(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ネットワーク内に設けられた1又は複数のDC/DCコンバータ装置と、前記ネットワーク内の各前記DC/DCコンバータ装置を集中管理する集中管理装置とを有する直流電力ネットワークシステムにおいて、
前記DC/DCコンバータ装置は、
直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、
前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、
前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記集中管理装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の各前記入出力端子の目標電圧をそれぞれ指示し、
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部は、
前記コンバータ部の各前記入出力端子について、前記集中管理装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、
算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御する
ことを特徴とする直流電力ネットワークシステム。
ネットワーク内に設けられた1又は複数のDC/DCコンバータ装置と、前記ネットワーク内の各前記DC/DCコンバータ装置を集中管理する集中管理装置とを有する直流電力ネットワークシステムにおける前記DC/DCコンバータ装置の制御方法であって、
前記DC/DCコンバータ装置は、
直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、
前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、
前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部と
を有し、
前記集中管理装置が、各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の各前記入出力端子の目標電圧をそれぞれ指示する第1のステップと、
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部が、前記コンバータ部の各前記入出力端子について、前記集中管理装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御する第2のステップと
を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0016】
(1)第1の実施の形態
(1−1)原理
図1に示すように、直流電力を双方向に移送可能な汎用の双方向DC/DCコンバータ1において、一方の入出力端子(以下、これを第1の入出力端子と呼ぶ)1A側の電圧値がV
A、他方の入出力端子(以下、これを第2の入出力端子と呼ぶ)1B側の電圧値がV
Bである場合について考える。
【0017】
ここでは、かかる双方向DC/DCコンバータ1は、出力電圧を一定に保つ定電圧機能(CV機能)が搭載されているものとする。また双方向DC/DCコンバータ1には、CV機能における目標電圧の設定値(以下、これをCV設定値と呼ぶ)として、第1の入出力端子1A側にはV
A_s、第2の入出力端子1B側にはV
B_sを設定するものとする。
【0018】
ここで、双方向DC/DCコンバータ1における第1の入出力端子1A側における電圧値V
A及びCV設定値V
A_s間の電圧差をΔV
A、双方向DC/DCコンバータ1における第2の入出力端子1B側における電圧値V
B及びCV設定値V
B_s間の電圧差をΔV
B、双方向DC/DCコンバータ1の電力出力定数をKとし、双方向DC/DCコンバータ1の第1の入出力端子1A側から第2の入出力端子1B側に電力を移送する方向を正方向とすると、双方向DC/DCコンバータ1から出力される電力Pは、次式
【数1】
のように表すことができる。
【0019】
なお(1)式における電圧差ΔV
Aは、次式
【数2】
により表され、電圧差ΔV
Aは、次式
【数3】
により表される。
【0020】
これら(1)〜(3)式からも明らかなように、双方向DC/DCコンバータ1では、第1及び第2の入出力端子1A,1Bにそれぞれ設定するCV設定値V
A_s,V
B_sの大きさを調整することによって、かかる電力Pの大きさ及び方向を制御することができる。
【0021】
例えば、第1の入出力端子1Aに対するCV設定値V
A_sを下げ、又は、第2の入出力端子1Bに対するCV設定値V
B_sを上げることによって第2の入出力端子1B側に出力される電力Pの値を上げることができ、逆に、第1の入出力端子1Aに対するCV設定値V
A_sを上げ、又は、第2の入出力端子1Bに対するCV設定値V
B_sを下げることによって第2の入出力端子1B側に出力される電力Pの値を下げることができる。
【0022】
また第1の入出力端子1A側の電圧差ΔV
Aが第2の入出力端子1B側の電圧差ΔV
Bよりも大きくなるようにこれらの第1及び第2の入出力端子1A,1Bに対するCV設定値V
A_s,V
B_sの値を設定することによって、第2の入出力端子1B側から電力Pを出力するように双方向DC/DCコンバータ1を動作させることができる。
【0023】
逆に、第1の入出力端子1A側の電圧差ΔV
1Aが第2の入出力端子1B側の電圧差ΔV
