(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、
図1〜9を参照して説明する。なお、各図に示されるシート体Cや部材K等については、見え易さや説明の便宜のために厚み寸法等を誇張して示している。
【0020】
包装体Hは、
図6〜9に示すように、内部に物品Nを収容し得る物品収容空間spが形成された包装体本体H1と、この包装体本体H1の物品収容空間spを臨む内面側に配されたシート体Cとを備えてなるものである。
【0021】
包装体本体H1は、一端部に被包装体である物品Nを物品収容空間spに挿入し得る開口部mを有した紙製のものである。この実施形態では、包装体本体H1は、郵便物として適用される封筒の形状をなしている。換言すれば、包装体本体H1は、表表紙Haと裏表紙Hbとを主体に構成されており、前記表表紙Haと裏表紙Hbとの間に物品Nを物品収容空間spに挿入し得る開口部mが形成された封筒の形状をなしている。
【0022】
包装体本体H1は、表表紙Haと裏表紙Hbとを備えている。表表紙Haは、略矩形状をなし閉じている側の部位を形成する底部たる本体部Ha1と、この本体部Ha1の上端に連続して延びる「ベロ」とも称される片状の頭部Ha2とを備えている。裏表紙Hbは、矩形状をなし閉じている側の部位を構成する底部たる本体部Hb1を備えている。表表紙Haの本体部Ha1の上端縁及び裏表紙Hbの本体部Hb1の上端縁とによって、物品Nが通過し得る環状に連続した開口部mが形成されている。
【0023】
包装体本体H1における表表紙Haの内面側及び裏表紙Hbの内面側にそれぞれシート体C(1)、C(2)が配されている。この実施形態では、包装体本体H1の内部に、第一のシート体C(1)と第二のシート体C(2)を配置している。具体的には、包装体本体H1における表表紙Haの内面側に第一のシート体C(1)が添接し得る態様(表表紙Haに重なるような態様)で配されており、包装体本体H1における裏表紙Hbの内面側に第二のシート体(2)が添接し得る態様(裏表紙Hbに重なるような態様)で配されている。
【0024】
なお、第一のシート体C(1)の下端部は、接着手段たる接着剤層hを介して表表紙Haにおける下端部の内面に止着されており、第二のシート体C(2)の下端部は、接着手段たる接着剤層hを介して裏表紙Hbにおける下端部の内面に止着されている。
【0025】
この実施形態におけるシート体Cは、後述する通り、第一のシート部材たるフィルム1が所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより収縮し得るものとなっている。
【0026】
包装体本体H1内に配される第一のシート体C(1)は、その最外面を構成する第一のフィルム1が、表表紙Ha側を向くように配されている。包装体本体H1内に配される第二のシート体C(2)は、その最外面を構成する第一のフィルム1が、裏表紙Hb側を向くように配されている。
【0027】
次に、この実施形態において適用されているシート体Cについて、以下説明する。
【0028】
シート体Cは、物品N等の包装に用いられるとともに物品N等に対する緩衝機能を提供し得るものとなっている。すなわち、このシート体Cは、詳しくは後述するように、加熱手段(図示せず)によって所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより、緩衝用の部材Kに変形し得るものとなっている。ここで、
図6〜9に示す第一のシート体C(1)と第二のシート体C(2)は同じ構成のものであるので、単に「シート体C」として説明する場合がある。
【0029】
シート体Cは、第一のシート部材たる第一のフィルム1と、この第一のフィルム1に対して層をなすように配された第二のシート部材たる第二のフィルム2と、前記第一のフィルム1と第二のフィルム2との間に配された単数(一枚)の中間のシート部材たる中間のフィルム3とを備えている。第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3は、それぞれ、合成樹脂により製造されている。
【0030】
この実施形態では、第一のフィルム1、第二のフィルム2、中間のフィルム3の内、第一のフィルム1が、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより収縮し得るものであり、その他のフィルムすなわち第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3がそれぞれ前記第一のフィルム1とは所定の収縮惹起温度に対する熱収縮特性が異なるものとなっている。
【0031】
第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とは、溶着手段Mを用いて接着領域4において相互に接合されている。複数の前記接着領域4間の非接着領域5には、空気aが流通可能な連通路6が形成されている。
