(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブタジエン由来の構造単位が40重量%以上であり、不飽和カルボン酸の炭素数1〜6のアルキルエステル由来の構造単位が30重量%以下である、請求項1記載の手袋。
ブタジエン由来の構造単位が40〜65重量%、不飽和カルボン酸の炭素数1〜6のアルキルエステル由来の構造単位が5〜20重量%、及びアクリロニトリル由来の構造単位が20〜35重量%である、請求項3記載の手袋。
ブタジエン由来の構造単位、及び不飽和カルボン酸の炭素数1〜6のアルキルエステル由来の構造単位を少なくとも含むエラストマーから形成される手袋の製造方法であって、
ブタジエン、及び不飽和カルボン酸の炭素数1〜6のアルキルエステルを少なくとも含む単量体を共重合してなる共重合体と、2以上のヒドロキシル基を含む有機化合物と、水を少なくとも含むエマルションを準備する工程(1)、及び
前記エマルションを加熱して、前記共重合体の不飽和カルボン酸の炭素数1〜6のアルキルエステルのエステルと前記ヒドロキシル基とを反応させ、不飽和カルボン酸のカルボニル基間に、前記有機化合物による架橋構造を形成する工程(2)、
を含み、前記有機化合物は、炭素数2〜6の鎖式ジオールを含む、手袋の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<エラストマー>
本実施形態のエラストマーは、ブタジエン由来の構造単位、及び不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位を含むブタジエン−不飽和カルボン酸エステル共重合体エラストマーであり、以下の3つの特徴的構成を備えている。
(1)不飽和カルボン酸エステル由来のカルボニル基間に、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる、同一の、又は異なる2以上の官能基を含む有機化合物による架橋構造を含む。
(2)金属イオンの含有量が1重量%以下である。
(3)架橋剤である硫黄及び加硫促進剤である硫黄化合物を含まない。
【0016】
上記構成(1)〜(3)を備える本実施形態のエラストマーは、カルボニル基間の架橋が、実質的に、硫黄架橋ではなく(非硫黄架橋)、かつ、金属イオン架橋でもなく、特定の有機化合物による架橋であって、架橋形成に関与しないフリーのカルボキシル基(−COOH基及び−COO
−基)の量が低減化されたものであることを特徴とする。
【0017】
上記エラストマーに含まれるブタジエン由来の構造単位と不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位の比率は、特に限定はされないが、エラストマーのゴム弾性を確保するために、エラストマー中のブタジエン由来の構造単位が40重量%以上であることが好ましい。一方、エラストマーの伸びを制御して強度を保つために、ブタジエン由来の構造単位は75重量%以下であることが好ましく、45〜65重量%であることがより好ましい。また、エラストマー中の架橋構造を十分に形成するために、エラストマー中の不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位は5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上であることがより好ましく、一方、架橋構造を過密に形成しすぎることなくエラストマーとしての良好な伸びを確保するために、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
上記のエラストマー中の構造単位の比率は、エラストマーを製造する際の原料モノマーの使用量(重量)から計算することができる。
【0019】
ブタジエン由来の構造単位は、1,3−ブタジエン由来の構造単位であることが好ましい。
【0020】
不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位を形成する不飽和カルボン酸としては、特に限定はされず、分子中にカルボニル基を1個有するモノカルボン酸エステルでも、カルボニル基を2個以上有するポリカルボン酸エステルでも良い。
より具体的には、エステルを構成する不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸(以下「(メタ)アクリル酸」という。)が好ましく使用され、より好ましくはメタクリル酸が使用される。
【0021】
不飽和カルボン酸エステルのエステル部は、有機化合物による架橋構造形成の容易性、及び脱離アルコールの系外除去の容易性等の観点から、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基が最も好ましい。
好ましい例示化合物としてより具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、及びフマル酸ジエチル等が挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
