(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0008】
図2は、第1実施形態の半導体発光装置101の模式断面図である。
【0009】
半導体発光装置101は、発光素子4と、支持体100と、蛍光体層30とを有する。発光素子4は、支持体100と蛍光体層30との間に設けられている。
【0010】
発光素子4は、窒化物半導体を含む半導体層15を有する。本願明細書において、「窒化物半導体」とは、B
xIn
yAl
zGa
1−x−y−zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z≦1)のIII−V族化合物半導体を含み、さらに、V族元素としては、N(窒素)に加えてリン(P)や砒素(As)などを含有する混晶でもかまわない。またさらに、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0011】
半導体層15は、n型クラッド層を含む第1層11と、p型クラッド層を含む第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層(活性層)13と、を有する。
【0012】
n型クラッド層は、例えば、n型GaN層であり、所謂pn接合の順バイアス時に発光層13に電子を供給する。また、p型クラッド層は、例えば、p型GaN層であり、所謂pn接合の順バイアス時に発光層13に正孔を供給する。
【0013】
発光層13は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層が交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum well)構造を有する。井戸層は、n型クラッド層およびp型クラッド層よりもバンドギャップエネルギーが小さい。障壁層は、井戸層を積層方向に挟んでおり、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きい。井戸層は、例えばInGaNを含む。障壁層は、例えばGaNを含み、Inを実質的に含まない。または、障壁層がInを含む場合、障壁層におけるIn組成比は、井戸層におけるIn組成比よりも低い。発光層13から放出される光のピーク波長の範囲は、例えば360nm以上650nm以下である。
【0014】
半導体層15の第1面15a側には、透明無機膜19を介して蛍光体層30が設けられている。
【0015】
半導体層15は、例えば、シリコン基板、サファイア基板、炭化シリコン基板、酸化ガリウムなどの単結晶基板(以下単に基板と記す)上にエピタキシャル成長される。基板上に、第1層11、発光層13、および第2層12が順に形成される。その半導体層15の形成(成長)に用いた基板は、半導体層15から除去される。
【0016】
基板の除去により露出した第1層11の第1面15aには微小凹凸が形成される。例えば、アルカリ系溶液を使ったウェットエッチングにより凹凸面が形成される。この凹凸面により、半導体層15の内部に戻る反射成分を低減し、半導体層15から透明無機膜19側への光取り出し効率を向上できる。
【0017】
図1は、蛍光体層30の一部の拡大模式断面図である。
【0018】
蛍光体層30は、複数の蛍光体粒子31と、複数の無機粒子32とを有する。蛍光体粒子31は、発光層13の放射光(励起光)により励起され、その励起光の波長とは異なる波長の光を放射する。発光層13の光と蛍光体粒子31の光との混合光として、白色、電球色などの光が擬似的に得られる。
【0019】
無機粒子32のサイズは、蛍光体粒子31のサイズよりも小さい。ここで、粒子のサイズとは、複数の粒子の平均粒径、または粒径分布におけるピーク粒径を表す。
【0020】
複数の微小な無機粒子32が、複数の蛍光体粒子31の間で凝集して、複数の蛍光体粒子31どうしを結合している。1つの蛍光体粒子31は、複数の無機粒子32によってまわりを囲まれている。蛍光体粒子31と無機粒子32とは樹脂を介さずに接触して結合している。複数の無機粒子32どうしも樹脂を介さずに接触して結合している。
【0021】
実施形態の蛍光体層30は、複数の蛍光体粒子31が樹脂または無機のバインダーによって結合された焼結体ではなく、後述するように、エアロゾルデポジション法または溶剤の揮発を利用して形成された、複数の蛍光体粒子31と複数の無機粒子32との凝集体であり、蛍光体層30は樹脂を含まない。複数の蛍光体粒子31と複数の無機粒子32との凝集体が層状に形成されている。
【0022】
複数の無機粒子32の間、および無機粒子32と蛍光体粒子31との間に空隙33が形成されている。複数の蛍光体層30どうしを結合するバインダーとしての機能を担う複数の無機粒子32は焼結体ではないため、複数の無機粒子32間に粒界が存在する。
【0023】
無機粒子32は、発光層13の放射光および蛍光体粒子31の放射光に対して透過性を有する。ここで「透過」とは、透過率が100%であることに限らず、光の一部を吸収する場合も含む。
【0024】
また、無機粒子32は樹脂および酸化シリコンよりも高い熱伝導率をもち、無機粒子32の熱伝導率は20W/m・K以上である。例えば、無機粒子32は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化シリコン(Si
3N
4)、炭化シリコン(SiC)などを主成分とすることができる。
【0025】
蛍光体粒子31は発光にともない波長変換損失(ストークスロス)分の発熱をする。そのとき、蛍光体粒子31を樹脂に分散させ、樹脂をバインダーとした構造では、蛍光体粒子31の熱で樹脂が変質や分解してしまう懸念がある。特に高出力発光素子で、樹脂の耐熱性が問題となりうる。
【0026】
これに対して実施形態によれば、蛍光体層30は樹脂をバインダーとして使っていないため、蛍光体層30の耐熱性を向上できる。また、蛍光体粒子31の熱は、高い熱伝導率をもつ複数の無機粒子32によって蛍光体層30の外部に放熱することができる。例えば、蛍光体粒子31の熱は、発光素子4、および支持体100の金属ピラー23、24を介して、実装基板に放熱される。
【0027】
また、実施形態によれば、発光素子4上で蛍光体層30を焼結させる高温処理をともなわないので、発光素子4の信頼性を向上できる。また、蛍光体層30を発光素子4に樹脂の接着剤を介して貼り合わせないので、蛍光体層30と発光素子4との間の放熱パスに樹脂が存在せず、蛍光体層30の放熱性を高め、また蛍光体層30の熱による樹脂劣化の問題もない。
