【文献】
Zhi Zhu et al., Anal. Bioanal. Cje,. 2012, Vol.403, pp.2127-2143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出器(108)は、PCR生成物を含有する液滴を検出するために、第1マイクロ流体チャネル(104)の出口(103)に設けられる請求項1記載のマイクロ流体デバイス(100)。
第1マイクロ流体チャネル(104)の温度を循環させるステップは、液滴を第1マイクロ流体チャネル(104)内に送り込みながら、第1マイクロ流体チャネル(104)の温度を少なくとも2つの温度値になるように連続的に循環させることを含む請求項5記載の方法。
液滴中の検体のコピーの回数は、演算ユニット(110)によって決定された、PCR生成物を含有する液滴の百分率に応じて、液滴発生器(107)によって変更される請求項11記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的には、異なる加熱ゾーン間の交差(cross)加熱を防止するために、例えば、これらの間にスペースを設けることによって、異なる加熱エレメントが互いに分離している。これは、システムのコンパクト性を低減する。システムが大きな熱伝導率を持つ材料、例えば、シリコンを用いて製造した場合、異なる加熱ゾーン間の距離はより大きくする必要がある。
【0004】
これらのシステムの他の短所は、流体チャネルが特定の加熱エレメントを固定された回数で横断するため、設計によって固定された加熱サイクルの回数である。他の短所は、PCRサイクルでの異なる温度ステップの持続時間である。最新技術の設計は、ユーザが流体サンプルの流速を変更することを可能にするが、これにより全ての温度ステップの持続時間が変化する。ユーザは、単一の温度ステップの持続時間を変化させる可能性を有していない。異なるステップの持続時間の比率は、PCR最適化において重要なパラメータであるが、変更できない。上述した不具合の少なくとも幾つかを克服するマイクロ流体デジタルPCRデバイスのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様において、デジタルPCRを実施するためのマイクロ流体デバイスが提示される。該デバイスは、
半導体基板と、
半導体基板に埋め込まれ、入口および出口を含む第1マイクロ流体チャネルと、
第1マイクロ流体チャネルと熱的に結合した加熱エレメントと、
第1マイクロ流体チャネルの入口と接続され、液滴を発生し、発生した液滴を第1マイクロ流体チャネル内に、ある流速で送り込むための液滴発生器と、を備え、
加熱エレメントは、第1マイクロ流体チャネル全体の温度を少なくとも2つの温度値になるように循環させるように構成された温度制御ユニットと接続された単一の加熱エレメントであり、
液滴発生器の流速は、調整可能であることを特徴とする。
【0006】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、片側で液滴発生器の出口と接続され、別の片側で第1マイクロ流体チャネルの入口と接続された第2マイクロ流体チャネルと、
第2マイクロ流体チャネルに存在する発生した液滴を加熱するように設けられた加熱エレメントとをさらに備える。
【0007】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、第1マイクロ流体チャネルの出口に設けられ、PCR生成物を含有する液滴を検出するための検出器をさらに備える。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、第1マイクロ流体チャネルにおいて、PCRの際に、PCR生成物を含有する液滴を検出するために設けられた検出器をさらに備える。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、検出器と接続された演算ユニットをさらに備え、
演算ユニットは、PCR生成物を含有する液滴の百分率を決定するように構成される。
本開示の一実施形態によれば、液滴発生器は、演算ユニットと接続され、液滴発生器は、液滴中の検体(analyte)のコピーの回数を変更するように再構成可能である。
【0010】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、第1マイクロ流体チャネルを少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの基板貫通(through-substrate)溝をさらに備える。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、マイクロ流体チャネルの出口に設けられ、液滴を加熱するための加熱エレメントをさらに備える。
【0012】
本開示の第2態様において、本開示の第1態様で説明したようなマイクロ流体デバイスを用いて流体サンプルにおいてPCRを実施するための方法が提示される。該方法は、
流体サンプルをマイクロ流体デバイスに供給するステップと、
液滴発生器を用いて、流体サンプルの液滴を発生し、該液滴を第1マイクロ流体チャネル内に送り込むステップと、