エラストマーは、複数種の不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位を任意の組み合わせで含んでいてもよい。不飽和カルボン酸エステルとして、不飽和ジカルボン酸エステルをその一部又は全部とすることにより、不飽和カルボン酸エステルの重量比に対し多量のエステル基が導入できるので、エラストマーの架橋密度の調節が容易となる。
【0023】
エラストマーは、上記ブタジエンと不飽和カルボン酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位を含んでいても良い。
例えば、形成されるゴム製品の特性、特に耐薬品性(耐溶剤性)、柔軟性、強度等をバランス良く確保するために、エラストマーはアクリロニトリル由来の構造単位も含むことが好ましい。すなわち、アクリロニトリル−ブタジエン−不飽和カルボン酸エステル共重合体エラストマーであることが好ましい。
【0024】
この場合のアクリロニトリル由来の構造単位、ブタジエン由来の構造単位、及び不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位の比率も、特に限定はされないが、エラストマー中のアクリロニトリル由来の構造単位が20〜35重量%、ブタジエン由来の構造単位が40〜65重量%、及び不飽和カルボン酸エステル由来の構造単位が5〜20重量%であることがそれぞれ好ましい。
【0025】
エラストマーは、さらに別の重合性化合物に由来する構造単位を含んでいてもよく、その他の重合性化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;及び酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、いずれか1種、又は複数種を組み合わせて、任意に用いることができる。
【0026】
その他の重合性化合物として、不飽和カルボン酸由来の構造単位を含む場合は、エラストマー中のフリーのカルボキシル基量を制限するために、エラストマー中の不飽和カルボン酸由来の構造単位が8重量%以下であることが好ましく、6重量%以下であることがより好ましく、4重量%以下であることが一層好ましい。
また、ブタジエンと不飽和カルボン酸エステル以外の重合性化合物に由来する構造単位の比率は、合計で、エラストマー中に、35重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
【0027】
以上のとおり、エラストマーは、ブタジエン−不飽和カルボン酸エステルの二元共重合体エラストマーのほか、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−不飽和カルボン酸エステルの三元共重合体エラストマー、ブタジエン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルの三元共重合体エラストマー、又はスチレン−ブタジエン−不飽和カルボン酸エステル等の三元共重合体エラストマーでもよいし、さらにその他の重合性化合物を含む四元共重合体エラストマー(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル等)を使用することもできる。
【0028】
上記構成(1)の架橋構造を形成する、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる、同一の、又は異なる2以上の官能基を含む有機化合物(すなわち、架橋剤)は、これらの複数の官能基を有するものであれば特に限定はされず、これら以外の官能基、例えばエーテル基等を含んでいてもよい。
ここで、アミノ基は、第1級アミンのアミノ基(−NH
2)の他、第2級アミンの置換アミノ基(−NHR、Rは炭化水素基)の双方を含む。
【0029】
具体的には、多価アルコール、多価フェノール、多価アミン、アミノアルコール、アミノフェノール、ポリエポキシド、及びシランカップリング剤等を用いることができ、複数種の有機化合物を任意に組み合わせることもできる。
以下に例示するが、架橋構造を形成するための有機化合物の種類と組み合わせ、及び使用量等の選択により、形成される手袋の特性又は物性を任意に設計することができる。
【0030】
多価アルコールは、分子内に2以上のヒドロキシル基を有する脂肪族の炭化水素化合物である。鎖式又は脂環式のどちらでもよく、不飽和結合、エーテル結合等を含んでいてもよい。また、ヒドロキシル基の数についても特に限定はされないが、2価アルコール(ジオール)、及び3価アルコール(トリオール)を好ましく用いることができる。
より具体的には、炭素数2〜6の2価又は3価のアルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ブテンジオール(2−ブテン−1,4−ジオール等)、ペンテンジオール(2−ペンテン−1,5−ジオール等)、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。なお、炭素鎖中のヒドロキシル基の位置は、特に限定されない。
