特許第6647075号(P6647075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647075合金材料、コンタクトプローブおよび接続端子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647075
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】合金材料、コンタクトプローブおよび接続端子
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/04 20060101AFI20200203BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20200203BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20200203BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20200203BHJP
   C22C 30/06 20060101ALI20200203BHJP
   H01R 13/24 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   C22C5/04
   G01R1/067 C
   G01R1/073 D
   G01R31/26 J
   C22C30/06
   H01R13/24
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-30421(P2016-30421)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-145496(P2017-145496A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593021459
【氏名又は名称】YAMAKIN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊男
(72)【発明者】
【氏名】谷 幸央
(72)【発明者】
【氏名】相馬 一也
(72)【発明者】
【氏名】荘司 哲
(72)【発明者】
【氏名】安楽 照男
(72)【発明者】
【氏名】相ノ谷 正之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智大
(72)【発明者】
【氏名】豊武 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 一志
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2014/021465(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2014/049874(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2013/099682(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2012/077378(JP,A1)
【文献】 特開2003−014779(JP,A)
【文献】 特許第4889183(JP,B2)
【文献】 米国特許第04917861(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/04
C22C 30/06
G01R 1/067
G01R 1/073
G01R 31/26
H01R 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)の3元合金の組成領域において、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%を占め、Ag、PdおよびCuの重量比の和が100wt%となる組成と、
前記組成に対して添加される添加物と、
からなる合金材料であって、
前記添加物は、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)から選択され、
前記金(Au)および前記白金(Pt)は、一方若しくはこれらの組み合わせとして当該合金材料の組成領域において5〜25wt%の範囲で添加され
前記スズ(Sn)は、当該合金材料の組成領域において0.5〜2.5wt%の範囲で添加され
前記コバルト(Co)、前記クロム(Cr)および前記亜鉛(Zn)は、いずれか1つ若しくはこれらの組み合わせとして当該合金材料の組成領域において0.1〜1.0wt%の範囲で添加され
前記イリジウム(Ir)および前記ルテニウム(Ru)は、一方若しくはこれらの組み合わせとして当該合金材料の組成領域において0.01〜0.1wt%添加され
ことを特徴とする合金材料。
【請求項2】
長手方向の両端で接触対象とそれぞれ接触する導電性のコンタクトプローブであって、
少なくとも一部が、請求項に記載の合金材料を用いて形成されたことを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項3】
一端で一方の接触対象と接触する導電性の第1プランジャと、
一端で他方の接触対象と接触する導電性の第2プランジャと、
前記第1および第2プランジャの間に設けられて該第1および第2プランジャを伸縮自在に連結するコイルばねと、を有し、
前記第1プランジャ、前記第2プランジャおよび前記コイルばねのうち、少なくとも一つが前記合金材料からなることを特徴とする請求項に記載のコンタクトプローブ。
【請求項4】
長手方向の両端で接触対象とそれぞれ接触する導電性の接続端子であって、