【0028】
また、樹脂よりもヤング率の高い無機粒子32をバインダーに使うことで、蛍光体層30の熱膨張率を低減でき、蛍光体層30から半導体層15に加わる応力を緩和できる。これは、半導体層15の信頼性を高める。
【0029】
以上説明したように、実施形態によれば、蛍光体層30の放熱性に優れ、信頼性の高い半導体発光装置を提供することができる。
【0030】
実施形態において、蛍光体粒子31としては、例えば、Y
3Al
5O
12、Ba
2SiO
4:Eu
2+、SrBaSiO
4:Eu
2+などの酸化物系蛍光体、ZnS:(Cu
+,Al
3+)、SrS:Eu
2+、CaS:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+などの硫化物系蛍光体、Y
2O
2S:Eu
3+などの酸硫化物系蛍光体、M
5(PO
4)
3Cl:Eu
2+(MはSr、Ca、BaまたはMg)などのハロゲン化物系蛍光体、BaMgAl
10O
17:(Eu
2+,Mn
2+)、SrAl
2O
4:Eu
2+などのアルミン酸塩系蛍光体などを用いることができる。
【0031】
また、蛍光体粒子31として、例えば、化学式:Ca
8−xEu
xMg
1−yMn
y(SiO
4)
4Cl
2(0<x≦8、0≦y≦1)で表され、カルシウムマグネシウムクロロシリケートにEuを添加したものを用いることができる。マンガン(Mn)の比率yは、0≦y≦0.2が望ましい。
【0032】
また、蛍光体粒子31として、例えば、化学式(Sr
1−x−yBa
yEu
x)
3(Si
1−zGe
z)
5(0<x≦0.1、0≦y≦1、0≦z≦0.1)で表されるストロンチウムシリケート系蛍光体を用いることができる。
【0033】
また、蛍光体粒子31として、例えば、化学式:(M
1−x,R
x)
a1AlSi
b1O
c1N
d1で表わされるサイアロン系蛍光体を用いることができる。ここで、Mは、Si及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、CaもしくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、例えば、Euが望ましい。x、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。
0<x≦1、
0.6<a1<0.95、
2<b1<3.9、
0.25<c1<0.45、
4<d1<5.7
【0034】
また、蛍光体粒子31として、例えば、化学式:(M
1−x,R
x)
a2AlSi
b2O
c2N
d2で表わされるサイアロン系蛍光体を用いることができる。ここで、Mは、Si及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、例えば、Euが望ましい。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす。
0<x≦1、
0.93<a2<1.3、
4.0<b2<5.8、
0.6<c2<1、6<d2<11
【0035】
尚、蛍光体粒子31は、上記した蛍光体材料以外の蛍光体材料も含め、単一の蛍光体材料を用いるだけでなく、複数種類の蛍光体材料の混合物であっても構わないことは述べるまでもないことである。
【0036】
次に、再び
図2を参照して、半導体発光装置101の他の要素について説明する。
【0037】
また、
図3(a)は、半導体発光装置101における一部要素の平面レイアウトの一例を示す模式平面図である。
図2は、
図3(a)におけるA−A’断面に対応する。
図3(b)は、半導体発光装置101の実装面(
図2の下面)の模式平面図である。
【0038】
半導体層15は、前述したように、第1層11と、第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層13と、を有する。また、第1層11は、第1面(凹凸面)15aを有する。
【0039】
半導体層15は、発光層13及び第2層12の積層膜を含む部分15dと、発光層13及び第2層12を含まない部分15eとを有する。部分15dは、半導体層15のうちで、発光層13が積層されている部分である。部分15eは、半導体層15のうちで、発光層13が積層されていない部分である。
【0040】
発光層13を含む部分15dの第2層12の表面に、p側電極16が設けられている。発光層13を含まない部分15eの第1層11の表面に、n側電極17が設けられている。p側電極16およびn側電極17は、第1面15aの反対側に設けられている。
【0041】
図3(a)に示す例では、発光層13を含まない部分15eが発光層13を含む部分15dを囲んでおり、n側電極17がp側電極16を囲んでいる。
【0042】
発光層13を含む部分15dの面積は、発光層13を含まない部分15eの面積よりも広い。また、発光層13を含む部分15dの表面に設けられたp側電極16の面積は、発光層13を含まない部分15dの表面に設けられたn側電極17の面積よりも広い。これにより、広い発光面が得られ、光出力を高くできる。
【0043】
図3(a)に示すように、n側電極17は例えば4本の直線部を有し、そのうちの1本の直線部には、その直線部の幅方向に突出したコンタクト部17cが設けられている。そのコンタクト部17cの表面には、
図2に示すようにn側配線層22のビア22aが接続されている。
【0044】
半導体層15における第1面15aの反対側には、支持体100が設けられている。半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子4は、支持体100によって支持されている。
【0045】
半導体層15の第1面15a側には、前述した蛍光体層30が設けられている。半導体層15の第1面15aと、蛍光体層30との間には、透明無機膜19が設けられている。透明無機膜19は、半導体層15と蛍光体層30との密着性を高める。
【0046】
半導体層15における第1面15aの反対側(第2面側)、p側電極16およびn側電極17は、絶縁膜18に覆われている。絶縁膜18は、例えば、シリコン酸化膜などの無機絶縁膜である。絶縁膜18は、発光層13の側面及び第2層12の側面にも設けられ、発光層13の側面及び第2層12の側面を覆っている。絶縁膜18は、第1層11における第1面15aから続く側面15cにも設けられ、その側面15cを覆っている。