【0031】
上記多価アルコールのうち、分子内にエーテル結合を有するジエチレングリコール等は、エーテル結合が親水性基であるので、形成されるゴム製品の親水性を向上させることができる。また、ブテンジオール等の分子内に二重結合を有する化合物は、ゴム弾性の向上に寄与することができる。また、トリオール等の3価以上のポリオールは、架橋密度を向上させる効果が得られる。
【0032】
多価フェノールは、分子内に、芳香環に結合した2以上のヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物である。その構造は特に限定されず、ベンゼン核を1個持つフェノール類のほか、ベンゼン核2個を持つ2価のビスフェノール類、ナフタレン核を持つビナフトール類であってもよい。
具体的には、ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール)、トリヒドロキシベンゼン(ベンゼントリオール)、ジヒドロキシナフタレン、ナフタレントリオール等が挙げられる。
【0033】
多価アミンは、分子内に2以上の、第1級又は第2級アミノ基を有する化合物であり、脂肪族、芳香族のどちらでもよい。アミノ基は、反応性の観点から第1級アミンであることが好ましいが、第2級アミンを用いることもできる。
具体的には、炭素数2〜6のアルキレンジアミンとして、エチレンジアミン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。トリアミンとしては、プロパン−1,2,3−トリアミン、ペンタントリアミン等が挙げられる。分子中のアミノ基の置換位置も、特に限定されない。
【0034】
アミノアルコールは、分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物である。
具体的には、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0035】
アミノフェノールは、分子内にアミノ基とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物である。具体的には、4−アミノフェノール、3−アミノ−2−ナフトール、1−アミノ−2−ナフトール等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0036】
ポリエポキシドは、分子内に2個以上のエポキシ基を含む化合物である。エポキシ基は架橋形成時に加水分解により開環し、生じたヒドロキシル基がカルボニル基と反応する。
具体的には、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,7−オクタジエンジエポキシド等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0037】
シランカップリング剤は、加水分解性基と有機官能基とを併せ持つシラン化合物である。加水分解性基は、代表的にはメトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基、又はアセチル基等のアシル基である。有機官能基はアミノ基、エポキシ基等が好ましく、これらの官能基を有するシランカップリング剤を、アミノシラン、エポキシシランとも呼称する。
より具体的には、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、市販のシランカップリング剤を用いることができる。
【0038】
上記有機化合物を用いたカルボニル基間の架橋構造は、具体的には例えば、エステル結合、アミド結合、又はイミド結合等である。イミド結合は、例えば隣接する二つのカルボニル基とアミノ基とから形成されるものであり、ゴム製品の耐熱性の向上等に寄与することができる。
例えば、有機化合物が2価のアルコールであれば、二つのエステル結合により架橋構造を形成し、有機化合物がジアミンであれば、二つのアミド結合により架橋構造を形成し、有機化合物がアミノアルコールであれば、一つのエステル結合と、一つのアミド結合により架橋構造を形成する。
【0039】
さらに、上記多価アルコール又は多価フェノールの複数のヒドロキシル基のうち、一部がエーテル化等により誘導体化されていてもよい。これにより、例えば、架橋反応に関与しないエーテル基がエラストマー中に導入され、ゴム製品の親水性を高めて表面抵抗を調整できるほか、伸縮性を高めることができるなど、ゴム製品の特性を自由に設計することが可能となる。
【0040】
すなわち、本実施形態のエラストマーは、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる一つの官能基を有し、該官能基により、不飽和カルボン酸エステル由来の1個のカルボニル基と結合した有機化合物を含んでいてもよい。
この架橋構造を形成しない有機化合物(非架橋用有機化合物)として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0041】
