【実施例】
【0049】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[合成例1:β−NiOOHの合成]
市販のNi(OH)
2及びNaClOを用いて、以下の反応式に従って合成を行なった。
反応式:2Ni(OH)
2+ NaClO → 2NiOOH + NaCl + H
2O。
【0051】
Ni(OH)
2を0.4gに対し蒸留水10mlを加えてスラリー状にしたものに、NaClO10ml、8Mの水酸化ナトリウム水溶液10mlを加えてpHを13以上に調整し、ホットスターラーを用いて温度を20℃に保ち、1時間30分攪拌しつつ反応させた。これを吸引ろ過した後に、40℃で1日空気中で乾燥させた。
【0052】
CuKα線によるX線回折測定を行ったところ、
図1のような回折パターンが得られ、2θ=約19°、約38°に特徴的なピークが観測された。また、2θ=10.5°〜15°にピークが見られないこと、2θ=40°より高角度側に大きなピークが見られないことから、γ−NiOOHではなく、β−NiOOHが得られたと判断した。このパターンは、J. Pan et al. / Electrochemica Acta 54 (2009) 3812-3818のFig. 3にあるパターンと一致している。
【0053】
なお、同じ条件で反応時間を長くすると、
図2に示すように、XRDパターンに、2θ=10.5°〜15°の間にピークが現れた。このパターンは、J. Pan et al. / Electrochemica Acta 54 (2009) 3812-3818のFig. 3のγ−NiOOHのピークと同様であり、γ−NiOOH(γox−NiOOH)が生成したことが分かった。
【0054】
以上の結果から、Ni(OH)
2を酸化することでβ−NiOOHが生成し、過度に酸化することで、γ−NiOOH(γox−NiOOH)が生成することが分かった。
【0055】
[比較例1:ニッケルメッシュ]
合成例1で作成したβ−NiOOHに導電助剤としてアセチレンブラック、結着剤としてPTFEを、β−NiOOH:アセチレンブラック:結着剤が80:15:5(質量%)の割合でそれぞれ加え、よく混合し、正極活物質層形成用ペースト組成物を作製した。
【0056】
正極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュ((株)ニラコ製;ニッケル 金網100mesh)を用い、当該正極支持体に、厚みが0.1〜10mm(特に1mm)となるように、正極活物質層形成用ペースト組成物を塗布し、乾燥させて、比較例1の二次電池用正極を得た。
【0057】
[比較例2:チタンメッシュ]
正極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュではなく、チタンメッシュ((株)ニラコ製;チタン 金網100mesh)を用いたこと以外は比較例1と同様に、比較例2の二次電池用正極を得た。
【0058】
[実施例1:金メッシュ]
正極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュではなく、金メッシュ((株)ニラコ製;金 金網100mesh)を用いたこと以外は比較例1と同様に、実施例1の二次電池用正極を得た。
【0059】
[実施例2:白金メッシュ]
正極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュではなく、白金メッシュ((株)ニラコ製;白金 金網100mesh)を用いたこと以外は比較例1と同様に、実施例2の二次電池用正極を得た。
【0060】
[実施例3:カーボンコートニッケルメッシュ]
E-1010形日立イオンスパッターを用いて、マニュアルに従い、付加電流20Aで始め、これが0Aになるまで、約10秒蒸着を継続し、カーボンコートニッケルメッシュを得た。このときの膜厚は、マニュアルによれば12nmとなる。
【0061】
正極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュではなく、カーボンコートニッケルメッシュを用いたこと以外は比較例1と同様に、実施例3の二次電池用正極を得た。
【0062】
[実施例4:カーボンコートチタンメッシュ]
E-1010形日立イオンスパッターを用いて、マニュアルに従い、付加電流20Aで始め、これが0Aになるまで、約10秒蒸着を継続し、カーボンコートチタンメッシュを得た。このときの膜厚は、マニュアルによれば12nmとなる。
【0063】
正極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュではなく、カーボンコートチタンメッシュを用いたこと以外は比較例1と同様に、実施例4の二次電池用正極を得た。
【0064】
[実験例1:レスト時のγ−NiOOH(γred−NiOOH)の生成]
実施例1〜4及び比較例1〜2の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、対極にPt、参照極にAg/AgCl参照電極を用い、8MのKOHを電解液として、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0065】
+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー(電位変化の小さな領域)の途中まで放電した後、開回路の状態で静置した。実施例1〜4及び比較例1〜2について、種々の時間経過後の正極材料のXRDパターンを以下:
図3 比較例1(ニッケルメッシュ) 1日後
図4 比較例2(チタンメッシュ) 2日後
図5 実施例1(金メッシュ) 1日後
図6 実施例2(白金メッシュ) 3日後