Bよりも小さくなるようにこれらの第1及び第2の入出力端子1A,1Bに対するCV設定値V
A_s,V
B_sの値を設定することによって、第1の入出力端子1A側から電力Pを出力するように双方向DC/DCコンバータ1を動作させることができる。
【0024】
以下、このような双方向DC/DCコンバータの制御方式を利用した本実施の形態の直流電力ネットワークについて説明する。
【0025】
(1−2)第1の実施の形態による直流電力ネットワークシステムの構成
図2は、本実施の形態による直流電力ネットワークシステム10を示す。この直流電力ネットワークシステム10は、電力線11を介して相互に接続された複数のDC/DCコンバータ装置12と、これら複数のDC/DCコンバータ装置12を集中管理するEMS13とがネットワーク14を介して接続されて構成される。
【0026】
各DC/DCコンバータ装置12は、
図3に示すように、DC/DCコンバータ部24を構成するDC/DCコンバータ20と、第1の電圧計21、第2の電圧計22及び制御部23とを備えて構成される。
【0027】
DC/DCコンバータ20は、汎用の双方向DC/DCコンバータであり、制御部23の制御に基づいて、第1の入出力端子20A側の直流電力を昇圧又は降圧して第2の入出力端子20B側に移送し、又は、第2の入出力端子20B側の直流電力を昇圧又は降圧して第1の入出力端子20A側に移送する。
【0028】
第1の電圧計21は、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側に接続された汎用の電圧計であり、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側の電圧を計測し、計測結果を制御部23に出力する。また第2の電圧計22は、DC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側に接続された電圧計であり、DC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側の電圧を計測し、計測結果を制御部23に出力する。
【0029】
制御部23には、DC/DCコンバータ20の出力電圧を一定に保つCV機能に加えて、出力電流を一定に保つ定電流機能(CC機能)が搭載される。ただし、CC機能はDC/DCコンバータの安全性を考慮して搭載されたもので、本実施の形態においては必須の機能ではない。
【0030】
制御部23は、第1電圧計21により計測されたDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側の電圧と、第2電圧計22により計測されたDC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側の電圧と、EMS13からネットワーク14を介して与えられる制御コマンドとに基づいてDC/DCコンバータ20をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0031】
実際上、本実施の形態の場合、EMS13は、制御部23に対して、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側のCV設定値V
A_s及び第2の入出力端子20B側のCV設定値V
B_sと、電力出力定数Kとをそれぞれ指定した制御コマンドを適宜送信する。
【0032】
そして、この制御コマンドを受信した制御部23は、制御対象のDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側のCV設定値V
A_s及び当該DC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側のCV設定値V
B_sと、電力出力定数Kとをその制御コマンドにおいて指定された値に内部設定し、内部設定したこれらの値に基づいてDC/DCコンバータ20の動作をPWM制御する。
【0033】
図4は、このような制御部23により実行される制御処理の処理手順を示す。制御部23は、EMS13から送信されてきた上述の制御コマンドを受信すると、この
図4に示す制御処理を開始し、まず、制御コマンドにおいて指定されたDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側及び第2の入出力端子20B側の各CV設定値V
A_s,V
B_sと、電力出力定数KとをDC/DCコンバータ20を制御する際のパラメータ値としてそれぞれ内部設定する(S1)。
【0034】
続いて、制御部23は、第1の電圧計21により計測されたDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側の電圧の計測値(以下、これを第1の電圧計測値V
Aと呼ぶ)と、第2の電圧計22により計測されたDC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側の電圧の計測値(以下、これを第2の電圧計測値V
Bと呼ぶ)とをそれぞれ取得する(S2)。
【0035】
そして制御部23は、ステップS1で内部設定したDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側のCV設定値V
A_s及びステップS2で取得した入力側電圧計測値V
A間の電圧差ΔV
Aと、ステップS1で内部設定したDC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側のCV設定値V
