特許第6646975号(P6646975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646975
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】植物育成装置およびヘッダー装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 27/00 20060101AFI20200203BHJP
   A01G 25/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A01G27/00 502W
   A01G25/00 601D
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-162111(P2015-162111)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-38548(P2017-38548A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506212167
【氏名又は名称】株式会社スプレッド
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 浩身
(72)【発明者】
【氏名】大道 康之
(72)【発明者】
【氏名】松村 康裕
(72)【発明者】
【氏名】大門 靖史
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0283452(US,A1)
【文献】 特開2004−337952(JP,A)
【文献】 特開昭51−105149(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0011944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00 − 25/06
A01G 27/00 − 27/06
A01G 31/00 − 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液を供給する養液供給管と、
同一面内に並設された複数の育成溝と、
該育成溝に対養液を分配供給する複数の分配管と、
前記養液供給管と、前記複数の分配管との間に設けられる、養液を分配可能なヘッダー装置とからなる植物育成装置であって、
前記ヘッダー装置、前記養液供給管に接続可能な供給口部と、前記各分配管へ個別に接続可能な複数の排出口部を有し
該複数の排出口部のうち、前記ヘッダー装置の端部に位置する排出口部の口径を、中間部に位置する排出口部の口径よりも大きくしてなることを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の植物育成装置に使用されるヘッダー装置であって、
筒状の本体部と、該本体部の端部に設けられた供給口部と、前記本体部の側面に設けられた複数の排出口部とを有し、
該複数の排出口部のうち、前記本体部の端部に位置する排出口部の口径は、中間部に位置する排出口部の口径よりも大きくなっていることを特徴とするヘッダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物育成装置およびヘッダー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天候不順などによる野菜の生育不足や、農業生産者の高齢化や就農人口の減少などによる野菜の生産能力の低下などを解消して野菜を安定供給できるようにするために、工場で野菜を大量生産する技術に注目が集められている。
【0003】
そして、野菜を生産する工場には、植物育成装置が設置される(例えば、特許文献1参照)。このような植物育成装置には、野菜などの植物を育てる培地となる育成溝と、この育成溝に対して養液(または液肥)を供給するための養液供給管と、が備えられる。そして、植物を大量生産するために、上記した育成溝が同一面内に複数並設される。更に、同一面内に並設された複数の育成溝に対し、養液供給管からの養液が、複数の分配管を介して個別に分配供給される。