(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に不織布の剛性は、カンチレバー法による剛軟度や曲げ剛性等により評価されているが、いずれも不織布の“平面方向”の剛性を評価するものである。そのため、これらの評価方法では、皮膚貼付剤を腰や肩に貼付するときのように不織布を立てたときの剛性、すなわち“鉛直方向”に対する不織布の剛性を評価することは難しい。特に本発明者が検討したところによると、一般的な皮膚貼付剤用不織布では、目付を通常の2〜3倍程度にまで大きくすると、支持体の剛性が高くなって皮膚貼付剤を身体に貼りやすくなることが感覚的には理解できても、この感覚はカンチレバー法では充分に評価できないことが分かった。そこで本発明者は、鉛直方向に対する剛性の評価として「垂直剛軟度試験」を行うことにより、不織布を立てたときの剛性を評価し、身体に貼り付けやすい皮膚貼付剤を提供し得る支持体の開発を行った。
【0008】
垂直剛軟度の観点から特許文献2〜3の支持体を再検討すると、特許文献2〜3で示される支持体は、いずれも“鉛直方向”に対する支持体の剛性が不十分であることが分かった。このように、従来提供されてきた皮膚貼付剤用の不織布には、主として貼りやすさに主眼を置いたものは少なく、特に腰や肩などの見えにくい部位に対処したものは未だ提供されていない。
【0009】
そこで本発明は、支持体に剥離シートなどを形成せずに、皮膚貼付剤を片手で貼れる程度にまで垂直剛軟度を高めても、伸縮性に優れ、軽量・薄地で使用感のよい皮膚貼付剤用支持体を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、捲縮繊維及び低融点繊維を含む不織布製支持体であっても、低融点繊維を一定方向に配向させ、支持体中の低融点繊維を7〜45質量%に調整し、且つ、支持体の目付及び厚さをそれぞれ所定の範囲内とした支持体であれば、これを皮膚貼付剤にしても、鉛直方向に対する剛性が高いため、皺や合着を生じることなく綺麗に身体に貼付できる上、適度な伸縮性が発揮されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る支持体は、以下の通りである。
[1] 捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む不織布製支持体であって、
支持体100質量%中、低融点繊維が7質量%以上45質量%以下含まれ、
目付が60g/m
2以上250g/m
2以下、厚さが0.45mm以上2.5mm以下であり、
下記試験によって測定される垂直剛軟度が45°以上90°以下であることを特徴とする支持体。
〔垂直剛軟度試験〕
1)前記支持体から縦(MD方向)10cm×横(CD方向)15cmの長方形サンプルを切り出し、
2)薬剤塗膏予定面を上にして水平状態にし、サンプルの長手方向端辺から幅5cmの部分を、サンプルの上下から一対の変形しない12cm×12cm×12cmの立方体で挟着し固定し、
3)薬剤塗膏予定面を上にしたまま挟着部を水平に保つ一方、挟着部先の非挟着部を自然に垂らし、その後、挟着部と非挟着部の境界線が鉛直方向に一致するように一対の立方体を同時に5秒かけてゆっくりと90°回転させ、回転後30秒間保持した後、
4)非挟着部における上辺の頂点を、回転後の挟着部の下辺を含む水平面に平行投影して投影点Pとし、
5)投影点Pを通りかつ前記境界線と直交する直線Lと、回転後の挟着部のサンプル下辺を延長した直線Mがなす角θ(°)を求め、下記式に基づいて垂直剛軟度を算出する。
垂直剛軟度(°)=90°−θ
[2] 捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む不織布製支持体であって、
支持体100質量%中、低融点繊維が7質量%以上45質量%以下含まれ、
目付が60g/m
2以上250g/m
2以下、厚さが0.45mm以上2.5mm以下であり、
横(CD)方向に沿った断面を観察し、この断面内で低融点繊維の横(CD)方向に対する配向が5°以上45°以下であることを特徴とする支持体。
[3] 支持体の50%伸長時応力が、MD方向において18N/5cm以上65N/5cm以下、CD方向において7N/5cm以上50N/5cm以下であり、
支持体の50%伸長時回復率が、MD方向において25%以上50%以下、CD方向において35%以上70%以下である[1]または[2]に記載の支持体。
[4] 支持体100質量%中、低融点繊維及び捲縮繊維の合計質量が85質量%以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の支持体。
[5] 前記支持体が、薬剤の塗膏面となる伸縮層と、該薬剤塗膏面の反対側の外表面となる剛性層の少なくとも2層を含む積層構造を有し、
