特許第6646905号(P6646905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646905金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われたガラスフリットの製造方法と、金属ないしは合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646905
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われたガラスフリットの製造方法と、金属ないしは合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/10 20060101AFI20200203BHJP
   C03C 27/04 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   C03C17/10
   C03C27/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-226069(P2015-226069)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-81808(P2017-81808A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月24日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−061216(JP,A)
【文献】 特開昭60−226417(JP,A)
【文献】 特開2015−078336(JP,A)
【文献】 特開2015−101537(JP,A)
【文献】 特開2003−292328(JP,A)
【文献】 特公昭46−004049(JP,B1)
【文献】 国際公開第2010/024256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
C03C 27/00−29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフリットを金属微粒子の集まりで覆い、該金属微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、熱分解で金属を析出する第一の性質と、熱分解温度がガラスフリットの軟化点より低い第二の性質を兼備する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコーに均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和することで、前記金属化合物と前記有機化合物とが前記アルコールに均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、ガラスフリットの集まりを前記混合液に浸漬、該ガラスフリットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ガラスフリットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、該ガラスフリットの集まりを前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、最初に前記アルコール気化させ、次に前記有機化合物気化させ、前記ガラスフリットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の集まり析出させる、さらに、前記金属化合物熱分解、前記ガラスフリットの軟化点より低い温度で、該金属化合物の熱分解が完了し、前記ガラスフリットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが前記ガラスフリットを覆うとともに、該ガラスフリットを覆った前記金属微粒子が金属結合し、該金属微粒子の金属結合によって、前記ガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりが製造される第四の工程と、該ガラスフリットの集まりを、該ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷する第五の工程からなり、これら5つの工程を連続して実施する方法が、ガラスフリットが金属微粒子の集まりで覆われ、該金属微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である。
【請求項2】
請求項1に記載した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、請求項1に記載した金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴を兼備するカルボン酸金属化合物であり、請求項1に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれかに属するいずれか一種類の有機化合物であり、請求項1に記載したガラスフリットが、前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より軟化点が高いガラスフリットであり、前記カルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物と前記ガラスフリットとを用い、請求項1に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造する、請求項1に記載した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である
【請求項3】
請求項1に記載した製造方法に従って製造した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合された該ガラスフリットの集まりを用い、金属の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法は、請求項1に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造し、該ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ガラスフリット軟化させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したガラスフリットを覆う金属微粒子同士が金属結合することで、該変形したガラスフリット同士が結合され、前記成形機内ないしは前記金型内に、前記変形したガラスフリットの集まりからなる成形体が成形され、該成形体を前記ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷することによって、金属の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法である。
【請求項4】
ガラスフリットを合金微粒子の集まりで覆い、該合金微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、同一の温度で熱分解して異なる金属を同時に析出する第一の性質と、熱分解温度がガラスフリットの軟化点より低い第二の性質を兼備する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該複数種類の金属化合物が前記アルコーに均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和することで、前記複数種類の金属化合物と前記有機化合物とが前記アルコールに均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、ガラスフリットの集まりを前記混合液に浸漬、該ガラスフリットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ガラスフリットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、該ガラスフリットの集まりを前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温し、最初に前記アルコール気化させ、次に前記有機化合物気化させ、前記ガラスフリットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の集まり析出させる、さらに、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解、前記ガラスフリットの軟化点より低い温度で、該複数種類の金属化合物の熱分解が同時に完了し、前記ガラスフリットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが前記ガラスフリットを覆うとともに、該ガラスフリットを覆った前記合金微粒子が金属結合し、該合金微粒子の金属結合によって、前記ガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりが製造される第四の工程と、該ガラスフリットの集まりを該ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷する第五の工程からなり、これら5つの工程を連続して実施する方法が、ガラスフリットが合金微粒子の集まりで覆われ、該合金微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である。
【請求項5】
請求項4に記載した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、請求項4に記載した複数種類の金属化合物が、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物であり、請求項4に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれに属するいずれか一種類の有機化合物であり、請求項4に記載したガラスフリットが、前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より軟化点が高いガラスフリットであり、前記複数種類のカルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物と前記ガラスフリットとを用い、請求項4に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造する、請求項4に記載した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である。
【請求項6】
請求項4に記載した製造方法に従って製造した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合された該ガラスフリットの集まりを用い、合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法は、請求項4に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造し、該ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ガラスフリットを軟化させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したガラスフリットを覆う合金微粒子同士が金属結合することで、該変形したガラスフリット同士が結合され、前記成形機内ないしは前記金型内に、前記変形したガラスフリットの集まりからなる成形体が成形され、該成形体を前記ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷することによって、合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ないしは合金の微粒子の集まりでガラスフリットを覆う。さらに、このガラスフリットの集まりを用い、従来の成形体を成形する製法によって、金属ないしは合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法である。なお、ガラスフリットは、調合したガラスの原料を融解してガラス化し、水急冷やロール急冷で粉砕して製造する粉末ガラスである。
【背景技術】
【0002】
