(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図6において、10はエアバッグで、このエアバッグ10は、エアバッグ装置11を構成し、このエアバッグ装置11は、例えば車両としての自動車のハンドルであるステアリングホイールなどの被取付部材に装着され、被保護物である乗員を衝突の衝撃から保護するようになっている。なお、ステアリングホイールは、通常、傾斜したステアリングシャフトに取り付けられ、傾斜した状態で用いられるものであるが、以下、エアバッグ装置11が取り付けられた被保護物側を乗員側、上側、あるいは表側とし、反乗員側すなわち乗員側の反対側を車体側、下側、底面側、あるいは裏側として説明する。
【0021】
エアバッグ装置11は、エアバッグモジュールとも呼ばれるもので、支持部材を構成するベースプレート(バックプレート)21と、このベースプレート21に取り付けられるエアバッグ10、インフレータ23、リテーナ24、及びカバー体25となどから構成されており、ベースプレート21とカバー体25とにより、エアバッグ10を収納するケース体26が構成されている。
【0022】
インフレータ23は、全体として略円盤状をなす一般的な形状及び機能を備えたもので、
図4に示すように、略円柱状をなすインフレータ本体部23aと、このインフレータ本体部23aの外周部から突設された板状の取付フランジ部23bとを備えるとともに、この取付フランジ部23bの上側に位置して、インフレータ本体部23aにはガスを噴射するガス噴射口23cが外周側に向かって複数放射状に配置されている。また、取付フランジ部23bには、ボルト取付孔23dが4カ所(一部のみ図示)に形成されている。そして、インフレータ本体部23aの下側には、ハーネスの先端部のコネクタが接続され、このハーネスを介して、インフレータ23の動作を制御する図示しない制御装置が電気的に接続される。
【0023】
ベースプレート21は、バックプレート、あるいはバックホルダなどとも呼ばれるもので、例えば合成樹脂にて一体に射出成形され、エアバッグ装置11の実質的な底部となっている。そして、このベースプレート21は、ケース本体としての取付面部である基板部27と、この基板部27の表面側の周縁部の全体に亘って正面側に立ち上げられた周壁部28とを備えている。
【0024】
基板部27には、略中央部に円孔状のインフレータ取付孔27aが開口されているとともに、このインフレータ取付孔27aを囲んで4カ所のボルト取付孔27b(一部のみ図示)がそれぞれ開口されている。これらボルト取付孔27bは、インフレータ23のボルト取付孔23dと連通する。また、この基板部27には、エアバッグ装置11(
図6)を被取付部材に対して係止するための係止部27cが背面側に突設されている。
【0025】
周壁部28の外部には、カバー体25を係合保持するための複数のフック部28aなどがそれぞれ設けられている。
【0026】
そして、
図1に示すエアバッグ10は、ガスが導入されて膨張する1以上の気室を備え、本実施の形態では、1つの気室を内部に備えた円形袋状のエアバッグ本体部30を備えている。また、このエアバッグ本体部30は、
図6に示すように、形状保持部材としての破断可能なラッピング部材31により覆われた状態でケース体26内に収納される。
【0027】
このエアバッグ本体部30は、一または複数の基布(パネル)により形成されている。このエアバッグ本体部30には、インフレータ23が挿入される図示しないインフレータ取付孔と、このインフレータ取付孔の周囲に位置する図示しない取付孔と、図示しないベントホールとがそれぞれ開口されている。
【0028】
リテーナ24は、例えば金属あるいは樹脂などにて円形状などに形成され、ベースプレート21のボルト取付孔27b(
図4)及びインフレータ23のボルト取付孔23d(
図4)などに挿通される取付ボルト24aが突設されている。
【0029】
図6に示すカバー体25は、例えば合成樹脂にて一体に形成され、ステアリングホイールの一部の正面側を構成しエアバッグ10及びインフレータ23などを覆うカバー本体としての対向部である表板部41と、この表板部41の背面側から筒状に下方へと突設された取付壁部としての側縁部である取付板部42とを備えている。
【0030】
表板部41の背面には、取付板部42に囲まれた位置に、厚さ寸法の小さい溝状の破断予定部である図示しないテアラインが形成されており、エアバッグ10の膨張時に、エアバッグ10の展開圧力によってテアラインに沿って開裂して扉部43を展開するように構成されている。
