特許第6646866号(P6646866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646866
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】飲料抽出装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/00 20060101AFI20200203BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20200203BHJP
   A47J 31/057 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A47J31/00 302
   A47J31/06 210
   A47J31/057
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-183160(P2015-183160)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-55980(P2017-55980A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小幡 享史
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−039409(JP,A)
【文献】 特表2010−519688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00
A47J 31/057
A47J 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクと、
前記貯水タンクから送られた水を加熱して湯とする加熱手段と、
前記貯水タンク内の水を前記加熱手段に送水する送水手段と、
抽出原料を収容する原料容器と、前記原料容器を保持する容器保持部と、前記原料容器の上方を開閉可能に覆うとともに前記湯を吐出する吐出口を備えた蓋体とを有し、前記加熱手段で生成された湯を用いて前記抽出原料から飲料を抽出する飲料抽出部と、
前記加熱手段と前記送水手段とを制御して、所定のプログラムにしたがって飲料の抽出を行う抽出工程を実行する制御部とを備え、
前記制御部が、前記抽出工程の実行後に、前記加熱手段のみを動作させる第1の押し出し工程と、前記加熱手段を動作させながら前記送水手段を間欠的に動作させる第2の押し出し工程とを含む押し出し工程と、前記加熱手段を動作させずに前記送水手段を間欠的に動作させる冷却工程とを順次実行する抽出終了工程を実行する、飲料抽出装置。
【請求項2】
前記抽出終了工程が終了してから所定の時間が経過した後に、飲料の抽出が終了したことをユーザーに報知する、請求項に記載の飲料抽出装置。
【請求項3】
前記抽出原料として複数種類の形態で提供される原料を使用可能であり、前記原料容器は、前記抽出原料の提供形態に対応して適宜選択される複数の構成部材を積層して構成され、いずれの提供形態の原料を用いた場合でも積層された際の前記原料容器の外観形状が同じとなる、請求項1または2に記載の飲料抽出装置。
【請求項4】
前記抽出原料の提供形態として、コーヒー粉が収容されたポッドタイプの容器を使用可能であり、前記制御部が、前記ポットタイプの容器を用いてカップ一杯分のコーヒーの抽出を行う、請求項1〜のいずれかに記載の飲料抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、水を加熱して生成された湯を抽出原料に供給することで、抽出原料から飲料を抽出することができる飲料抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー専門店の台頭やコンビニエンスストアでのレギュラーコーヒー販売サービスの開始などにより、コーヒー豆から抽出されたコーヒーを楽しむ機会が増えている。これに伴ってユーザーの本物志向が刺激され、家庭やオフィスにおいても、インスタントではなくコーヒー豆を挽いたコーヒー粉末を用いて抽出されたコーヒーを手軽に楽しみたいというニーズが高まっている。このため、コーヒーカップ一杯分のコーヒーを手軽に抽出することができる飲料抽出装置であるコーヒーメーカーに対する需要が増大している。
【0003】
このような、カップ一杯分のコーヒーを手軽に抽出するために、ポッド(POD)タイプとして供給されるコーヒー粉末と、これを装着して自動でコーヒーを抽出することができるコーヒーメーカーが普及している。ポッドタイプのコーヒー粉末は、一杯分のコーヒー粉末が不織布を用いた所定形状のフィルターカートリッジに詰められた状態で、一つ一つ密封して販売されているもので、コーヒー豆の販売会社が多数参加する日本カフェポッド協会が統一して規格を定めたカフェポッドなど、各種の仕様のものがある。ポッドタイプのコーヒー粉末は、コーヒーカップ一杯分のコーヒーを抽出するために必要なコーヒー粉末が封入され、抽出後にそのまま廃棄することができるという手軽さを備えている。
【0004】
一方、市販されている比較的小容量のコーヒーメーカーは、ポッドやペーパーフィルタに入れられたコーヒー粉末に、貯水タンクに入れられた水を加熱して湯として供給することでコーヒーを抽出する。近年では、水を加熱することによって生じる蒸気圧によって湯をドリップさせる方法よりも、送水ポンプとこれを制御する制御手段とを備えて、コーヒー粉末への湯の供給度合いを正確に調整可能とする方法を採用したコーヒーメーカーが多用されつつある。さらに、水を加熱したときに生じる蒸気をコーヒー粉末に供給するタイミングを制御して、コーヒーを抽出する抽出工程の最初にドリップ前のコーヒー粉末を蒸気で蒸らすむらし工程を付加することで、よりおいしいコーヒーを煎れることができるコーヒーメーカーの開発が進んでいる。
【0005】
このような送水ポンプと制御手段とを用いて、湯や蒸気を所定のタイミングでコーヒー粉末に供給するコーヒーメーカーとして、抽出原料であるコーヒー粉末をペーパーフィルタに直接入れたものを用いるもの(特許文献1参照)、カフェポッドを用いるもの(特許文献2参照)、ペーパーフィルタとポッドタイプとの両方を使用可能なもの(特許文献3参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−51916号公報
【特許文献2】特開2013−27469号公報
【特許文献3】特開2014−212987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の飲料抽出装置であるコーヒーメーカーは、コーヒー豆に注がれる湯の温度や量を調整するコーヒー抽出プログラムを備え、選択されたコーヒー抽出プログラムにしたがってコーヒー抽出工程を実行し、おいしいコーヒーを煎れることができる。
【0008】
このような、従来のコーヒーメーカーでは、飲料の抽出に用いられる高温の湯や蒸気が、不所望に外部に飛び出すことを防止する安全対策が施されている。しかし、従来のコーヒーメーカーの安全対策は、原料容器を飲料抽出装置内に閉じこめるように保持する構造を前提とするものであり、より簡易な構成の飲料抽出装置に適用することは困難である。また、コーヒー抽出プログラムにおける最終段階における、抽出されるコーヒーや蒸気の噴き出しに関しての安全性を考慮したコーヒーメーカーは実現されていなかった。
【0009】
本開示はこのような従来技術の課題を解決するためのものであり、簡素化された装置構成を備え、飲料抽出の最終段階においても高い安全性が確保された、飲料抽出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願で開示する飲料抽出装置は、貯水タンクと、前記貯水タンクから送られた水を加熱して湯とする加熱手段と、前記貯水タンク内の水を前記加熱手段に送水する送水手段と、抽出原料を収容する原料容器と、前記原料容器を保持する容器保持部と、前記原料容器の上方を開閉可能に覆うとともに前記湯を吐出する吐出口を備えた蓋体とを有し、前記加熱手段で生成された湯を用いて前記抽出原料から飲料を抽出する飲料抽出部と、前記加熱手段と前記送水手段とを制御して、所定のプログラムにしたがって飲料の抽出を行う抽出工程を実行する制御部とを備え、前記制御部が、前記抽出工程の実行後に、押し出し工程と冷却工程との少なくともいずれか一方を備えた抽出終了工程を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本願で開示する飲料抽出装置は、抽出工程の終了後に、制御部が、押し出し工程と冷却工程との少なくともいずれか一方を備えた抽出終了工程を実行する。このため、抽出装置内に残存している湯や蒸気を放出するとともに飲料の抽出を早めることができ、飲料の抽出の最終段階における飲料や高温の蒸気の吹き出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態にかかるコーヒーメーカーの形状を示す斜視図である。