【0032】
図3、及び、
図4に示すように、シート体Cを構成する第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3が、平面視において帯状又は線状をなす接着領域4において相互に接合されている。シート体Cは、各フィルム1、2、3に、後述する接着工程S2を経て、略等しい間隔に並んで形成された複数の接着領域4によって、平面視においてストライプ状の模様が形成されている。
【0033】
以下、各フィルム1、2、3について詳述する。
【0034】
第一のフィルム1は、種々の加熱手段(図示せず)により所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより収縮し得るものである。この実施形態では、第一のフィルム1は、加熱手段により所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより主として一軸方向に収縮し得るようになっている。
【0035】
より具体的に言えば、第一のフィルム1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)により作られたものであり、厚み寸法が9〜30μmに設定された、東洋紡株式会社製のものが用いられている。第一のフィルム1の収縮惹起温度は60°〜100°に設定されており、加熱手段により収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより主として一軸方向すなわちシート流れ方向Fと略同じ方向に40〜60%収縮し得るものとなっている。
【0036】
第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3は、第一のフィルム1の収縮が惹起される収縮惹起温度では、前記第一のフィルム1よりも収縮しない、或いは、第一のフィルム1よりも収縮度合いが低いものとなっている。
【0037】
より具体的に言えば、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3は、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)やリニアポリエチレン(L−LDPE)により作られたものであり、厚み寸法が30〜100μmに設定された、東洋紡株式会社製のものが用いられている。
【0038】
続いて、接着領域4、溶着手段M、非接着領域5、連通路6等について詳述する。
【0039】
接着領域4は、溶着手段Mにより形成されている。第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3には、溶着手段Mを有した接着工程S2を経て、複数箇所に線状又は帯状をなす接着領域4が形成されたものとなっている。
【0040】
接着領域4は、平面視において幅寸法が3mm〜5mmに設定されており、より好ましくは5mmに設定されている。また、隣接する接着領域4間に形成される非接着領域5は、約8mmに設定されている。
【0041】
なお、接着領域4は、他の部位と異なり、複数のシート部材が相互に連結した状態で固定化している。このため、接着領域4は、他の部位と比べて伸張しにくい部位となっている。したがって、当該接着領域4に相当する部位は、手指等を用いて引き裂きやすく構成されたものとなっている。
【0042】
この実施形態に示されるシート体Cを製造するための接着工程S2を担う溶着手段Mは次のとおりである。
【0043】
溶着手段Mは、
図1及び
図2に示すように、外方に向かって突出した溶接用の凸部11が間隔をあけて複数配された加熱ロールP1と、この加熱ロールP1と協働して前記第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とを挟む押さえロールP2とを主体に構成されている。加熱ロールP1の凸部11はシート流れ方向Fと略直交する方向(すなわち加熱ロールP1の回転方向と略直交する方向)に延びている。加熱ロールP1の凸部11は、温度調整手段(図示せず)によって、各フィルム1、2、3同士を熱溶着し得る温度に適宜設定され得るものとなっている。押さえロールP2は、加熱ロールP1と協働して重ね合わされた各フィルム1、2、3同士を熱溶着するためのものであり、この実施形態では、一定の弾性反発力を有した紙製のロール本体を主体に構成されたものとなっている。
【0044】
加熱ロールP1と押さえロールP2との間を通過した各フィルム1、2、3は、凸部11の先端が接する箇所において厚み方向に挟圧され、熱溶着により相互に接合される。そして、一定間隔で間欠的に設けられた凸部11に対応して、各フィルム1、2、3には、熱溶着により形成された接着領域4が一定間隔で間欠的に形成されている。