【0031】
取付板部42は、ベースプレート21の周壁部28の外方に位置するもので、この周壁部28の外形に沿って形成されている。さらに、取付板部42には、
図4及び
図5に示すように、ベースプレート21のフック部28aがそれぞれ挿入係合される挿入開口部42aが複数設けられている。
【0032】
そして、
図2(a)などに示すラッピング部材31は、例えば合成紙、紙、布、不織布、またはこれらの製造後または製造工程中において樹脂を添加、含浸、混紡、コーティングなどの方法により組み合わせたもの、あるいはポリエステルなどの樹脂シートから形成されている。本実施の形態では、このラッピング部材31は、一または複数の基布により形成されている。また、このラッピング部材31は、筒状、例えば円筒状に形成された本体部51と、この本体部51に設けられた破断部52とを備えている。
【0033】
本体部51は、円形状の天板部である上面部55と、円筒状の側面部56と、この側面部56に設けられた固定部としてのタブ57(
図1)と、この側面部56に設けられたスリット58とを備えている。そして、本実施の形態では、
図3に示すように、上面部55と側面部56及びタブ57とは互いに異なる別体の基布により形成され、上面部55と側面部56とが縫製などにより接合されることにより本体部51が有蓋円筒状となっている。すなわち、この本体部51(ラッピング部材31)の内方に、上面部55と側面部56とにより囲まれる空間部であるエアバッグ収納部59(
図6)が区画される。
【0034】
上面部55は、
図6に示すように、折り畳まれた状態のエアバッグ10の膨張展開側、すなわちエアバッグ10におけるカバー体25の表板部41の背面側に対向する部分の少なくとも一部、本実施の形態では略全体を覆うものである。換言すれば、この上面部55は、エアバッグ10とカバー体25の表板部41との間に介在される部分である。この上面部55は、
図3に示すように、例えば1枚の基布61によって円形状または楕円形状に形成されている。
【0035】
側面部56は、サイドパネルなどとも呼ばれ、
図6に示すように、折り畳まれた状態のエアバッグ10の側部を覆うものである。換言すれば、この側面部56は、エアバッグ10とベースプレート21の周壁部28及び/またはカバー体25の取付板部42との間に介在される部分である。この側面部56は、上面部55よりも径寸法が小さい円筒状に形成されている。本実施の形態では、側面部56は、
図3に示すように、例えば1枚の基布63によって帯状に形成されており、この基布63の長手方向の両端部63a,63a(両短辺部)に位置する余剰片部64が互いに重ねられた状態でこれら両端部63a,63aが互いに例えば接合部としての縫製部65(
図2(a))により接合(縫製)されて円筒状に形成されている。また、
図2(b)に示すように、この側面部56は、短手方向の端部、すなわち上面部55の背面側に対向する上端部56a(基布63の一方の長辺部)が上面部55に対して例えば縫製により接合されて、
図2(a)に示す円形状の境界部66を構成している。すなわち、本実施の形態では、この境界部66は、縫製糸によって形成されている。この境界部66は、後述するラッピング扉部71(
図6)の展開時のヒンジ部となる部分である。また、この側面部56は、上面部55よりも小さい径寸法を有しており、上面部55と同軸状に連結される。このため、上面部55の外縁部は、側面部56よりも外方に延出する延出部55aとなっている。
【0036】
図3に示すタブ57は、側面部56にて、上面部55と反対側の端部、すなわち
図2(a)に示す下端部56b(
図3に示す基布63の他方の長辺部)から下方に突設されており、エアバッグ10(
図1)を包んだ状態では、基端部から側面部56の内方に折り曲げられてエアバッグ10(
図1)の下部に対向するようになっている。このタブ57は、取付ボルト24a(
図6)の数に対応する複数、例えば4つ設けられており、それぞれのタブ57には、取付ボルト24a(
図6)が挿通される丸穴状のボルト取付孔73が開口されている。さらに、これらタブ57は、本実施の形態では、互いに異なる形状を有する一のタブ57a及び他のタブ57bが設定されている。例えば一のタブ57aは、四角形状に形成されており、他のタブ57bは、一のタブ57aに対して、先端部が湾曲した形状となっている。すなわち、一のタブ57aと他のタブ57bとは、互いに目視によって識別可能となっている。したがって、