なお、複数の育成溝は、上下方向に対して多段に積み重ねて設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−96048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物育成装置で、野菜などの植物を均等に生育させる(即ち、品質を一定にする)ためには、各育成溝に対して養液を均等に供給することが特に重要になる。そのために、各育成溝と各分配管との間に個別に流量調整弁を取付けて、各育成溝に対する養液の供給量を個別に調整するようにしていた。しかし、各育成溝に対する養液の供給量を個別に調整するのは、流量調整弁の数が多くなるため設備コストが掛かると共に、各流量調整弁の調整に多大な手間と時間が掛かり、植物育成装置の管理・運営が難しくなるなどの問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決することを、主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
養液を供給する養液供給管と、
同一面内に並設された複数の育成溝と、
該育成溝に対養液を分配供給する複数の分配管と、
前記養液供給管と、前記複数の分配管との間に設けられる、養液を分配可能なヘッダー装置とからなる植物育成装置であって、
前記ヘッダー装置、前記養液供給管に接続可能な供給口部と、前記各分配管へ個別に接続可能な複数の排出口部を有し
該複数の排出口部のうち、前記ヘッダー装置の端部に位置する排出口部の口径を、中間部に位置する排出口部の口径よりも大きくしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッダー装置を設けることによって、流量調整弁をなくし、各育成溝に対して養液の供給量を流量調整弁で調整する手間をなくすと共に、流量調整弁をなくした分だけ設備コストを低減することができるようになる。また、ヘッダー装置の端部に位置する排出口部を大径穴部とすることによって、全体として各分配管へ養液を均等に分配することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例にかかる植物育成装置の全体側面図である。
図2図1の植物育成装置の給水側の部分を示す端面図である。
図3図1の植物育成装置の排水側の部分を示す端面図である。
図4図2の斜視図である。
図5】(a)は(両口タイプの)ヘッダー装置を横方向から見た縦断面図、(b)は(a)と直交する方向の断面図である。
図6図5のヘッダー装置の斜視図である。
図7】片口タイプのヘッダー装置の側面図である。
図8】排出口部が形成されていない安定化用非分配領域を有するヘッダー装置の斜視図である。
図9】小型のヘッダー装置を複数連結すると共に、端部に位置する排出口部を塞いで安定化用非分配領域とした状態を示す図である。
図10】均等供給手段としての拡径穴部を有するヘッダー装置を備えた植物育成装置の給水側の端面図である。
図11】均等供給手段としてのオリフィスを有するヘッダー装置を備えた植物育成装置の給水側の部分を示す端面図である。
図12】エルボ形状の接続部材を用いた場合の分配管と育成溝との接続部分を示す拡大側面図である。
図13】比較例として流量調整弁を用いた場合の図2と同様の植物育成装置の給水側の部分を示す端面図である。
図14】直管状の接続部材を用いた場合の分配管と育成溝との接続部分を示す拡大側面図である。
図15図14の破線部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図15は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0011】
<構成>以下、構成について説明する。
【0012】
野菜などの植物を生産する工場などの内部に、図1の側面図、図2の給水側の端面図、図3の排水側の端面図に示すような植物育成装置1を設置する(主に、図1参照)。この植物育成装置1には、少なくとも、野菜などの植物を育てる培地となる育成溝2と、この育成溝2に対して養液3(または液肥)を供給するための養液供給管4と、が備えられる。そして、植物を大量生産するために、上記した育成溝2が同一面内に複数並設される。更に、同一面内に並設された複数の育成溝2に対し、養液供給管4からの養液3が、複数の分配管5を介して個別に分配供給される。複数の育成溝2は、必要に応じて、上下方向に対して多段(例えば、数段〜十数段など)に積み重ねて設置することができる。
【0013】
