特許第6646898号(P6646898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646898
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】乗用カート
(51)【国際特許分類】
   A63B 55/60 20150101AFI20200203BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20200203BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20200203BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20200203BHJP
【FI】
   A63B55/60 F
   A63B55/60 B
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 Z
   H01M8/0438
   A63B55/60 E
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-240249(P2017-240249)
(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公開番号】特開2019-107045(P2019-107045A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】龍野 廣道
(72)【発明者】
【氏名】金森 明文
(72)【発明者】
【氏名】森 英泰
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−187485(JP,A)
【文献】 特開2002−017921(JP,A)
【文献】 特開2005−102470(JP,A)
【文献】 特開2015−182719(JP,A)
【文献】 特開2001−259099(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/136275(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 55/60
B60L 50/00
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/0438
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に駆動手段を備えた乗用カートにおいて、
前記駆動手段は、車輪を回転駆動するモータと、該モータに電力を供給し、水素タンクと燃料電池とで構成される燃料電池ユニットとを備え
前記車両本体の前記燃料電池ユニットが装着される部分は開口して下方から空気を取り入れることができるように構成され、
前記車両本体に取り付けられた前記燃料電池ユニットを収容する後部ハウジングには、雨滴避けカバーを備えると共に、後部ハウジングの内部から外部に向かって斜め下方に向かうガス導出口が形成されることを特徴とする乗用カート。
【請求項2】
前記水素タンクは、交換自在に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の乗用カート。
【請求項3】
前記水素タンクは、固定配設されていることを特徴とする請求項1に記載の乗用カート。
【請求項4】
前記燃料電池ユニットには、前記水素タンク内の圧力を計測する圧力計が備えられることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の乗用カート。
【請求項5】
前記圧力計の出力で作動する報知手段が備えられることを特徴とする請求項4に記載の乗用カート。
【請求項6】
交換用の水素タンクが設置されていることを特徴とする請求項2、4又は5に記載の乗用カート。
【請求項7】
前記燃料電池ユニット又は/及び後輪の回転軸に装着された回生ブレーキで発生した電力を蓄えるバッテリーを備え、該バッテリーから給電可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の乗用カート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用カートに関し、特に、ゴルフ場でゴルフバッグ等の荷物や人の移動等に使用される乗用カートに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場では、ゴルフバッグ等の荷物や人の移動にゴルフカートが用いられることが多い。最近では、騒音や排気ガスよる環境問題を考慮し、特許文献1に記載されるように、エンジンよりモータを動力源とする電動ゴルフカートが広く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−51419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記電動ゴルフカートの電源として用いられているバッテリーは重いと共に、車体後部に配設されているので車体重心のバランスが悪く、傾斜地のある場所では走破性に問題がある。
