、治療(処置)される患者は、癌を有すると診断された患者であってもよいし、又は癌に罹患しやすいもしくは癌にかかりやすい可能性がある患者であってもよい。
【0110】
用語「有効量」は、患者の癌を治療するのに有効な薬物の量を指す。薬物の有効量は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを縮小し;周辺器官への癌細胞浸潤を阻害する(即ち、ある程度遅くし、好ましくは止める);腫瘍転移を阻害する(即ち、ある程度遅くし、好ましくは止める);腫瘍成長をある程度阻害する;及び/又は癌を伴う症状の1つもしくは複数をある程度軽減することができる。薬物が成長を防止し得る及び/又は存在する癌細胞を死滅させ得る範囲で、薬物は細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であり得る。有効量は、無増悪生存期間(例えば、固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)、又はCA−125変化によって測定される)を延長し、客観的腫瘍縮小効果(部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)を含む)をもたらし、全生存期間を増加させ、かつ/又は癌の1つもしくは複数の症状(例えば、FOSIによって評価される)を改善することができる。
【0111】
本明細書中で使用する用語「細胞毒性薬」は、細胞の機能を阻害しもしくは妨げかつ/又は細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32及びLuの複数の放射性同位体)、化学療法剤、並びに毒素、例えば、小分子毒素又は細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はバリアントを含む)を含むことを意図するものである。
【0112】
「化学療法」は、癌の治療において有用な化合物の使用である。化学療法において使用される化学療法剤の例としては、以下のものが挙げられる:アルキル化剤、例えば、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa);エチレンイミン及びメチルアメルアミン(methylamelamine)、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);TLK286(TELCYTA(商標));アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);δ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン(ranimnustine);ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えば、Agnew、Chem Intl. Ed. Engl.、33巻:183〜186頁(1994年)を参照のこと)並びにアントラサイクリン、例えば、アンナマイシン、AD 32、アクラルビシン(alcarubicin)、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、DX−52−1、エピルビシン、GPX−100、イダルビシン、KRN5500、メノガリル、ダイネミシン、例えば、ダイネミシンA、エスペラミシン、ネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連クロモプロテイン系エジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモミシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エソルビシン(esorubicin)、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン及びゾルビシン;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン及びトリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン及びフロキシウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン及びテストラクトン;抗副腎薬(anti−adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン及びトリロスタン;葉酸補充薬、例えば、フォリン酸(ロイコボリン);アセグラトン;葉酸代謝拮抗性抗悪性腫瘍薬、例えば、ALIMTA(登録商標)、LY231514ペメトレキセド、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤、例えば、メトトレキサート、代謝拮抗薬、例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)とそのプロドラッグ例えば、UFT、S−1及びカペシタビン、並びにチミジル酸シンターゼ阻害剤及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ラルチトレキセド(TOMUDEX(登録商標)、TDX);ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼの阻害剤、例えば、エニルウラシル;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エフロルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、マイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチラミン;トリコテセン(特にT−2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標);ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン;クロラムブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;白金;白金類似体又は白金系類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));ビンカアルカロイド;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithin)(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;前記の何れかの医薬として許容される塩、酸又は誘導体;並びに前記の2種以上の組合せ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの併用療法の略語)、及びFOLFOX(5−FU及びロイコボリンと併用されるオキサリプラチン(ELOXATINTM)による治療レジメンの略語)。
【0113】
この定義には、以下のものも含まれる:腫瘍に対するホルモン作用を制御又は阻害するように作用する抗ホルモン薬、例えば、抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、タモキシフェン(例えば、NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;アロマターゼ阻害剤;並びに抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−α、Raf、H−Ras及び上皮成長因子受容体(EGF−R)など;ワクチン、例えば、遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;並びに前記の何れかの医薬として許容される塩、酸又は誘導体。
【0114】
「タキサン」は、有糸分裂を阻害しかつ微小管に干渉する化学療法剤である。タキサンの例としては、パクリタキセル(TAXOL(登録商標);Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.);クレモホアを含まない、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤又はnab−パクリタキセル(ABRAXANE(商標);American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Illinois);及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標);Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France)が挙げられる。
【0115】
「アントラサイクリン」は、真菌ストレプトコッカス・ピウセチウス(Streptococcus peucetius)に由来する種類の抗生物質であり、例としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン及びエピルビシンなどが挙げられる。
【0116】
「アントラサイクリン系化学療法(剤)」は、1種又は複数のアントラサイクリンからなる又はそれを含む化学療法(剤)レジメンを指す。例としては、5−FU、エピルビシン及びシクロホスファミド(FEC);5−FU、ドキソルビシン及びシクロホスファミド(FAC);ドキソルビシン及びシクロホスファミド(AC);エピルビシン及びシクロホスファミド(EC)などが挙げられる。
【0117】
本明細書においては、「カルボプラチン系化学療法(剤)」は、1種又は複数のカルボプラチンからなる又はそれを含む化学療法(剤)レジメンを指す。一例は、TCH(ドセタキセル/TAXOL(登録商標)、カルボプラチン、及びトラスツズマブ/HERCEPTIN(登録商標))である。
【0118】
「アロマターゼ阻害剤」は、副腎においてエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害する。アロマターゼ阻害剤の例としては、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エクセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが挙げられる。一実施形態において、本明細書中のアロマターゼ阻害剤は、レトロゾール又はアナストロゾールである。
【0119】
「代謝拮抗薬化学療法」は、代謝産物と構造的に類似しているが、身体が増殖性に使用することができない薬剤の使用である。多くの代謝拮抗薬化学療法は、核酸、RNA及びDNAの産生を妨げる。代謝拮抗薬である化学療法剤の例としては、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、5−フルオロウラシル(5−FU),カペシタビン(XELODA(商標))、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、6−チオグアニン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アラビノシルシトシンARA−Cシタラビン(CYTOSAR U(登録商標))、ダカルバジン(DTIC−DOME(登録商標))、アゾシトシン、デオキシシトシン、ピリドミデン(pyridmidene)、フルダラビン(FLUDARA(登録商標))、クラドリビン(cladrabine)、2−デオキシ−D−グルコースなどが挙げられる。
【0120】
「化学療法抵抗性」癌とは、癌患者が、化学療法レジメンを受けている間に増悪していること(即ち、患者が「化学療法不応性」であること)、又は癌患者が、化学療法レジメンの完了後に12カ月以内に(例えば、6カ月以内に)以内に増悪していることを意味する。
【0121】
本明細書中において、用語「プラチン」は、白金系化学療法剤、例えばこれらに限定するものではないが、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンを指すのに用いる。
【0122】
本明細書中において、用語「フルオロピリミジン」は、代謝拮抗薬である化学療法剤、例えばこれらに限定するものではないが、カペシタビン、フロキシウリジン及びフルオロウラシル(5−FU)を指す。
【0123】
本明細書中において、治療薬の「一定」又は「固定」用量は、ヒト患者の体重(WT)又は体表面積(BSA)を考慮せずにヒト患者に投与する用量を指す。したがって、一定用量又は固定用量は、mg/kg用量又はmg/m
2用量として投与するのではなく、治療薬の絶対量として投与する。
【0124】
本明細書中の「負荷」用量は一般に、患者に投与される治療薬の初回量を含み、その1つ又は複数の維持用量がこれに続く。一般に、単回負荷用量が投与されるが、多回負荷用量も本明細書中において企図される。通常、投与される負荷用量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を上回り、かつ/又は負荷用量(複数可)は、維持用量(複数可)よりも頻繁に投与され、それによって、維持用量(複数可)よって到達し得るよりも早期に治療薬の所望の定常状態濃度に到達する。
【0125】
本明細書中の「維持」用量は、一定の治療期間にわたって患者に投与される治療薬の1種又は複数の用量を指す。通常、維持用量は、間隔をあけた治療間隔で、例えば、約1週間毎に、約2週間毎に、約3週間毎に又は約4週毎に、好ましくは3週間毎に投与される。
【0126】
「注入」又は「注入する」は、治療目的で静脈を経て体内に薬物含有溶液を導入することに指す。一般に、これは、点滴静注(IV)バッグを経て達成される。
【0127】
「点滴静注バッグ」又は「IVバッグ」は、患者の静脈を経て投与できる溶液を収容し得るバッグである。一実施形態において、この溶液は、生理食塩水溶液(例えば、約0.9%又は約0.45%のNaCl)である。場合によっては、IVバッグは、ポリオレフィン又はポリ塩化ビニルから形成される。
【0128】
「同時投与する」とは、2種以上の薬物の逐次注入ではなく、同一投与の間に2種(又はそれ以上)の薬物を静脈内に投与することを意味する。一般に、これは、同時投与の前に同一IVバッグ中に2種(又はそれ以上)の薬物を合わせ入れることを含む。
【0129】
「心毒性」は、薬物又は複合薬の投与によって生じるあらゆる毒性副作用を指す。心毒性は、症候性左室収縮機能不全(LVSD)もしくはうっ血性心不全(CHF)の発生率、又は左室駆出率(LVEF)の低下の何れか1つ又は複数に基づいて評価し得る。
【0130】
ペルツズマブを含む複合薬に関する「心毒性を増加することなく」という表現は、心毒性の発生率が、複合薬中のペルツズマブ以外の薬物で治療された患者において観察される心毒性の発生率以下である(例えば、トラスツズマブ及び化学療法剤、例えば、ドセタキセルの投与によって生じる心毒性の発生率以下である)ことを指す。
【0131】
「バイアル」は、液体又は凍結乾燥調合剤を収容するのに好適な容器である。一実施形態において、バイアルは、単回使用バイアル、例えば、栓付きの20cc単回使用バイアルである。
【0132】
「添付文書」は、食品医薬品局(FDA)又は他の規制当局の命令により、あらゆる処方薬のパッケージ内に入れなければならないリーフレットである。リーフレットは一般に、薬物の商標、その一般名及びその作用機序を含み;その効能、禁忌、警告、使用上の注意、有害作用及び剤形を記載し;投与の推奨用量、投与時間及び投与経路に関する指示を含む。
【0133】
「安全性データ」という表現は、薬物の安全性に関して使用者を指導する(薬物有害反応をモニター及び防止する方法についての指導を含む)ための、有害事象の出現率及び重症度が示す、対照臨床試験で得られるデータに関する。本明細書中の表3及び表4は、ペルツズマブに関する安全性データを提供する。安全性データは、表3及び4における最も多くみられた有害事象(AE)又は有害反応(ADR)の任意の1つ又は複数(例えば、2、3、4個又はそれ以上)を含む。例えば、安全性データは、ここに開示された好中球減少症、発熱性好中球減少症、下痢及び/又は心毒性に関する情報を含む。
【0134】
「有効性データ」は、薬物が疾患、例えば、癌を効果的に治療すること示す、対照臨床試験で得られるデータを指す。ペルツズマブの有効性データは、本明細書の実施例中に示す。HER2陽性転移性又は局所再発性の切除不能乳癌に関しては、ペルツズマブの有効性データは、本明細書中の表2、表5、図及び
図10に見出される。安全性データは、表2、表5、
図8及び
図10中の主要評価項目(IRFによる無増悪生存期間、PFS)及び/又は副次的評価項目(secondary enpoint)(全生存期間(OS);治験責任医師による無増悪生存期間(PFS);完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(stable disease)(SD)及び増悪(PD)、及び/又は奏効期間を含む奏効率(objective response rate)(ORR))の任意の1つ又は複数(例えば、2、3、4個又はそれ以上)を含む。例えば、有効性データは、本明細書中に開示する無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)に関する情報を含む。
【0135】
「安定な混合物」とは、2種以上の薬物、例えば、ペルツズマブとトラスツズマブの混合物を指す場合、混合物中の各薬物が、1つ又は複数の分析アッセイによって評価された場合に、混合物中においてその物理的及び化学的安定性を本質的に保持していることを意味する。このための例示的な分析アッセイとしては、色、外観及び透明度(CAC)、濃度及び濁度分析、粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)並びに効力アッセイが挙げられる。一実施形態において、混合物は、5℃又は30℃において最長24時間にわたって安定である。
【0136】
1種又は複数の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同一治療周期中に、1種又は複数の他の薬物と同一治療日に、及び場合によっては、1種又は複数の他の薬物と同一時間に投与される。例えば、3週間毎に施される癌療法の場合には、同時に投与される薬物はそれぞれ、3週間周期の1日目に投与される。
【0137】
II.抗体及び化学療法剤組成物
抗体の産生に使用されるHER2抗原は、例えば、所望のエピトープを含有する、HER2受容体の細胞外ドメイン又はその一部分の安定な形態であり得る。別法として、細胞表面でHER2を発現する細胞(例えば、HER2を過剰発現するように形質転換されたNIH−3T3細胞;又はSK−Br−3細胞などの癌細胞株、Stancovskiら PNAS(USA)88巻:8691〜8695頁(1991年)を参照のこと)を、抗体の産生に使用できる。抗体の産生に有用な他の型のHER2受容体は、当業者には明白である。
【0138】
本明細書中における、モノクローナル抗体を作製するための種々の方法は、当技術分野において利用可能なものである。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256巻:495頁(1975年)によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製し得る。
【0139】
本発明に従って使用する抗HER2抗体、トラスツズマブ及びペルツズマブは、市販されている。
【0140】
(i)ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において文献記載されている。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「インポート」可変ドメインに由来する「インポート」残基を指すことが多い。ヒト化は本質的には、Winter及び共同研究者の方法(Jonesら、Nature、321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323〜327頁(1988年);Verhoeyenら、Science、239巻:1534〜1536頁(1988年))に従って、ヒト抗体の対応する配列の超可変領域配列を置換することによって行い得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部の超可変領域残基及びことによると一部のFR残基が、齧歯動物抗体中の類似部位からの残基によって置換されている、ヒト抗体である。
【0141】
ヒト化抗体の作製に使用する、軽鎖及び重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従って、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリと対照してスクリーニングする。次いで、齧歯動物の配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simら、J.Immunol.、151巻:2296頁(1993年);Chothiaら、J.Mol.Biol.、196巻:901頁(1987年))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同一フレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用し得る(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻:4285頁(1992年);Prestaら、J.Immunol.、151巻:2623頁(1993年))。
【0142】
抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の都合よい生物学的性質を保持しながらヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従って、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用する、親配列及び種々の概念的ヒト化生成物の分析のプロセスによって調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者はそれらに精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を例示し、表示するコンピュータープログラムが、利用可能である。これらの表示をチェックすることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における、残基の考え得る役割を分析できる、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原と結合する能力に影響を与える残基を分析できる。このようにして、所望の抗体特性、例えば、標的抗原(複数可)に対する増加された親和性が達成されるように、レシピエント及びインポート配列からFR残基を選択して合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に直接的に影響を与えており、抗体結合への影響に最も実質的に関与する。
【0143】
米国特許第6,949,245号は、HER2を結合して、HER受容体のリガンド活性化を遮断する例示的なヒト化HER2抗体の作製を記載している。
【0144】
ヒト化HER2抗体としては具体的には、米国特許第5,821,337号(参照によって本明細書中に明示的に組み込む)の表3に記載されかつ本明細書中で定義したトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標));本明細書中に記載及び定義したペルツズマブなどのヒト化2C4抗体が挙げられる。
【0145】
本明細書中のヒト化抗体は、例えば、ヒト重鎖可変ドメインに組み込まれた非ヒト超可変領域残基を含むことができ、69H、71H及び73H(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991年)に記載された可変ドメインナンバリングシステムを利用)からなる群から選択される位置にフレームワーク領域(FR)置換をさらに含むことができる。一実施形態において、ヒト化抗体は、69H、71H及び73H位のうち2つ又は全てにFR置換を含む。
【0146】
本明細書中の対象の例示的ヒト化抗体は、重鎖可変ドメイン相補性決定残基GFTFTDYTMX(配列番号17)[Xは、好ましくはD又はSである];DVNPNSGGSIYNQRFKG(配列番号18);及び/又はNLGPSFYFDY(配列番号19)を含み、例えば、改変が抗体の親和性を本質的には維持又は改善する、それらのCDR残基のアミノ酸改変を場合によっては含む。例えば、本発明の方法に使用する抗体バリアントは、前記重鎖可変CDR配列中に約1個〜約7個又は約5個のアミノ酸置換を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、後述するように、親和性成熟によって調製し得る。
【0147】
ヒト化抗体は、例えば、直前パラグラフのそれらの重鎖可変ドメインCDR残基に加えて、軽鎖可変ドメイン相補性決定残基KASQDVSIGVA(配列番号20);SASYX
1X
2X
3[X
1は、好ましくはR又はLであり、X
2は好ましくはY又はEであり、X
3は好ましくはT又はSである](配列番号21);及び/又はQQYYIYPYT(配列番号22)を含み得る。このようなヒト化抗体は、例えば、改変が抗体の親和性を本質的には維持又は改善する、前記CDR残基のアミノ酸改変を場合によっては含む。例えば、対象の抗体バリアントは、前記軽鎖可変CDR配列中に約1個〜約7個又は約5個のアミノ酸置換を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、後述するように、親和性成熟によって調製し得る。
【0148】
本出願はまた、HER2と結合する親和性成熟抗体を企図する。親抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体、例えば、それぞれ配列番号7及び8の軽鎖可変配列及び/又は重鎖可変配列を含む(即ち、ペルツズマブのVL及び/又はVHを含む)ものであり得る。ペルツズマブの親和性成熟バリアントは、マウス2C4又はペルツズマブの親和性よりも優れた親和性(例えば、HER2−細胞外ドメイン(ECD)ELISAを用いて評価した場合に、約2倍又は約4倍〜約10約倍又は約1000倍改善された親和性)を有するHER2受容体に好ましくは結合する。置換のための例示的な重鎖可変CDR残基としては、H28、H30、H34、H35、H64、H96、H99又はこれらの残基の2種以上(例えば、2種、3種、4種、5種、6種又は7種)の組合せを含む。変更のための軽鎖化可変CDR残基の例は、L28、L50、L53、L56、L91、L92、L93、L94、L96、L97又はこれらの残基の2種以上(例えば、2種もしくは3種、4種、5種又は約10種まで)の組合せを含む。
【0149】