B_s及びステップS2で取得した出力側電圧計測値V
B間の電圧差ΔV
Bとをそれぞれ上述の(2)式及び(3)式により算出する(S3)。
【0036】
次いで、制御部23は、次式
【数4】
で表されるステップS3で算出した第1の入出力端子20A側の電圧差ΔV
Aと、第2の入出力端子20B側の電圧差ΔV
Bとの差分Dを算出し(S4)、算出した差分Dの値が0よりも大きいか否かを判断する(S5)。
【0037】
そして制御部23は、この判断で肯定結果を得ると、第2の入出力端子20B側に上述の(1)式で表される大きさの電力Pを出力するようDC/DCコンバータ20をPWM制御し(S6)、この後ステップS2に戻る。そして制御部23は、この後、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0038】
これに対して、制御部23は、ステップS5の判断で否定結果を得ると、ステップS4で算出した差分D
1の値が0未満であるか否かを判断する(S7)。そして制御部23は、この判断で肯定結果を得ると、第1の入出力端子20A側に次式
【数5】
で表される大きさの電力Pを出力するようDC/DCコンバータ20をPWM制御し(S8)、この後ステップS2に戻る。そして制御部23は、この後、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0039】
また制御部23は、ステップS7の判断で否定結果を得ると、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側及び第2の入出力端子20B側のいずれにも電力を出力しないようDC/DCコンバータ20をPWM制御し(S9)、この後、ステップS2に戻る。そして制御部23は、この後、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0040】
(1−3)本実施の形態の効果
以上の構成を有する本実施の形態の直流電力ネットワークシステム10では、EMS13は、各DC/DCコンバータ装置12をリアルタイムで逐次制御する必要がなく、各DC/DCコンバータ装置12に対してDC/DCコンバータ20の各入出力端子20A,20BのCV設定値V
A_s,V
B_sと、DC/DCコンバータ20の電力出力定数Kとを指定した制御コマンドを適宜DC/DCコンバータ装置12に送信すれば良いため、EMS13の負荷を軽減させることができる。
【0041】
また本直流電力ネットワークシステム10では、かかるCV設定値V
A_s,V
B_s及び電力出力定数Kを指示するだけでDC/DCコンバータ装置12の出力電力の大きさ及び方向を制御することができるため、DC/DCコンバータ装置12の出力電力の大きさや方向の切り替えが容易であり、EMS13によるDC/DCコンバータ装置12の制御を容易化させることができる。
【0042】
さらに本直流電力ネットワークシステム10では、例えば、EMS13に障害が発生したり、EMS13及び各DC/DCコンバータ装置12間の通信障害が発生した場合においても各DC/DCコンバータ装置12がEMS13により設定されたCV設定値V
A_s,V
B_s及び電力出力定数Kに従って動作し続けるため、EMS13の故障や、EMS13及び各DC/DCコンバータ装置12間の通信障害に起因する停電等が発生するおそれがない。
【0043】
よって本実施の形態によれば、制御を容易化し行い得る安全性の高い直流電力ネットワークシステム10を構築することができる。
【0044】
さらに、本直流電力ネットワークシステム10では、EMS13は、DC/DCコンバータ装置12ごとにCV設定値V
A_s,V
B_s及び電力出力定数Kをそれぞれ設定するだけでシステム内のすべてのDC/DCコンバータ装置12を個別に制御することができるため、DC/DCコンバータ装置12間の個体差を考慮する必要がなく、またシステムへのDC/DCコンバータ装置12の追加も容易に行うことができる。また、この制御は、実計測値と設定値の差分を基本に実行するため、計測器の設定及びメンテナンスが容易である。
【0045】
さらに本直流電力ネットワークシステム10によれば、ネットワーク内で負荷変動や、これに伴う電力変動が発生した場合にも対応するDC/DCコンバータ装置12のCV設定値V
A_s,V
B_s及び電力出力定数Kを変更するだけで自動的にエネルギーバランスが調整されるという効果をも得ることができる。
【0046】
(2)第2の実施の形態
(2−1)原理
次に、
図5に示すように、それぞれ直流電力を双方向に移送可能な第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31,32,33をT字状に接続したコンバータ部30の制御方式について説明する。
【0047】
このコンバータ部30において、第1の双方向DC/DCコンバータ31における第2及び第3の双方向DC/DCコンバータ32,33と接続されていない入出力端子30A側の電圧がV
1A、第2の双方向DC/DCコンバータ32における第1及び第3の双方向DC/DCコンバータ31,33と接続されていない入出力端子32A側の電圧がV
2A、第3の双方向DC/DCコンバータ33における第1及び第2の双方向DC/DCコンバータ31,32と接続されていない入出力端子33A側の電圧がV
3Aである場合について考える。なお、以下においては、これら第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33において他の第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33と接続されていない入出力端子31A,32A,33Aをそれぞれ外部入出力端子31A〜33Aと呼ぶものとする。