本実施形態のエラストマーでは、上述のとおり、その必須の構造単位として含まれるのが不飽和カルボン酸エステルであって、不飽和カルボン酸ではない(不飽和カルボン酸は任意の構造単位として含まれるに過ぎない)。そのため、エラストマーに含まれるフリーのカルボキシル基(−COOH又は−COO
−)の量を極めて少なくすることができ、それにより、例えば手袋形成時に金属イオンとのカルボン酸塩の形成を抑え、エラストマー中の金属イオン量を減少させることができる。
【0042】
また、上記のとおり、エラストマー中の架橋構造の多くは、有機化合物により共有結合で形成されるものであり、イオン結合に比べて共有結合は安定であるため、使用中に架橋構造が開裂してゴム製品の強度が低下する懸念が無く、耐突き刺し強度も高くなる。
さらに、エラストマー中に多価金属イオンによる架橋構造を形成する必要が無いため、エラストマー製造に際し、金属水酸化物等のpH調整剤を使用する必要も無く、カルシウム、ナトリウム等の金属イオンの、エラストマー中への混入を回避することができる。また、エラストマー製造時にアルカリ性にする必要がないため、いったん形成されたエステル結合等がアルカリ性下で開裂する恐れもない。
【0043】
上記のフリーのカルボキシル基の比率は、赤外分光法により求めることができる。フリーのカルボキシル基のカルボニル基(C=O)の伸縮振動は、波数1690cm
−1に現れるのに対し、カルボン酸誘導体のカルボニル基の伸縮振動は、例えばエステルであれば1740cm
−1付近に現れるため、各ピークの吸収強度比から官能基数を計算することができる。
【0044】
上記エラストマーは、エラストマー中の金属イオンの含有量が1重量%以下であるとの構成(2)を備える。本発明者らの検討によると、従来技術のエラストマーにおいては、この金属イオンが少なくとも2重量%は検出されていたのに対し、本実施形態のエラストマー中に含まれる金属イオン量は極めて少ない。
【0045】
この構成(2)は、多価金属イオンによるカルボキシル基間の架橋構造と、カルボン酸塩の存在が極めて少ないことを示している。金属イオンは、例えば、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等である。エラストマー中の金属イオン含有量が少ないため、このエラストマーを用いて形成されるゴム製品から溶出する金属イオン量を低減させることができる。
【0046】
エラストマー中の金属イオン含有量は、0.8重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることが一層好ましい。
この金属イオン含有量は、ICP発光分析法、ICP質量分析法、原子吸光分析法等の元素分析により求めることができる。
【0047】
上記エラストマーは、さらに、架橋剤である硫黄及び加硫促進剤である硫黄化合物を含まないとの構成(3)を備える。この構成(3)は、エラストマー製造時に、架橋剤及び加硫促進剤として、硫黄及び硫黄含有化合物を使用しないことを意味する。したがって、このエラストマーを用いてアレルギー惹起等の問題のない、安全なゴム製品を形成することができる。
【0048】
エラストマー中の硫黄元素の量は、エラストマーの燃焼ガス吸収液の中和滴定法により検出することができる。この定量方法は、エラストマー試料0.01gを空気中、1350℃で10〜12分燃焼させて発生する燃焼ガスを、混合指示薬(希硫酸の1〜数滴等)を加えたH
2O
2水に吸収させ、0.01NのNaOH水溶液で中和滴定する方法である。
【0049】
上記エラストマーは、ゴム製品形成用に用いられる。ゴム製品としては、例えば手袋、指サック、風船、コンドーム等が挙げられるが、特に手袋形成用に用いることが多い。また、クリーンルーム用の手袋にも用いることができる。編み手袋の手のひら部分及び指先のコーティング用途にも使用できる。
【0050】
上記の構成(1)〜(3)を備えるエラストマーは、ゴム製品形成等の用途に鑑み、そのトルエン重量膨潤率が150〜350重量%であることが好ましく、250〜340重量%であることがより好ましい。
エラストマーのトルエン重量膨潤率は、この値が低い程、エラストマーにおける架橋密度は高くなる。これは、架橋ポリマーをトルエンのような良溶媒中に浸漬すると、良溶媒はポリマー鎖を溶かして広げようとするが、架橋ポリマーの網目の弾力で抑えられて膨潤平衡に達するためであり、架橋ポリマーの架橋密度は良溶媒中の平衡膨潤率と逆比例の関係になる。トルエン重量膨潤率が350重量%を超えると、架橋密度が低く、手袋にした際の強度が不足し、180重量%未満では架橋密度が高く、柔軟性が不足する恐れがある。このトルエン膨潤比率(重量%)は、エラストマーを常温でトルエンに浸漬し、72時間後の重量を初期重量で除して求めることができる。
【0051】
エラストマーの強度(機械的特性)に関しては、ゴム製品として十分かつ適正な、つまり剛直すぎない強度を保つために、JIS K6251:2010に従って測定される機械的特性のうち、エラストマーの強度を示す引張強度(数値が大きい程強度が高い)が、20〜50MPaの範囲内であることが好ましく、23〜35MPaの範囲内であることがより好ましい。