トラスツズマブを含むそのヒト化バリアントを作製するためのマウス4D5抗体のヒト化は、米国特許第5,821,337号、第6,054,297号、第6,407,213号、第6,639,055号、第6,719,971号及び6,800,738号、並びにCarterら PNAS(USA)、89巻:4285〜4289頁(1992年)に記載されている。HuMAb4D5−8(トラスツズマブ)はHER2抗原と、マウス4D5抗体より3倍強固に結合し、ヒトエフェクター細胞の存在下においてヒト化抗体の定方向(directed)細胞毒性活性を可能にする二次的な免疫機能(ADCC)を有していた。HuMAb4D5−8は、V
LサブグループIコンセンサスフレームワークに組み込まれた軽鎖可変(V
L)CDR残基、及びV
HサブグループIIIコンセンサスフレームワークに組み込まれた重鎖可変(V
H)CDR残基を含んでいた。抗体は、V
Hの71、73、78及び93位(FR残基のKabatナンバリング)にフレームワーク領域(FR)置換、及びV
Lの66位(FR残基のKabatナンバリング)にFR置換をさらに含んでいた。トラスツズマブは、非Aアロタイプヒトγ1Fc領域を含む。
【0150】
ヒト化抗体又は親和性成熟抗体の種々の形態が企図される。例えば、ヒト化抗体又は親和性成熟抗体は、抗体断片であり得る。代わりに、ヒト化抗体又は親和性成熟抗体は、完全抗体、例えば、完全IgG1抗体)であってもよい。
【0151】
(ii)ペルツズマブ組成物
HER2抗体組成物の一実施形態において、組成物は、主要種ペルツズマブ抗体とその1種又は複数のバリアントの混合物を含む。本明細書中における、ペルツズマブ主要種抗体の好ましい実施形態は、配列番号7及び8の軽鎖可変アミノ酸配列及び重鎖可変アミノ酸配列を含むものであり、最も好ましくは、配列番号11の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号12の重鎖アミノ酸配列を含むものである(これらの配列の脱アミド化及び/又は酸化バリアントを含む)。一実施形態において、組成物は、主要種ペルツズマブ抗体とアミノ末端リーダー伸張を含むそのアミノ酸配列バリアントの混合物を含む。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、抗体バリアントの軽鎖上(例えば、抗体バリアントの1つ又は2つの軽鎖上)にある。主要種HER2抗体又は抗体バリアントは、完全長抗体又は抗体断片(例えば、R(ab’)2断片のFab)であり得るが、好ましくは両方とも完全長抗体である。本明細書中の抗体バリアントは、その重鎖又は軽鎖の任意の1つ又は複数上にアミノ末端リーダー伸張を含み得る。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、抗体の1つ又は2つの軽鎖上にある。アミノ末端リーダー伸張は好ましくはVHS−を含むか又はそれからなる。組成物中のアミノ末端リーダー伸張の存在は、種々の分析技術、例えばこれらに限定するものではないが、N末端配列分析、電荷不均一性のアッセイ(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー又はキャピラリーゾーン電気泳動)、質量分析法などによって検出できる。組成物中の抗体バリアントの量は一般に、バリアントを検出するのに使用される任意のアッセイ(好ましくは、N末端配列分析)の検出限界を構成する量から、主要種抗体の量未満の量までの範囲である。一般に、組成物中の抗体分子の約20%以下(例えば、約1%〜約15%、例えば、5%〜約15%)が、アミノ末端リーダー伸張を含む。このような百分率の量は好ましくは、定量的N末端配列分析又は陽イオン交換分析を用いて(好ましくは、高分解能弱陽イオン交換カラム、例えば、PROPAC WCX 10(商標)陽イオン交換カラムを用いて)決定する。アミノ末端リーダー伸張バリアントの他に、主要種抗体及び/又はバリアントのさらなるアミノ酸配列変更、例えばこれらに限定するものではないが、その一方又は両方の重鎖にC末端のリシン残基を含む抗体、脱アミド化抗体バリアントなどが企図される。
【0152】
さらに、主要種抗体又はバリアントは、グリコシル化バリエーションをさらに含んでいてもよく、その非限定的例としては、そのFc領域に結合したG1もしくはG2オリゴ糖構造を含む抗体、その軽鎖に結合した糖鎖(例えば、抗体の1つ又は2つの軽鎖に結合した、例えば、1種又は複数のリシン残基に結合した、1と又は2つの糖鎖、例えば、グルコース又はガラクトース)を含む抗体、1つもしくは2つの非グリコシル化重鎖を含む抗体、又はその1つもしくは2つの重鎖に結合したシアル化(sialidated)オリゴ糖を含む抗体などが挙げられる。
【0153】
組成物は、遺伝子改変細胞株、例えば、HER2抗体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から回収してもよいし、又はペプチド合成によって調製してもよい。
【0154】
例示的なペルツズマブ組成物に関するより詳細な情報については、米国特許第7,560,111号及び第7,879,325号並びにUS2009/0202546A1を参照のこと。
【0155】
(iii)トラスツズマブ組成物
トラスツズマブ組成物は一般に、主要種抗体(それぞれ13及び14の軽鎖配列及び重鎖配列を含む)とそのバリアント形態、特に酸性バリアント(脱アミド化バリアントを含む)の混合物を含む。好ましくは、組成物中のこのような酸性バリアントの量は、約25%未満、又は約20%未満、又は約15%未満である。米国特許第6,339,142号を参照のこと。陽イオン交換クロマトグラフィーによって分解可能なトラスツズマブの形態、例えば、ピークA(両軽鎖中においてAsn30がAspに脱アミド化されている);ピークB(1つの重鎖においてAsn55がisoAspに脱アミド化されている);ピーク1(1つの軽鎖においてAsn30がAspに脱アミド化されている);ピーク2(1つの軽鎖においてAsn30がAspに脱アミド化されており、1つの重鎖においてAsp102がisoAspに異性化されている);ピーク3(主ピーク形態、又は主要種抗体);ピーク4(1つの重鎖においてAsp102がisoAspに異性化されている);及びピークC(1つの重鎖中にAsp102スクシンイミド(Asu))に関する、Harrisら、J.Chromatography、B752:233〜245頁(2001年)も参照のこと。このようなバリアント形態及び組成物を、本明細書中の本発明に含める。
【0156】
(iv)5−FU及びシスプラチン
進行性胃癌のための単一で標準的な世界的に認められている化学療法レジメンはないが、5−フルオロウラシル(5−FU)+シスプラチンがこの効能のために広範に使用されている。化学療法の前治療歴がない患者におけるフェーズII研究において、5−FU+シスプラスチンは、約40%の奏効率及び7〜10.6カ月の全生存期間中央値をもたらした(Lacave AJ、Baron FJ、Anton LMら Ann Oncol 1991年;2巻:751〜754頁;Rougier P、Ducreux M、Mahjoubi Mら Eur J Cancer 1994年;30A巻:1263〜1269頁;Vanhoefer U、Wagner T、Lutz Mら Eur J Cancer 2001年;37 Suppl 6:abstract S27)。
【0157】
(v)カペシタビン
カペシタビンは、進行性胃癌患者において、広範に試験されている。カペシタビン単剤療法のフェーズII有効性の結果は、2003年のKoizumiらの研究(Koizumi W、Kurihara M、Sasai Tら Cancer 1993年;72巻:658〜62頁; Sakamoto J、Chin K、Kondo Kら Anti−Cancer Drugs 2006年;17巻:2331〜6頁)において、19%及び26%の奏効率並びに8.1カ月及び10.0カ月の全生存期間を示している。白金と併用されたカペシタビンに関しては、多くの研究が、28%〜65%の範囲の奏効率、5.8〜9カ月の無増悪期間(time to progression)及び10.1〜12カ月の全生存期間を示している(Kang Y、Kang WK、Shin DBら J Clin Oncology 2006年;24 Suppl 18:abstract LBA4018;Park Y、Kim B、Ryoo Bら Proc Am Soc Clin Oncol 2006年;24 Suppl 18:abstract 4079;Kim TW、Kang YK、Ahn JHら Ann Oncol 2002年;13巻:1893〜8頁;Park YH、Kim BS、Ryoo BYら Br J Cancer 2006年;94巻:959〜63頁)。
【0158】
III.治療法のための患者の選択
本発明による治療のための患者の選択には、HER2の検出を使用できる。FDAに承認されているいくつかの商業アッセイを、HER2陽性癌患者の特定に利用できる。これらの方法としては、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)及びPATHWAY(登録商標) HER2(免疫組織化学的検査(IHC)アッセイ)並びにPathVysion(登録商標)及びHER2 FISH pharmDx(商標)(FISHアッセイ)が挙げられる。使用者は、各アッセイの妥当性確認及び性能能力に関する情報について、特定のアッセイキットの添付文書を参照しなければならない。
【0159】
例えば、HER2過剰発現は、IHCによって、例えば、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)を用いてによって分析し得る。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供し、以下のようなHER2タンパク染色強度判定基準に適合させることができる:
スコア0 染色が全く観察されないか、又は腫瘍細胞の10%未満で膜染色が観察される。
スコア1+ 腫瘍細胞の10%より多くで、淡い/かろうじて知覚できる膜染色が検出される。細胞が、それらの膜の一部で染色されるだけである。
スコア2+ 腫瘍細胞の10%より多くで、弱〜中の完全な膜染色が観察される。
スコア3+ 腫瘍細胞の10%より多くで、中〜強の完全な膜染色が観察される。
【0160】
HER2過剰発現評価に関するスコアが0又は1+であるそれらの腫瘍は、HER2陰性と特徴付けることができ、スコアが2+又は3+であるそれらの腫瘍は、HER2陽性と特徴付けることができる。
【0161】
HER2を過剰発現させる腫瘍は、細胞1個当たりに発現されるHER2分子のコピーの数に相当する免疫組織化学的スコアによって等級付けすることができ、生化学的に判定できる:
0=コピー0〜10,000個/細胞、
1+=コピー少なくとも約200,000個/細胞、
2+=コピー少なくとも約500,000個/細胞、
3+=コピー少なくとも約2,000,000個/細胞。
【0162】
チロシンキナーゼのリガンド非依存的活性化をもたらす3+レベルのHER2の過剰発現(Hudziakら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84巻:7159〜7163頁(1987年))は、乳癌の約30%で起こり、これらの患者では、無再発生存期間及び全生存期間が減少する(Slamonら、Science、244巻:707〜712頁(1989年);Slamonら、Science、235巻:177〜182頁(1987年))。
【0163】
HER2タンパク質過剰発現の存在と遺伝子増幅とは相関性が高く、したがって、代わりに又は追加的に、遺伝子増幅を検出するためのインサイツハイブリダイゼーション(ISH)アッセイ、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)アッセイの使用も、本発明による治療に適切な患者の選択に用いることができる。FISHアッセイ、例えば、INFORM(商標)(Ventana(Arizona)によって販売)又はPathVysion(登録商標)(Vysis、Illinois)を、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織に対して実施して、腫瘍のHER2増幅の程度(もしあれば)を決定することができる。
【0164】
最も一般には、HER2陽性状態は、前述の方法の何れかを用いて、保管パラフィン包埋腫瘍組織を使用して確認する。
【0165】
好ましくは、2+もしくは3+IHCスコアを有する又はFISHもしくはISH陽性であるHER2陽性患者を、本発明による治療のために選択する。
【0166】
ペルツズマブを用いる療法を施す患者をスクリーニングするための代替的アッセイに関しては、米国特許第7,981,418号及び実施例11も参照のこと。
【0167】
IV.医薬製剤
本発明に従って使用するHER2抗体の治療製剤は、所望の純度を有する抗体を任意選択の医薬として許容される担体、賦形剤又は安定剤と混合する(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編(1980年))ことによって、一般には凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、保存用に調製する。抗体の結晶も企図される(米国特許出願第2002/0136719号を参照のこと)。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用する投与量及び濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、その例としては、以下のものが挙げられる:緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸及びメチオニン;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(残基約10個未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシン;単糖、二糖及び他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースもしくはデキストリン;キレート化剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯塩(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又は非イオン界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)。凍結乾燥抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、これを参照することによって本明細書中に明示的に組み込む。
【0168】
凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号、第6,685,940号及び第6,821,515号に記載されており、これらを参照することによって本明細書中に明示的に組み込む。好ましいHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)製剤は、トラスツズマブ440mg、α、α−トレハロース脱水物(dehydrate)400mg、L−ヒスチジン−HCl 9.9mg、L−ヒスチジン6.4mg及びポリソルベート20(USP)1.8mgを含む、静脈内(IV)投与のための、保存剤を含まない白色〜淡黄色の滅菌凍結乾燥粉末製剤である。保存剤として1.1%ベンジルアルコールを含有する静菌性注射用蒸留水(BWFI)20mLの再構成により、21mg/mLトラスツズマブを含有するpH約6.0の多回用量溶液が得られる。さらなる詳細については、トラスツズマブ処方情報を参照のこと。
【0169】
治療的使用のための好ましいペルツズマブ製剤は、20mMヒスチジン酢酸塩、120mMスクロース、0.02%ポリソルベート20中に30mg/mLペルツズマブを含む(pH6.0)。代替的ペルツズマブ製剤は、10mMヒスチジン−HCl緩衝剤、240mMスクロース、0.02%ポリソルベート20中に25mg/mLペルツズマブを含む(pH6.0)。
【0170】
実施例中に記載する臨床試験において使用するプラセボの製剤は、活性薬剤を含まないペルツズマブに等しい。
【0171】
本発明中の製剤はまた、治療する個々の適応症に必要な2種以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する化合物を含有していてもよい。HER二量体化阻害剤と併用し得る種々の薬物は、以下の「方法」のセクションに記載する。このような分子は好適には、意図される目的のために有効な量で併存する。
【0172】
インビボ投与に使用する製剤は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に行われる。
【0173】
V.治療方法
本明細書中の治療方法の第1の態様において、HER2陽性乳癌患者集団において無増悪生存期間を6カ月以上延長するための方法であって、前記集団の患者にペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤(例えば、タキサン、例えば、ドセタキセル)を投与することを含む、方法が提供される。集団におけるPFSの統計的に有意な延長が評価できるように、患者集団は場合によっては、好適な数の患者(例えば、200例以上、300例以上又は400例以上の患者)を含む。
【0174】
下記の実施例3におけるフェーズIII CLEOPATRA臨床データから、治験責任医師によって評価されたPFSの中央値が、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルでは12.4カ月、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルでは18.5カ月であり、したがって、PFS中央値の改善は、ペルツズマブを投与されなかった患者(即ち、トラスツズマブ及びドセタキセルのみを投与された患者)と比較して6カ月以上(例えば、6.1カ月)であったことが示される。
【0175】
追加の又は代替的な実施形態において、HER2陽性乳癌患者集団において80%以上の奏効率を得る方法であって、前記集団の患者にペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤(例えば、タキサン、例えば、ドセタキセル)を投与することを含む、方法が提供される。
【0176】
関連した態様において、HER2陽性癌患者集団において心毒性を増加することなくHER2陽性癌を治療するために2種のHER2抗体を併用する方法であって、前記集団の患者にペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。併用によって生じる心毒性の欠如の統計学的に有意な評価を行えるように、患者集団は場合によっては、好適な数の患者(例えば、200例以上、300例以上又は400例以上の患者)を含む。下記の実施例3におけるフェーズIII CLEOPATRA臨床データから、ペルツズマブとトラスツズマブの併用は心毒性が悪化させないことが示される。心毒性は、例えば下記の実施例3で開示されるように、症候性左室収縮機能不全(LVSD)もしくはうっ血性心不全(CHF)の発生率、又は左室駆出率(LVEF)の低下に関してモニターできる。
【0177】
場合によっては、乳癌は、転移性もしくは局所再発性の切除不能乳癌又はデノボのステージIVの疾患であり、免疫組織化学的検査(IHC)3+及び/又は蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)増幅比2.0以上と定義される。
【0178】
場合によっては、集団の患者は、前治療歴がないかもしくはアジュバント療法後に再発している、ベースラインにおいて50%以上の左室駆出率(LVEF)を有する、かつ/又は0又は1の米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス(ECOG PS)を有する。
【0179】
代替的実施形態において、本発明は、早期HER2陽性乳癌を治療する方法であって、乳癌患者にペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤を投与することを含み、化学療法剤が、アントラサイクリン系化学療法剤又はカルボプラチン系化学療法剤を含む、方法に関する。本発明のこの態様は、実施例5の臨床データによって裏付けられる。一実施形態において、化学療法剤は、アントラサイクリン系化学療法剤、例えば、5−FU、エピルビシン及びシクロホスファミド(FEC)を含む。代替的実施形態において、化学療法剤は、HERCEPTIN(登録商標)/トラスツズマブに加えて、カルボプラチン系化学療法剤、例えば、タキサン(例えば、ドセタキセル)、カルボプラチンを含む(例えば、TCHレジメン)。一実施形態において、ペルツズマブは、アントラサイクリン系化学療法剤又はカルボプラチン系化学療法剤と同時に投与する。例えば、ペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤は、3週間周期で投与し、各周期の1日目にペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤を投与する。本明細書中の実施例のデータは、ペルツズマブ投与は、ペルツズマブを用いない治療と比較して(即ち、トラスツズマブ及びアントラサイクリン(anthrycline)系化学療法剤を含むがペルツズマブを含まない治療(例えば、FEC)と比較して);又はトラスツズマブ及びおカルボプラチン系化学療法剤を含むがペルツズマブを含まない治療(即ち、TCH)と比較して、心毒性を増加させないことを実証している。本明細書中で企図される早期HER2陽性乳癌療法は、ネオアジュバント療法及びアジュバント療法を含む。
【0180】
本明細書中の本発明はまた、患者のHER2陽性癌を治療する方法であって、同一点滴静注バッグからペルツズマブとトラスツズマブの混合物を患者に同時投与することを含む、方法に関する。この実施形態は、HER2陽性乳癌、HER2陽性胃癌、HER2陽性転移性もしくは局所再発性の切除不能乳癌、又はデノボのステージIVの疾患、早期HER2陽性乳癌などを含むあらゆるHER2陽性癌の治療に適用できる。場合によっては、この方法は、患者に化学療法剤を投与することをさらに含む。
【0181】
さらに別の実施形態において、本発明の治療方法は、HER2陽性胃癌を治療するための、ペルツズマブ、トラスツズマブ並びに化学療法剤、例えば、プラチン(例えば、シスプラチン)及び/又はフルオロプリミジン(fluoropurimidine)(例えば、カペシタビン及び/又は5−フルオロウラシル(5−FU))の投与を含む、それから本質的になる、又はそれからなる。
【0182】
特に、本発明の治療方法は、転移性胃癌、切除不可能な局所進行性胃癌又は術後再発性胃癌のヒト患者への、ペルツズマブとトラスツズマブと化学療法剤、例えば、プラチン並びに/又はフルオロプリミジン、例えば、シスプラチン並びに/又はカペシタビン及び/もしくは5−フルオロウラシル(5−FU)との投与を含む、それから本質的になる、又はそれからなる。特定の実施形態において、胃癌は、治癒的療法を受け入れられない。
【0183】
代替的実施形態において、患者のHER2陽性乳癌を治療する方法であって、ペルツズマブ、トラスツズマブ及びビノレルビンを患者に投与することを含む、方法が提供される。この実施形態による乳癌は、場合によっては転移性又は局所進行性である。場合によっては、患者に、転移性の設定における全身的非ホルモン性抗癌療法の前治療歴がない。
【0184】
別の態様において、本発明は、患者のHER2陽性乳癌を治療する方法であって、患者にペルツズマブ、トラスツズマブ及びアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール又はレトロゾール)を投与することを含む、方法を提供する。この実施形態によれば、乳癌は、進行性乳癌、例えば、ホルモン受容体陽性乳癌、例えば、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/又はプロゲステロン受容体(PgR)陽性乳癌である。場合によっては、患者に、転移性の設定における全身的非ホルモン性抗癌療法の前治療歴がない。この治療方法は、場合によっては、患者に導入化学療法剤(例えば、タキサンを含む)を投与することをさらに含む。
【0185】
本発明による療法は、治療される患者の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長する。
【0186】
抗体及び化学療法治療薬は、既知の方法を踏まえてヒト患者に投与する。特定の投与スケジュール及び製剤は、本明細書中の実施例において記載する。
【0187】
一実施形態によれば、ペルツズマブは、ペルツズマブ及びトラスツズマブを投与される患者の90%において20μg/mLの定常状態C
minをもたらす用量で投与する。
【0188】
本発明の特定の一実施形態によれば、約840mg(負荷用量)のペルツズマブを投与し、続いて約420mg(維持用量)の抗体の1用量又は複数用量を投与する。維持用量は好ましくは、臨床増悪又は管理不可能な毒性に至るまで、約3週間毎に合計少なくとも2用量にわたって、好ましくは約6用量以下、もしくは7用量、もしくは8用量、もしくは9用量、もしくは10用量、もしくは11用量、もしくは12用量、もしくは13用量、もしくは14用量、もしくは15用量、もしくは16用量、又は17用量もしくはそれ以上の用量を投与する。より多くの治療周期を含むより長い治療期間も企図される。
【0189】
別の特定の実施形態によれば、ペルツズマブは、全治療周期について840mgの用量で投与する。
【0190】
トラスツズマブは典型的には、約8mg/kgの静脈内負荷用量として投与し、続いてその後の周期で6mg/kgの用量を投与する。トラスツズマブは典型的には、臨床増悪又は管理不可能な毒性に至るまで、3週間毎に、好ましくは17用量以下又はそれ以上の用量を投与する。
【0191】
特定の一実施形態において、トラスツズマブは、各治療周期の1日目に静脈内(IV)点滴として、治験責任医師によって評価される増悪又は管理不可能な毒性に至るまで、周期1には8mg/kgの負荷用量で、その後の周期には6mg/kgの用量で投与する。
【0192】
別の特定の実施形態において、ペルツズマブは、各周期の1日目にIV点滴として、合計6周期にわたって又は治験責任医師に評価される増悪もしくは管理不可能な毒性に至るまで(何れか早く到来する方)、周期1に840mgの負荷用量及びその後の周期に420mgの用量、又は周期1に840mgの負荷用量及びその後の周期に840mgの用量の何れかで投与する。
【0193】
胃癌を治療するためには、シスプラチン80mg/m
2は典型的には、IV点滴として各周期の1日目に、合計少なくとも6周期にわたって投与する。
【0194】
胃癌を治療するためには、カペシタビン1000mg/m
2は典型的には、各周期の1日目の夕方から15日目の朝まで、合計少なくとも6周期にわたって、1日2回経口投与する。カペシタビンの投与は、個々の患者に関する慎重なリスク−ベネフィット評価の後に主治医の裁量で延長し得る。
【0195】
HER2陽性乳癌の治療に使用する化学療法剤の投与量及びスケジュールを下記の実施例中に開示するが、他の投与量及びスケジュールも周知であり、本明細書中の本発明によって企図される。
【0196】
VI.製造品
