特許第6647078号(P6647078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647078画像処理によるワーク欠陥検査方法及びワーク欠陥検査システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647078
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】画像処理によるワーク欠陥検査方法及びワーク欠陥検査システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   G06T1/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-36922(P2016-36922)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-156809(P2017-156809A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】高梨 聖也
(72)【発明者】
【氏名】水川 大輔
【審査官】 ▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−304958(JP,A)
【文献】 特開2001−280936(JP,A)
【文献】 特開2005−265489(JP,A)
【文献】 中西洋輔,工藤賢司,ロッドパッキンの外観検査技術の開発,KYB技報,日本,2015年10月,第51号2015-10,pp.31-37,URL,https://www.kyb.co.jp/technical_report/data/no51j/06_technology_explanation_03.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 − 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のループが結合した形状のワークを撮像した画像から、ワークの画像の外周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記外周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿ってワーク外周部の画像を直線化することによりループ分岐部の座標を取得する処理と、ループ分岐部の座標を始点として各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記各ループの画像を直線化する処理と、直線化された各ループの画像から欠陥部を検出してその良否を判定する欠陥検出処理と、を行うことを特徴とする画像処理によるワーク欠陥検査方法。
【請求項2】
ワークの画像の外周輪郭に対する法線又は各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理が、ワーク画像上の任意の位置座標を法線検出点としてこの法線検出点を通る任意の直線を中心とする所定幅でワーク画像を切り取って前記直線で折り返し、折り返された画像が互いに重合しなければ前記直線の角度を変更して再び折り返し、折り返された画像が互いに重合した場合に、このときの前記直線を法線とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理によるワーク欠陥検査方法。
【請求項3】
ワーク外周部の画像及び各ループ画像を直線化する処理が、外周輪郭に対する法線上又は各ループの内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線上にあって前記特定の点から所定距離離れた位置座標を次の法線検出点として前記法線の検出を繰り返し、前記法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記画像を直線化する処理からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理によるワーク欠陥検査方法。
【請求項4】
複数のループが結合した形状のワークを撮像する撮像装置と、前記撮像装置により取り込まれた画像データを処理する画像処理装置と、画像処理された画像データを取り込んで演算処理を行う演算処理装置と、を備え、前記演算処理装置による演算処理が、ワークの画像の外周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記外周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿ってワーク外周部の画像を直線化することによりループ分岐部の座標を取得する処理と、ループ分岐部の座標を始点として各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記各ループの画像を直線化する処理と、直線化された各ループの画像から欠陥部を検出してその良否を判定する欠陥検出処理と、からなることを特徴とする画像処理によるワーク欠陥検査システム。
【請求項5】