図4に示すようにラッピング部材31により包んだ折り畳み状態のエアバッグ10をベースプレート21(ケース体26(
図6))に取り付ける際に、
図3に示すタブ57の形状を目視確認することによってエアバッグ10(
図6)の正しい取り付け向きを作業者が認識できるようになっている。本実施の形態では、一のタブ57aと他のタブ57bとが2つずつ設定されているが、エアバッグ10(
図4)のベースプレート21(
図4)に対する取り付け向きを識別できればこれに限定されるものではなく、形状も任意に設定できる。
【0037】
スリット58は、
図1に示すように、タブ57の位置で側面部56の下端部56bを大きく広げられるようにして折り畳み状態のエアバッグ10をラッピング部材31内のエアバッグ収納部59に収納し易くするもので、
図2(a)に示す側面部56の下端部56bから上下方向に沿って、すなわち側面部56の下端部56bに対して交差(略直交)する方向に沿って直線状に切り込み形成されている。このスリット58は、本実施の形態では、
図3に示すようにタブ57,57の中間位置に配置されている。
【0038】
一方、
図2(a)に示す破断部52は、本実施の形態では本体部51の上面部55に位置している。この破断部52は、例えば開口部である複数の切込部52aと、これら切込部52a間に位置する非開口部である破断予定部52bとにより構成されている。そして、この破断部52は、破断によって上面部55に開口74(
図6)を形成するものである。
【0039】
切込部52aは、本実施の形態では、例えば上面部55の中央部から径方向に沿って放射状(直線状)に形成されて十字状(X字状)に配置されている。したがって、上面部55の周方向に隣接する切込部52a,52aと境界部66とにより囲まれた部分が、エアバッグ10(
図6)の膨張展開時のラッピング扉部71(
図6)を構成する例えば扇形状のラッピング扉予定部75となっている。なお、この切込部52aは、外側の端部である一端部が例えば境界部66を越えて側面部56に亘って連続していてもよい。
【0040】
破断予定部52bは、本実施の形態では、例えば上面部55の中央部にて各切込部52aの内側の端部である他端部間に位置している。この破断予定部52bは、ラッピング扉予定部75を連結しているとともに、エアバッグ10(
図6)の展開圧力によって破断(開裂)することで、各ラッピング扉予定部75を互いに別個のラッピング扉部71(
図6)とする脆弱部である。
【0041】
そして、
図6に示すエアバッグ装置11の組み立ての際は、概略として、まず、エアバッグ10内にリテーナ24を取り付け、このエアバッグ10を所定の形状に折り畳んでラッピング部材31により包んだ後、ベースプレート21、及びインフレータ23を組み合わせて、エアバッグ装置11が構成される。
【0042】
より詳細に、エアバッグ10内には、インフレータ取付孔からリテーナ24を挿入し、取付ボルト24aを上側からボルト取付孔に挿入する。
【0043】
次いで、このエアバッグ10を、展開特性などに応じて、所定の形状に折り畳む。
【0044】
さらに、
図1に示すように、エアバッグ10をラッピング部材31のエアバッグ収納部59に収納することで、この折り畳み形状を保持し、エアバッグ10の展開側を上面部55に対向させる。このとき、ラッピング部材31は、スリット58によって側面部56の下端部56bを広げながらエアバッグ10を挿入することで、エアバッグ収納部59に容易に挿入できる。なお、この挿入の際には、例えばエアバッグ装置11をステアリングホイールに取り付けた状態でのエアバッグ10の上下などを確認する。
【0045】
この後、各タブ57を内側へと折り曲げ、ボルト取付孔73に取付ボルト24aを挿入する。
【0046】
このラッピング部材31により包んだエアバッグ10は、
図4に示すようにベースプレート21に取り付ける。このとき、ベースプレート21のボルト取付孔27bに対して取付ボルト24aを挿入する。なお、この取り付けの際には、タブ57(
図3)の形状によって、ベースプレート21に対するエアバッグ10の上下を確認する。
【0047】
さらに、ベースプレート21の背面側にインフレータ23の取付フランジ部23bを沿わせ、この取付フランジ部23bのボルト取付孔23dにインフレータ23の取付ボルト24aを挿入し、取付ボルト24aの先端から図示しないナットを螺合して締め付ける。この状態で、インフレータ23のインフレータ本体部23aがエアバッグ10のインフレータ取付孔から内側に挿入され、すなわち、ガス噴射口23cがエアバッグ10内に配置される。