ここで、植物育成装置1は、棚枠状の育成装置本体を備えており、複数の育成溝2は、育成装置本体の各棚段12に対してそれぞれ平行に設置される。棚段12は、少なくとも育成溝2の設置段数に応じた段数またはそれ以上の段数を有するものとされる。育成溝2は、養液3を流通させるものであり、細長い樋状の容器などによって構成することができる。育成溝2の上面側の開口部には、支持板が取付けられ、この支持板によって育成する植物が支持される。複数の育成溝2は、基本的に、棚段12ごとに同じ大きさに揃えられる。但し、異なる大きさの育成溝2を同じ棚段12内に部分的に混在させることなども、構造的には可能である。各棚段12には、植物育成用のランプや温度調整装置などが設置される。
【0014】
養液供給管4の途中には、養液3を送るポンプ18が設けられる。養液供給管4へ送られた養液3は、各棚段12の位置で各分配管5に分配されて、各分配管5から各育成溝2の一端側へ送られる。各育成溝2の他端側には、養液3を排出するための排液管19が接続される。
【0015】
そして、以上のような全体的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0016】
(1)上記養液供給管4と上記各分配管5との間に、図4(〜図6)に示すように、養液3を分配可能なヘッダー装置31を設置する。
このヘッダー装置31が、上記養液供給管4に接続可能な供給口部32と、上記各分配管5へ個別に接続可能な複数の排出口部33と、を有するものとされる。
【0017】
ここで、ヘッダー装置31は、細長い筒状をした金属製または樹脂製のヘッダー本体に対して、上記した供給口部32をその端部に有すると共に、複数の排出口部33をその側面に有するものとされる。供給口部32と排出口部33とは、それぞれ、養液供給管4および分配管5とほぼ等しい口径を有するものとされる。
【0018】
ヘッダー装置31には、図5図6に示すような、ヘッダー本体の両端部に対して供給口部32を2つ有する両口タイプのものと、図7に示すような、ヘッダー本体の一端部に対して供給口部32を1つのみ有する片口タイプのものとが存在している。ヘッダー装置31が両口タイプの場合、例えば、養液供給管4は、一対(2本)設けられてヘッダー装置31に対し両側から養液3が供給される(図2参照)。また、ヘッダー装置31が片口タイプの場合、例えば、養液供給管4は、少なくとも1本以上設けられて、養液供給管4の先端部に取付けられた一対のヘッダー装置31に対して養液3が同時に供給される。
【0019】
なお、排出口部33については、ヘッダー本体に対して直接開口形成されたもの(図5図6)と、ヘッダー本体から突出形成されたもの(図7)とが存在しており、そのどちらであっても良い。
【0020】
養液供給管4(本管)は、棚段12が複数ある場合には、各棚段12の位置で枝管(分岐養液供給管34、図2参照)などに分岐されるようにしても良い。養液供給管4と分岐養液供給管34との分岐部には、弁35が取付けられる。この弁35は、例えば、使用する棚段12については全開にし、使用しない棚段12については全閉にするような使い方(開閉操作)がなされるものである。或いは、高い棚段12は養液3の出具合が悪くなり、低い棚段12は養液3の出具合が良くなる傾向にあるので、各棚段12の養液3の出具合を均一にするために、弁35によって棚段12ごとの流量調整を行うような使い方をすることもできる。上記したヘッダー装置31は、養液供給管4や分岐養液供給管34などの途中、例えば、中央部などに設けられる。なお、単に養液供給管4と言う場合には、分岐養液供給管34を含むことができる。
【0021】
そして、ヘッダー装置31と養液供給管4や分岐養液供給管34との接続部分には、図5に示すような継手部材36が使用される。この場合、継手部材36は、少なくとも、養液供給管4や分岐養液供給管34が外嵌される一端側の差口部36aと、この差口部36aに外嵌された分岐養液供給管34を外側から閉め込む圧縮リング36bと、ネジ孔状とされた供給口部32へ螺着するための他端側のネジ止め部36cと、を有するものなどとされる。
【0022】
この際、養液供給管4や分岐養液供給管34の端部は、パッキン37を越えるまで差口部36aに嵌合された後に、圧縮工具で圧縮リング36bを縮径することで締付け固定される。この構造により、ヘッダー装置31には、養液供給管4や分岐養液供給管34との接続部分(継手部材36)に、流路断面が縮小される部分39(差口部36aなどの内周部 D2<D1)が生じることになる。この場合、ネジ止め部36cの内周部は、ヘッダー装置31の中央部とほぼ同径とされているが、ヘッダー装置31の中央部よりも小径となるようなことも生じ得る。なお、圧縮リング36bには、ネジ止め部36c側の部分に、養液供給管4や分岐養液供給管34の端部がパッキン37を越えたことを目視確認できるようにするための確認孔が形成される。
