(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0011】
ドライクリーニング用洗浄液
先ず、本発明のドライクリーニング用洗浄液について説明する。
本発明のドライクリーニング用洗浄液は、(A)一般式1で示されるフッ素化オレフィン系溶剤(以下、「(A)成分」という)と、(B)アニオン界面活性剤(以下、「(B)成分」という)及び/又は(C)カチオン界面活性剤(以下、「(C)成分」という)の少なくともいずれか一方と、を含むことを特徴とする。
特に、(A)成分と(B)成分とからなる場合は、良好な洗浄性を保持したまま、再汚染防止性を高めることができることから好ましく、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むことがより好ましい。必要に応じて、これらにさらに(D)非イオン界面活性剤(以下、「(D)成分」という)を添加することにより、洗浄性及び再汚染防止性を一層高めることができる。
【0012】
(A)フッ素化オレフィン系溶剤
次に、(A)成分について説明する。
本発明のドライクリーニング用洗浄液は、主成分となるドライクリーニング用溶剤として、(A)一般式1で示される、炭素数が3又は4であるフッ素化オレフィン系溶剤を含む。
【化3】
式中、R
1〜R
8はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、ただし、分子中少なくとも1つはフッ素原子であり、nは0又は1を表す。
これにより、本発明のドライクリーニング用洗浄液は、従来のフッ素系溶剤の利点を有し、乾燥性及び安定性に優れ、且つ、オゾン破壊係数(ODP)及び地球温暖化係数(GWP)が小さい。
【0013】
(A)成分のフッ素化オレフィン系溶剤は、ドライクリーニング用溶剤として適した沸点を有し、具体的には、80℃以下の沸点を有し、さらに好ましくは40〜70℃の沸点
を有する。したがって、優れた乾燥性を示し、且つ、使用済の溶剤を蒸留によって再使用することができる。
一般式1において、nが2以上であると、沸点の上昇に伴い乾燥性や取扱い性が損なわれ、好ましくない。
また、洗浄性及び取扱い易さの観点から、一般式1において、R
1〜R
3がフッ素原子であり、nが0であり、R
6〜R
8のうち少なくとも一つが塩素原子であることが特に好ましい。
(A)成分としては、1種又は2種以上の一般式1のフッ素化オレフィン系溶剤を使用することができる。
【0014】
(B)アニオン界面活性剤
次に、(B)成分について説明する。
本発明において、上記(A)成分に(B)成分を添加することにより、優れた洗浄性及び再汚染防止性が得られる。
本発明において使用される(B)アニオン界面活性剤としては、(A)成分に対して十分な溶解性を有することから、炭素数10〜22の脂肪酸塩、アルキル基の炭素数が8〜16であるアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルケニル基の炭素数が8〜16であるアルケニルベンゼンスルホン酸塩、炭素数10〜22の高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が10〜22でありポリオキシエチレン基のオキシエチレン単位の繰り返し数が1〜10であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、炭素数10〜22のα−スルホ脂肪酸エステル、炭素数8〜18のα−オレフィンスルホン酸塩、炭素数10〜22のアルカンスルホン酸塩;アルキル基の炭素数の合計が16〜40であるアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルケニル基の炭素数の合計が16〜40であるアルケニルスルホコハク酸エステル塩、(ただし、本発明のスルホコハク酸エステルは、モノエステル、ジエステル及びこれらの混合物をいう。);アルキル基の炭素数の合計が4〜30であるアルキルリン酸エステル塩、アルケニル基の炭素数の合計が4〜30であるアルケニルリン酸エステル塩、(ただし、本発明のリン酸エステルは、モノエステル、ジエステル及びこれらの混合物をいう。);アルキル基の炭素数が8〜22でありオキシエチレン単位の繰り返し数が1〜10であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニル基の炭素数が8〜22でありオキシエチレン単位の繰り返し数が1〜10であるポリオキシエチレンアルケニルエーテルカルボン酸塩、アシル基の炭素数が8〜22であるN−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。ここで、N−アシルアミノ酸は、アミノ酸のアミノ基又はイミノ基の窒素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがアシル基で置換された化合物である。
【0015】