【0047】
絶縁膜18上には、p側配線層21とn側配線層22とが互いに分離して設けられている。絶縁膜18には、p側電極16に通じる複数の第1開口と、n側電極17のコンタクト部17cに通じる第2開口が形成される。なお、第1開口は、より大きな1つの開口でも良い。
【0048】
p側配線層21は、絶縁膜18上および第1開口の内部に設けられている。p側配線層21は、第1開口内に設けられたビア21aを介してp側電極16と電気的に接続されている。
【0049】
n側配線層22は、絶縁膜18上および第2開口の内部に設けられている。n側配線層22は、第2開口内に設けられたビア22aを介してn側電極17のコンタクト部17cと電気的に接続されている。
【0050】
p側配線層21及びn側配線層22が、半導体層15の第2面側の領域の大部分を占めて絶縁膜18上に広がっている。p側配線層21は、複数のビア21aを介してp側電極16と接続している。
【0051】
また、半導体層15の側面15cを、絶縁膜18を介して反射膜51が覆っている。反射膜51は側面15cに接しておらず、半導体層15に対して電気的に接続されていない。反射膜51は、p側配線層21及びn側配線層22に対して分離している。反射膜51は、発光層13の放射光及び蛍光体31の放射光に対して反射性を有する金属膜である。
【0052】
反射膜51、p側配線層21およびn側配線層22は、共通の金属膜上に例えばめっき法により同時に形成される。反射膜51、p側配線層21およびn側配線層22は、例えば銅膜を含む。その銅膜は、絶縁膜18上に形成された金属膜上にめっき法で形成される。
【0053】
p側配線層21及びn側配線層22の下地となる金属膜は、例えばアルミニウム膜を含む。発光層13の発光光に対して高い反射率を有するアルミニウム膜が、半導体層15の第2面側の大部分の領域に広がって形成されている。これにより、蛍光体層30側に向かう光の量を増大できる。
【0054】
p側配線層21における半導体層15とは反対側の面にはp側金属ピラー23が設けられている。p側配線部41は、p側配線層21及びp側金属ピラー23を含む。
【0055】
n側配線層22における半導体層15とは反対側の面にはn側金属ピラー24が設けられている。n側配線部43は、n側配線層22及びn側金属ピラー24を含む。
【0056】
p側配線部41とn側配線部43との間には、絶縁層として樹脂層25が設けられている。樹脂層25は、p側配線部41の側面およびn側配線部43の側面に設けられている。
【0057】
樹脂層25は、p側金属ピラー23の側面とn側金属ピラー24の側面に接するように、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に設けられている。p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に、樹脂層25が充填されている。
【0058】
樹脂層25は、p側配線層21とn側配線層22との間、p側配線層21と反射膜51との間、およびn側配線層22と反射膜51との間に設けられている。樹脂層25は、p側金属ピラー23の周囲およびn側金属ピラー24の周囲に設けられ、p側金属ピラー23の側面およびn側金属ピラー24の側面を覆っている。
【0059】
また、樹脂層25は、半導体層15の側面15cに隣接する領域(チップ外周部)にも設けられ、反射膜51を覆っている。
【0060】
p側金属ピラー23におけるp側配線層21とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なp側外部端子23aとして機能する。n側金属ピラー24におけるn側配線層22とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なn側外部端子24aとして機能する。p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、例えば、はんだ、または導電性の接合材を介して、実装基板のパッドに接合される。
【0061】
図3(b)に示すように、p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、樹脂層25の同じ面(下面)内で離間して並んで形成されている。p側外部端子23aは例えば矩形状に形成され、n側外部端子24aは、p側外部端子23aの矩形と同じサイズの矩形における2つの角を切り欠いた形状に形成されている。これにより、外部端子の極性を判別できる。あるいは、n側外部端子24aを矩形状にし、p側外部端子23aを矩形の角を切り欠いた形状にしてもよい。
【0062】
p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、絶縁膜18上におけるp側配線層21とn側配線層22との間隔よりも広い。p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、実装時のはんだの広がりよりも大きくする。これにより、はんだを通じた、p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間の短絡を防ぐことができる。
【0063】
これに対し、p側配線層21とn側配線層22との間隔は、プロセス上の限界まで狭くすることができる。このため、p側配線層21の面積、およびp側配線層21とp側金属ピラー23との接触面積の拡大を図れる。これにより、発光層13の熱の放散を促進できる。
【0064】
また、複数のビア21aを通じてp側配線層21がp側電極16と接する面積は、ビア22aを通じてn側配線層22がn側電極17と接する面積よりも広い。これにより、発光層13に流れる電流の分布を均一化できる。
【0065】
絶縁膜18上で広がるn側配線層22の面積は、n側電極17の面積よりも広くできる。n側配線層22の上に設けられるn側金属ピラー24の面積(n側外部端子24aの面積)をn側電極17よりも広くできる。これにより、信頼性の高い実装に十分なn側外部端子24aの面積を確保しつつ、n側電極17の面積を小さくすることが可能となる。すなわち、半導体層15における発光層13を含まない部分15eの面積を縮小し、発光層13を含む部分15dの面積を広げて光出力を向上させることが可能となる。
【0066】