【0048】
そして、ベースプレート21に対して上側からカバー体25を被せて嵌合して、エアバッグ装置11(
図5)が組み立てられる。この状態で、
図6に示すように、エアバッグ10を収納するラッピング部材31は、エアバッグ10とともに、ベースプレート21の周壁部28の先端部とカバー体25の取付板部42との間の段差状のスペースSに一部が嵌合するように配置される。
【0049】
この組み立てたエアバッグ装置11は、ベースプレート21に設けた係止部27c(
図4)によってステアリングホイールに装着される。
【0050】
このエアバッグ装置11を備えた自動車に衝突の衝撃が加わると、図示しない制御装置によりインフレータ23が起動され、インフレータ23のガス噴射口23cからエアバッグ10のエアバッグ本体部30内に急速にガスが噴射される。すると、エアバッグ10の展開圧力がラッピング部材31の上面部55及びカバー体25の表板部41にそれぞれ作用し、上面部55の破断予定部52b、及び、表板部41のテアラインを破断させてラッピング扉部71及び扉部43を展開させることで開口74及び突出口77を形成する。このとき、スペースSに一部が嵌合していることで、エアバッグ10の展開圧力がカバー体25の表板部41の全面に効果的に作用し、テアラインを確実に破断させる。そして、エアバッグ10は、この突出口77を介してラッピング部材31の側面部56によって周囲が規制されることで、円形状態から広がっていくように展開して膨出し(
図7の実線)、乗員の前方に所定の形状に膨出して、展開したエアバッグ10(エアバッグ本体部30)が、前方に投げ出されてくる乗員を受け止めて拘束し、乗員に加わる衝撃を緩和する。
【0051】
このように、本実施の形態によれば、ラッピング部材31を、エアバッグ10の側部を覆う側面部56と、この側面部56と少なくとも一部が連結されエアバッグ10の膨張展開側の少なくとも一部を覆う上面部55とを備える円筒状に形成された本体部51と、上面部55に設けた破断部52とで構成することにより、折り畳んだエアバッグ10をラッピング部材31に挿入するだけで容易かつ確実に保持できる。
【0052】
また、側面部56の上面部55に対して反対側の端部にスリット58を設けることで、このスリット58から側面部56を大きく開いて、折り畳んだエアバッグ10をラッピング部材31の内部へとより容易に挿入できる。
【0053】
さらに、ラッピング部材31の上面部55を略円形状に形成するとともに、側面部56の一部を上面部55と接合して側面部56を略円筒状に形成することで、ラッピング部材31に保持されたエアバッグ10は、折り畳んだ状態で上面部55及び側面部56により全周が覆われて円形状に規制されているので、組み立て時のエアバッグ10の噛み込みを防止できるとともに、例えば十字状に組み付ける従来例のラッピング部材のように折り畳んだエアバッグ10の角部がラッピング部材の隙間から突出して不規則な角を形成することがなく、折り上がった後の形状の均一性を向上できる。
【0054】
また、側面部56は、縫製により形成した境界部66によって上面部55と連結されるので、ラッピング扉部71の展開時のヒンジとなる境界部66近傍の位置を強固に構成できる。
【0055】
しかも、ラッピング部材31は、側面部56が帯状となっていることから、内部のエアバッグ10に対して周方向に力が略均等に加えられ、円形に折りを保持でき、最小形状での保持が可能となるとともに、円形状のベースプレート21に対応できる。
【0056】
また、エアバッグ10はラッピング部材31の内方に挿入するのみであるため、ラッピング部材を引っ張ってエアバッグを締め付ける従来の構造のように、エアバッグ10を包むときに破断部52に負荷が加わらず、破断部52の負荷をなくすことができるので、破断部52(破断予定部52b)の強度をより低減できる(より容易に破断させる設定とすることができる)。この結果、エアバッグ10の展開をラッピング部材31で妨げにくくなる。
【0057】
そして、エアバッグ10は、展開時に側面部56によって周囲が規制されることで、エアバッグ10をラッピング部材によって締め付けて保持する従来例の場合(
図7の想像線)と比較して、エアバッグ10が円形状態から広がっていくような展開挙動をとる(
図7の実線)ので、安定して展開させることができる。
【0058】