【0005】
また、バッテリーは使用を続けていると劣化して適正な電圧を維持することができなくなり、正確な残量を把握し難いと共に、交換を余儀なくされて耐久性・経済性にも問題がある。
【0006】
さらに、バッテリーは夏場の暑い時期は劣化が早まり、冬場の寒い時期は劣化のおそれは少ないが、満足な性能を発揮し難くなり、走行距離が短くなって利便性にも問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、走破性、耐久性、経済性、利便性に優れた乗用カートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、車両本体に駆動手段を備えた乗用カートにおいて、前記駆動手段は、車輪を回転駆動するモータと、該モータに電力を供給し、水素タンクと燃料電池とで構成される燃料電池ユニットとを備え、前記車両本体の前記燃料電池ユニットが装着される部分は開口して下方から空気を取り入れることができるように構成され、前記車両本体に取り付けられた前記燃料電池ユニットを収容する後部ハウジングには、雨滴避けカバーを備えると共に、後部ハウジングの内部から外部に向かって斜め下方に向かうガス導出口が形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、燃料電池ユニットは発電機として機能するため、燃料さえ確保できれば走行可能であり、災害時の電気不通の際にも使用することができる。また、雨滴避けカバーを備えたガス導出部により、燃料電池ユニットへの雨滴の付着を回避しながら、後部ハウジングから効率よくガスを外部に導出することができる。
【0010】
上記乗用カートにおいて、水素タンクを交換自在に配設してもよく、固定配設することもできる。
【0011】
また、前記燃料電池ユニットには、前記水素タンク内の圧力を計測する圧力計を備えることができ、圧力計によって水素タンク内の水素ガスの残量を把握することができる。
【0012】
さらに、前記圧力計の出力で作動する報知手段を備えることで燃料の交換タイミングを把握することができ、効率的な運用ができる。
【0013】
また、交換用の水素タンクを設置することで、万が一、水素タンクが空になっても交換することで短時間で走行可能となる。
【0015】
さらにまた、前記燃料電池ユニット又は/及び後輪の回転軸に装着された回生ブレーキで発生した電力を蓄えるバッテリーを備え、該バッテリーから給電可能とすることで、災害時等に活用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、走破性、耐久性、経済性、利便性に優れた乗用カートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る乗用カートの第1の実施形態を示す概略側面図である。
図2図1に示す乗用カートの後部ハウジング(車両ハウジング)に設けられたガス導出部を示す概略断面図である。
図3図1に示す乗用カートの運転制御システムを示すブロック図である。
図4】本発明に係る乗用カートの第2の実施形態の運転制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る乗用カートの第1の実施形態を示し、この乗用カート1は、前部座席シート2と、後部座席シート3が取り付けられた車両本体4を備え、車両本体4に各種部品、部材が装着される。
【0020】
車両本体4には、前部ルーフ支柱6と後部ルーフ支柱7が設けられ、これらの支柱6、7上にルーフ8が支持される。前部ルーフ支柱6には、透明のウインドシールド(不図示)が装着される。
【0021】
車両本体4の後部には荷台9が設けられ、ゴルフバッグ10等の荷物がベルト等(不図示)で荷台9に固定される。
【0022】
車両本体4の前部には、ハンドル11が設けられ、前輪12を操舵する。一方、車両本体4の後部には後輪13が設けられ、図3に示す駆動手段14によって回転して乗用カート1を走行させる。
【0023】
後輪13の駆動手段14は、2つの後輪13の回転軸13aに配置されるモータ20と、モータ20に電力を供給するため、後部座席シート3の下部空間に配置された燃料電池ユニット15とを備える。モータ20には、回転軸13aの回転によって電力を発生させる回生ブレーキ機能が設けられ、回生ブレーキで発生した電力は、バッテリー29に蓄えられる。
【0024】
燃料電池ユニット15は、水素タンク16と燃料電池17と、水素タンク16内の圧力を計測する圧力計18と、バッテリー29を備える。水素タンク16はカセット式であり、ボンベ装着部19によって交換自在に配設される。燃料電池17は、水素タンク16内に貯留された水素を燃料とし、大気から取り入れた酸素とで発電し、モータ20を回転させる。
【0025】
バッテリー29は、上記回生ブレーキ機能を備えたモータ20及び燃料電池17に電気的に接続され、これらから充電可能に構成される。バッテリー29に蓄えられた電力は、接続部29aを介して外部に給電可能であり、災害時等に給電車として活用することができる。