第1層11は、n側電極17及びn側配線層22を介してn側金属ピラー24と電気的に接続されている。第2層12は、p側電極16及びp側配線層21を介してp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0067】
p側金属ピラー23の厚さ(p側配線層21とp側外部端子23aとを結ぶ方向の厚さ)は、p側配線層21の厚さよりも厚い。n側金属ピラー24の厚さ(n側配線層22とn側外部端子24aとを結ぶ方向の厚さ)は、n側配線層22の厚さよりも厚い。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25のそれぞれの厚さは、半導体層15よりも厚い。
【0068】
金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は、1以上であっても良いし、1より小さくても良い。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズより厚くても良いし、薄くても良い。
【0069】
p側配線層21、n側配線層22、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25を含む支持体100の厚さは、半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子(LEDチップ)4の厚さよりも厚い。
【0070】
半導体層15は、基板上にエピタキシャル成長法により形成される。
図2に示す例では、基板は支持体100を形成した後に除去され、半導体層15は第1面15a側に基板を含まない。半導体層15は、剛直な板状の基板にではなく、金属ピラー23、24と樹脂層25との複合体からなる支持体100によって支持されている。
【0071】
p側配線部41及びn側配線部43の材料として、例えば、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性および絶縁材料に対する密着性を向上させることができる。
【0072】
樹脂層25は、p側金属ピラー23およびn側金属ピラー24を補強する。樹脂層25は、半導体層15と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。そのような樹脂層25として、例えば、エポキシ樹脂を主に含む樹脂、シリコーン樹脂を主に含む樹脂、フッ素樹脂を主に含む樹脂にシリカフィラー等を混合した複合材を挙げることができる。
【0073】
また、樹脂層25におけるベースとなる樹脂に光吸収剤、光反射剤、光散乱剤などが含まれ、樹脂層25は発光層13の光に対して遮光性または反射性を有することができる。これにより、支持体100の側面及び実装面側からの光漏れを抑制することができる。
【0074】
半導体発光装置の実装時の熱サイクルにより、p側外部端子23aおよびn側外部端子24aを実装基板のパッドに接合させるはんだ等に起因する応力が半導体層15に加わる。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25は、その応力を吸収し緩和する。特に、半導体層15よりも柔軟な樹脂層25を支持体100の一部として用いることで、応力緩和効果を高めることができる。
【0075】
反射膜51は、p側配線部41及びn側配線部43に対して分離している。このため、実装時にp側金属ピラー23及びn側金属ピラー24に加わる応力は、反射膜51には伝達されない。したがって、反射膜51の剥離を抑制することができる。また、半導体層15の側面15c側に加わる応力を抑制することができる。
【0076】
蛍光体層30は、半導体層15の第2面側、金属ピラー23、24の周囲、および支持体100の側面にまわりこんで形成されていない。蛍光体層30の側面と、支持体100の側面(樹脂層25の側面)とが揃っている。
【0077】
すなわち、
図2に示す半導体発光装置101は、チップサイズパッケージ構造の非常に小型の半導体発光装置である。
【0078】
光を外部に取り出さない実装面側には蛍光体層30が無駄に形成されず、コスト低減が図れる。第2面側に広がるp側配線層21、n側配線層22、および厚い金属ピラー23、24を介して、発光層13の熱を実装基板側に放散させることができ、小型でありながらも放熱性に優れている。
【0079】
一般的なフリップチップ実装では、LEDチップを実装基板にバンプなどを介して実装した後に、チップ全体を覆うように蛍光体層が形成される。あるいは、バンプ間に樹脂がアンダーフィルされる。
【0080】
これに対して実施形態によれば、実装前の状態で、p側金属ピラー23の周囲及びn側金属ピラー24の周囲には、蛍光体層30と異なる樹脂層25が設けられ、実装面側に応力緩和に適した特性を与えることができる。また、実装面側にすでに樹脂層25が設けられているため、実装後のアンダーフィルが不要となる。
【0081】
第1面15a側には、光取り出し効率、色変換効率、配光特性などを優先した設計の蛍光体層30が設けられ、実装面側には、実装時の応力緩和や、基板に代わる支持体としての特性を優先した層が設けられる。例えば、樹脂層25には、シリカ粒子などのフィラーを高密度充填し、支持体として適切な硬さに調整することができる。
【0082】
発光層13から第1面15a側に放射された光は蛍光体層30に入射し、一部の光は蛍光体粒子31を励起し、発光層13の光と、蛍光体粒子31の光との混合光として例えば白色光が擬似的に得られる。
【0083】
ここで、第1面15a上に基板があると、蛍光体層30に入射せずに、基板の側面から外部に漏れる光が生じる。すなわち、基板の側面から発光層13の光の色みの強い光が漏れ、蛍光体層30を上面から見た場合に、外縁側に青色光のリングが見える現象など、色割れや色ムラの原因になり得る。
【0084】
これに対して、実施形態によれば、第1面15aと蛍光体層30との間には基板がないため、基板側面から発光層13の光の色みが強い光が漏れることによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0085】
また、第1層11の側面15cに、絶縁膜18を介して反射膜51が設けられている。発光層13から第1層11の側面15cに向かった光は、反射膜51で反射し、外部に漏れない。このため、基板が第1面15a側にない特徴とあいまって、半導体発光装置101の側面側からの光漏れによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0086】