単一の加熱エレメントを用いて、第1マイクロ流体チャネル全体の温度を少なくとも2つの温度値になるように循環させるステップとを含む。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、液滴を発生し、液滴を送り込むステップは、第1マイクロ流体チャネルが液滴で完全に充填された場合に停止する。
【0014】
本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネルの温度を循環させるステップは、液滴中の検体の飽和レベルに到達するまで実施される。
【0015】
本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネルの温度を循環させるステップは、液滴を第1マイクロ流体チャネル内に送り込みながら、第1マイクロ流体チャネルの温度を少なくとも2つの温度値になるように連続的に循環させることを含む。
【0016】
本開示の一実施形態によれば、液滴は、第1マイクロ流体チャネルの温度サイクルの持続時間に適合した流速で、第1マイクロ流体チャネル内に送り込まれる。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、該方法は、液滴を第1マイクロ流体チャネル内に送り込む前に、発生した液滴を予備加熱するステップをさらに含む。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、該方法は、液滴を連続的に加熱し、第1マイクロ流体チャネルの出口で温度を増加させるステップをさらに含む。
【0019】
本開示の一実施形態によれば、該方法は、検出器を用いてPCR生成物を含有する液滴を検出するステップをさらに含む。
【0020】
本開示の一実施形態によれば、液滴中の検体(analyte)のコピーの回数は、演算ユニットによって決定された、PCR生成物を含有する液滴の百分率に応じて、液滴発生器によって変更される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の実施形態において、「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」を参照する場合、これはDNA増幅のための方法である。それは、DNA片の単一または幾つかのコピーを桁違いに増幅する分子生物学での生化学テクノロジーであり、これにより特定のDNAシーケンスのコピーを生成する。
【0023】
本開示の実施形態において、「ラボ・オン・チップ(lab-on-a-chip)」を参照する場合、これは1つ又はそれ以上の実験室機能を単一チップ上に集積したデバイスである。
【0024】
本開示の実施形態において、「マイクロ流体」を参照する場合、この用語は、典型的には1mm未満のデバイスサイズを参照する。
【0025】
本開示の実施形態において、半導体基板を参照する場合、これは、例えば、シリコン(Si)基板、シリカ(SiO
2)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、またはガラスシリコン基板などの基板を含んでもよい。
【0026】
本開示の実施形態において、「PCR生成物を含有する液滴」を参照する場合、この用語は、検体の増幅がPCRによって生じた液滴を参照する。用語「PCR生成物」は、増幅された検体を参照する。
【0027】
本開示の目的は、PCRデバイスの動作中に、ユーザが下記事項について完全に制御できるPCRデバイスを得ることである。
1)PCRサイクルの各温度ステップの持続時間
2)異なるPCRサイクルの各温度ステップ値の値
3)デバイス中の流体サンプルの流速
4)デバイスによって処理される体積
【0028】
本開示の目的は、設計を変更することなく、バッチ式PCRおよび連続式PCRについて使用できる単一のデバイスを得ることである。
【0029】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)がDNA増幅のためのテクニックである。それは、DNA片の単一または幾つかのコピーを桁違いに増幅して、特定のDNAシーケンスのコピーを生成する分子生物学での生化学テクノロジーである。PCRを実施するために、試薬、DNA、プライマーを含有する混合物が反応容器に戴置される。反応容器の温度は、例えば、3つの温度値を通るように循環される。その結果、反応容器内のDNAが増幅される。デジタルPCR反応は、平均で1未満のDNAコピー/液滴を含有する小さな液滴内にターゲットDNAを希釈することによって、DNA分析を実施するための方法である。DNAと結合した場合、蛍光を発するラベルが試薬に添加される。PCR反応の終わりに蛍光信号を表示する液滴を計数することによって、ターゲットDNAの量の定量化が行われる。デジタルの性質に起因して、デジタルPCRが、低いターゲット濃度の高精度測定を実施するのに特に適している。
【0030】
本開示の第1態様において、デジタルPCRを実施するためのマイクロ流体デバイス100が提示される。該デバイスは、半導体基板と、半導体基板に埋め込まれ、入口102および出口103を含む第1マイクロ流体チャネル104と、第1マイクロ流体チャネル104と熱的に結合した加熱エレメント101と、第1マイクロ流体チャネル104の入口102と接続され、液滴を発生し、発生した液滴を第1マイクロ流体チャネル104内に、ある流速で送り込むための液滴発生器107とを備え、加熱エレメント101は、第1マイクロ流体チャネル104全体の温度を少なくとも2つの温度値に循環させるように構成された温度制御ユニット111と接続された単一の加熱エレメントであり、液滴発生器107の流速は、調整可能であることを特徴とする。