【0048】
ここでは、かかる第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33は、出力電圧を一定に保つ定電圧機能(CV機能)が搭載されているものとする。また第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33の各外部入出力端子31A〜33Aに対して、それぞれCV機能における目標電圧(CV設定値)としてV
1A_s,V
2A_s,V
3A_sが設定されていると共に、第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33の電力出力定数として、それぞれK
1,K
2,K
3が設定されているものとする。
【0049】
ここで、第1の双方向DC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側の電圧値V
1A及びCV設定値V
1A_s間の電圧差をΔV
1A、第2の双方向DC/DCコンバータ32の外部入出力端子32A側の電圧値V
2A及びCV設定値V
2A_s間の電圧差をΔV
2A、第3の双方向DC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側の電圧値V
3A及びCV設定値V
3A_s間の電圧差をΔV
3Aとする。また第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33において、外部入出力端子31A〜33A側に電流が流れる方向を正方向とする。
【0050】
この場合、第1の双方向DC/DCコンバータ31の外部入出力端子側31Aから出力される電力P
1は、次式
【数6】
のように表すことができる。また第2の双方向DC/DCコンバータ32の外部入出力端子21A側から出力される電力P
2は、次式
【数7】
のように表すことができ、第3の双方向DC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側から出力される電力P
3は、次式
【数8】
のように表すことができる。
【0051】
なお(6)〜(8)式における電圧差ΔV
1Aは、次式
【数9】
により表され、電圧差ΔV
2Aは、次式
【数10】
により表され、電圧差ΔV
3Aは、次式
【数11】
により表される。
【0052】
これら(6)〜(11)式からも明らかなように、
図4の双方向DC/DCコンバータ部30では、第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33の外部入出力端子31A〜33Aにそれぞれ設定するCV設定値V
1A_s,V
2A_s,V
3A_sの大きさを調整することによって、コンバータ部30の各外部入出力端子31A〜33Aからそれぞれ出力される電力P
1、P
2,P
3の大きさ及び出力方向を制御することができる。
【0053】
例えば、第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31A側から第2のDC/DCコンバータ32の外部入出力端子32A側及び第3のDC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側に電力が移送されている状態において、第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31Aに対するCV設定値V
1A_sを下げ、又は、第2のDC/DCコンバータ32の外部入出力端子32Aに対するCV設定値V
2A_sや第3のDC/DCコンバータ33の外部入出力端子33Aに対するCV設定値V
3A_sを上げることによって、第2のDC/DCコンバータ32の外部入出力端子32A側に出力する電力P
2の値や第3のDC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側に出力する電力P
3の値を上げることができる。
【0054】
また第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31A側の電圧差ΔV
1Aが、第1〜第3のDC/DCコンバータ31〜33の外部入出力端子31A〜33A側の各電圧差ΔV
1A〜ΔV
3Aの平均値よりも大きくなるようにこれら第1〜第3のDC/DCコンバータ31〜33の外部入出力端子31A〜33Aに対するCV設定値V
1A_s〜V
3A_sの値を設定することによって、第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31A側から電力P
1を出力するようにDC/DCコンバータ部30を動作させることができる。
【0055】
(2−2)第2の実施の形態によるDC/DCコンバータシステムの構成
図6は、
図3について上述した第1の実施の形態のDC/DCコンバータ装置12に代えて、
図2の直流電力ネットワークシステム10に適用可能な第2の実施の形態によるDC/DCコンバータ装置40を示す。このDC/DCコンバータ装置40は、第1〜第3のDC/DCコンバータ41,42,43から構成されるコンバータ部44と、第1〜第2の電圧計45,45,46と、制御部48及びコンバータ部制御部49とを備えて構成される。
【0056】