【0023】
(2)図8に示すように、上記ヘッダー装置31またはその周辺に、上記各育成溝2に対して均等に養液3を供給可能な均等供給手段41を設ける。
【0024】
ここで、均等供給手段41は、どのようなものとしても良いが、電気的なものや制御を行うものなどよりも、機械的なものとするのが好ましい。なお、「均等」であるかどうかについては、同じ棚段12の異なる育成溝2で同時に栽培される複数の植物が実質的に同じ品質と見倣せる程度に生育されるかどうかが基準となる。以下、具体的な均等供給手段41について説明する。
【0025】
(3)上記均等供給手段41が、上記ヘッダー装置31の養液供給管4が接続される端部に設定された安定化用分配禁止領域51とされる。
そして、上記排出口部33が、ヘッダー装置31の上記安定化用分配禁止領域51以外の部分(例えば、中間部52)で各分配管5に接続される。
【0026】
ここで、安定化用分配禁止領域51とは、ヘッダー装置31の内部で養液供給管4から供給された養液3の流れを安定させるのに必要な長さの領域であり、育成溝2への養液3の分配が行われないように規制すべき領域のことである。ヘッダー装置31は、養液供給管4(分岐養液供給管34)との接続部分(継手部材36)に、流路断面が縮小される部分39(差口部36aなどの内周部)が形成されるため、その影響などで、ヘッダー装置31の端部周辺に、養液3の流れが不安定となる部分が発生する。
【0027】
そこで、上記したように、この流れが不安定となる部分については養液3の流れの安定化を図るための領域に指定して、安定化用分配禁止領域51からは養液3の取り出しを行わないようにする。安定化用分配禁止領域51の長さは、ヘッダー装置31について流量特性を調べた上で具体的に設定する。この際、ヘッダー装置31は、図8に示すように、安定化用分配禁止領域51に対して最初から排出口部33が設けられていないものを使用するのが望ましい。
【0028】
そして、安定化用分配禁止領域51を有したヘッダー装置31の中間部52などを安定化済領域と定めてこの位置に集中的に排出口部33を形成し、各分配管5を接続して養液3の分配を行わせるようにする。なお、ヘッダー装置31が片口タイプのものや後述するように複数連結したようなものの場合、養液供給管4や分岐養液供給管34が接続される側の端部とは反対側の端部については、安定化用分配禁止領域51とする必要はなく、排出口部33を設けて、分配管5を接続し、養液3の分配を行わせるようにしても良い。
【0029】
(4)この際、図9に示すように、上記安定化用分配禁止領域51は、少なくとも、上記ヘッダー装置31の端部に位置する排出口部33aを閉塞して使用不可にすることによって形成しても良い。
【0030】
ここで、端部に位置する排出口部33aは、養液供給管4や分岐養液供給管34が接続される側の端部のことである。端部に位置する排出口部33aを閉塞して使用不可にするのは、既存のヘッダー装置31をそのまま植物育成装置1に用いる場合などに適用される。これは、既存のヘッダー装置31では、供給口部32の近くにまで排出口部33aが形成されている場合が多いことによる。端部に位置する排出口部33aの数は、ヘッダー装置31が両口タイプで両側供給なら最低2個、片口タイプで片側供給ならなら最低1個となる。端部に位置する排出口部33aには、止水キャップなどの閉塞部材55を取付けて閉塞させるようにする。閉塞する排出口部33は、安定化用分配禁止領域51の大きさによって、端部に位置する排出口部33aと隣接するものなどにまで広げることもできる。
【0031】
なお、ヘッダー装置31の端部に位置する排出口部33aなどを閉塞するので、ヘッダー装置31には、育成溝2に使用する数に対して閉塞する分だけ排出口部33の数が多い大きめのものなどを使用する。または、排出口部33が上記した数となるように、小型のヘッダー装置31を複数連結して使用するようにしても良い。小型のヘッダー装置31どうしの連結には、直線軸の両端に雄ネジが切ってある管継手56(ニップル)などを使用する。ヘッダー装置31どうしの連結部分やその他の部分に養液3の流れが不安定となる部分が生じる場合には、その部分に位置している排出口部33を上記と同様に閉塞して安定化用分配禁止領域51にしても良い。