【0031】
本開示の第1態様に提示されたようなデバイスは、連続式またはスタティック(バッチ式)PCRを実施するために使用できる。
図1は、こうしたデバイスを示す。デバイス100は、第1マイクロ流体チャネル104を備える。第1マイクロ流体チャネル104は、単一の入口102と、単一の出口103とを備える。第1マイクロ流体チャネル104は、入口102を出口103と相互接続する。流体サンプルから液滴を発生するための液滴発生器107が、マイクロ流体チャネル104の入口102と接続される。液滴発生器107は、液滴を発生し、この液滴を第1マイクロ流体チャネル104内に送り込む。液滴発生器107の流速は、動作中に調整可能である。液滴発生器107のこの流速は、液滴発生器107が第1マイクロ流体チャネル104内に液滴を送り込むときの速度として定義される。こうして第1マイクロ流体チャネル104内の液滴の伝搬速度は、液滴発生器107の流速によって定義される。利点として、第1マイクロ流体チャネル104内での液滴の流速および第1マイクロ流体チャネル104の温度サイクルが調整可能である。第1マイクロ流体チャネル104内での液滴の流速は、所望の温度サイクルの回数に調整可能であり、各温度サイクルは少なくとも2つの温度値を含む。
【0032】
(例1)
特定のPCR動作がそれぞれ30秒の温度サイクルを30回必要とする場合、液滴発生器107の流速は、入口102から出口103へ伝搬する発生した液滴の持続時間が900秒と等しくなるように調整される。先行技術の連続フローPCRデバイスでは、サイクル数は、設計によって固定され、例えば、30サイクルが設計によって固定される。例えば、32サイクルが必要になる場合、デバイスの再設計が必要になる。
【0033】
(例2)
特定の実験の場合、完全なPCR反応に必要な時間は10分になることがある。第1マイクロ流体チャネル104の体積が2μLである場合、第1マイクロ流体チャネル104での液滴およびキャリア媒体の合計流速は、0.2μL/分とすべきである。液滴発生器107は、第1マイクロ流体チャネル104での(液滴およびキャリア媒体の)合計流速が、0.2μL/分であることを確保するように調整できる。この柔軟性は、先行技術のデバイスには存在しない。
【0034】
特定のPCRを実施するのに必要な時間に対する流速の適応性は、提示したマイクロ流体デバイスを極めて汎用性のあるものにする。
【0035】
液滴発生器107は、キャリア媒体の区画(compartment)を含んでもよい。本発明の特定の実施形態によれば、キャリア媒体はオイルであり、キャリア媒体区画はオイル区画である。液滴は、オイル中に発生してもよく、互いに異なる液滴を分離する。液滴発生器107は、流体サンプルを供給するための少なくとも1つの入口と、発生した流体サンプル液滴を排出するための少なくとも1つの出口とを含む。特定の実施形態によれば、液滴発生器107は、少なくとも2つの入口、即ち、流体サンプルを供給するための第1入口と、オイルを供給するための第2入口とを含む。
【0036】
単一の加熱エレメント101が存在し、マイクロ流体チャネル104全体の温度を変化させるように設置される。本開示の一実施形態によれば、加熱エレメント101は、第1マイクロ流体チャネル104の近傍、例えば、第1マイクロ流体チャネル104の下方
に設置してもよく、マイクロ流体チャネル104全体のより均等な加熱を可能にする。加熱エレメント101は、温度制御ユニット111と接続される。温度制御ユニット111は、加熱エレメント101を制御し、第1マイクロ流体チャネル104を少なくとも2つの温度値に加熱するように構成される。温度制御ユニット111により、第1マイクロ流体チャネル104が予め定めた異なる温度値に加熱可能であり、これらの温度値を予め定めた期間だけ維持できる。温度制御ユニット111により、異なる温度値および対応する期間は、デバイス100の動作中に変更でき、何時でも設定可能になる。各温度値では、第1マイクロ流体チャネル104が加熱される関連した期間が設定可能である。本開示の一実施形態によれば、温度値および関連した期間は、流体サンプルにおいてPCRを実施するように設定される。本開示の特定の実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104が加熱される3つの温度値および関連した期間は、90〜98℃(例えば、95℃)で1〜60秒の期間、60〜65℃で1〜60秒の期間、65〜75℃で1〜60秒の期間に設定してもよい。
【0037】
下記の例は、本開示で説明した液滴PCRデバイスと、空洞を用いた先行技術の液滴PCRデバイスとの間の相違点を説明する。
【0038】
(例3)
本例では、空洞を含む先行技術デバイスと、マイクロ流体チャネルを用いた本開示の一実施形態とを比較する。直径dの液滴が発生し、先行技術デバイスの空洞の辺の長さをLで定義する。各液滴に周囲のオイルを加えた専有面積が2d
2であると仮定する。先行技術デバイスにおいて、空洞内に含まれる液滴の数は、N
0=L
2/2d
2となり、液滴は時間t
PCR内で処理されるようになる。本開示の一実施形態において、マイクロ流体チャネルが幅dおよび厚さwの壁を有すると仮定すると、先行技術デバイスの空洞と同じサイズを用いた場合、マイクロ流体チャネルに含まれる液滴の数は僅かに低くなり、L
2/2d
