特許第6646790号(P6646790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646790直流電力ネットワークシステム並びにDC/DCコンバータ装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6646790
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】直流電力ネットワークシステム並びにDC/DCコンバータ装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20200203BHJP
   H02J 1/10 20060101ALI20200203BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20200203BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H02J1/00 306B
   H02J1/10
   H02J1/00 304H
   H02J13/00 311U
   H02M3/00 U
   H02M3/00 W
   H02M3/00 K
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-515684(P2019-515684)
(86)(22)【出願日】2019年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2019006924
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】500091520
【氏名又は名称】株式会社アイケイエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江村 文敏
(72)【発明者】
【氏名】築島 隆尋
(72)【発明者】
【氏名】平岡 貢一
(72)【発明者】
【氏名】高山 光正
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一仁
(72)【発明者】
【氏名】今井 尊史
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−018263(JP,A)
【文献】 特開2011−147232(JP,A)
【文献】 特開2009−148116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00−1/16
H02J 13/00
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内に設けられた1又は複数のDC/DCコンバータ装置と、前記ネットワーク内の各前記DC/DCコンバータ装置を集中管理する集中管理装置とを有する直流電力ネットワークシステムにおいて、
前記DC/DCコンバータ装置は、
直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、
前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、
前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記集中管理装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の各前記入出力端子の目標電圧をそれぞれ指示し、
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部は、
前記コンバータ部の各前記入出力端子について、前記集中管理装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、
算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御する
ことを特徴とする直流電力ネットワークシステム。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部は、
前記コンバータ部が1つの前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子における前記電圧差同士の差分に応じた電力を一方の前記入出力端子から他方の前記入出力端子に移送するように当該DC/DCコンバータを制御し、前記コンバータ部が複数の前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子について、当該入出力端子における前記電圧差と、前記コンバータ部の各前記入出力端子の前記電圧差の平均値との差分に応じた電力を当該入出力端子から入出力するように対応する前記DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電力ネットワークシステム。
【請求項3】
前記集中管理装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記目標電圧に加えて、当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータの電力出力定数をそれぞれ指示し、
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部は、
前記コンバータ部が1つの前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子における前記電圧差同士の差分に対して対応する前記DC/DCコンバータの前記電力出力定数を乗じた大きさの前記電力を、一方の前記入出力端子から他方の前記入出力端子に移送するように当該DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電力ネットワークシステム。
【請求項4】
前記集中管理装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記目標電圧に加えて、当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータの電力出力定数をそれぞれ指示し、
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部は、
前記コンバータ部が複数の前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子について、当該入出力端子における前記電圧差と、前記コンバータ部の各前記入出力端子の前記電圧差の平均値との差分に対して対応する前記DC/DCコンバータの前記電力出力定数を乗じた大きさの前記電力を、当該入出力端子から入出力するように当該DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電力ネットワークシステム。
【請求項5】
DC/DCコンバータ装置において、
直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、
前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、