本明細書における製造品の一実施形態は、癌患者への投与に好適な、ペルツズマブとトラスツズマブの安定な混合物を含有する点滴静注(IV)バッグを含む。場合によっては、混合物は、約0.9%のNaCl又は約0.45%のNaClを含む生理食塩水溶液である。例示的IVバッグは、ポリオレフィン製又はポリ塩化ビニル製点滴バッグ、例えば、250mLのIVバッグである。本発明の一実施形態によれば、混合物は、約420mg又は約840mgのペルツズマブ及び約200mg〜約1000mgのトラスツズマブ(例えば、約400mg〜約900mgのトラスツズマブ)を含む。
【0197】
場合によっては、IVバッグ中の混合物は、5℃又は30℃において最長24時間にわたって安定である。混合物の安定性は、色、外観及び透明度(CAC)、濃度及び濁度分析、粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)並びに効力アッセイからなる群から選択される1種又は複数のアッセイによって評価できる。
【0198】
代替的実施形態において、本発明は、ペルツズマブを含むバイアルと添付文書とを含む製造品であって、添付文書が、表3もしくは表4の安全性データ及び/又は表2、表5、
図8もしくは
図10の有効性データを提供する、製造品を提供する。場合によっては、バイアルは、約420mgのペルツズマブを含有する単回用量バイアルである。一実施形態において、バイアルは、ボール紙カートンの内部に入れられる。
【0199】
関連した態様において、本発明は、ペルツズマブを含むバイアルと添付文書とを一緒に包装することを含む製造品の製造方法であって、添付文書が、表3もしくは表4の安全性データ及び/又は表2、表5、
図8もしくは
図10の有効性データを提供する、方法に関する。
【0200】
さらなる関連した態様において、本発明は、ペルツズマブの安全かつ効果的な使用を確実にする方法であって、ペルツズマブを含むバイアルと添付文書とを一緒に包装することに含み、添付文書が、表3もしくは表4の安全性データ及び/又は表2、表5、
図8もしくは
図10の有効性データを提供する、方法に提供する。
【0201】
VII.生物学的物質の寄託
以下のハイブリドーマ細胞株を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110−2209、USA(ATCC)に寄託した:
抗体記号表示 ATCC No. 寄託日
4D5 ATCC CRL 10463 1990年5月24日
2C4 ATCC HB−12697 1999年4月8日
【0202】
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的な実施例によって例示する。明細書中の全ての引用の開示を、参照によって本明細書中に明示的に組み込む。
【実施例1】
【0203】
HER2陽性進行性胃癌患者においてペルツズマブとトラスツズマブ及び化学療法剤との併用を評価するフェーズIIa研究
20世紀後半における発生率の急激な世界的低下及び死亡率の低下にもかかわらず、胃癌は依然として、肺癌に次いで世界第2位の癌死亡原因である(Parkin、D. Oncogene 23巻:6329〜40頁(2004年))。胃癌の発生率は、地理的地域によって大きく異なる(Kelleyら J Clin Epidemiol 56巻:1〜9頁(2003年);Plummerら Epidemiology of gastric cancer. Butletら編.Mechanisms of carcinogenesis:contribution of molecular epidemiology. Lyon:IARC Scientific Publications No 157、IARC(2004年))。日本、韓国、中国及び中南米の特定の国では、発生率は、男性100,000人当たり20〜95例である。対照的に、米国、インド及びタイでは、発生率は、男性100,000人当たり4〜8例である。西ヨーロッパでの発生率は、イタリアの一部地域における男性100,000人当たり37例〜フランスにおける男性100,000人当たり12例の範囲である。女性における発生率は、同様な地理的パターンに従うが、男性の場合よりも約50%低い。胃噴門部(胃食道接合部)に限局される癌と胃の残りの部分に限局される癌との間には明確な疫学的格差がある。噴門部の癌は、米国白人男性の胃癌症例の39%を占めるが、日本の男性では胃癌のわずか4%となっている。理由は不明であるが、胃噴門部及び下部食道の癌は、1970年代以降、先進国で急増した。
【0204】
今日に至るまで、胃癌のための唯一の潜在的に治癒的な治療は、手術である。胃癌の生存率は、日本では近年、より早期の検出及びより良好な手術手技の結果として、著しく改善された(Inoueら Postgrad Med J 81巻:419〜24頁(2005年))。しかし、西ヨーロッパ及び北アメリカで、胃癌は、切除がもはや可能でない後期に診断されることが多い。結果的に、これらの集団の5年全生存率は、25%以下である(Ajani,J. The Oncologist 10 Suppl 3:49〜58頁(2005年);Catalanoら Clin Rev Oncol/Hematol 54巻:209〜41頁(2005年))。
【0205】
それらの地理的地域に関係なく、局所進行性成長又は転移の拡大により切除不能な疾患を有する患者は、予後が不良であり、5年全生存率が5%〜15%の範囲内である(Cunninghamら、Annals of Oncology 16 Suppl 1:i22〜3頁(2005年))。診断時に切除不能の疾患を有する患者及び手術後の再発性疾患を有する患者に関して、主な治療法の選択肢は、化学療法である(National Comprehensive Cancer Network. NCCN clinical practice guidelines in oncology. Gastric cancer. Version 1. National Comprehensive Cancer Network(2006年))。症状緩和の意図で施される化学療法は、進行性胃癌患者における最善の対症療法より優れていることが示されている(Wagnerら J Clin Oncol 24巻:2903〜9頁(2006年))。
【0206】
BO18255(ToGA)研究は、胃又は胃食道接合部の手術不能な、局所進行性もしくは再発性及び/又は転移性のHER2陽性腺癌を有する患者において、化学療法剤と併用したトラスツズマブの有効性及び安全性を、第一選択治療法としての化学療法単独と比較して評価するために設計された、国際的なフェーズIII多施設共同無作為非盲検比較試験であった。本研究の主目的は、トラスツズマブとフルオロピリミジン(5−FU又はカペシタビン)+シスプラチンで併用治療した患者の全生存期間を比較することであった。BO18255研究の結果から、胃癌患者においてトラスツズマブを化学療法と併用する場合の有意な臨床的ベネフィットが実証された。主要評価項目の全生存期間は、トラスツズマブ+化学療法アームでは、化学療法単独アームと比較して有意に改善された(p=0.0045、ログランク検定;ハザード比0.74)。生存期間の中央値は、トラスツズマブ+化学療法アームでは13.8カ月、化学療法単独アームでは11.1カ月であり、死亡リスクは、患者のためにトラスツズマブ+化学療法アームの患者では26%低下した。他の全ての副次的評価項目は、同様なハザード比及びオッズ比で臨床的有意性を示した(例えば、Bangら、Lancet 28;376(9742):687〜97頁(2010年)を参照のこと)。
【0207】
本研究の結果として、トラスツズマブは今日では、EUと米国を含めて、シスプラチン+カペシタビン又は5−FUとの併用で、転移性疾患の前治療歴がないHER2陽性の転移性胃又は胃食道接合部腺癌の患者の治療に適応されている。
【0208】
現在のところ、進行性胃癌のための単一で標準的な世界的に認められている化学療法レジメンはない。ToGA試験の成功にもかかわらず、この重篤な状態のための新しい効果的な治療選択肢が非常に必要とされている。特に、胃癌患者において治療関連罹患を回避しかつ/又は生存期間を増加させることを目標とする新規治療的アプローチが必要とされている。したがって、この実施例は、胃又は胃食道接合部のHER2陽性腺癌患者においてペルツズマブの2つの異なる用量を評価する多施設共同無作為非盲検研究である。患者は、2つの治療アームに1:1の比率で無作為化する。アームAの患者には、周期1については840mgのペルツズマブ負荷用量及び周期2〜6については420mgの用量を投与し、アームBの患者には、6つ全ての周期についてペルツズマブ840mgを投与する。両治療アームの患者に、トラスツズマブ、シスプラチン及びカペシタビンを投与する。研究スキーマは、
図6に示されている。本研究の期間は、約24カ月(リクルートに4カ月、最後の患者のリクルート後の追跡調査に20カ月)である。研究の終了は、全患者に増悪が起こったか、また全患者が研究から離脱もしくは研究を中止したか、何れか早い方の時点とする。
【0209】
標的集団
この試験には、約30例の患者を含める。
【0210】
患者は、以下の研究エントリー基準を満たさなければならない:
・ 治癒的療法を受け入れられない手術不能の局所進行性又は転移性疾患のある、胃又は胃食道接合部の組織学的に確認された慢性腺癌。
・ 術後(手術の意図が治癒であった場合)に再発を示している進行性疾患の患者も、エントリーに適格である。
・ 画像法(コンピュータ断層撮影法(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI))を用いて評価される、固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)、v1.1による測定可能な疾患、又は追跡できる測定不可能な疾患。
・ 原発性腫瘍又は転移性腫瘍に関して中央検査施設によって評価された場合に、IHC3+又はIHC2+とISH+との組合せの何れかと定義されるHER2陽性腫瘍。ISH陽性は、(HER2遺伝子コピー数)対(CEP17のシグナル数)が2.0の比と定義される。
・ 中央検査施設によるHER2適格性の確認のための、少なくとも5mmの浸潤性腫瘍を含むホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織が入手可能なことが、必須である。
・ 米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが0又は1。
・ ベースライン左室駆出率(LVEF)55%以上(心エコー図(ECHO)又はマルチゲート収集(MUGA)スキャンによって測定)。
・ 平均余命が少なくとも3カ月。
・ 男性又は女性。
・ 年齢18歳以上。
・ インフォームドコンセントに署名済みである。
・ 妊娠可能性のある女性及び妊娠可能性のある女性のパートナーを有する男性参加者の場合:非常に効果的な非ホルモン形態の避妊又は患者及び/もしくはパートナーによる2つの効果的な形態の非ホルモン避妊を使用する合意。
・ 避妊使用は、研究治療期間中及び研究薬の最後の用量後少なくとも6カ月間は継続しなければならない。
【0211】
以下の判定基準の何れかを満たす患者は、研究エントリーから除外する:
・ 進行性又は転移性疾患に対する化学療法の前治療歴。ただし、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の完了と研究への登録との間に少なくとも6カ月が経過している場合には、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の前治療歴は認められる。
・ プラチンによるアジュバント療法又はネオアジュバント療法は、認められない。
・ 上部消化管の身体的完全性の欠如又は吸収不良症候群(例えば、胃部分切除又は胃全切除を受けた患者は研究にエントリーできるが、経皮空腸瘻プローブ(jejunostomy probe)を有する患者はエントリーできない)。
・ 活動性の(著しい又は止血不能の)胃腸管出血。
・ 以前の治療法から生じている残留関連毒性(例えば、グレード2以上の神経学的毒性(NCICTCAE))。ただし、脱毛症は除く。
・ 過去5年以内の他の悪性腫瘍。ただし、子宮頸部上皮内癌又は基底細胞癌は除く。
・ 無作為化直前の以下の異常な臨床検査の何れか:
血清総ビリルビンが正常上限(ULN)の1.5倍超、又は既知のギルバート症候群の患者の場合は、血清総ビリルビン>2×ULN
肝臓及び骨転移をいずれも有さない患者の場合:AST又はALT>2.5×ULN、及びアルカリホスファターゼ(ALP)>2.5×ULN
肝転移を有するが骨転移を有さない患者の場合:AST又はALT>5×ULN、及びALP>2.5×ULN
肝転移及び骨転移をいずれも有する患者の場合:AST又はALT>5×ULN、及びALP>10×ULN
骨転移を有するが肝転移を有さない患者の場合:AST又はALT>2.5×ULN、及びALP>10×ULN
アルブミン<25g/L
クレアチニンクリアランス<60mL/分
総白血球(WBC)数<2500/μL(<2.5×10
9/L)
絶対好中球数(ANC)<1500/μL(<1.5×10
9/L)
血小板<100,000/μL(<100×10
9/L)
・ 以下を含むがこれらに限定されない、重篤な心臓疾患又は医学的状態:
実証された心不全又は収縮機能不全(LVEF<50%)の病歴;
高リスクのコントロールされていない不整脈、例えば、安静時心拍数100/分の心房性頻拍;
重篤な心室性不整脈(心室性頻拍)又は高度AVブロック(第2度AVブロック2型(Mobitz II型)又は第3度AVブロック);
抗狭心症薬を必要とする狭心症;
臨床的に重要な心臓弁膜症;
ECG上での貫壁性梗塞の証拠;コントロール不良な高血圧(例えば、収縮期圧>180mmHg又は拡張期圧>100mmHg);
進行性の悪性疾患もしくは他の疾患の合併症による安静時呼吸困難又は支持酸素療法の必要性;
長期間又は高用量のコルチコステロイド療法による治療;
吸入ステロイド及び制吐のための又は食欲刺激薬としての短期間の経口ステロイドは認められる;
臨床的に重要な聴力異常;既知のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ欠乏症;
脳転移の病歴又は臨床的証拠;重篤な、コントロール不良の全身性介入性の疾患(例えば、感染症又は十分に制御されていない糖尿病)。
・ 妊娠中又は授乳中
妊娠可能性のある女性は、使用されている避妊法に関係なく、無作為化前7日以内の血清妊娠検査が陰性でなければならない。
・ 研究治療の開始前4週間以内の放射線療法、又は姑息的放射線療法が末梢的に骨転移部位に施されかつ患者があらゆる急性毒性から回復している場合には研究治療開始前2週間前以内の放射線療法。
・ 研究治療開始前4週間以内の大きな手術。ただし、完全に回復している場合は除く。
・ HIV、B型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスによる既知の活動性の感染症。
・ 研究薬の何れかに対する既知の過敏性。
・ 治験責任医師が判定した場合に、追跡検査又は手順に応ずることができないこと。
【0212】
治験医薬製品:用量、経路及びレジメン
治療周期の期間は、3週間である。
・ トラスツズマブは、各周期の1日目に静脈内(IV)点滴として、治験責任医師によって評価される増悪もしくは管理不可能な毒性に至るまで、周期1で8mg/kgの負荷用量及びその後の周期で6mg/kgの用量で投与する。
・ ペルツズマブは、各周期の1日目にIV点滴として合計6周期にわたって又は治験責任医師によって評価される増悪もしくは管理不可能な毒性に至るまで(何れか早く到来する方)、各アームについて以下のようにして投与する:
アームA:ペルツズマブを、周期1に840mgの負荷用量及び周期2〜6に420mgの用量で患者に投与する。
アームB:ペルツズマブを、周期1〜6に840mgで患者に投与する。
【0213】
非治験医薬製品
治療周期の期間は、3週間である。
・ シスプラチン80mg/m
2を、IV点滴として各周期の1日目に、合計6周期にわたって投与する。
・ カペシタビン1000mg/m
2を、各周期の1日目の夕方から15日目の朝まで、合計6周期にわたって、1日2回経口投与する。(カペシタビンは、個々の患者に関する慎重なリスク−ベネフィット評価の後に治験責任医師の裁量で延長し得る。)
・
【0214】
製剤
ペルツズマブの製剤
臨床目的で作製された組換え抗体の各ロットは、ウイルス安全性要件並びに米国薬局方及びヨーロッパ薬局方の無菌要件を満たす。各ロットは、同一性、純度及び効力に関する要求仕様を満たす。
【0215】
ペルツズマブは、20mM L−ヒスチジン−酢酸塩(pH6.0)、120mMスクロース及び0.02%ポリソルベート20中で製剤化された30mg/mLペルツズマブを含有する単回使用製剤として提供する。各20ccバイアル(バイアル当たり溶液14.0mL)は、約420mgのペルツズマブを含有する。
【0216】
トラスツズマブの製剤
治験トラスツズマブは、ほとんどの国でバイアル当たり150mgの名目含有量で凍結凍乾燥調合剤として供給される(バイアルサイズは国によって異なる)。
【0217】
トラスツズマブは、ヒスチジン、トレハロース及びポリソルベート20中で製剤化する。再構成した後は、各溶液は、pH約6.0で21mg/mLの活性薬物を含有する。
【0218】
評価
有効性
治験責任医師によって評価された腫瘍奏効を用いて、周期3及び6の最後に各治療アームについて、RECISTによって判定された場合に完全奏効又は部分奏効の患者として定義される最良総合効果を要約する。
【0219】
安全性
安全性は、有害事象、検査施設の検査結果の変化及びバイタルサインの変化の概要を踏まえて評価する。
【0220】
薬物動態/薬力学
43日目のペルツズマブのための最小(トラフ)血清濃度(C
min)を評価する。加えて、PKパラメーター、例えば、CL、Vss、AUC及び半減期を推定する。43日目までに収集されたデータからのPKパラメーターの評価は、患者の90%において20μg/mL以上の定常状態トラフを予測する推定用量のモデリング及びシミュレーションを可能にする。
【0221】
統計分析
薬物動態分析
個々の及び平均の血清ペルツズマブ濃度−時間データを、表に記載し、用量レベルでプロットする。ペルツズマブの血清薬物動態は、総曝露(曲線下面積(AUC))、最大血清濃度(C
max)、最小血清濃度(C
min)、定常状態C
max及びC
minまでの時間、総血清クリアランス、分布容積及び排出半減期(t
1/2)を推定することによって要約する。これらのパラメーターの推定値を、記述統計学によって、表に記載し、要約する(平均、標準偏差、最小値及び最大値)。観察されるペルツズマブ血清濃度−時間データによっては、母集団PKアプローチを使用して、PK標的濃度を達成する用量を推定し得る。
【0222】
トラスツズマブについて観察されたC
max及びC
minを、指定した各PK試料採取時点について記述統計学によって、表に記載し、要約する。全てのPK分析に関して、試料収集の実際の時点(予定時点でなく)を使用する。
【0223】
ペルツズマブのPKパラメーター(AUC、C
max、t
1/2)は、ノンコンパートメント法を用いて算出し、全身クリアランスは、標準的な方法で血漿濃度から導き出す。
【0224】
分析集団
治療意図集団
研究薬の少なくとも1つの用量を投与する、無作為化した全ての患者を、治療意図集団に含める(患者を、分析目的で無作為化した治療群に割り付ける)。
【0225】
安全性集団
研究薬の少なくとも1つの用量を投与する全ての患者を、安全性評価可能集団に含める(患者を、治療される治療群に割り付ける)。
【0226】
標本サイズ:
本研究の目的は、2つの異なるペルツズマブ用量レジメンを投与される患者において43日目にペルツズマブのC
minを評価することである。次いで、母集団PKモデルを用いてこれらのデータを分析して、進行性胃癌患者の約90%において20μg/mL以上のPK標的定常状態トラフ濃度を達成するペルツズマブの用量を特定する。ペルツズマブが進行性胃癌においてトラスツズマブと同様に挙動するという仮定を用いた分析は、アーム当たり患者15例の標本サイズ(本研究における総患者数は30例)に関しては、 所望の標的濃度を達成する用量が許容される精度(変動係数<15%)で推定できることを示唆している。
【0227】
臨床結果
フェーズIIa胃癌(GC)研究の臨床結果は、
図32〜37に示されている。
【0228】
図32は、採取される試料及び時点を示している。
【0229】
図33は、ペルツズマブ420mg(アームA)又は840mg(アームB)で治療された、GC研究の2つのアームの患者集団の人口統計を示している。
【0230】
図34は、アームA及びBそれぞれの患者のGCの病歴を示している。
【0231】
図35は、アームA及びBそれぞれの患者の内訳を示している。
【0232】
図36は、アームA及びBそれぞれの全奏効率を示している。
【0233】
安全性データ
下痢は、対象の90%で起こる最も多くみられた事象であり、典型的には、周期1に発症するグレード1及び2であった。下痢のために治療法を中止した患者はいなかった。
【0234】
グレード3以上の有害事象(AE)(>13%)には、下痢、口内炎、疲労/無力症、食欲減退、低ナトリウム血症、貧血及び好中球減少症(neutopenia)が含まれた。好中球減少症及び低ナトリウム血症(アームAでより高い)並びに食欲減退(アームBでより高い)を除いて、これらの事象の発生率は、標準及び高用量ペルツズマブアームにおいて同様であった。
【0235】
駆出率(EF)、好中球減少性熱、発疹及び薬物過敏反応の無症候性変化は、ペルツズマブのより高用量と関連していなかった。
【0236】
重篤有害事象(SAE)は患者の60%で起こり、発生率は高用量ペルツズマブと関連していなかった。
【0237】
アームBにおいてより多くの患者が治療から離脱したが、治療中止に至る事象は均一でなかったので、これがより高いペルツズマブ用量に起因したかは不明である。
【0238】
薬物動態(PK)の結果
図37は、胃癌(GC)(JOSHUA) 対転移性乳癌(MBC)(CLEOPATRA)の、42日目のペルツズマブ濃度評価の結果を示している。
【0239】
結果の概要
− ペルツズマブトラフ濃度は、GCではMBCと比較して低い。
・ 周期間濃度(即ち、7日目、14日目)は、予想MBC濃度と一致している。これは、クリアランスがこれらのより高い濃度において線形であるためである。
・ 840/420mgの用量に関するトラフ濃度は、CLEOPATRA試験(実施例3)と比較して約37%低く、これは、より低濃度ではクリアランスが非線形である(受容体飽和が不完全である)ことによる可能性が高い。
− GCにおける840/840mg用量は、MBCにおける840/420mg用量と同様なトラフ濃度をもたらす。
− 共変量は、PKに影響を及ぼさない。
【0240】
結論
GCにおけるペルツズマブPKに基づき、胃癌の治療には840/840mg用量が使用される。この用量は、患者の90%において、20μg/mL超の、標的濃度を上回るトラフ濃度を維持すると予想され、MBCにおいて観察されるのと同様なトラフレベルをもたらす。
【実施例2】
【0241】
HER2陽性進行性胃癌患者においてペルツズマブとトラスツズマブ及び化学療法剤との併用を評価するフェーズIII研究
これは、HER2陽性の局所進行性又は転移性胃癌を有する患者において、ペルツズマブとトラスツズマブ及び化学療法剤との併用の有効性及び安全性を評価するために設計されたフェーズIII多施設共同無作為非盲検臨床研究である。
【0242】
治療アームの患者に、トラスツズマブ、シスプラチン並びにカペシタビン及び/又は5−フルオロウラシルを投与する。他のアームにおいては、患者に、プラセボ又はペルツズマブの何れかを投与する。
【0243】
治療レジメン:
ペルツズマブ:
周期1〜6で840mg。
トラスツズマブ
8mg/kgの負荷用量、続いて3週間毎に6mg/kg
カペシタビン
3週間毎に1日目から14日目まで1日2回、1000mg/m
2、6周期
5−フルオロウラシル、
3週間毎に1日目から5日目まで800mg/m
2/日の連続IV点滴、6周期
シスプラチン
3週間毎に800mg/m
2、6周期
【0244】
主要評価項目:
全生存期間(OS)
【0245】
副次的評価項目:
無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(time to disease progression)(TTP)、奏効率(ORR)、臨床的ベネフィット率、奏効期間、Qol、安全性、疼痛強度、鎮痛剤消費量、体重変化、薬物動態。
【0246】
主な(mail)患者選択基準
組み入れ基準:
・ 胃又はGEJの腺癌
・ 手術不能な局所進行性及び/又は転移性疾患
・ 測定可能な(RECIST)又は測定不可能な評価可能な疾患
・ HER2陽性腫瘍:IHC2+もしくは3+及び/又はISH+
・ 十分な臓器機能及びECOGパフォーマンスステータス≦2
・ 書面によるインフォームドコンセント
【0247】
除外基準
・ 6カ月以内のアジュバント化学療法の前治療歴
・ 進行性疾患の化学療法
・ うっ血性心不全又はベースラインLVEF<50%
・ クレアチニンクリアランス<60mL/分
【0248】
ペルツズマブ、トラスツズマブ及び化学療法剤(複数可)(例えば、シスプラチン及びカペシタビン)の投与を含む、ここに記載する治療方法は、主要評価項目(OS)を満たすと予想される。特に、ここに記載する治療方法は、トラスツズマブ及び化学療法剤のみによる治療と比較して、例えば、生存期間、例えば、全生存期間(OS)及び/もしくは無増悪生存期間(PFS)並びに/又は無増悪期間(TTP)を延長しかつ/あるいは奏効率(ORR)を拡大することによって、治療される胃癌患者において治療的に有効であると予想される。
【実施例3】
【0249】
前治療歴のないHER2陽性転移性乳癌の患者において、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル対ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルの有効性及び安全性を評価するための、フェーズIII無作為二重盲検プラセボ対照比較登録試験(CLEOPATRA)の結果
HER2陽性転移性乳癌においてペルツズマブを評価するためのプロトコールは、http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00567190並びにUS2009/0137387及びWO2009/154651にみられる。
【0250】
本実施例は、化学療法剤又は生物学的療法による転移性疾患の治療歴がないHER2陽性MBC患者におけるフェーズIII無作為二重盲検プラセボ対照比較試験で得られた臨床データに関する。患者は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル又はペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルを投与されるように1:1で無作為化した。主要評価項目は、腫瘍評価に基づく無増悪生存期間(PFS)であった。PFSは、無作為化から、固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)version 1.0(Therasserら Cancer Inst 92巻:205〜16頁(2000年))に従って最初に実証されたX線写真上での増悪(PD)までの、又は患者の最後の腫瘍評価から18週間以内に死亡した場合には全死因死亡までの期間と定義した。副次的評価項目には、全生存期間(OS)、治験責任医師評価によってPFS、奏効率(ORR)及び安全性を含めた。
