特許第6646918号(P6646918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646918
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】インジェクタのための流量制限器
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/16 20060101AFI20200203BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20200203BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   F02M61/16 W
   F02M63/00 C
   F02M63/00 L
   F02M55/02 360Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-535232(P2018-535232)
(86)(22)【出願日】2016年8月11日
(65)【公表番号】特表2018-534483(P2018-534483A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016069132
(87)【国際公開番号】WO2017063774
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】102015220028.0
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ブラッターラー,ディーター
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234661(JP,A)
【文献】 特開2002−257251(JP,A)
【文献】 特開2004−298502(JP,A)
【文献】 特開2001−165338(JP,A)
【文献】 特開2005−140058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−71/04
F16K 15/00−15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール燃料噴射システムのインジェクタための流量制限器(16)であって、前記流量制限器(16)は高圧接続部(20)を備える閉止ボルト(5)と、バルブハウジング(24)と、ボール(15)と、スプリング(17)とを有しており、前記閉止ボルト(5)には支持シート(28)が構成されており、前記バルブハウジング(24)にはバルブシート(18)が構成されており、前記ボール(15)は前記バルブハウジング(24)に構成された軸方向穴(11a)の中に配置されていて、前記スプリング(17)によって前記支持シート(28)の方向に付勢され、前記ボール(15)は前記支持シート(28)に当接したときに前記高圧接続部(20)から前記軸方向穴(11a)を通り前記インジェクタ(1)へ接続される液圧接続を解放し、前記バルブシート(18)に当接したときにこの液圧接続を遮断する、そのような流量制限器において、
前記支持シート(28)が卵形線の輪郭を有しており、当該支持シート(28)は、前記ボール(15)によりを完全には閉止されず、前記支持シート(28)が前記ボールに当接されているときにバイパス機能を果たす
ことを特徴とする流量制限器。
【請求項2】
前記支持シート(28)は楕円形の輪郭を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御器(16)。
【請求項3】
前記閉止ボルト(5)には高圧穴(11)が構成されており、前記高圧穴(11)は前記支持シート(28)に連通するとともに楕円形の輪郭を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の流量制御器(16)。
【請求項4】
前記スプリング(17)は前記軸方向穴(11a)の中に配置されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の流量制御器(16)。
【請求項5】
内燃機関の燃焼室へ燃料を噴射するためのインジェクタにおいて、前記インジェクタはインジェクタ本体(1)と請求項1から4のいずれか1項に記載の流量制御器(16)とを有しており、前記流量制限器(16)は前記インジェクタ本体(1)と結合されている
ことを特徴とするインジェクタ。
【請求項6】
前記バルブハウジング(24)は前記インジェクタ本体(1)と前記閉止ボルト(5)との間でクランプナット(7)により応力固定されている
ことを特徴とする請求項5に記載のインジェクタ。
【請求項7】
前記インジェクタ本体(1)に高圧リザーバ(2)が構成されており、前記軸方向穴(11a)は前記高圧リザーバ(2)と液圧接続されている
ことを特徴とする請求項5または6に記載のインジェクタ。
【請求項8】
前記軸方向穴(11a)はスロットル(13)を介在させながら前記高圧リザーバ(2)と接続されている