2 d/(d+w)となる。第1の「有用」な液滴、例えば、完全PCRサイクルに曝されたものは、マイクロ流体チャネルの出口に到達し、時間t
PCR後に分析される。その時点から、分析された液滴の数が、L
2/2d
2 d/(d+w)/t
PCRのレートで増加する。
図8は、両方のケースについて液滴の数を時間の関数として示す。
【0039】
本開示の一実施形態によれば、温度制御ユニット111は、液滴が第1マイクロ流体チャネル104を通過しながら、第1マイクロ流体チャネル104の温度を少なくとも2つの温度値に連続的に循環させるように構成できる。利点として、連続的なPCRが液滴に対して実施でき、これにより液滴は、第1マイクロ流体チャネル104の入口102に連続的に供給され、第1マイクロ流体チャネル104の出口103で排出される。第1マイクロ流体チャネル104での液滴は、出口103を介して第1マイクロ流体チャネル104を出る前に、少なくとも2つの温度値にすることができる(n回、nは温度サイクルの回数)。
【0040】
本開示の一実施形態によれば、温度制御ユニット111は、液滴が第1マイクロ流体チャネル104内に存在する場合だけ、少なくとも2つの温度値になる第1マイクロ流体チャネル104の温度のサイクルを開始するように構成できる。この構成は、デバイスがバッチ式PCRデバイスとして機能することが可能になる。この構成において、第1マイクロ流体チャネル104を液滴で充填した後、第1マイクロ流体チャネル104での液滴は、少なくとも2つの温度値に曝される。その後、液滴は、出口103を介して第1マイクロ流体チャネル104を出る。この構成において、液滴は、異なるバッチで第1マイクロ流体チャネル104に供給してもよい。
【0041】
本開示の第1態様で提示したようなデバイス100は、デバイス100の設計/構造を変更することなく、連続式PCRまたはバッチ式PCRのためのデバイスとして使用できることが好都合である。現在、設計を物理的に変更することなく、同じデバイスを用いて両方の機能を実施できる先行技術デバイスが存在しない。
【0042】
第1マイクロ流体チャネル104は、例えば、CMOS互換の処理テクニックを用いて、シリコン基板においてエッチング加工したチャネルでもよい。本開示の他の実施形態によれば、基板は、PDMS基板でもよい。第1マイクロ流体チャネル104は、例えば、成形(molding)テクニックを用いてPDMS基板に形成されたチャネルでもよい。本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、シリコンに全て製造してもよい。シリコンでの製造は、フィルタリング、DNA/RNA抽出、試薬混合、試薬保管などを含む種々のマイクロ流体コンポーネントの容易なモノリシック集積化を可能にする。利点として、未処理の生体サンプルまたは体液が使用可能である完全デジタルPCRシステムを構築することが可能である。更なる利点として、安価なCMOS互換の処理テクニックを用いて完全デバイスが製造できるため、製造コストが低減できる。
【0043】
本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104は、蛇行(meander)状の形状を採用してもよい。蛇行状の形状は、第1マイクロ流体チャネル104の長さを増加させ、そのサイズを低減し、よって完全なマイクロ流体デバイス100のコストを低減する。利点として、液滴の通過時間(=液滴が第1マイクロ流体チャネル104の入口102から出口103へ伝搬する時間)が、第1マイクロ流体チャネル104での液滴の流速(=伝搬速度)を変更することなく、増加させることができる。他の利点として、空洞を用いた先行技術のバッチ式PCRデバイスと比較して、蛇行状の形状の使用は、第1マイクロ流体チャネル104の体積を空洞の体積と同等にすることができる。本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104は、第1マイクロ流体チャネル104での液滴の通過時間を所定の流速について増加できる任意の他の形状を有してもよい。
【0044】
本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107は、液滴を発生し、該液滴を第1マイクロ流体チャネル104内に、予め定めた流速で送り込むための少なくとも1つのポンプを備える。本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107は、キャリア媒体(例えば、オイル)および希釈液(例えば、水)のフローを独立に制御するための2つのポンプを備える。液滴発生器107は、キャリア媒体(例えば、オイル)区画と、検体およびPCR試薬区画113とを備えてもよい。本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107は、、希釈液(例えば、水)区画112と、検体およびPCRを希釈液と混合するための混合器(mixer)とをさらに備えてもよい。
【0045】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、片側で液滴発生器107の出口と接続され、別の片側で第1マイクロ流体チャネル104の入口102と接続された第2マイクロ流体チャネル105と、第2マイクロ流体チャネル105に存在する発生した液滴を加熱するように設けられた加熱エレメントとをさらに備える。