【0251】
患者:適格患者は、HER2陽性(免疫組織化学的検査(IHC)3+及び/又は蛍光インサイツハイブリダイゼーショ(FISH)増幅比≧2.0と定義される)(Carlsonら J Natl Compr Canc Netw 4 Suppl 3:S1−22(2006年))の、局所再発性、切除不能もしくは転移性乳癌又はデノボのステージIV疾患が中央検査施設によって確認された患者とした。患者は、年齢18才以上、ベースラインの左室駆出率(LVEF)(心エコー図又はマルチゲート収集によって決定)50%以上、米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス(ECOG PS)0又は1であった。患者は、無作為化前にMBCに対するホルモン治療の治療歴が1回あってもよく、又はネオアジュバントもしくはアジュバント療法の完了と転移性疾患の診断との間に12カ月以上の無病期間を経験しているならば、トラスツズマブ及び/もしくはタキサンを含むネオアジュバントもしくはアジュバント全身乳癌療法の治療歴があってもよい。除外基準には、以下を含めた:MBCに対する療法(前記以外の);中枢神経系転移;360mg/m
2超のドキソルビシンの累積用量又はその相当量への曝露歴;以前のトラスツズマブ療法の間又は後におけるLVEFの50%未満への低下の病歴;現在のコントロールされていない高血圧;心臓機能障害の病歴;骨髄、腎臓又は肝臓の機能障害;現在わかっている、HIV、HBV又はHCVの感染;妊娠;乳汁分泌;及び非ホルモン避妊の使用拒否。
【0252】
手順:患者に、トラスツズマブを、8mg/kgの負荷用量で、続いて、治験責任医師に評価されるX線写真もしくは臨床PD又は管理不可能な毒性に至るまで3週間毎に6mg/kgの維持用量で投与した。ドセタキセルは、開始用量を75mg/m
2とし、忍容されるならば100mg/m
2まで用量を増量させながら、3週間毎に投与した。プロトコールに従って、治験責任医師は、忍容性に対処するために55mg/m
2まで25%又は75mg/m
2まで(患者に対して用量を増量させた場合)用量を減少させることができた。患者にドセタキセルを少なくとも6周期投与することが推奨された。ペルツズマブ又はプラセボは、840mgの一定負荷用量で、続いて、治験責任医師に評価されるX線写真もしくは臨床PD又は管理不可能な毒性に至るまで3週間毎に420mgで、投与した。蓄積毒性により化学療法を中止した場合、抗体療法は、PD、許容されない毒性又は同意の撤回に至るまで、継続させた。全ての薬物は、静脈内に投与した。
【0253】
評価:PFSは、標準的なRECISTで認められた方法によって9週間毎に、各施設によって及びIRF評価PDに至るまでIRFによって評価された。LVEFの評価は、ベースラインにおいて、治療期間中は9週間毎に、治療中止時に、治療中止後1年目は6カ月毎に、次いで追跡調査期間において3年までは年1回、行った。検査パラメーター及びECOGステータスは、周期毎に評価した。有害事象(AE)は、連続的にモニターし、NCI−CTCAE version 3.0に従って段階付けした。治療中止時に進行中だった全ての心臓事象及び重篤有害事象(SAE)は、消失又は安定化まで、最終用量の1年後まで追跡した。治療後に発症した心臓事象及び治療関連SAE
【0254】
結果
研究対象集団:合計808例の患者を登録し、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル(n=406)又はペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル(n=402)が投与されるよう無作為化した(
図7)。ベースライン特性値は、治療アーム間で同様であった(表1)。
【0255】
無増悪生存期間:ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルによる治療は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、前治療状態及び地域によって層別化されたPFS−IRFを有意に改善した(HR=0.62;95%CI 0.51〜0.75;p<0.0001)(
図8)。PFS−IVRFの中央値は、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルでは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルの場合の12.4カ月から18.5カ月まで6.1カ月延長された。ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル治療のPFSベネフィットが、全ての予め定義されたサブグループにわたって観察された(
図9)。
【0256】
治験責任医師によるPFSの評価は、PFS−IRFに厳密に一致した。治験責任医師によって評価されたPFSの中央値は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルでは12.4カ月、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルでは18.5カ月であった(HR=0.65;95%CI 0.54〜0.78;p<0.0001)。
【0257】
重要な副次的有効性評価項目:OSの中間分析は、最終OS分析に対して計画されている事象の43%(n=165)が起こったときに行った。プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアーム(n=96;23.6%)では、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアーム(n=69;17.2%)の場合よりも多くの死亡がみられた(
図10)。OSに関するHR(0.64;95%CI 0.47〜0.88;p=0.0053)は、Lan DeMets α−消費関数のO’Brien Fleming中止限界(stopping boundary)(HR≦0.603、p≦0.0012)に合致しなかったので、統計的に有意でなかった。しかし、このデータは、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルに有利な生存ベネフィットを示唆する強い傾向を示した。データカットオフ時に、両治療アームの患者を、中央値19.3カ月(Kaplan−Meier推定値)のOSに関して追跡した。ORRは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアーム及びペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームにおいてそれぞれ69.3%及び80.2%であった。治療アーム間における奏効率の差は、10.8%であった(95%CI 4.2〜17.5;p=0.0011)(表2)。
【0258】
治療曝露:患者当たりの投与周期の中央値は、15及び18であり、治療継続期間(time on treatment)の中央値は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル及びペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルについて、それぞれ11.8カ月及び18.1カ月と推定された。用量の低減は、プラセボ、ペルツズマブ又はトラスツズマブに関して認められなかった。患者は、各アームで8周期の中央値のドセタキセルが投与された。安全性集団に基づき、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームの61例(15.4%)の患者は、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームの48例(11.8%)の患者と比較して、任意の周期で100mg/m
2にドセタキセル用量が増量された。ドセタキセル用量強度の中央値は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームでは24.8mg/m
2/週、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームでは24.6mg/m
2/週であった。全ての研究治療の永続的中止の理由は、
図7に示されている。
【0259】
忍容性及び心臓安全性:治療期間中のAEプロファイルは一般に、治療アーム間で均衡させた(表3)。以下のAE(全てのグレード)の発生率は、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルで5%超高かったより高かった:下痢、発疹、粘膜炎症、発熱性好中球減少症及び乾燥皮膚。
【0260】
グレード3以上の以下のAEの発生率は、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルで2%超高かった:好中球減少症、発熱性好中球減少症及び下痢(表3)。アジアからの患者におけるグレード3以上の発熱性好中球減少症の発生率は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームで12%、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームで26%であり;他の全ての地理的地域では、発生率が両アームで10%以下であった。
【0261】
LVSD(全グレード)は、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームではペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームと比較してより高頻度で報告された(それぞれ、8.3%及び4.4%)。グレード3以上のLVSDは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルを投与された患者の2.8%、及びペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルを投与された患者の1.2%で報告された。ベースライン後LVEF評価を受けた患者のうち、治療中のあらゆる段階でのベースラインから50%未満までの10%ポイント以上のLVEF低下が、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルアーム及びペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルアームの患者のそれぞれ6.6%及び3.8%で報告された。
【0262】
安全性集団において、両治療アームにおける死亡の大多数は、PDによるものであった(プラセボアームにおいて81例(20.4%)、ペルツズマブアームにおいて57例(14.0%))。PD以外の原因による死亡は一般にかたよっておらず、同様な人数の患者が、AEにより死亡し(プラセボアームで10例(2.5%)、ペルツズマブアームで8例2.0%))、感染症が、最も多くみられた、AEによる死因であった。
【0263】
考察
これらのデータは、抗HER2モノクローナル抗体であるペルツズマブ及びトラスツズマブをドセタキセルと併用すると、第一選択の設定において、HER2陽性MBC患者のPFSが延長されることを示している。ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルによる治療は、PFSリスクの統計的に有意な低下(HR=0.62)及び6.1カ月のPFS中央値の改善をもたらすことによって、期待以上であった。
【0264】
併用は忍容性が良好であり、ペルツズマブは、症候性又は無症候性の心機能不全の発現率を増加させなかった。ここに記載したデータより以前は、2種のHER2抗体による治療は、心毒性を悪化させると予想された。しかし、これらのデータは、これが、心毒性:うっ血性心不全(CHF)を含む症候性左室収縮機能不全(LVSD)の発生率、左室駆出率(LVEF)の低下を評価するための本明細書中の試験に基づく場合とは異なったことを示している。
【0265】
皮膚発疹、粘膜炎症及び乾燥皮膚を含むペルツズマブ関連AEは、ほとんど軽度であった。ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルによる治療では、グレード3以上の下痢及び発熱性好中球減少症の発現率の増加がみられた。CLEOPATRAの対照アームは、HER2陽性MBCにおけるトラスツズマブとドセタキセルの併用が11.7カ月のPFS中央値を有することを示した以前の無作為試験(Marty ら J Clin Oncol 23巻:4265〜74頁(2005年))と同様なPFSを有していた。
【0266】
任意の1つの理論に結びつけるものではないが、これらのデータは、補完的な作用機序を有する2種の抗HER2モノクローナル抗体でHER2陽性腫瘍を標的化すると、HER2がより包括的に遮断されることを示し、HER2シグナル伝達を最適に抑えるためにHER2二量体のリガンド依存性形成を防ぐことの臨床的重要性を浮き彫りにしている。本研究は、トラスツズマブ及びペルツズマブの併用によるHER2遮断が、第一選択の設定において、進行性HER2陽性疾患の患者の転帰を改善することを示している。これらのデータは、HER2陽性癌患者の治療法へのHER2二量体化阻害剤の最初の承認された使用を支持する点で、重要である。
【実施例4】
【0267】
ペルツズマブを含む製造品
実施例3のフェーズIII臨床データは、ここで以下に記載するような、ペルツズマブを含むバイアル(例えば、単回用量バイアル)とその安全性及び/又はその有効性に関する情報を提供する添付文書とを含む製造品、並びにバイアル(例えば、単回用量バイアル)中のペルツズマブとペルツズマブに関する処方情報を記載した添付文書とを一緒に包装することに含む製造品の製造方法の開発に使用した。
【0268】
ペルツズマブは、無菌で、透明〜わずかに乳白色、無色〜淡黄色のIV点滴用液体である。各単回使用バイアルは、420mgのペルツズマブを20mM L−ヒスチジン酢酸塩(pH6.0)、120mMスクロース及び0.02%ポリソルベート20中に30mg/mLの濃度で含有する。
【0269】
ペルツズマブは、すぐ注入できる、濃度30mg/mLの、保存剤を含まない液体濃縮物を含有する単回用量バイアルの形態で供給される。ペルツズマブ薬物製品の各バイアルは、合計420mgのペルツズマブを含有する。バイアルは、使用の時間まで冷蔵庫中で2℃〜8℃(36°F〜46°F)において保存すること。バイアルは、光から保護するために外側のカートン中に入った状態に保つこと。
【0270】
【0271】
1 効能及び用法
ペルツズマブはトラスツズマブ及びドセタキセルとの併用で、転移性疾患に対する抗HER2療法又は化学療法の前治療歴のないHER2陽性転移性乳癌患者の治療を適応とする。
【0272】
2 投与量及び投与
2.1 推奨用量及びスケジュール
ペルツズマブは初回量として840mgを60分間の点滴静注として投与し、続いてその後は3週間毎に420mgの用量を30〜60分間かけて点滴静注として投与する。ペルツズマブと併用投与する場合、トラスツズマブは推奨初回量として8mg/kgを90分間の点滴静注として投与し、続いてその後は3週間毎に6mg/kgの用量を30〜90分間かけて点滴静注として投与する。ペルツズマブと併用投与する場合、ドセタキセルは推奨初回量として75mg/m
2を点滴静注として投与する。初回量の忍容性が良好な場合は、用量は100mg/m
2まで増量し得る。
【0273】
2.2 用量変更
遅延した又は見逃した用量に関しては、2つの逐次注入の間隔が6週間未満である場合には、420mg用量のペルツズマブを投与すべきである。次の計画用量まで待たないこと。2つの逐次注入の間隔が6週間以上である場合には、840mgのペルツズマブ初回量を60分間の点滴静注として再投与し、続いてその後は3週間毎に420mgの用量を30〜60分間かけて点滴静注投与すべきである。患者が注入関連反応を発現した場合は、ペルツズマブの注入速度は遅らせるか、又は投与を中断し得る。患者が重篤な過敏反応を示した場合は、注入を直ちに中止すべきである[警告及び使用上の注意(5.2)を参照のこと]。
【0274】
左室駆出率(LVEF):
以下の何れかの場合には、ペルツズマブ及びトラスツズマブ投薬を少なくとも3週間保留する:
・ 40%未満へのLVEFの低下、又は
・ LVEF40%〜45%で、治療前値から10%以上の絶対値低下を伴う[警告及び使用上の注意(5.2)を参照のこと]
【0275】
LVEFが45%超に回復したとき、又は治療前値から10%未満の絶対値低下を伴って40%〜45%まで回復したときは、ペルツズマブを再開してもよい。
【0276】
約3週間以内の反復評価後にLVEFが改善されていない場合又はさらに低下していた場合は、個々の患者に対するベネフィットがリスクを上回ると判断されない限り、ペルツズマブ及びトラスツズマブの中止を強く考慮すべきである[警告及び使用上の注意(5.2)を参照のこと]。トラスツズマブ治療を保留又は中止する場合には、ペルツズマブを保留又は中止すべきである。ドセタキセルを中止する場合、ペルツズマブ及びトラスツズマブによる治療は継続してもよい。用量減少は、ペルツズマブには推奨されない。ドセタキセルの用量変更に関しては、ドセタキセル処方情報を参照のこと。
【0277】
2.3 投与のための調製
点滴静注としてのみ投与すること。静脈内注射又は静脈内ボーラスとして投与しないこと。ペルツズマブを他の薬物と混合しないこと。
【0278】
調製:点滴用の溶液を、無菌法を用いて以下のようにして調製する:
・ 非経口薬物製品は、投与前に微粒子及び変色がないかどうかを目視検査すべきである。
・ バイアル(複数可)から適切な容量のペルツズマブ溶液を抜き取る。
・ 250mLの0.9%塩化ナトリウム溶液が入ったPVC製又は非PVCポリオレフィン製点滴バッグ中に希釈する。
・ 希釈した溶液を、静かに転倒混合する。振盪はしないこと。
・ 調製後は直ちに投与する。
・ 希釈した点滴溶液は、直ちに使用しない場合、2℃〜8℃で最長24時間保存し得る。
・ 希釈は、0.9%塩化ナトリウム注射液のみで行う。デキストロース(5%)溶液は使用しない。
【0279】
3 剤形及び強度
単回使用バイアル中ペルツズマブ420mg/14mL(30mg/mL)
【0280】
4 禁忌
なし
【0281】
5 警告及び使用上の注意
5.1 胚−胎児毒性
ペルツズマブは、妊娠女性に投与した場合、胎児に害を及ぼす可能性がある。ペルツズマブによる妊娠カニクイザルの治療は、羊水過少症、胎児の腎臓発達遅延及び胚−胎児死亡をもたらした。妊娠中にペルツズマブを投与した場合、又はこの薬物の投与中に患者が妊娠した場合、胎児への潜在的危険性について患者に知らせるべきである[特定集団における使用(8.1)を参照のこと]。ペルツズマブの開始の前に、妊娠の有無を確認すること。患者には、胚−胎児死亡及び先天異常のリスク並びに治療中及び治療後の避妊の必要性について助言すること。患者が妊娠を疑う場合は、直ちにヘルスケア提供者に連絡するよう、患者に助言すること。妊娠中にペルツズマブを投与した場合、又はペルツズマブの投与中に患者が妊娠した場合、曝露を直ちにGenentech Adverse Event Line(1−888−835−2555)に報告すること。妊娠中に曝露の可能性がある女性には、1−800−690−6720に連絡を取ってMotHER Pregnancy Registryに登録するよう勧めること[患者カウンセリング情報(17)を参照のこと]。ペルツズマブ療法中に妊娠した患者は、羊水過少症についてモニターすること。羊水過少症が発現した場合は,在胎期間に適切でかつケアの地域標準と一致する胎児検査を実施すること。ペルツズマブの曝露による羊水過少症の管理における、静注による水分補給の有効性は、不明である。
【0282】
5.2 左室機能不全
ペルツズマブを含む、HER2活性を遮断する薬物に関しては、LVEF低下が報告されている。無作為試験において、ペルツズマブとトラスツズマブ及びドセタキセルとの併用は、プラセボとトラスツズマブ及びドセタキセルとの併用と比較して、症候性左室収縮機能不全(LVSD)の発生率の増加又はLVEFの低下との関連が認められなかった[臨床研究(14.1)を参照のこと]。左室機能不全は、ペルツズマブ治療群の患者の4.4%、プラセボ治療群の患者の8.3%で発現した。症候性左室収縮機能不全(うっ血性心不全)は、ペルツズマブ治療群の患者の1.0%、プラセボ治療群の患者の1.8%で発現した[有害反応(6.1)を参照のこと]。アントラサイクリンの前投与歴を有する患者又は胸部への放射線療法の前治療歴のある患者は、LVEF低下のリスクがより高い可能性がある。以下を示した患者におけるペルツズマブの研究は行われていない:LVEFの治療前値50%以下、CHFの既往歴、以前のトラスツズマブ療法中にLVEFが50%未満に低下、又は左室機能を損なう可能性がある状態、例えば、コントロールされていない高血圧、最近の心筋梗塞、治療を必要とする重篤な心不整脈又は360mg/m
2超のドキソルビシンもしくはその相当量への先行するアントラサイクリン累積曝露。LVEFの評価はペルツズマブの開始前及び治療中は定期的(例えば、3カ月毎)に実施し、LVEFが各施設の正常範囲内であることを確認すること。LVEFが40%未満の場合又はLVEFが40〜45%で治療前値から10%以上の絶対値低下を伴う場合は、ペルツズマブ及びトラスツズマブを保留し、約3週間以内にLVEFの評価を繰り返すこと。LVEFが改善されていない又はさらに低下した場合は、個々の患者に対するベネフィットがリスクを上回らない限り、ペルツズマブ及びトラスツズマブを中止すること[投与量及び投与(2.2)を参照のこと]。
【0283】
5.3 注入関連反応、過敏反応/アナフィラキシー
ペルツズマブは、注入反応及び過敏反応との関連が認められている[有害反応(6.1)を参照のこと]。注入反応は、無作為試験において、注入中又は注入と同一日に発現する、過敏症、アナフィラキシー反応、急性注入反応又はサイトカイン放出症候群とされるあらゆる事象と定義された。ペルツズマブ関連反応を調べることができるように、ペルツズマブの初回量はトラスツズマブ及びドセタキセルの前日に投与した。ペルツズマブのみを投与した1日目において、注入反応の全体的発現率は、ペルツズマブ治療群で13.0%、プラセボ治療群で9.8%であった。グレード3又は4は、1%未満であった。最も多くみられた注入反応(1.0%以上)は、発熱、悪寒、疲労、頭痛、無力症、過敏性及び嘔吐であった。全ての薬物を同一日に投与した第2の周期中に、ペルツズマブ治療群で最も多くみられた注入反応(1.0%以上)は、疲労、味覚異常、過敏性、筋肉痛及び嘔吐であった。この無作為試験において、過敏性/アナフィラキシー反応の全体的発現率は、ペルツズマブ治療群で10.8%、プラセボ治療群で9.1%であった。National Cancer Institute−Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE)(version 3)によるグレード3〜4の過敏症/アナフィラキシー反応の発生率は、ペルツズマブ治療群で2%、プラセボ治療群で2.5%であった。全体として、ペルツズマブ治療群で4例の患者、プラセボ治療群で2例の患者が、アナフィラキシーを経験した。ペルツズマブの1回目の注入後60分間及びその後の注入後30分間は、患者を厳密に観察すること。有意の注入関連反応が発現した場合は、注入を遅らせるか又は中断して、適切な内科的治療を施すこと。徴候及び症状が完全に消失するまで、患者を慎重にモニターすること。重度の注入反応が認められた患者では、永続的な中止を考慮すること[投与量及び投与(2.2)を参照のこと]。
【0284】
5.4 HER2検査
HER2タンパク質を過剰発現している患者のみが研究されかつベネフィットが示されている。したがって、ペルツズマブ療法に適切な患者を選択するために、HER2タンパク質過剰発現の検出が必要である[効能及び用法(1)並びに臨床研究(14)を参照のこと]。無作為試験では、乳癌患者は、Dako製HERCEPTEST(登録商標)でIHC3+又はDako製HER2 FISH PHARMDX(商標)検査キットでFISH増幅比2.0以上と定義されたHER2過剰発現の証拠があることが必要であった。FISHで陽性であるがIHCで蛋白過剰発現を示さない乳癌を有する患者については、限られたデータしか入手できなかった。HER2状態の評価は、利用する特定の技術に熟達した検査施設で実施すべきである。不適正なアッセイ性能、例えば、最適以下に固定された組織の使用、指定された試薬を利用しないこと、特定のアッセイ使用説明書からの逸脱、及びアッセイの妥当性確認に適切な対照が含まれていないことは、信頼できない結果をもたらす可能性がある。
【0285】
6 有害反応
以下の有害反応は、ラベルの他のセクションにより詳細に記載されている:
・ 胚−胎児毒性[警告及び使用上の注意(5.1)を参照のこと]
・ 左室機能不全[警告及び使用上の注意(5.2)を参照のこと]
・ 注入関連反応、過敏反応/アナフィラキシー[警告及び使用上の注意(5.3)を参照のこと]
【0286】
6.1 臨床試験の経験
臨床試験は、多種多様な条件下で行われるので、薬物の臨床試験で観察される有害反応発現率は、別の薬物の臨床試験における発現率と直接比較することができず、臨床実践において観察される発現率を反映しない可能性がある。臨床試験では、ペルツズマブは、種々の悪性疾患に関して1400例を超える患者において評価されたが、ペルツズマブによる治療は大部分が、他の抗悪性腫瘍薬との併用であった。
【0287】
表4に記載した有害反応は、無作為試験において治療されたHER2陽性転移性乳癌患者804例で確認されたものである。患者は、ペルツズマブとトラスツズマブ及びドセタキセルとの組合せ又はプラセボとトラスツズマブ及びドセタキセルとの組合せの何れかを投与されるよう無作為化された。研究治療期間の中央値は、ペルツズマブ治療群の患者で18.1カ月、プラセボ治療群の患者で11.8カ月であった。用量調整は、ペルツズマブ又はトラスツズマブについては認められなかった。全ての研究治療法の永続的な中止に至った有害事象の割合は、ペルツズマブ治療群の患者で6.1%、プラセボ治療群の患者で5.3%であった。ドセタキセルのみの中止に至った有害事象は、ペルツズマブ治療群の患者の23.6%、プラセボ投治療群の患者の23.2%であった。表4は、ペルツズマブ治療群の患者の少なくとも10%で発現した有害反応を報告している。ペルツズマブとトラスツズマブ及びドセタキセルとの併用で最も多くみられた有害反応(30%)は、下痢、脱毛症、好中球減少症、嘔気、疲労、発疹及び末梢性神経障害であった。
【0288】
最も多くみられたNCI CTCAE(version 3)グレード3〜4の有害反応(>2%)は、好中球減少症、発熱性好中球減少症、白血球減少症、下痢、末梢神経障害、貧血、無力症及び疲労であった。発熱性好中球減少症は、両治療アームにおいて、アジア人患者の発生率が、他の人種及び他の地理的地域の患者と比較して高いことが観察された。アジア人患者の中では、発熱性好中球減少症の発生率は、ペルツズマブ治療群(26%)の方がプラセボ治療群(12%)と比較して高かった。
【0289】
以下の臨床的に関連した有害反応は、ペルツズマブ治療群の患者の10%未満で報告された:
皮膚及び皮下組織疾患:爪周囲炎(ペルツズマブ治療群7.1%対プラセボ治療群3.5%);呼吸器、胸郭及び縦隔障害:胸水(ペルツズマブ治療群5.2%対プラセボ治療群5.8%);心臓障害:症候性左室収縮機能不全(CHF)(ペルツズマブ治療群1.0%対プラセボ治療群1.8%)を含む左室機能不全(ペルツズマブ治療群4.4%対プラセボ治療群8.3%);免疫系障害:過敏症(ペルツズマブ治療群10.1%対プラセボ治療群8.6%)。