ことを特徴とする請求項7に記載のインジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンレール燃料噴射システムの、特にモジュール形式のコモンレール燃料噴射システムのインジェクタのための流量制限器に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のためのモジュール形式のコモンレール燃料噴射システムは、システムに存在するリザーバ容積の一部がインジェクタそのものに存在するという特徴がある。モジュール形式のコモンレールシステムは、個々のインジェクタが状況によっては著しい相互間隔をおいて取り付けられる特別に大型のエンジンで採用される。すべてのインジェクタのための共通のレールの単独での使用は、このようなエンジンでは有意義ではない。長い配管に基づき、噴射中に噴射圧力に激しい低下が起こることになり、そのために、長い噴射期間のあいだに噴射レートが顕著に低下することになるからである。したがってこのようなエンジンでは、各々のインジェクタの内部に高圧リザーバを配置することが意図される。このような設計形態はモジュール形式の構造と呼ばれる。それぞれ個々のインジェクタがその独自の高圧リザーバを備えており、そのようにして、独立したモジュールとして利用できるからである。ここでの高圧リザーバとは通常の配管を意味するのではなく、即座の圧力低下を生じることなくある程度の噴射量を高圧リザーバから放出できるようにするために、高圧配管に比べて直径が明らかに拡大された流入配管と流出配管を有する耐圧性の容器を指す。
【0003】
モジュール形式のコモンレールシステムのインジェクタには高圧燃料が高圧ポンプから供給され、この供給は多くの場合、高圧リザーバの上面にあるインジェクタの開口部を介して行われる(いわゆるトップフィード)。別案として、側方に供給部が取り付けられていてもよい(サイドフィード)。高圧燃料を案内する高圧配管のインジェクタへの接続は、高圧接続部を備えている流量制限器の閉止ボルトを介して行われる。閉止ボルトは、通常、隣接するインジェクタのために燃料を導通するという別の機能も有していて、その目的のために第2の高圧接続部が設けられる。
【0004】
流量制限器は、高圧燃料流入の流量が多すぎるときにインジェクタを分断し、それによって内燃機関の燃焼室へのインジェクタの常時噴射を回避する。このような種類の流量制限器は、たとえば特許文献1から公知である。
【0005】
コモンレール燃料噴射システムのインジェクタのための公知の流量制限器は、高圧接続部を備えた閉止ボルトと、バルブハウジングと、ボールと、スプリングとを有している。閉止ボルトには支持シートが構成されており、バルブハウジングにはバルブシートが構成される。ボールはバルブハウジングに構成された軸方向穴の中に配置されていて、スプリングによって支持シートの方向に付勢される。ボールは支持シートに当接したときに高圧接続部から軸方向穴を通る液圧接続を解放し、バルブシートに当接したときにこの液圧接続を遮断する。流量制限器が組付状態にあるとき、この液圧接続は下流側でインジェクタの高圧リザーバに連通する。
【0006】
インジェクタの作動時には、ボールと支持シートとの間で再三繰り返される接触が生じ、それに応じて摩耗も生じる。ボールが支持シートに当接したとき、液圧接続が開かれたまま保たれなければならない。このことは、たとえば軸方向穴にある溝ないしポケットによって確保される。それによって支持シートの輪郭が非常に鋭利に、かつそれに伴って摩耗が発生しやすく構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2662557A1号明細書
【発明の概要】
【0008】
それに対して本発明による流量制限器は、ボールと支持シートとの間の接触圧ピークが低減されるので、改善された摩耗挙動を有している。それによって流量制限器の耐用寿命が長くなる。さらに、流量制限器ないしインジェクタでの摩耗粒子による機能障害が回避される。
【0009】
そのために流量制限器は、高圧接続部を備える閉止ボルトと、バルブハウジングと、ボールと、スプリングとを含んでいる。閉止ボルトには支持シートが構成されており、バルブハウジングにはバルブシートが構成されている。ボールはバルブハウジングに構成された軸方向穴の中に配置されており、スプリングによって支持シートの方向に付勢される。ボールは支持シートに当接したときに高圧接続部から軸方向穴を通る液圧接続を解放し、バルブシートに当接したときにこの液圧接続を遮断する。支持シートは、本発明によると、卵形線の輪郭を有している。
【0010】
卵形線の輪郭により、ボールと支持シートとの間の接触圧ピークが低減される。それと同時に、支持シートへボールが当接したときに軸方向穴を通る液圧接続が開かれたままに保たれ、それによりバイパス機能が果たされる。それに加えて卵形線の輪郭は、たとえば浸食加工やレーザ加工によって、ポケットないし溝を有する円形の穴よりも容易に製作することができる。
【0011】
支持シートは楕円形の輪郭を有しているのが好ましい。それにより、ボールと支持面との間の接触圧ピークが最善に最小化される。
【0012】
好ましい実施形態では、閉止ボルトに高圧穴が構成されており、高圧穴は支持シートに連通するとともに、楕円形の輪郭を有している。それにより支持シートが楕円形の高圧穴によって区切られ、ないしは、この高圧穴のエッジとなる。高圧穴は浸食加工またはレーザ加工により製作されるのが好ましく、それにより、支持シートの楕円形の輪郭が簡単な仕方で製作される。
【0013】