本発明に最も近い従来技術に、ガラスに導電性ないしは熱伝導性を付与する技術がある。例えば特許文献1には、ガラスの原料にカーボンナノチューブを混合し、ガラスの原料を融解させてカーボンナノチューブが分散された導電性ガラスを製造する方法が提案されている。さらに特許文献2には、熱導電性フィラーであるSiC粉体を1500℃以上に昇温してSiOの被膜を形成し、この被膜処理がされたSiC粉体を粉末ガラスに混合し、800℃程度に昇温して粉末ガラスを融解させて熱伝導性ガラスを製造する方法が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載されたカーボンナノチューブは4.4×10−4−1.2×10−1Ωcmの体積抵抗率を持ち、銅の体積抵抗率1.68×10−6Ωcmに比べ2桁以上抵抗率が高い。さらに、カーボンナノチューブをガラスに分散さても、非導電性のガラスを介してカーボンナノチューブが結合するため、カーボンナノチューブ同士は直接結合しない。従って、成形体にカーボンナノチューブが連続した導電経路を形成しない。この結果、成形体の導電性の増大は制約される。また、カーボンナノチューブは金属粉に比べると非常に高価な素材であり、導電率を高めるためにカーボンナノチューブの配合割合を高めるほど、成形体は極めて高価になる。従って、従来技術ではガラスの成形体の導電性を増大するには限界がある。
また、特許文献2における熱伝導性フィラーは、SiCの熱伝導率は200W/mKと大きな値を持つが、SiOの熱伝導率が1.38W/mKと小さいため、SiOの被膜が形成されたSiCの熱伝導率は著しく低下する。いっぽう、SiCを熱伝導性フィラーとしてガラスに直接分散させたとしても、非熱伝導性のガラスを介してSiCが結合するため、SiC同士は直接結合しない。従って、成形体にSiCが連続した熱伝導経路を形成しない。この結果、成形体の熱伝導性の増大は制約される。また、SiCの粉体は金属粉に比べると非常に高価な素材であり、熱伝導率を高めるためにSiCの配合割合を高めるほど、成形体は極めて高価になる。従って、従来技術ではガラスの成形体の熱伝導性を増大するには限界がある。
【0004】
いっぽう、ガラスフリットは金属より軽量で腐食しない安価な素材である。また、成形機や金型にガラスフリットの集まりを充填し、軟化したガラスフリット同士を結合すれば、様々な形状の成形体が安価に成形できる。従って、ガラスフリットの成形体が様々な金属の性質を持てば、金属の部品を透明で軽量なガラスの部品に置き換えることができる。
すなわち、金属ないしは合金からなる物質でガラスフリットを覆い、金属ないしは合金からなる物質の金属結合で、ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する。このガラスフリットの集まり用いて成形体を成形する際に、金属ないしは合金からなる物質が軟化したガラスフリット同士を金属結合すれば、ガラスフリットの成形体が成形できる。さらに、金属からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、成形体は導電性や熱伝導性に限らず、磁性など金属からなる物質を構成する金属に応じた様々な性質を持つ。また、合金からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、様々な金属との組み合わせと金属の配合割合とによって、成形体は金属の性質よりさらに広い合金の性質を持つ。この結果、従来では考えられない性質を持つ透明で軽量な成形体が安価に製造できる。従って、第一に、金属ないしは合金からなる物質でガラスフリットを覆い、第二に、金属なしは合金からなる物質が軟化したガラスフリット同士を金属結合し、第三に、金属結合した金属なしは合金からなる物質が成形体に連続した経路を形成する、これら3つの技術の実現が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−024540号公報
【特許文献2】特開2012−111665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラスフリットを金属ないしは合金からなる物質で覆い、金属ないしは合金からなる物質の金属結合で、ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する。このガラスフリットの集まりを成形機や金型に充填し、ガラスフリットを軟化させて成形体を製造する際に、金属ないしは合金からなる物質が、第一に軟化したガラスフリット同士を金属結合し、第二に成形体に連続した経路を形成すれば、金属ないしは合金の性質を持つ成形体が安価に製造できる。つまり、金属ないしは合金の性質は自由電子の移動に基づくため、金属ないしは合金からなる物質が連続した経路を成形体に形成すれば、自由電子が成形体を自由に移動し、成形体は金属ないしは合金の性質を示す。
さらに、ガラスフリットを覆う金属ないしは合金からなる物質を形成する原料が安価で、ガラスフリットを覆う処理が極めて簡単で、かつ、大量のガラスフリットが処理されれば、金属ないしは合金からなる物質で覆われたガラスフリットの集まりが、安価な製作費用で大量に製造できる。
従って、本発明の第一の課題は、ガラスフリットを金属ないしは合金からなる物質で覆うことにある。第二の課題は、こうしたガラスフリットの処理が、安価な原料を用いた極めて簡単な処理で、大量のガラスフリットが処理できることにある。第三の課題は、こうした処理がなされたガラスフリットの集まりを用いて成形体を製造する際に、金属ないしは合金からなる物質が、第一に軟化したガラスフリット同士を金属結合し、第二に成形体に連続した経路を形成することにある。本発明は、これら3つの課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に関わるガラスフリットを金属微粒子の集まりで覆い、該金属微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、熱分解で金属を析出する第一の性質と、熱分解温度がガラスフリットの軟化点より低い第二の性質を兼備する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物が前記アルコーに均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和することで、前記金属化合物と前記有機化合物とが前記アルコールに均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、ガラスフリットの集まりを前記混合液に浸漬、該ガラスフリットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ガラスフリットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、該ガラスフリットの集まりを前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、最初に前記アルコール気化させ、次に前記有機化合物気化させ、前記ガラスフリットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の集まり析出させる、さらに、前記金属化合物熱分解、前記ガラスフリットの軟化点より低い温度で、該金属化合物の熱分解が完了し、前記ガラスフリットの表面に、前記金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが前記ガラスフリットを覆うとともに、該ガラスフリットを覆った前記金属微粒子が金属結合し、該金属微粒子の金属結合によって、前記ガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりが製造される第四の工程と、該ガラスフリットの集まりを、該ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷する第五の工程からなり、これら5つの工程を連続して実施する方法が、ガラスフリットが金属微粒子の集まりで覆われ、該金属微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である。
【0008】
つまり、本製造方法によれば、次の5つの簡単な工程を連続して実施するだけで、ガラスフリットが金属微粒子の集まりで覆われ、金属微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。
第一の工程は、金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、ガラスフリットの集まりを混合液に浸漬し、このガラスフリットの集まりを取り出すだけの処理である。第四の工程は、ガラスフリットの集まりを、ガラスフリットの軟化点より低い温度で熱処理するだけの処理である。第五の工程は、ガラスフリットの集まりを、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であるため、金属微粒子の集まりで覆われ、かつ、熱処理に伴う残留歪が解除されたガラスフリットの集まりが、安価な製造費用で大量に製造できる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品であり、ガラスフリットは汎用的な工業用素材である。さらに、熱分解で金属を析出する金属化合物は、様々な金属元素からなる金属を析出する。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、金属微粒子で覆われた新たな構造を持つガラスフリットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、ガラスフリットの集まりが製造される。
つまり、本製造方法に依れば、第一に、アルコール分散液中に金属化合物が均一に分散する。第二に、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、混合液中に金属化合物が均一に分散する。第三に、有機化合物がアルコールより粘度が高いため、混合液は有機化合物の混合割合に応じた粘度を持ち、この混合液にガラスフリットの集まりを浸漬すると、ガラスフリットに粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この結果、ガラスフリットに、熱分解で金属を析出する金属化合物が均一に付着する。
この後、ガラスフリットの集まりを熱処理する。最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化する。これによって、ガラスフリットの表面に金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす金属化合物の熱分解が始まり、ガラスフリットの軟化点より低い温度で、金属化合物の熱分解が完了し、ガラスフリットに微細結晶の大きさに応じた粒状の金属微粒子が集まりをなして析出する。この際、金属化合物の熱分解で析出した金属は、不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがガラスフリットを覆い、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合で、ガラスフリット同士が結合され、ガラスフリットの集まりが製造される。
なお、軟化点はガラスフリットの熱間加工の下限温度を意味する。従って、ガラスフリットの軟化点より低い温度でガラスフリットが処理されるため、ガラスフリットには熱間加工がなされず、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置して歪を解除し、その後室温まで徐冷すれば、ガラスフリットは処理以前の状態に戻る。このため、処理後のガラスフリットは経時変化せず、必要な時に成形体の原料として用いることができる。