図2】実施の形態にかかるコーヒーメーカーの構成を説明する側断面図である。
図3】実施の形態にかかるコーヒーメーカーのドリップ部の構成を説明する分解図である。
図4】実施の形態にかかるコーヒーメーカーにおいて、原料としてポッドタイプのコーヒー粉末を用いる場合の、原料容器の構成を説明する分解斜視図である。
図5】実施の形態にかかるコーヒーメーカーにおいて、原料として挽かれたコーヒー粉末を直接用いる場合の、原料容器の構成を説明する分解斜視図である。
図6】実施の形態にかかるコーヒーメーカーにおいて、原料容器が取り外された状態を示す斜視図である。
図7】実施の形態にかかるコーヒーメーカーのドリップ部の構成を示す、要部拡大断面図である。
図8】実施の形態にかかるコーヒーメーカーにおいて抽出工程後に行われる、抽出終了工程の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願で開示する飲料抽出装置は、貯水タンクと、前記貯水タンクから送られた水を加熱して湯とする加熱手段と、前記貯水タンク内の水を前記加熱手段に送水する送水手段と、抽出原料を収容する原料容器と、前記原料容器を保持する容器保持部と、前記原料容器の上方を開閉可能に覆うとともに前記湯を吐出する吐出口を備えた蓋体とを有し、前記加熱手段で生成された湯を用いて前記抽出原料から飲料を抽出する飲料抽出部と、前記加熱手段と前記送水手段とを制御して、所定のプログラムにしたがって飲料の抽出を行う抽出工程を実行する制御部とを備え、前記制御部が、前記抽出工程の実行後に、押し出し工程と冷却工程との少なくともいずれか一方を備えた抽出終了工程を実行する。
【0014】
本開示にかかる飲料抽出装置は上記の構成を備えることで、制御部が実行する抽出終了工程によって、飲料の抽出工程が終了した後に、装置内に残存する残り湯や蒸気を排出するとともに、抽出途中の飲料の抽出が促進される。このため、飲料の抽出が終了した後にすぐに飲料を飲みたいユーザーが、抽出直後の飲料抽出装置を触った場合でも、高温の蒸気や湯が飛び出すことを防止するとともに、吐出口から抽出される飲料が飛び散ってしまう事態を効果的に防止することができる。
【0015】
本開示にかかる飲料抽出装置において、前記押し出し工程として、前記加熱手段のみを動作する第1の押し出し工程と、前記加熱手段と前記送水手段を間欠的に動作させる第2の押し出し工程とを含むことが好ましい。このようにすることで、押し出し効果の小さな第1の押し出し工程の後に押し出し効果の大きな第2の押し出し工程が実行されるため、抽出中の飲料や高温の蒸気などが不所望に飛び散る事態を効果的に回避することができる。
【0016】
また、前記押し出し工程が、前記第1の押し出し工程と、前記第2の押し出し工程と、前記加熱手段を動作させずに前記給水手段を間欠的に動作させる前記冷却工程とを順次実行することが好ましい。このようにすることで、飲料の抽出を促進するとともに、蒸気や湯の不所望な吹き出しを確実に回避することができる。
【0017】
さらに、前記抽出終了工程が終了してから所定の時間が経過した後に、飲料の抽出が終了したことをユーザーに報知することが好ましい。このようにすることで、高温の蒸気や湯がユーザーにかかってしまう事態や、抽出された飲料が飛び散る不所望な事態を回避することができる。
【0018】
さらにまた、前記抽出原料として複数種類の形態で提供される原料を使用可能であり、前記原料容器は、前記抽出原料の提供形態に対応して適宜選択される複数の構成部材を積層して構成され、いずれの提供形態の原料を用いた場合でも積層された際の前記原料容器の外観形状が同じとなることが好ましい。このようにすることで、多様な飲料の提供形態に対応する飲料抽出装置を実現することができる。
【0019】
また、前記抽出原料の提供形態として、コーヒー粉が収容されたポッドタイプの容器を使用可能であり、前記制御部が、前記ポットタイプの容器を用いてカップ一杯分のコーヒーの抽出を行うことが好ましい。このようにすることで、有用なコーヒーメーカーを提供することができる。
【0020】
以下、本願で開示する飲料抽出装置について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施の形態)
以下では、本願で開示する飲料抽出装置の実施の形態として、抽出原料としてコーヒー粉末を用いるコーヒーメーカーを例示して説明する。
【0022】
本実施形態で例示するコーヒーメーカーは、レギュラーコーヒー用のポッドタイプのコーヒー原料を用いて一杯分のコーヒーを抽出可能であるとともに、挽かれたコーヒー粉末をそのまま用いても一杯分のコーヒーを抽出可能な、抽出原料であるコーヒー粉の複数の提供形態に対応することができるコーヒーメーカーである。
【0023】
図1に、本実施形態にかかるコーヒーメーカーの外観構成を示す。
【0024】
本実施形態にかかるコーヒーメーカー100は、本体部1と本体部1の側方に配置された貯水タンク2とを備えている。
【0025】
本体部1は、全体として嵩高の略直方体形状をしており、本体部1の内部には、貯水タンク2からの水を送水する送水手段である送水ポンプや、送水された水を加熱する加熱手段であるボイラー部など、貯水タンク2内の水を加熱して湯として供給する給湯機構が配置されている。本体部1の幅狭の側面である手前側側面(一側面)の上部には、本体部1から手前側に突出するようにして全体の平面視形状が円形の飲料抽出部であるドリップ部11が配置されている。また、本体部1の手前側側面の下部には、ドリップ部11と本体部1の高さ方向を介して対向するように、手前側に突出して平面視形状が円形のトレイ12が配置されている。本体部1の手前側側面は、ドリップ部11とトレイ12との間の部分が、ドリップ部11とトレイ部12の形状に合わせて円筒形状に湾曲した湾曲凹面13となっている。
【0026】
なお、図1において、トレイ12はその底部が本体部1の底部と同じ高さとなるように、最も下側の位置に配置された状態が示されているが、載置されるコーヒーカップ等の高さに応じてトレイ12の上下方向位置を可変して固定できる構造とすることができる。このようにすることで、ドリップ部11の下端に位置する吐出口とコーヒーカップ等との距離が大きくなりすぎて、ドリップ部11から供給されるコーヒーが撥ねてコーヒーカップからこぼれ、コーヒーメーカーが載置されている周囲の部分を汚してしまうことを回避することができる。
【0027】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、本体部1の上面に操作部14が配置されている。操作部14には、ユーザーが抽出されるコーヒーの濃さを好みに応じて選択するなど、各種の抽出メニューを選択して抽出動作を開始させるスイッチボタン15が配置されている。なお、詳細な説明は省略するが、操作部14にはスイッチボタン15の他に、抽出プログラムの開始と終了などのコーヒーメーカー100の動作状態や、ドリップ部11にコーヒー粉末を収容した原料容器が正しく装着されていないこと、貯水タンクに所定量の水が入っていないことなどの各種の異常状態を表示するランプ、さらには、異常状態を含むコーヒーメーカー100の動作状態を表示する表示素子などを配置することができる。
【0028】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、貯水タンク2は、本体部1の幅広側の側面、すなわち、図1において向かって右側の側面に本体部1に並立する円筒形状として形成されている。貯水タンク2は、着脱可能で内部に水を溜めることができるタンク部2aと、本体部1の底部部分と接続されるとともに上部にタンク部2aが載置されるベース部2bとから構成されていて、タンク部2aをベース部2bに正しく載置すると、ベース部2b内に配置された図示しない給水管を介して、タンク部2aの内部の貯水空間と本体部1内の給湯機構とが接続されるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、デザイン上の観点から貯水タンク2を本体部1の側方に並立する円筒形状としているが、貯水タンク2の形状には制約はない。また、貯水タンクの配置位置としても、本体部1の上部または側面の一部を切り欠いて貯水タンクを配置する部分を形成した構成や、本体部1の内部に貯水タンクを配置する構成など、各種の構成を採用することができる。さらに、貯水タンク2をベース部2bとベース部2bに対して着脱可能なタンク部2aとの2つの部材で構成するのではなく、1つの部材もしくは3つ以上の部材からなる貯水タンク2を使用することができる。さらに、貯水タンク2を構成する部材にも制限はなく、貯水タンク2の側面に透明な窓部を設けてタンク部2a内の水の量を容易に確認することができる構成とするなど、所定量もしくは所定量以上の水を収容することができるものであれば、貯水タンク2として従来周知の各種形状、各種構成のものを使用することができる。