好ましい発展例では、スプリングが軸方向穴の中に配置される。それにより、流量制限器が特別にコンパクトに設計スペースを節約して施工される。このときスプリングは軸方向穴の肩部に支持されるのが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、内燃機関の燃焼室へ燃料を噴射するためのインジェクタを含んでおり、インジェクタはインジェクタ本体と上に説明した流量制限器とを有している。流量制限器はインジェクタ本体と結合されており、たとえば応力固定される。それにより、非常に高い安全性リスクとなる、インジェクタから燃焼室への常時噴射が防止される。
【0015】
好ましい発展例では、バルブハウジングはインジェクタ本体と閉止ボルトとの間でクランプナットによって、好ましくは媒体密閉式に応力固定される。このようにして、流量制限器とインジェクタとの間の結合部がコンパクトに施工される。それと同時にバルブハウジングがこの結合部を封止し、それにより、燃料が周囲に達することがあり得なくなる。
【0016】
好ましい実施形態では、インジェクタ本体に高圧リザーバが構成されており、軸方向穴は高圧リザーバと液圧接続されている。特に大型の内燃機関の場合、噴射のために十分な燃料を利用するために、高圧リザーバをインジェクタに直接配置するのが好ましい。長い流動経路がそれによって防止され、噴射中に燃料の大きすぎる圧力降下が回避される。
【0017】
好ましい発展例では、軸方向穴はスロットルを介在させながら高圧リザーバと接続される。内燃機関の燃焼室への燃料の噴射中に高圧リザーバへの燃料の再流入を可能にするために、および、個々のインジェクタの噴射圧または噴射量の相互の影響を防止するために、軸方向穴は好ましくはバルブハウジングに構成されるスロットルを介してインジェクタへ連通することが意図される。さらに、バルブハウジングへのスロットルの配置は、燃料噴射システムのそのつどの必要性に合わせたスロットル断面積の適合化が、バルブハウジングの交換によって簡単な仕方で行われ、そのために別のコンポーネントを取り換えなくてよいという利点をもたらす。
【0018】
さらにバルブハウジングには、燃料に由来する大きな粒子をとどめる棒状フィルタが配置されるのが好ましい。
【0019】
次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】流量制御器の一実施形態を示す縦断面図である。
図2a】従来技術に基づく図1のA−A断面である。
図2b】本発明の流量制御器の図1のA−A断面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、高圧リザーバ2が組み込まれているインジェクタのインジェクタ本体1の端部区域が示されている。インジェクタ本体1は保持体と呼ぶこともできる。インジェクタは流量制限器16を有しており、流量制限器16はバルブハウジング24と、バルブハウジング24に構成された軸方向穴11aと、閉止体としての役目をする、軸方向穴11aの中に配置されたボール15と、バルブハウジング24に構成されたバルブシート18と、支持シート28とを含んでいる。
【0022】
インジェクタ本体ないし保持体1は、高圧リザーバ2へと通じる開口部3を有しており、この開口部に閉止ボルト5のボルト状の区域4が挿入されている。閉止ボルト5はクランプナット7によってインジェクタ本体1とねじ止めされており、クランプナット7はその雌ねじをもって、軸方向で互いに接合するインジェクタ本体1および閉止ボルト5の雄ねじと協同作用する。
【0023】
閉止ボルト5には高圧接続部20と別の高圧接続部21とが構成されている。高圧接続部20には、詳しくは図示しない配管が接続されていて、これを介して、図示しない高圧ポンプからの高圧燃料の供給が行われる。別の高圧接続部21を介して、後続するインジェクタへの接続を成立させることができる。さらに閉止ボルト5には、高圧接続部20,21と液圧接続されてインジェクタ本体1の方向に通じる高圧穴11が構成されている。高圧穴11は、高圧穴11の円周全体にわたって延びるのではないポケット12を有している。
【0024】
閉止ボルト5のボルト状の区域4は、バルブハウジング24の軸方向区域23が中に収容される収容穴22を有している。バルブハウジング24は肩部25を有していて、これにインジェクタ本体1の方向にテーパ状のシール面6、および閉止ボルト5の方向にテーパ状の別のシール面26が構成されている。シール面6は、インジェクタ本体の開口部3の縁部にある対応する対応面と協同作用する。テーパ状の別のシール面26は、ボルト状の区域4の円錐状の対応面と協同作用する。このことは、クランプナット7による閉止ボルト5のねじ止めが、同時に、シール面6および別のシール面26でのシール力を生成するという帰結につながる。こうしてクランプナット7により、必要な保持力ないしシール力が調整される。閉止ボルト5の肩部8と、インジェクタ本体1の環状の端面9との間には、ダブルフィットを回避するために間隙10が設けられる。
【0025】
バルブハウジング24には高圧穴11に連通する軸方向穴11aが構成されており、ボール15によって接続を閉止可能である。軸方向穴11aには棒状フィルタ19が配置されるとともに、スロットル13が構成されている。軸方向穴11aはスロットル13を介して高圧リザーバ2と液圧接続可能であり、棒状フィルタ19はスロットル13の上流側に配置される。
【0026】