伸縮層100質量%中、捲縮繊維が70質量%以上であり、
剛性層100質量%中、低融点繊維が12質量%以上50質量%以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の支持体。
[6] 剛性層に含まれる低融点繊維の質量に対し、伸縮層に含まれる低融点繊維の質量が、0.3以下である[5]に記載の支持体。
[7] 支持体の密度が0.05g/cm
3以上0.30g/cm
3以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の支持体。
[8] 低融点繊維が芯鞘構造を有する複合繊維であって、
低融点繊維の鞘成分で支持体中の繊維が接着され、芯成分が繊維の形態で残っている[1]〜[7]のいずれかに記載の支持体。
[9] 長方形の支持体の片面に薬剤が塗布された皮膚貼付剤であって、
前記支持体が[1]〜[8]のいずれかに記載の支持体から構成され、
長手方向に沿った垂直断面での長手方向に対する低融点繊維の面内配向が5°以上45°以下である皮膚貼付剤。
[10] 捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む原料繊維をカード機に供給してクロスウェブ法により積層ウェブを形成する工程、
形成されたウェブを針深さが5mm以上15mm以下、打ち込み本数が50本/cm
2以上250本/cm
2以下でニードルパンチ加工して不織布を製造する工程、及び
製造された不織布に熱圧縮処理を施し、不織布の厚さを0.45mm以上2.5mm以下に調整する工程を含むことを特徴とする支持体の製造方法。
[11] 低融点繊維が芯鞘構造を有する複合繊維である[10]に記載の支持体の製造方法。
[12] 低融点繊維の繊維長が、30mm以上100mm以下である[10]または[11]に記載の支持体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮膚貼付剤を片手で貼れる程度にまで垂直剛軟度を高めても、伸縮性に優れ、軽量・薄地で使用感のよい皮膚貼付剤用の支持体が提供される。そのため本発明の支持体によれば、薬剤塗膏面での皺や合着が生じにくく、皮膚貼付剤に求められる伸縮性を有し、且つゴワつき感のない皮膚貼付剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.支持体
本発明に係る支持体は、捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む不織布製支持体であって、支持体100質量%中、低融点繊維が7質量%以上45質量%以下含まれ、目付が60g/m
2以上250g/m
2以下、厚さが0.45mm以上2.5mm以下であり、垂直剛軟度が45°以上90°以下であることを特徴とする。
別の側面からみれば、本発明に係る支持体は、捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む不織布製支持体であって、支持体100質量%中、低融点繊維が7質量%以上45質量%以下含まれ、目付が60g/m
2以上250g/m
2以下、厚さが0.45mm以上2.5mm以下であり、横(CD)方向に沿った断面を観察し、この断面内での低融点繊維の横方向(CD方向又は長手方向)に対する配向(面内配向)が5°以上45°以下であることを特徴とする。
支持体中の低融点繊維の量、支持体の目付及び厚さをそれぞれ所定の範囲内とした支持体であれば、垂直剛軟度が高くなり、鉛直方向に対する剛性に優れた支持体となる。また低融点繊維を一定方向に配向させることにより、配向した繊維が骨格になるように機能することで、鉛直方向に対する剛性をより高めることができる。
【0014】
支持体は、不織布製である限り、短繊維不織布であっても長繊維不織布であってもよいが、繊維の調達が容易であることから、短繊維不織布が好ましい。
【0015】
なお本明細書において、MD方向とは、製造工程における不織布の流れ方向または機械方向を意味し、CD方向とは、MD方向に直交する幅方向をいう。
【0016】
<1.捲縮繊維>
本発明において捲縮繊維とは、立体捲縮(例えば、コイル状)を有する繊維をいう。捲縮繊維のバネ効果により、支持体が伸縮性を有するものとなり、皮膚貼付剤に要求される身体への追従性を付与することができる。捲縮繊維は、顕在捲縮繊維、潜在捲縮繊維のいずれも使用可能であるが、カード機での紡出が容易なため潜在捲縮繊維が好ましい。
【0017】
捲縮繊維としては、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリエステル、ポリエステル−変性ポリエステル等の組み合わせに例示されるような熱収縮率の異なる樹脂からなる偏心構造を有する芯鞘繊維やサイドバイサイド構造を有する複合繊維;繊維の表側と裏側とで熱処理の程度を異ならせて立体捲縮を発現させた捲縮繊維;外力により繊維に捲縮を付与した繊維;等が例示できる。