【0030】
次に、図2を用いて、本実施形態のコーヒーメーカー100の本体部1の内部の構成と、ドリップ部11の構成を説明する。
【0031】
図2は、本体部とドリップ部との断面構成を示す側断面図であり、貯水タンクが配置されている側面側から見た状態を示している。
【0032】
図2に示すように、本体部1の内部には、電源配置部21、流量センサ22、送水ポンプ24、ボイラー部26、給湯管27、操作基板28が配置されている。
【0033】
電源配置部21は、本体部1内部の底面側に形成されていて、その内部には、商用電源に接続される電源ケーブル16(図3参照)に接続された電源回路基板21aが配置されている。電源回路基板21aには、商用電圧を所定の駆動電圧に変換し、本体部1内部に配置された送水ポンプ24やボイラー部26の加熱ヒータ26bなどを駆動するための電源とする電気回路部品が搭載されている。
【0034】
流量センサ22は、電源配置部21の上部に配置されていて、図2では現れない配管を介して貯水タンク2と接続されていて、貯水タンク2のタンク部2aに貯水されている水は、流量センサ22で流量を計測された後に図2では一部のみが現れている配管23を介して送水ポンプ24に供給される。
【0035】
送水ポンプ24は、電源配置部21の上部に流量センサ22と並ぶように配置されていて、貯水タンク2のタンク部2a内の水を、流量センサ22と流路を形成する配管23を介して吸引し、図2において一部が現れている配管25を介してボイラー部26へと送水する。
【0036】
ボイラー部26は、流量センサ22のさらに上部の本体部1内部のやや上方よりの部分に配置されていて、送水ポンプ24より圧送されてきた水が流れる流路26aと、流路26aを取り巻くように配置されて流路26a内の水を加熱する加熱ヒータ26bとを備えている。ボイラー部26で流路26a内の水が加熱ヒータ26bにより加熱されて生成された蒸気や湯は、本体部1内部の上端部分に向かって配置された給湯管27を通って、ドリップ部11へと送られる。
【0037】
本体部1の上面に形成された操作部14の下側には、操作部14に配置されたスイッチボタン15に接続されたスイッチング素子などが搭載された操作基板28が配置されている。
【0038】
本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、送水ポンプ24やボイラー部26を制御して所定の条件でコーヒーの抽出を行う、制御部を構成する制御回路29が、電源配置部21の電源回路基板21aに搭載されている。制御回路29は、流量センサ22の出力である流量信号や、ボイラー部26内における蒸気や湯の温度を検知する温度センサからの信号などを受信して、送水ポンプ24の送水量や送水タイミング、ボイラー部26における加熱度合いなどを制御する。また、操作基板28に搭載されたスイッチング素子からの信号は、図示しないコネクタ素子などを介して制御回路29に伝達される。さらに、制御回路29は、操作機板上に搭載されたランプや表示デバイスなどを動作させて、ユーザーにコーヒーメーカー100の動作状態などを報知する。
【0039】
このような制御回路29を備えることで、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、操作部14の操作ボタン15を介して行われるユーザーからの指示に応じて、例えば、湯を供給するドリップ工程の前に所定時間蒸気のみをコーヒー粉末に供給するむらし工程を行うなど、抽出量や指示された抽出濃さに応じたプログラムにしたがっておいしいコーヒーを抽出する抽出工程を自動的に実行することができる。
【0040】
また、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100において、制御回路29は、所定の抽出工程の終了後に、ドリップ部11内に残存するコーヒーを積極的に押し出してコーヒーカップへと注ぐ押し出し工程や、押し出し工程の終了後に、ボイラー部26や給湯管27内に残存していた湯や蒸気などが不所望に吹き出すことがないように冷却する冷却工程などの抽出終了工程を実行する。
【0041】
さらに、制御回路29は、ドリップ部11においてコーヒー原料が正しくセッティングされていない場合や、給水タンク2内に所定量の水が収容されていない場合など、コーヒーを抽出する抽出工程を開始することができない状態である場合には、これを検出してユーザーに警告音などで知らせるエラー表示機能を備えることもできる。また、制御回路29は、抽出終了工程の終了後に、ユーザーにコーヒーの抽出が完了したことを知らせる抽出完了信号を電子音やランプの点灯などとして発信することができる。
【0042】
このような制御回路29は、マイクロコンピュータや各種の論理回路、さらには抽出プログラムが記憶された記憶媒体などによって構成でき、制御ICとしてチップ化されて構成することができる。
【0043】
なお、制御回路29は、比較的熱に弱い電子回路で構成されるため、発熱部材であるボイラー部26から隔離されるとともに、水漏れや高温となる畏れがある給水機構に対して隔離された、本体部1内部の上方に配置することが好ましい場合がある。このため、例えばスイッチング素子などが搭載された操作基板28上に、制御回路29を配置することができる。また、適切な熱遮蔽処置や防水処置を採ることで、本体部1内部の所望する場所に、電気回路基板を配置して制御回路29を搭載することができる。
【0044】
本体部1の上端側の、図2における左側端部(図1における手前側の端部である一側面)には、ドリップ部11を構成する蓋体30がヒンジ機構33によって、回動可能に取り付けられている。蓋体30は、本体部1の上端側の手前側端部から後退する方向である、図2中に矢印Aとして示す方向に回動してドリップ部11の上部を開放するとともに、矢印Bとして示す方向に回動してドリップ部11の上部を閉塞する。
【0045】
蓋体30の内部には、給湯管27に接続されたドリップ配管34が形成され、ドリップ配管34の先端は蓋体30の内側面の中央に配置された吐出口35に接続されている。なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、蓋体30は平面視円形状に形成されていて、中央の内側面に吐出口35を備えた中心部32と、中心部32を取り巻くように同軸状に形成されて、中心部32に対して所定の角度回動可能な外周部31とから形成されている。
【0046】
蓋体30は、図中矢印B方向に回動した状態、すなわち図2に示すようにその上面が水平となっている状態で、容器保持部であるホルダ受け部50との間に配置された原料容器40を保持する。原料容器40は、容器ホルダ41、容器ホルダ41の内部に配置される原料保持部材(図2ではポッドタイプに対応したポッド用アダプタ42が記載されている)とから構成され、蓋体30とホルダ受け部50とによって挟み込まれた状態となる。このように蓋体30とホルダ受け部50とで原料容器40を挟み込んだ状態で固着させ、吐出口35から所定のタイミングで所定量の蒸気や湯が吐出されることで、原料保持部材に収容されたコーヒー粉末からコーヒーが抽出される。
【0047】
なお、本実施形態のコーヒーメーカー30に用いられる蓋体30は、例示した平面視円形状のものに限られず、例えば平面視したときに全体として矩形や正方形のものなど、コーヒーメーカーのデザイン性と原料容器を開閉可能に覆う機能性との観点から、その平面形状を適宜選択することができる。
【0048】
図3は、本実施形態にかかるコーヒーメーカーにおける、ドリップ部の構成を説明するための分解図である。
【0049】
図3に示すように、ドリップ部11には、ヒンジ機構33(図2参照)により図中後方側へと回動してドリップ部11の上方を開閉可能に覆うことができる蓋体30と、本体部1の手前側側面の底部に配置されたトレイ12と所定の間隔を有してこれと対向するように配置されたホルダ受け部50との間に、抽出原料を収容する原料容器40(40a、40b)が配置されて構成される。