図7 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ) 1日後
図8 実施例4(カーボンコートチタンメッシュ) 1日後
に示す。
【0066】
2θが10.5°〜15°のパターンに注目すると、電極支持体(電極集電体)として、ニッケルメッシュ及びチタンメッシュを用いた比較例1及び2ではピークが現れた(
図3〜4)。ニッケルよりも標準電極電位が卑なチタンの方が、ピークが大きくなった。
【0067】
また、比較例2のチタンメッシュについて同様に実験を行い、静置時間30分、1時間におけるXRDパターンを
図9に示す。静置時間の増加に従い、このピークの強度が大きくなった。
【0068】
Y. Sato et al. / Journal of Power Sources 93 (2001) 20-24には、これはγ−NiOOHのピークであると記載されている。また、γ−NiOOHの生成が、メモリー効果の原因であると記載されている。局部電池反応によって生成する上記γ−NiOOHは、CuKα線によるX線回折で回折角2θの10.5〜15度の位置に回折ピークを有している。一方、過充電により生成するγ−NiOOHも回折角2θの10.5〜15度の位置に回折ピークを有しており、ピーク位置は類似しているが、同一物質かどうかは明確ではない。なぜなら、充電過程は、電極活物質(β−NiOOH)には酸化過程であるのに対し、電極集電体(Ni)との間で局部電池反応が起こっている過程は、電極活物質(β−NiOOH)には還元過程であるからである。この文献のγ−NiOOHは、γ−NiOOH(γred−NiOOH)と表記できる。過充電で現れる、β−NiOOHよりも酸化が進んだ状態としてのγ−NiOOHは、γ−NiOOH(γox−NiOOH)と表記できる。しかしながら、現時点で、γox−NiOOHとγred−NiOOHとが物質的に異なると述べている報文は全くない。
【0069】
一方、電極支持体(電極集電体)として、金メッシュ及び白金メッシュを用いた実施例1〜2は、このピークは現れなかった(
図5〜6)。β−NiOOHの電位は、完全に充電した状態において、標準水素電極(SHE)基準で+0.52 Vである(出典:パナソニック(株)充電式ニッケル水素電池の概要)。ニッケル及びチタンは、β−NiOOHに対して大きく卑な電位を持つ。これに対し、金及び白金は大きく卑ではない電位を持つ。
【0070】
電池セルを開回路にしたときに、電極内の電極材料(電極活物質)と電極支持体(電極集電体)との間で、その電位差に基づく局部電池反応が生起する。この局部電池では、電極支持体をニッケルメッシュ又はチタンメッシュとしたとき(比較例1〜2)はβ−NiOOHは正極となり、電極支持体(電極集電体)を金メッシュ又は白金メッシュとしたとき(実施例1〜2)はβ−NiOOHは負極となる。電極支持体(電極集電体)をニッケルメッシュ又はチタンメッシュとしたとき(比較例1〜2)にはγ−NiOOH(γred−NiOOH)が生成したことから、局部電池反応で、β−NiOOHが正極として作用するときに、「γ−NiOOH(γred−NiOOH)」が生成することが分かった。
【0071】
一方、電極支持体(電極集電体)として、γ−NiOOH(γred−NiOOH)が生成するニッケルメッシュやチタンメッシュであっても、カーボンコートを行った場合(実施例3〜4)は、「γ−NiOOH(γred−NiOOH)」のピークは現れなかった。カーボンはこの電解液中で不活性であるため、局部電池反応が起こらず、β−NiOOHが正極として作用することがなく、電極支持体(電極集電体)を金メッシュ又は白金メッシュとしたとき(実施例1〜2)と同様、「γ−NiOOH(γred−NiOOH)」が生成することがなかったと言える。以上より、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム二次電池のような水酸化ニッケルを電極活物質として使用する二次電池においては、β−NiOOHが正極として作用する局部電池反応を制御する電極が、「γ−NiOOH(γred−NiOOH)」の生成を防ぐことができることが分かる。また、カーボンでコートすることにより、ニッケル及びチタンの電極反応を遮蔽することができることが示された。カーボン以外でも、導電性高分子等で被覆した場合でも、電極反応を遮蔽できると考えられる。
【0072】
[実験例2:メモリー効果及び容量の違い(1)]
実験例1と同様に、実施例1〜4及び比較例1〜2の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0073】
以下の過程:
(1)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
(2)6時間充電
(3)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトーの途中まで放電
(4)休止(比較例1(ニッケルメッシュ):1週間、実施例1〜4及び比較例2(その他):5時間)
(5)6時間充電
(6)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0074】
なお、(2)と(5)の過程においてはいずれも完全に充電されている。
【0075】
実施例1〜4及び比較例1〜2について、種々の過程における電圧の時間変化を以下:
図10 比較例1(ニッケルメッシュ) 過程(1)、(3)、(6)
図11 比較例2(チタンメッシュ) 過程(1)、(3)、(6)
図12 実施例1(金メッシュ) 過程(3)、(6)
図13 実施例2(白金メッシュ) 過程(3)、(6)
図14 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ) 過程(3)、(6)