少なくとも一部が、請求項に記載の合金材料を用いて形成されたことを特徴とする接続端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、合金材料に関するものであって、この合金材料からなり、半導体集積回路や液晶パネルなどの検査対象の導通状態検査または動作特性検査に用いられるコンタクトプローブや、電気接点同士を接続する接続端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路や液晶パネル(液晶表示装置)などの検査対象の導通状態検査や動作特性検査を行う際には、検査対象と検査用信号を出力する回路基板を有する信号処理装置との間の電気的な接続を図る導電性のコンタクトプローブが用いられる。正確な導通状態検査や動作特性検査を行うため、コンタクトプローブを介した検査用信号の入出力を確実に行うことが求められている。
【0003】
コンタクトプローブは、半導体集積回路や液晶パネルなどの検査対象物に繰り返し接触させて使用する。繰り返しの使用によってコンタクトプローブが酸化すると、検査結果に影響を及ぼす。このため、コンタクトプローブに用いられる材料には、高い導電性や耐食性、良好な耐酸化性が要求される。また、繰り返しの検査によって検査対象物との接触を行ってもコンタクトプローブ自体の磨耗を抑制させるために、磨耗しにくい高硬度の特性を有することが重要となる。
【0004】
従来、磨耗しにくい高硬度の材料として、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)を主成分とする合金が知られている。しかしながら、半導体集積回路や液晶表示装置などの高密度化にともない、検査で用いるコンタクトプローブも微細な形状が要求される傾向にある。そのため、導通時のコンタクトプローブ表面の影響がより顕著になり、上記の合金では耐酸化性が不十分で、繰り返し接触により抵抗値上昇が見られる場合があった。
【0005】
接触抵抗を安定させるため、例えば、コンタクトプローブピンの先端部に、炭素被膜をコーティングしたり、炭素イオンを注入して表面改質したりする技術などが提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−289874号
【特許文献2】特開2003−149267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術では、検査対象との繰り返し接触によって被膜が剥がれ落ちたり、磨耗により改質部分が損傷したりして、安定性が得られない場合がある。そのため、より安定性の高い材料でのコンタクトプローブピン作製が望まれている。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、導電性・耐酸化性に優れるとともに、高硬度でかつ圧延性および切削加工性に優れた合金材料、この合金材料からなるコンタクトプローブおよび接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる合金材料は、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)の3元合金の組成領域において、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%を占める組成とし、該組成を基本として、金(Au)および白金(Pt)の1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加し、スズ(Sn)を0.5〜2.5wt%の範囲で添加し、コバルト(Co)、クロム(Cr)および亜鉛(Zn)の1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)の1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加してなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる合金材料は、上記の発明において、加熱により時効処理させたビッカース硬さが、480〜560であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるコンタクトプローブは、長手方向の両端で接触対象とそれぞれ接触する導電性のコンタクトプローブであって、少なくとも一部が、上記の発明にかかる合金材料を用いて形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるコンタクトプローブは、上記の発明において、一端で一方の接触対象と接触する導電性の第1プランジャと、一端で他方の接触対象と接触する導電性の第2プランジャと、前記第1および第2プランジャの間に設けられて該第1および第2プランジャを伸縮自在に連結するコイルばねと、を有し、前記第1プランジャ、前記第2プランジャおよび前記コイルばねのうち、少なくとも一つが前記合金材料からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる接続端子は、長手方向の両端で接触対象とそれぞれ接触する導電性の接続端子であって、少なくとも一部が、上記の発明にかかる合金材料を用いて形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Ag、Pd、Cuの3元合金の組成領域において、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%を占める組成とし、該組成を基本として、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加、Snを0.5〜2