【0045】
複数の接着領域4間にそれぞれ形成される各非接着領域5は、第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とが熱溶着により接着されていない部位である。非接着領域5は、各フィルム1、2、3間に空気aが流通し得る連通路6を形成している。各連通路6の両端は、第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3の側端縁においてそれぞれ外部に開放されている。
【0046】
次いで、
図1及び
図2を参照して、このシート体Cを製造するための製造方法を概略的に説明する。
【0047】
このシート体Cは、繰出工程S1と、接着工程S2とを経て連続的に製造されるものである。接着工程S2を終了したシート体Cは、巻取工程S3において、芯材Jに巻き取られ、芯材Jにシート体Cが巻回された状態のシートロールRとして出荷される。
【0048】
繰出工程S1は、第一の原反Xから第一のフィルム1を順次繰り出し、第二の原反Yから第二のフィルム2を順次繰り出し、且つ、他の原反すなわち第三の原反Zから前記第一のフィルム1と第二のフィルム2との間に配される中間のフィルム3を順次繰り出すことを主とする工程である。
【0049】
接着工程S2は、第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とを、面方向に溶着手段Mを用いて相互に接合することを主とする工程である。接着工程S2を担う溶着手段Mは、外方に向かって突出した溶接用の凸部11が間隔をあけて複数配された加熱ロールP1と、この加熱ロールP1と協働して第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とを挟む押さえロールP2とを主体に構成されている。加熱ロールP1の凸部11は、第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とを熱溶着し得る温度に設定されている。原反Xから繰り出された第一のフィルム1、原反Yから繰り出された第二のフィルム2、及び、原反Zから繰り出された第三のフィルム3とを溶着手段Mたる加熱ロールP1、及び、押さえロールP2により挟圧することにより、各フィルム1、2、3同士が所定の位置において熱溶着されることになる。接着領域4を形成するための接着工程S2では、各フィルム1、2、3同士の熱溶着は部分的(スポット的)に短時間に行われることになる。このため、例えば、接着工程S2における溶着手段Mに伴う周囲の熱等の影響を受けて、第一のフィルム1の非接着領域5に対応する部分が収縮惹起温度に達するまで加熱されてしまうようなことは抑制されている。
【0050】
巻取工程S3は、接着工程S2を経て接着領域4において相互に接着された第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3を、図示しない巻取手段により芯材Jに順次巻き取らせるものであり、巻取手段の巻取速度を制御することにより前記各フィルム1、2、3に一定の張力を付与し得るようになっている。シート体Cは、一定の長さが芯材Jに巻き付けられた後に、シートロールRとして出荷される状態になる。
【0051】
以上のようにして作られたシート体Cは、加熱手段により所定の収縮惹起温度にまで加熱される。所定の収縮惹起温度で加熱されると、シート体Cを構成する第一のフィルム1が一定の割合で収縮する一方で、他のフィルムすなわち第二のフィルム2及び中間のフィルム3が殆ど収縮しないか或いは第一のフィルム1と比較して低い収縮度合いで収縮する。この結果、シート体Cは、
図4に示す状態から
図5の例に示すような状態に変形が惹起され、部材Kすなわち、緩衝材、及び/又は、断熱材としての機能を奏し得る形状に変化し得るものとなっている。
【0052】
なお、シート体Cを加熱して部材Kを得るための加熱手段としては、例えば、トンネル状の加熱炉内を通過させて、シート体Cに所定の設定温度の加熱処理を施すものなどがある。加熱手段は、シート体Cを所定の収縮惹起温度まで加熱することができるものであれば、どのようなものであってもよい。種々の加熱手段によりシート体Cを構成する各フィルム1、2、3には、あらかじめ設定された温度が共通的に施されることになる。
【0053】
この実施形態では、シート体Cは、加熱処理を経ると第一のフィルム1が主として一軸方向すなわちシート流れ方向Fに沿って30〜50%程度縮小する一方で、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3は殆ど縮小しないようになっている。その結果、