【0032】
(5)または、図10に示すように、上記均等供給手段41は、上記ヘッダー装置31の端部に位置する排出口部33aの口径を、中間部52に位置する排出口部33の口径よりも大きくしてなる大径穴部61としても良い。
【0033】
ここで、端部に位置する排出口部33aは、養液供給管4や分岐養液供給管34が接続される側の端部のことである。大径穴部61は、少なくとも、上記した安定化用分配禁止領域51に相当する領域内に設けられる排出口部33aに対して形成する。即ち、大径穴部61で、安定化用分配禁止領域51に相当する領域内からの分配量の増加を図ることによって、安定化用分配禁止領域51の設定を不要化し、安定化用分配禁止領域51に相当する領域内からの分配を可能にする。大径穴部61の大きさは、ヘッダー装置31の流量特性を具体的に調べた上で適宜設定する。状況によって異なるが、大径穴部61は、他の排出口部33と比べて概ね15%〜30%程度口径を大きくしたものなどとされる。
【0034】
(6)或いは、図11に示すように、上記均等供給手段41は、上記ヘッダー装置31と上記育成溝2との間に設けられた、養液3の流量を規制可能なオリフィス71としても良い。
【0035】
ここで、オリフィス71は、穴の開いたリング状のプレートなどを用いることができる。オリフィス71を用いることにより、上記した安定化用分配禁止領域51の設定を不要化して、安定化用分配禁止領域51からの分配を可能にする。オリフィス71を設ける位置や穴の大きさなどについては、植物育成装置1の作成時や使用開始時などに各分配管5の流量特性を具体的に調べた上で適宜決定する。なお、図では、全ての排出口部33に対してオリフィス71を取付けるようにしている。
【0036】
オリフィス71は、穴の大きさが異なるものを予め複数種類用意しておき、流量特性の調査結果に従って流量が均一になるように適宜選択してそれぞれ使い分けることができる。オリフィス71は、ヘッダー装置31の排出口部33に対する分配管5の接続部分や、育成溝2に対する分配管5の接続部分(後述する接続部材81など)に対して少なくとも1つ以上設けることができる。
【0037】
なお、上記した各均等供給手段41(安定化用分配禁止領域51や、大径穴部61や、オリフィス71など)は、状況により適宜組み合わせて使用することができる。
【0038】
(7)図12に示すように、上記各分配管5の上記育成溝2に対する接続部分に、エルボ形状をした接続部材81を用いる。
この接続部材81が、上記育成溝2の底部2aに取付可能な縦管部82と、上記育成溝2の底部2aに沿って延びる横管部83とを有するものとされる。
そして、上記分配管5が、上記ヘッダー装置31の排出口部33と上記接続部材81の横管部83との間に、横管部83へ向けて下り勾配となる部分92(図14図15参照)を有さない状態で接続されるようにする。
【0039】
ここで、接続部材81は、育成溝2の底部2aや側部や上部のいずれかに対して取付けるようにするが、この場合には、育成溝2を互いに横方向に近付けて配置できるようにすると共に、養液3の供給時に水ハネなどが生じ難いように、接続部材81を育成溝2の底部2aに取付けるようにしている。
【0040】
そして、ヘッダー装置31は、接続部材81(の横管部83)よりも低い位置(即ち、育成溝2の底部2aよりも下側の位置)に設置される。接続部材81の横管部83は、ヘッダー装置31の分配管5を接続する排出口部33へ向くように設置される。そして、各分配管5は、ヘッダー装置31の排出口部33から上記接続部材81の横管部83へ向けて上り勾配の部分(急勾配部84および緩勾配部85)または水平な部分(水平部)のみを有すると共に、下り勾配となる部分92が生じない状態で設置される。各分配管5には、柔軟な配管材を適宜使用することができ、例えば、ポリエチレン管や、架橋ポリエチレン管や、ポリブテン管や、アルミニウムと架橋ポリエチレン管とを積層したアルミ三層管などを用いるのが好ましい。
【0041】
各分配管5は、圧力損失が等しくなるように、全て同じ長さに揃えるのが好ましい。このようにする場合、ヘッダー装置31と各育成溝2との間の距離はそれぞれ異なるので、各分配管5は、最も距離の長いものに合わせて統一されることになる。そのために、上記した距離が短い位置では分配管5に余長86が生じる。そこで、この余長86が生じる分配管5に対し、ヘッダー装置31の側から順に上記した急勾配部84や緩勾配部85を形成することで、余長86を吸収させるようにする。