つまり、金属微粒子の原料である金属化合物を、アルコールに分散することで金属化合物が液相化され、これによって、アルコール分散液と有機化合物との混合液がガラスフリットに付着する。このようなガラスフリットの集まりを昇温して、アルコールと有機化合物とを気化すれば、金属化合物の微細結晶の集まりが、ガラスフリットの表面に析出してガラスフリットを覆う。さらに昇温して微細結晶の集まりからなる金属化合物を熱分解すれば、微細結晶の大きさに応じた金属微粒子が、集まりをなしてガラスフリットの表面を覆う。この際、金属微粒子が接触部位で互いに金属結合するため、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合され、ガラスフリットの集まりが製造される。このように、本製造方法は、第一に、金属微粒子の原料である金属化合物を液相化し、液相化された金属化合物をガラスフリットに付着させ、第二に、金属化合物の微細結晶を析出させ、この微細結晶を熱分解して金属微粒子を析出させる特徴を有する。これによって、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合で、ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される、作用効果がもたらされる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品である。このような工業用薬品を混合するだけで混合液ができる。また、混合液に浸漬したガラスフリットの集まりを、ガラスフリットの軟化点より低い温度に昇温するだけで金属化合物が熱分解し、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合で、ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが大量に製造できる。従って、安価な工業用薬品を原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、ガラスフリットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、ガラスフリットの集まりが製造される。
【0009】
7段落に記載した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、7段落に記載した金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴を兼備するカルボン酸金属化合物であり、7段落に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれかに属するいずれか一種類の有機化合物であり、7段落に記載したガラスフリットが、前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より軟化点が高いガラスフリットであり、前記カルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物と前記ガラスフリットとを用い、7段落に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造する、7段落に記載した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である
【0010】
つまり、二つの特徴を持つカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290−430℃の温度で熱分解が完了し金属を析出する。従って、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高いガラスフリットの表面に、40−60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが析出する。この際、析出した金属微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。この後、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷すれば、熱処理に伴ってガラスフリットに残留した歪が解除する。
なお、金属微粒子は、金属微粒子が析出した温度より高い温度に昇温されると、隣接する金属微粒子を取り込んで成長して粗大化し、昇温される温度が高くなるほど、より大きな金属微粒子に粗大化する。従って、成形体を製造する際に、ガラスフリットは軟化点を超える温度に昇温されるため、金属微粒子は粗大化する。金属微粒子が過度に粗大化すると、軟化したガラスフリットが粗大化した金属微粒子の外側にはみ出て、軟化したガラスフリット同士が直接接合し、金属微粒子の集まりが成形体に連続した経路を形成せず、成形体が金属の性質を示さない場合がある。いっぽう、より多くの金属微粒子の集まりでガラスフリットを覆えばこのような事態は避けられるが、ガラスの特長である軽量化が失われる。従って、カルボン酸金属化合物の熱分解温度である290−430℃より高く、この熱分解温度に近い軟化点を持つガラスフリットを使用するのが望ましい。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の分子量に応じて、カルボン酸の気化が進み、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290−430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化第一銅CuOは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、カルボン酸金属化合物は最も安価な有機金属化合物である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールの沸点より高く、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は汎用的な工業用薬品である。
なお、ガラスフリットの中で最も焼成温度が低い低温封着用の粉末ガラスであっても、軟化点は300℃を超える。従って、多くのガラスフリットは、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高い。
従って、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液に有機化合物を混合すると、カルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液にガラスフリットの集まりを浸漬すると、ガラスフリットの表面に粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ガラスフリットの集まりを大気雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ガラスフリットの表面に、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなすカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ガラスフリットの軟化点より低い290−430℃の温度でカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの粒状の金属微粒子が集まりをなしてガラスフリットの表面に析出する。この際、熱分解で析出した金属は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の金属微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりがガラスフリットを覆い、金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物と、汎用的な工業用薬品である有機化合物と、汎用的な工業用素材であるガラスフリットとを原料として用い、ガラスフリットにカルボン酸金属化合物と有機化合物との混合液を付着させ、ガラスフリットの集まりを大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが大量に製造される。このため、本製造方法は、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、前記した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合するガラスフリットの集まりを製造する原料になる。
【0011】
7段落に記載した製造方法に従って製造した金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合された該ガラスフリットの集まりを用い、金属の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法は、7段落に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造し、該ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ガラスフリット軟化させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したガラスフリットを覆う金属微粒子同士が金属結合することで、該変形したガラスフリット同士が結合され、前記成形機内ないしは前記金型内に、前記変形したガラスフリットの集まりからなる成形体が成形され、該成形体を前記ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷することによって、金属の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法である。
【0012】
つまり、本製造方法に依れば、ガラスフリットの集まりに対し、7段落に記載した5つの処理を連続して行ない、このガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ガラスフリットを軟化させて成形体を製造する際に、軟化したガラスフリット同士が金属微粒子の金属結合で結合され、また、金属結合した金属微粒子が成形体に連続した経路を形成するため、金属の性質を持つ成形体が製造される。従って、様々な金属の性質を持ち、軽量で腐食しない様々な形状のガラスの成形体が、従来の成形体を成形する製法で製造され、金属の部品をガラスの部品に置き換えられる。
つまり、ガラスフリットの大きさはミクロンサイズで、金属微粒子より2桁大きいため、ガラスフリットの全体を覆った金属結合した金属微粒子の集まりは、軟化したガラスフリットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形する際に、金属結合した金属微粒子の集まりも追従して同様に変形し、変形したガラスフリットを依然として覆う。また、金属微粒子の金属結合で、変形したガラスフリット同士が結合される。このため、従来の成形体を製造する製法によって、金属の性質を持つ成形体が安価に製造される。
すなわち、ガラスフリットの集まりに対し、7段落に記載した5つの処理をすると、ガラスフリットを覆った金属微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。このガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、軟化させたガラスフリットを金属微粒子の金属結合で結合させて成形体を成形する。この際、ガラスフリットを覆った金属微粒子は、ガラスフリットの軟化点より低い温度で生成されたため、軟化点を超える温度に昇温されると、金属微粒子は隣接する金属微粒子を取り込んで成長して粗大化する。粗大化した金属微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、金属微粒子同士が接触部位で互いに金属結合する。このため、粗大化した金属微粒子の集まりは、依然として軟化したガラスフリットの全体を覆う。さらに、軟化したガラスフリットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形する際に、金属結合した金属微粒子の集まりもガラスフリットの変形に追従して変形し、変形したガラスフリットを依然として覆う。また、金属微粒子同士が互いに金属結合することで、変形したガラスフリット同士が結合され、金属結合した金属微粒子の集まりが成形体に連続した経路を形成する。この後、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷し、成形の際の熱処理でガラスフリットに残留した歪を解除させ、ガラスフリットからなる成形体が成形される。また、様々な金属元素で金属微粒子を構成すれば、成形体は様々な金属の性質を持ち、軽量で腐食しない成形体は、金属の部品をガラスの部品に置き換える。
以上に説明したように、本製造方法は、6段落で説明した第三の課題を解決し、7段落に記載したガラスフリットの集まりを用いて金属の性質を持つ成形体が製造される。
【0013】