【0050】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、ホルダ受け部50に搭載される容器ホルダ41と、容器ホルダ41と重ね合わせることで容器ホルダ41の内側の所定位置に保持される原料保持部材とが、蓋体30とホルダ受け部50との間に挟み込まれる原料容器40を構成する。ポッドタイプの収容体に収容されたコーヒー粉末を用いてドリップする場合には、ポッド用アダプタ42が原料保持部材として使用され、原料容器40aを構成する。また、ミルなどによって挽かれたコーヒー粉末を用いてドリップする場合には、散水板43とフィルタケース44とが積層されて原料保持部材となり、容器ホルダ41内に配置されて原料容器40bを構成する。
【0051】
なお、蓋体30の内側面、すなわち、原料容器40に対向する面には、中央部に形成された吐出口35の周囲に中央パッキン36が、さらに、中央パッキン36の周囲には中央パッキン36と同心円状の環状パッキン37が配置されている。また、蓋体30の回動可能な外周部31(図2参照)の内側面には、係持ピン38が原料容器40(40a、40b)に向かって突出形成されている。この係持ピン38が原料容器40に形成された第1の係持部材41h(図4図5参照)とホルダ受け部50に形成された第2の係持部材56(図6参照)とに嵌合することで、蓋体30は、原料容器40とホルダ受け部50とにしっかりと固着される。蓋体30が原料容器40とホルダ受け部50とに一体的に固着されることで、中央パッキン36と環状パッキン37とが原料容器40の上面部分に密着して、吐出口35と抽出原料が収容されたポッド容器の上面もしくは原料保持部材の上面との間を、外部の空間に対して密閉することができる。
【0052】
なお、図3に示すように、本体部1の貯水タンク2が隣接して配置されていない側(図3における向かって左側)の下部から、商用電源に接続される電源プラグ16が延出している。電源プラグ16は、一端が本体部1内部の電源配置部21の電源回路基板21aに接続されていて、コーヒーメーカー100に電源を供給する。なお、コーヒーメーカーを収納する時の便宜を図るために、電源プラグ16の特にコード部分を本体部1の内部に収容可能な構成とされる場合がある。
【0053】
次に、原料容器40(40a、40b)の構成について説明する。
【0054】
図4は、抽出原料としてポッドタイプの容器内に封入されたコーヒー粉を用いる場合に使用される原料保持部材を備えた、原料容器の構成を説明する分解斜視図である。
【0055】
図4に示すように、抽出原料としてポッドタイプの容器に収容されたものを使用する場合は、容器ホルダ41内に、ポッド用アダプタ42を装着して原料容器40aを形成する。
【0056】
容器ホルダ41は、底面側にいくにつれて少しずつ径小となる側面を有する有底略円筒状の容器である。容器ホルダ41の内側に形成される空間41aの上部には、外側に広がる円環状のつば部41bが形成され、さらに、つば部41bの外周には上方へ向かう壁部41cが形成されている。壁部41cの一部には、上端から外側方向に延在する幅広の把持部41dが形成されていて、ユーザーが容器ホルダ41を容易に持つことができるようになっている。また、把持部41dが形成されている側に対向する側面部分上端部では、壁部41cに切り欠き部41eが形成されていて、切り欠き部41eが形成されている部分では壁部41cは形成されていない。
【0057】
なお、容器ホルダ41の底面41gの中央には貫通口41j(図7参照)が形成されていて、抽出されたコーヒーは、この貫通口41jを通ってトレイ12上のコーヒーカップに注がれる。
【0058】
ポッド用アダプタ42は、有底略円筒状の容器である。ポッド用アダプタ42は、内側に形成される空間42aの上部に外側に向かって張り出す円環状のつば部42bが形成され、つば部42bの外周部分は、上方に向かって延出する壁部42cとなっている。つば部42cの一部分から外方に向けて、把持部42dが形成されていて、ユーザーは、把持部42dを用いてポッド用アダプタ42を容易に把持することができる。
【0059】
なお、つば部42bの内側部分には、つば部42bよりも一段下がった状態の環状部分42jが形成されていて、ポッド用アダプタ42内にポッドが装着された場合に、ポッドの容器60の上面に形成されたつば状部分が載置される(図7参照)。
【0060】
ポッド用アダプタ42の底面42gにも貫通口42i(図7参照)が形成されているため、ポッド用アダプタ42に載置された状態のポッドから抽出されたコーヒーは、この底面42gの貫通口42iを通過して容器ホルダ41の内部の空間41a内に流れ、容器ホルダ41の底面41gの貫通口41jを介してコーヒーカップに注がれる。
【0061】
ポッド用アダプタ42の壁部42cの外径は、容器ホルダ41の壁部41cの内径に対してわずかに小さく形成されている。このため、容器ホルダ41の内側にポッド用アダプタ42を配置すると、ポッド用アダプタ42のつば部42bの裏側(下面側)が容器ホルダ41のつば部41b上に載置されることとなり、ポッド用アダプタ42を容器ホルダ41の内側に配置することができる。
【0062】
ポッド用アダプタ42の壁部42cの上端部と容器ホルダ41の壁部41cの上端部とは、両者が重ね合わせられた際にほぼ同一の高さとなるように形成されているため、ポッド用アダプタ42と容器ホルダ41とを重ね交わせた際に、両者をより一体のものに近い状態で取り扱うことができる。
【0063】
また、容器ホルダ41の壁部41cに形成された切り欠き部41eの幅がポッド用アダプタ42の把持部42dの幅とほぼ同じとなっており、さらに、容器ホルダ41のつば部41bに形成された切り欠き41fと、ポッド用アダプタ42の把持部42dの根本部分に形成された下側への突起部42fとが嵌合するようになっている。このため、容器ホルダ41内に載置した際には、ポッド用アダプタ42の把持部42dが容器ホルダ41の把持部41dと互いに対向する方向になるよう、両者の向きが整えられる。
【0064】
このようにして、容器ホルダ41とポッド用アダプタ42とを重ね合わせた際には、両者の位置関係が正確に定まることとなる。
【0065】
なお、容器ホルダ41の上部側面には、蓋体30の係持ピン38と係合することが可能な第1の係持部材41hが形成されている。また、ポッド用アダプタ42のつば部42bの外側には、壁部42cよりも高く形成された一対の位置規制衝立42hが形成されている。位置規制衝立42hは、蓋体30が原料容器40aを覆った際に、蓋体30の内面側に形成された位置決め溝と嵌合して、蓋体30と原料容器40aと間の位置関係をより正確に規制することができる。また、ポッド用アダプタ42の把持部42dの上面側部分は、所定の広さを有する平坦面42eが形成されている。蓋体30が原料容器40aを覆った際に、蓋体30のヒンジ機構33近傍に配置された押圧部材が、この平坦面42eを押圧することで、蓋体30と原料容器40aの密着性をより向上することができる。
【0066】
図5は、抽出原料としてコーヒー粉末を直接用いる場合の、原料保持部材を備えた原料容器の構成を説明する分解斜視図である。
【0067】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、挽かれた状態のコーヒー粉末を直接用いてドリップする場合には、ポッド用ホルダ42とこれに載置されるポッド部材に替えて、散水板43とコーヒー粉末を収容するフィルタケース44とが用いられる。この場合には、散水板43と内部に所定量のコーヒー粉末を収容したフィルタケース44とを重ね合わせて容器ホルダ41内に収容することで原料容器40bが構成され、原料容器40bが、蓋体30とホルダ受け部50との間に保持されることでドリップ部11が構成される。
【0068】
容器ホルダ41は、図4に示したポッドタイプの容器に収容されたコーヒー粉末を用いる場合と同じ部材であるため、説明は省略する。
【0069】
散水板43は、全体が円板形状として形成されていて、上面43aの外周部分に上方に向かう壁部43bが形成されている。上面43aは所定幅の円環状に形成されていて、上面43aの内側部分には下方側に突出した下方突出部43cが形成されている。下方突出部43cの中央には、小径の上方突出部43dが形成されていて、上方突出部43dの中央には円形の凹面43eが形成され、凹面43eには開口43fが複数個形成されている。
【0070】