さらに軸方向穴11aには、高圧穴11の方向にボール15が配置されている。ボール15は、軸方向穴11aの中に配置されたスプリング17によって高圧穴11に向かう方向へ付勢され、それにより、閉止ボルト5ないしボルト状の区域4に構成されている支持シート28と協同作用する。スプリング17は、そのために軸方向穴11aの段部に支持される。
【0027】
支持面28aが閉止ボルト5に構成されており、高圧穴11を環状に取り囲むように配置されている。このように、支持シート28は高圧穴11への支持面28aの移行部に形成され、支持面28aは高圧穴11の方向で先細になる。
【0028】
軸方向区域23には、支持面28aと向かい合うように、ボール15と協同作用するバルブシート18が構成されている。このようにボール15は、支持シート28とバルブシート18との間を動くことができる。
【0029】
ボール15が支持シート28に当接すると、軸方向穴11aを通る−すなわち高圧穴11と高圧リザーバ2との間の−液圧接続が開く。ボールがバルブシート18に当接すると、軸方向穴11aを通る液圧接続をボールが閉じる。支持面28aないし支持シート28による液圧接続の構成は、図2aおよび2bにさらに詳しく図示されている。
【0030】
バルブハウジング24の軸方向区域23の端面は、高圧穴11への収容穴22の移行部に設けられた環状の支持面28の手前で間隔をおいて終わっている。さらに、収容穴22に収容されている軸方向区域23は、その前側領域27に縮小された外径を有するように構成されており、それにより、軸方向区域23の前側領域27の外側円周と収容穴22との間でそれによって生じる環状隙間で、高圧燃料の圧力を外側から前側の領域27に対して作用させることができる。このことは圧力補償をする前側領域27をもたらし、それにより振動負荷が低減される。
【0031】
図2aおよび2bは図1のA−A断面を示しており、図2aは従来技術に基づく構成、図2bは本発明に基づく構成を示している。
【0032】
図2aは、高圧穴11の半径方向の拡張部としての、閉止ボルト5の3つのポケット12の構成を示している。このように支持面28aは、ポケット12と高圧穴11の輪郭によって区切られ、これらとともに支持シート28を形成する。ボール15が支持シート28に当接すると、高圧穴11と高圧リザーバ2との間でポケット12を介して液圧接続が成立する。それによって燃料が高圧リザーバ2へ追加流入することができる。ポケット12がバイパス機能を果たすからである。
【0033】
図2bの本発明による構成では、高圧穴11はポケット12を有するのではなく、その代わりに楕円形の断面を有している。それに応じて支持面28の輪郭も、高圧穴11のエッジによって形成される楕円形の輪郭を有している。このように、この場合にも支持シート28へのボール15の当接は、高圧穴11と高圧リザーバ2との間の液圧接続を開く。ボール15が楕円を完全には閉止できないからである。このようにしてバイパス機能が維持される。支持シート28の楕円形の輪郭に代えて、卵形線の輪郭も可能である。
【0034】
流量制限器16の機能は次のとおりである。コモンレールシステムでは、不都合な状況のもとでは、配管系においてであれインジェクタの不良によってであれ、漏れが発生する可能性がある。インジェクタは、内燃機関の燃焼室へのインジェクタの噴射開口部を開閉するノズルニードルを有している。燃焼室への常時噴射をもたらすノズルニードルが挟まったインジェクタは、著しい障害を引き起こす可能性がある。このような障害は、車両の発火やエンジンの破損をもたらす可能性がある。閉止機能を有する流量制限器はこのような危険を回避する役目を果たすものであり、高圧リザーバ2からの最大の取出量を上回ったときに該当するインジェクタへの流入部を閉止し、それによって噴射ポンプ側の高圧を噴射弁側ないしノズルニードル側から切り離す。
【0035】
インジェクタが動作状態にあるとき、ボール15は軸方向穴11aの中で支持面28aに対して、正確には支持シート28に対して押圧される。高圧穴11と高圧リザーバ2との間の軸方向穴11aを通しての液圧接続は、高圧穴11ないし支持シート28の卵形線の断面に基づいて開いている。作動時にボール15は噴射中に発生する流動により、ボール還流のときの圧力差に基づいてバルブシート18の方向に動く。漏れまたはその他の誤機能に基づいて高圧リザーバ2の圧力があまりに大きく低下すると、高圧穴11に向かう側と軸方向穴11aに向かう側との間で大きすぎる圧力差がボール15に生じる。圧力差が大きすぎると、ないしは最大の噴射量を上回ると、ボール15がバルブシート18のほうへ行き、そのようにして、高圧穴11から高圧リザーバ2への液圧接続を閉じる。それにより、それ以上のインジェクタへの流動が防止され、それによって常時噴射が防止される。
【0036】
高圧穴11ないし支持シート28の卵形線の、特に楕円形の形状により、ボール5と支持シート28の支持面28aとの間で接触するときに鋭いエッジがなくなり、ただし、それと同時にバイパス機能は維持される。支持シート28とボール15との間の接触圧ピークがそのようにして回避され、流量制限器16およびそれとともにインジェクタ全体の耐久性、およびそれに伴って機能性が向上する。
【符号の説明】
【0037】
1 インジェクタ本体
2 高圧リザーバ
5 閉止ボルト
7 クランプナット
11 高圧穴
11a 軸方向穴
13 スロットル
15 ボール
16 流量制限器
17 スプリング
18 バルブシート
20 高圧接続部
24 バルブハウジング
28 支持シート
図1
図2a
図2b