本発明に関わるガラスフリットを合金微粒子の集まりで覆い、該合金微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、同一の温度で熱分解して異なる金属を同時に析出する第一の性質と、熱分解温度がガラスフリットの軟化点より低い第二の性質を兼備する複数種類の金属化合物を、アルコールに分散し、該複数種類の金属化合物が前記アルコーに均一に分散したアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記アルコールの沸点より高く、かつ、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和することで、前記複数種類の金属化合物と前記有機化合物とが前記アルコールに均一に混ざり合った混合液を作成する第二の工程と、ガラスフリットの集まりを前記混合液に浸漬、該ガラスフリットの表面に前記混合液の粘度に応じた厚みで該混合液均一に付着させ、この後、該ガラスフリットの集まりを前記混合液から取り出す第三の工程と、該ガラスフリットの集まりを前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解する温度に昇温し、最初に前記アルコール気化させ、次に前記有機化合物気化させ、前記ガラスフリットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の集まり析出させる、さらに、前記複数種類の金属化合物が同時に熱分解、前記ガラスフリットの軟化点より低い温度で、該複数種類の金属化合物の熱分解が同時に完了し、前記ガラスフリットの表面に、前記複数種類の金属化合物の微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが前記ガラスフリットを覆うとともに、該ガラスフリットを覆った前記合金微粒子が金属結合し、該合金微粒子の金属結合によって、前記ガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりが製造される第四の工程と、該ガラスフリットの集まりを該ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷する第五の工程からなり、これら5つの工程を連続して実施する方法が、ガラスフリットが合金微粒子の集まりで覆われ、該合金微粒子の金属結合で前記ガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である。
【0014】
つまり、本製造方法に依れば、第一に、アルコール分散液中に複数種類の金属化合物が均一に分散する。第二に、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、混合液中に複数種類の金属化合物が均一に分散する。第三に、有機化合物がアルコールより粘度が高いため、混合液は有機化合物の混合割合に応じた粘度を持ち、この混合液にガラスフリットの集まりを浸漬すると、ガラスフリットの表面に粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この結果、ガラスフリットの表面に、同一の温度で熱分解し、異なる金属を同時に析出する複数種類の金属化合物が均一に付着する。
この後、ガラスフリットを熱処理する。最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化する。これによって、ガラスフリットの表面に、複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類の金属化合物の熱分解が始まり、ガラスフリットの軟化点より低い温度で、複数種類の金属化合物の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子が、集まりをなしてガラスフリットの表面に析出する。つまり、微細結晶をなす複数種類の金属化合物が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類の金属化合物のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた粒状微粒子として析出する。また、合金微粒子は不純物を持たず、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりがガラスフリットを覆うとともに、合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。
なお、軟化点はガラスフリットの熱間加工の下限温度を意味する。従って、ガラスフリットの軟化点より低い温度でガラスフリットが処理されるため、ガラスフリットには熱間加工がなされず、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置して歪を解除し、その後室温まで徐冷すれば、ガラスフリットは処理以前の状態に戻る。このため、処理後のガラスフリットは経時変化せず、必要な時に成形体の原料として用いることができる。
つまり、合金微粒子の原料である複数種類の金属化合物を、アルコールに分散することで複数種類の金属化合物が液相化され、これによって、アルコール分散液と有機化合物との混合液がガラスフリットに付着する。このようなガラスフリットの集まりを昇温してアルコールと有機化合物とを気化すれば、複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりがガラスフリットの表面に析出してガラスフリットを覆う。さらに昇温して、微細結晶からなる複数種類の金属化合物を熱分解すれば、微細結晶の大きさに応じた粒状の合金微粒子が集まりをなしてガラスフリットの表面を覆う。この際、粒状の合金微粒子が接触部位で互いに金属結合するため、ガラスフリットを覆った合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。このように、本製造方法は、第一に、合金微粒子の原料である複数種類の金属化合物を液相化し、液相化された複数種類の金属化合物をガラスフリットに付着させ、第二に、複数種類の金属化合物の微細結晶の集まりを析出させ、この微細結晶を熱分解して合金微粒子を析出させる特徴を持つ。これによって、ガラスフリットを覆った合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される作用効果がもたらされる。
また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品であり、ガラスフリットは汎用的な工業用素材である。このような汎用的な工業用薬品と工業用素材とを混合するだけで混合液ができる。また、混合液に浸漬したガラスフリットを、ガラスフリットの軟化点より低い温度に昇温するだけで、複数種類の金属化合物が同時に熱分解し、金属結合した合金微粒子の集まりがガラスフリットを覆うとともに、合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。従って、安価な工業用薬品と工業用素材とを原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、ガラスフリットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。さらに、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが、ガラスフリットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でガラスフリットが結合したガラスフリットの集まりが、ガラスフリットの軟化点より低い温度で製造される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品と工業用素材とを原料として用い、極めて簡単な処理を実施するだけで、ガラスフリットの集まりが安価な製作費用で大量に製造できる。このため、本製造方法に依れば、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、ガラスフリットの集まりが製造される。
【0015】
13段落に記載した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法は、13段落に記載した複数種類の金属化合物が、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物であり、13段落に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類のいずれに属するいずれか一種類の有機化合物であり、13段落に記載したガラスフリットが、前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より軟化点が高いガラスフリットであり、前記複数種類のカルボン酸金属化合物と前記一種類の有機化合物と前記ガラスフリットとを用い、13段落に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造する、13段落に記載した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する製造方法である。
【0016】
つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸金属化合物が10段落で説明したカルボン酸金属化合物で構成されるため、290−430℃で同時に熱分解する。この結果、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高いガラスフリットの表面に、40−60nmの大きさの粒状微粒子が、複数種類の金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金の粒状微粒子の集まりとして析出する。この際、析出した粒状の合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子は互いに接触する部位で金属結合し、ガラスフリットを覆った合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。この後、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷すれば、熱処理に伴ってガラスフリットに残留した歪が解除する。
すなわち、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超える温度で、同一の飽和脂肪酸と異なる金属とに同時に分解し、さらに昇温すると、飽和脂肪酸の分子量に応じて飽和脂肪酸の気化が進み、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため合金が生成される。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点がアルコールの沸点より高く、かつ、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。
なお、ガラスフリットの中で最も焼成温度が低い低温封着用の粉末ガラスであっても、軟化点は300℃を超える。従って、多くのガラスフリットは、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高い。