第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43は、いずれもCV/CC機能(定電圧/定電流制御機能)が搭載された双方向DC/DCコンバータである。第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43は、コンバータ部制御部49の制御に基づいて、一方の入出力端子でなる外部入出力端子41A,42A,43A側の直流電力を昇圧又は降圧して他方の入出力端子41B,42B,43B側に移送し、又は、他方の入出力端子41B〜43B側の直流電力を昇圧又は降圧して外部入力端子41A〜43A側に移送する。
【0057】
第1の電圧計45は、第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側に接続された汎用の電圧計であり、第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側の電圧を計測し、計測結果を制御部48に出力する。また第2の電圧計46は、第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側に接続された汎用の電圧計であり、第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側の電圧を計測し、計測結果を制御部48に出力する。同様に、第3の電圧計47は、第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側に接続された汎用の電圧計であり、第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側の電圧を計測し、計測結果を制御部48に出力する。
【0058】
制御部48は、第1〜第3の電力計45〜47の計測結果と、本DC/DCコンバータ装置40が存在する直流電力ネットワークシステム内のすべてのDC/DCコンバータ装置を統括管理するEMS50からネットワーク51を介して与えられる制御コマンドとに基づいて、コンバータ部制御部49を介して第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43を制御する制御装置である。
【0059】
実際上、本実施の形態の場合、EMS50は、制御部48に対して、第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43AのCV設定値V
1A_s、V
2A_s、V
3A_sと、第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電力出力定数K
1、K
2,K
3とをそれぞれ指定した制御コマンドを適宜送信する。
【0060】
そして、この制御コマンドを受信した制御部48は、制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43Aの各CV設定値V
1A_s〜V
3A_sと、第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電力出力定数K
1〜K
3とをその制御コマンドにおいて指定された値に内部設定する。
【0061】
また制御部48は、これらの値に基づいて、第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ41〜43の各外部入出力端子側41A〜43Aからそれぞれ出力すべき電力P
1〜P
3の値を(6)〜(8)式によりそれぞれ算出し、算出結果をしたこれら電力P
1〜P
3の値をコンバータ部制御部49にそれぞれ送信する。
【0062】
またコンバータ部制御部49は、制御部48から与えられた第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の各外部入出力端子側41A〜43Aから、それぞれ制御部48により指定された大きさの電力P
1〜P
3を出力するようこれら第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43をPWM制御する。
【0063】
図7は、このような制御部48により実行される制御処理の処理手順を示す。この制御処理は、EMS50から送信されてきた上述の制御コマンドを制御部48が受信すると開始される。そして制御部48は、まず、制御コマンドにおいて指定された第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の各外部入出力端子41A〜43Aに対するCV設定値V
1A_s〜V
3A_sと、これら第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電力出力定数K
1〜K
3とをコンバータ部44を制御する際のパラメータ値としてそれぞれ内部設定する(S10)。
【0064】
続いて、制御部48は、第1の電圧計45により計測された第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側の電圧の計測値(以下、これを第1の電圧計測値V
1Aと呼ぶ)と、第2の電圧計46により計測された第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側の電圧の計測値(以下、これを第2の電圧計測値V
2Aと呼ぶ)と、第3の電圧計47により計測された第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側の電圧の計測値(以下、これを第3の電圧計測値V
3Aと呼ぶ)とをそれぞれ取得する(S11)。