前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記コンバータ部の各前記入出力端子について、上位装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、
算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御する
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記コンバータ部が1つの前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子における前記電圧差同士の差分に応じた電力を一方の前記入出力端子から他方の前記入出力端子に移送するように当該DC/DCコンバータを制御し、前記コンバータ部が複数の前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子について、当該入出力端子における前記電圧差と、前記コンバータ部の各前記入出力端子の前記電圧差の平均値との差分に応じた電力を当該入出力端子から入出力するように対応する前記DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項5に記載のDC/DCコンバータ装置。
【請求項7】
前記上位装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記目標電圧に加えて、当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータの電力出力定数をそれぞれ指示し、
前記制御部は、
前記コンバータ部が1つの前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子における前記電圧差同士の差分に対して対応する前記DC/DCコンバータの前記電力出力定数を乗じた大きさの前記電力を、一方の前記入出力端子から他方の前記入出力端子に移送するように当該DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項6に記載のDC/DCコンバータ装置。
【請求項8】
前記上位装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記目標電圧に加えて、当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータの電力出力定数をそれぞれ指示し、
前記制御部は、
前記コンバータ部が複数の前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子について、当該入出力端子における前記電圧差と、前記コンバータ部の各前記入出力端子の前記電圧差の平均値との差分に対して対応する前記DC/DCコンバータの前記電力出力定数を乗じた大きさの前記電力を、当該入出力端子から入出力するように当該DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項6に記載のDC/DCコンバータ装置。
【請求項9】
ネットワーク内に設けられた1又は複数のDC/DCコンバータ装置と、前記ネットワーク内の各前記DC/DCコンバータ装置を集中管理する集中管理装置とを有する直流電力ネットワークシステムにおける前記DC/DCコンバータ装置の制御方法であって、
前記DC/DCコンバータ装置は、
直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、
前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、
前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部と
を有し、
前記集中管理装置が、各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の各前記入出力端子の目標電圧をそれぞれ指示する第1のステップと、
前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部が、前記コンバータ部の各前記入出力端子について、前記集中管理装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御する第2のステップと
を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ装置の制御方法。
【請求項10】
前記第2のステップにおいて、前記制御部は、
前記コンバータ部が1つの前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子における前記電圧差同士の差分に応じた電力を一方の前記入出力端子から他方の前記入出力端子に移送するように当該DC/DCコンバータを制御し、前記コンバータ部が複数の前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子について、当該入出力端子における前記電圧差と、前記コンバータ部の各前記入出力端子の前記電圧差の平均値との差分に応じた電力を当該入出力端子から入出力するように対応する前記DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項9に記載のDC/DCコンバータ装置の制御方法。
【請求項11】
前記第1のステップにおいて、前記集中管理装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記目標電圧に加えて、当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータの電力出力定数をそれぞれ指示し、
前記第2のステップにおいて、前記制御部は、
前記コンバータ部が1つの前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子における前記電圧差同士の差分に対して対応する前記DC/DCコンバータの前記電力出力定数を乗じた大きさの前記電力を、一方の前記入出力端子から他方の前記入出力端子に移送するように当該DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項10に記載のDC/DCコンバータ装置の制御方法。
【請求項12】
前記第1のステップにおいて、前記集中管理装置は、
各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記目標電圧に加えて、当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータの電力出力定数をそれぞれ指示し、
前記第2のステップにおいて、前記制御部は、
前記コンバータ部が複数の前記DC/DCコンバータから構成される場合には、当該コンバータ部の各前記入出力端子について、当該入出力端子における前記電圧差と、前記コンバータ部の各前記入出力端子の前記電圧差の平均値との差分に対して対応する前記DC/DCコンバータの前記電力出力定数を乗じた大きさの前記電力を、当該入出力端子から入出力するように当該DC/DCコンバータを制御する