アシル基で置換される前のアミノ酸としては、特に限定されず、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、α−アミノアジピン酸、システイン酸、ホモシステイン酸等の酸性アミノ酸;グリシン、N−メチルグリシン(サルコシンともいう。)、N−β−ヒドロキシエチルグリシン、アラニン、N−メチル−β−アラニン、アミノ酪酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、シスチン、ホモシスチン、システイン、ホモシステイン、メチオニン、シスタチオニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン等の中性アミノ酸、リシン、オルニチン、ヒドロキシリシン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;等が挙げられる。
【0016】
また、上記アルキル又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。更に、上記アニオン界面活性剤における塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキル(炭素数1〜22)アンモニウム塩;モノ−、ジ−又はトリ−エタノールアミン、ジポリオキシエチレン(合計1〜10モル)アルキル(炭素数1〜22)アミン等のアルカノールアミン塩が挙げ
られる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
特に、洗浄性及び再汚染防止性の観点から、アルキル基の炭素数が8〜16であるアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数の合計が16〜40であるアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキル基の炭素数の合計が4〜30であるアルキルリン酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8〜22でありオキシエチレン単位の繰り返し数が1〜10であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、及び、アシル基の炭素数が8〜22でありアシル基で置換される前のアミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸又はサルコシンであるN−アシルアミノ酸塩が好ましい。
【0017】
(C)カチオン界面活性剤
次に、(C)成分について説明する。
本発明において、上記(A)成分に(C)成分を添加することにより、良好な洗浄性が得られる。また、(A)成分と(B)成分とからなる洗浄液に、さらに(C)成分を添加することにより、洗浄性を相乗的に高めることができる。
【0018】
本発明において好適に使用される(C)カチオン界面活性剤としては、(A)成分に対して十分な溶解性を有することから、一般式2で示される第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【化4】
一般式2において、R
9及びR
10はそれぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基であり、
R
11及びR
12はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、
mは1〜3であり、
X
m-は、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、アルキル基の炭素数の合計が4〜30であるアルキルリン酸エステルイオン(ただし、本発明のリン酸エステルは、モノエステル、ジエステル及びこれらの混合物をいう。)、ベンゼンスルホン酸イオン、アルキル基の炭素数が8〜16であるアルキルベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、安息香酸イオン、炭素数2〜3のヒドロキシアルカンカルボン酸イオン、又は、R
13−O(−AO)
s−SO
3-(式中、R
13は炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基又はアルキルアリール基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、sは−AOの繰り返し単位の数であり0〜10である)である。
【0019】
特に、洗浄性と再汚染防止性との兼ね合いの観点から、一般式2において、X
m-が、炭素数1〜3のモノアルキル硫酸イオン、アルキル基の炭素数の合計が4〜30であるアルキルリン酸エステルイオン、アルキル基の炭素数が8〜16であるアルキルベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、又は、炭素数2〜3のヒドロキシアルカンカルボン酸イオンであることがより好ましい。
【0020】
(D)非イオン界面活性剤
本発明のドライクリーニング用洗浄液は、更に(D)成分を含んでもよい。(D)成分を添加することにより、洗浄性及び再汚染防止性を一層高めることができる。
本発明において好適に使用される(D)非イオン界面活性剤としては、洗浄性、再汚染防止性、(A)成分への溶解性の観点から、HLB値が14以下である、一般式3で示される非イオン界面活性剤が好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
R
14−O(−AO)
t−H (一般式3)
式中、R
14は炭素数8〜18の炭化水素基であり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基であり、tは−AOの繰り返し単位の数であり0〜20である。