【0290】
ドセタキセルの中止後にペルツズマブ及びトラスツズマブを投与した患者において報告された有害反応
無作為試験では、ドセタキセル治療の中止の後には、有害反応の報告頻度が減少した。
下痢(19.1%)、上気道感染症(12.8%)、発疹(11.7%)、頭痛(11.4%)及び疲労(11.1%)を除く、ペルツズマブ及びトラスツズマブ治療群の全ての有害反応は、患者の10%未満で発現した。
【0291】
6.2 免疫原性
全ての治療用タンパク質と同様に、ペルツズマブに対しても免疫応答の可能性がある。無作為試験の患者を、複数の時点でペルツズマブに対する抗体について検査した。検査したペルツズマブ治療群の患者の約2.8%(11例/386例)及びプラセボ治療群の患者の6.2%(23例/372例)が、抗ペルツズマブ抗体陽性であった。これらの34例の患者の中で、抗治療抗体(ATA)に明らかに関連するアナフィラキシー/過敏症反応を経験した患者はいなかった。ATA試料採取の時点で予想されるレベルで患者血清中に存在するペルツズマブは、このアッセイの抗ペルツズマブ抗体検出能力に干渉する可能性がある。加えて、このアッセイは、トラスツズマブに対する抗体を検出している可能性がある。その結果、データは、抗ペルツズマブ抗体の真の発現率を正確に反映していない可能性がある。免疫原性データは、使用する検査方法の感度及び特異性に大きく依存する。さらに、検査方法において観察される陽性結果の発生率は、いくつかの因子、例えば、試料の取り扱い、試料収集のタイミング、薬物干渉、併用薬及び基礎疾患によって影響される可能性がある。これらの理由のため、ペルツズマブに対する抗体の発生率と、他の製品に対する抗体の発生率との比較は、誤解をまねく可能性がある。
【0292】
7 薬物相互作用
ペルツズマブとトラスツズマブの間に又はペルツズマブとドセタキセルの間に、薬物−薬物相互作用は観察されなかった。
【0293】
8 特定集団における使用
8.1 妊娠
妊娠カテゴリーD
リスクの概要
妊娠女性におけるペルツズマブの十分な、よい対照比較研究はない。動物研究の知見によると、ペルツズマブは、妊娠女性に投与した場合、胎児に害を及ぼす可能性がある。ペルツズマブの影響は、全ての妊娠三半期において存在する可能性が高い。妊娠したカニクイザルへのペルツズマブの投与は、C
maxに基づく推奨ヒト用量の2.5〜20倍の臨床的に意義のある曝露で、羊水過少症、胎児の腎臓発達遅延及び胚−胎児死亡をもたらした。ペルツズマブを妊娠中に投与した場合、又はペルツズマブの投与中に患者が妊娠した場合、胎児への潜在的危険性について患者に知らせるべきである。ペルツズマブを妊娠中に投与した場合、又はペルツズマブの投与中に患者が妊娠した場合、曝露を直ちにGenentech Adverse Event Line(1−888−835−2555)に報告すること。妊娠中に曝露の可能性がある女性には、1−800−690−6720に連絡を取ってMotHER Pregnancy Registryに登録するよう勧めること[患者カウンセリング情報(17)を参照のこと]。
【0294】
動物データ
生殖毒性研究をカニクイザルで実施した。妊娠したサルを、妊娠19日目(GD19)に30〜150mg/kgのペルツズマブ負荷用量で、続いて隔週に10〜100mg/kgの用量で治療した。これらの用量レベルは、C
maxに基づく推奨ヒト用量の2.5〜20倍の臨床的に意義のある曝露をもたらした。GD19〜GD50(器官形成期)のペルツズマブの静脈内投与は胚毒性があり、GD70〜GD25において胚胎児死亡が用量依存的に増加した。胚胎児死亡の発生率は、隔週に10、30及び100mg/kgのペルツズマブ用量で治療した雌親ではそれぞれ、33、50及び85%であった(C
maxに基づく推奨ヒト用量の2.5〜20倍)。GD100の帝王切開において、全ペルツズマブ用量群で、羊水過少症、肺及び腎臓の相対重量減少並びに腎臓発達遅延と一致した腎発育不全の顕微鏡的証拠が確認された。ペルツズマブ曝露は、全治療群からの出生児において報告され、曝露量は、GD100の母親血清レベルの29%〜40%であった。
【0295】
8.3 授乳中の母親
ペルツズマブがヒト乳汁中に排出されるかどうかは不明であるが、ヒトIgGはヒト乳汁中に排出される。多くの薬物がヒト乳汁に分泌されること、及びペルツズマブは授乳中乳児において重篤な有害反応を生じる可能性があることから、ペルツズマブの排出半減期及び母親にとっての本薬物の重要性を考慮して、授乳を中止するかどうか又は薬物を中止するかどうかを決定すべきである[警告及び使用上の注意(5.1)、臨床薬理(12.3)を参照のこと]。
【0296】
8.4 小児への使用
小児患者におけるペルツズマブの安全性及び有効性は、確立されていない。
【0297】
8.5 高齢者への使用
無作為試験でペルツズマブを投与された402例の患者のうち、60例(15%)の患者は65才以上、5例の患者は75才以上であった。これらの患者と65才未満の患者との間に、ペルツズマブの有効性及び安全性の全体的な差は観察されなかった。母集団薬物動態解析によると、65年未満の患者(n=306)と65才以上の患者(n=175)の間で、ペルツズマブの薬物動態に有意差は観察されなかった。
【0298】
8.6 生殖能のある女性
妊娠中に投与された場合、ペルツズマブは胚−胎児に害を及ぼす可能性がある。妊娠の防止及び計画に関して患者にカウンセリングすること。生殖能のある女性には、ペルツズマブの投与中及びペルツズマブの最終用量後6カ月間にわたって効果的な避妊を使用するよう助言すること。ペルツズマブを妊娠中に投与した場合又はペルツズマブの投与中に患者が妊娠した場合、曝露を直ちにGenentech Adverse Event Line(1−888−835−2555)に報告すること。妊娠中に曝露の可能性がある女性には、1−800−690−6720に連絡を取ってMotHER Pregnancy Registryに登録するよう勧めること[患者カウンセリング情報(17)を参照のこと]。
【0299】
8.7 腎機能障害
ペルツズマブの用量調整は、軽度(クレアチニンクリアランス[CLcr]60〜90mL/分)又は中等度(CLcr 30〜60mL/分)の腎機能障害患者には必要でない。重度の腎機能障害患者(CLcr 30mL/分未満)に対する用量調整は、薬物動態データの入手が限られているため、推奨できない[「臨床薬理」(12.3)を参照のこと]。
【0300】
8.8 肝機能障害
ペルツズマブの薬物動態に関して、肝機能障害患者への影響を評価する臨床研究は実施されていない。
【0301】
10 過量投与
現在まで、薬物の過量は、ペルツズマブでは報告されていない。
【0302】
11 説明
ペルツズマブは、組換えヒト化モノクローナル抗体であり、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2)の細胞外二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的とする。ペルツズマブは、抗生物質ゲンタマイシンを含有する哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣)培養物中で、組換えDNA技術によって作製される。ゲンタマイシンは、最終製品で不検出である。ペルツズマブは、148kDaの概算分子量を有する。ペルツズマブは、無菌で、透明〜わずかに乳白色、無色〜淡褐色の点滴静注用液体である。各単回使用バイアルは、420mgのペルツズマブを20mM L−ヒスチジン酢酸塩(pH6.0)、120mMスクロース及び0.02%ポリソルベート20中に30mg/mLの濃度で含有する。
【0303】
12 臨床薬理
12.1 作用機序
ペルツズマブは、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2)の細胞外の二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的とし、それによって、EGFR、HER3及びHER4を含む他のHERファミリーのメンバーによる、HER2のリガンド依存性ヘテロ二量体化を阻止する。その結果、ペルツズマブは、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ及びホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)の2つの主要シグナル経路を介して、リガンドによって惹起される細胞内シグナル伝達を阻害する。これらのシグナル伝達経路の阻害は、細胞成長停止及びアポトーシスをそれぞれもたらし得る。加えて、ペルツズマブは、抗体依存細胞媒介細胞毒性(ADCC)を媒介する。ペルツズマブは単独でヒト腫瘍細胞の増殖を阻害するが、ペルツズマブとトラスツズマブの併用は、HER2を過剰発現する異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を有意に増強した。
【0304】
12.2 薬物動態
ペルツズマブは、2〜25mg/kgの用量範囲で線形薬物動態を示した。481例の患者を含む母集団PK分析によると、ペルツズマブのクリアランス(CL)中央値は0.24L/日であり、半減期中央値は18日であった。初回量840mg、それに続いてその後3週間毎に維持用量420mgを用いると、ペルツズマブは、1回目の維持用量後に定常状態濃度に達した。母集団PK解析から、年齢、性別及び民族性(日本対非日本人)に基づくPK差はないことが示唆された。共変量としてのベースライン血清アルブミンレベル及び除脂肪体重のみが、PKパラメーターに対してわずかな影響を及ぼした。したがって、体重又はベースラインアルブミンレベルに基づく用量調整は必要でない。無作為試験での患者37例のサブスタディにおいて、ペルツズマブとトラスツズマブの間、又はペルツズマブとドセタキセルの間に薬物−薬物相互作用は観察されなかった。ペルツズマブのみを対象とする腎機能障害試験は、行わなかった。母集団薬物動態解析の結果によると、軽度(CLcr 60〜90mL/分、n=200)及び中等度(CLcr 30〜60mL/分、n=71)の腎機能障害患者におけるペルツズマブ曝露は、正常腎機能患者(CLcr 90mL/分超、n=200)の場合と同様であった。観察したCLcrの範囲(27〜244mL/分)にわたって、CLcrとペルツズマブ曝露の間に関係は観察されなかった。
【0305】
12.3 心臓電気生理学
初回量840mg及びそれに続くその後3週間毎に維持用量420mgでのペルツズマブのQTc間隔に対する影響を、無作為試験でHER2陽性乳癌患者20例のサブグループにおいて評価した。Fridericia補正法によると、プラセボからの平均QT間隔の大きい(即ち、20msより大きい)変化は、この試験で検出されなかった。平均QTc間隔の小さい(即ち、10ms未満の)増加は、試験デザインの限定のため、除外できない。
【0306】
13 非臨床毒性
13.1 発癌性、変異原性、妊孕性障害
ペルツズマブの発癌可能性を評価するための動物での長期研究は行っていない。ペルツズマブの変異原性可能性を評価するための研究は行っていない。ペルツズマブの影響を評価するための、動物における特定の妊孕性研究は行っていない。カニクイザルにおける最長6カ月の反復−用量毒性研究で、男性及び女性の生殖器官に対する有害作用は観察されなかった。
【0307】
14 臨床試験
14.1 転移性乳癌
無作為試験は、808例のHER2陽性転移性乳癌患者の多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験であった。乳房腫瘍検体は、中央検査施設によって決定されるIHCが3+又はFISH増幅比が2.0と定義されるHER2過剰発現を示すことが必要であった。患者は、プラセボ+トラスツズマブ及びドセタキセル又はペルツズマブ+トラスツズマブ及びドセタキセルを投与されるように1:1で無作為化した。無作為化は、前治療歴(アジュバント/ネオアジュバント抗HER2療法又は化学療法の前治療歴の有無)及び地理的地域(ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ及びアジア)によって層別化した。アジュバント又はネオアジュバント療法の前治療歴がある患者には、試験登録前12カ月超の無病期間があることが必要であった。ペルツズマブは、初回量840mg、続いてその後は3週間毎に420mgを静脈内投与した。トラスツズマブは、初回量8mg/kg、続いてその後は3週間毎に6mg/kgを静脈内投与した。患者は、増悪、同意の撤回又は許容されない毒性に至るまで、ペルツズマブ及びトラスツズマブで治療した。ドセタキセルは、初回量を75mg/m
2として少なくとも6周期にわたって3週間毎に点滴静注によって投与した。ドセタキセル用量は、初回量の忍容性が良好であるならば、治験責任医師の裁量で100mg/m
2まで増量できた。
【0308】
主要分析時に施された研究治療の周期の平均数は、プラセボ治療群で16.2周期、ペルツズマブ治療群で19.9周期であった。
【0309】
無作為試験の主要評価項目は、独立審査機関(IRF)によって評価される無増悪生存期間(PFS)であった。PFSは、無作為化の日から増悪まで又は最後の腫瘍評価から18週間以内に死亡した場合には死亡(全死因死亡)の日までの期間と定義する。追加の評価項目には、全生存期間(OS)、PFS(治験責任医師に評価された)、奏効率(ORR)及び奏効期間を含めた。
【0310】
患者の人口統計学的及びベースライン特性は、治療アーム間で均衡させた。年齢中央値は54才(22〜89才の範囲)で、59%が白人、32%がアジア人、4%が黒人であった。2例の患者を除いて全て女性であった。患者の17%は北アメリカで、14%は南アメリカで、38%はヨーロッパで、31%はアジアで登録された。ホルモン受容体の状態(陽性48%、陰性50%)、内臓疾患(78%)及び非内臓疾患のみ(22%)の存在を含む腫瘍予後特性は、試験アームにおいて同様であった。患者の約1/2は、アジュバント又はネオアジュバント抗HER2療法又は化学療法の前治療歴があった(プラセボ47%、ペルツズマブ46%)。ホルモン受容体陽性腫瘍患者のうち、45%はアジュバントホルモン療法の前治療歴があり、11%は転移性疾患に対するホルモン療法の治療歴があった。患者の11%は、アジュバント又はネオアジュバントトラスツズマブの前投与歴があった。
【0311】
無作為試験は、ペルツズマブ治療群の方がプラセボ治療群と比較して、IRF評価PFSの統計的に有意な改善を示し[ハザード比(HR)=0.62(95%CI:0.51、0.75)、p<0.0001]、PFS中央値の6.1カ月の増加(PFS中央値は、ペルツズマブ治療群18.5カ月対プラセボ治療群12.4カ月)を示した(
図8を参照のこと)。治験責任医師によって評価されたPFSの結果は、IRF評価PFSに関して観察された結果と同等であった。年齢(65才未満又は65才以上)、人種、地理的地域、アジュバント/ネオアジュバント抗HER2療法又は化学療法の前治療歴(あり又はなし)及びアジュバント/ネオアジュバントトラスツズマブの前投与歴(あり又はなし)を含む、いくつかの患者サブグリープ全体で、一致した結果が観察された。ホルモン受容体陰性疾患患者のサブグループ(n=408)において、ハザード比は0.55であった(95%CI:0.42、0.72)であった。ホルモン受容体陽性疾患患者のサブグループ(n=388)において、ハザード比は0.72(95%CI:0.55、0.95)であった。非内臓転移に限定された疾患の患者のサブグループ(n=178)において、ハザード比は0.96であった(95%CI:0.61、1.52)であった。
【0312】
PFS分析時に、165例の患者が死亡していた。ペルツズマブ治療群(17.2%)と比較して、プラセボ治療群(23.6%)で、より多くの死亡が発現した。中間OS分析では、結果は完了しておらず、統計的有意性のために予め指定された中止限界に合致しなかった。表5及び
図10を参照のこと。
【0313】
16 供給方法/保存及び取扱い
16.1 供給方法
ペルツズマブは、保存剤を含まない420mg/14mL(30mg/mL)単回使用バイアルとして供給される。NDC 50242 145 01。バイアルは、使用の時間まで冷蔵庫中で2℃〜8℃(36°F〜46°F)において保存すること。バイアルは、光から保護するために外側のカートン中に入った状態に保つこと。
凍結はしないこと。振盪はしないこと。
【0314】
17 患者カウンセリング情報
妊娠女性及び生殖能のある女性には、ペルツズマブ曝露が胚−胎児死亡又は先天異常を含む害を胎児に及ぼす可能性があることを助言すること[警告及び使用上の注意(5.1)及び特定集団における使用(8.1)を参照のこと]。
【0315】
生殖能のある女性には、ペルツズマブの投与中及びペルツズマブの最終用量後6カ月間にわたって効果的な避妊を使用するよう助言すること[警告及び使用上の注意(5.1)及び特定集団における使用(8.6)を参照のこと]。
【0316】
ペルツズマブで治療される授乳中の母親には、母親にとっての本薬物の重要性を考慮して、授乳を中止するよう又はペルツズマブを中止するよう助言すること[特定集団における使用(8.3)を参照のこと]。
【0317】
妊娠中にペルツズマブに曝露される女性には、1−800−690−6720に連絡を取ってMotHER Pregnancy Registryに登録するよう勧めること[警告及び使用上の注意(5.1)及び特定集団における使用(8.1)を参照のこと]。
【0318】
したがって、実施例3にみられるようなペルツズマブの包括的なフェーズIIIの安全性及び有効性データから、本実施例における製造品が可能になる。この製造品は、患者を治療するためのペルツズマブの安全かつ効果的な使用を確実にする方法において使用できる。
【実施例5】
【0319】
ペルツズマブによる早期乳癌療法
アントラサイクリン(一般に、5−FU及びシクロホスファミドと併用される)は、乳癌の管理において中心的役割を果たしている。Romondら NEJM 353(16):1673〜1684頁(2005年)、及びPooleら NEJM 355巻(18号):1851〜1852頁(2006年)。
【0320】
タキサンもまた、乳癌治療のための標準的なレジメンにおいて不可欠であり、TACとして知られているレジメンにおいてアントラサイクリンと併用され(Martinら NEJM 352巻(22号):2302〜2313頁(2005年))又はAC→Tとして知られているレジメンにおいてアントラサイクリンと逐次使用される(Romond ら上記;Joensuuら NEJM 354巻(8号):809〜820頁(2006年))。
【0321】
カルボプラチンは、活性でありかつ忍容性の良好な化学療法剤であり、乳癌の研究で、TCHとして知られるレジメンにおいてタキサン及びトラスツズマブとの併用で明白な有効性が示されている(Slamonら BCIRG 006. SABS(2007年);Robertら J.Clin.Oncol. 24巻:2786〜2792頁(2006年))。しかし、転移性乳癌においては、ネガティブデータがある(Forbesら BCIRG 007 Proc.Am.Soc.Clin.Oncol. Abstract No.LBA516(2006年))。
【0322】
ペルツズマブ(NeoSphere)に関する以前のネオアジュバント研究は、アントラサイクリン系化学療法剤又はカルボプラチン系化学療法剤との併用ではなく、ドセタキセル及びトラスツズマブとの併用でその評価を行った(Gianniら Cancer Research 70巻(24号)(Suppl.2)(2010年12月))。
【0323】
本実施例では、以下の化学療法レジメンを評価した:
【0324】
本研究の治療アームは、以下の通りであった:
アームA
5−フルオロウラシル、エピルビシン及びシクロホスファミド(FEC)のコースとそれに続くドセタキセル(T)(FEC→T)のコースで、トラスツズマブ及びペルツズマブが化学療法レジメンの最初から投与される(即ち、アントラサイクリンと同時に投与される)。
3周期は、5−フルオロウラシル(500mg/m
2)、エピルビシン(100mg/m
2)、次いでシクロホスファミド(600mg/m
2)、それに続く3周期はドセタキセルを投与し、トラスツズマブ(初回治療の1日目にエピルビシンと共に8mg/kg、その後3週間毎に6mg/kg)及びペルツズマブ(治療の1日目にFECと共に840mg、その後3週間毎に420mg)を併用投与。ドセタキセルの開始用量は、周期4(第1のドセタキセル周期)では75mg/m
2とし、次いで用量制限毒性が発現しなければ、周期5〜6では100mg/m
2とする。全ての薬物を、IV経路によって投与する。
又は
アームB
FEC→Tで、トラスツズマブ及びペルツズマブがタキサン治療の最初から投与される(即ち、アントラサイクリン後に投与される)。
3周期は、5−フルオロウラシル(500mg/m
2)、エピルビシン(100mg/m
2)、次いでシクロホスファミド(600mg/m
2)、それに続く3周期は、ドセタキセルを投与し、トラスツズマブ(ドセタキセルによる初回治療の1日目に8mg/kg、その後3週間毎に6mg/kg)及びペルツズマブ(ドセタキセルによる治療の1日目に840mg、その後3週間毎に420mg)を併用投与。ドセタキセルの開始用量は、周期4(第1のドセタキセル周期)では75mg/m
2とし、次いで用量制限毒性が発現しなければ、周期5〜6では100mg/m
2とする。全ての薬物を、IV経路によって投与する。
又は
アームC
タキサン(ドセタキセル)、カルボプラチン及びトラスツズマブ(TCH)とペルツズマブ(両抗体とも、化学療法剤の開始から投与)。
カルボプラチン(Calvert式を用いてAUC6)、続いて1日目にドセタキセルとトラスツズマブ(カルボプラチン及びドセタキセルによる初回治療の1日目に8mg/kg、その後3週間毎に6mg/kg)及びペルツズマブ(1日目に840mg、その後3週間毎に420mg)を6周期。ドセタキセルの用量は、全周期で75mg/m
2とする。全ての薬物を、IV経路によって投与する。
【0325】
追加の化学療法を受けるか否かに関わらず、全ての患者には、治療の最初から合計1年間にわたって3週間毎にトラスツズマブを投与する(アームA及びCの患者には周期1〜17及びアームBの患者には周期4〜20)。
【0326】
主目的
主目的は、全ての患者が6周期のネオアジュバント治療を受け、手術を受けかつ全ての必要な試料が採取され、又は研究から離脱したの場合(何れか早い方)に評価された。
【0327】
副次的目的
病理学的完全奏効率によって示される、各レジメンと関連した活性を予備評価すること。
術前(ネオアジュバント)及び術後(アジュバント)治療を含む各治療レジメンの安全性プロファイルを評価すること。
各治療アームについて、全生存期間、臨床的奏効までの時間、奏効到達時間、無病生存期間及び無増悪生存期間を精査すること。
各治療アームに従って主要及び副次的有効性評価項目と関連し得るバイオマーカーを精査すること。
診断時に乳房切除が計画された全てのT2〜3腫瘍患者の乳房温存手術の割合を精査すること。
各レジメンのリスク及びベネフィットの総合評価を行う。
【0328】
研究デザインの概要
これは、フェーズII多施設共同無作為非盲検試験であり、早期であって直径2cm超であるか又は局所進行性もしくは炎症性であるHER2陽性乳癌の患者において、ネオアジュバント療法としてのアントラサイクリン系化学療法剤レジメン又はカルボプラチン系化学療法剤レジメンに加えて使用される場合のトラスツズマブ及びペルツズマブと関連する忍容性及び活性を評価するものであった(
図11を参照のこと)。
【0329】
6周期の活性化学療法を施した。しかし、手術後にさらなる治療法が患者に必要と考えられる場合、FEC→Tが投与されたそれらの患者にはCMF(シクロホスファミド、メトトレキサート及び5−フルオロウラシル)を投与すること、及びTCHが投与されたがさらなる治療法が必要と判断されるそれらの患者にはFEC(5−フルオロウラシル、エピルビシン及びシクロホスファミド)を投与することが提示された。
【0330】
手術完了後(及び必要ならば術後化学療法の完了後)、患者には、その地域の臨床標準に従って放射線療法を行い、腫瘍がエストロゲン受容体陽性であった患者には、その地域の臨床基準に従ってホルモン操作を行った。
【0331】
要約すると、患者には、少なくとも6周期の活性化学療法及び2種の抗体、ペルツズマブ及びトラスツズマブ+手術及び放射線療法(その地域の基準に従って)+適応される(その地域の基準に従って)任意のホルモン操作を施し、合計1年までトラスツズマブの投与を継続した。
【0332】
ネオアジュバント研究治療が手術前に中止された患者は、その地域のやり方に従って管理した。研究投薬の最終用量の約28日後に、患者は、最終安全性評価を行うよう求めた(最終来診と称する)。
【0333】
研究対象集団
概要
原発性腫瘍が2cm超であって転移のない早期HER2陽性乳癌を有する年齢18才以上の女性患者。
【0334】
組み入れ基準
1.局所進行性、炎症性又は早期の、組織学的に確認された片側性浸潤性乳癌の女性患者。乳癌の初期評価は、乳癌手術の経験のある医師が行うべきである。炎症性乳癌患者は、コア針生検を受けることが可能でなければならない。
2.原発性腫瘍 直径2cm超
3.中央検査施設によって確認されたHER2陽性乳癌。腫瘍は、IHCによってHER2 3+又はFISH/CISH+でなければならない(HER2 2+腫瘍に対してはFISH/CISH陽性が必須である)。
4.中央検査施設によるHER2適格性の確認のための、FFPE組織(緩衝ホルマリン固定法が許容される)が入手可能なこと(FFPE腫瘍組織は続いて、バイオマーカーの状態の評価に使用する)。
5.女性患者、年齢18才以上。
6.ベースラインLVEF 55%以上(心エコー検査法又はMUGAによって測定)。
7.パフォーマンスステータスECOG 1以下。
8.関係のない大手術後少なくとも4週間が経過し、完全に回復している。
【0335】
併用薬及び併用治療
許容される治療法
併用治療は、患者が本研究にリクルートされる7日前から始まり研究の間じゅう継続する期間内に患者が使用するあらゆる処方薬、市販調合剤、漢方薬又は放射線療法である。
【0336】
本研究中には、以下の治療を認める:
1.女性患者又は男性パートナーが不妊手術を受けていない又は閉経後(12カ月の無月経)の研究定義に合致しない場合は、許容される避妊方法を使用しなければならない。2.H
1及びH
2拮抗薬(例えば、ジフェンヒドラミン、シメチジン)。
3.鎮痛薬(例えば、パラセタモール/アセトアミノフェン、メペリジン、オピオイド)
4.アレルギー反応又は注入反応を治療又は防止するためのコルチコステロイドの短期使用。
5.制吐薬(承認された予防的セロトニン拮抗薬、ベンゾジアゼピン、オンダンセトロンなど)
6.下痢を治療するための医薬(例えば、ロペラミド)
7.コロニー刺激因子(例えば、G−CSF)
8.その地域のやり方に従った術後化学療法の完了後におけるエストロゲン受容体拮抗薬(例えば、タモキシフェン)又はアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エクセメスタン)。
【0337】
除外される治療法
本研究の治療期間中は、以下の治療法を除外する:
9.細胞毒性を有する化学療法、放射線療法、(必要と判断されるならば、化学療法完了後の乳癌のアジュバント放射線療法又は手術直後の追加アジュバント化学療法を除く)免疫療法、及び生物学的抗癌療法を含む、本研究において施す以外の抗癌療法。