エラストマーの柔軟性を示す破断時伸び(数値が大きい程柔軟性が高い)は、400%以上であることが好ましく、900%以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態のエラストマーは、その構造単位を構成する不飽和カルボン酸エステルの種類の選択と共重合比率、及び、架橋用の有機化合物の種類の選択と添加量に応じて、その架橋密度と柔軟性を制御することができるものである。例えば、不飽和カルボン酸エステルの共重合比率を増やし、かつ、製造時の架橋用の有機化合物の添加量も増やすことで、非常に硬い、つまり架橋密度の高い(トルエン膨潤比率が低く、伸びが小さい)エラストマーとすることができる。架橋密度の高いエラストマーとすることで、強度を保ちつつ薄手のゴム製品を製造することも可能であり、原料コストを抑えることもできる。反対に、不飽和カルボン酸エステルの共重合比率を減らす、あるいは、製造時の架橋用の有機化合物の添加量を減らすことで、柔らかな(伸びが大きく、トルエン膨潤比率の高い)エラストマーとすることができる。
したがって、上記のトルエン膨潤比率、伸び率等の数値範囲は、あくまで用途に応じた好ましい一例であって、この数値範囲以外の特性のエラストマーも本実施形態に含まれるものである。
【0053】
<エラストマーの製造方法>
本実施形態のエラストマーの製造方法は、上記実施形態のエラストマーの好ましい製造方法である。
1.工程(1)
まず、工程(1)として、ブタジエン、及び不飽和カルボン酸エステルを少なくとも含む単量体を共重合してなる共重合体と、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる、同一の、又は異なる2以上の官能基を含む有機化合物と、水を少なくとも含むエマルションを準備する。
共重合体を構成する各単量体の種類と配合比、及び有機化合物の詳細は、エラストマーに対して先に説明した通りである。
【0054】
このエマルションは、以下に述べるとおり、共重合体の製造を乳化重合法により行った場合に得られる、エラストマーと水を含む乳化重合液に、有機化合物を添加したエマルション(ラテックス)であってもよい。
水は、特に限定されないが、クリーンルーム用手袋形成用のエラストマー組成物の場合は特に、イオン交換水又は脱イオン水等を使用することが好ましい。
【0055】
共重合体の製造は、公知の重合方法を用いて行うことができ、乳化重合法を用いることが好ましい。すなわち、不飽和カルボン酸エステル及びブタジエンと、必要に応じて用いられるその他の重合性化合物を水中に分散させ、定法に従い、乳化重合することによって製造できる。乳化重合に際しては、通常用いられる、乳化剤(又は分散剤)、重合開始剤、分子量調整剤等を使用することができる。
工程(1)で準備するエマルションは、共重合体の乳化重合に添加される任意の上記添加剤を、そのまま含んでいてもよい。
【0056】
乳化剤(又は分散剤)としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤を用いてもよいが、エラストマー中の金属イオン量を下げるために、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。非イオン界面活性剤としては、代表的には例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル等のエーテル型又はエステル型のものが挙げられる。これらの界面活性剤は、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
乳化剤(分散剤)の含有量は、エラストマー100重量部に対して、0.5〜4重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜3重量部である。
【0057】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0058】
分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素挙げられる。
【0059】
共重合体のムーニー粘度(ML
(1+4)(100℃))は、50〜200程度であることが好ましく、100〜190であることがより好ましい。本実施形態の製造方法では、後述する工程(2)の有機化合物による架橋を高い反応効率で行うことができるので、従来よりもムーニー粘度の低い共重合体も使用可能である。
ムーニー粘度は、JIS K6300−1:2001 「未加硫ゴム−物理特性、第1部ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準拠して測定することができる。
【0060】
より詳細には、次のようにしてムーニー粘度の測定ができる。