また、このエアバッグ10の展開時には、側面部56が周方向の補強部材となるため、エアバッグ10の膨張圧力によるカバー体25の取付板部42への負荷を軽減でき、この取付板部42の板厚を低減できる。この結果、エアバッグ装置11の小型化及び軽量化が可能になる。
【0059】
さらに、側面部56は、エアバッグ10の展開に対して、周方向に対する強度を持っているので、エアバッグ10の展開時にカバー体25の表板部41方向に向かってエアバッグ10が展開し易くなる。そのため、ラッピング部材31に阻害されることなくテアラインからカバー体25の扉部43を開裂させるタイミングを早期化できる。
【0060】
なお、ラッピング部材31は、ラッピング扉部71が開裂した後には、エアバッグ10の展開圧力によって座屈する方向に荷重が加わってラッピング部材31が潰れるので、エアバッグ10の展開を阻害しにくい。
【0061】
なお、上記の第1の実施の形態において、スリット58は必須の構成ではなく、また、
図8に示す第2の実施の形態のように、タブ57の形状も全て同一形状としてもよい。
【0062】
次に、第3の実施の形態を
図9及び
図10を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
この第3の実施の形態は、ラッピング部材31が例えば1枚の基布81によって構成されているものである。すなわち、この基布81は、上面部55と側面部56とを一体に形成するように構成されている。
【0064】
ここで、基布81には、
図10に示すように、上面部55を構成する上面部構成部83と、側面部56を構成する側面部構成部84とが備えられている。そして、この基布81は、上下方向及び左右方向に略線対称な形状となっている。
【0065】
上面部構成部83は、例えば左右方向に長手状、すなわち横長の略楕円形状に形成されている。この上面部構成部83の中央部には、破断部52が設けられている。
【0066】
側面部構成部84は、例えば上面部構成部83よりも左右方向に長い四角形状に形成されており、上面部構成部83の上下にそれぞれ連続部85を介して一体に連続している。上下の側面部構成部84,84は、上面部構成部83を挟んで互いに離間されている。また、各側面部構成部84には、上面部構成部83と反対側の端部に、タブ57とスリット58とが複数ずつ設けられている。さらに、各側面部構成部84の長手方向の両端部は、上面部構成部83から側方に延出している。そして、これら側面部構成部84の上面部構成部83から延出する縁部は、互いに重ねられた状態で例えば接合部としての縫製部87(
図9)により接合(縫製)される余剰片部88となっている。
【0067】
また、連続部85の両端部は、それぞれ切り込み形成されたスリット状の切込部85aとなっている。
【0068】
そして、ラッピング部材31を形成する際には、基布81の各連続部85から各側面部構成部84を折り曲げて引っ張るとともに、各側面部構成部84の余剰片部88同士を重ねて縫製などにより接合することで、各側面部構成部84によって筒状(略円筒状)の側面部56を構成するとともに、上面部構成部83によって上面部55を構成する。このとき、上面部構成部83(上面部55)の左右両側部は、連続部85の両端部の切込部85a,85aによって側面部56に対して左右に突出する延出部55aとなる。
【0069】
完成したラッピング部材31に、折り畳んだエアバッグ10を収納する際には、連続部85の位置を上下の目印として上下方向を決めることができる。
【0070】
このように、ラッピング部材31は、上記の各実施の形態と同様の構成を有することにより、上記の各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
また、側面部構成部84を立体的に縫製して円筒状の側面部56を構成することにより、内部のエアバッグ10に対して周方向に力が略均等に加えられ、円形に折りを保持でき、最小形状での保持が可能となる。
【0072】
さらに、1枚の基布81によりラッピング部材31を構成することで、側面部構成部84を連続部85の位置からより強く引っ張ることができ、折り畳んだエアバッグ10の上下方向を確実に抑えて、エアバッグ10をより小さい形状で保持することが可能となる。
【0073】
なお、上記の第3の実施の形態において、上面部55は、折り畳んだエアバッグ10のラッピングからエアバッグ装置11の組み立てまでに支障がなく、エアバッグ10の展開性能が損なわれない範囲で形状の選択が可能である。例えば、