上面43aの一部分からは、外方に伸びる把持部43gが形成され、ユーザーは把持部43gを利用することで容易に散水板43を持つことができる。把持部43gの上面側部分には、所定の広さを有する平坦面43hが形成されている。この平坦面43hは、図4で説明したポッド用アダプタ42の把持部42d上面の平坦面42eと同様に、蓋体30が原料容器40aを覆った際に、蓋体30のヒンジ機構33近傍に配置された押圧部材がこの平坦面43hを押圧することで、蓋体30と原料容器40bの密着性をより向上することができる。
【0071】
また、散水板43の把持部43gとは反対側の壁部43dには壁部43dよりもさらに高く形成されたつまみ部43iが形成されていて、ユーザーが散水板43を持つときに、把持部43gに加えてつまみ部43iを補助的に利用することができる。
【0072】
フィルタ部材44は、上方に向かって経大となる略カップ形状の部材である。
【0073】
フィルタ部材44の上部には環状のつば部44aが外方に向かって形成され、つば部44aの外周には上方に向かう壁部44bが形成されている。フィルタ部材44の側面は、所定の間隔で配置された柱状部材44cと柱状部材44cの間に配置されたメッシュ部材44dで構成されていて、フィルタ部材44の内部に所定量のコーヒー粉末を入れて1杯分のコーヒーを抽出することができる。
【0074】
メッシュ部材44dとしては、一例として、ステンレス製で200番手のメッシュを用いることができる。なお、フィルタ部材44dとしては、ステンレスメッシュの他にもナイロンメッシュなどのメッシュ部材を用いることができる。さらに、メッシュの番手としても、抽出される飲料の好適な抽出速度を考慮して、100番程度から300番程度の所定の粗さのメッシュを用いることができる。
【0075】
つば部44aの一部分には、つば部44aより外方へ延出する把持部44eが形成され、把持部44eの形成部分では、壁部44bが形成されずに切り欠き部44fとなっている。
【0076】
壁部44bの内径は、散水板43の壁部43bの外径よりもわずかに大きく形成されているため、フィルタ部材44の上部に散水板43を載置することができる。また、フィルタ部材44の把持部44eの幅は、容器ホルダ41の切り欠き41fの幅よりもわずかに小さく形成され、さらに、散水板43の把持部43gの裏面内部に収容可能な大きさとなっている。また、フィルタ部材44の切り欠き部44fの幅が、散水板43の把持部43gの幅よりもわずかに大きく形成されている。このため、容器ホルダ41とフィルタ部材44と散水板43とを、回転方向における互いの位置合わせを行った状態で、この順に積層することができる。
【0077】
なお、フィルタ部材44のつば部44aの外側には、壁部44bよりも高く形成された一対の位置規制衝立44gが形成されている。位置規制衝立44gは、ポッド用アダプタ42の位置規制衝立42hと同様に、蓋体30が原料容器40bを覆った際に、蓋体30の内面側に形成された位置決め溝と嵌合して、蓋体30と原料容器40bと間の位置関係をより正確に規制することができる。
【0078】
本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、抽出原料としてポッドを用いる場合には、図4に示したポッド用アダプタ42にポッドを装着し容器ホルダ41に載置することで原料容器40aを構成してドリップ部11に配置する。抽出原料としてコーヒー粉末を直接用いる場合には、図5に示した散水板43と内部にコーヒー粉を収容したフィルタ部材44とを積層して容器ホルダ41に載置して原料容器40bを構成してドリップ部11に配置する。このようにして、いずれの抽出原料を用いた場合でも同様に簡易にコーヒーを抽出することができる。このとき、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100においては、抽出原料としてポッドを用いる場合とコーヒー粉末を直接用いる場合とのいずれの場合でも、ユーザーは、内部にコーヒー粉末を収容した状態の原料容器40(40a、40b)を容器ホルダ41の把持部41dを用いて一体的に取り扱うことができる。
【0079】
図6は、原料容器が取り外された状態のコーヒーメーカーを示す斜視図である。
【0080】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、本体部1の幅狭側面(一側面)側に配置されたドリップ部11の蓋体30がヒンジ機構33により回動可能となっていて、蓋体30はドリップ部11の原料容器40の上方を覆った閉塞状態(図2の状態)から、図6に示す、一側面から後退する方向に所定の角度(一例として約50度)開いた開放状態へと移行できるようになっている。
【0081】
ドリップ部11において、原料容器40が装着されるホルダ受け部50は、円板状の底面51と上方に行くにつれて経大となる傾斜面として形成された側面52と、側面52の上端部に形成された外方へ広がる円環状のつば部53と、つば部53の外周部分から上方へと延出された壁部54とで構成されている。
【0082】
ホルダ受け部50の底面51には、中央に底面51と同心円状に開口55が形成されている。また、図6に示すように、ホルダ受け部50の側面52、つば部53、壁部54は、いずれも本体部1側のみに形成されていて、ホルダ受け部50の側面52、つば部53、壁部54は、いずれも底面51の中心を通る中心線に沿った切断線で、本体部1の一側面の側に位置する約半分が切断されて開放された形状となっている。
【0083】
本実施形態のコーヒーメーカーにおける原料容器として、図4および図5を用いて詳細に説明したとおり、ポッドを用いる場合の原料容器40aとコーヒー粉末をそのまま用いる場合の原料容器40bとは、それぞれを構成する部材は異なるものの、いずれも同じ容器ホルダ41に載置され、原料容器40として組み立てられた状態で同じ外観形状となるように構成されている。
【0084】
また、本実施形態のコーヒーメーカー100における容器ホルダ41は、底面側にいくにつれて少しずつ径小となる側面を有する略円筒状に形成されており、原料容器40として組み立てられた場合において、ユーザーが把持する把持部41dの反対側には側面から平板状に伸延する部材として把持部42dと43gのみが形成された形状となっている。このため、本体部1の一側面である幅狭側の側面(図6における左手前側側面)に対峙した状態のユーザーが、ホルダ保持部50上に原料容器40を差し込むように載置しようとした場合に、ホルダ保持部50と干渉する部分が無くユーザーは、原料容器40を真っ直ぐに押し込むようにして、ホルダ受け部50上に位置させることができる。
【0085】
一方、容器ホルダ41の底面41gには、底面41gに形成された貫通口41jを取り巻くように筒状突起部41iが形成されていて(図7参照)、この筒状突起部41iは、ホルダ受け部50の底面51に形成された開口55に嵌合する大きさとなっている。このため、ユーザーは、筒状突起部41iがホルダ受け部50の底面51を超えて開口55に嵌合するように、少しだけ原料容器40を持ち上げるだけで、原料容器40をホルダ受け部50上の正しい位置に載置することができる。したがって、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、ドリップ部11に原料容器を載置するに当たって原料容器40の上方を覆う蓋体30が完全に開く必要はなく、図6に示すように所定角度(一例として約50度)の回動が行われれば、ドリップ部11の所定位置に本体部1の側方から原料容器40を載置することができる。
【0086】
一方、上述のように、ホルダ受け部50の底面51は円環状に形成されると共に、底面51の開口55には、容器ホルダ41の底面の筒状突起部41iが嵌合するようになっている。また、原料容器40においてドリップ部11に装着された状態での奥側である、本体部1の内部側に向かって伸延する把持部42dと43gの上面には、平坦面42eと43hとがそれぞれ形成されている。この平坦面42eと43hとは、蓋体30が閉塞した際には蓋体30のヒンジ機構33近傍に形成された押圧部材となる抑えリブ39(図6参照)によって押圧されるため、蓋体30が原料容器40を覆った状態でロックされれば、原料容器40をドリップ部11内でしっかりと保持することができ、手前側に外れてしまうことはない。このため、本実施形態のコーヒーメーカー100では、従来のコーヒーメーカーと比べて本体部内部への原料容器40の装着が格段に容易であり、また、ユーザーにとっては手前側である本体部の側方(一側面側)から原料容器40を着脱できるので、コーヒーメーカー100の載置場所として低い位置を選ばなくてはならないという不都合が生じない。
【0087】