【0018】
支持体に含まれる捲縮繊維の捲縮発現後の捲縮数は、好ましくは40個/25mm以上、より好ましくは50個/25mm以上、更に好ましくは60個/25mm以上であり、好ましくは120個/25mm以下、より好ましくは110個/25mm以下、更に好ましくは100個/25mm以下である。捲縮数を前記範囲内に調整することにより、支持体に要求される伸縮性を付与することができる。
【0019】
捲縮繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸断面;三角形、星形、五角形等の異型断面;のいずれも使用することができる。また捲縮繊維は、中実繊維、中空繊維のいずれの繊維も用いることができる。
【0020】
捲縮繊維としては短繊維が好ましく、捲縮繊維の繊維長は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、好ましくは300mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは80mm以下である。捲縮繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより繊維を交絡させやすくなり、支持体中の繊維との交点が増えるため、支持体の垂直剛軟度を高めながら伸縮性に優れる。
【0021】
捲縮繊維の繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.5dtex以上、更に好ましくは2.0dtex以上であり、好ましくは8dtex以下、より好ましくは6.6dtex以下、更に好ましくは4.4dtex以下である。捲縮繊維の繊度を前記範囲内に調整することにより、剛性と伸縮性のバランスに優れた支持体を得ることが可能となる。
【0022】
捲縮繊維の融点は特に限定されないが、後述する低融点繊維よりも高いことが好ましく、好ましくは140℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは250℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは330℃以下である。捲縮繊維の融点を前記範囲内に調整することにより、サーマルボンド時やその後の加熱圧縮工程において捲縮繊維の溶融を抑制し、適度な捲縮数の達成とそれによる伸縮性の発現が可能となる。
【0023】
支持体は、同一種の捲縮繊維を含んでいてもよく、異種の捲縮繊維を2種以上含んでいてもよい。
【0024】
支持体100質量%中、捲縮繊維は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは93質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは88質量%以下である。捲縮繊維の質量を前記範囲内に調整することにより、支持体に、皮膚貼付剤に要求される伸縮性を付与することが可能となる。
【0025】
<2.低融点繊維>
本明細書において低融点繊維とは、前記捲縮繊維よりも融点が低い繊維をいい、例えば、融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは110℃以上、より更に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下の繊維をいう。低融点繊維の融点は使用環境に合わせて適宜選択できる。また支持体に薬剤を塗布する際に60〜100℃程度に加熱する場合があるため、低融点繊維の融点は高い方が好ましい。
【0026】
低融点繊維としては、不織布の製造に通常使用されるものであればよく、融点の異なる複数の樹脂を組み合わせた芯鞘構造、偏心構造、あるいはサイドバイサイド構造を有する複合繊維;変性ポリエステル繊維;変性ポリアミド繊維;変性ポリプロピレン繊維等の変性ポリオレフィン繊維等が使用できる。前記複合繊維に使用される樹脂の組み合わせには、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリプロピレン−変性ポリプロピレン等のポリオレフィン系の組み合わせ、ポリエチレン−ポリエステル、ポリエステル−変性ポリエステル、ナイロン−変性ナイロン等が挙げられる。また融点によっては、単一の樹脂からなる低融点繊維も使用できる。低融点繊維としては、不織布加工温度等を考慮して、最適な融点のものを用いるとよい。
【0027】