図5に示すように、第一のフィルム1が熱による収縮を経て平面状態(略フラットな状態)を維持するとともに第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3が、非接着領域5に対応する部位において厚み方向、すなわち、第一のフィルム1と反対の方向に向かって凸をなすように蛇行または湾曲するように撓むものとなり、あたかも気泡シートや段ボールのような立体構造を有した部材Kになる。積層状態で配置されている第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3は、概ね同じ方向に撓むものとなり、これら第二のフィルム2と中間のフィルム3とが協働して、一定の張りや保形性が保持された外方に向けて凸をなす突出部分を複数形成し得るものとなる。
【0054】
シート体Cは、加熱手段により所定の温度に加熱されて、種々の用途に用いられる部材Kに変形し得るものである。
【0055】
以上に詳述した包装体本体H1とシート体Cとを主体に構成された包装体Hの一つの使用例を
図6〜9を参照して説明する。なお、これらの図では、シート体Cの詳細な符号については省略している場合がある。
【0056】
まず、包装体Hと、この包装体H内に収容させるべき物品Nを準備する。
【0057】
この段階では、包装体Hを構成する第一、第二のシート体C(1)、C(2)は加熱手段等により加熱されていない状態である。
【0058】
次いで、包装体Hに物品Nを挿入する。物品Nは、
図8に示すように、包装体本体H1内に配された第一のシート体C(1)と第二のシート体C(2)との間に挿入される。第一、第二のシート体C(1)、C(2)は、加熱前の状態であり比較的凹凸の程度が少ないフラットな形状をなしているため、物品収容空間sp内にスムーズに物品Nを挿入することができるものとなっている。
【0059】
なお、物品Nは、シート体Cの第一のフィルム1が収縮し得る所定の収縮惹起温度を受けて、初期の機能が損なわれないものであればどのようなものであってもよい。物品Nの形状も矩形ブロック状のものに限られないのはもちろんである。
【0060】
しかる後に、物品Nが物品収容空間sp内に収容された状態の包装体Hを、加熱手段により所定の収縮惹起温度に達するまで加熱する。例えば、当該物品Nの入った状態の包装体Hをベルトコンベアに乗せ、加熱用トンネル内を一定時間通過させることにより、第一のフィルム1を収縮させるようにする。第一、第二のシート体C(1)、C(2)における第一のフィルム1が所定の割合で収縮し、各シート体C(1)、C(2)は、
図9に示すように、緩衝材として機能し得る第一の部材K(1)、第二の部材K(2)に変化する。
【0061】
このとき、各シート体C(1)、C(2)は、物品Nの前後面Nf、Nbに略添接した状態において一定時間加熱されることになる。加熱後に変化して得られた部材K(1)、(2)は、第一のフィルム1の収縮に伴って、物品Nの上端面N1、下端面N2、及び、側端面N3に加熱前よりも接近するように変形が惹起される。そして、
図9に示すように、各シート体C(1)、C(2)を加熱して得られた部材K(1)、K(2)は、物品Nの略全体にまとわるような態様に変形した状態で固定されることとなる。
【0062】
第一のシート体C(1)の下端部は、接着手段たる接着剤層hを介して表表紙Haにおける下端部の内面に止着されており、第二のシート体C(2)の下端部は、接着手段たる接着剤層hを介して裏表紙Hbにおける下端部の内面に止着されている。このため、加熱前に開口部mよりも外側に延出していた各シート体C(1)、C(2)は、加熱されることによって、表表紙Ha及び裏表紙Hbの下端部を足場として、全体が物品収容空間sp内に収まる方向に収縮していく。この実施形態では、部材Kに変化した段階では、部材K全体が、物品収容空間sp内に収まるようになっている。
【0063】
包装体本体H1内に配される第一のシート体C(1)は、最外面を構成する第一のフィルム1が、表表紙Ha側を向くように配されている。包装体本体H1内に配される第二のシート体C(2)は、最外面を構成する第一のフィルム1が、裏表紙Hb側を向くように配されている。このため、積層状態で配置されている第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3は、概ね同じ方向すなわち物品N方向(物品収容空間sp方向)に向かって凸をなすように撓むものとなる。しかして、これら第二のフィルム2と中間のフィルム3とによって形成された突出部分又は撓み部分が、物品Nに接することになり、当該物品に対して一定の緩衝機能を提供するものとなる。
【0064】