【0021】
なお、非イオン界面活性剤のHLB値は、下記数式(1):
HLB=20×(D)成分中のエチレンオキシ基の総分子量/(D)成分の分子量
(1)
に示すグリフィンの式に準じて、エチレンオキシ基を親水性基と見なして算出したものである。また(D)成分を2種以上使用した混合物のHLB値は、それぞれ単独の非イオン界面活性剤のHLB値の加重平均値を用いる(界面活性剤便覧、西一郎ら、産業図書(株)、1960年発行、309頁)。
【0022】
配合比
本発明のドライクリーニング用洗浄液において、(A)成分の配合量は、洗浄性、衣類の風合い、オゾン破壊係数(ODP)及び地球温暖化係数(GWP)の観点から、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、50〜99.999質量%であることが好ましく、70〜99.999質量%であることがより好ましい。
一方、(B)成分及び(C)成分の合計配合量は、洗浄性、再汚染防止性及び衣類の風合いの観点から、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、0.001〜2.0質量%が好ましく、0.001〜1.6質量%がより好ましく、0.002〜1.0質量%が特に好ましい。これらの合計量が0.001質量%未満であると、ドライクリーニング用洗浄液としての洗浄力が弱く、また、再汚染率が高くなり好ましくない。逆に、これらの合計量が2.0質量%より多いと、衣類の風合いがべたつくため好ましくない。
【0023】
(B)成分及び(C)成分の両方を含む場合、洗浄液中の(B)成分と(C)成分との配合比率(質量)は、洗浄性の観点から、(B)成分:(C)成分が5:95〜95:5であることが好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、30:70〜70:30が特に好ましい。上記の配合量で、且つ、この範囲の配合比で、(B)成分及び(C)成分の両方を配合することにより、高い洗浄性が得られる。この範囲を外れると、(B)成分及び(C)成分の両方を併用することによる、洗浄性の向上効果が得られない。
さらに(D)成分を含む場合、その配合量は、洗浄性、再汚染防止性、衣類の風合いの観点から、ドライクリーニング用洗浄液を基準に0〜1質量%が好ましく、0.001〜0.8質量%がより好ましく、0.002〜0.5質量%が特に好ましい。
【0024】
また、さらに必要に応じて、ドライクリーニング用洗浄液に慣用の各種添加剤、例えば、溶解助剤、防錆剤、抗菌剤、防虫剤、シリコーン等を、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば0〜47質量%までの割合で配合することができる。
溶解助剤としては、一般式1で示されるフッ素化オレフィン系溶剤に可溶な溶剤であれば、特に限定はなく、具体的な例としては、炭素数5〜15の鎖状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素類;炭素数1〜16の鎖状又は環状のアルコール類;炭素数1〜6の飽和又は不飽和のハロゲン化炭化水素類;炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの2〜4量体の一方又は両方の水酸基の水素原子が炭素数1〜6のアルキル基で置換されたグリコールエーテル類が挙げられる。
【0025】
ドライクリーニング用洗浄剤組成物
本発明はまた、上述の一般式1で示されるフッ素化オレフィンを含むドライクリーニン
グ用溶剤で希釈して使用することができる、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を提供する。
フッ素化オレフィンを含むドライクリーニング用溶剤に本発明の洗浄剤組成物を添加することにより、溶剤の洗浄性及び再汚染防止性を一層高めることができる。
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、(b)アニオン界面活性剤(以下、「(b)成分」という)及び/又は(c)カチオン界面活性剤(以下、「(c)成分」という)の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
特に、(b)成分からなる場合は、良好な洗浄性を保持したまま、再汚染防止性を高めることができることから好ましく、(b)成分と(c)成分とからなることがより好ましい。必要に応じて、これらにさらに(d)非イオン界面活性剤(以下、「(d)成分」という)を添加することにより、洗浄性及び再汚染防止性を一層高めることができる。
【0026】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物を添加するドライクリーニング用溶剤は、一般式1で示されるフッ素化オレフィンからなるか、または、該フッ素化オレフィンと溶解助剤との混合物からなるフッ素化オレフィン系溶剤である。また、一般式1で示されるフッ素化オレフィンは、2種以上の一般式1のフッ素化オレフィンの混合物であってもよい。