ことを特徴とする請求項11に記載のDC/DCコンバータ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流電力ネットワークシステム並びにDC/DCコンバータ装置及びその制御方法に関し、例えば、複数のDC/DC(Direct Current / Direct Current)コンバータ装置を備える直流電力ネットワークに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムに代表される再生エネルギーシステムや、電気自動車に代表されるEV(Electric Vehicle)の普及に伴い、複数の直流電力間を接続することが多くなってきている。複数の直流電力間を接続する場合、接続される直流電力間の電位差を吸収するため、これら直流電力間にDC/DCコンバータを介在させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。DC/DCコンバータは、直流電圧を異なる電圧値の直流電圧に変換する電気機器であり、直流電力ネットワークや電子機器などにおいても広く用いられている。
【0003】
DC/DCコンバータとしては、直流電力を一方向にのみ昇圧又は降圧して移送可能なタイプのものと、直流電力を双方向に昇圧又は降圧して移送可能なタイプのもの(双方向DC/DCコンバータ)とがある。EVシステムなどのバッテリを備えるシステムでは、通常、バッテリを充放電するためにDC/DCコンバータとして双方向DC/DCコンバータが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−130991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のDC/DCコンバータを介して負荷に直流電力を供給する直流電力ネットワークシステムを構築する場合、単体のDC/DCコンバータを考慮するだけでなく、これら複数のDC/DCコンバータ全体に対する制御が必要となるために制御が複雑化する。このためこれら複数のDC/DCコンバータを集中管理するEMS(Energy Management System)などの集中管理装置が別途必要となる。
【0006】
しかしながら、集中管理装置によって直流電力ネットワークシステム全体を管理する場合、集中管理装置はシステム内の個々のDC/DCコンバータをリアルタイムで逐次制御しなければならず、個々のDC/DCコンバータにおける電力の入出力方向も考慮しなければならないため、集中管理装置の負荷が大きく、また制御が煩雑となる問題があった。
【0007】
また集中管理装置の故障や、集中管理装置から各DC/DCコンバータへの通信障害が発生した場合に、集中管理装置によるリアルタイムでの各DC/DCコンバータの制御を行うことができず、停電が発生するなど安全性が低い問題もあった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、制御を容易化し行い得る安全性の高い直流電力ネットワークシステム並びにDC/DCコンバータ装置及びその制御方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、ネットワーク内に設けられた1又は複数のDC/DCコンバータ装置と、前記ネットワーク内の各前記DC/DCコンバータ装置を集中管理する集中管理装置とを有する直流電力ネットワークシステムにおいて、前記DC/DCコンバータ装置は、直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部とを設け、前記集中管理装置が、各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の各前記入出力端子の目標電圧をそれぞれ指示し、前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部が、前記コンバータ部の各前記入出力端子について、前記集中管理装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御するようにした。
【0010】
また本発明においては、DC/DCコンバータ装置において、直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部とを設け、前記制御部が、前記コンバータ部の各前記入出力端子について、上位装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御するようにした。
【0011】
さらに本発明においては、ネットワーク内に設けられた1又は複数のDC/DCコンバータ装置と、前記ネットワーク内の各前記DC/DCコンバータ装置を集中管理する集中管理装置とを有する直流電力ネットワークシステムにおける前記DC/DCコンバータ装置の制御方法であって、前記DC/DCコンバータ装置は、直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、前記コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、前記コンバータ部の各前記入出力端子から一定電圧の電力を入出力するよう当該コンバータ部を構成する各前記DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部とを有し、前記集中管理装置が、各前記DC/DCコンバータ装置に対して、当該DC/DCコンバータ装置における前記コンバータ部の各前記入出力端子の目標電圧をそれぞれ指示する第1のステップと、前記DC/DCコンバータ装置の前記制御部が、前記コンバータ部の各前記入出力端子について、前記集中管理装置から指示された当該入出力端子の目標電圧と、前記電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差をそれぞれ算出し、算出した前記コンバータ部の前記入出力端子ごとの前記電圧差に基づいて、各前記DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御する第2のステップとを設けるようにした。
【0012】
本発明の直流電力ネットワークシステム並びにDC/DCコンバータ装置及びその制御方法によれば、上位装置(集中管理装置)がDC/DCコンバータ装置をリアルタイムで制御する必要がなくDC/DCコンバータ装置に対してDC/DCコンバータ部の各入出力端子の目標電圧を指定するだけでよいため、上位装置によるDC/DCコンバータ装置の制御を容易化させることができる。また、その後、上位装置に障害が発生したり、上位装置及びDC/DCコンバータ装置間に通信障害が発生したとしても、DC/DCコンバータ装置が上位装置により設定された目標電圧に基づいて動作し続けるため、DC/DCコンバータ装置が動作せずに停電が発生するような事態が生じるおそれはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、制御を容易化し行い得る安全性の高い直流電力ネットワークシステム並びにDC/DCコンバータ装置及びその制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態によるDC/DCコンバータ装置の原理説明に供するブロック図である。