図15 実施例4(カーボンコートチタンメッシュ) 過程(3)、(6)
に示す。
【0076】
電極支持体をニッケルメッシュ又はチタンメッシュとしたとき(比較例1〜2)、(6)の過程の電圧が(1)の過程に比べ、急激に減少する現象が見られた。これはメモリー効果を表している。これに対し、金メッシュ、白金メッシュ、カーボンコートを行ったニッケルメッシュ、カーボンコートを行ったチタンメッシュを用いた場合(実施例1〜4)は、(6)の過程の電圧が(3)の過程に比べ、急激に減少することはなかった。
【0077】
以上の結果から、実験例1においてβ−NiOOHが正極として作用する局部電池反応を起こす電極支持体を使用した場合に、メモリー効果が観測された。以上より、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム二次電池のような水酸化ニッケルを電極活物質として使用する二次電池においては、β−NiOOHが正極として作用する局部電池反応を制御する電極が、メモリー効果を起こさず、耐久性を向上させることができることが分かる。
【0078】
また経過時間を比べると、電極支持体として、金メッシュ、白金メッシュ、カーボンコートニッケルメッシュ、カーボンコートチタンメッシュを用いた場合(実施例1〜4)、起電力が顕著に低下するのは10000〜25000秒程度である。一方、ニッケルメッシュ又はチタンメッシュを用いた場合は3000〜13000秒程度である。特に、電極集電体として同じチタンを用いた比較例2と実施例4とを比較すると、起電力が顕著に低下する時間が、カーボンコートを施すことにより、3000秒程度から10000秒程度に飛躍的に向上している。つまり、電池の容量も飛躍的に向上していることが分かる。このことから、ニッケルメッシュ又はチタンメッシュを用いた場合(比較例1〜2)は、通常の電池使用時においても、並行して起こる局部電池反応が、電池の容量を減少させるように作用していると考えられ、本発明の二次電池用電極は、この作用を抑制することができる。
【0079】
[実施例5:金メッシュ(導電助剤ニッケル;出発物質Ni(OH)
2)]
市販のNi(OH)
2に導電助剤として市販のNi金属の粉末(Ni粉末)、結着剤としてPTFEを、Ni(OH)
2:アセチレンブラック:結着剤が80:15:5(質量%)の割合でそれぞれ加え、よく混合し、正極活物質層形成用ペースト組成物を作製した。
【0080】
正極支持体(電極集電体)として、金メッシュ((株)ニラコ製;金 金網100mesh)を用い、当該正極支持体に、厚みが0.1〜10mm(特に1mm)となるように、正極活物質層形成用ペースト組成物を塗布し、乾燥させて、実施例5の二次電池用正極を得た。
【0081】
[実施例6:金メッシュ(導電助剤アセチレンブラック;出発物質Ni(OH)
2)]
導電助剤として、Ni金属の粉末ではなく、アセチレンブラックを用いたこと以外は実施例5と同様に、実施例6の二次電池用正極を得た。
【0082】
[比較例3:ニッケルメッシュ(導電助剤アセチレンブラック;出発物質Ni(OH)
2)]
正極支持体(電極集電体)として、金メッシュではなく、ニッケルメッシュ((株)ニラコ製;ニッケル 金網100mesh)を用い、導電助剤として、Ni金属の粉末ではなく、アセチレンブラックを用いたこと以外は実施例5と同様に、比較例3の二次電池用正極を得た。
【0083】
[実験例3:放電途中でレストした時のX線回折測定結果]
<出発物質β−NiOOHの場合>
実験例1と同様に、実施例1(金メッシュ)の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0084】
以下の過程:
(1)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
(2)6時間充電
(3)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトーの途中まで放電
(4)休止3日間
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0085】
結果を
図16に示す。その結果、γ−NiOOHのピークは見られなかった。
【0086】
<出発物質Ni(OH)
2の場合>
実験例1と同様に、実施例6及び比較例3(金メッシュ及びニッケルメッシュ)の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0087】
以下の過程:
(1)6時間充電
(2)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
※(1)及び(2)は3回繰り返した。
(3)6時間充電
(4)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトーの途中まで放電
(5)休止1週間
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0088】
実施例6及び比較例3について、種々の時間経過後の正極材料のXRDパターンを以下:
図17 実施例6(金メッシュ;出発物質Ni(OH)
2)
図18 比較例3(ニッケルメッシュ;出発物質Ni(OH)
2)
に示す。
【0089】
その結果、比較例3ではγ−NiOOHのピークは見られたが、実施例6ではγ−NiOOHのピークは見られなかった。
【0090】
[実験例4:容量の違い]
実験例1と同様に、実施例6及び比較例3の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0091】
以下の過程:
(1)6時間充電