10.あらゆる標的療法。
11.アレルギー反応又は注入反応を治療又は防止するための、甲状腺ホルモン置換療法及び短期コルチコステロイド以外の、ステロイドによる治療。
12.高用量の全身性コルチコステロイド。高用量は、連続7日超にわたって1日につき20mg超のデキサメタゾン(又は相当量)と考える。
13.本研究に使用する以外のあらゆる治験薬剤。
14.漢方薬の開始。研究エントリー前に開始されかつ研究の間じゅう継続している漢方薬は認められ、適切なeCRFで報告しなければならない。
15.あらゆる経口、注入又は埋め込みホルモン避妊法。
【0338】
結果
HER2陽性早期乳癌患者のベースライン特性を、以下の表6に示す。
【0339】
安全性データを、
図12並びに下記表7及び8に示す。
【0340】
有効性データを、
図13及び14並びに下記表9及び10に示す。
【0341】
結論
・ 本研究の結果は、全アームにわたって症候性及び無症候性LVSDの発生率が低かったことを示している。
− ペルツズマブ+トラスツズマブとエピルビシンとの同時投与は、逐次投与又はアントラサイクリンを含まないレジメンと比較して、心臓に対して同様な忍容性をもたらした。
・ 好中球減少症、発熱性好中球減少症、白血球減少症及び下痢は、全アームにわたって最も高頻度で報告された有害事象(グレード3以上)であった。
・ 選択した化学療法に関係なく、ネオアジュバントの設定におけるペルツズマブとトラスツズマブの併用により、高い病理学的完全奏効(pCR)率(57〜66%)が得られた。
・ TRYPHAENAは、早期乳癌のネオアジュバント及びアジュバントの設定におけるペルツズマブ及びトラスツズマブ+アントラサイクリン(anthracyline)系又はカルボプラチン系化学療法剤の使用を裏付けている。
【実施例6】
【0342】
ペルツズマブとトラスツズマブの同時投与
前記フェーズIII臨床試験では、ペルツズマブを、生理的食塩水IVバッグ中静脈内(IV)点滴によってHER2陽性転移性乳癌患者に投与し、続いてトラスツズマブ及び化学療法剤ドセタキセルも生理的食塩水IV点滴を用いて投与した。ペルツズマブ及びトラスツズマブのIV点滴プロセスにはそれぞれ、約60〜90分かかり、各薬物の点滴後約30〜60分間の患者観察時間を設けた。患者当たりのこの治療レジメンによる来診は、合計で最長7.5時間かかる可能性がある。近年、薬物と薬物投与サービスに対する医療費がいずれも注視されるようになるにつれて、臨床及び病院の設定において、時間を短縮しかつ医学資源の利用を増加させるビジネス手法が重視されるようになってきている。患者のケア、コンプライアンス及び治療の効率は、患者が各治療周期に診療所で費やす時間の短縮によって増加されることが期待される。
【0343】
フェーズIIIペルツズマブ臨床試験の一部として、ペルツズマブ及びトラスツズマブは、静脈内(IV)点滴によって患者に逐次投与する、即ち、一方の薬物の後に他方の薬物を投与する。ペルツズマブは固定用量(維持用量として420mg、負荷用量として840mg)で投与するのに対して、トラスツズマブは体重に基づいて(維持用量として6mg/kg)投与する。利便性を向上させかつ患者が診療所内にいる時間を最小限に抑えるため、250mLの0.9%生理食塩水が入ったポリオレフィン(PO)製又はポリ塩化ビニル(PVC)製の単一IV点滴バッグ中のペルツズマブとトラスツズマブの同時投与の実現可能性を評価した。個々のモノクローナル抗体は、点滴バッグ(PO及び/又はPVC)中で5℃及び30℃において24時間にわたって安定であることが実証されている。本研究では、IVバッグ中でトラスツズマブ420mg(70kgの患者に対して6mg/kg用量)又は720mg(120kgの患者に対して6mg/kg用量)の何れかと混合したペルツズマブ(420mg及び840mg)の相溶性及び安定性を、5℃又は30℃において最長24時間にわたって評価した。対照(即ち、IVバッグ中ペルツズマブ単独、IVバッグ中トラスツズマブ単独)及びモノクローナル抗体(mAb)混合物の試料を、色、外観及び透明度(CAC)、UV−specスキャンによる濃度及び濁度、HIAC−Roycoによる粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)並びにイオン交換クロマトグラフィー(IEC)を含む、既存のペルツズマブ及びトラスツズマブの分析方法を用いて評価した。さらに、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)及び効力アッセイ(ペルツズマブ抗増殖アッセイのみ)を利用して、1:1のペルツズマブ:トラスツズマブを含有する混合物及びそれらのそれぞれの対照(ペルツズマブ420mg及びトラスツズマブ420mgのみ)のみを代表的なケースとして測定した。
【0344】
結果は、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物では、ゼロ時(T0)の対照と5℃又は30℃の何れかで最長24時間保存した試料との間で、前記アッセイによって観察される差を示さなかった。前記で列挙した物理化学的アッセイは、薬物混合物中の分子及び微量のバリアントをいずれも検出することはできたが、クロマトグラフではモノクローナル抗体種の若干のオーバーラップがみられた。さらにまた、細胞増殖アッセイのペルツズマブ特異的阻害によって検査された薬物混合物は、保存の前後で同等の効力を示した。本研究の結果は、ペルツズマブとトラスツズマブの混合物が、IV点滴バッグ中で5℃又は30℃において最長24時間、物理的及び化学的に安定であること、並びに必要ならば臨床的投与に使用できることを示した。
【0345】
用量I:840mgのペルツズマブ/トラスツズマブ混合物(ペルツズマブ420mg及びトラスツズマブ420mg)
試料の調製:全ての手順は、層流フード下で無菌的に行った。本研究のために、3つの型の薬物組み合わせを含むPO製IV点滴バッグの試料を調製した:1)ペルツズマブ420mg/トラスツズマブ420mgの混合物、2)ペルツズマブ420mg単独、及び3)トラスツズマブ420mg単独。ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料は、対照の役割をした。
【0346】
トラスツズマブは、静菌性注射用水(BWFI)20mLで再構成し、使用前に約15分間、実験台上に放置した。ペルツズマブ/トラスツズマブ試料用量を調製するために、室温で18ゲージの針を用いて、名目250mL(±25mL過剰)の0.9%生理食塩水を含有するIV点滴バッグ中にペルツズマブ14mL(420mg)を、等量の生理食塩水を除去することなく直接希釈し、続いて再構成トラスツズマブ20mL(420mg)を入れた。250mLのIVバッグ中で合わせた2種のタンパク質の総濃度は、約3mg/mLと予想された。同様に、ペルツズマブ(420mg)単独のIVバッグを、IV点滴バッグ中に直接希釈された30mg/mLの薬物製品14mLを用いて調製した。最終予想濃度は、約1mg/mLであった。トラスツズマブ(420mg)単独のIVバッグも、21mg/mLの薬物製品20mLをバッグに加える以外は同様にして調製した。最終予想濃度は、約1mg/mLであった。
【0347】
PO製IVバッグは、均一性を確実にするために穏やかに前後に数回揺動させるによって、手動でよく混合した。混合後に、各バッグからシリンジで試料10mLを取り出し、滅菌15ccファルコンチューブ中で保存して、ゼロ時における希釈試料対照として使用した(T0)。次いで、IVバッグは、フォイルで被覆して30℃において24時間保存した(T24)。保存直後に、残りの試料を、各バッグからシリンジで取り出し、滅菌250mL PETG容器中に入れた。T0及びT24の試料は、5℃において最長24時間保持して又は直ちに、CAC、UV−specスキャン(濃度及び濁度)、SEC、IEC、CZE、iCIEF、HIAC−Royco並びに効力アッセイによって分析した。試料の製品品質を、ペルツズマブ及びトラスツズマブ製品に特異的なSEC法及びIEC法によって検査すると同時に、ペルツズマブに特異的な特定の効力アッセイ法のみを実施した。利用した他のアッセイは、製品に特異的でない方法であった。アッセイは全て、それらのそれぞれの分子における意図された検査にふさわしく、さらに方法の最適化を行うことなく使用した。
【0348】
用量II:1560mgのペルツズマブ/トラスツズマブ混合物(ペルツズマブ840mg及びトラスツズマブ720mg)
試料の調製:PO製及びPVC製IV点滴バッグ試料中において、mAb同時投与用量の範囲の上限を調べた(合計1560mgの混合物:ペルツズマブ840mg及びトラスツズマブ720mg)。タンパク質凝集の増加が観察される場合には、合計1560mgのmAbの上限用量においては、高分子量種(HMWS)を形成する傾向が生じる可能性が、840mgを含む混合物よりも高いであろう。高用量範囲における使用中の状態におけるリスクを緩和するために、PO製及びPVC製の両IV点滴バッグを研究して、相互作用が確実にみられないようにした。
【0349】
用量Iの研究と同様にして、3つの型の薬物組合せ(混合物、ペルツズマブ840mg単独及びトラスツズマブ720mg単独)を調製し、取り扱った。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物は、室温で18ゲージの針を用いてPO製又はPVC製のIV点滴バッグ中に直接希釈されたペルツズマブ(840mg)とその後に入れられた再構成トラスツズマブ(720mg)を含有していた。250mLのIVバッグ中で合わせた2種のmAbの総濃度は、約5mg/mLと予想された。対照として、30mg/mLペルツズマブ28mL及び21mg/mLトラスツズマブ34mLを各PO製又はPVC製IV点滴バッグ中に直接希釈した以外は用量I研究と同様にして、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独のIV点滴バッグ試料を調製し、取り扱った。最終予想濃度は、ペルツズマブ(840mg)単独試料及びトラスツズマブ(720mg)単独試料で約3mg/mLであった。バッグは、被覆せずに5℃又は30℃の何れかで最長24時間保存した。T0及びT24の試料は、直ちに又は5℃で24〜48時間までの間保持して、CAC、UV−specスキャン(濃度及び濁度)、SEC、IEC及びHIAC−Roycoによって分析した。
【0350】
用量の型、IV点滴バッグ、用量&調製、保存温度及びアッセイの詳細を、表11に要約する。
【0351】
アッセイ
試料は全て、5℃に保持して又は直ちに分析した。典型的には、試料は、調製及び保存後24〜48時間以内に分析した。生理的食塩水IV点滴バッグ中に希釈されたペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料の製品品質及び短期安定性を確認するために、以下のアッセイを行った。いくつかのアッセイ、即ち、SEC、IEC、CZE、iCIEF及び効力アッセイは、mAb混合物の定量的評価のために最適化しなかったので、5℃又は30℃における保存前後のこれらの試料及びそれらの個々の対照のクロマトグラフィー又は電気泳動(electropherographic)オーバーレイがここに示される。一貫性を保つために、値、例えば、ピーク面積パーセントは、実施した液体クロマトグラフィー及び電気泳動アッセイからの試料の型3つ全てについて計算しなかった。
【0352】
色、外観及び透明度(CAC)
試料の色、外観及び透明度は、室温で白黒背景を用いて白色蛍光灯下で目視検査によって判定した。CAC検査のために、3ccガラスバイアルに各試料1mLを満たした。対応する試料容量を有する陰性対照(精製水)を比較に用いた。
【0353】
濃度測定のためのUV−Vis分光光度計スキャン
濃度は、容積測定試料調製を経てHP8453分光光度計でのUV−吸光度測定によって決定した。機器は、0.9%生理的食塩水をブランクとした。路長1cmの石英キュベット中でのA
max(278nm又は279nm)及び320nmにおける吸光度を、各試料について測定した。320nmにおける吸光度は、溶液中の背景光散乱を補正するのに用いる。濃度の決定は、ペルツズマブ分子及びトラスツズマブ分子に両方について、1.50(mg/mL)
−1cm
−1の吸収率を用いて計算を行った。
【0354】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:ペルツズマブ特異的及びトラスツズマブ特異的)
各試料を、AGILENT 1100(登録商標)HPLCのTOSOHAAS(登録商標)カラムG3000SWXL、7.8×300mmに周囲温度で注入した。溶出ピークを、280nmでモニターした。クロマトグラフィーの積分を、CHROMELEON(登録商標)ソフトウェアによって分析した。オートサンプラーの温度はランの間じゅう2〜8℃に保持し、ペルツズマブアッセイ及びトラスツズマブアッセイの移動相としてそれぞれ、0.2Mリン酸カリウム、0.25mM塩化カリウム(pH6.2)及び100mMリン酸カリウム(pH6.8)を用いた。試験手順によって指定される推奨注入負荷量は、注入容量20μLで200μgであった。IVバッグ中での希釈後はタンパク質が低濃度であったので、希釈420mg試料は推奨量未満の負荷量で注入された。HPLC試料ループの最大注入容量は100μLであった。これが、一度に注入可能な容量を制限している。結果的に、注入容量は、ペルツズマブ単独試料及びトラスツズマブ単独試料(420mg用量群)に対してはタンパク質160μgで100μLに、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物(840mg用量群)に対してはタンパク質200μgで73μLに変更された。注入容量の変更は、以前のIVバッグに関する研究において利用されており、低濃度の試料を取り扱う場合に必要である。
【0355】
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)
カルボキシペプチダーゼB(CpB)で消化されたペルツズマブ及びトラスツズマブの、電荷不均一性に関する分析を、各試料についてIECによって使用した。ペルツズマブ特異的IECでは、通常IEC(「ペルツズマブ−通常IEC」)又はこれらの実験を目的とした高処理量の方法のために変更されたIECの「高速」バージョン(「ペルツズマブ−IEC−高速」)の何れかを用いて、試料を検査した。IECアッセイは、ペルツズマブ−通常IEC及びペルツズマブ−IEC−高速では、280nmでモニターされる溶媒A(20mM MES、1mM Na
2EDTA pH6.00)及び溶媒B(溶媒A中250mM塩化ナトリウム)で平衡化されたDIONEX(登録商標)WCX弱陽イオン交換カラムを利用し、トラスツズマブには、AGILENT 1100(登録商標)HPLCで、214nmでモニターされる溶媒A(10mMリン酸ナトリウム、pH7.5)及び溶媒B(溶媒A中100mM塩化ナトリウム)を用いた。ピークは、0.8mL/分の流量で、ペルツズマブ−通常IEC及びペルツズマブ−IEC−高速でそれぞれ、35分間及び90分間かけて溶媒Bの勾配を18%から100%まで増加させながら、トラスツズマブ−IECでは55分間かけて溶媒Bの勾配を15%から100%まで増加させながら溶出させた。カラム温度は、ペルツズマブ−通常IEC又はペルツズマブ−IEC−高速及びトラスツズマブ−IECでそれぞれ、34℃又は42℃の何れか及び周囲温度に維持し、オートサンプラーの温度はランの間じゅう2〜8℃に保持した。
【0356】
目視不能な粒子のためのHIAC−ROYCO(商標)光オブスキュレーション(light obscuration)
希釈薬物製品中の微粒子の計数は、HIAC−ROYCO(商標)Liquid Particulate Counting Systemモデル9703を用いて実施した。各試料中の1ミリリットル当たりの10μm以上及び25μm以上の粒子の平均累積数を、PHARMSPEC v2.0(商標)を用いて集計した。検査手順は、小容量法に合わせて変更し、検査セッション当たり4つの1mL読み取り値又は4つの0.4mL読み取り値の何れかを用い、各試料の最初の読み取り値を棄却した。HIAC−ROYCO(商標)試料はそれぞれ、真空下で約10〜15分間にわたって脱気した。この試料セットについては、10μm未満のサイズは収集しなかった。
【0357】
濁度測定のためのUV−Vis分光光度計スキャン
IVバッグからの試料(1mg/mL又は3mg/mL)の光学濃度を、HP8453分光光度計で路長1cmの石英キュベット中において測定した。試料読み取り値のブランクとして、精製水を用いた。340nm、345nm、350nm、355nm及び360nmの吸光度測定値を記録し、濁度を、これらの波長の平均値として表した。
【0358】
キャピラリーゾーン電気泳動、CZE
CZEは、中性コートキャピラリー(50μm×50cm)を装着したPROTEOMELABPA800(商標)キャピラリー電気泳動システム(Beckman Coulter)を用いて行った。緩衝液は、40mM ε−アミンカプロン酸/酢酸、pH4.5、0.2%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなるものであった。試料は、水中で0.5mg/mLまで希釈し、1psiで10秒間にわたってキャピラリー中に注入した。分離は、30kVの電圧を用いて15分間にわたって行い、種の検出は、214nmのUVによって行った。
【0359】
CE−SDS−LIF(還元又は非還元)
各試料は、蛍光色素5−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステルを用いて誘導体化した。ゲル濾過(NAP−カラムを使用)によって遊離色素を除去後、40mMヨードアセトアミドを添加することによって非還元試料を調製し、70℃で5分間加熱した。還元試料の分析のために、誘導体化した試料をSDSと最終濃度1%(v/v)まで及び1M DTTを含有する溶液10mLと混合し、70℃で20分間加熱した。調製した試料を、Beckman Coulter ProteomeLab PA800システムで、分析全体を通じて20℃に維持された直径50mmの31.2cm溶融シリカキャピラリーを用いて分析した。試料は、10kVで40秒間の動電学的注入によってキャピラリー中に導入した。分離は、ふるい分け媒体としてCE−SDSランニングバッファーを用いて15kVの定電圧において極性反転(正−負)モードで行った。蛍光励起には、488nmで作動するアルゴンイオンレーザーを用い、生じた発光シグナルは560nmでモニターした。
【0360】
iCIEF
ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の電荷バリアントの分布を、フルオロカーボンコートキャピラリーカートリッジ(100μmx5cm)を装着したiCE280(商標)アナライザー(Convergent Bioscience)を用いてiCIEFによって評価した。両性電解質溶液は、0.35%メチルセルロース(MC)、0.47% Pharmalyte 3−10担体両性電解質、2.66% Pharmalyte 8−10.5担体両性電解質並びに0.20% pIマーカー7.05及び9.77の精製水中混合物からなるものであった。陽極液は80mMリン酸であり、陰極液は100mM水酸化ナトリウムであり、いずれも0.10%メチルセルロース中溶液であった。試料を精製水中に希釈し、CpBを、各希釈試料に酵素対基質比1:100で添加し、続いて37℃において20分間インキュベートした。CpB処理試料を両性電解質溶液と混合し、次いで1500Vの電位を1分間、続いて3000Vの電位を10分間導入することによって、フォーカシングした。280nm紫外線をキャピラリーに通して電荷結合素子デジタルカメラのレンズ中に送ることによって、フォーカシングされた電荷バリアントのイメージを得た。次いで、このイメージを分析して、種々の電荷バリアントの分布を決定した。
【0361】
抗増殖効力アッセイ
この検査手順は、MDA MB 175 VIIヒト乳癌細胞の増殖を阻害するペルツズマブの能力に基づく。簡潔には、96ウェル組織培養マイクロタイタープレートに細胞を播種し、5% CO
2下で37℃において一晩インキュベートして、細胞を付着させた。翌日、培地を除去し、各標準、対照及び試料(複数可)の連続希釈溶液をプレートに加えた。次いで、プレートを5% CO
2下で37℃において4日間インキュベートし、生存細胞の相対数を、酸化還元色素、ALAMARBLUE(登録商標)を用いて製造業者のプロトコールに従って間接的に数量化した。各試料を三重反復でアッセイした。蛍光によって測定された色の変化は、培養物中の生細胞数と正比例した。次いで、各ウェルの吸光度を、蛍光96ウェルプレートリーダーで測定した。相対蛍光単位(RFU)で表された結果を、抗体濃度に対してプロットした。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物参照を入手できなかったので、定量的な測定は行わず、行うこともできなかった。したがって、結果は、用量反応曲線のみの比較である。
【0362】
結果及び考察
用量I:合計840mgのペルツズマブ/トラスツズマブ混合物(ペルツズマブ420mg及びトラスツズマブ420mg)
30℃において最長24時間の保存前後におけるIV点滴バッグ中の合計840mgのペルツズマブ/トラスツズマブ混合物(ペルツズマブ420mg及びトラスツズマブ420mg)、ペルツズマブ単独(420mg)及びトラスツズマブ単独(420mg)の製品品質(n=1)を、CAC、UV−pecスキャンによる濃度測定、濁度、HIAC Roycoによって評価した(表12)。ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独のIV点滴バッグを対照とした。これは、適切な製品属性を選抜するアッセイの能力を評価するために調製されたものでもある。
【0363】
保存後、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料は、無色透明の液体のように見え、目視できる粒子は、CACによって観察されなかった。濃度及び濁度の測定では、30℃において24時間後に3つの試料型のいずれにも測定可能な変化が示されなかった。HIAC Roycoによる微粒子分析により、保存後のペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料で、10μm以上のサイズの粒子は6個以下しか検出されず、25μm超の粒子は検出されなかった。これらの結果は、0.9%生理的食塩水のみの溶液と同等である。目視可能な沈澱又は微粒子がなかったことは、混合物及び対照が、0.9%生理食塩水IV点滴バッグ中での希釈時に十分に安定であることを示している。生理食塩水中に希釈したペルツズマブ/トラスツズマブ混合物を、SEC(ペルツズマブに特異的な方法及びトラスツズマブに特異的な方法の両方)にかけたところ、T0〜T24において同等なピークプロファイルが示された(
図15及び16)。高分子量種(HMWS)及び低分子量の種(LMWS)の増加は観察されなかった。同様に、いずれの試料においても主ピークに変化は観察されなかった。HMWS及びLMWSの主ピーク及びピーク面積は、オーバーレイがあり、ペルツズマブとトラスツズマブはサイズが類似する(分子量約150kD)ため、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物中では区別できない。さらにまた、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の両試料に関するT0及びT24の比較で、前記2つのSEC法によって検出されるピーク面積又はプロファイルに観察できる変化は示されなかった。
【0364】
ペルツズマブ又はトラスツズマブIECのための2つの製品特異的な方法を利用して、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物を分析した(
図17及び18)。陽イオン交換クロマトグラフィーアッセイにおいて、各分子は典型的には、相対電荷に基づいて溶出される3つのはっきりと異なる領域、即ち、早く溶出する酸性バリアント、それに続く主ピーク、最後に遅く溶出する塩基性バリアントを含む。ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独のクロマトグラムにおいては、酸性バリアント、主ピーク及び塩基性バリアントを示すプロファイルが観察され、出発物質と30℃における保存後とは同等と判断された。これらの結果はまた、ペルツズマブ単独又はトラスツズマブ単独の何れかについて生理食塩水IV点滴バッグにおいて行われた以前の研究と一致している。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物のクロマトグラムでは、ペルツズマブピークが最初に溶出し、続いてトラスツズマブピークが溶出する。陽イオン交換分離の性質及びペルツズマブ(pI約8.7)とトラスツズマブ(pI約8.9)との正味電荷の差により、2つの主ピーク、又は主な荷電種が、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物において観察される。対照的に、SECアッセイは、分子の流体力学的サイズに基づいて分離を行い、ペルツズマブとトラスツズマブとのサイズの類似性のため、1つの主ピークしか示さない。各分子の荷電領域は、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物中では互いにオーバーラップするようである。特に、約32分及び35分に溶出すると予想されるペルツズマブの塩基性バリアントは、トラスツズマブの主ピークとオーバーラップするようである(
図17及び18)。さらにまた、トラスツズマブの主ピークより前に溶出すると予想されるトラスツズマブの酸性バリアントは、ペルツズマブの塩基性バリアント及び主ピークと共溶出する。ピーク領域がオーバーラップするにもかかわらず、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物は、IV生理食塩水バッグ中で30℃において24時間の保存前後において同等なクロマトグラフピークプロファイルを示した。
【0365】
ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料はまた、30℃において24時間の保存後にCE−SDS LIFで非還元条件下においてアッセイした。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物は、出発物質と比較して、保存後に観察できる変化のない一致したピークプロファイルを示した(
図19及び20)。ノイズに起因する極めてわずかなベースラインレベル変動も観察されるが、ピーク面積には影響を及ぼさない。SECと同様に、非還元ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物は、ペルツズマブ及びトラスツズマブの両主要種を構成する重なったモノマーのみを示した。ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料は、T0ではT24と比較して変化を示さなかった。しかし、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の間における個々の分子属性、例えば、断片のピークレベル及び種は、予想通りに観察された。
【0366】
ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独を、DTTで還元されたCE−SDS LIFにかけた場合、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)として知られる2つの主ピークがそれぞれ、17分及び21.5分に検出された(
図20)。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物では、30℃で保存後に、断片化の増加とそれに付随するLC及びHCの減少がみられなかった。さらにまた、保存後のペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料に、検出可能なピークプロファイルの差は認められなかった。
【0367】
電荷分離アッセイCZE及びiCIEFは、30℃において保存後のペルツズマブ/トラスツズマブ混合物で、同等なピークプロファイルを示す(
図21及び22)。ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独はまた、それらの各T0と比較した場合、一致したピークプロファイルを示し、保存後の変化はなかった。さらにまた、種々の微量種の存在も観察されたが、IVバッグ生理食塩水溶液中への希釈時に、新たなピークは検出されなかった。電荷に基づくIECアッセイにみられるように、より小さいオーバーラップするピークと隣接する2つの主ピークが検出される可能性があり、それは分子のpI差によるものであった。
【0368】
用量反応曲線の比較に基づく効力アッセイの結果は、30℃で24時間保存されたペルツズマブ/トラスツズマブ混合物の効力に対して、その対応するT0用量反応曲線と比較して、影響を示さなかった。トラスツズマブ単独は、ペルツズマブ効力アッセイでほとんど活性を示さなかった。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物の用量反応曲線をペルツズマブ単独又はトラスツズマブ単独の用量反応曲線と比較すると、細胞の成長を阻害するのに必要な用量が、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物ではペルツズマブ単独と比較して低用量であることが示され、これは、混合物では細胞増殖の阻害に対して相加効果又は相乗効果があり得ることを示唆している。
【0369】
用量II:合計1560mgのペルツズマブ/トラスツズマブ混合物(ペルツズマブ840mg及びトラスツズマブ720mg)
mAb合計840mgでの用量Iの研究に加えて、より高用量の1560mgの混合物(ペルツズマブ840mg及びトラスツズマブ720mg)及びそれらの個々の薬物製品対照(ペルツズマブ840mg単独及びトラスツズマブ720mg単独)を選択して、5℃又は30℃において最長24時間にわたるPO製又はPVC製のIV点滴バッグ中におけるこれら3つのmAb型の希釈の影響を精査した。保存前後におけるこれらのIV点滴バッグの製品品質を、CAC、UV−specスキャン(濃度及び濁度)及びHIAC−ROYCO(商標)(表13に要約する)並びにSEC及びIEC(
図24〜27に示す)によって評価した。
【0370】
ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物条件のためには2つのPO製又はPVC製IV点滴バッグをそれぞれ調製し、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料のためにはIV点滴バッグを1つだけ調製した。
【0371】
これらのバッグからの微粒子を、目視観察、濁度及びHIAC−Royco測定によって判定した。試料は全て、5℃又は30℃において最長24時間の保存後に無色透明であるように見えた。目視可能な微粒子は観察されず、保存後の濁度に有意な変化は認められなかった。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独に関して、HIAC−Roycoは、5℃又は30℃で保存されたPO製及びPVC製の両IV点滴バッグについて保存の前後で同等の粒子値を示し、10μm以上ではミリリットル当たりゼロ個から10個への粒子の増加が認められ、25μm以上ではミリリットル当たりの粒子の増加は認められなかった。3つの試料型全てについて、UV−specスキャンは、タンパク質濃度に標準的なアッセイ変動を超える変化を示さなかった。これは、5℃又は30℃保存のT0時間とT24時間との間にIV点滴バック中にタンパク質の吸着又は沈澱がないことを示している。
【0372】
ペルツズマブ特異的又はトラスツズマブ特異的SEC及びIEC法を用いて、ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料を分析して、前述のようなそれらの物理的及び化学的安定性をそれぞれ評価した。ペルツズマブ/トラスツズマブ混合物では、840mg混合物の用量Iの結果と同様に、PO製又はPVC製IV点滴バッグ中の5℃又は30℃でのT0時間の試料とT24時間の試料との間にクロマトグラフプロファイルにおいて、SECの変化は観察されなかった(
図24及び25)。加えて、高分子量種(HMWS)、主ピーク及び低分子量種(LMWS)に増加も減少も観察されなかった。これは、0.9%生理食塩水中のタンパク質含有量の上限範囲において安定な投薬溶液であることを示している。同様に、ペルツズマブ単独及びトラスツズマブ単独の試料も、IV点滴バッグ中での保存後に変化を示さなかった。
【0373】
ペルツズマブ特異的又はトラスツズマブ特異的の両方法を使用するペルツズマブ/トラスツズマブ混合物のIEC分析は、化学安定性の評価に使用したところ、同等な電荷バリアントピークプロファイルを示し、PO製又はPVC製のIV点滴バッグ中における5℃又は30℃への曝露後に初期時点と比較して変化は観察されなかった(
図26及び27)。2つのmAbの電荷バリアント種のかなりのオーバーラップが観察されたが、これらのピーク種はIV点滴バッグのmAb含有量の増加から影響を受けなかった。PO製又はPVC製のIV点滴バッグ中のペルツズマブ単独又はトラスツズマブ単独の試料は、5℃又は30℃への曝露の前後において変化を示さなかった。これらの結果は、840mgの用量Iの研究と一致している。
【0374】
結論
物理化学的なアッセイは全て、5℃又は30℃でのT0〜T24時間に関して混合物(1560mgの合計用量に対してペルツズマブ840mg以下及びトラスツズマブ720mg以下)又は個々のペルツズマブ(840mg以下)及びトラスツズマブ(720mg以下)のIV点滴バッグ(PO製又はPVC製)において有意な変化を示さなかった。さらにまた、保存の前後における混合物(840mg以下)及び個々のmAbの効力は同等であった。ペルツズマブとトラスツズマブの混合物を含有するIVバッグでは、IVバッグ中の個々のmAb成分と比較して、本研究を通じて差が観察されなかった。本研究はまた、個々のmAbの測定に使用したアッセイの多くが、混合物の定性的な特性決定に十分なものであることも実証している。
【実施例7】
【0375】
ペルツズマブとトラスツズマブとの同時投与及びビノレルビンとの併用療法
これは、転移性の設定における全身的非ホルモン性抗癌療法の前治療歴がないHER2陽性進行性乳癌(転移性又は局所進行性)患者においてペルツズマブを評価する2アームのフェーズII多施設共同無作為非盲検試験である。この研究デザインは、
図28に示されている。
【0376】
患者は、2つの治療アームのうちの1つに2:1の比率で無作為に割付ける:
・ ペルツズマブをトラスツズマブ及びビノレルビンと併用投与する(アームA)
・ トラスツズマブ及びビノレルビン(対照アーム アームB)
【0377】
アームAは、以下のような2つのコホートからなる:
コホート1:(第1の95例の患者):ペルツズマブ及びトラスツズマブを別個の点滴バッグで逐次投与し、続いてビノレルビンを投与。患者には、ペルツズマブ、次いでトラスツズマブを別個の点滴バッグで逐次投与し、続いてビノレルビンを投与する。
【0378】
ペルツズマブ(IV点滴)
第1の治療周期の1日目に840mgの負荷用量として、次いでその後の各3週間周期の1日目に420mgを投与。
【0379】
ペルツズマブの初回点滴は、90(±)分間かけて投与し、点滴終了から少なくとも30分間にわたって注入関連症状、例えば、熱、悪寒などについて患者を観察する。点滴を中断するか又は遅らせると、このような症状を減少し得る。点滴の忍容性が良好な場合、その後の点滴は、30(±10)分間かけて投与し、さらに30分間にわたって患者を観察してもよい。
【0380】
トラスツズマブ(IV点滴)
第1の治療周期の1日目に、8mg/kgの負荷用量として、その後の各3週間周期の1日目に6mg/kg;製品ラベルに従って投与すること。
【0381】
ビノレルビン(トラスツズマブ後のIV点滴)
第1の治療周期の1日目及び8日目に25mg/m
2の用量で、続いてその後の各3週間周期の1日目及び8日目に30〜35mg/m
2;製品ラベルに従って投与すること。
【0382】
コホート2:第2の95例の患者には、周期2以降に単一点滴バッグからペルツズマブ及びトラスツズマブを一緒に投与し、続いてビノレルビンを投与する。
【0383】
周期1の投薬
第1の治療周期では、コホート1で記載したように別個の点滴バッグでペルツズマブ及びトラスツズマブを投与する。
【0384】
ビノレルビンは、コホート1で記載したようにペルツズマブ及びトラスツズマブの投与後に投与する。
【0385】
その後の周期の投薬
周期1において3種全ての薬物の投与の忍容性が良好であった場合には、その後の各3週間治療周期の1日目に、ペルツズマブ420mg及びトラスツズマブ6mg/kgを単一点滴バックで一緒に投与する。
【0386】
ペルツズマブとトラスツズマブの1回目の併用点滴は、操作中に心臓のモニター及び注入関連反応についての綿密な観察を行いながら90(±10)分間かけて投与し、続いて60分間の観察期間を設けるべきである。この1回目の併用点滴の忍容性が良好な場合には、その後の併用点滴は、60(±10)分間かけて投与し、その後に心臓のモニターを伴う30分間の観察期間を設けることができる。
【0387】
ビノレルビンは、コホート1で記載したようにペルツズマブ及びトラスツズマブの投与後に投与する。
【0388】
対照アーム−アームB
合計95例の患者を、アームBに無作為化する。
【0389】
トラスツズマブ(IV点滴)
第1の治療周期の1日目に8mg/kgの負荷用量として、その後の各3週間周期の1日目に6mg/kg;製品ラベルに従って投与すること。
【0390】
ビノレルビン(トラスツズマブ後のIV点滴)
第1の治療周期の1日目及び8日目に25mg/m
2の用量で、続いてその後の各3週間周期の1日目及び8日目に30〜35mg/m
2;製品ラベルに従って投与すること。
【0391】
有効性転帰:
主要有効性転帰
・ 盲検化された独立審査委員会(IRC)によって評価された客観的全奏効率(ORR)を、(トラスツズマブ及びビノレルビンと併用投与したペルツズマブ)対(ラスツズマブ及びビノレルビン)で比較すること。
【0392】
副次的有効性転帰
・ ペルツズマブ治療群内において、有効性及び安全性を、(単一点滴バッグで一緒に投与されたペルツズマブとトラスツズマブ)対(別個の点滴バッグでの従来の逐次投与)で比較すること。
・ 以下に関して、(トラスツズマブ及びビノレルビンと併用投与したペルツズマブ)対(ラスツズマブ及びビノレルビン)で比較すること:
○ 治験責任医師によって評価されたORR
○ IRC及び治験責任医師によって評価された奏効到達時間
○ IRC及び治験責任医師によって評価された奏効期間
○ 無増悪生存期間(PFS)
○ 無増悪期間(TTP)
○ 全生存期間(OS)
○ 安全性及び忍容性
クオリティオブライフ(EQ−5D及びFACT−Bの質問表)
【0393】
組み入れ基準
患者は、評価のスケジュールのタイミングに応じて本研究に適格であるように、以下の判定基準を満たさなければならない:
1.18歳以上の女性又は男性の患者
2.組織学的又は細胞学的に確認されかつ実証された乳腺癌であって、治癒的切除が受け入れられない転移性又は局所進行性疾患のあるもの
3.原発性又は転移性腫瘍について地域の検査施設によって評価された場合にHER2陽性(免疫組織化学的検査(IHC)3+又はインサイツハイブリダイゼーション法(ISH)陽性の何れかと定義される)(ISH陽性は、(HER2遺伝子コピー数)対(CEP17のシグナル数)が2.0の比、又は単一プローブ検査の場合はHER2遺伝子カウントが4超と定義される)。
4.固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST) version 1.1に従って評価可能な少なくとも1つの測定可能な病変及び/又は測定不可能な疾患
5.ECOGパフォーマンスステータス0又は1
6.少なくとも50%の左室駆出率(LVEF)
7.妊娠可能性のある女性における陰性の妊娠検査(閉経前、又は閉経後無月経が12カ月未満でかつ不妊手術を受けたことがない)
8.性的に活発な、妊娠可能性のある女性の場合は、非常に効果的な非ホルモン形態の避妊又は2つの効果的な形態の非ホルモン避妊を使用する合意
9.研究治療中及び研究治療後少なくとも6カ月にわたって効果的な非ホルモン避妊手段(バリアー避妊法と殺精子ゼリーの併用、又は避妊手術)を進んで使用する意思がありかつ使用できる、生殖能力のある男性
10.少なくとも12週間の平均余命。
【0394】
除外基準
以下の除外基準の何れかをも満たす患者は、本研究に適格としない:
1.転移性又は局所進行性乳癌の設定における全身的非ホルモン性抗癌療法の前治療歴
2.あらゆる乳癌治療の設定における、既に承認された又は治験中の抗HER2薬(ただし、アジュバント又はネオアジュバントの設定におけるトラスツズマブは除く)
3.アジュバント又はネオアジュバントの設定でのトラスツズマブ投与中における増悪
4.アジュバント又はネオアジュバント全身的非ホルモン性治療の完了から疾患の再発までの無病期間が6カ月未満
5.以前のアジュバント又はネオアジュバント療法によって生じた持続性のグレード2以上(NCI−CTC、Version 4.0)の血液毒性の病歴
6.CT又はMRIによって評価された中枢神経系(CNS)転移の証拠となるX線写真
7.グレード3以上(NCI−CTC、Version 4.0)の現在の末梢神経障害
8.子宮頸部上皮内癌又は基底細胞癌を除く、過去5年以内の他の悪性腫瘍の病歴。
9.本研究で使用する治験薬の何れかの使用に禁忌となる、又は患者の治療関連合併症リスクを高くする、重篤なコントロールされていない合併症
10.以下の検査結果によって立証される不十分な臓器機能:
・ 絶対好中球数<細胞1,500個/mm
3
・ 血小板数<細胞100,000個/mm
3
・ ヘモグロビン<9g/dL
・正常上限(ULN)を超える総ビリルビン(患者がGilbert症候群と実証されていない場合)
・ AST(SGOT)又はALT(SGPT)>2.5×ULN
・AST(SGOT)又はALT(SGPT)>1.5×ULNと同時に血清アルカリホスファターゼ>2.5×ULN;骨転移が存在しかつAST(SGOT)及びALT(SGPT)<1.5×ULNである場合にのみ、血清アルカリホスファターゼは>2.5×ULNであってもよい
・ 血清クレアチニン>2.0mg/dL又は177μmol/L
・ 国際標準比(INR)及び活性化部分トロンボプラスチン時間又は部分トロンボプラスチン時間(aPTT又はPTT)>1.5×ULN(治療的凝固が行われていない場合)
11.コントロールされていない高血圧(収縮期圧>150mmHg及び/又は拡張期圧>100mmHg)又は臨床的に重要な(即ち、活動性の)心血管疾患:第1の研究薬の投与前6カ月以内の脳血管発作(CVA)/脳卒中もしくは心筋梗塞、不安定狭心症、New York Heart Association(NYHA)グレードII以上のうっ血性心不全(CHF)、又は医薬を必要とする重篤な心不整脈
12.現在わかっている、HIV、HBV又はHCVの感染
13.進行性悪性疾患の合併症による安静時呼吸困難、又は連続酸素療法を必要とする他の疾患
14.無作為化前28日以内の大手術もしくは重要な外傷、又は研究治療中に大手術の必要性が予想されること
15.無作為化前14日以内の感染症のための静脈内(IV)抗生物質の投与
16.現在の、コルチコステロイドによる慢性的連日治療(10mg/日以上のメチルプレドニゾロンに相当する用量)(ただし、吸入ステロイドは除く)
17.研究薬の何れかに対する、又は組換えヒトもしくはヒト化抗体の賦形剤に対する既知の過敏症
18.無作為化前28日以内の何れかの治験治療の治療歴
19.何れかの臨床試験への同時参加
【0395】
ここに記載した治療が、HER2陽性癌(HER2陽性乳癌によって例示される)の患者への同一静脈内(IV)バッグからのペルツズマブとトラスツズマブの同時投与の安全性及び有効性、並びに前記の主要又は副次的有効性転帰の何れか1つ又は複数による、ペルツズマブとビノレルビンの併用の安全性及び有効性を実証することが予測される。
【実施例8】
【0396】
ペルツズマブとアロマターゼ阻害剤の併用
本実施例は、HER2陽性及びホルモン受容体陽性の進行性(転移性又は局所進行性)乳癌を有する第一選択の患者における、ペルツズマブ(pertuzmab)とトラスツズマブ+アロマターゼ阻害剤の併用投与の有効性及び安定性を実証する、2アームのフェーズII多施設共同無作為非盲検試験である。この研究デザインは、
図29に示されている。
【0397】
主目的
ペルツズマブとトラスツズマブ+アロマターゼ阻害剤(AI)の併用投与対トラスツズマブ+AIの無増悪生存期間を比較すること。
【0398】
副次的目的
ペルツズマブとトラスツズマブ+アロマターゼ阻害剤(AI)の併用投与対トラスツズマブ+AIを、以下に関して比較すること:
− 全生存期間(OS)
− 奏効率(ORR)
− 臨床的ベネフィット率(CBR)
− 奏効期間
− 奏効到達時間
− 安全性及び忍容性
− クオリティオブライフ(EQ−5Dの質問表)
【0399】
試験デザイン
患者は、2つの治療アームのうちの1つに1:1の比率で無作為割付ける:
− ペルツズマブとトラスツズマブ+AIの併用(アームA)。
− トラスツズマブ+AI(対照アーム アームB)。
【0400】
治験責任医師の裁量で、患者には、治療期間の最初の18週まで、導入化学療法(タキサン、ドセタキセル又はパクリタキセルの何れか)を割り付けられたモノクローナル抗体治療アームと併用してもよい。導入化学療法を受ける患者において、AIによる治療は、化学療法導入相後に開始する。
【0401】
分析のための層別化因子は、以下の通りである:
− 導入化学療法を受けるか否かの選択(受ける/受けない)。
− アジュバントホルモン療法からの時間(12カ月未満、12カ月以上、又はホルモン療法の前治療歴なし)。
転移性の設定における全身的非ホルモン性抗癌療法をの前治療歴がない、HER2陽性及びホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体(ER)陽性及び/又はプロゲステロン受容体(PgR)陽性)進行性乳癌(転移性又は局所進行性)の患者。
【0402】
組み入れ基準
1.年齢18才以上。
2.1年超の閉経後状態(National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン基準、Version 2.2011)を満足させる)。
3.組織学的又は細胞学的に確認及び実証された乳腺癌であって、治癒的切除が受け入れられない転移性又は局所進行性疾患のあるもの。
4.原発性又は転移性腫瘍について地域の検査施設によって評価された場合にHER2陽性(IHC3+又はISH陽性い何れかと定義される)(ISH陽性は、(HER2遺伝子コピー数)対(CEP17のシグナル数)が2.0の比、又は単一プローブ検査の場合はHER2遺伝子カウントが4超と定義される)。
5.施設の基準によって定義したように地域で評価されたER陽性及び/又はPgR陽性と定義されるホルモン受容体陽性。
6.固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)version 1.1に従って評価可能な少なくとも1つの測定可能な病変及び/又は測定不可能な疾患。
7.ECOGパフォーマンスステータス0又は1。
8.少なくとも50%の左室駆出率(LVEF)。
9.少なくとも12週間の平均余命。
【0403】
除外基準
1.転移性又は局所進行性乳癌の設定における全身的非ホルモン性抗癌療法の前治療歴。
2.アジュバント又はネオアジュバント全身的非ホルモン性治療の完了から再発までの無病期間が6カ月以内。
3.あらゆる乳癌治療の設定における、既に承認された又は治験中の抗HER2薬。ただし、アジュバント又はネオアジュバントの設定におけるトラスツズマブ及び/又はラパチニブは除く。
4.アジュバントの設定でのトラスツズマブ及び/又はラパチニブの投与中における増悪。
5.以前のアジュバント又はネオアジュバント療法によって生じた持続性のグレード2以上(NCI−CTC、Version 4.0)の血液毒性の病歴。
6.CT又はMRIによって評価された中枢神経系(CNS)転移の証拠となるX線写真。
7.グレード3以上(NCI−CTC、Version 4.0)の現在の末梢神経障害。
8.子宮頸部上皮内癌又は基底細胞癌を除く、過去5年以内の他の悪性腫瘍の病歴。
9.本研究で使用する治験薬の何れかの使用に禁忌となる、又は患者の治療関連合併症リスクを高くする、重篤なコントロールされていない合併症。
10.以下の検査結果によって立証される不十分な臓器機能:
− 絶対好中球数<細胞1,500個/mm
3。
− 血小板数<細胞100,000個/mm
3。
− ヘモグロビン<9g/dL。
− 正常上限(ULN)を超える総ビリルビン(患者がGilbert症候群と実証されていない場合)。
− AST(SGOT)又はALT(SGPT)>2.5×ULN。
− AST(SGOT)又はALT(SGPT)>1.5×ULNと同時に血清アルカリホスファターゼ>2.5×ULN;骨転移が存在しかつAST(SGOT)及びALT(SGPT)<1.5×ULNである場合にのみ、血清アルカリホスファターゼは>2.5×ULNであってもよい。
− 血清クレアチニン>2.0mg/dL又は177μmol/L。
− 国際標準比(INR)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)又は部分トロンボプラスチン時間又はPTT)>1.5×ULN(治療的凝固が行われていない場合)。
11.コントロールされていない高血圧(収縮期圧>150mmHg及び/又は拡張期圧>100mmHg)又は臨床的に重要な(即ち、活動性の)心血管疾患:第1の研究薬の投与前6カ月以内の脳血管発作(CVA)/脳卒中もしくは心筋梗塞、不安定狭心症、New York Heart Association(NYHA)グレードII以上のうっ血性心不全(CHF)、又は医薬を必要とする重篤な心不整脈。
12.現在わかっている、HIV、HBV又はHCVの感染。
13.進行性の悪性疾患の合併症による安静時呼吸困難、又は連続酸素療法を必要とする他の疾患。
14.無作為化前28日以内の大手術もしくは重要な外傷、又は研究治療中に大手術の必要性が予想されること。
15.上部消化管の身体的完全性の欠如、臨床的に重要な吸収不良症候群、又は経口薬を摂取できないこと。
16.無作為化前14日以内の感染症のための静脈内抗生物質の投与。
17.現在の、コルチコステロイドによる慢性的連日治療(10mg/日のメチルプレドニゾロンに相当する用量)(ただし、吸入ステロイドは除く)。
18.研究薬の何れかに対する、又は組換えヒトもしくはヒト化抗体の賦形剤に対する既知の過敏症。
19.無作為化前28日以内の何れかの治験治療の治療歴。
20.何れかの臨床試験への同時参加。
【0404】
アームA
ペルツズマブ(IV点滴)
第1の治療周期の1日目に840mgの負荷用量として、次いでその後の各3週間周期の1日目に420mgを投与。
ペルツズマブの初回点滴は90(±)分間かけて投与し、点滴終了から少なくとも30分間にわたって注入関連症状、例えば、熱、悪寒などについて患者を観察する。点滴を中断するか又は遅らせると、このような症状を減少し得る。点滴の忍容性が良好な場合、その後の点滴は30(±10)分間かけて投与し、さらに30分間にわたって患者を観察してもよい。
【0405】
トラスツズマブ(ペルツズマブの後にIV点滴投与する)第1の治療周期の1日目に、8mg/kgの負荷用量として、その後の各3週間周期の1日目に6mg/kg:製品ラベルに従って投与すること。
【0406】
AI(経口)
製品ラベルに従って投与する(アナストロゾール:1日1回1mg;レトロゾール:1日1回2.5mg)。
【0407】
導入化学療法
治療期間の最初の18週まで導入化学療法を受けている患者には、タキサン(3週間毎にドセタキセル又は週1回パクリタキセル)を投与し、投与は各製品ラベルに従って行う。化学療法剤は、モノクローナル抗体(ペルツズマブ及び/又はトラスツズマブ)点滴後に投与する。
【0408】
導入化学療法を受ける患者において、AIによる治療は、化学療法導入相後に開始する。
【0409】
対照アーム−アームB
トラスツズマブ(IV点滴)
第1の治療周期の1日目に、8mg/kgの負荷用量として、その後の各3週間周期の1日目に6mg/kg;製品ラベルに従って投与すること。
【0410】
AI(経口)
製品ラベルに従って投与する(アナストロゾール:1日1回1mg;レトロゾール:1日1回2.5mg)。
【0411】
導入化学療法
治験中アームと同一。
【0412】
主要有効性転帰
PFS(無作為化から、最初にX線写真上で実証された増悪又は全死因死亡の日(何れか早く到来する方)までの期間と定義される)。
【0413】
副次的有効性転帰
− OS
− ORR
− CBR
− 奏効期間
− 奏効到達時間
【0414】
安全性
− 有害事象(AE)及び重篤有害事象(SAE)の発生率及び重症度
− CHFの発生率
− 本研究中のLVEF
− 臨床検査の異常
ペルツズマブ、トラスツズマブ及びAIの併用が患者集団において安全かつ効果的であること、並びにトラスツズマブ及びAIにペルツズマブを追加すると、ペルツズマブを含まないトラスツズマブ+AIと比較して無増悪生存期間(PFS)が延長されることが予測される。
【実施例9】
【0415】
癌患者で全生存期間(OS)を改善するためのペルツズマブ
背景:上記の実施例3のCLEOPATRA研究では、HER2陽性第一選択(1L)転移性乳癌(MBC)患者808例を、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル(Pla+T+D)又はペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル(P+T+D)による治療に無作為化した。独立して審査された無増悪生存期間の主要評価項目は、P+T+DではPla+T+Dに対して有意に改善された(ハザード比(HR)=0.62;P<0.0001;中央値、18.5カ月対12.4カ月)(前記実施例3)。本実施例は、より長期間の追跡調査後の第2の中間の全生存期間(OS)分析を含む。
【0416】