一般式1で示されるフッ素化オレフィンと混合する溶解助剤としては、該フッ素化オレフィンに可溶な溶剤であれば特に限定はなく、具体的な例としては、炭素数5〜15の鎖状又は環状の飽和又は不飽和炭化水素類;炭素数1〜16の鎖状又は環状のアルコール類;炭素数1〜6の飽和又は不飽和のハロゲン化炭化水素類;炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの2〜4量体の一方又は両方の水酸基の水素原子が炭素数1〜6のアルキル基で置換されたグリコールエーテル類が挙げられる。これらの溶解助剤は、ドライクリーニング用溶剤の全質量に対して0〜50質量%までの割合で配合することができる。
また、さらに必要に応じて、ドライクリーニング用溶剤に慣用の各種添加剤、例えば、防錆剤、抗菌剤、防虫剤、シリコーン等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0027】
(b)成分としては、上述の(B)成分として挙げられたアニオン界面活性剤を、特に好ましく使用することができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
(c)成分としては、上述の(C)成分として挙げられた一般式2で示される第4級アンモニウム塩を、特に好ましく使用することができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
(d)成分としては、上述の(D)成分として挙げられた一般式3で示される非イオン界面活性剤を、特に好ましく使用することができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0028】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物において、(b)成分及び(c)成分の合計配合量は、洗浄性、再汚染防止性及び衣類の風合い、並びに取扱い性の観点から、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を基準に、50〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がより好ましく、65〜100質量%が特に好ましい。これらの合計量が50質量%未満であると、洗浄性及び再汚染防止性の十分な向上効果が得られない。
【0029】
(b)成分及び(c)成分の両方を含む場合、洗浄剤組成物中の(b)成分と(c)成分との配合比率(質量)は、洗浄性の観点から、(b)成分:(c)成分が5:95〜95:5であることが好ましく、10:90〜90:10がより好ましく、30:70〜70:30が特に好ましい。上記の配合量で、且つ、この範囲の配合比で、(b)成分及び(c)成分の両方を配合することにより、高い洗浄性が得られる。この範囲を外れると、(b)成分及び(c)成分の両方を併用することによる、洗浄性の向上効果が得られない。
さらに(d)成分を含む場合、その配合量は、洗浄性、再汚染防止性、衣類の風合い、並びに取扱い性の観点から、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を基準に0〜50質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましく、0〜35質量%が特に好ましい。
【0030】
ドライクリーニング洗浄方法
本発明のドライクリーニング洗浄方法は、本発明のドライクリーニング用洗浄液又はドライクリーニング用洗浄剤組成物を用いることを特徴とする。
上述したドライクリーニング用洗浄液を用いて被洗物を洗浄する具体的な方法は、まず、被洗物を上記洗浄液中に浸漬させた後、攪拌、回転、落下、振動等の物理的な外力を加えて洗浄する。浸漬によって、被洗物に付着した汚れ成分を洗浄液中に溶出させることができ、物理的な外力を加えることによって、被洗物のより細部にまで洗浄液を浸透させ、繊維と汚れ成分との分離を促進させて洗浄効率の向上を図ることができる。
また、洗浄液の温度は、溶剤の沸点の観点から、0〜40℃が好ましく、5〜35℃が好ましい。
【0031】
洗浄後、被洗物と、汚れ成分の溶出した洗浄液とを分離し、被洗物を乾燥させる。分離方法としては、搾りや、遠心力を利用した方法を採用することができる。また、乾燥方法としては、常温によるもの又は加熱によるものの、いずれの方法でも可能である。
また、被洗物と分離された洗浄液は、再度、ドライクリーニングに使用することができる。この場合、洗浄液中の汚れ成分の量に応じて、新たに本発明の洗浄液を添加することにより、洗浄力を維持させることができる。
また、汚れ成分の溶出した洗浄液は、蒸留あるいはカートリッジフィルターでろ過した後、再び使用してもよい。蒸留あるいはカートリッジフィルターでろ過することによって汚れ成分がほとんど含まれていない洗浄液を得ることができる。
【0032】
一方、上述したドライクリーニング用洗浄剤組成物を用いて被洗物を洗浄する具体的な方法は、まず、一般式1で示されるフッ素化オレフィンを含むドライクリーニング用溶剤を用意し、これに、本発明の洗浄剤組成物を、(b)成分及び(c)成分の合計配合量が、洗浄液全体に対して、0.001〜2.0質量%となるように、より好ましくは0.001〜1.6質量%となるように、更に好ましくは0.002〜1.0質量%となるように添加して、ドライクリーニング用洗浄液を調製する。次いで、上述のドライクリーニング用洗浄液を用いる洗浄方法と同様にして、被洗物を洗浄する。
本発明の洗浄剤組成物の添加量が少なすぎると、洗浄性及び再汚染防止性の十分な向上効果が得られない。また、多すぎると、衣類の風合いがべたつくため好ましくない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