(2)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
※(1)及び(2)は3回繰り返した。
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0092】
それぞれの最後の放電過程における放電曲線を
図19 比較例3(ニッケルメッシュ;出発物質Ni(OH)
2)
図20 実施例6(金メッシュ;出発物質Ni(OH)
2)
に示す。
【0093】
その結果、出発物質をNi(OH)
2とした場合であっても、電極集電体としてニッケルメッシュを用いた場合と比較して金メッシュを用いたほうが、容量が大きく、電位が高いことが分かる。
【0094】
[実験例5:メモリー効果の違い]
実験例1と同様に、実施例1〜3の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0095】
以下の過程:
(1)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
(2)6時間充電
(3)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトーの途中まで放電
(4)休止1週間
(5)6時間充電
(6)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0096】
なお、(2)と(5)の過程においてはいずれも完全に充電されている。
【0097】
実施例1〜3について、種々の過程における電圧の時間変化を以下:
図21 実施例1(金メッシュ)
図22 実施例2(白金メッシュ)
図23 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ)
に示す。
【0098】
いずれの場合でも、休止後に放電曲線の電位の降下は見られなかった。
【0099】
[実験例6:レストつきサイクル充放電試験]
<休止時間なし(0時間)>
実験例1と同様に、実施例1〜3及び比較例1の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0100】
以下の過程:
過程I(通常の充放電):
(1)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
(2)6時間充電
※(1)及び(2)は3回繰り返した。
過程II(SOC 40%まで放電):
(3)2時間放電
過程III(SOC 40〜60%の充放電):
(4)50分間充電
(5)40分間放電
※(4)及び(5)は5回又は10回繰り返した(5サイクル又は10サイクル)。
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0101】
充電時間を放電時間より長くすることにより、放電分を充電することができた。
【0102】
さらに、その後、各試料のX線回折測定を行った。
【0103】
なお、SOCとは、State of Chargeの略であり、電池の残り容量を表す。例えば、SOC 40%であれば、残りの容量が全容量の40%であることを示す。
【0104】
実施例1〜3及び比較例1について、サイクル充放電試験及びX線回折測定の結果を以下:
図24 実施例1(金メッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図25 実施例1(金メッシュ;5サイクル) X線回折測定
図26 実施例2(白金メッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図27 実施例2(白金メッシュ;5サイクル) X線回折測定
図28 比較例1(ニッケルメッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図29 比較例1(ニッケルメッシュ;5サイクル) X線回折測定
図30 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図31 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;5サイクル) X線回折測定
図32 実施例1(金メッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図33 実施例1(金メッシュ;10サイクル) X線回折測定
図34 実施例2(白金メッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図35 実施例2(白金メッシュ;10サイクル) X線回折測定
図36 比較例1(ニッケルメッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図37 比較例1(ニッケルメッシュ;10サイクル) X線回折測定
図38 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図39 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;10サイクル) X線回折測定
に示す。
【0105】
<休止時間1時間>
実験例1と同様に、実施例1〜3及び比較例1の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0106】
以下の過程:
過程I(通常の充放電):
(1)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
(2)6時間充電
※(1)及び(2)は3回繰り返した。
過程II(SOC 40%まで放電):
(3)2時間放電