以上、詳述したように本実施形態に係る包装体Hは、内部に物品Nを収容し得る物品収容空間spが形成された包装体本体H1と、この包装体本体H1の前記物品収容空間spを臨む内面に配されたシート体Cとを備えてなる。そして、シート体Cが、第一のシート部材たるフィルム1と、この第一のフィルム1に対して層をなすように配された第二のシート部材たるフィルム2と、これら第一、第二のフィルム1、2間に配された中間のシート部材たるフィルム3を備えている。そして、第一のフィルム1が、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより収縮し得るものであり、第二のフィルム2及び中間のフィルム3が前記所定の収縮惹起温度では殆ど収縮しないものとなっている。これら第一のフィルム1、第二のフィルム2、及び、中間のフィルム3とは、接着領域4において相互に接合されており、複数の前記接着領域4間の非接着領域5において空気が流通可能な連通路6が形成されている。このため、物品Nを内部に入れやすくしかも、一定の緩衝作用を発揮し得る包装体Hを提供することができるものとなっている。つまり、加熱される前の状態では、シート体Cは、比較的フラットな形状をなしているため、当該シート体Cが配された包装体本体H1の中に物品Nをスムーズに挿入することができるものとなる。しかも、物品Nを挿入後に第一のフィルム1が所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより収縮させると、シート体Cが緩衝機能を有した部材Kに変化するため包装体本体H1の内部において、物品Nを衝撃から好適に保護し得るものとなる。さらに、物品Nに添接した状態でシート体Cを構成する第一のフィルム1が所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されて収縮するため、物品Nの形状に好適に追従するものとなり、包装体本体H1内で物品Nを好適に保持するような形状をとり得るものとなっている。
【0065】
包装体本体H1が、一端部に前記物品Nを前記物品収容空間spに挿入し得る開口部mを有した封筒の形状をなしているものである。このため、持ち運びや郵便による発送を行うにあたり、物品Nを好適に保持し得るものとなっている。
【0066】
包装体本体Hにおける表表紙Haの内面側及び裏表紙Hbの内面側にそれぞれ前記シート体C(1)、C(2)を配しているため、物品収容空間sp内に挿入された物品Nを各シート体C(1)、C(2)によって、好適に保持し得るものとなっている。
【0067】
前記シート体Cにおける前記第一のフィルム1が、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより主として一軸方向に収縮し得るものであるため包装体本体H1へのシート体Cの装着が行い易いものとなっている。つまり、所定の収縮惹起温度に達するまでシート体Cが加熱されても、当該シート体Cの幅寸法は大きく変化することがないことを事前に予測できるため、適宜の大きさのシート体Cを包装体本体H1内に装着し易いものとなる。換言すれば、シート体Cが主として一軸方向に収縮し得るものであるため、所定の収縮惹起温度に達するための加熱処理を経た後の形状を想定し易いものとなり、設計の自由度に優れたものとなる。
【0068】
しかも、シート体Cが加熱される前の状態では、シート体Cの上端部が、包装体本体H1の開口部mよりも外部に延出しているように構成されているため、シート体Cにおける外部に延出した部分を利用して物品Nを包装体本体H1内に好適に挿入することができるものとなっている。
【0069】
前記物品収容空間spに前記物品Nが収容された後に、前記包装体本体H1及びシート体Cがそれぞれ前記所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより、前記第一のフィルム1が収縮し得るように構成されている。つまり、物品Nを包装体本体H1内に挿入した後に、物品Nを内包した状態の包装体H全体を加熱手段により加熱することによって包装体本体H1内において物品Nを好適に緩衝作用の生じた状態で包装することができるという、従来には無い方式による画期的な物品Nの包装を行うことができるようになっている。
【0070】
前記シート部材たるフィルム1、2、3が、合成樹脂製のものであるため、溶着手段によって各フィルム同士を熱溶着することにより、シート体Cを製造することができるものとなっている。
【0071】
各フィルム1、2、3同士が溶着手段Mを用いて接着領域4において相互に接合されたものとなっているため、比較的容易に、二枚以上の複数枚のフィルム1、2、3同士を、所定の接着領域4において相互に接合することができるものとなっている。
【0072】
接着領域4が、帯状又は線状のものであり、隣接する複数の前記接着領域4によって、各シート部材1、2、3にストライプ状の模様が形成されている。このため、所定の収縮惹起温度に達するための加熱処理を経た後に全体として安定した形状の緩衝材や断熱材として機能し得る部材Kを提供することができるものとなる。