【0065】
そして制御部48は、ステップS10で内部設定した第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側のCV設定値V
1A_s及びステップS11で取得した第1の電圧計測値V
1A間の電圧差ΔV
1Aと、ステップS10で内部設定した第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側のCV設定値V
2A_s及びステップS11で取得した第2の電圧計測値V
2B間の電圧差ΔV
2Aと、ステップS10で内部設定した第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側のCV設定値V
3A_s及びステップS11で取得した第3の電圧計測値V
3B間の電圧差ΔV
3Aとを、それぞれ上述の(9)式〜(11)式により算出する(S12)。
【0066】
次いで、制御部48は、ステップS10で内部設定した第1のDC/DCコンバータ41の電力出力定数K
1と、ステップS12で取得した電圧差ΔV
1Aとに基づいて第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41Aから出力すべき電力P
1の値を算出し、算出結果をコンバータ部制御部49に出力することにより、当該コンバータ部制御部49を介して第1のDC/DCコンバータ41の動作を制御する(S13)。
【0067】
また制御部48は、ステップS10で内部設定した第2のDC/DCコンバータ42の電力出力定数K
2と、ステップS12で取得した電圧差ΔV
2Aとに基づいて第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42Aから出力すべき電力P
2の値を算出し、算出結果をコンバータ部制御部49に出力することにより、当該コンバータ部制御部49を介して第2のDC/DCコンバータ42の動作を制御する(S14)。
【0068】
さらに制御部48は、ステップS10で内部設定した第3のDC/DCコンバータ43の電力出力定数K
3と、ステップS12で取得した電圧差ΔV
3Aとに基づいて第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43Aから出力すべき電力P
3の値を算出し、算出結果をコンバータ部制御部49に出力することにより、当該コンバータ部制御部49を介して第3のDC/DCコンバータ43の動作を制御する(S15)。
【0069】
そして制御部48は、ステップS15の処理が完了するとステップS11に戻り、この後ステップS11〜ステップS15の処理を上述と同様にして繰り返し実行する。
【0070】
なおステップS13〜ステップS15の各ステップにおける制御部48の具体的な処理内容を
図8に示す。制御部48は、
図7のステップS13、ステップS14又はステップS15に進むと、この
図8に示す制御処理を開始し、まず、次式
【数12】
のようにして、
図7のステップS12で算出したそのとき制御対象としている第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電圧差ΔV
nA(n=1,2,3)と、これら電圧差ΔV
1A〜ΔV
3Aの平均値との差分D
nを算出する(S20)。
【0071】
続いて、制御部48は、ステップS20で算出した差分D
nの値が0よりも大きいか否かを判断する(S21)。そして制御部48は、この判断で肯定結果を得ると、そのときの制御対象が第1のDC/DCコンバータ41のときには(6)式、制御対象が第2のDC/DCコンバータ42のときには(7)式、制御対象が第3のDC/DCコンバータ43のときには(8)式で表される大きさの電力P
n(n=1,2,3)をその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入出力端子41A〜43A側から入力するようコンバータ部制御部49に指示を与え(S22)、この後、この
図8の処理を終了して
図7の制御処理に戻る。かくして、このときコンバータ部制御部49は、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43A側から指定された電力P
nを入力するようその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43をPWM制御する。
【0072】
これに対して、制御部48は、ステップS21の判断で否定結果を得ると、ステップS20で算出した差分D
nの値が0未満であるか否かを判断する(S23)。そして制御部48は、この判断で肯定結果を得ると、そのときの制御対象が第1のDC/DCコンバータ41のときには(6)式、制御対象が第2のDC/DCコンバータ42のときには(7)式、制御対象が第3のDC/DCコンバータ43のときには(8)式で表される大きさの電力P
n(n=1,2,3)をその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入出力端子41A〜43Aから出力するようコンバータ部制御部49に指示を与え(S24)、この後、この
図8の処理を終了して
図7の制御処理に戻る。かくして、このときコンバータ部制御部49は、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43Aに指定された電力P
nを出力するようその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43をPWM制御する。