【0042】
なお、余長86が生じない位置の分配管5については、図4に示すように、特に急勾配部84を形成する必要はなく、緩勾配部85や水平部のみとすることができる。また、各分配管5を、余長86が生じない長さ(即ち、それぞれヘッダー装置31と各育成溝2との間の距離に応じた長さ)に設定することもできるが、この場合には、各分配管5の圧力損失が異なるので、例えば、オリフィス71などの均等供給手段41を用いて各分配管5の圧力損失を調整し、養液3の均等分配を図るようにする。
【0043】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0044】
養液3は、ポンプ18を介して養液供給管4や分岐養液供給管34へ送られる。養液供給管4や分岐養液供給管34へ送られた養液3は、各棚段12の位置で各分配管5に分配されて、各分配管5から各育成溝2の一端側へ送られる。各育成溝2の一端側へ送られた養液3は、各育成溝2内を他端側へ向けて流され、その途中で植物に養分が供給され、植物の育成に使用される。植物の育成に使用された養液3は、各育成溝2の他端側から排液管19を介して排出される。なお、排出された養液3は、循環利用することもできる。
【0045】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
(作用効果1)
養液供給管4と各分配管5との間に、供給口部32と複数の排出口部33とを有するヘッダー装置31を設置した。そして、ヘッダー装置31で一度に各分配管5へ養液3を分配させるようにした。これにより、例えば、図13の比較例に示すように、各分配管5に対して個別に流量調整弁91を設けたり、養液供給管4と各分配管5とを多数の継手部材などを用いて分岐させたりする必要がなくなるので、流量調整弁91や継手部材などをなくしたり、削減したりすることができる。
【0047】
また、ヘッダー装置31を用いることにより、各分配管5に個別に流量調整弁91を取付けて、各育成溝2への養液3の供給量を個々に調整する必要をなくすことができる。
【0048】
その結果、植物育成装置1の構造簡略化による設備コストの低減を図ると共に、各分配管5に対する養液3の供給量を個別に調整する手間をなくすことができる。よって、植物育成装置1の管理・運営を大幅に容易なものとすることができる。しかも、ヘッダー装置31は、電力消費などを伴わないので省エネルギー化を得ることができる。
【0049】
(作用効果2)
ヘッダー装置31では、養液供給管4や分岐養液供給管34の接続部分に構造的に流路断面が縮小される部分39ができることなどにより、端部周辺の流量が安定せず、端部に位置する排出口部33aが、他の排出口部33よりも養液3の流量が少なくなるなどの傾向があった。このように、各育成溝2に対する養液3の供給量が不安定で不均等になると、植物が均等に生育されなくなって、製品の品質にバラ付きが生じるおそれがある。
【0050】
そこで、ヘッダー装置31またはその周辺に均等供給手段41を設けた。これにより、ヘッダー装置31を用いて個別の流量調整を不要化した場合に、均等供給手段41によって、ヘッダー装置31またはその周辺の養液3の流れを安定化させるなどして、各育成溝2に対し養液3を均等に供給することが可能となる。よって、植物を均等に生育させて、品質の一定化を図ることが可能となる。また、均等供給手段41を備えるだけなので、コスト上昇を抑制することができる。
【0051】
(作用効果3)
均等供給手段41として、養液供給管4や分岐養液供給管34が接続されるヘッダー装置31の端部に、養液3の流れの安定化に必要な長さの安定化用分配禁止領域51(未分配領域)を設定した。そして、排出口部33を、安定化用分配禁止領域51以外の部分(中間部52などの安定化済領域)で各分配管5に接続した。
【0052】
このように、養液供給管4からの養液3の流れを安定化用分配禁止領域51で安定化させて、流れが安定化された養液3をヘッダー装置31の中間部52などに設けられた各排出口部33から各分配管5へ分配することで、実質的な養液3の均等分配状態を得ることが可能となる。
【0053】
(作用効果4)