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、平面視円形状の蓋体30の中心部32を取り巻くように同軸状に形成された外周部31が、中心部32に対して所定の角度回動可能に配置されている。そして、外周部31には、原料容器40と対向する側である内側面に突出形成された係持ピン38(図3参照)が形成されている。一方で、ホルダ受け部50に載置された状態で原料容器40の外殻をなす容器ホルダ41の上部側面には、蓋体30の径方向外側に向かって突出形成された第1の係持部材41h(図4図5参照)が形成されている。また、ホルダ受け部50の上部には、第1の保持部材41hに対向するように配置され、蓋体30の径方向内側に向かって突出形成された第2の係持部材56(図6参照)が形成されている。
【0088】
蓋体30の係持ピン38は、その断面形状が先端部である下端側が広がった逆T字状となっているため、第1の係合部材41hと第2の係合部材56とが対向している間隙部に入り込むことで、両係持部材41h、56と係合して、蓋体30を原料容器40とホルダ受け部50とに対して同時に、かつ、一体的に固着することができる。
【0089】
また、ユーザーが蓋体30の外周部31を中心部32に対して回動することで、蓋体30と原料容器40およびホルダ部材50との係合を解除することができる。なお、このとき、バネなどの弾性部材を用いた付勢手段によって、蓋体30の外周部31が係合状態を維持できる位置に留まるように付勢することで、ユーザーが蓋体30のロックとロック解除とをより容易に行うことができるようにすることができる。また、蓋体30のヒンジ機構部33に、蓋体30が開いた状態となる方向に維持する付勢手段を設けることで、ユーザーが蓋体30のロックを解除した際の蓋体30の開放を容易に行うことができるようにすることができる。
【0090】
図7は、本実施形態のコーヒーメーカーにおけるドリップ部の構成を示す要部拡大断面図である。図7は、図2と同様にコーヒーメーカーを貯水タンクの配置側から見た側断面図であり、ドリップ部にポッドタイプの容器が装着され、蓋体がロックされてコーヒーの抽出が可能な状態を示している。
【0091】
ポッドタイプの容器を抽出原料として用いてコーヒーの抽出を行う場合には、図7に示すように、ポッドタイプの容器60が内部に収容されたポッド用アダプタ42が、容器ホルダ41と重ね合わされた状態でホルダ受け部50の底面51と蓋体30とに挟まれ、蓋体30がロックされる。
【0092】
ポッドタイプの容器60は、直径に対して深さ方向がやや大きな略半球状のカップ部61と、カップ部61の上面を覆うとともにカップ部61よりも外側に張り出したつば部を持つ平面部62とから形成されていて、カップ部61内に所定量のコーヒー粉末63が収容されている。
【0093】
容器60のカップ部61の直径となる上端部分の外径は、ポッド用アダプタ42の円筒状部分の上端部分の内径よりもやや小さく形成され、容器60の平面部62の外側に張り出した部分がポッド用アダプタ42のつば部42b内側の一段下がった環状部分42j上に載置されることで、ポッド用アダプタ42の円筒状部分内に容器60のカップ部61が位置するようになる。
【0094】
図3に示したように、蓋体30の底面に形成された中央パッキン36は、蓋体30の底面周辺部に配置された環状パッキン37よりもさらに突出するように形成されているため、容器ホルダ41a内に収容された容器60が収容された状態で蓋体30がロックされると、容器60上面の平面部62の中央パッキン36が当接する中央部分62a(ポッドを上方から平面視した場合の中心部分で、図7における奥行き方向における中央部分)は、ポッド用アダプタ42の環状部分42jと蓋体30の環状パッキン37とに挟まれている平面部62の周辺部分62b(ポッドを上面から平面視した場合の周辺部分で、図7では最も奥側に位置する部分)と比較して、下側に押し下げられた状態となる。このようにして、蓋体30がロックされたコーヒー抽出時の状態では、蓋体30の底面中央に形成された吐出口35が容器60の上面の平面部62の中央部分に確実に密着する。
【0095】
ポッドタイプの容器60のカップ部61は、抽出されたコーヒーやカップ部61内に供給された蒸気が通り抜けられるように紙製また樹脂製のフィルタ部材として形成されている。また、ポッドタイプの容器60の平面部62は、樹脂製のフィルム素材により形成されていて、中央部分には微細な開口が形成されている。このため、平面部62は、中央部分では吐出口から吐出された蒸気や湯を良好に透過させることができるとともに、中央部分以外では、蒸気や湯をほとんど、もしくは、全く透過させない構成となっている。
【0096】
このため、ポッドタイプの容器60が装着された状態でコーヒーメーカー100の抽出工程が開始された場合には、ドリップ配管34を介してポッドタイプの容器60に供給された蒸気や湯が、吐出口35から容器60の平面部62の中央部分の開口を経てカップ部61内に供給され、コーヒー粉末63を蒸したり、コーヒーを抽出したりする。抽出されたコーヒーは、カップ部61の側面からポッド用アダプタ42内部の空間42aへと滲み出して、ポッド用アダプタ42の底面42gに形成された貫通口42iを経てポッド用アダプタ42と容器ホルダ41との間の空間41aに到達する。さらに、抽出されたコーヒーは、容器ホルダ41の底面41gの中央部に形成された貫通口41jを通って、下方に位置するトレイ12(図1参照)上に配置された図示しないコーヒーカップに注がれる。
【0097】
なお、本実施形態のコーヒーメーカー100では、図7に示すように、容器ホルダ41の貫通口41jは、平面視円形状に形成されているドリップ部11の中心に位置し、蓋体30の中央部分に形成された吐出口35の真下に位置するように形成されているのに対し、ポッド用アダプタ42の貫通口42iは、ドリップ部11の中心位置から本体部1側(図7における右側)に偏心した位置に形成されている。この結果、本実施形態にかかるコーヒーメーカーでは、ポッドタイプの容器60の底面と容器ホルダ41の貫通口41jとを結ぶ線上ではポッド用アダプタ42の底面42gが介在して、容器60のカップ部61の底部と貫通口41jとが直線状には結ばれないようになっている。
【0098】
仮に、カップ部61の底面中央と貫通口41jとが直線状に結ばれていた場合には、コーヒー抽出時の特に抽出開始時に、カップ部61の底部中央から滲み出したコーヒーが、そのまま貫通口42iと貫通口41jとを通り抜けて、貫通口41jの下方に配置されたコーヒーカップに落下する。この場合、コーヒーカップを貫通口41jに近づけておいた場合でも、コーヒーカップと容器60のカップ部61底面との間には一定以上の高度差が生じているため、落下したコーヒーが大きく撥ねる場合がある。しかし、本実施形態のコーヒーメーカー100の場合には、ポッドの容器60カップ部61底面から抽出されたコーヒーが、そのまま容器ホルダ41の貫通口41jを通過して落下することがないため、このような事態は生じない。このため、本実施形態のコーヒーメーカー100では、撥ねたコーヒーによってコーヒーメーカー周囲のテープル面などが汚れるなどの不所望な事態の発生を、効果的に回避することができる。
【0099】
また、本実施形態のコーヒーメーカー100では、ポット用アダプタ42の貫通口42iの開口径d1と、容器ホルダ41の貫通口41jの開口径d2との間に、d1>d2という関係が成り立つように構成されている。
【0100】
上述したように、本実施形態のコーヒーメーカー100では、ポッド用アダプタ42の貫通口42iが容器ホルダ41の貫通口41jに対して偏心して配置されている。このため、ポッドの容器60からコーヒーが連続して抽出されている状態では、ポッド用アダプタ42の内部42aに溜まったコーヒーが、容器ホルダ41の底面41gに当たり、底面41g上を流れた後に貫通口41jからコーヒーカップに注がれる。このように、抽出されたコーヒーに容器ホルダ41内の空間41aで横方向に向かう動きが加わるため、貫通口41jからコーヒーカップへと注がれるコーヒーに、図7中の左右方向に向かう「流れ」が生じやすくなる。また、容器60からのコーヒーが不連続に抽出されている状態では、最終的に容器ホルダ41の貫通口41jからコーヒーカップへと供給されるコーヒーがそのまま不連続なものとなるが、容器ホルダ41の貫通口41jから注がれるコーヒーに、このような「流れ」や不連続が生じると、貫通口41jからコーヒーカップに注がれるコーヒーに乱れが生じて、コーヒー撥ねの原因となりやすい。
【0101】