.5wt%の範囲で添加、Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、さらにIrおよびRuの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加されるようにしたので、導電性・耐酸化性に優れるとともに、コンタクトプローブや接続端子用として高硬度でかつ圧延性および切削加工性に優れた合金材料を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態の合金材料の一使用態様にかかるソケットの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の合金材料の一使用態様にかかるソケットの要部の構成を示す部分断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の合金材料の一使用態様にかかるソケットの半導体集積回路の検査時におけるソケットの要部の構成を示す部分断面図である。
図4図4は、実施例10と比較例2のコンタクトテスト後のEPMA分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0017】
本発明の実施の形態にかかる合金材料について説明する。本実施の形態にかかる合金材料は、銀(Ag)−パラジウム(Pd)−銅(Cu)の3元合金を含む。本実施の形態にかかるAg−Pd−Cuの3元合金は、20wt%Ag−40wt%Pd−40wt%Cu、30wt%Ag−35wt%Pd−35wt%Cu、20wt%Ag−55wt%Pd−25wt%Cu、30wt%Ag−50wt%Pd−20wt%Cuの領域内において形成される合金である。換言すれば、本実施の形態にかかるAg−Pd−Cuの3元合金は、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%となる合金である。このような重量比割合の合金組成であると、銀リッチ相のα2(Ag)、PdCuのβの2相を出現させるスピノーダル分解を時効処理で起こすことになり、他の出現相を出来るだけ混在させないためにも好ましい。これらの理由からも、2相の出現相により硬さの向上を満足するためにAg−Pd−Cuの3元合金の組成域を限定する必要がある。
【0018】
Ag−Pd−Cu合金は、高温域においてAg、Pd、Cuがお互いに溶け合うことによって、面心立方格子(FCC:Face‐Centered Cubic)の相を形成する。ここで、AgとPdとは、高温域も低温域もお互いに溶け合う性質がある。また、PdとCuとは、高温域では溶け合って、低温域で化合物相であるβ相を形成することで硬化に関与するが、この場合、ビッカース硬さは、せいぜい250程度である。AgとCuとは、銅リッチ相α1(Cu)とα2(Ag)とに分離する性質がある。この3元合金の特定な組成域では、様々な相が出現することから十分な硬さが得られないことが多い。
【0019】
例えば、25wt%Ag−30wt%Pd−45wt%Cuの組成では、時効処理すると、2相のα1(Cu)、α2(Ag)が出現する。また、25wt%Ag−60wt%Pd−15wt%Cuの組成では、α2(Ag)、パラジウムリッチ相のα2(Pd)、βの3相が出現する。これら出現相は、ビッカース硬さに影響を及ぼし、特にα1(Cu)やα2(Pd)の出現量が多くなると、時効処理後におけるビッカース硬さの向上が得られにくい。
【0020】
ここで、Pdの重量比割合が低く、Cuの重量比割合が多い一部の組成領域では、α1(Cu)の出現はあるがわずかな出現量となるため硬さに大きく影響しない。さらに最大限のビッカース硬さの向上を得るため、本実施の形態にかかる合金材料のAg−Pd−Cuの3元合金の組成領域内において、22wt%Ag−43wt%Pd−35wt%Cu、28wt%Ag−40wt%Pd−32wt%Cu、22wt%Ag−50wt%Pd−28wt%Cu、28wt%Ag−47wt%Pd−25wt%Cuの領域内であることが好ましい。
【0021】
さらに本実施の形態にかかる合金材料には、上述したAg−Pd−Cuの3元合金の組成域内の組成を基本として金(Au)および白金(Pt)の1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加する。これにより、時効処理後のビッカース硬さを低下させずに、耐酸化性を向上させることができる。
【0022】
また、上述した組成の合金材料に対して、スズ(Sn)を0.5〜2.5wt%の範囲で添加し、さらにコバルト(Co)、クロム(Cr)および亜鉛(Zn)の1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加する。これにより、時効処理後のビッカース硬さを480〜560に上昇させることができる。
【0023】
また、上述した組成の合金材料に対して、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)の1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%さらに添加することによって、ビッカース硬さが480〜560であって、圧延性が良好な合金材料を得ることができる。
【0024】