従って、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液に、有機化合物を混合すると、複数種類のカルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液にガラスフリットの集まりを浸漬すると、ガラスフリットの表面に粘度に応じた厚みで混合液が付着する。この後、ガラスフリットの集まりを大気雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、ガラスフリットの表面に、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出する。さらに昇温すると、微細結晶をなす複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ガラスフリットの軟化点より低い290−430℃の温度で複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が同時に完了し、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状の合金微粒子が集まりをなしてガラスフリットの表面に析出する。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶が同時に熱分解すると、複数種類の金属が同時に析出し、複数種類の金属は不純物を持たない活性状態にあるため、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数に応じた組成からなる合金が、微細結晶の大きさに応じた40−60nmの大きさの粒状微粒子として析出する。また、合金微粒子は不純物を持たないため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した合金微粒子の集まりがガラスフリットを覆い、合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。従って、複数種類のカルボン酸金属化合物と有機化合物とは、第四特徴手段に記載したガラスフリットの集まりを製造する原料になる。さらに、複数種類のカルボン酸金属化合物における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子の集まりが、ガラスフリットの表面を覆うとともに、合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合される。
以上に説明したように、安価な工業用薬品である複数種類のカルボン酸金属化合物と、汎用的な工業用薬品である有機化合物と、汎用的な工業用素材であるガラスフリットとを原料として用い、ガラスフリットにカルボン酸金属化合物と有機化合物との混合液を付着させ、ガラスフリットの集まりを大気雰囲気の290−430℃の温度で熱処理するだけで、ガラスフリットを覆った合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。このため、本製造方法は、6段落で説明した第一と第二との課題を同時に解決して、13段落で記載した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりを製造する原料になる。
【0017】
13段落に記載した製造方法に従って製造した合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合された該ガラスフリットの集まりを用い、合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法は、13段落に記載した5つの工程を連続して実施する製造方法に従って合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりを製造し、該ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、該成形機ないしは該金型によって、前記ガラスフリットを軟化させるとともに応力を加えて変形させ、該変形したガラスフリットを覆う合金微粒子同士が金属結合することで、該変形したガラスフリット同士が結合され、前記成形機内ないしは前記金型内に、前記変形したガラスフリットの集まりからなる成形体が成形され、該成形体を前記ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷することによって、合金の性質を持つガラスフリットからなる成形体を製造する製造方法である。
【0018】
つまり、本特徴手段に依れば、ガラスフリットの集まりに対し、13段落に記載した5つの処理を連続して行ない、このガラスフリットの集まりを、成形機ないしは金型に充填し、ガラスフリットを軟化させて成形体を製造する際に、軟化したガラスフリット同士が合金微粒子の金属結合で結合され、金属結合した合金微粒子が成形体に連続した経路を形成するため、合金の性質を持つ成形体が製造される。また、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、成形体は様々合金の性質を持ち、軽量で腐食しない成形体が、従来の成形体を成形する製法で製造され、合金の部品がガラスの部品に置き換えられる。
つまり、ガラスフリットの大きさはミクロンサイズで、合金微粒子より2桁大きいため、ガラスフリットの全体を覆った金属結合した合金微粒子の集まりは、軟化したガラスフリットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形する際に、金属結合した合金微粒子の集まりも追従して同様に変形し、変形したガラスフリットを依然として覆う。また、合金微粒子の金属結合で、変形したガラスフリット同士が結合される。このため、従来の成形体を成形する製法で、合金の性質を持つ成形体が安価に製造される。
すなわち、ガラスフリットの集まりに対し、13段落に記載した処理をすると、ガラスフリットが金属結合した合金微粒子の集まりで覆われ、ガラスフリットを覆った合金微粒子の金属結合でガラスフリット同士が結合されたガラスフリットの集まりが製造される。このガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、軟化させたガラスフリット同士を合金微粒子の金属結合で結合させて成形体を成形する。この際、ガラスフリットを覆った合金微粒子は、ガラスフリットの軟化点より低い温度で生成されたため、軟化点を超える温度に昇温されると、合金微粒子は隣接する合金微粒子を取り込んで成長して粗大化する。粗大化した合金微粒子は不純物を持たない活性状態にあるため、合金微粒子同士が接触部位で互いに金属結合する。このため、粗大化した合金微粒子の集まりは、依然として軟化したガラスフリットの全体を覆う。次に、軟化したガラスフリットが成形機ないしは金型から応力を受けて変形する際に、金属結合した合金微粒子の集まりもガラスフリットの変形に追従して変形し、変形したガラスフリットを依然として覆う。また、合金微粒子同士が互いに金属結合することで、変形したガラスフリット同士が結合され、この金属結合した合金微粒子が成形体に連続した経路を形成し、成形体は合金微粒子を構成する合金の性質を持つ。この後、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置した後に室温まで徐冷し、成形体を成形する熱処理でガラスフリットに残留した歪が解除されたガラスフリットからなる成形体が成形される。このため、従来の成形体を成形する製法によって、合金の性質を持つ成形体が安価に製造できる。また、様々な組成の合金で合金微粒子を構成すれば、成形体は様々な合金の性質を持ち、軽量で腐食しない成形体は、合金の部品をガラスの部品に置き換えることができる。
以上に説明したように、本製造方法に依れば、6段落で説明した第三の課題を解決して、合金の性質を持つ成形体が製造される。
【0019】
(削除)
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【0022】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】銅微粒子の集まりがガラスフリットの表面に析出した状態を模式的に説明する図である。
図2】銅微粒子の集まりがシート状に結合されたガラスフリットを覆い、この銅微粒子の金属結合でガラスフリットが結合された状態を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態1
本実施形態は、10段落と16段落とに記載したカルボン酸金属化合物の実施形態である。本発明における熱分解で金属を析出する金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する必要がある。ここでは金属を銅とし、銅化合物を例にして説明する。
最初に、アルコールに分散する性質を持つ銅化合物を説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はアルコールに溶解し、銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できなくなる。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの無機銅化合物は、最も汎用的な溶剤であるアルコール類に分散しない。このため、これらの無機銅化合物は、アルコールに分散する性質を持つ銅化合物として適切でない。
有機銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物が安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機銅化合物に、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが銅イオンに共有結合するカルボン酸銅化合物がある。
つまり、カルボン酸銅化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、銅イオンに共有結合すれば、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうしたカルボン酸銅化合物を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸と銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化した後に銅が析出する。なお、還元雰囲気でのカルボン酸銅化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進むため、大気雰囲気での熱分解のほうが熱処理費用は安価で済む。なお、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物が熱分解すると、酸化銅が析出する。
いっぽう、カルボン酸銅化合物の中で、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって銅イオンに近づいて配位結合するカルボン酸銅は、銅イオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物の熱分解反応は、酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化銅が析出する。
さらに、カルボン酸銅化合物は、カルボン酸が最も汎用的な有機酸であるため、合成が容易で最も安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅化合物が生成される。このため、有機銅化合物の中で最も安価な有機銅化合物である。
カルボン酸銅化合物の組成式はCu(COOR)で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置する銅イオンCu2+が最も大きい。従って、銅イオンCu2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合する場合は、銅イオンCu2+と酸素イオンOとの距離が最大になる。この理由は、銅原子の2重結合における共有結合半径は115pmであり、酸素原子の2重結合における共有結合半径は57pmであり、炭素原子の2重結合における共有結合半径は67pmであることによる。このため、このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅化合物として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。このようなカルボン酸銅化合物の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が低ければ、低い温度で熱分解が始まる。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高く、また、飽和脂肪酸の気化熱が大きいため、熱分解温度が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の沸点は296℃であり、ラウリン酸銅は大気雰囲気では360℃で熱分解が完了する。分子量が284.5であるステアリン酸の沸点は361℃であり、ステアリン酸銅は430℃で熱分解が完了する。
いっぽう、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短いため、沸点が低く、気化熱も小さい。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物は、より低い温度で熱分解温度する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、カルボン酸銅化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。オクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して銅が析出する。