図10の図面視にて上面部55となる上面部構成部83を左右側から中央側に向かって縮小し、側面部構成部84間の略中央位置に橋渡された帯状とすることもできる。この場合、破断部52は、スリット状とするだけでなく、例えば帯状となった上面部構成部83の適宜箇所を幅方向中央側に向けて切り欠いた切欠部などとすることもできる。また、帯状とする上面部構成部83(上面部55)も幅を調整して複数設定することもできる。あるいは、上面部構成部83と側面部構成部84との上下の連続部85の幅は
図10のままとし、上面部構成部83を、中心側に向かうに従い面積が漸減するような三角形状の頂点同士が連結する形状とすることもできる。その場合には、中央部分の連結箇所が破断部52となる。
【0074】
また、上面部構成部83の上下の位置に側面部構成部84が連続する構成としたが、例えばエアバッグ10(エアバッグ装置11)の用途によっては、上面部構成部83の左右に側面部構成部84を連続させる構成としてもよい。
【0075】
また、タブ57の位置は、任意に変更することが可能である。
【0076】
さらに、上記の各実施の形態において、破断部52は、スリット状の切込部52aに代えて、例えば穴状の複数の開口部を備えていてもよい。このとき、これら開口部の形状は、これら開口部を除く十字状(X字状)の部分である非開口部(脆弱部)がエアバッグ10の展開圧力によって確実に破断する形状、例えば扇形状などとする。
【0077】
次に、第4の実施の形態を
図11及び
図12を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
この第4の実施の形態は、
図11に示すように、エアバッグ収納部59の周囲を囲む側面部56が複数、例えば一対の基材である基布91,91の両端部が接合されて円筒状に形成されているとともに、上面部55が一の基布91と一体に帯状に設けられ、他の基材91に対して接合されているものである。
【0079】
各基布91は、帯状の側面部構成部93を備えている。また、一の基布91には、上面部55を構成する上面部構成部である中央延設部94が一体に設けられ、他の基布91には、中央延設部94が接合される接合受部95が一体に設けられている。そして、基布91,91は、接合部としての縫製部96により接合され、かつ、中央延設部94の先端部が接合受部95に対して中央接合部としての中央縫製部97により接合されている。
【0080】
側面部構成部93は、一般部とも呼び得る構成部本体98と、この構成部本体98の両端部に設けられた延設部99,99とを一体に備えている。そして、この側面部構成部93の両端部は、外方へと突出する円弧状に湾曲して形成されている。
【0081】
構成部本体98は、本体部51の周方向に長手状となっている。そして、本体部51の下端部56bとなる構成部本体98の下部には、タブ57(一のタブ57a及び他のタブ57b)がそれぞれ突設されているとともに、これらタブ57,57の中間の位置にスリット58が設けられている。
【0082】
延設部99は、構成部本体98の両端部の上部(側面部56の上端部56aとなる部分)から上方に突設されている。これら延設部99の構成部本体98に対する突出量は、エアバッグ10の大きさや形状などに応じて設定される。また、これら延設部99は、構成部本体98の中央側から離れるに従い徐々に上方への突出量が大きくなるように傾斜している。
【0083】
中央延設部94は、構成部本体98(側面部構成部93)の上部(側面部56の上端部56aとなる部分)から上方に突設されている。この中央延設部94は、構成部本体98(側面部構成部93)に対して交差(直交)する方向に長手方向を有する帯状に形成されている。したがって、上面部55は、側面部56のエアバッグ10の膨張展開側の縁部である上端部56aを直径方向に沿って横切って設けられている。換言すれば、この上面部55は、側面部56のエアバッグ10の膨張展開側の縁部である上端部56aの複数の位置、本実施の形態では円筒状の側面部56の中心軸に対して互いに対向する2箇所を連結して設けられている。また、この中央延設部94の長手方向の中央部近傍には、折り畳んだ状態のエアバッグ10を包んだ状態でのラッピング部材31の中央部(中心軸近傍)となる長手方向の中央部に向かって幅方向両側から徐々に幅狭となるように切欠部101,101が形成されている。そして、中央延設部94(上面部55)は、長手方向の中央部、すなわちこれら切欠部101,101によって最も幅狭となった位置に、この上面部55(中央延設部94)を幅方向に横断して、破断部52となるスリットが形成されている。