【0073】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0075】
シート体は、種々の構造のものを適用することができ、上述した実施形態のものに限定されるものではない。
【0076】
接着領域は、溶着手段を用いて溶着するものには限定されるものではない。例えば、接着剤を介して各シート部材同士を接合することによって、接着領域を形成するようにしてもよい。
【0077】
包装体本体の内部に配されたシート体は、上述したような二枚のものに限定されない。すなわち、包装体本体の内部には、シート体を一枚だけ配してもよいし、三枚以上の複数枚配してもよい。
【0078】
シート体を構成する複数のシート部材は、シートと比べて小さな厚み寸法を有したフィルムを適用したものであってもよいし、フィルムと比べて大きな厚み寸法を有したシートを適用したものであってもよい。すなわち、シート体は、一のシート部材の所定の熱を受けた場合の収縮特性と、他のシート部材の所定の熱を受けた場合の収縮特性とが異なるものとなっていればよく、フィルムを適用したものに限定されるものではない。なお、「フィルム」とは、厚み寸法が250μm未満のものをいい、「シート」とは、厚み寸法が250μm以上のものをいう。「シート部材」とは、これらフィルム及びシートを包含する概念のものである。なお、「シート体」とは、「シート」とは異なる概念である。
【0079】
シート体は、上述した実施形態に示すような三枚(三層)のシート部材から構成されたものに限定されるものではない。すなわち、シート体は、二枚のシート部材から構成されたものでもよいし、四枚以上の複数のシート部材から構成されたものとしてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、前記第一のシート部材が、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより主として一軸方向に収縮し得るものを示したが、このようなものには限定されず、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより二軸方向に収縮し得るものであってもよい。
【0081】
上述した実施形態では、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより主として第一のシート部材が収縮し得るシート体について説明したが、第一のシート部材とは異なる他のシート部材が主として収縮し得るものであってもよい。例えば、シート体が、第一のシート部材と、この第一のシート部材に対して層をなすように配された第二のシート部材と、前記第一のシート部材と第二のシート部材との間に配された単数又は複数の中間のシート部材とを備えてなり、前記中間のシート部材が、所定の収縮惹起温度に達するまで加熱されることにより収縮し得るものであり、他のシート部材が前記中間のシート部材と熱収縮特性が異なるもの(例えば、中間のシート部材よりも収縮しないもの)であり、これら第一のシート部材、第二のシート部材、及び、中間のシート部材とが、接着領域において相互に接合されたものであり、前記接着領域間の非接着領域において空気が流通可能な連通路が形成されているものであってもよい。中間のシート部材が複数である場合は、その内、少なくとも1枚のシート部材が収縮し得るものであればよい。
【0082】
上述した実施形態では、接着領域が線状又は帯状のものであり、この接着領域がシート流れ方向に対して略直交する方向に延びているものを示しているが、このような態様のものには限定されるものではない。つまり、接着領域の形状や複数の接着領域により形成される模様は、種々のものを適用することができ、本実施形態に示されるものには限定されるものではない。換言すれば、接着領域は、必ずしもパターン化されている必要はなく、不規則なものであってもよい。接着領域は、非接着領域に対して、外部からの空気の流通が可能な態様で設けられるものであればどのような形状であってもよい。
【0083】
接着領域は、線状又は帯状をなすものには限定されるものではない。例えば、接着領域を、塊状のものとし、これらを複数設けることにより、連通路が、形成されるものとしてもよい。
【0084】
シート部材は、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば、適宜の構成のものを採用することができる。例えば、第一、第二のシート部材を、不織布、アルミシート等の金属シート、又は、紙を有したものとしてもよい。より具体的に言えば、第一、第二のシート部材を、不織布、アルミシート等の金属シート、或いは、紙等により構成された基礎シートに対して、フィルムを接着剤等を介して貼着することにより構成したものであってもよい。
【0085】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。