いっぽう、ガラスフリットの軟化点より低い温度で製造された金属ないしは合金の微粒子の集まりで覆われたガラスフリットの集まりを用いて成形体を製造する際に、ガラスフリットは軟化点を超える温度に昇温され、微粒子が生成された温度とガラスフリットが軟化される温度との温度差に応じて、微粒子は隣接する微粒子を取り込んで成長して粗大化する。微粒子が過度に粗大化すると、成形機ないしは金型から応力を受けた際に軟化したガラスフリットが微粒子の外側にはみ出て、軟化したガラスフリット同士が直接接合し、微粒子の集まりが成形体に連続した経路を形成せず、成形体が金属ないしは合金の性質を示さない場合がある。従って、カルボン酸金属化合物の熱分解温度である290−430℃に近い軟化点を持つガラスフリットを用いるのが望ましい。
以上に説明したように、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物は、金属微粒子の原料として望ましい。また、これらカルボン酸金属化合物は、様々な金属元素からなる金属化合物が存在し、金属微粒子の金属元素は制約されない。
さらに、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に飽和脂肪酸と複数種類の金属とに分解され、さらに、飽和脂肪酸の分子量に応じて飽和脂肪酸の気化が進み、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出する。これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、カルボン酸金属化合物のモル数に応じた金属の比率からなる合金が生成される。このため、複数種類のカルボン酸金属化合物は、合金微粒子の優れた原料になる。
【0025】
実施形態2
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコールより粘度が高く、第三に、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より沸点が低い、これら3つの性質を兼備する有機化合物に関する実施形態である。このような有機化合物に、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する有機化合物がある。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物は290−430℃で熱分解する。
【0026】
最初にカルボン酸エステル類について説明する。カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸からなる第一のエステル類と、不飽和カルボン酸からなる第二のエステル類と、芳香族カルボン酸からなる第三のエステル類に分けられる。
沸点が290℃より低いカルボン酸エステルは、分子量が256.4であるミリスチン酸エチル(テトラデカン酸エチルともいう)より分子量が小さいカルボン酸エステルである。なお、ミリスチン酸エチルの沸点は295℃である。
【0027】
第二のエステル類である不飽和カルボン酸からなるエステル類で、メタノールに混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が290℃より低いカルボン酸エステルは、分子量が296.6であるオレイン酸メチルより分子量が小さいカルボン酸エステルである。なお、メタクリル酸フェニルの沸点は249℃で、オレイン酸メチルの沸点は351℃である。
【0028】
第三のエステル類である芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が290℃より低いカルボン酸エステルは、分子量が194であるフタル酸ジメチル以下の分子量のカルボン酸エステルである。なお、フタル酸ジメチルの沸点は284℃である。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類には、25段落で説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在し、金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を構成する。
【0029】
次に、グリコール類について説明する。グリコール類には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールからなる6種類のグリコールがある。
エチレングリコールはメタノール溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が197℃の液状モノマーである。ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が244℃の液状モノマーである。プロピレングリコールはメタノールと混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が188℃の液状モノマーである。ジプロピレングリコールはメタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が232℃の液状モノマーである。トリプロピレングリコールはメタノールと混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が265℃の液状モノマーである。いずれも沸点が290℃より低いグリコールである。
以上に説明したように、グリコール類には25段落で説明した3つの性質を兼備する有機化合物が存在し、金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を構成する。
【0030】
最後に、グリコールエーテル類について説明する。グリコールエーテル類は、エチレングリコール系エーテルと、プロピレングリコール系エーテルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの各々の末端の水素をアルキル基で置換したジアルキルグリコールエーテルとの3種類がある。いずれのグリコールエーテルは、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高い。
最初に、エチレングリコール系エーテルの中で、沸点が290℃より低い性質を持つものは、沸点が229℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が231℃のブジルジグリコールと、沸点が245℃のフェニルグリコールと、沸点が249℃のメチルトリグリコールと、沸点が256℃のベンジルグリコールと、沸点が259℃のヘキシルジグリコールと、沸点が271℃のブチルトリグリコールと、沸点が272℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が283℃のフェニルジグリコールがある。
【0031】
プロピレングリコール系エーテルの中で、沸点が290℃より低い性質を持つものは、沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコールと、沸点が242℃のメチルプロピレンジグリコールと、沸点が243℃のフェニルプロピレングリコールと、沸点が最も高い274℃のブチルプロピレントリグリコールとがある。
【0032】
ジアルキルグリコールエーテルの中で、沸点が290℃より低い性質を持つものは、沸点が189℃のジエチルジグリコールと、沸点が216℃のジメチルトリグリコールと、沸点が255℃のジブチルジグリコールがある。
以上に説明したように、グリコールエーテル類には、25段落で説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在し、金属化合物のアルコール分散液と均一に混ざり合って混合液を構成する。
【0033】
実施形態3
本実施形態はガラスフリットに関する実施形態である。なお、軟化点は、ガラスフリットの熱間加工の下限温度を意味する。従って、ガラスフリットの軟化点より低い温度で処理すれば、ガラスフリットに熱間加工がなされていないため、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置して熱処理に伴う歪を解除し、その後室温まで徐冷すれば、ガラスフリットは処理以前の状態に戻る。このため、処理後のガラスフリットは経時変化せず、必要な時に成形体の原料として用いることができる。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物は290−430℃で熱分解する。また、ガラスフリットの中で最も焼成温度が低い低温封着用の粉末ガラスでであっても、軟化点が300℃を超える。従って、金属を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高い多くのガラスフリットが存在する。
いっぽう、ガラスフリットと金属ないしは合金との間には熱膨張率に差がある。また、ガラスフリットがミクロンサイズの大きさであるのに対し、金属ないしは合金の微粒子は40−60nmの大きさであり、ガラスフリットに比べて2桁小さい。このため、金属化合物の熱分解後において、ガラスフリットが微粒子に比べて著しく大きく体積収縮し、ガラスフリットと微粒子の集まりとの間に空隙が形成され、ガラスフリットが脱落する恐れがある。しかし、析出する微粒子の集まりが、ガラスフリットの体積収縮より十分に大きな体積を占めて析出すれば、ガラスフリットが体積収縮して空隙が形成される際に、空隙の圧力が低下するため、金属結合した微粒子の集まりは、空隙を埋めるように変形する。このため、ガラスフリットの体積収縮によって空隙は形成されない。
ガラスフリットは、原料となる複数種類の金属酸化物を調合して混合し、熱融解させてガラス化し、その後、水急冷やロール急冷で微細な粉末に破砕して製造する。このため、様々な組成と組成割合からなる。いっぽう、RoHS指令の観点から無鉛ガラスのガラスフリットが望ましい。無鉛ガラスには、Pを主成分とするリン酸塩系ガラス、Biを主成分とするビスマス系ガラス、Vとアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化亜鉛、酸化ホウ素、五酸化リン、酸化テルルなどからなるバナジン酸塩系ガラス、SiOとBとアルカリ金属酸化物ないしはアルカリ土類金属酸化物とからなるホウケイ酸塩系ガラス、BeFを主成分とする弗化物系ガラスなどがある。さらに、ガラスの主な原料である次の金属酸化物は各々が固有の作用を持つため、金属酸化物の比率によってガラスフリットの軟化点と線膨張率とを自在に変えることができる。酸化ケイ素SiOは、ガラスの網目構造を作って、軟化点を上げ熱膨張を下げる働きをする。これに対し、酸化硼素Bは、ガラスの網目構造を作って、軟化点を下げる働きをする。酸化チタンTiOは、結晶化を促進して軟化点を上げる働きをする。アルミナAlは結晶化を抑えるが、軟化点を上げる働きをする。これに対し、酸化ナトリウムNaOは軟化温度を下げ、熱膨張を大きくする働きをするが耐水性に劣る。いっぽう、酸化カリウムKOは、NaOと同様の性質を持つが、KがNaより1.4倍大きいため移動しにくく耐水性をもたらす。さらに、酸化カルシウムCaOは、NaOと同様の性質を持つが、アルカリガラスの化学的耐久性を向上させる。
なお、金属の線膨張率はアルミニウムが239×10−7/℃、銅が165×10−7/℃、鉄が117×10−7/℃である。合金の線膨張率は、例えば、初透磁率が大きい鉄ニッケル合金のPBパーマロイは77×10−7/℃、熱膨張率が小さい鉄ニッケル合金の42アロイは42×10−7/℃で、低熱膨張で高強度の鉄ニッケル合金のインバーは15×10−7/℃であり、金属の熱膨張率より小さい。
以上に説明したように、本発明におけるガラスフリットは、軟化点が、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より高く、熱分解温度に近い第一の性質と、線膨張係数が金属の線膨張係数に近い第二の性質とからなる、これら3つの性質を兼備するガラスフリットを適時選択し使用することができる。なお、合金の線膨張率はガラスフリットより一桁小さい。従って、合金微粒子の集まりでガラスフリットを覆う場合は、合金微粒子の集まりが、成形体の成形後にガラスフリットが熱収縮する体積より十分に大きな体積を占めるように合金微粒子を析出させ、ガラスフリットの体積収縮を合金微粒子の変形で埋めればよい。