まず、硝酸カルシウムと炭酸カルシウムの4:1混合物の飽和水溶液(凝固液)200mlを、室温にて攪拌し、その中に、エラストマーのエマルションをピペットにより滴下して、固形ゴムを析出させる。得られた固形ゴムを凝固液から取り出し、イオン交換水約1000mlでの攪拌洗浄を10回繰り返す。その後、固形ゴムを搾って脱水し、真空乾燥(60℃、72時間)して、ムーニー粘度測定用ゴム試料を得る。
得られた測定用ゴムを、ロール温度50℃、ロール間隙約0.5mmの6インチロールに、ゴムがまとまるまで数回通したものを、JIS K6300−1:2001「未加硫ゴム−物理特性、第1部ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準拠して測定する。
【0061】
工程(1)のエマルションは、上記の乳化重合液とは別に、更なる添加剤を含んでいてもよい。例えば、慣用の添加剤として、pH調整剤、顔料、酸化防止剤、カップリング剤、充填剤等が挙げられる。これらの添加剤は、特に限定されず、任意の種類のものを選択できるが、硫黄を含まない化合物を用いることが好ましい。
顔料としては、例えば二酸化チタンが使用される。
【0062】
工程(1)のエマルションは、エラストマーと水を含む上記乳化重合液、架橋用の有機化合物、及び任意で配合される各種添加剤を、慣用の混合手段、例えば、ミキサー等で混合して製造することができる。
【0063】
添加する架橋用の有機化合物の量は、下記の工程(2)においてエステル基を十分に架橋するために、不飽和カルボン酸エステルを含む共重合体のカルボニル基1モルに対し、官能基の量が0.1倍〜6倍程度の当量(モル)となる量であることが好ましく、0.2〜3倍となる量であることがより好ましい。ここで、全てのエステルを架橋させずに一部のエステルを残すことにより、エラストマーの架橋密度を調整することも好ましい。
なお、エステル基と反応しなかった有機化合物は、水溶性であるため、ゴム製品の製造工程において、水又は熱水を用いたリーチングプロセス等を行うことにより、容易に除去することができる。
このエマルションはさらに、上述のとおり、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる一つの官能基を有する、非架橋用の有機化合物を含んでいてもよい。
【0064】
エマルション中の水の含有量は、特に限定されないが、下記の工程(2)を行ってこのエマルションからゴム製品を製造する場合は、固形分濃度(エラストマー濃度)が20〜30重量%となるように、水が70〜80重量%程度であることが好ましい。
【0065】
2.工程(2)
次に、工程(2)は、上記エマルションを加熱して、上記共重合体の不飽和カルボン酸エステルのエステルと上記有機化合物の官能基とを反応させ、不飽和カルボン酸のカルボニル基間に、有機化合物による架橋構造を形成する工程である。
加熱温度は80℃以上であることが好ましく、80℃〜150℃程度であることが好ましい。加熱時間は、特に限定はされないが、50〜1200秒間程度であれば架橋構造を形成させることができる。架橋構造がエステル結合及びアミド結合の場合は、80℃〜120℃程度の加熱で十分であるが、さらにイミド結合による架橋構造を形成するためには、140℃〜200℃程度の加熱を行うことが好ましい。
【0066】
ディッピング法によりゴム製品を製造する場合は、この工程(2)の加熱を複数回に分けて行い、架橋を段階的に行うことが好ましい。例えば、前加熱として80℃〜90℃程度の加熱を行って第1架橋(予備架橋)を行い、複数の官能基を有する有機化合物の一つの官能基を共重合体のエステル部と反応させ、後加熱として100℃以上程度の加熱を行って、残りの官能基も反応させる第2架橋(本架橋)を行う方法である。この前加熱と後加熱との間に、第1架橋でエステルと反応しなかった有機化合物を反応系外に除去する工程(後述するリーチング工程)を行うことが好ましい。
【0067】
カルボン酸エステルのカルボニル基は、カルボキシル基よりも、ヒドロキシル基、エポキシ基、又はアミノ基との反応性が高い。したがって、有機化合物を用いた共有結合による架橋構造を、高効率で形成することができる。これに対し、従来技術のエラストマーにおいては、不飽和カルボン酸エステルではなく不飽和カルボン酸を含む共重合体のカルボキシル基に対して架橋形成を行っていたため、有機化合物による架橋形成が十分に進行せず、本発明者らの検討によると、フリーのカルボキシル基が、架橋構造が形成されたカルボニル基1に対し3倍程度も残ってしまい、その結果、その後の多価金属イオンによる架橋形成が必要となっていた。
本実施形態の製造方法によれば、不飽和カルボン酸エステルを含む共重合体を使用し、そのエステルに対する架橋反応は高い反応効率で進行するため、従来技術とは異なり多価金属イオンによる架橋を行う必要がない。
【0068】
なかでも、架橋構造の形成は、エステル交換反応により行われることが好ましい。すなわち、不飽和カルボン酸エステルが、炭素数1〜6のアルキルエステル、好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルであり、有機化合物として、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む化合物を用いることが好ましい。