図2は、こうした実施形態を示す。
【0046】
第1マイクロ流体チャネル104に入る前に液滴を加熱するために、加熱エレメントが第1マイクロ流体チャネル104の入口に存在する。第2マイクロ流体チャネル105は、液滴発生器107の出口と、第1マイクロ流体チャネル104の入口102とを相互接続する。連続式PCRを実施する場合、第1マイクロ流体チャネル104の温度は、少なくとも2つの温度値になるように連続的に循環される。液滴が未知の温度で第1マイクロ流体チャネル104に入るのを回避するために、流体サンプルは、予め定めた温度に予備加熱される。従来、PCRを実施することは、流体サンプルをDNA変性温度に加熱する第1ステップを含む。変性温度とは異なる温度でPCRを開始した場合、非特異的増幅が生じることがあり、例えば、選択したものとは異なるDNA断片が増幅されることがある。これは、第1マイクロ流体チャネル104に入る前に液滴を予備加熱することによって改善できる。発生した液滴は、予備加熱エレメントの温度、例えば、変性温度で第1マイクロ流体チャネル104に入る。利点として、非特異的増幅が生じない。本開示の一実施形態によれば、第2マイクロ流体チャネル105は、蛇行状の形状を採用してもよい。蛇行状の形状は、長さの増加に起因して、遅延エレメントとして機能し、第2マイクロ流体チャネル105の加熱を、限定された空間内で可能にする。利点として、面積(例えば、シリコン)およびコストが低減される。また、第2マイクロ流体チャネル105内の液滴を加熱するための加熱エレメントのサイズが低減できる。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104の内側寸法は、発生した液滴のサイズに選択され、発生した単一の液滴だけが第1マイクロ流体チャネル104を通過できるようにする。本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104の内側寸法は、第1マイクロ流体チャネル104を通過する際、それぞれ発生した液滴の表面が、第1マイクロ流体チャネル104の内側表面全てに接触できるように選択される。連続式PCRを実施する場合、第1マイクロ流体チャネル104の内側寸法(例えば、幅および高さまたは直径)は、発生した液滴のサイズに選択する必要がある。発生した単一の液滴だけが、オイルによって分離され、第1マイクロ流体チャネル104を通過できる。本開示の一実施形態によれば、発生した液滴の体積は、その外側面が第1マイクロ流体チャネル104の壁と接触するようにする。単一の液滴だけが第1マイクロ流体チャネル104を通過できることは、液滴合体のリスクを低減するため、好都合である。単一の液滴を第1マイクロ流体チャネル104の出口で監視することも好都合である。
【0048】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、第1マイクロ流体チャネルの出口103に設けられ、PCR生成物を含有する液滴を検出するための検出器108をさらに備える。
図3は、こうした実施形態を示す。
【0049】
液滴中の検体の存在は、第1マイクロ流体チャネル104の出口103に設けられた検出器108を用いて、第1マイクロ流体チャネル104の出口103で検出できる。液滴発生の際、ラベルを各液滴に添加してもよく、これは検体と結合したとき光を放出する。液滴中の検体の存在を検出することは、出口103または第1マイクロ流体チャネル104での液滴の蛍光発光またはUV吸光度を検出することによって実施できる。UV吸光度を検出するには、光源を使用して、液滴を第1マイクロ流体チャネル104の出口103で照射してもよい。検出器は、例えば、イメージセンサなどの光学検出器でもよい。検出器は、複数の液滴を同時に検出するようにも構成できる。本開示の一実施形態によれば、検出器108は、デバイスの一部であって、半導体基板に埋め込んでもよい。本開示の他の実施形態によれば、検出器108は、第1マイクロ流体チャネル104の出口103と接続された第3マイクロ流体チャネルに埋め込んでもよい。第3マイクロ流体チャネルは、少なくとも部分的に透明材料で製造することができ、液滴からの発光が透明材料を通過して、光学検出器である検出器108に到達できる。検出器は、第3マイクロ流体チャネルの下方に設置してもよい。本開示の一実施形態によれば、光学検出器は、画素でもよい。光学検出器の上にあるスペクトルフィルタを使用して、液滴からの蛍光発光をフィルタ処理してもよい。利点として、異なる検体が異なる液滴において検出できる。
【0050】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、第1マイクロ流体チャネル104において、PCRの際に、PCR生成物を含有する液滴を検出するために設けられた検出器108をさらに備える。
【0051】
検出器108が第1マイクロ流体チャネル104に設置された場合、PCRの際に液滴がリアルタイムで監視できる。利点として、PCRの際の液滴の監視は、液滴中の検体の増幅速度を分析するために使用できる。例えば、液滴の蛍光発光の強度またはUV吸光度の変化は、液滴中の検体の増幅曲線を導出するために使用できる。増幅曲線は、検体の増幅挙動を検査するために使用できる。利点として、PCRの際に液滴を監視しているため、PCRの実施が、PCRが完了した時点から停止できる。これは、分析にとってより短い全体時間をもたらす。PCRの際の液滴の監視は、連続的な監視でもよく、検出器108が第1マイクロ流体チャネル104全体で個々の液滴を監視することが可能である。例えば、検出器108は、第1マイクロ流体チャネル104全体の下方に設置されたイメージセンサでもよく、検出器108のサイズは、第1マイクロ流体チャネル104全体を通過する際に液滴の監視を可能にする。