【0084】
接合受部95は、構成部本体98(側面部構成部93)の上部(側面部56の上端部56aとなる部分)から上方に四角形状に突設されている。
【0085】
縫製部96は、側面部構成部93,93同士を縫製により接合するものである。この縫製部96は、構成部本体98の両端部から延設部99,99に亘って形成されている。この縫製部96は、構成部本体98の下端部から延設部99,99の上端部に連続している。すなわち、この縫製部96は、側面部56の下端部56bから上端部56aまで連続している。そして、この縫製部96は、側面部構成部93の両端部に沿って湾曲している。すなわち、この縫製部96は、外方に向けて突出する円弧状に湾曲している。換言すれば、この縫製部96は、上端部96a及び下端部96bに対して上下の中央部96cが外方(反エアバッグ10側)へと突出するように湾曲している。さらに、この縫製部96の上端部96aは、構成部本体98の上部よりも上方に突出しており、側面部構成部93の両端方向の中央側へと折り返されるように湾曲した、いわゆるインバース形状となっている。
【0086】
中央縫製部97は、中央延設部94及び接合受部95を幅方向に横断するように直線状に形成されている。
【0087】
そして、展開特性などに応じて折り畳んだエアバッグ10をラッピング部材31のエアバッグ収納部59に収納することで、この折り畳み形状を保持し、エアバッグ10の展開側を上面部55に対向させる。このとき、側面部56は、上端部56aに位置する延設部99,99の位置で縫製部96の上端部96aがエアバッグ10側に湾曲していることで、延設部99,99がエアバッグ10の展開側の外縁部を覆うように倒れ込む(
図11)。
【0088】
このように、ラッピング部材31は、側面部56を複数の側面部構成部93の両端部を縫製部96により接合して円筒状とし、上面部55を側面部56のエアバッグ10の膨張展開側の縁部である上端部56aの複数の位置を連結して形成することで、折り畳んだエアバッグ10は側面部56により側部全体が円形状に覆われ、かつ、展開側が上面部55により押さえつけられるので、簡易な構成でエアバッグ10をより確実に保持できるなど、上記の各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
しかも、構成部本体98の両端部の位置にて上面部55側に延出する延設部99,99を形成し、縫製部96を、構成部本体98の両端部から延設部99,99に亘り、延設部99,99の位置で構成部本体98の両端方向の中央側に湾曲させることで、縫製部96とともに倒れ込んだ延設部99,99により、折り畳んだエアバッグ10の展開側の外縁部を覆うので、このエアバッグ10をより確実に保持できる。
【0090】
なお、上記の第4の実施の形態において、側面部56は、一対の基布91,91によって形成したが、3以上の複数の基布の側面部構成部の両端部を互いに接合して筒状に形成してもよい。
【0091】
同様に、側面部構成部93は、各基布91にそれぞれ設定したが、例えば一対の側面部構成部93,93を上面部55で互いに連結するように形成することで、側面部56を1枚の基布によって構成することも可能になる。
【0092】
また、上面部55は、円筒状の側面部56の直径方向に沿う一直線状に形成されたが、例えば放射状に形成することもできるし、その他、円形状などに形成することもできる。
【0093】
さらに、破断部52は、スリット以外でも、例えば縫製などによって形成することもできる。
【0094】
また、延設部99,99は必須の構成ではなく、側面部56の上端部56aとなる側面部構成部93の上縁部を略直線状に形成することもできる。このように構成することで、基布から側面部構成部93(側面部56)を裁断する際の歩留まりが良好になる。さらにこのとき、中央延設部94や接合受部95、すなわち上面部55を、例えば側面部構成部93(側面部56)と一体の基布とせずに別体の基布により構成することで、上面部55や側面部56の裁断時の歩留まりをより向上できる。
【0095】
そして、上記の各実施の形態において、ステアリングホイールに備えられたエアバッグ装置11として説明したが、助手席のインストルメントパネル部に備えられたエアバッグ装置、あるいは後部座席に備えられる後部座席用のエアバッグ装置など、乗員の正面にエアバッグ10が展開する他のエアバッグ装置にも適用できる。