この不飽和カルボン酸エステルは、特に、メチルエステル又はエチルエステルであることが、反応性の高さと、遊離するアルコール(メタノール又はエタノール)が低沸点(沸点80℃以下)であることから好ましい。遊離するアルコールが低沸点であれば、工程(2)の加熱中に反応系外への除去が容易である。
【0069】
以上の製造方法により、上述した本実施形態のエラストマーを好ましく製造することができる。
また、このエラストマーの製造方法により、ディッピング法によるゴム製品を製造することができる。詳しくは、ゴム製品として手袋を例に、手袋の製造方法として以下に記載する。
【0070】
<ゴム製品及び手袋>
上記実施形態のエラストマー、又は上記実施形態のエラストマー製造方法により製造されたエラストマーを用いて、様々なゴム製品を製造することができる。なかでも、このエラストマーは、手袋形成用として使用されることが好ましく、さらにはクリーンルーム用の手袋形成用として好ましく使用できる。
【0071】
<手袋の製法方法>
本実施形態の手袋の製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。すなわち、
手袋成形型(「フォーマ」とも言う)を凝固剤液中に浸して、該凝固剤を手袋成形型に付着させる工程(1)、
凝固剤が付着した手袋成形型を、ブタジエン、及び不飽和カルボン酸エステルを少なくとも含む単量体を共重合してなる共重合体と、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる、同一の、又は異なる2以上の官能基を含む有機化合物と、水を少なくとも含むエマルション(「ディッピング液」ともいう。)中に浸漬する工程(2)、及び
前記エマルションが付着した手袋成形型を加熱する工程(3)、
を少なくとも含んでいる。
【0072】
上記工程(1)は、フォーマを凝固剤(凝集剤)液中に浸して、該凝固剤をフォーマに付着させる工程であり、凝集剤としては、エラストマーを析出させる効果を有する無機塩であれば特に限定されず、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の5〜20重量%水溶液を好ましく使用できる。
この工程(1)の後に、凝固剤が付着したフォーマを乾燥して、凝固液中の水を蒸発させることが好ましい。
【0073】
工程(2)は、ブタジエン、及び不飽和カルボン酸エステルを少なくとも含む単量体を共重合してなる共重合体と、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる、同一の、又は異なる2以上の官能基を含む有機化合物と、水を少なくとも含むエマルション(ディッピング液)中に、上記の凝固剤が付着したフォーマを浸漬する工程である。このディッピング液は、上述のエラストマーの製造方法の工程(1)に従って好ましく準備又は調製できる。
ディッピング液は、30℃〜50℃の温度に保持することが好ましく、浸漬時間は、手袋の目的とする厚みに応じた時間、一般的には1〜60秒程度、通常は1〜20秒間である。得られる手袋が所望の厚みとなるよう、前記工程(1)とこの工程(2)を繰り返して、凝固剤液とディッピング液に複数回、フォーマを浸漬させてもよい。
【0074】
次に、ディッピング液が付着したフォーマを加熱する工程(3)を行う。これはすなわち、ディッピング液でコーティングされたフォーマを加熱して、共重合体のカルボン酸エステル部を有機化合物の官能基と反応させて、架橋構造を形成させる工程であり、上述のエラストマーの製造方法における工程(2)に対応するものである。好ましい加熱温度等も、上述のエラストマーの製造方法において記載した通りである。
【0075】
すなわち、上記加熱工程(3)は、前加熱と後加熱に分けて行うことが好ましく、その場合は、予備架橋炉での前加熱工程の後に、温水又は熱水でフォーマを水洗して不要の薬剤を取り除くリーチング工程を行うことが好ましい。この工程により、架橋構造の形成に使用されなかった有機化合物を含む、水溶性の化合物が除去される。
続いて、ビーディング(袖巻き工程)を行ってから、架橋炉での後加熱工程と、塩素処理工程等の公知の工程を行うことが好ましい。この後加熱により、有機化合物による架橋構造の形成を完成させる。
【0076】
上記のようにして得られる手袋は、金属イオンの含有量が低減化されているので、クリーンルーム内での作業等にも適している。また、金属イオン架橋を実質的に含まないため、イオン結合の開裂に起因する手袋の強度低下を抑制し、使用中に手袋が切れる等の問題の発生を抑制できる。
【0077】
手袋の好ましい強度(機械的特性)、柔軟性、及びトルエン膨潤比率は、エラストマーの特性としてそれぞれ上記した通りである。
【0078】
手袋の耐薬品性については、47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンのいずれか1以上の化合物を用いて評価することが好ましい。