反射膜51と、第1層11の側面15cとの間に設けられた絶縁膜18は、反射膜51に含まれる金属の第1層11への拡散を防止する。これにより、第1層11に含まれる例えばGaNの金属汚染を防ぐことができ、第1層11の劣化を防ぐことができる。
【0087】
次に、蛍光体層30の形成方法について説明する。
【0088】
蛍光体層30は、例えばエアロゾルデポジション法により形成することができる。
図8は、エアロゾルデポジション装置の一例の模式図である。
【0089】
複数の発光素子4を含むウェーハ状態で、金属ピラー23、24および樹脂層25を含む支持体100を形成した後、半導体層15の成長に使った基板が除去される。基板が除去されたウェーハ209は、デポジションチャンバー207内にセットされる。ウェーハ209は、デポジションチャンバー207の外に設けられたステージ212によって保持される。デポジションチャンバー207内は、排気管210を介して真空ポンプ211に接続され、エアロゾルチャンバー203内よりも低圧な減圧雰囲気にされる。
【0090】
蛍光体粒子31および無機粒子32を混合した原料粒子204がエアロゾルチャンバー203内にセットされる。高圧ガスボンベ201から、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素などのキャリアガスがガス供給管202を介してエアロゾルチャンバー203内に供給され、エアロゾル発生器205によって原料粒子204およびキャリアガスが攪拌・混合されエアロゾル化する。
【0091】
そして、エアロゾルチャンバー203内とデポジションチャンバー207内との圧力差によって、エアロゾル化された原料粒子204はキャリアガスとともに搬送管206を搬送され、デポジションチャンバー207内にセットされたノズル208からウェーハ209に向けて吹き付けられる。エアロゾル化された原料粒子204は、ウェーハ209における半導体層15の第1面15aまたは第1面15aに形成された透明無機膜19に向けて吹き付けられる。
【0092】
このときエアロゾル化された原料粒子204の持つ運動エネルギーが、ウェーハ209上で粒子どうしを結合するエネルギーおよび粒子をウェーハに付着させるエネルギーに変わり、第1面15a上に複数の蛍光体粒子31と複数の無機粒子32との凝集体が層状に形成される。
【0093】
なお、蛍光体粒子31と無機粒子32とは混合させてウェーハ209に吹き付けることに限らず、別々に吹き付けて、ウェーハ209上で凝集体を形成してもよい。
【0094】
エアロゾルデポジション法によれば、蛍光体層30を高温で焼結して作るものとは異なり、原料粒子を固体状態のまま常温でウェーハに衝突させ付着させることができる。
【0095】
また、蛍光体層30の別の形成方法として、溶剤(溶媒)の揮発を利用した方法が挙げられる。
【0096】
低粘性の溶剤と、その溶剤中に分散された複数の蛍光体粒子31および複数の無機粒子32とを含む溶液(スラリー)を、例えば、スピンコート法、印刷法、ディスペンス法でウェーハ上に供給する。その後、溶剤を揮発させ、ウェーハ上に、複数の蛍光体粒子31と複数の無機粒子32との凝集体が形成される。
【0097】
次に、
図4〜
図6を参照して、第2実施形態の半導体発光装置102について説明する。
【0098】
図4は、第2実施形態の半導体発光装置102の模式断面図である。
図5は、半導体発光装置102の実装面側の模式平面図であり、
図4の下面図に対応する。
【0099】
半導体発光装置102は、ウェーハレベルで形成されるチップサイズの発光素子(LEDチップ)5と、発光素子5の周囲に設けられた絶縁部材127と、実装面側に設けられた金属層171、172と、を有する。
【0100】
発光素子5は、電極7、8と、第1配線層(オンチップ配線層)116、117と、光学層30、133と、第1配線層116、117と光学層30、133との間に設けられた半導体層15と、を有する。
【0101】
図6は、半導体層15の拡大模式断面図である。
【0102】
半導体層15は、前述したように、第1層11と、第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層13と、を有する。
【0103】
半導体層15は、第2層12および発光層13の積層膜を有する第1部分15dと、発光層13および第2層12で覆われていない第1層11の第2面11aを有する第2部分15eとを有する。
【0104】
例えば、第2部分15eは第1部分15dに囲まれた島状に形成され、また、第2部分15eは第1部分15dの外周側に、第1部分15dを連続して囲むように形成されている。発光層13を含む第1部分15dの面積は、発光層13を含まない第2部分15eの面積よりも広い。
【0105】
第1層11において第2面11aの反対側には、発光層13および第2層12で覆われていない第1面(凹凸面)15aが形成されている。また、半導体層15は、第1面15aに続く側面15cを有する。
【0106】
第1層11の第2面11aに、
図4に示すn側電極8が設けられ、第2層12の表面に、
図4に示すp側電極7が設けられている。p側電極7およびn側電極8は、半導体層15に重なる領域(チップ領域)の範囲内に形成されている。
【0107】
p側電極7の面積はn側電極8の面積よりも広い。p側電極7と第2層12との接触面積は、n側電極7と第1層11との接触面積よりも広い。
【0108】
半導体層15の第1面15a以外の面には絶縁膜114が設けられている。絶縁膜114は、無機膜であり、例えばシリコン酸化膜である。
【0109】
絶縁膜114には、p側電極7に通じるp側開口と、n側電極8に通じるn側開口が形成されている。例えば2つのn側開口が互いに離れて形成されている。それら2つのn側開口の間のp側電極7の表面は、絶縁膜114で覆われている。
【0110】
第1層11の側面15c、第2層12の側面、および発光層13の側面は、絶縁膜114で覆われている。
【0111】
半導体層15の第1面15aの反対側には、第1p側配線層116と、第1n側配線層117が設けられている。
【0112】
第1p側配線層116は、半導体層15に重なる領域(チップ領域)の範囲内に形成されている。第1p側配線層116は、p側開口内にも設けられ、p側電極7に接している。第1p側配線層116は、p側開口内に一体に形成されたコンタクト部を介してp側電極7と接続されている。第1p側配線層116は、第1層11に接していない。
【0113】