これに対し、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、ポッド用アダプタ42の貫通口42iの開口径d1を容器ホルダ41の貫通口41jの開口径d2よりも大きくすることで、ポッド用アダプタ42から容器ホルダ41内の空間41aへと単位時間内に供給されるコーヒーの量が、容器ホルダ41内の空間41aから単位時間内にコーヒーカップへと注がれるコーヒーの量よりも大きくなる。この結果、必然的に容器ホルダ41内の空間41aに抽出されたコーヒーが溜まるため、ポッド用アダプタ42の貫通口42iが偏心していることに起因する貫通口41jから注がれるコーヒーに生じる「流れ」の影響を解消することができ、容器ホルダ41の貫通口41jからは、真下の方向へとコーヒーが注がれるようになる。
【0102】
また、特に、コーヒー抽出の終了前でコーヒーの抽出量が低減してきた状況において、容器ホルダ41内の空間41aにコーヒーが残っていることにより、貫通口41jから注がれるコーヒーが不連続となることも解消される。よって、本実施形態のコーヒーメーカー100では、貫通口41jからコーヒーカップに注がれるコーヒーがまとまらなかったり間欠的に注がれたりすることに起因する、コーヒー撥ねを効果的に防止することができる。
【0103】
次に、本実施形態にかかるコーヒーメーカーで行われる、抽出終了工程について説明する。
【0104】
前述したように、本実施形態にかかるコーヒーメーカーでは、制御部である制御回路29が、流量センサ22やボイラー部26の温度センサなどの計測値に基づいて送水ポンプ24の総水量とボイラー部26の加熱ヒータ26bの熱量を調整することで、蓋体30の吐出口35から原料容器40(40a、40b)へと供給される蒸気量や湯量、その供給タイミングを制御する。特に、吐出口35から湯を供給する前に、所定時間蒸気のみを供給してコーヒー粉体を蒸らすむらし工程を行うことで、コーヒー粉をより抽出しやすい状態に維持するとともに、コーヒー粉体に供給する湯の量と温度とを調整して抽出されるコーヒーの濃さを調整することで、ユーザーの好みに応じたおいしいコーヒーを抽出することができる。
【0105】
制御回路29は、所定量の湯の供給が終了すると、送水ポンプ24を停止するとともにボイラー部26の加熱ヒータ26bへの通電を停止し、抽出工程が終了する。その後、本実施形態のコーヒーメーカー100では、制御回路29が押し出し工程と冷却工程とを含む抽出終了工程を実行する。
【0106】
図8は、本実施形態にかかるコーヒーメーカーにおいて抽出工程後に行われる、抽出終了工程における送水ポンプとボイラーの加熱ヒータに対する通電制御パターンを示すタイムチャートである。
【0107】
図8において、上段71がボイラー部26の加熱ヒータ26bのON/OFFタイミングを示す。また、下段72が、送水ポンプ24のON/OFFタイミングを示す。
【0108】
図8において、時刻t0が抽出工程の終了時点を示す。時刻t0において、制御回路29は、ボイラー部26の加熱ヒータ26bをOFFすると同時に、送水ポンプ24をOFFする。
【0109】
その後、一定の時間(一例として3秒間)経過後の時刻t1から、所定の時間が経過する時刻t2までの間、制御回路29はボイラー部26の加熱ヒータ26bのみをONする。
【0110】
この時刻t1からt2までの一例として4秒間である期間が、第1の押し出し工程となる。
【0111】
第1の押し出し工程では、ボイラー部26が加熱されることで、ボイラー部26内の水が水蒸気化して膨張し、ボイラー部26から給湯管27、ドリップ配管34内に水滴状となって残っていた湯を原料容器40内へと供給してコーヒーの抽出に寄与させることができる。また同時に、膨張した空気によって原料容器40内のコーヒー粉の上側に位置する空間部分を押圧して、ポッドタイプの容器60やフィルタ部材44内に残存しているコーヒーを押し出して、容器ホルダ41内部の空間41aへと押しやる作用が加わる。
【0112】
第1の押し出し工程は、抽出工程が終了した後短時間が経過した状態で行われるため、容器60やフィルタ部材44中のコーヒー粉の間にはまだ外部へと抽出される水分(湯)が比較的多く残っている状態であると考えられる。また、コーヒーカップに注がれる前のコーヒーが、容器ホルダ41内の空間41a部分に残存している状態である。このため、ドリップ配管34内の水滴を急激に押し出し、抽出されているコーヒーに急な圧力が加わるような押し出し工程を実行すると、容器ホルダ41の貫通口41jから急激にコーヒーが噴出してしまう畏れがある。よって、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、コーヒーの抽出工程が終了した後の最初の押し出し工程として、ボイラー部26内の空気を膨張させることで比較的優しい押し出し作用を加える押し出し工程を第1の押し出し工程としている。
【0113】
次に、第1の押し出し工程が終了したt2の後、一定期間(一例として2秒間)が経過したt3からt4までの所定期間、制御回路29はボイラー部26の加熱ヒータ26bをONするとともに、送水ポンプ24を間欠的にON/OFFする動作を繰り返す。
【0114】
このt3からt4までの一例として6秒間が、第2の押し出し工程となる。
【0115】
第2の押し出し工程では、ボイラー部26の加熱ヒータ26bがONの状態で送水ポンプ24を間欠的にON/OFFすることで、ボイラー26に供給された水は瞬間的に温まって蒸気となり、吐出口35から原料容器40(40a、40b)に供給される。
【0116】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、抽出工程の終了後に第1の押し出し工程を経ているため、給湯管27やドリップ配管34内には湯がほとんど残存していないものと考えられる。このため、ボイラー部26で生成された蒸気は、原料容器40内に入り込んで、ポッドタイプの容器60やフィルタ部材44内に残存しているコーヒーを強く押し出し、容器ホルダ41内の空間41aへと押しやる比較的大きな作用を加えることができる。
【0117】
なお、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、第1の押し出し工程を経ていることで、容器ホルダ41内の空間41aに溜まっていたコーヒーのほとんどが、貫通口41jからコーヒーカップに注がれた状態となっていると考えられる。このため、第2の押し出し工程では、蒸気を吹き付けることで比較的強い押し出し作用をコーヒー粉に与えて、残っているコーヒーの抽出を促進させることが好ましいと考えられる。
【0118】
また、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100において、第2の押し出し工程では、蒸気のみが供給されることで新たにコーヒーを抽出する水分がコーヒー粉に加わるという作用が生じにくく、第2の押し出し工程の終了時には、原料容器40内には、抽出されるべきコーヒーはほとんど残っていない状態とすることができると考えられる。
【0119】
次に、第2の押し出し工程が終了した時刻t4から、一例として3秒間である一定の時間が経過した時刻t5から所定の期間経過後の時刻t6までの間、制御回路29は、ボイラー部26の加熱ヒータ26bはOFFの状態で、送水ポンプ24のみを間欠的にON/OFFさせる。
【0120】
この時刻t5からt6までの一例としての6秒間が、冷却工程となる。
【0121】
冷却工程では、ボイラー部26の加熱ヒータ26bがOFF状態のままであるため、送水ポンプ24によって間欠的に送水された水が、ボイラー部26の流路26aを冷やす作用が生じる。この結果ボイラー部26の温度が低下し、冷却工程が終了する時刻t6以降は、残存する熱によるボイラー部26から原料容器40側への湯や蒸気の供給が行われない状態まで、ボイラー部26の流路26aや給湯管27、ドリップ配管34が冷やされる。
【0122】
このような冷却工程を備えることで、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、抽出工程の終了後に十分な時間が経過したにもかかわらず容器ホルダ41の貫通口41jから不所望に残存していたコーヒーが抽出されることが防止され、コーヒーの抽出が終了したと認識したユーザーがコーヒーカップを取り出した後にコーヒーが滴下してしまうという不測の事態を防止することができる。
【0123】
なお、冷却工程における初期の段階でボイラー部26に供給された水が、ボイラー部26で蒸気となる可能性があるが、冷却工程の最初に生じた蒸気は、冷却工程の前に行われる第2の押し出し工程における蒸気と同じ働きをするため、原料容器40内に残っているコーヒーを押し出す効果を奏することとなる。このため、ボイラー部26の加熱ヒータ26bに通電する第2の押し出し工程の後に加熱ヒータ26bに通電しない冷却工程を行うことがより好ましい。