演算処理装置による外周輪郭に対する法線又は各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理が、ワーク画像上の任意の位置座標を法線検出点としてこの法線検出点を通る任意の直線を中心とする所定幅でワーク画像を切り取って前記直線で折り返す処理と、折り返された画像が互いに重合しなければ前記直線の角度を変更して再び折り返す処理と、折り返された画像が互いに重合した場合に、このときの前記直線を法線とする処理と、からなることを特徴とする請求項4に記載の画像処理によるワーク欠陥検査システム。
【請求項6】
演算処理装置によるワーク外周部の画像及び各ループ画像を直線化する処理が、外周輪郭に対する法線上又は各ループの内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線上にあって前記特定の点から所定距離離れた位置座標を次の法線検出点として前記法線の検出を繰り返す処理と、前記法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記画像を直線化する処理と、からなることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像処理によるワーク欠陥検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを撮像した画像を処理してワーク表面の欠陥を検出する欠陥検査方法及びワーク欠陥検査システムであって、特に、複数のループが分岐して延びる部分を有する複雑な形状のワークを検査対象とするものに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象のワークが、例えば自らの重量などによる形状の変化が大きい、長尺で柔軟なゴム成形品であっても、あるいは、ワークに存在する欠陥が、成形不良などによってワークの輪郭の一部又は全部が欠損したものである場合でも、撮像したワーク画像を直線化する画像直線化処理によって欠陥部を検出可能とした欠陥検査方法が知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−304958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術によれば、例えば図24に示すように、欠陥検査対象のワークWが、複数のループL1〜L3が結合した複雑な形状のゴム製ガスケット等のような製品である場合、上記従来の画像処理方法では、ワーク画像の直線化において、ワーク外周部101〜104のみが直線化処理されるので、ループL1〜L3のループ分岐部107〜110から内周側へ延びる内周橋絡部105,106の一部(図24における一点鎖線で囲んで示す領域)が検査範囲から外れてしまい、この領域の欠陥検査ができなかった。
【0005】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、自らの重量などによって形状が変化しやすく、かつ複数のループが結合した複雑な形状のワークについても、画像処理による欠陥検出を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査方法は、複数のループが結合した形状のワークを撮像した画像から、ワークの画像の外周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記外周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿ってワーク外周部の画像を直線化することによりループ分岐部の座標を取得する処理と、ループ分岐部の座標を始点として各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記各ループの画像を直線化する処理と、直線化された各ループの画像から欠陥部を検出してその良否を判定する欠陥検出処理と、を行うものである。
【0007】
また、請求項2の発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査方法は、請求項1に記載された構成において、ワーク画像の外周輪郭に対する法線又は各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理が、ワーク画像上の任意の位置座標を法線検出点としてこの法線検出点を通る任意の直線を中心とする所定幅でワーク画像を切り取って前記直線で折り返し、折り返された画像が互いに重合しなければ前記直線の角度を変更して再び折り返し、折り返された画像が互いに重合した場合に、このときの前記直線を法線とするものである。
【0008】
また、請求項3の発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査方法は、請求項1又は2に記載された構成において、ワーク外周部の画像及び各ループ画像を直線化する処理が、外周輪郭に対する法線上又は各ループの内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線上にあって前記特定の点から所定距離離れた位置座標を次の法線検出点として前記法線の検出を繰り返し、前記法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記画像を直線化する処理からなるものである。