方法:この中間の全生存期間(OS)分析は、全体の第1種過誤を5%に維持するためにO’BrienFleming中止限界を有するLanDeMetsα−消費関数を適用して行った。観察されたOS事象の数に基づき、この分析における統計的有意性のOBF限界はP≦0.0138であった。以前の治療状態及び地理的地域によって層別化されるログランク検定を用いて、治療意図集団のアーム間でOSを比較した。Kaplan−Meierアプローチを用いて、両アームのOS中央値を推定し;層別化されたCox比例ハザードモデルを用いて、HR及び95%CIを推定した。層別化因子及び他の重要なベースライン特性について、OSのサブグループ分析を行った。
【0417】
結果:この分析時に、追跡期間中央値は30カ月であり、267例の死亡(最終分析のために計画された事象の69%)が発現した。結果は、P+T+Dに有利なOSの統計的に有意な改善を示した(HR=0.66;95%信頼区間(CI)、0.52−0.84;P=0.0008)。このHRは、死亡リスクの34%の低下に相当する。分析は、統計的に有意であり、したがって、確証OS分析と考えられる。OS中央値は、Plaアームでは37.6カ月であり、Pアームではまだ到達していない。治療効果は、ベースライン変量及び以下を含む層別化因子に基づいて予め定義されたサブグループにおいて一般に一致していた:(ネオ)アジュバント療法の前治療歴(HR=0.66;95%CI、0.46〜0.94);(ネオ)アジュバント療法の前治療歴なし(HR=0.66;95%CI、0.47〜0.93);(ネオ)アジュバントTの前治療歴(HR=0.68;95%CI、0.30〜1.55);ホルモン受容体陰性疾患(HR=0.57;95%CI、0.41〜0.79);及びホルモン受容体陽性疾患(HR=0.73;95%CI、0.50〜1.06)。OS率のKaplan−Meier推定値は、P+T+Dでは1、2及び3年で生存ベネフィットを示す。
【0418】
患者の大多数は、研究治療の中止後に抗癌療法を受けた(Plaアーム64%、Pアーム56%)。HER2に対する薬剤(T、ラパチニブ、T エムタンシン(emtansine))による逐次療法を、アーム間で均衡させた。死因は、第1の中間のOS分析から不変のままであり、最も多くみられた死因は増悪であった。死亡につながる有害事象はまれであり、アーム間で偏りがなかった。
【0419】
結論:HER2陽性1L MBC患者のP+T+Dによる治療をPla+T+Dと比較すると、OSに改善が認められ、いずれも、統計的に有意であり、臨床的に意味があった。これらの結果は、P+T+Dレジメンを用いたHER2遮断及び化学療法の併用は、1Lの設定におけるHER2陽性MBC患者の標準治療と考え得ることを示している。
【0420】
OSに関するこれらのデータは、例えば前記実施例4におけるような製造品中のペルツズマブに関す処方情報と共に、添付文書に含めることができる。
【実施例10】
【0421】
HER2陽性進行性乳癌患者のための第一選択治療法としてのペルツズマブ及びトラスツズマブとタキサンの併用(PERUSE)
背景:ヒト化モノクローナル抗体であるペルツズマブ(P)は、受容体の二量体化ドメインに結合しかつ他のHERファミリーのメンバーとのヘテロ二量体化を防止することによって、HER2の下流のシグナル伝達を阻害する。Pによって認識されるエピトープは、トラスツズマブ(H)によって結合されるものとは異なるので、それらの補完的な作用機序により、より包括的なHER2遮断がもたらされる。フェーズIII試験CLEOPATRAからのデータは、HER2陽性転移性乳癌(BC)の第一選択治療としてP+H+ドセタキセルを投与された患者(pts)では、H+ドセタキセル+プラセボと比較して有意に改善されたPFSを示した。
【0422】
試験デザイン:これは、転移性癌の全身的非ホルモン性抗癌療法の治療歴のない、HER2陽性転移性又は局所再発性BC患者における単一アームのフェーズIIIb多施設共同非盲検研究である。患者には、P:初回量840mg、3週間に1回420mg IV;H:初回量8mg/kg、3週間に1回6mg/kg IV;タキサン:ドセタキセル、パクリタキセル又はnab−パクリタキセルを地域のガイドラインに従って投与する。治療は、増悪又は許容されない毒性に至るまで施す。計画されたプロトコールの修正により、ホルモン受容体陽性患者は、タキサン療法の完了後に、臨床試験基準(clinical practice)と従ってP+Hと並行して内分泌療法を受けることが可能となる。
【0423】
適格基準:ベースラインにおいて、患者は、50%以上のLVEF、0、1又は2のECOG PS、6カ月以上の無病期間を有さなければならず、転移性BCの治療のための抗HER2薬の前投与歴があってはならない。治療中に増悪がなかった場合には、(ネオ)アジュバントの設定における以前のH及び/又はラパチニブは認められる。患者は、子宮頸部上皮内癌又は基底細胞癌以外の過去5年以内の他の悪性疾患の病歴があってはならない。CNS転移又は臨床的に重要な心臓血管疾患の臨床的又はX線写真の証拠があってはならない。
【0424】
特定の目標:Hは、(ネオ)アジュバントの設定においてCLEOPATRAリクルート前に広く利用可能でなかったので、CLEOPATRAにおいてHの投与歴のあった患者の割合は比較的少なかった。PERUSEは、H療法へのより広範な前曝露歴がある可能性が高い患者集団における、HER2陽性の転移性又は局所進行性BCの患者について、第一選択治療法としてのP+H+タキサン選択の安全性及び忍容性を評価する。
【0425】
統計的方法:PERUSE研究の主要評価項目は、安全性及び忍容性である。副次的評価項目は、PFS、OS、ORR、CBR、奏効期間、奏効到達時間及びQoLを含む。患者が追跡不能であるか、同意を撤回するかもしくは死亡しない限り、最後の患者が最終研究治療を受けてから少なくとも12カ月間にわたって、1500例の患者を追跡調査した場合に、又は本研究が治験依頼者によって早期に終了される場合に、最終的な分析を行う。安全性分析は、約350例、700例及び1000例の患者の登録後に計画する。さらに、データ安全性監視委員会が、約50例の患者が登録後及びその後6カ月毎に安全性データを審査する。
【0426】
ペルツズマブ及びトラスツズマブとタキサンの併用は、本実施例中のプロトコールによれば、HER2陽性進行性乳癌患者の第一選択治療法として効果的であることが予測される。
【実施例11】
【0427】
低HER3卵巣癌におけるペルツズマブと化学療法剤の併用
上皮性卵巣癌は、原発性の腹膜癌及び卵管癌と共に、ヨーロッパ人女性の、癌に関連した死亡原因の第5位である(Brayら Int. J. Cancer 113巻:977〜90頁(2005年))。卵巣癌は、進行期まで増悪するまで診断されないことが多く、その時点での標準治療は、外科的切除とそれに続く化学療法である。白金系化学療法にタキサンを追加することにより、患者の約80%は完全奏効(CR)を達成しているが、ほとんどの患者で疾患は再発し、上皮性卵巣癌と診断された患者の50%超が最終的にその疾患で死亡する(Du Boisら Cancer 115巻:1234〜1244頁(2009年))。白金系化学療法の失敗後に、治療選択肢はほとんどない。白金感受性の疾患(白金系化学療法の最後の周期から6カ月を超えてから疾患が再発する)の患者は、白金系療法によって再治療されることが多く、無増悪生存期間(PFS)が約9〜10であるが;原発性の白金抵抗性疾患の患者では、予後はこれに比べてかなり悪い。これらの患者に対しては、白金系療法又は手術による再治療は妥当ではなく、代わりに、白金抵抗性を有する患者は、単剤化学療法、例えば、トポテカン、ペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)、パクリタキセル及びゲムシタビンによって治療されることが多い。
【0428】
白金抵抗性疾患の患者では、奏効率は10〜20%の範囲であり、無増悪生存期間(PFS)の中央値は3.5〜4カ月の範囲である。白金抵抗性疾患は、治療可能でなく;これらの患者の治療目標は、症状の緩和、生存期間の延長及びクオリティオブライフ(QoL)の改善を含む。全般的にみると、過去20年間に行われた主要な臨床試験の結果は、進行性疾患の患者では、PFSの中央値が16〜23カ月であり、全生存期間(OS)の中央値が31〜65カ月の範囲である。
【0429】
卵巣癌細胞株の大部分及び多くの卵巣癌生検試料は、受容体のHERファミリーの全てのメンバーを発現する(Campiglioら J. Cell Biochem 73巻:522〜32頁(1999年))。EGFR及びHER2は、最も広範に研究されており、受容体又は関連する細胞内のチロシンキナーゼを標的とする複数の薬剤が試験されている。
【0430】
最近の研究で、定量的HER2タンパク質分析により、悪性卵巣腫瘍は、良性卵巣腫瘍及び正常卵巣と比較してHER2レベルが有意に高いことが実証された。さらにまた、HER2とHER3のタンパク質レベル間に相関がみられた(Steffensenら Int J Oncol. 33巻:195〜204頁(2008年))。細胞培養系における研究から、ヘレグリン活性化HER3−HER2ヘテロ二量体は、あらゆる考えられる受容体の組合せの中で最も強い増殖応答及び形質転換応答を誘発することが示された(Pinkas−Kramarskiら EMBO J. 15巻:2452〜67頁(1996年);Rieseら Mol Cell Biol 15巻:5770〜6頁(1995年).正誤表:Mol Cell Biol 16巻:735頁(1996年))。これらの生物学的応答の効力は、MAPキナーゼ及びPI3キナーゼ経路の二重の効率的な活性化の結果である可能性が高い。さらにまた、HER3は、PI3キナーゼ/AKT経路の最も強力な活性化剤である(Olayioyeら EMBO J 19巻:3159〜67頁(2000年))。HER2増幅乳癌細胞株における研究から、HER2シグナル伝達にはEGFRでなくHER3が決定的であったこと、及びHER3は三次元培養で成長を阻害しかつインビボ異種移植片の速い腫瘍縮小を誘発したことが示された(Lee−Hoeflichら Cancer Res 68巻:5878〜87頁(2008年))。
【0431】
さらに、HER3発現は、考えられるリスク因子として卵巣癌に関与している(Tannerら J Clin Oncol 24巻:4317〜23頁(2006年))。
【0432】
白金系化学療法剤での治療後に再発した又は白金系化学療法剤に不応性であった進行性卵巣癌の患者におけるフェーズII多施設共同試験(TOC2689g)において、コホート1に登録された患者(n=61)に、負荷用量の840mgのペルツズマブ、続いて各3週間周期の1日目に420mgのペルツズマブを投与し、コホート2に登録された患者(n=62)に、各3週間周期の1日目に1050mgのペルツズマブを投与した。全奏効率及びPFS中央値に関して、両コホートで同様な転帰が観察された。8例の患者(各コホート中の4例)で、少なくとも6カ月持続する安定(SD)の証拠が認められた。PFS及びOSの中央値は、全集団でそれぞれ6.6週間及び52.7週間であった。
【0433】
本研究の結果が、白金感受性及び白金抵抗性集団における、2つのフェーズII無作為試験につながった。TOC3258gの研究において、白金系化学療法に抵抗性である進行性卵巣癌、原発性腹膜癌又は卵管癌の患者で、ゲムシタビン+ペルツズマブ対ゲムシタビン+プラセボの有効性及び安全性を評価した(Amlerら J Clin Oncol 26巻:5552頁(2008年))。本研究では、増悪時に患者を交差させて、ペルツズマブを投与した。PFSの中央値は、ゲムシタビン+プラセボアームで2.6カ月、ゲムシタビン+ペルツズマブアームで2.9カ月であった。OSの中央値は、治療アーム間で同様であった。最も多くみられた有害事象(AE)のうち、ペルツズマブ治療コホートで増加した(少なくとも6例の患者で)ものとしては、疲労、嘔気、下痢、背部痛、消化不良、口内炎、頭痛、鼻出血、鼻漏、発疹及びグレード3〜4の好中球減少症が挙げられる。
【0434】
BO17931の研究においては、白金系療法の6カ月後に再発した卵巣癌の患者149例を、ペルツズマブと共に又はペルツズマブを用いずにパクリタキセル及びカルボプラチン又はゲムシタビンを併用投与するように無作為化した。6つの治療周期の後、化学療法は中止し、化学療法+ペルツズマブアームの患者に、さらに11周期までにわたってペルツズマブのみの投与を継続した(ペルツズマブは合計17周期)。全群で、PFS及びOSに有意差はなかった。PFSの中央値は、化学療法+ペルツズマブ群では34.1週間であるのに対して、化学療法単独群では31.3週間であったが;6〜12カ月の無治療期間を用いたHER3 mRNA発現の探索的なサブセット分析は、高レベルのHER3 mRNAを発現する患者で、臨床的ベネフィットに向かう傾向を示した(Kayeら J Clin Oncol 26巻:5520頁(2008年))。
【0435】
両方の無作為フェーズII研究に登録された患者からの保管組織試料を、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)によって、HER受容体EGFR、HER2、HER3及び2つのHERリガンド:アンフィレグリン及びベタセルリンのmRNA発現レベルについて調べた。
【0436】
腫瘍HER3 mRNA発現のみに、PFSの有意差が認められた。臨床奏効を達成した患者では、ゲムシタビン+ペルツズマブアームの患者9例及びゲムシタビン+プラセボアームの患者3例でPRが観察された。PRが認められたゲムシタビン+ペルツズマブアームの患者6例は、腫瘍HER3 mRNAレベルが、中央値レベルよりも低かった。対照的に、腫瘍HER3 mRNAレベルが研究対象集団の中央値レベルよりも低いゲムシタビン+プラセボブアームの患者は、PRを経験しなかった。さらに6例の患者がPRを達成し、これらの患者は全て、研究対象集団の中央値レベル以上の腫瘍HER3 mRNAレベルを有していた。これらの患者のうち、3例にゲムシタビン+ペルツズマブを投与し、3例にゲムシタビン+プラセボを投与したが、この集団においてペルツズマブの効果は示唆されなかった。
【0437】
HER3 mRNA発現が低い(研究対象集団の中央値レベルより低い)患者では、PFSハザード比(HR)が0.32であり、これに対してHER3 mRNA発現が中央値レベル以上の患者では1.68であり、即ち、ペルツズマブの追加効果は反対方向に向いていた。HER3 mRNA発現が低い患者ではOSに有意なベネフィットが検出されなかったが、ペルツズマブを投与した患者では、OSをがより大きくなる傾向が観察された。高HER3 mRNA発現を示す患者のOSは、HRが1.59であった。
【0438】
予後値を評価するために、HER3 mRNA発現を、ゲムシタビン+プラセボアームの患者で、PFS及びOSと相関させた。PFS中央値は、HER3 mRNA発現が高い患者の5.5カ月と比較して、HER3 mRNA発現が低い患者(n=35)では1.4カ月であった。同様に、OSは、HER3 mRNA発現が高い患者の18.2カ月と比較して、HER3 mRNA発現が低い患者では8.4カ月であった。
【0439】
BO17931の研究においては、HER3 mRNA発現が低い(この研究対象集団の中央値レベルより低い)患者では、治療効果は見られなかった。しかし、無治療期間6〜12カ月の患者の探索的分析において、化学療法剤とペルツズマブの併用ではPFSに関して臨床的ベネフィットに向かう傾向を示した。
【0440】
本研究の概要
これは、2つのパートからなる多施設共同試験であり、非無作為安全性導入(run−in)のパート1及び無作為二重盲検のパート2を含む。
【0441】
パート1は、2種の化学療法剤(トポテカン又はパクリタキセル)との新しい組み合わせでのペルツズマブの安全性及び忍容性を評価するために行う。この試験のパート2は、化学療法剤(トポテカン、パクリタキセル又はゲムシタビン)と併用したペルツズマブの2アームの前向き多施設共同無作為二重盲検プラセボ対照比較試験である。固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)version 1.1による増悪、CA−125評価可能な疾患のGynecologic Cancer Intergroup(GCIG)基準による増悪、許容されない毒性、同意の撤回又は死亡に至るまで、患者に試験薬を投与する。PFSはこの試験のパート1で評価するが、コホート当たりの患者及びPFS事象の数が少ないため、結果は記述にとどまる。本研究のパート1の試験デザインは、
図30に示されている。
【0442】
試験のパート2において、患者は以下の何れかを受けるように1:1の比率で無作為化する:
− アームA:ペルツズマブと化学療法剤(トポテカン、パクリタキセル又はゲムシタビン)との併用、又は
− アームB:ペルツズマブ−プラセボ+化学療法剤(トポテカン、パクリタキセル又はゲムシタビン)。
【0443】
研究薬の割り当ては、患者がペルツズマブ又はペルツズマブ−プラセボのいずれが投与されるかに関して二重盲検である。割り当てる化学療法剤は、治験責任医師の裁量である。
【0444】
試験のパート2の層別化因子は、以下の通りである:
− 選択化学療法剤コホート(トポテカン対パクリタキセル対ゲムシタビン)。
− 抗血管新生療法の前治療歴(あり対なし)。患者が抗血管新生薬に関する盲検試験に以前に参加したことがある場合、患者は、以前に抗血管新生薬を受けたことがわかっている患者と同じ層に登録する。
− 白金療法からの無治療期間(TFI)(厳密には、1回目の研究治療から3カ月未満対3〜6カ月(3カ月及び6カ月を含む))。
【0445】
本研究のパート2の試験デザインは、
図31に示されている。
【0446】
本研究の主目的:
パート1:本研究のパート1の主目的は、ペルツズマブとトポテカン又はパクリタキセルの何れかとの併用の安全性及び忍容性を判定することである。
【0447】
パート2:本研究のパート2の主目的は、PFSによって測定された場合に、ペルツズマブ+化学療法剤がプラセボ+化学療法剤より優れているかどうかを判定することである。
【0448】
本研究の副次的目的:
パート1:本研究のパート1の副次的目的は、ペルツズマブとトポテカン又はパクリタキセル何れかとの併用のPFSを記述的に評価することである。
【0449】
パート2:本研究のパート2の副次的目的は、以下に関して、ペルツズマブ+化学療法剤がプラセボ+化学療法剤より優れているかどうかを判定することである:
− OS。
− 奏効率。
− 生物学的無増悪期間(progression−free interval)(PFI
BIO)。
− 安全性及び忍容性。
− QoL。
【0450】
有効性評価項目(efficacy outcome measure)
【0451】
以下の有効性評価項目を、試験のパート1で測定する:
− 試験のパート1への無作為化から、RECIST version1.1による増悪もしくはCA−125評価可能な疾患のGCIG基準による増悪又は全死因死亡(何れか早く到来する方)までの期間と定義されるPFS。
【0452】
試験のパート2の有効性評価項目は、以下の通りである:
− 試験のパート2への無作為化から、RECIST version1.1による増悪もしくはCA−125評価可能な疾患のGCIG基準による増悪又は全死因死亡(何れか早く到来する方)までの期間と定義されるPFS。
− 試験のパート2への無作為化から全死因死亡までの期間と定義されるOS。
− RECIST version1.1に基づき、試験のパート2の治療の開始から増悪/再発までに記録された最良の奏効と定義される最良(確認)総合効果(BOR)(試験のパート2で開始された治療以後に記録された最も小さい測定値をPDの参照と考える)によって評価される奏効率(ORR)。患者は、レスポンダーとなるためには、部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)の2つの連続評価を得ている必要がある。PR又はCRは、少なくとも4週間の間隔を隔てた2つの連続した腫瘍評価によって確認されなければならない。ベースラインにおいて測定可能な疾患を有する患者のみを、客観的腫瘍縮小効果の分析に含める。
− RECIST version 1.1に従いかつCA−125の50%の奏効基準を用いて奏効がある患者をレスポンダーと定義し、RECISTに従って定義された奏効のみを有する患者をRECISTレスポンダーと定義する。RECISTによると奏効がないが、CA−125の50%奏効基準を用いて定義される奏効がある患者をCA−125レスポンダーと定義する。
−血清CA−125(CGIG基準に従って評価される)の漸進的な連続上昇に基づいて、試験のパート2への無作為化の日から、CA−125レベルの正常上限の2倍まで(正常な治療前CA−125を有する患者、又は高い治療前CA−125を有するが治療初期に正常化した患者について)又はナディアの2倍まで(ベースラインCA−125が高く、そのレベルが治療中に正常化しなかった患者について)の増加が最初に実証されるまでの期間と定義されるPFI
BIO。
【0453】
安全性評価項目(safety outcome measure)
本研究のパート1において、安全性及び忍容性は、患者が3周期の治療を受けた後に評価する。
【0454】
加えて、本研究の安全性評価項目は、本研究のパート1及びパート2の両方において評価し、以下の通りである:
− 全AEの発生率、性質及び重症度、重篤有害事象(SAE)、NCI−CTCAE version 4.0でグレード3以上のAE、並びに研究薬の早期離脱を引き起こしたAE。
− 研究及び研究治療からの早期離脱。
− 心臓障害/うっ血性心不全の発生。
− 臨床検査の異常。
− 左室駆出率。
【0455】
組み入れ基準
1.年齢18才以上の女性患者。
2.HER3 mRNA発現レベルが低い(qRT−PCRによってCOBAS z480(登録商標)機器で評価された濃度比が2.81以下)。
3.組織学的又は細胞学的に確認及び実証された白金抵抗性又は不応性(最低4つの白金療法周期の完了から6カ月以内の増悪又は白金療法中の増悪と定義される)の上皮性卵巣癌。
4.RECIST version1.1による少なくとも1つの測定可能な病変及び/もしくは測定不可能な疾患、又はGynecologic Center Intergroup(GCIG)基準による癌抗原−125(CA−125)評価可能な疾患。以下の組織型は適格である:
− 他に特定されない腺癌。
− 透明細胞腺癌。
− 類内膜腺癌。
− 悪性Brenner腫瘍。
− 悪性ミュラー管混合腫瘍を含む混合型上皮癌
− 粘液性腺癌。
− 漿液性腺癌。
− 移行上皮癌。
− 未分化癌。
5.米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス0〜2。
6.LVEF 55%以上。
【0456】
ペルツズマブの投与量及び投与
ペルツズマブ及びペルツズマブ−プラセボを、第1の治療周期の1日目に840mgの負荷用量として、続いてその後の各3週間周期の1日目に420mgを、点滴静注として投与する。ペルツズマブ/ペルツズマブ−プラセボの初回点滴は60分間かけて投与し、座位で60分間の観察期間後、点滴の忍容性が良好な場合には、その後の点滴を30分間かけて投与してもよく、続いて30分間の観察期間後に、化学療法剤を投与する。前投薬は、地域のやり方に従いかつ選択した化学療に応じて実施すべきである。
【0457】
トポテカンの投与量及び投与
トポテカンは、製品特性概要の指示に従って、3週間毎に1日目〜5日目に毎日、1.25mg/m
2を30分間の点滴静注として投与するべきである。
【0458】
パクリタキセルの投与量及び投与
パクリタキセルは、1日目、8日目、15日目及び22日目に80mg/m
2を1時間のi.v.点滴として投与すべきである。薬剤師は、80mg/m
2用量の調製及び投与の参考のために製品特性概要に従うべきである。
【0459】
ゲムシタビンの投与量及び投与
ゲムシタビン(本研究のパート2のみ)は、製品特性概要で記載された指示に従って、3週間毎に1日目及び8日目に1000mg/m
2を30分間の点滴静注として投与すべきである。
【0460】
HER3 mRNAの発現
患者には、試験への参加に同意する前に、他のHERファミリー受容体、例えば、HER2のmRNA及びタンパク質レベルを含めて、HER3 mRNAレベルを評価するための、原発性腫瘍組織試料の収集及び検査に特に同意するよう求める。腫瘍が低レベルのHER3 mRNAを発現している患者のみを、試験の参加に適格とする。
【0461】
HER3 mRNAレベルの初回スクリーニング中に、HER3評価と並行して、HERファミリーの他の受容体(例えば、EGFR、HER2又はHER4)のmRNAレベル及び/又はタンパク質レベルを評価して、mRNAレベルによるHERファミリー受容体の状態のより完全な像を得る。
【0462】
研究適格性のために規定されるカットオフは、Roche Molecular Diagnosticsにより提供される「COBAS(登録商標)HER2&HER3(qRT−PCR)mRNA発現アッセイ」を用いてCOBASz480(登録商標)機器でqRT−PCRによって評価した場合の濃度比が2.81以下と定義する。カットオフ定義の理論的根拠は、以前の試験におけるカットオフモデル、及びアッセイが新しい機器COBASz480(登録商標)に切り替えられたために導入する必要があった変換関数に基づく。スクリーニングした患者の40〜50%が、2.81のカットオフ未満のHER3 mRNAレベルを有すること、及び低レベルのHER3 mRNAを発現している患者の30%が、他の組み入れ基準/除外基準のために登録に不適格であることが予測される。
【0463】
最初の手術からの原発性腫瘍のホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍検体の提出が、スクリーニング前の全患者に必要とされ;細胞診検体に置き換えることは許容されない。HER3 mRNA発現レベル、並びに他のHERファミリー受容体のmRNA発現及びタンパク質発現レベルについて、qRT−PCRアッセイ及びIHCを用いて、患者を評価する。HER受容体mRNA/タンパク質発現のこのような評価は、最初の手術後でかつスクリーニング前の任意の時点で患者のインフォームドコンセントを得た後に行う。
【0464】
ペルツズマブとトポテカン又はパクリタキセルとの併用は、上皮性卵巣癌、原発性腹膜癌又は卵管癌の患者において安全かつ効果的であることが予測される。
【0465】
加えて、ペルツズマブ+化学療法剤(トポテカン、パクリタキセル又はゲムシタビン)は、有効性がPFSによって測定さた場合、上皮性卵巣癌、原発性腹膜癌又は卵管癌の患者においで、プラセボ+化学療法剤より優れていると予測される。
本出願は、ファーストインクラスのHER2二量体化阻害剤であるペルツズマブの使用及びそれを含む製造品を記載する。詳細には、本出願は、HER2陽性乳癌患者集団において無増悪生存期間を延長するための方法;心毒性を増加することなくHER2陽性癌癌を治療するために2種のHER2抗体を併用するための方法;早期HER2陽性乳癌を治療するための方法;同一点滴静注バッグからペルツズマブとトラスツズマブの混合物を同時投与することによってHER2陽性癌を治療するための方法;HER2陽性転移性胃癌を治療するための方法;ペルツズマブ、トラスツズマブ及びビノレルビンでHER2陽性乳癌を治療するための方法;ペルツズマブ、トラスツズマブ及びアロマターゼ阻害剤でHER2陽性乳癌を治療するための方法;並びに低HER3卵巣癌、原発性腹膜癌又は卵管癌を治療するための方法を記載する。本出願はまた、ペルツズマブを含むバイアルと、安全性及び/又は有効性データを提供する添付文書とを含む製造品;前記製造品の製造方法;並びにそれに関連するペルツズマブの安全かつ効果的な使用を確実にする方法を記載する。加えて、本出願は、癌患者への投与に好適な、ペルツズマブとトラスツズマブの安定な混合物を含有する点滴静注(IV)バッグを記載する。