図2】第1の実施の形態による直流電力ネットワークシステムの概略構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態によるDC/DCコンバータ装置の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施の形態の制御部により実行される制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5】第2の実施の形態によるDC/DCコンバータ装置の原理説明に供するブロック図である。
図6】第2の実施の形態によるDC/DCコンバータ装置の構成を示すブロック図である。
図7】第2の実施の形態の制御部により実行される制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8】第2の実施の形態の制御部により実行される制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9】他の実施の形態の説明に供するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0016】
(1)第1の実施の形態
(1−1)原理
図1に示すように、直流電力を双方向に移送可能な汎用の双方向DC/DCコンバータ1において、一方の入出力端子(以下、これを第1の入出力端子と呼ぶ)1A側の電圧値がVA、他方の入出力端子(以下、これを第2の入出力端子と呼ぶ)1B側の電圧値がVBである場合について考える。
【0017】
ここでは、かかる双方向DC/DCコンバータ1は、出力電圧を一定に保つ定電圧機能(CV機能)が搭載されているものとする。また双方向DC/DCコンバータ1には、CV機能における目標電圧の設定値(以下、これをCV設定値と呼ぶ)として、第1の入出力端子1A側にはVA_s、第2の入出力端子1B側にはVB_sを設定するものとする。
【0018】
ここで、双方向DC/DCコンバータ1における第1の入出力端子1A側における電圧値VA及びCV設定値VA_s間の電圧差をΔVA、双方向DC/DCコンバータ1における第2の入出力端子1B側における電圧値VB及びCV設定値VB_s間の電圧差をΔVB、双方向DC/DCコンバータ1の電力出力定数をKとし、双方向DC/DCコンバータ1の第1の入出力端子1A側から第2の入出力端子1B側に電力を移送する方向を正方向とすると、双方向DC/DCコンバータ1から出力される電力Pは、次式
【数1】
のように表すことができる。
【0019】
なお(1)式における電圧差ΔVAは、次式
【数2】
により表され、電圧差ΔVAは、次式
【数3】
により表される。
【0020】
これら(1)〜(3)式からも明らかなように、双方向DC/DCコンバータ1では、第1及び第2の入出力端子1A,1Bにそれぞれ設定するCV設定値VA_s,VB_sの大きさを調整することによって、かかる電力Pの大きさ及び方向を制御することができる。
【0021】
例えば、第1の入出力端子1Aに対するCV設定値VA_sを下げ、又は、第2の入出力端子1Bに対するCV設定値VB_sを上げることによって第2の入出力端子1B側に出力される電力Pの値を上げることができ、逆に、第1の入出力端子1Aに対するCV設定値VA_sを上げ、又は、第2の入出力端子1Bに対するCV設定値VB_sを下げることによって第2の入出力端子1B側に出力される電力Pの値を下げることができる。
【0022】
また第1の入出力端子1A側の電圧差ΔVAが第2の入出力端子1B側の電圧差ΔVBよりも大きくなるようにこれらの第1及び第2の入出力端子1A,1Bに対するCV設定値VA_s,VB_sの値を設定することによって、第2の入出力端子1B側から電力Pを出力するように双方向DC/DCコンバータ1を動作させることができる。
【0023】
逆に、第1の入出力端子1A側の電圧差ΔV1Aが第2の入出力端子1B側の電圧差ΔVBよりも小さくなるようにこれらの第1及び第2の入出力端子1A,1Bに対するCV設定値VA_s,VB_sの値を設定することによって、第1の入出力端子1A側から電力Pを出力するように双方向DC/DCコンバータ1を動作させることができる。
【0024】
以下、このような双方向DC/DCコンバータの制御方式を利用した本実施の形態の直流電力ネットワークについて説明する。
【0025】
(1−2)第1の実施の形態による直流電力ネットワークシステムの構成
図2は、本実施の形態による直流電力ネットワークシステム10を示す。この直流電力ネットワークシステム10は、電力線11を介して相互に接続された複数のDC/DCコンバータ装置12と、これら複数のDC/DCコンバータ装置12を集中管理するEMS13とがネットワーク14を介して接続されて構成される。
【0026】
各DC/DCコンバータ装置12は、図3に示すように、DC/DCコンバータ部24を構成するDC/DCコンバータ20と、第1の電圧計21、第2の電圧計22及び制御部23とを備えて構成される。
【0027】
DC/DCコンバータ20は、汎用の双方向DC/DCコンバータであり、制御部23の制御に基づいて、第1の入出力端子20A側の直流電力を昇圧又は降圧して第2の入出力端子20B側に移送し、又は、第2の入出力端子20B側の直流電力を昇圧又は降圧して第1の入出力端子20A側に移送する。
【0028】
第1の電圧計21は、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側に接続された汎用の電圧計であり、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側の電圧を計測し、計測結果を制御部23に出力する。また第2の電圧計22は、DC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側に接続された電圧計であり、DC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側の電圧を計測し、計測結果を制御部23に出力する。
【0029】
制御部23には、DC/DCコンバータ20の出力電圧を一定に保つCV機能に加えて、出力電流を一定に保つ定電流機能(CC機能)が搭載される。ただし、CC機能はDC/DCコンバータの安全性を考慮して搭載されたもので、本実施の形態においては必須の機能ではない。
【0030】
制御部23は、第1電圧計21により計測されたDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側の電圧と、第2電圧計22により計測されたDC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側の電圧と、EMS13からネットワーク14を介して与えられる制御コマンドとに基づいてDC/DCコンバータ20をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0031】
実際上、本実施の形態の場合、EMS13は、制御部23に対して、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側のCV設定値VA_s及び第2の入出力端子20B側のCV設定値VB_sと、電力出力定数Kとをそれぞれ指定した制御コマンドを適宜送信する。
【0032】
そして、この制御コマンドを受信した制御部23は、制御対象のDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側のCV設定値VA_s及び当該DC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側のCV設定値VB_sと、電力出力定数Kとをその制御コマンドにおいて指定された値に内部設定し、内部設定したこれらの値に基づいてDC/DCコンバータ20の動作をPWM制御する。