【0009】
また、請求項4の発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査システムは、複数のループが結合した形状のワークを撮像する撮像装置と、前記撮像装置により取り込まれた画像データを処理する画像処理装置と、画像処理された画像データを取り込んで演算処理を行う演算処理装置と、を備え、前記演算処理装置による演算処理が、ワークの画像の外周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記外周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿ってワーク外周部の画像を直線化することによりループ分岐部の座標を取得する処理と、ループ分岐部の座標を始点として各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理と、前記内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記各ループの画像を直線化する処理と、直線化された各ループの画像から欠陥部を検出してその良否を判定する欠陥検出処理と、からなることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項5の発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査システムは、請求項4に記載された構成において、演算処理装置による外周輪郭に対する法線又は各ループの内周輪郭に対する法線を検出する処理が、ワーク画像上の任意の位置座標を法線検出点としてこの法線検出点を通る任意の直線を中心とする所定幅でワーク画像を切り取って前記直線で折り返す処理と、折り返された画像が互いに重合しなければ前記直線の角度を変更して再び折り返す処理と、折り返された画像が互いに重合した場合に、このときの前記直線を法線とする処理と、からなることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項6の発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査システムは、請求項4又は5に記載された構成において、演算処理装置によるワーク外周部の画像及び各ループ画像を直線化する処理が、外周輪郭に対する法線上又は各ループの内周輪郭に対する法線上の特定の点でこの法線と直交する直線上にあって前記特定の点から所定距離離れた位置座標を次の法線検出点として前記法線の検出を繰り返す処理と、前記法線上の特定の点でこの法線と直交する直線に沿って前記画像を直線化する処理と、からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査方法及びワーク欠陥検査システムによれば、自らの重量などによって形状が変化しやすく、かつ複数のループが結合した複雑な形状のワークについても、ワーク画像における各ループの画像を直線化する処理によって、ワークの内周部を含むすべての領域について欠陥検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査システムの好ましい実施の形態を示す概略構成説明図である。
図2】本発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査システムにより検査される検査対象のワークの一例を示す平面図である。
図3図2におけるIII−III断面図である。
図4】本発明による処理の流れの一部を示すフローチャートである。
図5】本発明による処理の流れの他の一部を示すフローチャートである。
図6】本発明によるワーク画像認識処理画面を示す説明図である。
図7】本発明による画素照度サンプリング処理を示す説明図である。
図8】本発明による外周輪郭に対する法線検出処理を示す説明図である。
図9】本発明による中心検出処理を示す説明図である。
図10】本発明による中心検出過程での照度プロファイルの処理を示す説明図である。
図11】本発明による次候補決定処理を示す説明図である。
図12】本発明により直線化処理されたワーク外周部の画像の一部を示す説明図である。
図13】本発明によりワーク外周部の画像を直線化処理した画像と直線化処理前のワーク画像との関係を示す説明図である。
図14】本発明によりワークのループの画像を直線化処理した画像と直線化処理前のワーク画像との関係を示す説明図である。
図15】本発明によりワークのすべてのループの画像を直線化処理した画像と直線化処理前のワーク画像との関係を示す説明図である。
図16】本発明によりワークのループの画像を直線化処理した画像の一部を示す説明図である。
図17】本発明におけるノイズの除去処理を含む欠陥検出処理の流れを示すフローチャートである。
図18図17における平滑化処理の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