上述した実施の形態によれば、Ag、Pd、Cuの3元合金の組成領域において、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%を占める組成とし、該組成を基本として、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加、Snを0.5〜2.5wt%の範囲で添加、Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、IrおよびRuの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加するようにしたので、導電性・耐酸化性に優れているとともに、コンタクトプローブ用として高硬度でかつ圧延性および切削加工性に優れた合金材料を得ることができる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、Ag、Pd、Cuを基本としたAg−Pd−Cuの3元合金において、この3元合金に対して半導体検査装置用のコンタクトプローブとしてビッカース硬さや導電性を確保するための添加金属を見出すことができた。
【0026】
Ag−Pd−Cuの3元合金は、組成領域において相変態の違いにより時効硬化に差が見られるが、本実施の形態にかかる合金材料によれば、組成領域においてAgが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%の領域内を占める組成で最大の硬化作用を有する組成バランスを図っている。
【0027】
ここで、PdとCuは化合物相を生成して硬化するが、最大のビッカース硬さでも250程度が限界である。これに対し、Agを適量に含有すると時効硬化によりα2(Ag)とβ相を最大限に微細分離させることが可能となる。この結果として、ビッカース硬さを増大させることができる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、重量比割合が、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%からなるAg−Pd−Cuの3元合金を基本として、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加、Snを0.5〜2.5wt%の範囲で添加、Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、IrおよびRuの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加することにより、時効処理した時効材のビッカース硬さが480〜560となるため、合金材料として耐摩耗性が向上し、半導体検査装置の材料に好適となる。
【0029】
また、本実施の形態によれば、AgやCuは比抵抗を減少させる傾向があり、Pdは比抵抗を増大させる傾向がある。すなわち、本実施の形態にかかる合金材料は、高硬度の特性を確保しつつ導電性を有する組成バランスを図っている。
【0030】
本実施の形態の合金材料に関わる割合は、高硬度を満足するものとして、20wt%Ag−40wt%Pd−40wt%Cu、30wt%Ag−35wt%Pd−35wt%Cu、20wt%Ag−55wt%Pd−25wt%Cu、30wt%Ag−50wt%Pd−20wt%Cuの領域内のAg−Pd−Cuの3元合金を基本として、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加、Snを0.5〜2.5wt%の範囲で添加、Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、IrおよびRuの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加することにより、時効処理したビッカース硬さが480〜560に達する。このAg−Pd−Cuの3元合金の領域外の組成に添加を行っても、硬さの向上は得られにくい。
【0031】
本実施の形態にかかる合金材料は、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加できる。これらの添加金属は、耐酸化性の向上に有用である。AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせの添加量は、5wt%未満の場合には、耐酸化性の向上が小さい。一方で、25wt%を超える場合には、硬さが低下する。したがって、5〜25wt%の範囲が適量である。
【0032】
本実施の形態にかかる合金材料は、さらにSnを0.5〜2.5wt%の範囲で添加できる。Sn添加量が0.5wt%未満の場合には、硬さの向上が小さい。一方で、Sn添加量が2.5wt%を超える場合には、圧延性が劣化する。したがって、Snは0.5〜2.5wt%の範囲で添加されることが好適である。
【0033】
本実施の形態にかかる合金材料は、さらにCo、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加できる。これらの添加金属は、切削加工性に有用である。Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせの添加量は、0.1wt%未満の場合には、切削加工性の向上が小さい。一方で、1.0wt%を超える場合には、圧延性が劣化する。したがって、0.1〜1.0wt%の範囲が適量である。
【0034】
本実施の形態にかかる合金材料は、さらにIrおよびRuのいずれか1つまたはそれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加できる。これらの添加金属は、加工性に有用であり、添加しないものと比べて圧延加工時に合金表面の細かな割れが減少して加工性が改善される。IrおよびRuの1つ若しくはこれらの組み合わせの添加量は、0.1wt%超えても効果は変わらないため、0.01〜0.1wt%が適量である。Ir、Ruは、結晶粒を微細化させる作用があり、結晶粒が小さいと圧延加工時に粒界割れを起こしにくいからである。
【0035】
ビッカース硬さは、鋳造したものを溶体化処理し、加熱することで時効硬化を発揮する。
【0036】