【0026】
駆動手段14等を制御する制御部21は、報知手段22、アクセル23、ブレーキ24及びブレーキ駆動手段25に電気的に接続され、アクセル23、ブレーキ24からの入力によってモータ20やブレーキ駆動手段25等を制御し、圧力計18で測定された水素タンク16内部の圧力が所定の値より低い場合には、報知手段22より警報を発する。
【0027】
燃料電池ユニット15に空気を供給するため、車両本体4の燃料電池ユニット15が装着される部分は開口して下方から空気を取り入れることができるように構成される。一方、後部座席シート3に連設され、燃料電池ユニット15を収容する後部ハウジング27には、図1に示すように、ガス導出部28が設けられ、この部分の後部ハウジング27の断面は、図2に示すように、雨滴避けカバー28bによって、後部ハウジング27の内部から外部に向かって斜め方に向かうガス導出口28aが形成される。
【0028】
図1に示すように、ルーフ支柱7の近傍のルーフ8の下方の箱状の収容部30には、予備の水素タンク31が設置されている。
【0029】
次に、上記構成を有する乗用カート1の動作について図1図3を参照しながら説明する。
【0030】
乗用カート1を走行させるには、内部に水素を貯留した水素タンク16をボンベ装着部19に装着し、水素タンク16内に貯留された水素を燃料とし、車両本体4の燃料電池ユニット15が装着される開口部分から外気を取り入れ、この外気に含まれる酸素と前記水素とで発電し、モータ20を回転させる。また、燃料電池ユニット15で発生した電力をバッテリー29に蓄えることもできる。
【0031】
モータ20の回転によって後輪13が回転し、アクセル23によってモータ20の回転数を制御すると共に、ハンドル11で前輪12を操舵して乗用カート1の方向を制御する。必要に応じてブレーキ24を踏んで制御部21を介してブレーキ駆動手段25によって前輪12の回転を停止し、乗用カート1を停止させる。また、モータ20の回生ブレーキ機能によって、回転する後輪13の回転軸13aから電力を発生させ、発生した電力をバッテリー29に蓄える。
【0032】
燃料電池ユニット15で漏れ出たガスは、ガス導出部28から外部に放出される。上述のように、ガス導出部28が存在する後部ハウジング27の断面には、内部から外部に向かって斜め方に向かってガス導出口28aが形成されているため、燃料電池ユニット15への雨滴の付着を回避しながら、円滑にガスを外部に導くことができる。
【0033】
圧力計18によって水素タンク16内の圧力を常時計測し、圧力計18で測定された圧力が所定の値より低い場合には、報知手段22より警報を発することで、容易に水素タンク16の交換時期を把握することができ、効率的な運用ができる。
【0034】
また、報知手段22より警報が発っせられると、収容部30に備えた予備の水素タンク31を燃料電池ユニット15のボンベ装着部19に装着することで、乗用カート1を短時間で走行可能とすることができる。
【0035】
本発明によれば、燃料電池ユニット15は発電機として機能するため、燃料さえ確保できれば走行可能であり、災害時の電気不通の際にも使用することができる。
【0036】
次に、本発明に係る乗用カートの第2の実施形態について、図4を参照しながら説明する。
【0037】
この乗用カート41は、図1図3に示した乗用カート1における交換自在な水素タンク16とボンベ装着部19に代えて、固定式の水素タンク32を設けた点が乗用カート1と異なり、他の構成は同じである。水素タンク32への水素ガスの充填は、充填口32aを介して行われる。
【0038】
この乗用カート41では、水素タンク32が固定式であるため、水素タンク32内の圧力を計測する圧力計18の測定値が所定の値になると、報知手段22より警報を発し、外部の水素供給装置等から充填口32aを介して水素タンク32へ水素ガスを充填し乗用カート41を走行させる。その他の動作は上記乗用カート1と同じである。
【0039】
尚、上記実施の形態においては、乗用カート1、41をゴルフ場で荷台9にゴルフバッグ10等を積み込んで移動するゴルフカートとして説明したが、他の用途に用いることも可能である。また、前部座席シート2や後部座席シート3の存在しない乗用カートとすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 乗用カート
2 前部座席シート
3 後部座席シート
4 車両本体
6 前部ルーフ支柱
7 後部ルーフ支柱
8 ルーフ
9 荷台
10 ゴルフバッグ
11 ハンドル
12 前輪
13 後輪
13a 回転軸
14 駆動手段
15 燃料電池ユニット
16 水素タンク(交換自在)
17 燃料電池
18 圧力計
19 ボンベ装着部
20 モータ
21 制御部
22 報知手段
23 アクセル
24 ブレーキ
25 ブレーキ駆動手段
27 後部ハウジング
28 ガス導出部
28a ガス導出口
28b 雨滴避けカバー
29 バッテリー
29a 接続部
30 収容部
31 予備の水素タンク
32 水素タンク(固定)
32a 充填口
41 乗用カート
図1
図2
図3
図4