【0052】
特定の実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104の一部が、透明材料で製造することができ、液滴からの蛍光発光またはUV吸光度が透明材料を通過して、検出器108に到達できる。本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、検出器108と接続された演算ユニット110をさらに備える。演算ユニット110は、PCR生成物を含有する液滴の百分率を決定するように構成される。こうした実施形態を
図4に示す。PCR生成物を含有する液滴の百分率の決定は、液滴の蛍光発光またはUV吸光度に基づくものでもよい。
【0053】
演算ユニット110は、検体の1つ又はそれ以上のコピーを含有する液滴の数を決定するために使用される。演算ユニット110は、検出器108からの液滴の蛍光発光またはUV吸光度の入力データ(例えば、画像)に基づいて、PCR生成物を含有する液滴の百分率を連続的に決定するように構成されたプロセッサでもよい。
【0054】
本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107は、演算ユニット110と接続される。液滴発生器107は、液滴中の検体のコピー回数を変更するように再構成可能である。こうした実施形態を
図5に示す。再構成は、液滴のサイズを変更することを含んでもよい。発生した液滴のサイズは、蛍光液滴の百分率に応じて、液滴中の検体のコピーの平均回を変更するように変化してもよい。例えば、蛍光液滴の百分率が高すぎる場合、液滴の体積は減少できる。これは、オイルフローを増加し、検体フローを減少させることによって達成できる。いつでも液滴中の検体のコピー回数は、演算ユニット110によって決定される蛍光液滴の百分率に応じて、液滴発生器107によって変更できる。
【0055】
演算ユニット110は、発生した液滴を連続的に分析してもよい。分析は、蛍光液滴の百分率を決定することを含んでもよい。蛍光液滴の百分率についての情報は、再構成可能な液滴発生器107に戻して、発生した液滴中の検体のコピー回数を調整してもよい。液滴の連続分析は、フィードバックループを用いて、システムを最適な精度に近づけることを可能にする。下記の例はこのことを説明する。
【0056】
(例4)
比較的少ない数の液滴を分析した後、液滴の全てまたは大部分が蛍光性であることが判る。これは、液滴当りの検体コピー回数が高すぎることを示すであろう。この場合、液滴発生器107は、より低い検体のコピー回数/液滴を含有するより少ない液滴を発生するために使用できる。液滴のサイズをさらに低減できない場合、適切な希釈システムが使用できる。
【0057】
本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107は、変更可能な希釈システムを含む。希釈システムの希釈値は、検出器108および演算ユニット110によって分析される液滴の制限された数に基づいて必要に応じて設定できる。発生した液滴中の検体のコピー回数の微調整を実施するために、実験の中断または新しい流体サンプルの投入が要求されないことが利点である。
【0058】
本開示の一実施形態によれば、液滴は、希釈液とともに混合された検体およびPCR試薬を含んでもよい。例えば、試薬は、ポリメラーゼまたは変異ポリメラーゼ、塩、pH調整用のバッファ、ヌクレオチドなどでもよい。例えば、希釈液は水でもよい。異なる成分が共に混合される比率は、液滴中の検体の濃度を定義する。検体は、例えば、異なる起源(origin)からのDNAでもよい。液滴発生器は、液滴を発生し、オイルを用いて液滴を相互に分離できる。オイルは、鉱油またはフッ素化オイルでもよい。
【0059】
本開示の一実施形態によれば、検体および試薬の量ならびに希釈液の量を変化させて、第1マイクロ流体チャネル104の出口103で分析された液滴に基づいて、発生した液滴中の検体のコピー回数を変更できる。
【0060】
本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107は、検体と結合したとき、例えば、DNAと結合した場合、光を放出する少なくとも1つのラベルを、それぞれ発生した液滴に添加するように構成される。
【0061】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、第1マイクロ流体チャネル104全体を冷却するための熱冷却エレメントをさらに備えてもよい。本開示の一実施形態によれば、熱冷却エレメントは、温度制御ユニットと接続してもよい。熱冷却エレメントは、加熱エレメントとして動作してもよい。熱冷却エレメントは、第1マイクロ流体チャネル104の近傍または下方に位置決めでき、温度サイクルの際(PCRの際)、第1マイクロ流体チャネル104を冷却するために使用できる。利点として、熱冷却エレメントは、第1マイクロ流体チャネル104を異なる温度になるように循環させるのに要する全体時間を低減できる。