次に、本実施の形態にかかる合金材料をコンタクトプローブとして使用する場合について説明する。図1は、本発明の実施の形態の合金材料の一使用態様にかかるソケット(コンタクトプローブ)の概略構成を示す斜視図である。図1に示すソケット1は、検査対象物である半導体集積回路100の電気特性検査を行う際に使用する装置であって、半導体集積回路100と半導体集積回路100へ検査用信号を出力する回路基板200との間を電気的に接続する装置である。
【0037】
ソケット1は、長手方向の一方の端部側で被接触体である半導体集積回路100の一つの電極(接触対象)と接触し、他方の端部側で回路基板200の電極(接触対象)とそれぞれ接触する複数のコンタクトプローブ2(以下、単に「プローブ2」という)と、複数のプローブ2を所定のパターンにしたがって収容して保持するプローブホルダ3と、プローブホルダ3の周囲に設けられ、検査の際に複数のプローブ2と接触する半導体集積回路100の位置ずれが生じるのを抑制するホルダ部材4と、を有する。
【0038】
図2は、本実施の形態の合金材料の一使用態様にかかるソケット(コンタクトプローブ)の要部の構成を示す部分断面図であって、プローブホルダ3に収容されるプローブ2の詳細な構成を示す図である。図2に示すプローブ2は、半導体集積回路100の検査を行なうときに、その半導体集積回路100の接続用電極に接触する第1プランジャ21と、検査回路を備えた回路基板200の電極に接触する第2プランジャ22と、第1プランジャ21と第2プランジャ22との間に設けられて第1プランジャ21および第2プランジャ22を伸縮自在に連結するコイルばね23とを備える。プローブ2を構成する第1プランジャ21および第2プランジャ22、ならびにコイルばね23は同一の軸線を有している。プローブ2は、半導体集積回路100をコンタクトさせた際に、コイルばね23が軸線方向に伸縮することによって半導体集積回路100の接続用電極への衝撃を和らげるとともに、半導体集積回路100および回路基板200に荷重を加える。
【0039】
第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23の少なくとも一つは上述した合金材料を用いて形成され、全ての部材がこの合金材料を用いて形成されることが好ましい。また、コイルばね23は、所定荷重が加わったときの粗巻き部23bの縮み量が、初期荷重が加わったときに、例えば、プローブ2がプローブホルダ3に収容された状態(図1参照)における基端部(コイルばね23に収容される側の端部)と密着巻き部23aとの最短距離より大きくなるようなばね特性となるように線材の径や、巻回されてなる径が設計される。このばね特性を有するコイルばね23を用いることによって、プローブ2に所定荷重を加えた場合に基端部22dを密着巻き部23a内に摺接させ、基端部と密着巻き部23aとの間の電気的導通が可能となる。
【0040】
プローブホルダ3は、樹脂、マシナブルセラミックス、シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成され、図2の上面側に位置する第1部材31と下面側に位置する第2部材32とが積層されてなる。第1部材31および第2部材32には、複数のプローブ2を収容するためのホルダ孔33および34が同数ずつ形成され、プローブ2を収容するホルダ孔33および34は、互いの軸線が一致するように形成されている。ホルダ孔33および34の形成位置は、半導体集積回路100の配線パターンに応じて定められる。
【0041】
図3は、本実施の形態の合金材料の一使用態様にかかるソケット(コンタクトプローブ)の、半導体集積回路の検査時におけるソケットの要部の構成を示す部分断面図であって、プローブホルダ3を用いた半導体集積回路100の検査時の状態を示す図である。半導体集積回路100の検査時にコイルばね23が圧縮されると、図3に示すように、第2プランジャ22の基端部は、密着巻き部23aの内周側と摺接する。このとき回路基板200から半導体集積回路100に供給される検査用信号は、電極201から第2プランジャ22、密着巻き部23a、第1プランジャ21を経由して半導体集積回路100の接続用電極101へ到達する。このように、プローブ2では、第1プランジャ21と第2プランジャ22が密着巻き部23aを介して導通するため、電気信号の導通経路を最小にすることができる。したがって、検査時に粗巻き部23bに信号が流れるのを防止し、インダクタンスの低減および安定化を図ることができる。なお、本実施例ではコイルばねが粗巻き部と密着巻き部を有するものとして説明したが、単に粗巻き部のみからなるコイルばねを用いても構わない。
【0042】
また、第1プランジャの先端が先細に形成されているため、接続用電極101の表面に酸化皮膜が形成されている場合であっても酸化皮膜を突き破り、先端を接続用電極101と直接接触させることができる。
【0043】
なお、ここで説明したプローブ2の構成はあくまでも一例に過ぎず、従来知られているさまざまな種類のプローブに上述した合金材料を適用することが可能である。例えば、上述したようなプランジャとコイルばねとで構成されるものに限らず、パイプ部材を備えるプローブ、ポゴピン、またはワイヤを弓状に撓ませて荷重を得るワイヤープローブや、電気接点同士を接続する接続端子(コネクタ)でもよい。
【0044】
ここで、接続端子は、電気接点同士を接続するものであって、例えば、上述したプローブ2のように、各電気接点とそれぞれ接触する導電性の2つの端子と、各端子を摺動可能に保持する弾性部材(または保持部材)と、を備えるものである。このような接続端子では、少なくとも端子が上述した合金材料からなる。
【実施例】
【0045】
以下、この発明の合金材料の実施例および比較例について詳細に説明する。まず、本実施例にかかる合金材料の測定内容について説明する。