【0034】
実施例1
本実施例は、銅微粒子の集まりでガラスフリットを覆う実施例である。つまり、銅は比重が8.9で、断面積が1cmで長さが1cmあたりの比導電率が1.00であり、透磁率が真空の透磁率に近い1.00である。いっぽう、電磁波の反射損失の度合いは、比透磁率に対する比導電率の比率に比例する。このため、銅の反射損失の度合いは1.00となり、金属の中で銀の反射損失の度合いの1.06に次いで高い。いっぽう銀の比重は銅の1.2倍で銅より高価な金属である。従って、本実施例におけるガラスフリットの集まりを用いて製作した成形体が銅に近い導電性を示せば、電磁波を反射する性能に優れたシールドシートないしはシールド板として用いることができ、金属の基材に比べて軽量で腐食することがない。
銅微粒子の原料は、大気雰囲気の290℃で熱分解するオクチル酸銅Cu(C15COO)(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。有機化合物は、沸点が224℃で、メタノールに混和しメタノールの粘度の2.4倍であるカプリン酸メチルCH(CHCOOCH(例えば、東京化成工業株式会社の製品)を用いた。カプリン酸メチルは、合成繊維油剤、金属油剤、合成潤滑剤、合成樹脂用、化粧品用、界面活性剤などの原料などに用いられる汎用の工業用薬品である。ガラスフリットとして軟化点が325℃であるTeOとVとを主成分とする低温封着用粉末ガラス(旭硝子株式会社の製品TNS062)を用いた。このガラスフリットの比重は4.2で、線膨張率が132×10−7/℃で、粒度特性はD50が10.0μmである。なお、線膨張率は銅の線膨張率の165×10−7/℃より小さく、オクチル酸銅の熱分解後においては、ガラスフリットが体積収縮することに依る空隙が形成されない。
ここで、ガラスフリットの平均的な形状を8μmの正方形とし、厚みが0.5μmとすると、1個のガラスフリットの重さは1.31×10−10gになる。また、ガラスフリットの表面を覆う銅微粒子が、直径50nmの球状微粒子とすると、1個のガラスフリットを覆う銅微粒子の数は5.76×10個になる。また、1モルのオクチル酸銅(350グラムに相当する)から析出する銅微粒子の数は10.85×1016個に相当する。従って、39.3gのガラスフリット(3×1011個に相当する)を用いると、金属結合した銅微粒子の集まりが平均で6.3層の多重構造を形成してガラスフリットを覆う。従って、銅微粒子が、6層ないし7層からなる多層構造でガラスフリットの全体を覆う。いっぽう単位質量あたりの表面積が、銅微粒子では1.34×10cmであるのに対し、ガラスフリットでは2.43×10−1cmになり、銅微粒子の比表面積はガラスフリットに比べると6桁ほど大きい。このため、金属結合した銅微粒子の集まりは、微粒子よりさらに小さい空隙を、隣接する銅微粒子の間隙に形成する。このため、銅微粒子の集まりで結合されたガラスフリットの見かけの比重は、ガラスフリットに近づく。
最初に、オクチル酸銅の350g(1モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にカプリン酸メチルが10重量%になるように混合した。この混合液に、39.3gのガラスフリットを混合して撹拌した。
次に、この混合物を容器に入れ、大気雰囲気で焼成した。最初に65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに230℃に昇温してカプリン酸メチルを気化した。次に、290℃に1分間放置し、オクチル酸銅を熱分解した。
さらに、製作した試料の表面と切断した複数の断面について、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、さらに導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。
最初に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面はいずれの部位も、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、表面全体に満遍なく形成されていた。また、試料の断面は、6層前後の厚みで粒状微粒子がガラスフリットの表面に積層され、粒状微粒子の集まりでガラスフリットが結合されていた。
次に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を観察した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と複数の断面からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子は銅原子のみで構成されていたため、銅の粒状微粒子である。
以上の観察結果から、ガラスフリット表面が多数の銅微粒子で覆われと共に、銅微粒子の集まりでガラスフリットが金属結合されていることが分かった。この結果を図1に模式的に示した。1はガラスフリットで、2は銅微粒子である。
さらに、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST−4)によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料は銅に近い表面抵抗を有した。
以上の結果から、ガラスフリットが銅微粒子の集まりで覆われ、銅微粒子の金属結合で結合されたガラスフリットの集まりは銅に近い導電性を持つ。なお、本実施例は一例に過ぎない。ガラスフリットの多くが、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高く、オクチル酸金属化合物の熱分解で様々な金属が析出するため、様々な金属微粒子の集まりで様々なガラスフリットが金属結合されたガラスフリットの集まりが製造できる。
【0035】
実施例2
実施例1で製造したガラスフリットの集まりを350℃まで昇温して、カレンダー成形によって1mmの厚みのシートを成形した。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。ガラスフリットは薄いシート状に結合し、その表面が銅微粒子の集まりで覆われるとともに、ガラスフリットは銅微粒子の集まりで結合されていた。試料の断面を図2に模式的に示した。3はガラスフリットで、4は銅微粒子である。
さらに、実施例1と同様に、作成した試料の表面抵抗を測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、ガラスフリットからなるシートは、銅に近い導電性を持ち、銅より軽い電磁波を反射する性能に優れたシールドシートとして用いることができる。
なお、本実施例は一例に過ぎない。つまり、ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ガラスフリットの軟化点以上に昇温して圧縮応力を加えれば、金属微粒子の金属結合で軟化したガラスフリット同士が結合した様々な形状の成形体が製造できる。
【0036】
実施例3
本実施例は、アルミニウム微粒子の集まりでガラスフリットを覆う実施例である。なお、アルミニウムは銀、銅、金に次いで優れた熱伝導性と導電性を有し、比重が2.70と小さい。従って、本実施例におけるガラスフリットの集まりを用いて製作した成形体が、アルミニウムに近い導電性を持てば、軽量で腐食しない透明な放熱基材として用いることができる。
アルミニウム微粒子の原料は、大気雰囲気の290℃で熱分解するオクチル酸アルミニウムAl(C15COO)(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)を用いた。有機化合物は、実施例1のカプリン酸メチルを用いた。ガラスフリットとして、軟化点が325℃であるSnOとPとを主成分とする低温封着用粉末ガラス(旭硝子株式会社の製品KP312)を用いた。このガラスフリットの比重は3.8で、線膨張率が128×10−7/℃で、粒度特性はD50が6.0μmである。線膨張率はアルミニウムの線膨張率の239×10−7/℃より小さく、オクチル酸アルミニウムの熱分解後において、ガラスフリットが体積収縮することに依る空隙が形成されない。
ここで、ガラスフリットの平均的な形状を5μmの正方形とし、厚みが0.4μmとすると、1個のガラスフリットの重さは3.8×10−11gになる。また、ガラスフリットの表面を覆うアルミニウム微粒子が直径50nmの球状微粒子とすると、1個のガラスフリットを覆うアルミニウム微粒子の数は23,200個になる。また、1モルのオクチル酸アルミニウム(457グラムに相当する)から析出するアルミニウム微粒子の数は15.2×1016個に相当する。従って、38gのガラスフリット(1012個に相当する)を用いると、金属結合した銅微粒子の集まりが平均で6.6層の多重構造を形成してガラスフリットを覆う。従って、銅微粒子が6層ないし7層からなる多層構造でガラスフリットの全体を覆う。
最初に、オクチル酸アルミニウムの457g(1モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にカプリン酸メチルが10重量%になるように混合した。この混合液に、38gのガラスフリットを混合して撹拌した。
次に、この混合物を容器に入れ、大気雰囲気で焼成した。最初に65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに230℃に昇温してカプリン酸メチルを気化した。次に、290℃に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムを熱分解した。
さらに、製作した試料の表面と切断した複数の断面について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。
最初に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面はいずれの部位も、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、表面全体に満遍なく形成されていた。また、試料の断面は、7層前後の厚みで粒状微粒子がガラスフリットの表面に積層され、粒状微粒子の集まりでガラスフリットが結合されていた。
次に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められなかったので、単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と複数の断面からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子はアルミニウム原子のみで構成されていたため、アルミニウムの粒状微粒子である。
以上の観察結果から、ガラスフリット表面が多数のアルミニウム微粒子で覆われと共に、アルミニウム微粒子の集まりでガラスフリットが金属結合されていることが分かった。この結果は、実施例1の結果と類似しているため図示しない。
また、実施例1と同様に、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計で測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であり、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。
以上の結果から、ガラスフリットがアルミニウム微粒子の集まりで覆われ、アルミニウム微粒子の金属結合で結合されたガラスフリットの集まりはアルミニウムに近い導電性を持った。なお、本実施例は一例に過ぎない。ガラスフリットの多くが、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高く、オクチル酸金属化合物の熱分解で様々な金属が析出するため、様々な金属微粒子の集まりで様々なガラスフリットが金属結合されたガラスフリットの集まりが製造できる。
【0037】
実施例4
実施例3で製造したガラスフリットの集まりを350℃まで昇温して、カレンダー成形によって2mmの厚みのシートを成形した。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。ガラスフリットは薄いシート状に結合され、その表面がアルミニウム微粒子の集まりで覆われるとともに、ガラスフリットはアルミニウム微粒子の集まりで結合されていた。この結果は、実施例2のシートに類似しているため図示しない。