<A成分>
A−1:ハイドロクロロフルオロオレフィン(旭硝子(株)製 1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン)
A−2:ハイドロクロロフルオロオレフィン(セントラル硝子(株)製 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン)
【0035】
<B成分又はb成分>
B−1:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸のナトリウム塩
B−2:ドデシルベンゼンスルホン酸のジポリオキシエチレン(合計4モル)オクチルアミン塩
B−3:デシルリン酸エステル(モノ体/ジ体=50/50)のジポリオキシエチレン(
合計4モル)オクチルアミン塩
B−4:ココイルサルコシンのジポリオキシエチレン(合計4モル)オクチルアミン塩
B−5:ポリオキシエチレン(3モル)トリデシルエーテル酢酸のナトリウム塩
【0036】
<C成分又はc成分>
C−1:ジオレイルメチルヒドロキシエチルアンモニウムキシレンスルホネート
C−2:ジメチルドデシルヒドロキシエチルアンモニウムパラトルエンスルホネート
C−3:ジメチルオクタデシルヒドロキシエチルアンモニウムドデシルベンゼンスルホネート
C−4:ジメチルテトラデシルヒドロキシエチルアンモニウムオクチルホスフェート
C−5:ジヒドロキシエチルオクタデシルエチルアンモニウムエチルサルフェート
C−6:ドデシルメチルビス(ポリオキシプロピレン(5モル)ポリオキシエチレン(5モル))アンモニウムメチルサルフェート
【0037】
<D成分又はd成分>
D−1:ソフタノール
(R)30(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(株)日本触媒製)
【化5】
(式中、m+n=9〜11であり、x=平均3である)
【0038】
<(E)成分[(A)成分以外のフッ素系溶剤]>
E−1:ハイドロフルオロカーボン(日本ソルベイ(株)製 HFC−365mfc 1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン)
E−2:ハイドロクロロフルオロカーボン(旭硝子(株)製 HCFC−225 ペンタフルオロジクロロプロパン)
E−3:ハイドロフルオロエーテル(スリーエムジャパン(株)製 HFE7100 メチルノナフルオロブチルエーテル)
【0039】
(実施例1)
実施例1のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す通り、ドライクリーニング用洗液を基準に、A−1を99.985質量%と、B−1を0.01質量%と、C−1を0.005質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0040】
(実施例2〜10、18〜22)
実施例2〜10、18〜22のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す成分及び組成に変えた他は、実施例1と同じ方法で調製し、下記評価試験に供した。
【0041】
(実施例11)
実施例11のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す通り、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、A−1を99.99質量%と、B−1を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0042】
(実施例12〜14、23、24)
実施例12〜14、23、24のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す成分及び
組成に変えた他は、実施例11と同じ方法で調製し、下記評価試験に供した。
【0043】
(実施例15)
実施例15のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す通り、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、A−1を99.99質量%と、C−1を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0044】
(実施例16)
実施例16のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す通り、ドライクリーニング用洗液を基準に、A−1を99.97質量%と、B−1を0.01質量%と、C−1を0.01質量%と、D−1を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0045】
(実施例17)
実施例17のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す通り、ドライクリーニング用洗液を基準に、A−1を99.98質量%と、B−1を0.01質量%と、D−1を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0046】
(実施例25)