【0062】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、第1マイクロ流体チャネル104を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つの基板貫通溝106をさらに備える。こうした実施形態を
図6に示す。
【0063】
本開示の一実施形態によれば、第2マイクロ流体チャネル105は、基板貫通溝によって少なくとも部分的に取り囲まれる。こうした実施形態を
図7に示す。
【0064】
第1マイクロ流体チャネル104は、基板貫通溝106で第1マイクロ流体チャネル104を少なくとも部分的または全て取り囲むことによって、基板の残りから分離できる。溝は、第1マイクロ流体チャネル104を基板の残りから絶縁し、反応容器の物理的および熱的質量を低減する。熱的に絶縁された小さな質量を加熱することは、短い熱時定数をもたらす。こうして第1マイクロ流体チャネル104は、より短い時間で特定の温度に加熱できる。基板貫通溝は、基板上または基板内にある他のコンポーネントが加熱されないことも確保している。この場合、溝は、熱バリアとして機能し、マイクロ流体デバイス上の種々のコンポーネントの温度を低減する。
【0065】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100の半導体基板は、マイクロ流体デバイスのマイクロ流体コンポーネントを封止するために、カバー層、例えば、パイレックス(Pyrex)カバー層と接合、例えば、陽極接合してもよい。カバー層は、基板貫通溝によって取り囲まれたマイクロ流体コンポーネントのための支持部としても機能する。
【0066】
本開示の一実施形態によれば、本開示の第1態様およびその実施形態に記載されたデバイスは、ラボ・オン・チップ(lab-on-a-chip)でもよい。マイクロ流体デバイスの全てのコンポーネントが、CMOS互換の処理テクニックを用いて、シリコンで製造してもよい。これにより、デバイスは、小型化でき費用効果がある方法で製造できる。特定の実施形態によれば、デバイスは、3mm×3mm、10mm×10mmまたは20mm×20mmの寸法を有してもよい。
【0067】
本開示の一実施形態によれば、マイクロ流体デバイス100は、デバイス上の電気コンポーネント、例えば、MEMSコンポーネント、ポンプ、ヒータを電気的に接続し、制御するためのトランジスタ層を備えてもよい。トランジスタ層は、マイクロ流体デバイス100の半導体基板に埋め込んでもよい。
【0068】
本開示の一実施形態によれば、液滴発生器107の入口は、流体サンプルを準備するために構成されたマイクロ流体ブロックと接続してもよい。マイクロ流体ブロックは、マイクロ流体デバイスの一部でもよい。マイクロ流体ブロックは、流体サンプルから液滴を発生する前に、流体サンプルを準備する。準備ステップは、流体サンプルを精製したり、または流体サンプルから検体を抽出する精製または抽出ステップを含んでもよい。利点として、マイクロ流体ブロックにより、マイクロ流体デバイス100が広範囲の流体サンプル、例えば、生体サンプルまたは体液などのために使用可能となり、これによりマイクロ流体デバイス100に供給する前に、追加の手作業準備ステップを実施する必要がない。
【0069】
本開示の一実施形態によれば、加熱エレメントが、第1マイクロ流体チャネル104の出口103に設けられる。加熱エレメントは、液滴を、増加する温度に連続的に加熱するように構成してもよい。加熱エレメントの温度は、一定の時間だけ増加でき、例えば、加熱エレメントの温度を10分間増加させる。液滴は、連続的に増加する温度、例えば、10分内で60から90℃に増加する温度に曝される。温度を連続的に増加させて出口で液滴を加熱することによって、PCR生成物の融解曲線分析が実施できる。利点として、融解曲線分析は、特異性(specificity)の制御として使用できる。
【0070】
本開示の第2態様において、本開示の第1態様で説明したようなデバイスを用いてPCRを実施する方法が提示される。該方法は、流体サンプルを、本開示の第1態様およびその実施形態に係るマイクロ流体デバイス100に供給するステップと、液滴発生器107を用いて、流体サンプルの液滴を発生し、該液滴を第1マイクロ流体チャネル104内に送り込むステップと、温度制御ユニット111を用いて、第1マイクロ流体チャネル104全体の温度を少なくとも2つの温度値になるように循環させるステップとを含む。
【0071】
本開示の一実施形態によれば、流体サンプルをマイクロ流体デバイス100に供給するステップは、希釈液、サンプルおよびPCR試薬およびキャリア媒体(例えば、オイル)を液滴発生器107に供給することを含む。液滴発生器107は、予め定めたサイズの液滴を発生し、ポンプを用いて、液滴およびキャリア媒体(例えば、オイル)を調整可能な流速でマイクロ流体デバイス100の第1マイクロ流体チャネル104に供給する。温度制御ユニット111は、加熱エレメント101を制御し、第1マイクロ流体チャネル104を少なくとも2つの温度値に加熱するために使用され、液滴でのPCRを実施する。
【0072】
本開示の一実施形態によれば、液滴を発生し、液滴を送り込むステップは、第1マイクロ流体チャネル104が液滴で完全に充填された場合に停止する。
【0073】