図19】Medianフィルタによるフィルタリング処理を模式的に示す説明図である。
図20】Medianフィルタによるフィルタリング処理を模式的に示す説明図である。
図21】平滑化処理によって得られる平滑化画像を示す説明図である。
図22】入力されたワーク画像から、平滑化処理画像を減算処理することによって得られる画像を示す説明図である。
図23】ノイズ除去処理によって得られる画像を示す説明図である。
図24】従来技術による欠陥検査不可能領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査方法及びワーク欠陥検査システムの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
まず図1は、本発明に係る画像処理によるワーク欠陥検査システムを概略的に示すものであって、参照符号Wは検査対象のワークである。ワークWは、図2に示すように、複数のループLa〜Lcが結合した形状をなすものである。詳しくは、外周部101〜104と、その内周側を架橋形状に延びる2本の内周橋絡部105,106とからなり、外周部101及び内周橋絡部105によってループLaが形成され、外周部102、内周橋絡部105、外周部104及び内周橋絡部106によってループLbが形成され、外周部103及び内周橋絡部106によってループLcが形成されている。また、このワークWは、図3に示すように、断面形状が幅方向中心を対称軸とする対称形状をなし、かつ長手方向各部の断面が同形同大で、自重などによる形状の変化が大きいために形状が一定しないゴム製ガスケット等のような製品である。
【0016】
図1に示すワーク欠陥検査システムにおいて、参照符号1は、ワークWを載置する検査ステージ、参照符号2は検査ステージ1上を照明する照明装置、参照符号3は、検査ステージ1上のワークWを撮像するカメラである。なお、カメラ3は、請求項4に記載された撮像装置に相当するものである。
【0017】
検査ステージ1はXYテーブルからなるものであって、すなわち不図示の駆動装置によって水平方向(XY方向)へ変位し、カメラ3によるワークWの撮影部位を任意に移動可能とするものである。また、カメラ3は、対物レンズによるワークWの光学像をCCDやCMOS等の撮像素子によって画像信号に変換するものであって、ワークWの幅方向全体及び長手方向の一部を含むエリアを撮影視野とするように、対物レンズを下方へ向けて検査ステージ1の上側にセットされている。
【0018】
参照符号4は、カメラ3により取り込まれた画像データを処理する画像処理装置、参照符号5は、画像処理装置4により画像処理された画像データを順次格納する入力画像メモリ、参照符号6は、本発明の画像処理によるワーク欠陥検査方法を実行する処理プログラムが格納されたプログラムメモリ、参照符号7は、本発明の画像処理によるワーク欠陥検査方法を実行する処理プログラムによって動作し、入力画像メモリ5から画像データを順次読み出して各種の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、参照符号8は、CPU7において算出された法線データを格納する法線メモリ、参照符号9は、CPU7において算出された中心座標データを格納する中心座標メモリ、参照符号10は、CPU7においてワーク外周部の画像を直線化処理した画像データを格納する外周部直線化画像メモリ、参照符号11は、CPU7において取得した各ループ分岐部の座標画像を格納する分岐座標メモリ、参照符号12は、CPU7において各ループの画像を直線化処理した画像データを格納するループ直線化画像メモリ、参照符号13は、CPU7において判定された検査結果データを格納する検査結果メモリ、参照符号14は、欠陥検出の前処理において画像データからノイズを除去するためのMedianフィルタである。なお、CPU7は、請求項4に記載された演算処理装置に相当するものである。
【0019】
図4及び図5は、この実施の形態による処理の流れを示すフローチャートである。すなわち、まず、画像データが、画像処理装置4及び入力画像メモリ5を介してCPU7に読み出される(ステップS1)。この画像データは、検査ステージ1によってワークWをXY方向へ任意に移動させながらカメラ3で撮像することによって、ワークWを複数の領域に分割した画像を取得すると共に、画像処理装置4によって例えばグレースケールに画像処理したものである。
【0020】
図6は、ワーク画像認識処理画面を示す説明図、図7は、画素照度サンプリング処理を示す説明図である。すなわち、入力画像メモリ5から読み出された画像データは、図6に示すように、始点Aから画面を一周する経路Lを移動しながら所定のサンプリング周期で画素照度をサンプリングする走査要素Vを有し、この走査要素Vが、経路L上を所定の距離だけ移動して停止する(ステップS2)。なお、図6における参照符号PはワークWの一部が撮影されたワーク画像、参照符号Qは、ワークWのバリ等による欠陥部の画像、RはワークWの表面に付着した塵埃等によるノイズ画像である。なお、経路Lは必ずしも画面を一周するものでなくても良く、例えば画面内をジグザグに進むものなど、有端の経路であっても良い。
【0021】