【0033】
図4は、このような制御部23により実行される制御処理の処理手順を示す。制御部23は、EMS13から送信されてきた上述の制御コマンドを受信すると、この図4に示す制御処理を開始し、まず、制御コマンドにおいて指定されたDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側及び第2の入出力端子20B側の各CV設定値VA_s,VB_sと、電力出力定数KとをDC/DCコンバータ20を制御する際のパラメータ値としてそれぞれ内部設定する(S1)。
【0034】
続いて、制御部23は、第1の電圧計21により計測されたDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側の電圧の計測値(以下、これを第1の電圧計測値VAと呼ぶ)と、第2の電圧計22により計測されたDC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側の電圧の計測値(以下、これを第2の電圧計測値VBと呼ぶ)とをそれぞれ取得する(S2)。
【0035】
そして制御部23は、ステップS1で内部設定したDC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側のCV設定値VA_s及びステップS2で取得した入力側電圧計測値VA間の電圧差ΔVAと、ステップS1で内部設定したDC/DCコンバータ20の第2の入出力端子20B側のCV設定値VB_s及びステップS2で取得した出力側電圧計測値VB間の電圧差ΔVBとをそれぞれ上述の(2)式及び(3)式により算出する(S3)。
【0036】
次いで、制御部23は、次式
【数4】
で表されるステップS3で算出した第1の入出力端子20A側の電圧差ΔVAと、第2の入出力端子20B側の電圧差ΔVBとの差分Dを算出し(S4)、算出した差分Dの値が0よりも大きいか否かを判断する(S5)。
【0037】
そして制御部23は、この判断で肯定結果を得ると、第2の入出力端子20B側に上述の(1)式で表される大きさの電力Pを出力するようDC/DCコンバータ20をPWM制御し(S6)、この後ステップS2に戻る。そして制御部23は、この後、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0038】
これに対して、制御部23は、ステップS5の判断で否定結果を得ると、ステップS4で算出した差分D1の値が0未満であるか否かを判断する(S7)。そして制御部23は、この判断で肯定結果を得ると、第1の入出力端子20A側に次式
【数5】
で表される大きさの電力Pを出力するようDC/DCコンバータ20をPWM制御し(S8)、この後ステップS2に戻る。そして制御部23は、この後、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0039】
また制御部23は、ステップS7の判断で否定結果を得ると、DC/DCコンバータ20の第1の入出力端子20A側及び第2の入出力端子20B側のいずれにも電力を出力しないようDC/DCコンバータ20をPWM制御し(S9)、この後、ステップS2に戻る。そして制御部23は、この後、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0040】
(1−3)本実施の形態の効果
以上の構成を有する本実施の形態の直流電力ネットワークシステム10では、EMS13は、各DC/DCコンバータ装置12をリアルタイムで逐次制御する必要がなく、各DC/DCコンバータ装置12に対してDC/DCコンバータ20の各入出力端子20A,20BのCV設定値VA_s,VB_sと、DC/DCコンバータ20の電力出力定数Kとを指定した制御コマンドを適宜DC/DCコンバータ装置12に送信すれば良いため、EMS13の負荷を軽減させることができる。
【0041】
また本直流電力ネットワークシステム10では、かかるCV設定値VA_s,VB_s及び電力出力定数Kを指示するだけでDC/DCコンバータ装置12の出力電力の大きさ及び方向を制御することができるため、DC/DCコンバータ装置12の出力電力の大きさや方向の切り替えが容易であり、EMS13によるDC/DCコンバータ装置12の制御を容易化させることができる。
【0042】
さらに本直流電力ネットワークシステム10では、例えば、EMS13に障害が発生したり、EMS13及び各DC/DCコンバータ装置12間の通信障害が発生した場合においても各DC/DCコンバータ装置12がEMS13により設定されたCV設定値VA_s,VB_s及び電力出力定数Kに従って動作し続けるため、EMS13の故障や、EMS13及び各DC/DCコンバータ装置12間の通信障害に起因する停電等が発生するおそれがない。
【0043】
よって本実施の形態によれば、制御を容易化し行い得る安全性の高い直流電力ネットワークシステム10を構築することができる。
【0044】
さらに、本直流電力ネットワークシステム10では、EMS13は、DC/DCコンバータ装置12ごとにCV設定値VA_s,VB_s及び電力出力定数Kをそれぞれ設定するだけでシステム内のすべてのDC/DCコンバータ装置12を個別に制御することができるため、DC/DCコンバータ装置12間の個体差を考慮する必要がなく、またシステムへのDC/DCコンバータ装置12の追加も容易に行うことができる。また、この制御は、実計測値と設定値の差分を基本に実行するため、計測器の設定及びメンテナンスが容易である。
【0045】
さらに本直流電力ネットワークシステム10によれば、ネットワーク内で負荷変動や、これに伴う電力変動が発生した場合にも対応するDC/DCコンバータ装置12のCV設定値VA_s,VB_s及び電力出力定数Kを変更するだけで自動的にエネルギーバランスが調整されるという効果をも得ることができる。
【0046】
(2)第2の実施の形態
(2−1)原理
次に、図5に示すように、それぞれ直流電力を双方向に移送可能な第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31,32,33をT字状に接続したコンバータ部30の制御方式について説明する。
【0047】
このコンバータ部30において、第1の双方向DC/DCコンバータ31における第2及び第3の双方向DC/DCコンバータ32,33と接続されていない入出力端子30A側の電圧がV1A、第2の双方向DC/DCコンバータ32における第1及び第3の双方向DC/DCコンバータ31,33と接続されていない入出力端子32A側の電圧がV2A、第3の双方向DC/DCコンバータ33における第1及び第2の双方向DC/DCコンバータ31,32と接続されていない入出力端子33A側の電圧がV3Aである場合について考える。なお、以下においては、これら第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33において他の第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33と接続されていない入出力端子31A,32A,33Aをそれぞれ外部入出力端子31A〜33Aと呼ぶものとする。
【0048】