【0073】
一方、制御部48は、ステップS23の判断で否定結果を得ると、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入出力端子41A〜43Aからの電力の入出力を停止するようコンバータ部制御部49に指示を与え(S25)、この後、この
図8の処理を終了して
図7の制御処理に戻る。かくして、このときコンバータ部制御部49は、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43Aから電力を入出力しないようにその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43を制御する。
【0074】
(2−3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のDC/DCコンバータ装置30によれば、DC/DCコンバータ部44が複数のDC/DCコンバータ41〜43から構成される場合においても、個々のDC/DCコンバータ41〜43を第1の実施の形態と同様に制御することでDC/DCコンバータ装置30全体を制御することができ、かくして第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、DC/DCコンバータ20,41〜43が双方向DC/DCコンバータである場合について述べたが、本発明はこれに限らず、DC/DCコンバータ20,41〜43が電力を一方向にのみ昇圧又は減圧して移送可能なDC/DCコンバータである場合にも本発明を適用することができる。
【0076】
また上述の第2の実施の形態においては、DC/DCコンバータ部44を3つのDC/DCコンバータ41〜43により構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、
図9に示すように、それぞれ一方の入出力端子61
1B,61
2B,……,61
nBが相互に接続された複数のDC/DCコンバータ61
1,61
2,……,61
nによりDC/DCコンバータ部60を構成するようにしてもよい。
【0077】
この場合、EMS13は、各DC/DCコンバータ装置に対して、そのDC/DCコンバータ装置のDC/DCコンバータ部60の入出力端子を構成する各DC/DCコンバータ61
1〜61
nの外部入出力端子(他のDC/DCコンバータ61
1〜61
nと接続されていない方の入出力端子61
1A,61
2A,……,61
nA)のCV設定値V
1_s,V
2_s,……,V
n_sと、これらDC/DCコンバータ61
1〜61
nの電力出力定数K
1,K
2,……,K
nとを指定した制御コマンドを適宜送信すればよい。
【0078】
またDC/DCコンバータ装置の制御部62は、この制御コマンドに基づいて、以下のようにしてDC/DCコンバータ部60を構成する各DC/DCコンバータ61
1〜61
nをそれぞれ制御すればよい。
【0079】
すなわち、制御部62は、まず、DC/DCコンバータ部60を構成する各DC/DCコンバータ61
1〜61
nの外部入出力端子61
1A〜61
nA(DC/DCコンバータ部60の入出力端子)について、当該外部入出力端子61
1A〜61
nAに接続された電力計63
1,63
2,……,63
nにより計測された電圧値をV
1A,V
2A,……,V
nAと、その外部入出力端子61
1A〜61
nAに対するCV設定値V
1_s〜V
n_sとの電圧差ΔV
k(k=1,2,……,n)を次式
【数13】
によりそれぞれ算出するようにする。
【0080】
また制御部62は、これらDC/DCコンバータ61
1〜61
nの外部入出力端子61
1A〜61
nAにそれぞれ入出力すべき各電力P
k(k=1,2,……,n)を次式
【数14】
によりそれぞれ算出するようにする。なお(14)式において、右辺の括弧内の第2項はDC/DCコンバータ部60を構成する各DC/DCコンバータ61
1〜61
nにおける電圧差ΔV
1A,ΔV
2A,……ΔV
nAの平均値である。
【0081】
そして制御部62は、算出した電力P
kが0よりも大きい場合には対応するDC/DCコンバータ61
1〜61
nの外部入出力端子61
1A〜61
nAから(14)式で与えられる電力P
kを入力し、算出した電力P
kが0未満の場合にはその外部入出力端子61
1A〜61
nAから(14)式で与えられる電力P
kを出力し、算出した電力P
kが0である場合にはその外部入出力端子61
1A〜61
nAからの電力の入出力を停止するように各DC/DCコンバータ61
1〜61
nを制御するようにする。
【0082】
このようにすれば、DC/DCコンバータ部60が4つ以上のDC/DCコンバータ61
1〜61
nにより構成されている場合にも、DC/DCコンバータ装置を第2の実施の形態と同様に制御することができる。
DC/DCコンバータ装置に、それぞれ直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、DC/DCコンバータ部の各DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部とを設け、制御部が、コンバータ部の各入出力端子について、上位装置(集中管理装置)から与えられる目標電圧と、電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差に基づいて、各DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御するようにした。