次に、画面上における走査要素Vの位置座標が検出され、走査要素Vが始点A(経路Lが有端である場合は終点)に到達したかが判定される(ステップS3)。そして、到達したことが検出された場合は(ステップS3=YES)、画面上にワーク画像が認識されなかったものとして、処理はステップS1にリターンし、入力画像メモリ5から次の画像データの読み出しが行われる。
【0022】
走査要素Vが始点A(経路Lが有端である場合は終点)に未到達であることが検出された場合は(ステップS3=NO)、図7に示すように、この走査要素Vを中心とする所定範囲における複数のサンプリング点S〜Sで画素照度をサンプリングする。そして、サンプリングされた各サンプリング点S〜Sの画素照度を加重平均し、予め設定された閾値と比較することにより、走査要素Vがワーク画像P上に到達したかを判定し、言い換えればワーク画像Pの有無を認識する(ステップS4)。なお、画素照度のサンプリングを走査要素Vの位置をサンプリング点として1点のみで行う場合は、検査ステージ1上の汚れや埃等によってワーク画像Pを誤認識するおそれがあるのに対し、複数のサンプリング点S〜Sでサンプリングした画素照度の平均値は安定した統計量となるので、汚れや埃等に起因するノイズ等の影響を受けにくくなり、ワーク画像Pの認識の信頼性を高めることができる。
【0023】
そして、上述のサンプリング結果、走査要素Vがワーク画像P上に未到達であると判定された場合は(ステップS4=NO)、処理はステップS2へリターンする。
【0024】
また、走査要素Vがワーク画像P上に達したものと判定すなわちワーク画像Pが認識された場合は(ステップS4=YES)、走査要素Vによる画素照度サンプリングを終了し、ステップS5〜S8の循環検出処理へ移行する。
【0025】
図8は、循環検出処理における法線検出処理を示す説明図である。すなわち、この法線検出処理(ステップS5)においては、図8(i)に示すように、ワーク画像P上で停止した走査要素Vの位置座標を法線検出点Bとして、この法線検出点Bを通る任意の直線Cを中心とする所定幅でワーク画像ΔPを切り取って、これを直線Cで折り返し、図8(ii)に示すように、折り返された画像ΔPが互いに重なり合わなければ、直線Cの角度を変更して再び折り返し、図8(iii)に示すように、折り返された画像ΔPが互いに重なり合った場合に、このときの直線Cを外周輪郭に対する法線Nとする。この法線Nのデータは、図1に示す法線メモリ8に格納し、処理は次の中心検出ステップへ移行する。
【0026】
なお、ワーク画像Pは、経路L上での走査要素Vによる走査が終了した後で、走査データ列によって認識することもできる。したがってこのような場合は、走査要素Vはワーク画像P上で停止しないから、法線検出点Bは、ワーク画像P内の経路L上における任意の点を選択する。
【0027】
図9は、中心検出処理を示す説明図、図10は、この中心検出過程での照度プロファイルの処理を示す説明図である。すなわち、中心検出(ステップS6)においては、まず図9に示す法線N上に沿って、ワーク画像Pの画素照度を所定のサンプリング間隔でサンプリングすることによって、図10(i)に示すような照度プロファイルを生成する。図3で説明したように、検査対象のワークWは、断面形状が幅方向中心を対称軸とする対称形状であるため、照度プロファイルも、基本的に、法線Nの中心点に対してほぼ対称となるような画素照度変化を示す。
【0028】
次に、図9に示す法線N上の任意の点Dで照度プロファイルを折り返して重ね合わせる。折り返し点Dがワーク画像Pの幅の中心点でない場合は、図10(ii)に示すように、重ね合わされた照度プロファイルの差が大きくなるので、図10(iii)に示すように、重ね合わされた照度プロファイルの差が最小となる折り返し点Dを検出し、これを中心点Eとして、その座標データを図1に示す中心座標メモリ9に格納する。
【0029】
なお、中心点Eは、請求項1に記載された「法線上の特定の点」に相当するものであるが、この「特定の点」は、必ずしも中心点Eでなくても良く、例えば検査対象のワークWの断面形状が、幅方向中心を対称軸とする対称形状ではない場合、すなわち法線Nの中心点に対してほぼ対称となるような照度プロファイルが得られないようなものである場合は、法線Nとワーク画像Pの輪郭線あるいは連続模様との交点等を用いることができる。
【0030】
図11、次候補決定処理を示す説明図である。すなわち、上述のようにして法線N上の中心点E(特定の点)が検出されたら、図11に示すように、法線Nに対して垂直で中心点Eを通る直線(中心線)F上で、中心点Eから所定距離だけ離れた点を次候補点Bとする(ステップS7)。
【0031】
次に、画面上における次候補点Bの位置座標が検出され(ステップS8)、この次候補点Bが、循環検出処理の始点に到達していないことが判定された場合、言い換えればステップS5〜S8の循環検出処理がワークWにおける外周部101〜104を一周していないことが判定された場合は(ステップS8=NO)、処理はステップS5にリターンし、点Bを通る法線検出処理及びその中心点の検出処理が繰り返され、すなわちステップS5〜S8の循環検出処理が行われる。また、次候補点Bが循環検出処理の始点に到達したことが判定された場合、言い換えればステップS5〜S8の循環検出処理がワークWにおける外周部101〜104を一周したことが判定された場合は(ステップS8=YES)、処理は次の画像直線化ステップへ移行する。