中でも、低融点繊維は芯鞘構造を有する複合繊維が好ましい。芯鞘構造を有する複合繊維は、芯成分に比べて鞘成分の方が溶融しやすい。そのため、低融点繊維が熱溶融した後、低融点繊維の鞘成分で支持体中の繊維間が接着固化され、芯成分を繊維の形態で残すことにより、芯成分が支持体の骨格として機能して、支持体の垂直剛軟度をより高くすることが可能となる。
芯成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;等が挙げられるが、中でもポリエステル系樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
鞘成分は、低融点成分としては、変性ポリエステルまたは共重合ポリエステルが好ましい。前記ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、例えば、イソフタール酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール等が例示できる。鞘成分の融点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
通常、芯と鞘の重量比は30:70〜70:30であり、より好ましくは40:60〜60:40、更に好ましくは45:55〜55:45である。
特にポリエステル系樹脂/変性ポリエステルの芯鞘構造を有する複合繊維は、繊度や融点の種類が多く、不織布製造時やプレス加工時に取り扱いやすいため好適である。
【0028】
低融点繊維として硬質繊維を用いると、支持体の剛性を確保できることから、低融点繊維における低融点部分のガラス転移温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。低融点繊維のガラス転移温度を前記範囲内に調整することにより、支持体に適度な硬さと強度を付与することが可能となる。
【0029】
低融点繊維の繊維長は、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下、更に好ましくは70mm以下であり、好ましくは30mm以上、より好ましくは40mm以上、更に好ましくは45mm以上である。低融点繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより、繊維を交絡させやすくなり、支持体中の繊維との交点が増えるため接着点が多くなり、支持体の垂直剛軟度を高めることが可能となる。また低融点繊維の繊維長が長くなると、平面方向(又は水平方向)に配向した繊維ウェブにハリ感が出て、垂直剛軟度が向上するため好ましい。
【0030】
低融点繊維の繊度は、好ましくは2.2dtex以上、より好ましくは2.5dtex以上、更に好ましくは3.0dtex以上であり、好ましくは6.6dtex以下、より好ましくは6.0dtex以下、更に好ましくは5.5dtex以下である。低融点繊維の繊度を2.2dtex以上にすることにより、接着交点が増えすぎず、支持体の伸縮性を維持することができるため好ましい。また繊度を6.6dtex以下にすることにより、支持体の柔らかな風合いを維持し、ゴワつき感を低減できるため好ましい。
【0031】
これら低融点繊維の繊度は、サーマルボンド前の繊度を指す。例えば、サーマルボンド後の低融点繊維の繊度はサーマルボンド前の繊度に対して、通常0.3〜1倍である。サーマルボンド後の低融点繊維の繊度は、例えば、0.4dtex以上が好ましく、より好ましくは0.6dtex以上であり、更に好ましくは0.8dtex以上であり、6.6dtex以下が好ましく、より好ましくは6.0dtex以下であり、更に好ましくは5.5dtex以下である。
【0032】
支持体は、同一種の低融点繊維を含んでいてもよく、異種の低融点繊維を2種以上含んでいてもよい。
【0033】
支持体100質量%中、低融点繊維は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。支持体中における低融点繊維の質量を前記範囲内に調整することにより、支持体に適度な剛性を付与することが可能となる。一方、前記範囲を上回ると、支持体の伸縮性が悪化し、皮膚貼付剤の保護フィルムを剥がしにくくなる場合があるため好ましくない。
【0034】
また支持体中、低融点繊維の質量は、好ましくは10g/m
2以上、より好ましくは12g/m
2以上、更に好ましくは15g/m
2以上であり、好ましくは50g/m
2以下、より好ましくは35g/m
2以下、更に好ましくは25g/m
2以下である。低融点繊維の質量を前記範囲内に調整することにより、垂直剛軟度が高く、ゴワつき感の少ない支持体が得られる。
【0035】