過程III(SOC 40〜60%の充放電):
(4)1時間休止
(5)50分間充電
(6)1時間休止
(7)40分間放電
※(4)〜(7)は5回又は10回繰り返した(5サイクル又は10サイクル)。
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0107】
さらに、その後、各試料のX線回折測定を行った。
【0108】
実施例1〜3及び比較例1について、サイクル充放電試験及びX線回折測定の結果を以下:
図40 実施例1(金メッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図41 実施例1(金メッシュ;5サイクル) X線回折測定
図42 実施例2(白金メッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図43 実施例2(白金メッシュ;5サイクル) X線回折測定
図44 比較例1(ニッケルメッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図45 比較例1(ニッケルメッシュ;5サイクル) X線回折測定
図46 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図47 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;5サイクル) X線回折測定
図48 実施例1(金メッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図49 実施例1(金メッシュ;10サイクル) X線回折測定
図50 実施例2(白金メッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図51 実施例2(白金メッシュ;10サイクル) X線回折測定
図52 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;10サイクル) サイクル充放電試験
図53 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;10サイクル) X線回折測定
に示す。
【0109】
<休止時間2時間>
実験例1と同様に、実施例1〜3及び比較例1の二次電池用正極をそれぞれ作用極とし、実験例1と同様に、ガラスセル(二次電池)を作製した。
【0110】
以下の過程:
過程I(通常の充放電):
(1)+ 0.5〜+ 0.35 V(vs SHE)のプラトー終了まで放電
(2)6時間充電
※(1)及び(2)は3回繰り返した。
過程II(SOC 40%まで放電):
(3)2時間放電
過程III(SOC 40〜60%の充放電):
(4)2時間休止
(5)50分間充電
(6)2時間休止
(7)40分間放電
※(4)〜(7)は5回又は10回繰り返した(5サイクル又は10サイクル)。
にしたがう充放電を、この順に、全て電流密度30 mA/gで行った。
【0111】
さらに、その後、各試料のX線回折測定を行った。
【0112】
実施例1〜3及び比較例1について、サイクル充放電試験及びX線回折測定の結果を以下:
図54 実施例1(金メッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図55 実施例1(金メッシュ;5サイクル) X線回折測定
図56 実施例2(白金メッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図57 実施例2(白金メッシュ;5サイクル) X線回折測定
図58 比較例1(ニッケルメッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図59 比較例1(ニッケルメッシュ;5サイクル) X線回折測定
図60 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;5サイクル) サイクル充放電試験
図61 実施例3(カーボンコートニッケルメッシュ;5サイクル) X線回折測定
に示す。
【0113】
以上の結果から、金メッシュ、白金メッシュ及びカーボンコートニッケルメッシュを用いた場合には、2時間のレストをはさんだ場合にも、γ−NiOOHの生成は見られなかった。それに対して、ニッケルメッシュを用いた場合には、2時間のレストをはさむことにより、γ−NiOOHの生成が見られた。一般に、X線回折でピークが見られるようになるには、相当量(通常は5%以上)の生成が必要とされていて、2時間のレストにより相当量のγ−NiOOHが生成したと考えられる。このγ−NiOOHの生成にともない、2時間のレストをはさむことにより、ニッケルメッシュを用いた場合はサイクル特性が悪化したが、金メッシュ、白金メッシュ及びカーボンコートニッケルメッシュを用いた場合はサイクル特性を維持することができた。特に、金メッシュ及びカーボンコートニッケルメッシュを用いた場合には、よりサイクル特性を維持することができた。
【0114】
上記の結果は、正極活物質としてβ−NiOOH又はNi(OH)
2を用いたニッケル水素電池のみに適用されるものではなく、種々様々な電池の正極活物質を用いた一次電池又は二次電池にも適用されるものである。
【0115】
例えば、正極活物質としてMnO
2を用いて一次電池を作製した場合にも、正極活物質としてβ−NiOOH又はNi(OH)
2を用いた場合ほどではないものの、正極集電体としてニッケルメッシュではなく金メッシュを用いることにより、容量及び電位を向上させることができた。また、上記実験例と同様に、レストをはさむことにより、ニッケルメッシュ、金メッシュ及び白金メッシュの違いによる結晶構造の変化を読み取ることができた。