【0124】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、冷却工程が終了したt6の後、20秒から40秒間の一定時間経過した時刻t7のタイミングで、ユーザーにコーヒーの抽出が終了したことを報知するようにしている。
【0125】
以上説明したように、本実施形態にかかるコーヒーメーカー100では、抽出工程が終了した後に、制御回路29が押し出し工程と冷却工程とを備えた抽出終了工程を実行することで、原料容器内に残っていたコーヒーを押し出して抽出作業を確実に終了させるとともに、ボイラー部26や給湯管27、ドリップ配管34の温度を下げることができる。このため、本実施形態のコーヒーメーカー100では、抽出工程の終了後に容器ホルダ41の貫通口41jから、ぽたぽたとコーヒーが滴下する状態を早期に終了することができるとともに、コーヒーの滴下が終了した後に、ボイラー部26内などに残存していた蒸気が噴き出してしまうなどの不測の事態を効果的に回避することができる。
【0126】
なお、上記で説明した抽出終了工程は一例であって、それぞれの工程が実行される時間やそれぞれの工程の実行間隔は、ボイラー部26の加熱能力やドリップ部11やドリップ配管34などのコーヒーメーカーの構造、抽出されるコーヒーの種類や量などに応じて、適宜調整することができる。
【0127】
例えば、第1,第2の押し出し工程におけるボイラー部26の加熱ヒータ26bのON時の条件は、抽出工程における加熱ヒータ26bのON条件と同じとすることができ、一例として加熱ヒータ26bの設定温度が120°とすることができる。また、押し出し工程における加熱ヒータ26bの設定温度を、抽出工程における加熱ヒータ26bのON条件の設定温度とは異なる温度とすることができ、押し出し工程を複数備える場合には、それぞれの押し出し工程での加熱ヒータ26bの設定温度を適宜定めることができる。
【0128】
また、抽出終了工程における送水ポンプ24の間欠的なON条件としては、抽出工程の冒頭に行われるむらし工程での送水ポンプ24のON条件と同じとすることができる。具体的には、例えば、0.5秒間から1秒間までの所定時間でのON時間とOFF時間とを、間欠動作期間内で繰り返すように設定することができる。もちろん、送水ポンプ24の間欠的動作条件は適宜変更して設定することができ、例えばON時間に対するOFF時間の比率を変更することや、一つの間欠動作期間内でON時間、または、OFF時間の一方または双方の時間を徐々に変化させることが可能である。
【0129】
さらに上記実施形態では、抽出終了期間において、2回の加熱ヒータ26bのON期間と2回の送水ポンプ24の間欠的なON/OFF動作期間として、いずれも同じ条件のものを例示して説明したが、これらの条件はそれぞれ適宜変更することができる。
【0130】
また、本実施形態では、図8を用いて、ボイラー部26のみを動作させる期間と、ボイラー部26と送水ポンプ24とを両方動作させる期間と、送水ポンプ24のみを動作させる期間とを用いて、それぞれ第1の押し出し工程、第2の押し出し工程、冷却工程としてこの順番で実行するタイムチャートを説明した。しかし、本願で開示する飲料抽出装置における抽出終了工程は、図8で例示したものには限られず、押し出し工程と冷却工程のいずれか一方のみの工程とすることができる。さらに、抽出終了工程を、一回のみの押し出し工程と冷却工程とを組合せた工程とすることができる。
【0131】
また、ボイラー部26の加熱ヒータ26bと送水ポンプ24の動作期間という観点からは、ボイラー部26のみを動作させる期間と、ボイラー部26と送水ポンプ24とを両方動作させる期間と、送水ポンプ24のみを動作させる期間とのいずれか一つのみを1回または複数回実行する工程とすることができ、または、いずれか2つの期間を組み合わせて1回または複数回繰り返して実行する工程とすることもできる。さらに、3種類の動作期間について一つまたは複数を所定の順番で複数回実行することで、所望のパターンでの抽出終了工程とすることもできる。
【0132】
なお、抽出終了工程を設定するに当たっては、抽出工程の終了直後の段階ではボイラー部26から原料容器40にかけての各部分の温度が高く、また、原料容器内には比較的大量の湯が残っていてコーヒー粉からコーヒーを抽出している最中であることを考慮し、特に、急激な押し出し作用が働いて抽出しているコーヒーが吹き出すような工程となることを避けることが好ましい。
【0133】
本実施形態のコーヒーメーカー100では、原料容器40が正しく載置されたことを検出できた場合にのみコーヒーの抽出工程が開始されるようにすることができる。この場合において、コーヒーの抽出工程が終了した後に、ユーザーが原料容器40を取り外すなどして原料容器40が正しい載置状態にない場合には、抽出終了工程を行わないように設定することで、より安全性の高い状態の抽出終了工程を実行することができる。
【0134】
なお、上記実施形態では、ポッドタイプのコーヒーを用いる場合とコーヒー粉をそのまま用いる場合との両方を可能とする構成として、原料容器の外形を同一に保った状態で異なる抽出原料を保持できるように異なる部材を積層して用いる例を示した。しかし、本実施形態のコーヒーメーカーにおいて、異なる抽出原料を使用可能とすることは必須ではない。
【0135】
また、上記詳細に例示した原料容器40a、40bの具体的な形状は例示に過ぎない。蓋体30とホルダ受け部50との間に載置されて内部に抽出原料を保持でき、蓋体30に形成された吐出口35から供給される湯を用いて飲料を抽出することができる各種形態の原料容器40を使用することができる。なお、本実施形態のコーヒーメーカー100のように、抽出原料として異なる形態で供給される原料を用いる場合には、原料容器40を複数部品の組立体として、一部または全部の部材を交換可能に組み立てて、原料容器として求められる外形形状と、内部に配置される原料を保持する原料保持部として求められる形状とが両立できるように設計することが好ましい。
【0136】
また、図4および図5に示したように、本実施形態のコーヒーメーカー100では、異なる原料を用いた場合の原料容器40(40a、40b)の外形をほぼ同じとすることで、いずれの原料容器40を用いた場合でも、蓋体30とホルダ受け部50との間に同じ状態で配置固着されるようになっている。なお、原料容器40の上部または側部などの外形部分に突起や凹所などの指標部を設け、本体部1に設けた検知手段によってこの指標部の形状を読み取ることで、ドリップ部11に載置されている原料容器40の種類を判別可能とすることができる。この場合には、制御部が判別結果に応じて、それぞれの原料によって異なる抽出工程を自動的に実行可能とすることができる。
【0137】
また、上記実施形態では、飲料抽出装置であるコーヒーメーカーの一側面に対して側方から原料容器を容器保持部に直接載置可能な構成の例について説明したが、原料容器の容器保持部への載置は、側方からのものに限られず、また、直接的にではなく、例えば容器収容部を覆う扉状の保護部材を開いて原料容器を載置する構成とすることができる。
【0138】
さらに、上記実施形態では、飲料抽出装置としてコーヒー粉末からレギュラーコーヒーを抽出するコーヒーメーカーを例示して説明したが、本願で開示する飲料抽出装置としては、紅茶や日本茶、ウーロン茶などの茶葉を用いていわゆるお茶を抽出する飲料抽出装置としても実現することができる。また、ココアなどの粉体を用いて飲料を抽出するもの、味噌などのペースト状の部材を用いて味噌汁を抽出するもの、その他、各種の汁物やスープを抽出するものなど、各種の飲料を抽出する飲料抽出装置を実現することができる。
【0139】
さらにまた、抽出できる飲料の容量も、一杯の飲料を抽出するものには限られず、数杯程度まで複数杯分の飲料を抽出可能な飲料抽出装置として実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示にかかる飲料抽出装置は、装置全体の小型化と構成の簡素化を図ることができ、低コストで操作性と安全性の高い飲料抽出装置として有用である。
【符号の説明】
【0141】
1 本体部
2 貯水タンク
11 ドリップ部(飲料抽出部)
24 送水ポンプ(送水手段)
26 ボイラー部(加熱手段)
29 制御回路(制御部)
30 蓋体
35 吐出口
40(40a、40b) 原料容器
50 ホルダ支持部(容器保持部)
100 コーヒーメーカー(飲料抽出装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8