【0032】
図12は、直線化処理されたワーク画像Pを示すものである。すなわち、先に説明した図6のように曲がりくねったワーク画像Pは、ステップS5〜S7の処理によって繰り返し得られた中心点E及び中心線Fによって、図12のように直線化し(ステップS9)、図1に示す外周部直線化画像メモリ10に格納する。
【0033】
ここで、上述の直線化処理によって直線化されたワーク画像Pは、図13(ii)に示すように、図13(i)に示すワークWの外周部101〜104を展開した画像となり、ワークWの内周橋絡部105,106の画像の一部は含まれない。
【0034】
したがって、次ステップS10では、図13に示す直線化画像Pから、外周部101,102と内周橋絡部105とのループ分岐部107、外周部102,103と内周橋絡部106との結合(分岐)部であるループ分岐部108、外周部103,104と内周橋絡部106との結合(分岐)部であるループ分岐部109、及び外周部104,101と内周橋絡部105との結合(分岐)部であるループ分岐部110の付け根107a,107b、・・・110a,110bの座標を取得し、取得した座標データを分岐座標メモリ11に格納し、ステップS11〜S14の循環検出処理へ移行する。
【0035】
ステップS11〜S14の循環検出処理も、基本的にはステップS5〜S8と同様のものであって、すなわち、まず分岐座標メモリ11から例えばワークWにおけるループ分岐部107の付け根107aの座標を読み出し、この座標を始点として、先に説明した図8と同様の処理によって、ループLaの内周輪郭に対する法線を検出し(ステップS11)、次に、先に説明した図9及び図10と同様の処理によって、法線上の中心点(特定点)を検出し(ステップS12)、次に、先に説明した図11と同様にして、法線に対して垂直で中心点(特定点)を通る直線上で、中心点(特定点)から所定距離だけ離れた点を次候補点とし(ステップS13)、さらに、次候補点の位置座標が循環検出処理の始点(例えば付け根107aの座標)に到達したかを判定し(ステップS14)、この次候補点が、循環検出処理の始点に到達していないことが判定された場合、言い換えればワークWにおける外周部101及び内周橋絡部105からなるループLaを一周していないことが判定された場合は(ステップS14=NO)、処理はステップS11にリターンし、次候補点を通る法線検出処理及びその中心点の検出処理が繰り返され、すなわちステップS11〜S14の循環検出処理が行われる。また、次候補点が循環検出処理の始点に到達したことが判定された場合、言い換えればワークWにおける外周部101及び内周橋絡部105からなるループLaを一周したことが判定された場合は(ステップS14=YES)、処理は次のループ画像直線化ステップへ移行する。
【0036】
すなわち、図14(i)に示すように閉じたループLaの画像は、ステップS11〜S13の処理において繰り返し得られた中心点(特定点)及びこれを通る直線によって、図14(ii)に示すような直線化画像PLaとし(ステップS15)、図1に示すループ直線化画像メモリ12に格納する。
【0037】
次に、ステップS16では未処理のループがないかを判定し、ある場合は(ステップS16=NO)、次のループ(例えば中間のループLb)について、ステップS11〜S14の循環検出処理による画像直線化を行う。また、未処理のループがない場合、すなわち図15の(ii)に示すように、すべてのループLa〜Lcの画像の直線化が完了した場合は(ステップS16=YES)、各ループ直線化画像PLa〜PLcについて、欠陥部の検出を行う(ステップS17)。
【0038】
ここで、図16に示すループ直線化画像PL1(PLa〜PLc)には、ワークWの表面性状による画素照度のムラや、図1に示す照明装置2による照明のムラや、ワークWの表面に付着した塵埃に起因するノイズ画像R等、種々のノイズが含まれているため、誤判定を防止して欠陥部の画像Qの判定の信頼性を高めるには、これらのノイズの除去が重要である。
【0039】
図17は、ノイズの除去処理を含む欠陥検出ステップS17の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。すなわち、まず、上述のループ画像直線化処理(ステップS15)によって直線化された各ループの直線化画像PL1を入力し(ステップS101)、このワーク画像PL1を、図1に示すMedianフィルタを用いて平滑化する(ステップS102)。
【0040】
図18は、図17における平滑化処理(ステップS102)の詳細な処理の流れを示すフローチャート、図19及び図20は、平滑化のためのフィルタリング処理を模式的に示す説明図である。
【0041】
図19(i)において、PX,PX,PX,・・・は入力されたループ直線化画像PL1を構成する画素であり、各画素PX,PX,PX,・・・に表示された数字は、照度(濃淡)レベルを示している。Medianフィルタ14によるフィルタリング(平滑化)においては、まず入力画像PL1における連続した複数の画素を指定する窓Mが設定され、この窓M内の画素(図示の例では画素PX〜PX)を、図19(ii)のように照度(濃淡)レベル順に並べ替え、その中央値の画素(図示の例では照度“3”の画素PX)を検索して、図19(iii)のように、画像PL2へ出力する(ステップS201)。