ここでは、かかる第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33は、出力電圧を一定に保つ定電圧機能(CV機能)が搭載されているものとする。また第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33の各外部入出力端子31A〜33Aに対して、それぞれCV機能における目標電圧(CV設定値)としてV1A_s,V2A_s,V3A_sが設定されていると共に、第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33の電力出力定数として、それぞれK,K,Kが設定されているものとする。
【0049】
ここで、第1の双方向DC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側の電圧値V1A及びCV設定値V1A_s間の電圧差をΔV1A、第2の双方向DC/DCコンバータ32の外部入出力端子32A側の電圧値V2A及びCV設定値V2A_s間の電圧差をΔV2A、第3の双方向DC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側の電圧値V3A及びCV設定値V3A_s間の電圧差をΔV3Aとする。また第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33において、外部入出力端子31A〜33A側に電流が流れる方向を正方向とする。
【0050】
この場合、第1の双方向DC/DCコンバータ31の外部入出力端子側31Aから出力される電力P1は、次式
【数6】
のように表すことができる。また第2の双方向DC/DCコンバータ32の外部入出力端子21A側から出力される電力P2は、次式
【数7】
のように表すことができ、第3の双方向DC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側から出力される電力P3は、次式
【数8】
のように表すことができる。
【0051】
なお(6)〜(8)式における電圧差ΔV1Aは、次式
【数9】
により表され、電圧差ΔV2Aは、次式
【数10】
により表され、電圧差ΔV3Aは、次式
【数11】
により表される。
【0052】
これら(6)〜(11)式からも明らかなように、図4の双方向DC/DCコンバータ部30では、第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ31〜33の外部入出力端子31A〜33Aにそれぞれ設定するCV設定値V1A_s,V2A_s,V3A_sの大きさを調整することによって、コンバータ部30の各外部入出力端子31A〜33Aからそれぞれ出力される電力P1、P2,P3の大きさ及び出力方向を制御することができる。
【0053】
例えば、第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31A側から第2のDC/DCコンバータ32の外部入出力端子32A側及び第3のDC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側に電力が移送されている状態において、第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31Aに対するCV設定値V1A_sを下げ、又は、第2のDC/DCコンバータ32の外部入出力端子32Aに対するCV設定値V2A_sや第3のDC/DCコンバータ33の外部入出力端子33Aに対するCV設定値V3A_sを上げることによって、第2のDC/DCコンバータ32の外部入出力端子32A側に出力する電力P2の値や第3のDC/DCコンバータ33の外部入出力端子33A側に出力する電力P3の値を上げることができる。
【0054】
また第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31A側の電圧差ΔV1Aが、第1〜第3のDC/DCコンバータ31〜33の外部入出力端子31A〜33A側の各電圧差ΔV1A〜ΔV3Aの平均値よりも大きくなるようにこれら第1〜第3のDC/DCコンバータ31〜33の外部入出力端子31A〜33Aに対するCV設定値V1A_s〜V3A_sの値を設定することによって、第1のDC/DCコンバータ31の外部入出力端子31A側から電力P1を出力するようにDC/DCコンバータ部30を動作させることができる。
【0055】
(2−2)第2の実施の形態によるDC/DCコンバータシステムの構成
図6は、図3について上述した第1の実施の形態のDC/DCコンバータ装置12に代えて、図2の直流電力ネットワークシステム10に適用可能な第2の実施の形態によるDC/DCコンバータ装置40を示す。このDC/DCコンバータ装置40は、第1〜第3のDC/DCコンバータ41,42,43から構成されるコンバータ部44と、第1〜第2の電圧計45,45,46と、制御部48及びコンバータ部制御部49とを備えて構成される。
【0056】
第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43は、いずれもCV/CC機能(定電圧/定電流制御機能)が搭載された双方向DC/DCコンバータである。第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43は、コンバータ部制御部49の制御に基づいて、一方の入出力端子でなる外部入出力端子41A,42A,43A側の直流電力を昇圧又は降圧して他方の入出力端子41B,42B,43B側に移送し、又は、他方の入出力端子41B〜43B側の直流電力を昇圧又は降圧して外部入力端子41A〜43A側に移送する。
【0057】
第1の電圧計45は、第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側に接続された汎用の電圧計であり、第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側の電圧を計測し、計測結果を制御部48に出力する。また第2の電圧計46は、第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側に接続された汎用の電圧計であり、第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側の電圧を計測し、計測結果を制御部48に出力する。同様に、第3の電圧計47は、第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側に接続された汎用の電圧計であり、第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側の電圧を計測し、計測結果を制御部48に出力する。
【0058】
制御部48は、第1〜第3の電力計45〜47の計測結果と、本DC/DCコンバータ装置40が存在する直流電力ネットワークシステム内のすべてのDC/DCコンバータ装置を統括管理するEMS50からネットワーク51を介して与えられる制御コマンドとに基づいて、コンバータ部制御部49を介して第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43を制御する制御装置である。
【0059】