バッチ式PCRを実施する場合、第1ステージにおいて、第1マイクロ流体チャネル104は、液滴で部分的または完全に充填される。第2ステージにおいて、PCRを液滴において実施する。液滴発生器107は、第1マイクロ流体チャネル104が液滴で部分的または完全に充填されるまで、液滴を発生し、液滴を第1マイクロ流体チャネル104に送り込む。その後、送り込みが停止する。その後、第1マイクロ流体チャネル104の温度は、少なくとも2つの温度値になるように循環し、PCRサイクルを液滴において実施する。その後、液滴は、第1マイクロ流体チャネル104から送り出され、新たに発生した液滴が、新たなPCR動作を実施するために第1マイクロ流体チャネル104に供給してもよい。この手順は繰り返してもよい。
【0074】
本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104の温度を循環することは、液滴中の検体の飽和レベルに到達するまで実施される。温度の循環は、PCRの飽和ステージに到達した場合、停止する。このステージで、PCRサイクルが完了し、第1マイクロ流体チャネル104内の液滴は、第1マイクロ流体チャネル104から送り出される。この動作は、繰り返すことができ、これにより新しいバッチの液滴が、部分的または完全に充填されるまで第1マイクロ流体チャネル104に供給され、その後、PCRが再び実施される。
【0075】
本開示の一実施形態によれば、第1マイクロ流体チャネル104の温度を循環することは、液滴を第1マイクロ流体チャネル104に送り込みながら、第1マイクロ流体チャネル104の温度を少なくとも2つの温度値になるように連続的に循環させることを含む。
【0076】
連続式PCRを実施するために、液滴が液滴発生器107によって発生し、第1マイクロ流体チャネル104に送り込まれる。第1マイクロ流体チャネル104内の液滴は、常に移動している。液滴が第1マイクロ流体チャネル104の入口102から第1マイクロ流体チャネル104の出口103に進行するとき、第1マイクロ流体チャネル104内の温度は、少なくとも2つの温度値になるように連続的に循環する。
【0077】
本開示の一実施形態によれば、液滴は、第1マイクロ流体チャネル104の温度サイクルの持続時間に適合した流速で、第1マイクロ流体チャネル104に送り込まれる。
【0078】
第1マイクロ流体チャネル104での液滴の伝搬速度は、液滴発生器107の流速によって定義される。この流速は、第1マイクロ流体チャネル104の温度サイクルの持続時間に適合している。利点として、第1マイクロ流体チャネル104内の液滴の流速、および第1マイクロ流体チャネル104の温度サイクルは、互いに適合できる。第1マイクロ流体チャネル104内の液滴の流速は、所望の温度サイクルの回数に調整可能であり、各温度サイクルは少なくとも2つの温度値を含む。
【0079】
本開示の一実施形態によれば、該方法は、液滴を第1マイクロ流体チャネル104内に送り込む前に、発生した液滴を予備加熱するステップを含む。この予備加熱は、加熱エレメントを用いて実施してもよい。
【0080】
本開示の一実施形態によれば、発生した液滴は、第1マイクロ流体チャネル104に入る前に、予め定めた温度(例えば、増幅される検体の変性温度)に加熱される。発生した液滴は、予め定めた温度で第1マイクロ流体チャネル104に入る。連続式PCRを実施する場合、第1マイクロ流体チャネル104の温度は、少なくとも2つの温度値になるように連続的に循環される。液滴が未知の温度で第1マイクロ流体チャネル104に入るのを回避するために、液滴は、予め定めた温度に予備加熱される。従来、PCRを実施することは、流体サンプルを変性温度に加熱する第1ステップを含む。変性温度とは異なる温度で処理を開始することは、非特異的増幅を生じさせることがあり、例えば、選択したものとは異なるDNA断片が増幅されることがある。これは、液滴を予備加熱することによって解消される。例えば、発生した液滴は、予備加熱エレメントの温度、例えば、検体の変性温度で第1マイクロ流体チャネル104に入る。
【0081】
本開示の一実施形態によれば、該方法は、検出器108を用いて出口103で液滴を検出するステップをさらに含む。本開示の一実施形態によれば、PCR生成物を含有する液滴の検出は、検出器を用いて液滴の蛍光発光または液滴のUV吸光度を検出することを含む。連続式PCRを実施する場合、液滴は、第1マイクロ流体チャネル104に連続的に送り込まれる。液滴は、第1マイクロ流体チャネル104の出口103において連続的に監視できる。監視された液滴からの情報、例えば、蛍光発光またはUB吸光度は、液滴発生器107へのフィードバックとして使用でき、必要に応じて液滴中の検体のコピー回数を変更する。本開示の一実施形態によれば、液滴中の検体のコピー回数は、演算ユニット110によって決定された、PCR生成物を含有する液滴の百分率に応じて、液滴発生器107によって変更される。液滴中の検体のコピー回数は、液滴発生器107の一部でもよい希釈システムを用いて変更してもよい。代替として、液滴中の検体のコピー回数は、液滴発生器107によって液滴のサイズを変化させることによって変更してもよい。利点として、フィードバックシステムは、マイクロ流体デバイス100をリアルタイムで微調整するために使用できる。動作中のこうした微調整は、先行技術デバイスでは不可能である。
【0082】
本開示の一実施形態によれば、該方法は、検出器108を用いてPCR生成物を含有する液滴を計数するステップをさらに含む。本開示の一実施形態によれば、液滴を検出した後、液滴は、液滴の蛍光発光またはUV吸光度に基づいて選別してもよい。