具体的には、手袋を裏返し、手袋の中指部分に47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンのいずれか一種を10ml入れ、その状態でこの中指部分を純水30mlに浸漬し、室温で2時間放置し、純水中に溶出してきた成分を、イオンクロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにより定量することにより評価できる。各々の薬剤の透過量は、それぞれ以下の基準を満たすことが好ましい。
フッ素イオン透過量:0.1g以下(さらに好ましくは、0.09g以下)
メタノール透過量及びエタノール透過量:それぞれ0.3g以下(さらに好ましくは、0.27g以下)
アセトン透過量:5.0g以下(さらに好ましくは、4.0g以下)
N−メチルピロリドン透過量:0.15g以下(さらに好ましくは、0.12g以下)
【0079】
手袋は、上記各薬剤透過量のいずれか一つ以上の基準を満たすものであることが好ましく、全ての基準を満たすことが一層好ましい。
さらに、上記47%フッ化水素酸、メタノール、エタノール、アセトン、及びN−メチルピロリドンの5種類の化合物(薬剤)の透過量の合計値は、5.85g以下であることが好ましく、5.0g以下であることがより一層好ましい。
【0080】
手袋の厚みは、特に限定されないが、特に柔軟性が求められるクリーンルーム内での使用等に適した厚みとして、0.03〜1mm程度であることが好ましく、0.05〜0.75mm程度であることがより好ましい。
【0081】
<ゴム製品形成用のディッピング液>
本実施形態のディッピング液は、ゴム製品形成用であり、ブタジエン、及び不飽和カルボン酸エステルを少なくとも含む単量体を共重合してなる共重合体と、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる、同一の、又は異なる2以上の官能基を含む有機化合物と、水を少なくとも含む。
このディッピング液は、上述のエラストマーの製造方法における工程(1)で準備するエマルションと基本的には同じであるが、ゴム製品製造時に希釈して使用できるように、固形分濃度が30〜60重量%程度であることが好ましい。
【実施例】
【0082】
次に、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づいたこれら以外の多くの実施態様を含むことは言うまでもない。
【実施例1】
【0083】
<ディッピング液の調製>
アクリロニトリル(28重量%)−ブタジエン(62重量%)−メタクリル酸メチル(10重量%)共重合体(括弧内は各単量体の配合比)と、分散剤としてのドデシルベンセンスルホン酸ナトリルム(濃度1.5重量%)を含む、固形分25重量%のエマルションを調製した。pHは6.5であった。
このエマルションに、エチレングリコールを、共重合体のカルボニル基に対し、モル比でヒドロキシル基が0.5となる量を添加し、ディッピング液を得た。
【0084】
<手袋の製造>
手袋の型であるフォーマを、硝酸カルシウム凝固液(Ca
2+イオン濃度で10重量%含む水溶液)中に、15秒間浸漬し、これを60℃で1分程度、部分的に乾燥した。
上記ディッピング液を30℃に保持し、ここに、表面に凝固剤が付着したフォーマを20秒間浸漬し、フォーマにディッピング液を付着させた。 その後、上記フォーマを予備架橋炉に入れて90℃120秒間乾燥し、乾燥後のフォーマを温水(50℃)中に180秒間浸してリーチングした後、120℃の架橋炉中に10分間保持し、その後室温に戻し、フォーマから外して手袋を得た。
【0085】
得られた手袋の厚みは、手のひら部分で0.07mmあり、引張強度が26MPa、伸びが520%であり、使用上問題のない強度であった。
得られた手袋の諸特性を、以下の方法で評価した。
【0086】
<金属イオン含有量>
手袋のエラストマー中の金属イオン含有量を、ICP発光分析法により求めた。金属イオン含有量は1重量%以下であった。
【0087】
<硫黄元素含有量>
JIS K7217:1983「プラスチップ燃焼ガスの分析方法」に準拠して、手袋のエラストマーの燃焼試験を実施した。硫黄酸化物由来の燃焼ガスは未検出であった。
【0088】
<トルエン膨潤比率>
手袋を常温でトルエンに浸漬し、72時間後の重量を初期重量で除して膨潤比率(重量%)を求めた。トルエン膨潤比率は、260重量%であった。
【0089】
<手袋使用時の強度>
得られた手袋を、人工汗液(JIS L 0848:2004)に3時間、40℃で浸漬し、その後水洗いを行い、手袋の引張強度を測定した。その結果、手袋は元の物性を保持していた。
また、10名の試験者に、上記人工汗液浸漬後の手袋を装着させて通常作業を行った結果、5時間たっても破れた手袋はなかった。
【実施例2】
【0090】
共重合体をアクリロニトリル(20重量%)−ブタジエン(62重量%)−メタクリル酸メチル(18重量%)共重合体に変更し、架橋用の有機化合物をエチレンジアミンに変更した他は、上記実施例1と同様にして手袋を形成した。エチレンジアミンは、カルボニル基のモル数に対して、0.4モル倍使用した。
得られた手袋は、機械的強度35MPa、伸び450%であり、実施例1と同様の特性を示した。