実際上、本実施の形態の場合、EMS50は、制御部48に対して、第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43AのCV設定値V1A_s、V2A_s、V3A_sと、第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電力出力定数K、K,Kとをそれぞれ指定した制御コマンドを適宜送信する。
【0060】
そして、この制御コマンドを受信した制御部48は、制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43Aの各CV設定値V1A_s〜V3A_sと、第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電力出力定数K〜Kとをその制御コマンドにおいて指定された値に内部設定する。
【0061】
また制御部48は、これらの値に基づいて、第1〜第3の双方向DC/DCコンバータ41〜43の各外部入出力端子側41A〜43Aからそれぞれ出力すべき電力P1〜P3の値を(6)〜(8)式によりそれぞれ算出し、算出結果をしたこれら電力P1〜P3の値をコンバータ部制御部49にそれぞれ送信する。
【0062】
またコンバータ部制御部49は、制御部48から与えられた第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の各外部入出力端子側41A〜43Aから、それぞれ制御部48により指定された大きさの電力P1〜P3を出力するようこれら第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43をPWM制御する。
【0063】
図7は、このような制御部48により実行される制御処理の処理手順を示す。この制御処理は、EMS50から送信されてきた上述の制御コマンドを制御部48が受信すると開始される。そして制御部48は、まず、制御コマンドにおいて指定された第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の各外部入出力端子41A〜43Aに対するCV設定値V1A_s〜V3A_sと、これら第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電力出力定数K1〜K3とをコンバータ部44を制御する際のパラメータ値としてそれぞれ内部設定する(S10)。
【0064】
続いて、制御部48は、第1の電圧計45により計測された第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側の電圧の計測値(以下、これを第1の電圧計測値V1Aと呼ぶ)と、第2の電圧計46により計測された第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側の電圧の計測値(以下、これを第2の電圧計測値V2Aと呼ぶ)と、第3の電圧計47により計測された第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側の電圧の計測値(以下、これを第3の電圧計測値V3Aと呼ぶ)とをそれぞれ取得する(S11)。
【0065】
そして制御部48は、ステップS10で内部設定した第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41A側のCV設定値V1A_s及びステップS11で取得した第1の電圧計測値V1A間の電圧差ΔV1Aと、ステップS10で内部設定した第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42A側のCV設定値V2A_s及びステップS11で取得した第2の電圧計測値V2B間の電圧差ΔV2Aと、ステップS10で内部設定した第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43A側のCV設定値V3A_s及びステップS11で取得した第3の電圧計測値V3B間の電圧差ΔV3Aとを、それぞれ上述の(9)式〜(11)式により算出する(S12)。
【0066】
次いで、制御部48は、ステップS10で内部設定した第1のDC/DCコンバータ41の電力出力定数K1と、ステップS12で取得した電圧差ΔV1Aとに基づいて第1のDC/DCコンバータ41の外部入出力端子41Aから出力すべき電力P1の値を算出し、算出結果をコンバータ部制御部49に出力することにより、当該コンバータ部制御部49を介して第1のDC/DCコンバータ41の動作を制御する(S13)。
【0067】
また制御部48は、ステップS10で内部設定した第2のDC/DCコンバータ42の電力出力定数K2と、ステップS12で取得した電圧差ΔV2Aとに基づいて第2のDC/DCコンバータ42の外部入出力端子42Aから出力すべき電力P2の値を算出し、算出結果をコンバータ部制御部49に出力することにより、当該コンバータ部制御部49を介して第2のDC/DCコンバータ42の動作を制御する(S14)。
【0068】
さらに制御部48は、ステップS10で内部設定した第3のDC/DCコンバータ43の電力出力定数K3と、ステップS12で取得した電圧差ΔV3Aとに基づいて第3のDC/DCコンバータ43の外部入出力端子43Aから出力すべき電力P3の値を算出し、算出結果をコンバータ部制御部49に出力することにより、当該コンバータ部制御部49を介して第3のDC/DCコンバータ43の動作を制御する(S15)。
【0069】
そして制御部48は、ステップS15の処理が完了するとステップS11に戻り、この後ステップS11〜ステップS15の処理を上述と同様にして繰り返し実行する。
【0070】
なおステップS13〜ステップS15の各ステップにおける制御部48の具体的な処理内容を図8に示す。制御部48は、図7のステップS13、ステップS14又はステップS15に進むと、この図8に示す制御処理を開始し、まず、次式
【数12】
のようにして、図7のステップS12で算出したそのとき制御対象としている第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の電圧差ΔVnA(n=1,2,3)と、これら電圧差ΔV1A〜ΔV3Aの平均値との差分Dnを算出する(S20)。
【0071】
続いて、制御部48は、ステップS20で算出した差分Dnの値が0よりも大きいか否かを判断する(S21)。そして制御部48は、この判断で肯定結果を得ると、そのときの制御対象が第1のDC/DCコンバータ41のときには(6)式、制御対象が第2のDC/DCコンバータ42のときには(7)式、制御対象が第3のDC/DCコンバータ43のときには(8)式で表される大きさの電力Pn(n=1,2,3)をその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入出力端子41A〜43A側から入力するようコンバータ部制御部49に指示を与え(S22)、この後、この図8の処理を終了して図7の制御処理に戻る。かくして、このときコンバータ部制御部49は、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43A側から指定された電力Pnを入力するようその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43をPWM制御する。
【0072】