実施例25のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、表1に示す通り、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、A−2を99.99質量%と、C−5を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0047】
(実施例26〜27)
実施例26〜27のドライクリーニング用洗浄液は、表1に示す成分及び組成に変えた他は、実施例25と同じ方法で調製し、下記評価試験に供した。
【0048】
(比較例1〜5)
比較例1〜5のドライクリーニング用洗浄液は、表2に示す通り、(A)成分単独又は(E)成分単独の組成物を下記評価試験に供した。
【0049】
(比較例6)
比較例6のドライクリーニング用洗浄液は、表2に示す通り、ドライクリーニング用洗液を基準に、E−1を99.98質量%と、B−1を0.01質量%と、C−6を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0050】
(比較例7)
比較例7のドライクリーニング用洗浄液は、表2に示す通り、ドライクリーニング用洗液を基準に、E−2を99.98質量%と、B−1を0.01質量%と、C−1を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0051】
(比較例8)
比較例8のドライクリーニング用洗浄液は、表2に示す通り、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、E−1を99.99質量%と、C−6を0.01質量%とを混合して均一とし、ドライクリーニング用洗浄液を調製して下記評価試験に供した。
【0052】
(比較例9〜11)
比較例9〜11のドライクリーニング用洗浄液は、表2に示す成分及び組成に変えた他は、比較例6と同じ方法で調製したが、(B)成分及び(C)成分は(E)成分に溶解せず分離し、洗浄液が白濁した。
【0053】
<評価試験>
実施例1〜27及び比較例1〜11で調製した各ドライクリーニング用洗浄液を、以下の試験により評価した。
【0054】
(洗浄率・再汚染率試験)
容量500mLのステンレス鋼製ポットに、実施例1〜27及び比較例1〜11で調製した各ドライクリーニング用洗浄液100mLを添加する。ラウンダ・オ・メーター[大栄化学精器製作所(株)、L−20]を用いて、40番綿ブロード、ウールモスリン、アクリル、及びポリエステルの4cm×8cmの大きさの白布各2枚と、日本油化学協会法に準じて作製した40番綿ブロード、ウールモスリン、アクリル、及びポリエステルの4cm×8cmの大きさの汚染布各2枚を、洗浄液で20℃×10分間洗浄する。その後、遠心脱水機[栄光産業(株)、H−120A]を用いて、1分間脱液し、60分間風乾する。洗浄前後の白布及び汚染布について、色彩計[(株)村上色彩技術研究所、クリーンマスターCM−53D]を用いて、550nmにおける反射率を測定し、次式に従って洗浄率及び再汚染率を算出する。
洗浄率(%)={(S
2−S
1)/(W
1−S
1)}×100
再汚染率(%)={(W
1−W
2)/W
1}×100
ただし、S
1:洗浄前の汚染布反射率、S
2:洗浄後の汚染布反射率、W
1:洗浄前の白布反射率、W
2:洗浄後の白布反射率である。
【0055】
なお、洗浄率は4種類の汚染布の洗浄率の合計値が高いほど、4種類の汚染布の汚れがトータルに落ちたことから良好と判定し、再汚染率は4種類の白布の再汚染率の合計値が低いほど、4種類の白布への汚れの再付着がトータルに少ないことから良好と判定する。結果を表1及び表2に示す。
【0056】
(オゾン破壊係数(ODP))
本発明において、ODPは、各ドライクリーニング用洗浄液1kgあたりの総オゾン破壊量を、トリクロロフルオロメタン(CFC−11)1kgあたりの総オゾン破壊量で割った値を示す。ドライクリーニング用洗浄液1kgあたりの総オゾン破壊量は、洗浄液中の(A)成分又は(E)成分1kgあたりの総オゾン破壊量として、カタログ値から求めた。
ODPが0.005未満である場合を○、0.005以上0.01未満である場合を△、0.01以上である場合を×として、結果を表1及び表2に示す。ODPが0.005未満であれば、オゾンへの影響が十分に小さいと認められる。
【0057】
(地球温暖化係数(GWP))
本発明において、GWPは、1kgのドライクリーニング用洗浄液が大気中に放出されたときに、100年間に地球に与える放射エネルギーの積算値を、CO
21kgあたりの100年間に地球に与える放射エネルギーの積算値で割った値を示す。ドライクリーニング用洗浄液1kgの放射エネルギー積算値は、洗浄液中の(A)成分又は(E)成分1kgあたりの放射エネルギー積算値として、カタログ値から求めた。
GWPが10未満である場合を○、10以上100未満である場合を△、100以上である場合を×として、結果を表1及び表2に示す。GWPが10未満であれば、地球温暖化への影響が十分に小さいと認められる。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
<評価結果>
表1、2に示した結果から明らかなように、実施例1〜27で調製したドライクリーニング用洗浄液においては、オゾン層破壊係数、及び地球温暖化係数が低く、被洗物の洗浄
性と再汚染防止性にも優れることが確認された。