第1n側配線層117は、半導体層15に重なる領域(チップ領域)の範囲内に形成されている。第1n側配線層117は、n側開口内にも設けられ、n側電極8に接している。第1n側配線層117は、n側開口内に一体に形成されたコンタクト部117aを介してn側電極8と接続されている。
【0114】
第1n側配線層117は、例えば、2つの島状のn側電極8を結ぶ方向に延びるラインパターン状に形成されている。第1n側配線層117の2つのn側電極8の間の部分とp側電極7との間、および第1n側配線層117の2つのn側電極8の間の部分と第2層12との間には、絶縁膜114が設けられ、第1n側配線層117はp側電極7および第2層12に接していない。
【0115】
p側電極7は、第2層12と第1p側配線層116との間に設けられている。例えば、p側電極7は、発光層13および蛍光体粒子31が発する光に対して高い反射率をもつ銀(Ag)膜を含む。
【0116】
n側電極8は、第1層11と、第1n側配線層117のコンタクト部117aとの間に設けられている。例えば、n側電極8は、発光層13および蛍光体粒子31が発する光に対して高い反射率をもつアルミニウム(Al)膜を含む。
【0117】
第1p側配線層116および第1n側配線層117の表面に、絶縁膜118が設けられている。絶縁膜118は、第1p側配線層116と第1n側配線層117との間にも設けられている。絶縁膜118は、例えば、無機膜であり、シリコン酸化膜等である。
【0118】
絶縁膜118には、第1p側配線層116の一部(p側パッド116b)を露出させるp側開口と、第1n側配線層117の一部(n側パッド17b)を露出させるn側開口が形成されている。
【0119】
p側パッド116bの面積は、n側パッド117bの面積よりも大きい。n側パッド117bの面積は、第1n側配線層117とn側電極8とのコンタクト面積よりも広い。
【0120】
半導体層15の第1面15a側には、蛍光体層30が設けられ、さらに、その蛍光体層30の上に透明層(第1透明層)133が設けられている。蛍光体層30は、前述したように、複数の蛍光体粒子31と複数の無機粒子32との凝集体である。
【0121】
第1面15aと蛍光体層30との間には、透明無機膜19が設けられている。透明無機膜19および蛍光体層30は、チップ外領域の絶縁膜114上にも設けられている。
【0122】
蛍光体層30上の透明層133は、蛍光体粒子を含まない透明ガラスまたは透明樹脂を用いる。あるいは、透明層133を光散乱層として機能させる場合、透明層133は、発光層13の放射光を散乱させる複数の粒子状の散乱材(例えばシリコン酸化物、チタン化合物、酸化亜鉛など)と、発光層13の放射光を透過させる結合材(例えば透明樹脂または透明ガラス)とを含む。
【0123】
半導体層15の側面よりも外側のチップ外領域には、絶縁部材127が設けられている。絶縁部材127は、半導体層15よりも厚い。絶縁部材127は、絶縁膜114を介して半導体層15の側面を覆っている。
【0124】
また、絶縁部材127は、光学層(蛍光体層30および透明層33)の側面の外側にも設けられ、光学層の側面を覆っている。
【0125】
絶縁部材127は、半導体層15、電極7、8、第1配線層(オンチップ配線層)116、117、および蛍光体層30を含む発光素子5の周囲に設けられ、発光素子5を支持している。
【0126】
絶縁部材127の上面127aと透明層133の上面は平坦面を形成している。絶縁部材127の裏面には、絶縁膜126が設けられている。
【0127】
第1p側配線層116の第1p側パッド116b上には、第2p側配線層121が設けられている。第2p側配線層121は、第1p側配線層116の第1p側パッド116bに接するとともに、チップ外領域に延びている。第2p側配線層121のチップ外領域に延出した部分は、絶縁膜126を介して絶縁部材127に支持されている。
【0128】
また、第2p側配線層121の一部は、絶縁膜118を介して、第1n側配線層117に重なる領域にも延びている。
【0129】
第1n側配線層117の第1n側パッド117b上には、第2n側配線層122が設けられている。第2n側配線層122は、第1n側配線層117の第1n側パッド117bに接するとともに、チップ外領域に延びている。第2n側配線層122のチップ外領域に延出した部分は、絶縁膜126を介して絶縁部材127に支持されている。
【0130】
第2p側配線層121と第2n側配線層122の表面には、絶縁膜119が設けられている。絶縁膜119は、例えば、無機膜であり、シリコン酸化膜等である。
【0131】
絶縁膜119には、第2p側配線層121の第2p側パッド121aを露出させるp側開口と、第2n側配線層122の第2n側パッド122aを露出させるn側開口が形成される。
【0132】
第2p側配線層121の第2p側パッド121a上には、p側外部接続電極123が設けられている。p側外部接続電極123は、第2p側配線層121の第2p側パッド121aに接して、第2p側配線層121上に設けられている。
【0133】
また、p側外部接続電極123の一部は、絶縁膜118、119を介して、第1n側配線層117に重なる領域、および絶縁膜119を介して第2n側配線層122に重なる領域にも設けられている。
【0134】
p側外部接続電極123は、半導体層15に重なるチップ領域、およびチップ外領域に広がっている。p側外部接続電極123は、第1p側配線層116よりも厚く、第2p側配線層121よりも厚い。
【0135】
第2n側配線層122の第2n側パッド122a上には、n側外部接続電極124が設けられている。n側外部接続電極124は、チップ外領域に配置され、第2n側配線層122の第2n側パッド122aに接している。
【0136】
n側外部接続電極124は、第1n側配線層117よりも厚く、第2n側配線層122よりも厚い。
【0137】
p側外部接続電極123とn側外部接続電極124との間には、樹脂層(絶縁層)125が設けられている。樹脂層125は、p側外部接続電極123の側面とn側外部接続電極124の側面に接して、p側外部接続電極123とn側外部接続電極124との間に充填されている。
【0138】
また、樹脂層125は、p側外部接続電極123の周囲およびn側外部接続電極124の周囲に設けられ、p側外部接続電極123の側面およびn側外部接続電極124の側面を覆っている。
【0139】
樹脂層125は、p側外部接続電極123およびn側外部接続電極124の機械的強度を高める。また、樹脂層125は、実装時にはんだのぬれ広がりを防ぐソルダレジストとして機能する。