通常のヘッダー装置31は、スペース上の都合などによって、端部に位置する排出口部33aが供給口部32のすぐ近くに設けられることが多い。そのため、端部に位置する排出口部33aが上記した安定化用分配禁止領域51に位置されてしまうことになる。そこで、少なくとも、ヘッダー装置31の端部に位置する排出口部33aを閉塞して使用不可とした。
【0054】
このように、少なくとも、ヘッダー装置31の端部に位置する排出口部33aを意図的に閉塞して使用不可とすることにより、上記安定化用分配禁止領域51が設定されていないヘッダー装置31に対して上記安定化用分配禁止領域51を設定できるようにした。これにより、端部に排出口部33aを有する既存のヘッダー装置31をそのまま用いて安定化用分配禁止領域51を確保し、養液3の均等分配を図ることができる。
【0055】
(作用効果5)
均等供給手段41として、ヘッダー装置31の端部に位置する排出口部33aを大径穴部61とした。これにより、上記したように養液3の流れが不安定になって流量が少なくなる傾向にある端部の排出口部33からの養液3の排出量が、大径穴部61によって部分的に増やされることになるので、全体として各分配管5へ養液3を均等に分配することが可能となる。また、上記大径穴部61によって、全ての排出口部33を使用することができるようになるので、(既存の)ヘッダー装置31を効率良く使用することができる。
【0056】
(作用効果6)
均等供給手段41として、ヘッダー装置31と育成溝2との間にオリフィス71を設けるようにした。これにより、オリフィス71で養液3の通過量を最適に調整することで、各育成溝2に対する養液3の供給量を均等化することが可能となる。そして、上記オリフィス71によって、全ての排出口部33を使用することができるようになるので、(既存の)ヘッダー装置31を効率良く使用することができる。
【0057】
(作用効果7)
育成溝2の底部2aに対して各分配管5を、縦管部82と横管部83とを有するエルボ形状の接続部材81を用いて接続した。そして、分配管5が、ヘッダー装置31の排出口部33と接続部材81の横管部83との間に、横管部83へ向けて下り勾配となる部分92を有さない状態で接続されるようにした。これにより、分配管5に余長86が存在するような場合に、例えば、分配管5の余長86が成り行きまかせに取り回されることで、分配管5の途中に下り勾配となる部分92(図14図15参照)ができてしまい、この下り勾配となる部分92の内部にエア溜まり93が生じるのを防止できる。
【0058】
特に、図14図15の比較例に示すように、接続部材81aを上下方向へ延びる縦管部のみによる直管状のものとして、分配管5の先端部を真上に立ち上げてほぼL字状に接続した場合には、分配管5の中間部52が自重で垂れ下がることによって、分配管5の途中に下り勾配となる部分92ができ易くなるが、エア溜まり(図15のエア溜まり93)は、このような下り勾配となる部分92の頂部の位置に生じ易い。
【0059】
これに対し、分配管5の先端部を、エルボ形状をした接続部材81の横管部83に、急勾配部84および緩勾配部85を有して配管させることにより、余長86を有する分配管5が側面視ほぼS字状などとなって、下り勾配となる部分92が生じないようにうまく取り回されることになるので、余長86が自然とエア溜まり93を生じ難い形状に落ち着くようになる。よって、分配管5内部におけるエア溜まり93の発生を防止することができ、エア溜まり93によって、育成溝2への養液3の供給量が減るような不具合を防止することができる。
【0060】
更に、接続部材81をエルボ形状にして、接続部材81の横管部83とヘッダー装置31の排出口部33との間で、分配管5を側面視ほぼS字状などに取り回すことで、ヘッダー装置31と育成溝2との間の高低差を小さくすることができるので、その分、棚段12の設置可能段数を増やすことができる。
【0061】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0062】
1 植物育成装置
2 育成溝
2a 底部
3 養液
4 養液供給管
5 分配管
31 ヘッダー装置
32 供給口部
33 排出口部
33a 端部に位置する排出口部
41 均等供給手段
51 安定化用分配禁止領域
52 中間部
61 大径穴部
71 オリフィス
81 接続部材
82 縦管部
83 横管部
84 急勾配部
85 緩勾配部
92 下り勾配となる部分
図1
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