これに対して、制御部48は、ステップS21の判断で否定結果を得ると、ステップS20で算出した差分Dnの値が0未満であるか否かを判断する(S23)。そして制御部48は、この判断で肯定結果を得ると、そのときの制御対象が第1のDC/DCコンバータ41のときには(6)式、制御対象が第2のDC/DCコンバータ42のときには(7)式、制御対象が第3のDC/DCコンバータ43のときには(8)式で表される大きさの電力Pn(n=1,2,3)をその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入出力端子41A〜43Aから出力するようコンバータ部制御部49に指示を与え(S24)、この後、この図8の処理を終了して図7の制御処理に戻る。かくして、このときコンバータ部制御部49は、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43Aに指定された電力Pnを出力するようその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43をPWM制御する。
【0073】
一方、制御部48は、ステップS23の判断で否定結果を得ると、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入出力端子41A〜43Aからの電力の入出力を停止するようコンバータ部制御部49に指示を与え(S25)、この後、この図8の処理を終了して図7の制御処理に戻る。かくして、このときコンバータ部制御部49は、そのときの制御対象の第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43の外部入力端子41A〜43Aから電力を入出力しないようにその第1〜第3のDC/DCコンバータ41〜43を制御する。
【0074】
(2−3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のDC/DCコンバータ装置30によれば、DC/DCコンバータ部44が複数のDC/DCコンバータ41〜43から構成される場合においても、個々のDC/DCコンバータ41〜43を第1の実施の形態と同様に制御することでDC/DCコンバータ装置30全体を制御することができ、かくして第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、DC/DCコンバータ20,41〜43が双方向DC/DCコンバータである場合について述べたが、本発明はこれに限らず、DC/DCコンバータ20,41〜43が電力を一方向にのみ昇圧又は減圧して移送可能なDC/DCコンバータである場合にも本発明を適用することができる。
【0076】
また上述の第2の実施の形態においては、DC/DCコンバータ部44を3つのDC/DCコンバータ41〜43により構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図9に示すように、それぞれ一方の入出力端子611B,612B,……,61nBが相互に接続された複数のDC/DCコンバータ611,612,……,61nによりDC/DCコンバータ部60を構成するようにしてもよい。
【0077】
この場合、EMS13は、各DC/DCコンバータ装置に対して、そのDC/DCコンバータ装置のDC/DCコンバータ部60の入出力端子を構成する各DC/DCコンバータ611〜61nの外部入出力端子(他のDC/DCコンバータ611〜61nと接続されていない方の入出力端子611A,612A,……,61nA)のCV設定値V1_s,V2_s,……,Vn_sと、これらDC/DCコンバータ611〜61nの電力出力定数K1,K2,……,Knとを指定した制御コマンドを適宜送信すればよい。
【0078】
またDC/DCコンバータ装置の制御部62は、この制御コマンドに基づいて、以下のようにしてDC/DCコンバータ部60を構成する各DC/DCコンバータ611〜61nをそれぞれ制御すればよい。
【0079】
すなわち、制御部62は、まず、DC/DCコンバータ部60を構成する各DC/DCコンバータ611〜61nの外部入出力端子611A〜61nA(DC/DCコンバータ部60の入出力端子)について、当該外部入出力端子611A〜61nAに接続された電力計631,632,……,63nにより計測された電圧値をV1A,V2A,……,VnAと、その外部入出力端子611A〜61nAに対するCV設定値V1_s〜Vn_sとの電圧差ΔVk(k=1,2,……,n)を次式
【数13】
によりそれぞれ算出するようにする。
【0080】
また制御部62は、これらDC/DCコンバータ611〜61nの外部入出力端子611A〜61nAにそれぞれ入出力すべき各電力Pk(k=1,2,……,n)を次式
【数14】
によりそれぞれ算出するようにする。なお(14)式において、右辺の括弧内の第2項はDC/DCコンバータ部60を構成する各DC/DCコンバータ611〜61nにおける電圧差ΔV1A,ΔV2A,……ΔVnAの平均値である。
【0081】
そして制御部62は、算出した電力Pkが0よりも大きい場合には対応するDC/DCコンバータ611〜61nの外部入出力端子611A〜61nAから(14)式で与えられる電力Pkを入力し、算出した電力Pkが0未満の場合にはその外部入出力端子611A〜61nAから(14)式で与えられる電力Pkを出力し、算出した電力Pkが0である場合にはその外部入出力端子611A〜61nAからの電力の入出力を停止するように各DC/DCコンバータ611〜61nを制御するようにする。
【0082】
このようにすれば、DC/DCコンバータ部60が4つ以上のDC/DCコンバータ611〜61nにより構成されている場合にも、DC/DCコンバータ装置を第2の実施の形態と同様に制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は複数のDC/DCコンバータ装置を備える直流電力ネットワークに適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,20,31〜33,41〜43,611〜61n……DC/DCコンバータ、1A,1B,20A,20B,31A,32A,33A,41A,41B,42A,42B,43A,43B……入出力端子、10……直流電力ネットワークシステム、12,40……DC/DCコンバータ装置、13,50……EMS、21,22,45〜47,631〜63n……電圧計、23,48,62……制御部、24,44,60……コンバータ部、49……コンバータ部制御部、VA,VB,V1A〜VnA……電圧値、VA_S,VB_s,V1A_s〜VnA_s……CV設定値、K,K1〜Kn……電力出力定数。
【要約】
DC/DCコンバータ装置に、それぞれ直流電力を双方向に移送可能な1つのDC/DCコンバータ、又は、一方の入出力端子が相互に接続された複数の当該DC/DCコンバータからなるコンバータ部と、コンバータ部の各入出力端子の電圧をそれぞれ計測する電圧計と、DC/DCコンバータ部の各DC/DCコンバータをそれぞれ制御する制御部とを設け、制御部が、コンバータ部の各入出力端子について、上位装置(集中管理装置)から与えられる目標電圧と、電圧計により計測された当該入出力端子の電圧との電圧差に基づいて、各DC/DCコンバータの出力電力の大きさ及び方向をそれぞれ制御するようにした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9