【0140】
p側外部接続電極123の下面は、樹脂層125から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なp側実装面(p側外部端子)123aとして機能する。n側外部接続電極124の下面は、樹脂層125から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なn側実装面(n側外部端子)124aとして機能する。p側実装面123aおよびn側実装面124aは、例えば、はんだ、または導電性の接合材を介して、実装基板のランドパターンに接合される。
【0141】
p側実装面123aおよびn側実装面124aを、樹脂層125の表面よりも突出させることが望ましい。これにより、実装時の接続部半田形状が安定化し、実装の信頼性を向上させることができる。
【0142】
図5は、p側実装面123aとn側実装面124aの平面レイアウトの一例を表す。
【0143】
p側実装面123aとn側実装面124aは、半導体層15の平面領域を2等分する中心線cに対して非対称に配置され、p側実装面123aはn側実装面124aよりも広い。
【0144】
p側実装面123aとn側実装面124aとの間隔は、実装時にp側実装面123aとn側実装面124aとの間をはんだがブリッジしない間隔に設定される。
【0145】
半導体層15におけるn側の電極コンタクト面(第1層11の第2面11a)は、第1n側配線層117と第2n側配線層122によって、チップ外領域も含むより広い領域に再配置されている。これにより、信頼性の高い実装に十分なn側実装面124aの面積を確保しつつ、半導体層15におけるn側電極面の面積を小さくすることが可能となる。したがって、半導体層15における発光層13を含まない部分15eの面積を縮小し、発光層13を含む部分15dの面積を広げて光出力を向上させることが可能となる。
【0146】
実装面側にp側金属層171とn側金属層172が設けられている。p側金属層171は、第1p側配線層116、第2p側配線層121およびp側外部接続電極123を含む。n側金属層172は、第1n側配線層117、第2n側配線層122およびn側外部接続電極124を含む。
【0147】
半導体層15は、金属層171、172と、樹脂層125との複合体からなる支持体の上に支持されている。また、半導体層15は、半導体層15よりも厚い例えば樹脂層である絶縁部材127によって側面側から支えられている。
【0148】
金属層171、172の材料として、例えば、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性および絶縁材料に対する密着性を向上させることができる。
【0149】
半導体発光装置の実装時の熱サイクルにより、p側実装面123aおよびn側実装面124aを実装基板のランドに接合させるはんだ等に起因する応力が半導体層15に加わる。p側外部接続電極123、n側外部接続電極124および樹脂層125を適切な厚さ(高さ)に形成することで、p側外部接続電極123、n側外部接続電極124および樹脂層125が上記応力を吸収し緩和することができる。特に、半導体層15よりも柔軟な樹脂層125を実装面側に支持体の一部として用いることで、応力緩和効果を高めることができる。
【0150】
金属層171、172は例えば高い熱伝導率を持つ銅を主成分として含み、発光層13に重なる領域に高熱伝導体が広い面積で広がっている。発光層13で発生した熱は、金属層171、172を通じて、チップ下方に形成される短いパスで実装基板へと放熱される。
【0151】
特に、発光層13を含む積層部分15dと接続されたp側金属層171のp側実装面123aは、
図5に示す平面視で半導体層15の平面領域のほとんどに重なっているため、p側金属層171を通じて実装基板に高効率で放熱させることができる。
【0152】
また、p側実装面123aはチップ外領域にも拡張している。したがって、p側実装面123aに接合されるはんだの平面サイズも大きくでき、はんだを介した実装基板への放熱性を向上できる。
【0153】
また、第2n側配線層122はチップ外領域に延びている。このため、チップに重なる領域の大部分を占めてレイアウトされたp側実装面123aの制約を受けずに、チップ外領域にn側実装面124aを配置することができる。n側実装面124aをチップ外領域に配置することで、n側実装面124aをチップ領域範囲内でのみレイアウトするよりも面積を広くできる。
【0154】
したがって、n側についても、n側実装面124aに接合されるはんだの平面サイズを大きくでき、はんだを介した実装基板への放熱性を向上できる。
【0155】
発光層13から第1面15a側に放射された光は、透明無機膜19を介して蛍光体層30に入射し、一部の光は蛍光体31を励起し、発光層13の光と、蛍光体粒子31の光との混合光として例えば白色光が得られる。
【0156】
発光層13から実装面側に放射された光は、p側電極7及びn側電極8によって反射され、上方の蛍光体層30側に向かう。
【0157】
蛍光体層30上には透明層(第1透明層)133が設けられ、その透明層133上およびチップ外領域の絶縁部材127上には、透明層(第2透明層)134が設けられている。
【0158】
透明層134は、透明ガラスもしくは透明樹脂とし、透明ガラスの場合は透明樹脂からなる接着層が挿入されていても構わない。また、発光層13の放射光を散乱させる複数の粒子状の散乱材(例えばシリコン酸化物、チタン化合物、酸化亜鉛など)と、発光層13の放射光を透過させる結合材(例えば透明樹脂または透明ガラス)とを含むことでも構わない。
【0159】
後者の場合、透明層134は光散乱層として機能する。その光散乱層である透明層134の平面サイズは、蛍光体層30の平面サイズ、および透明層133の平面サイズよりも大きい。すなわち、透明層134の平面サイズは、発光素子5の平面サイズよりも大きい。したがって、半導体発光装置102から外部へと発せられる光の範囲を広げることができ、広角の配光特性が可能である。
【0160】
絶縁部材127の少なくとも半導体層15の側面に近接する部分の表面は、発光層13の放射光に対して反射性を有する。また、絶縁部材127の蛍光体層30の側面に近接する部分および透明層133の側面に近接する部分は、発光層13の放射光および蛍光体粒子31の放射光に対して反射性を有する。さらに、絶縁部材127の透明層134との境界付近が発光層13の放射光および蛍光体粒子31の放射光に対して反射性を有する。