さらに、実施例1と同様に、作成した試料の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、成形体はアルミニウムに近い導電性を持つ。従って、ガラスフリットからなるシートは、アルミニウムの性質を持つ放熱基材として用いることができる。
なお、本実施例は一例に過ぎない。つまり、ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ガラスフリットの軟化点以上に昇温して圧縮応力を加えれば、金属微粒子の金属結合で軟化したガラスフリット同士が結合した様々な形状の成形体が製造できる。
【0038】
実施例5
本実施例は、実施例3で製造したガラスフリットの集まりを350℃まで昇温し、カレンダー成形によって1mmの厚みのシートを成形した。この成形体がアルミニウムに近い導電性を持てば、透明導電性基材として用いることができる。
つまり、成形体が透明体であるためには、入射光が高い透過率で成形体を透過しなければならない。いっぽう、成形体に光が入射する際に、空気の屈折率との差によって表面反射が生じる。成形体の表面はアルミニウム微粒子で構成される。従って、成形体に光が入射する際に、アルミニウム微粒子が表面反射をもたらす。表面反射率は、空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。屈折率が1.48のアルミニウムからなる微粒子は表面反射率が3.7%になり、96.3%の光が成形体に入射する。なお、屈折率が1.51のガラスフリットは表面反射率が4.1%になる。さらに、成形体に入射する光の割合は全光線透過率で表され、全光線透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。従って、全光線透過率は、アルミニウム微粒子で93%になる。なお、ガラスフリットでは全光線透過率が92%になる。一般的なフロートガラスの2mmの板厚の全光線透過率が90%であるため、成形体は入射光に対する高い透過率を持つ。
次に、表面を透過した光は成形体に入り込んで光が散乱する。成形体が透明体であるためには光の散乱が起こりにくい、つまり、散乱係数が小さいことが必要になる。光の散乱はレイリー散乱に基づき、成形体がガラスフリットに微粒子の集まりが分散された形態とすれば、ガラスフリットの屈折率に対するアルミニウムの屈折率の比率mについて、レイリー散乱係数は{(m−1)/(m+1)}に比例する。比率mは0.98になり、{(m−1)/(m+1)}は4.1×10−4と小さい。さらに散乱係数は、可視光の波長λに対する粒子径Dの比率D/λの4乗と、粒子径Dの2乗とに比例する。アルミニウム微粒子の平均粒径を50nmとすると、可視光の波長380−780nmに対する比率D/λの4乗は、1.3×10−5−2.9×10−4になり、粒子径Dの2乗が2.5×10−15になる。従って、4.1×10−4と1.3×10−5−2.9×10−4と2.5×10−15との積からなる散乱係数は極めて小さな値になる。この結果、本実施例における成形体は高い透明性を示す。従って、本実施例における成形体が、アルミニウムに近い導電性を持てば、透明導電性の成形体になる。
次に、作成し成形体の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。ガラスフリットは薄いシート状に結合され、その表面がアルミニウム微粒子の集まりで覆われるとともに、ガラスフリットはアルミニウム微粒子の集まりで結合されていた。この結果は、実施例2のシートに類似しているため図示しない。
さらに、実施例1と同様に、作成した試料の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、成形体はアルミニウムに近い導電性を持つ。従って、ガラスフリットからなるシートは、透明導電性基材として用いることができる。
【0039】
実施例6
本実施例は、パーマロイと呼ばれる、ニッケルと鉄とを主成分とする合金の微粒子の集まりで覆われたガラスフリットを製造する実施例である。本実施例におけるパーマロイは、モル比がニッケル80、モリブデン5、鉄15の割合からなるPCパーマロイである。このPCパーマロイの直流磁気特性は、初透磁率が60,000、最大透磁率が180,000、飽和磁束密度が0.65テスラ、保持力が1.2A/mの特性を持つ。交流のインダクタンスは、板厚が薄いほど高く、0.35mmの板厚では、0.3kHzで15,000、1kHzで8,000、30kHzで3,300のインダクタンスを持つ。このため、100kHz付近までの電磁波を吸収する性能を持つ。なお、従来のPBパーマロイないしはPCパーマロイからなる薄体は、パーマロイを水素雰囲気の1100℃で磁気焼鈍し、溶製材の表面の酸化膜や内部に存在する不純物としての酸化物を除去し、さらに、圧延して箔状に引き伸ばした後に、加工に伴う歪を除去する歪取焼鈍を行う。これに対し本実施例では、3種類の金属化合物の熱分解でニッケルとモリブデンと鉄とを同時に析出させ、不純物を持たない合金が生成するため、従来のパーマロイの製造における水素焼鈍と歪取焼鈍との双方が不要になる。
ニッケルと鉄の原料であるオクチル酸金属化合物は、市販されていないため次の製法で精製した。組成式がC15COOHで表されるオクチル酸(協和発酵ケミカル株式会社の製品)を、水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合し、オクチル酸ナトリウムC15COONaが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを、硫酸ニッケル(試薬一級品)ないしは硫酸鉄(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸ニッケルNi(C15COO)ないしはオクチル酸鉄Fe(C15COO)が析出する。析出したオクチル酸ニッケルないしはオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸鉄を精製する。なお、オクチル酸モリブデンMo(C15COO)(CAS番号が34041−09−3に相当する工業薬品)は前記の製法では合成できないため輸入品を用いた。なお、有機化合物は、実施例3と同様にカプリン酸メチルを用いた。ガラスフリットは、実施例1のガラスフリットを用いた。このガラスフリットの線膨張率は132×10−7/℃で、PCパーマロイの線膨張率の136×10−7/℃に近く、オクチル酸金属化合物の熱分解後においては、ガラスフリットが体積収縮することに依る空隙が形成されない。
最初に、オクチル酸ニッケルの414g(1.2モルに相当する)と、オクチル酸モリブデンの72g(0.075モルに相当する)とオクチル酸鉄の109.5g(0.225モルに相当する)の各々が10重量%になるようにメタノールに分散し、これらのメタノール分散液を混合した。この混合液にカプリン酸メチルが10重量%になるように混合した。さらに、39.3gのガラスフリットを混合して撹拌した。
次に、この混合物を容器に入れ、大気雰囲気で焼成した。最初に65℃に昇温してメタノールを気化し、さらに230℃に昇温してカプリン酸メチルを気化した。次に、290℃に1分間放置し、3種類のオクチル酸金属化合物を熱分解した。
試料の表面と切断した複数の断面について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面はいずれの部位も、40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、表面全体に満遍なく形成されていた。試料の断面には、9層ないし10層の厚みで、粒状微粒子がガラスフリットの表面に積層されていた。
次に、試料の表面と複数の断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められたため、複数種類の原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と複数の断面からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。多量のニッケル原子と少量の鉄原子と僅かなモリブデン原子とで構成されていた。使用したオクチル酸金属化合物のモル比から、粒状微粒子はニッケル80、モリブデン5、鉄15の割合からなる粒状微粒子である。
以上の観察結果から、ガラスフリットが多数のPCパーマロイ微粒子で覆われ、PCパーマロイ微粒子の金属結合でガラスフリットが結合されていることが分かった。この結果は、実施例1の結果に類似しているため図示しない。
また、実施例1と同様に、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計で測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であり、試料はPCパーマロイに近い表面抵抗を有した。なお、PCパーマロイの比抵抗は55μΩcmであり、鉄の比抵抗10μΩcmに近い値を持つ。
以上の結果から、本実施例で製造した試料は、PCパーマロイに近い性質を持つ。なお、本実施例は一例に過ぎない。ガラスフリットの多くが、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より軟化点が高く、オクチル酸金属化合物の熱分解で様々な金属が析出するため、様々な合金微粒子の集まりで様々なガラスフリットが金属結合されたガラスフリットの集まりが製造できる。
【0040】
実施例7
実施例6で製造したガラスフリットの集まりを350℃まで昇温して、カレンダー成形によって0.35mmの厚みのシートを成形した。
作成した試料の切断面を、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。ガラスフリットは薄いシート状に結合され、その表面がPCパーマロイ微粒子の集まりで覆われるとともに、ガラスフリットはPCパーマロイ微粒子の集まりで結合されていた。この結果は、実施例2のシートに類似しているため図示しない。
さらに、実施例1と同様に、作成した試料の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であった。このため、成形体はPCパーマロイに近い導電性を持つ。従って、ガラスフリットからなるシートは、電磁波を吸収する性能を持つ優れたシールドシートとして用いることができる。
なお、本実施例は一例に過ぎない。つまり、ガラスフリットの集まりを成形機ないしは金型に充填し、ガラスフリットの軟化点以上に昇温して圧縮応力を加えれば、合金微粒子の金属結合で軟化したガラスフリット同士が結合した様々な形状の成形体が製造できる。
【0041】
以上に説明した7つの実施例は一部の事例に過ぎない。つまり、42段落で説明したように、殆どのガラスフリットの軟化点が、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より高いため、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に近い軟化点を持ち、金属に近い線膨張係数を持つガラスフリットが選択できる。このため、軟化点より低い温度で処理されたガラスフリットは熱間加工がされず、ガラスフリットの徐冷点に15分以上放置して歪を解除し、その後室温まで徐冷すれば、ガラスフリットは処理以前の状態に戻る。従って、処理後のガラスフリットは経時変化せず、必要な時に成形体の原料として用いることができる。
また、32段落で説明した様々な金属イオンからなるカルボン酸金属化合物が金属微粒子の原料として使用でき、用途に応じて微粒子を構成する金属ないしは合金を析出するカルボン酸金属化合物が選択できる。さらに、金属化合物をアルコールに分散することで液相化され、これによってカルボン酸金属化合物がガラスフリットに付着し、このガラスフリットの集まりを熱処理するだけで、ガラスフリット同士が結合したガラスフリットの集まりが製造できるため、使用するカルボン酸金属化合物の制約はない。このため、様々な成分からなるガラスフリットを、様々な金属からなる金属微粒子、ないしは、様々な合金からなる合金微粒子で結合されたガラスフリットの集まりが製造できる。
さらに、ガラスフリットの大きさに比べ微粒子が2桁も小さいため、ガラスフリットが軟化した際に、また、軟化したガラスフリットが変形した際に、ガラスフリットを覆った微粒子の集まりは、ガラスフリットに追従して変形する。このため、軟化させたガラスフリットを結合して成形体を製造する上で、従来の成形体を成形する製法上の制約はない。従って、従来のガラスの成形体を成形する様々な製法が使用できる。
【符号の説明】
【0042】
1及び3 ガラスフリット 2及び4 銅微粒子
図1
図2