【0042】
次に、図20(i)に示すように、ループ直線化画像PL1において窓Mを1画素分だけ移動させ、移動によってこの窓Mから出される画素PXと、新しく窓M内に入る画素PXを調べ(ステップS202)、図19(ii)に示すように照度(濃淡)レベル順に並べ替えられた画素のうち、窓Mの移動によって出て行く画素PXを、図20(ii)に示すように、新しく窓M内に入る画素PXと入れ替える(ステップS203)。
【0043】
そして、画素PXと入れ替わった画素PXの照度(濃淡)レベルを、隣接する画素と比較し、図20(iii)に示すように、照度(濃淡)レベル順となるように並べ替える(ステップS204)。詳しくは、窓M内における新入画素の照度が、その低レベル側に隣接する画素の照度より低レベルの場合は(ステップS204a=YES)、低レベル側に隣接する画素を新入画素と入れ替え(ステップS204b)、逆に新入画素の照度がそれより高レベル側に隣接する画素の照度より高レベルの場合は(ステップS204c=YES)、高レベル側に隣接する画素を新入画素と入れ替える(ステップS204d)といった循環処理を行う。
【0044】
次に、図20(iv)に示すように、その中央値の画素(図示の例では照度“4”の画素PX)を検索して、画像PL2へ出力するといった、ステップS201と同様の処理を行う(ステップS205)。
【0045】
次に、窓部Mがループ直線化画像PL1のフィルタリング処理の始点にあるかどうかを判定し(ステップS206)、始点にある場合は(ステップS206=YES)、フィルタリング処理を終了し、端部に未到達の場合は(ステップS206=NO)、処理はステップS202へリターンする。そしてこのような循環処理によって、図20(v)のように、画素照度の変化の緩やかな画像PL2が再構築されて行くのである。
【0046】
図21は、上述したMedianフィルタ14による平滑化処理で得られる平滑化画像を示すものである。すなわちこの平滑化処理画像PL2は、空間周波数成分が低いものとなるので、ワークWの表面性状による画素照度のムラ、照明のムラなど、照度が緩やかに変化するノイズは残るが、ワークWの表面に付着した塵埃等による、照度が急激に変化する細かいノイズは除去されている。
【0047】
説明を図17に戻すと、上述したMedianフィルタ14による平滑化処理後は、入力されたループ直線化画像PL1図16)から欠陥部の画像Qを抽出するために、このループ直線化画像PL1から図21に示す平滑化処理画像PL2を減算(PL1−PL2=PL3)する画像差分処理を行う(ステップS103)。
【0048】
図22は、この画像差分処理(PL1−PL2=PL3)によって得られる画像PL3を示すものである。すなわちこの画像PL3は、ワークWの表面性状による画素照度のムラや照明ムラによる画素照度のムラなど、照度が緩やかに変化するノイズが除去され、ワークWの表面に付着した塵埃等による、照度が急激に変化するノイズ画像Rや、欠陥部の画像Qが抽出されたものである。
【0049】
次に、画像PL3の照度データの二値化を行うことによって(ステップS104)、周辺との照度差が所定のしきい値以上となる特徴部分のみを抽出した後、抽出された特徴部分の周辺長を計測し、計測された長さが所定のしきい値未満のものは、ノイズとしてこれを除去する処理を行う(ステップS105)。図23は、このノイズ除去処理によって得られる画像PL4を示すもので、この画像PL4には、欠陥部の画像Qが残っている。
【0050】
次に、この画像PL4における欠陥部の画像Qの特徴量、すなわち例えば画像Qの画素数(面積)、長さ、周辺長、照度などを計測し(ステップS106)、良否の判定を行う(ステップS107)。そして、これらの計測値のうちいずれかが、予め設定されたしきい値以上であった場合は(ステップS107=NG)、図1に示す検査ステージ1上のワークWが不良品として排出される(ステップS108)。
【0051】
また、これらの計測値が、いずれも予め設定されたしきい値未満であれば(ステップS107=G)、不良が存在しなかったものと判定され(図5のステップS17=NO)、処理は図4のステップS1へリターンして、入力画像メモリ5から次の画像データの読み出しが行われる。
【0052】
したがって、上述した実施の形態に係るワーク欠陥検査方法によれば、検査対象のワークWが、自らの重量で変形しやすい不定形の、しかも複数のループLa〜Lcが結合した複雑な形状のものであっても、図5に示す処理ステップS10〜S16において各ループLa〜Lcの画像を展開して直線化するため、ワーク画像のすべての領域について欠陥検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
3 カメラ(撮像装置)
4 画像処理装置
6 プログラムメモリ
7 CPU(演算処理装置)
W ワーク
La〜Lc ループ
図1
図2
図3
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