【0161】
例えば、絶縁部材127は、発光層13の放射光および蛍光体粒子31の放射光に対する反射率が50%以上となる樹脂層である。
【0162】
したがって、発光素子5の側面からの放射光、および透明層134で散乱されて絶縁部材127側に向かう光を、絶縁部材127で反射させることができる。このため、絶縁部材127での光の吸収損失を防いで、透明層134を通じた外部への光取り出し効率を高めることができる。
【0163】
蛍光体層30は、半導体層15の側面、および実装面側にまわりこんで形成されていない。すなわち、光を外部に取り出さないチップ側面側および実装面側には蛍光体層30が無駄に形成されず、コスト低減が図れる。
【0164】
また、p側外部接続電極123の周囲およびn側外部接続電極124の周囲には、蛍光体層30と異なる樹脂層125が設けられ、実装面側に応力緩和に適した特性を与えることができる。また、実装面側にすでに樹脂層125が設けられているため、半導体発光装置102を実装基板に実装した後のアンダーフィルが不要となる。
【0165】
半導体層15の第1面15a側には、光取り出し効率、色変換効率、配光特性などを優先した設計の蛍光体層30が設けられ、実装面側には、実装時の応力緩和や、基板に代わる支持体としての特性を優先した層が設けられる。例えば、樹脂層125は、ベースとなる樹脂にシリカ粒子などのフィラーが高密度充填された構造を有し、支持体として適切な硬さに調整されている。
【0166】
第2実施形態の半導体発光装置102によれば、半導体層15、電極7、8、オンチップ配線層116、117、および蛍光体層30はウェーハレベルで一括形成して低コストのチップサイズ発光素子5を実現するとともに、外部端子(実装面)123a、124aをチップ外領域に拡張させて、放熱性を高くすることができる。したがって、安価で高信頼性の半導体発光装置102を提供することができる。
【0167】
図7は、第3実施形態の半導体発光装置103の模式断面図である。
【0168】
半導体発光装置103は、支持基板10と、蛍光体層30と、支持基板10と蛍光体層30との間に設けられた半導体層15と、を有する。
【0169】
半導体層15は、前述したように、第1層11と、第2層12と、第1層11と第2層12との間に設けられた発光層13と、を有する。また、第1層11は、第1面(凹凸面)15aを有する。
【0170】
半導体層15における第1面15aの反対側には、金属層(ボンディングメタル)63を介して支持基板10が設けられている。支持基板10における金属層63が設けられた面の反対側の面には、金属層(バックメタル)64が設けられている。
【0171】
半導体層15の第1面15a側には、蛍光体層30が設けられている。前述したように、蛍光体層30は、複数の蛍光体粒子31と複数の無機粒子32との凝集体である。
【0172】
半導体層15の第1面15aと、蛍光体層30との間には、透明無機膜19が設けられている。
【0173】
半導体層15と金属層63との間にはp側電極61が設けられている。p側電極61は第2層12に接している。p側電極61の一部は半導体層15の側面よりも外側に延出し、その延出部の上にp側パッド62が設けられている。第2層12は、p側電極61を介してp側パッド62と電気的に接続されている。
【0174】
p側電極61と金属層63との間には絶縁膜65が設けられ、p側電極61と金属層63との間は絶縁されている。
【0175】
金属層63上には、複数のn側電極63aが金属層63と一体に設けられている。n側電極63aは、p側電極61、第2層12および発光層13を貫通して第1層11に達し、第1層11と電気的に接続されている。n側電極63aと発光層13との間、n側電極63aと第2層12との間、およびn側電極63aとp側電極61との間には、絶縁膜65が設けられている。
【0176】
半導体層15は前述した単結晶基板上に成長される。p側電極61、n側電極63aなどを形成した後、金属層63を介して半導体層15は支持基板10に貼り合わされる。支持基板10は導電性を有し、例えばシリコン基板である。したがって、n側電極63a、金属層63および支持基板10を介して、第1層11は金属層(裏面電極)64と電気的に接続されている。
【0177】
半導体層15を支持基板10に貼り合わせた後、単結晶基板が除去され、第1層11の表面が露出する。その第1層11の第1面15aが粗面化された後、透明無機膜19が形成され、透明無機膜19上に蛍光体層30が形成される。
【0178】
図9に示すように、蛍光体層30の表面、すなわち蛍光体粒子31の表面および無機粒子32の表面を覆う透明無機膜34を設けてもよい。透明無機膜34として、例えば、シリコン酸化膜が、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、塗布法で形成される。透明無機膜34は、蛍光体層30の表面を保護するとともに、粒子間の結合を強固にする。
【0179】
透明無機膜34の形成方法によっては、透明無機膜34の一部を、蛍光体粒子31の表面および無機粒子32の表面よりも内部における複数の無機粒子32間の隙間、および無機粒子32と蛍光体粒子31との間の隙間に含浸させることができる。
【0180】
また、熱伝導率の低いシリコン酸化膜を透明無機膜34として形成すると、透明無機膜34を断熱層として機能させることができる。例えば、
図4に示す半導体発光装置102において蛍光体層30と透明樹脂層133との間に透明無機膜34を形成することで、蛍光体粒子31の熱による透明樹脂層133の変質や分解を抑えることができる。
【0181】
また、
図10に示すように、複数の無機粒子32間の隙間、および無機粒子32と蛍光体粒子31との間の隙間に、透明樹脂35を設けてもよい。蛍光体粒子31および無機粒子32はバインダーとしての樹脂中に分散されるのではなく、前述した方法で蛍光体粒子31と無機粒子32との凝集体を形成した後、粒子間の隙間に透明樹脂35が含浸される。
【0182】
複数の蛍光体粒子31どうしは、複数の無機粒子32によって結合され、透明樹脂35は、蛍光体粒子31と無機粒子32との結合、および無機粒子32間の結合を強固にする。また、粒子間に透明樹脂35がある構造は、粒子間に空隙がある構造に比べて光の反射を抑制する。
【0183】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。