【0046】
硬度試験片は、溶体化処理および時効処理を行い作製した。その後、作製した試験片のビッカース硬さ(時効材硬度)を測定した。
【0047】
電気伝導度用の試験片は、溶体化処理および時効処理を行い作製した。その後、作製した試験片の抵抗値を測定し、電気伝導度を求めた。
【0048】
圧延性の評価基準は、破断せずに加工できたものを○、破断して加工ができないものを×とした。
【0049】
切削加工性の評価基準は、ピン形状に加工し、加工寸法公差内であれば○、公差外は×とした。
【0050】
耐久性の評価基準は、150℃の大気中(常圧下)において、ピン形状に加工した試験片にて100万回のコンタクトテストを行い、テスト前後の抵抗値上昇が200%未満であれば○(耐久性あり)、200%以上は×(耐久性なし)とした。具体的に、テスト前の初期抵抗が50mΩであった場合、150mΩ未満であれば○とした。
【0051】
次に、本実施例にかかる合金材料の各金属の重量比割合について説明する。表1は、実施例1〜13および比較例1〜10にかかる合金材料の重量比割合(組成)と測定結果とを示すものである。
【表1】
【0052】
実施例1〜13は、重量比割合が、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%からなるAg−Pd−Cuの3元合金を基本として、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加、Snを0.5〜2.5wt%の範囲で添加、Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、Ir、Ruの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加した組成である。なお、表1では、添加後の組成を示している。
【0053】
比較例1は、重量比割合が、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%からなるAg−Pd−Cuの3元合金である。比較例2〜5はAuおよびPtが本実施の形態にかかる組成域から外れた組成である。比較例6はCo、CrおよびZnが未添加の本実施の形態から外れた組成である。比較例7〜10はSn、Co、CrおよびZnが本実施の形態にかかる組成域から外れた組成である。
【0054】
以下、実施例1〜13および比較例1〜10の測定結果について説明する。実施例1〜13は、重量比割合が、Agが20〜30wt%、Pdが35〜55wt%、Cuが20〜40wt%からなるAg−Pd−Cuの3元合金を基本として、AuおよびPtの1つ若しくはこれらの組み合わせを5〜25wt%の範囲で添加、Snを0.5〜2.5wt%の範囲で添加、Co、CrおよびZnの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.1〜1.0wt%の範囲で添加、Ir、Ruの1つ若しくはこれらの組み合わせを0.01〜0.1wt%添加した組成である。実施例1〜13は、時効処理後のビッカース硬さが480〜560の範囲内にあり、加工性・耐久性も良好であった。この結果により、Au、Pt、Sn、Co、Cr、ZnやIr、Ruを添加しない比較例1と比べて、Au、Pt、Sn、Co、Cr、ZnやIr、Ruの添加が、ビッカース硬さの向上に関与していることが確認された。
【0055】
これに対し、比較例2〜3は、本実施の形態にかかる組成域よりAuおよびPtの添加量が少ない組成であり、硬さの向上は得られた一方で、実施例1〜13に比べ耐久性が劣化した。図4に実施例10と比較例2の100万回コンタクトテスト後の電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)分析結果を示す。本実施例では、図4は、青色に近づくにつれて酸素の濃度が低く、赤色に近づくにつれて酸素の濃度が高くなるような酸素分布濃度を示している。また、図4に示すEPMA分析結果は、実施例10および比較例2にかかる合金材料の表層の分布図を示している。実施例10は比較例2に比べ酸化度合いが小さく、AuおよびPtの添加が、耐酸化性の向上に関与していることが確認された。
【0056】
比較例4〜5は、本実施の形態にかかる組成域よりAuおよびPtを超過して添加した組成であり、実施例1〜13に比べ耐久性が劣化した。硬さが小さく、磨耗量が多くなった事が原因と見られる。
【0057】
比較例6は、本実施の形態にかかる組成に対しCo、CrおよびZnが添加されていない組成であり、硬さの向上は得られた一方で、Co、Cr、Znを添加した実施例1〜13に比べ切削加工性が劣化した。Co、Cr、Znの添加が、切削加工性の向上に関与していることが確認された。
【0058】
比較例7〜10は、本実施の形態にかかる組成域よりSn、Co、CrおよびZnを超過して添加した組成であり、硬さの向上は得られた一方で、実施例1〜13に比べ圧延性が劣化した。
【0059】
また、電気伝導度測定では、上述した実施例1〜13において導電性が良好であることが確認された。
【0060】
以上のように、本発明にかかる合金材料、この合金材料からなるコンタクトプローブおよび接続端子は、導電性、耐酸化性、硬度および加工性の面で、コンタクトプローブ用として有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 ソケット
2 コンタクトプローブ(プローブ)
3 プローブホルダ
4 ホルダ部材
21 第1プランジャ
22 第2プランジャ
23 コイルばね
23a 密着巻き部
23b 粗巻き部
31 第1部材
32 第2部材
33,34 ホルダ孔
100 半導体集積回路
101 接続用電極
200 回路基板
201 電極
図1
図2
図3
図4