また支持体中、低融点繊維と捲縮繊維の質量比(低融点繊維/捲縮繊維)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.25以下である。低融点繊維と捲縮繊維の質量比を前記範囲内に調整することにより、高い垂直剛軟度及び優れた伸縮性を有する支持体を得ることが可能となる。
【0036】
後述するように、本発明では低融点繊維を熱溶融させるため、支持体中には、低融点繊維の一部又は全部が溶融固化した状態で存在しており、例えば、熱溶融後の低融点繊維は、支持体中の繊維の交絡点を固定した状態で固化している。低融点繊維は、低融点繊維全体が溶融固化した状態で存在していてもよいし、芯鞘の低融点繊維を用いたときのように、芯成分が繊維の形態を留め、鞘成分で支持体中の繊維が交絡点で接着された状態で存在していてもよい。
【0037】
<3.その他の繊維>
支持体には、捲縮繊維及び低融点繊維以外の繊維が適宜含まれていてもよい。鋸歯の様な連続する細かな山形状が機械的に形成された繊維は、他の技術分野では機械捲縮繊維として捲縮繊維に分類されることもあるが、皮膚貼付剤用途では必要な捲縮性を示さないことから、本明細書では捲縮繊維に分類されず、その他の繊維に分類される。好ましく組み合わせられるその他の繊維としては、繊維の交点を熱融着しない非接着繊維が挙げられる。前記非接着繊維としては、例えば、綿、麻、毛、絹等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、レヨセル等の再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維等のポリエステル繊維;ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体繊維等のアクリル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;ビニロン繊維、ポリビニルアルコール繊維等のポリビニルアルコール系繊維;ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリクラール繊維等のポリ塩化ビニル系繊維;ポリウレタン繊維等の合成繊維;ポリエチレンオキサイド繊維、ポリプロピレンオキサイド繊維等のポリエーテル系繊維等が例示できる。
非接着繊維の断面形状、繊維長、繊度および融点は、捲縮繊維で例示したものから適宜選択するとよい。
【0038】
非接着繊維の質量が多くなると支持体の伸縮性が低下するため、非接着繊維は、支持体100質量%中、好ましくは15質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0039】
支持体は、実質的に低融点繊維及び捲縮繊維から構成されていることが望ましい。そのため、支持体100質量%中、低融点繊維及び捲縮繊維の合計質量は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。低融点繊維及び捲縮繊維の合計質量を前記範囲内に調整することにより、垂直剛軟度が高く、伸縮性にも優れた支持体を得ることが可能となる。
【0040】
<4.支持体>
支持体の目付は、60g/m
2以上、より好ましくは85g/m
2以上、更に好ましくは100g/m
2以上であり、250g/m
2以下、より好ましくは200g/m
2以下、更に好ましくは150g/m
2以下である。支持体の目付が前記範囲を下回ると、剛性に乏しく、貼りにくい皮膚貼付剤が得られるため好ましくない。また支持体の目付が前記範囲を超えると、垂直剛軟度は高いものの、伸縮性が乏しく、皮膚貼付剤として使用できない虞があるため好ましくない。
【0041】
支持体の厚さは、0.45mm以上、より好ましくは0.70mm以上、更に好ましくは0.85mm以上であり、2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。支持体の厚さが前記範囲を下回ると、剛性に乏しく、貼りにくい皮膚貼付剤が得られるため好ましくない。また支持体の厚さが前記範囲を超えると、使用時に衣服と擦れて使用感の悪い皮膚貼付剤が得られるため好ましくない。
【0042】
支持体の密度は、好ましくは0.05g/cm
3以上、より好ましくは0.06g/cm
3以上、更に好ましくは0.08g/cm
3以上であり、好ましくは0.30g/cm
3以下、より好ましくは0.20g/cm
3以下、更に好ましくは0.15g/cm
3以下である。支持体の密度を前記範囲内に調整することにより、使用感のよい皮膚貼付剤を得ることが可能となる。
【0043】
支持体は、単層構造の不織布であっても、構成の異なる2以上の積層構造を有する不織布であってもよい。支持体が単層の不織布から構成される場合、単層不織布は、不織布における低融点繊維の含有率、不織布の目付及び厚さが所定の範囲にコントロールされたものであれば特に限定されない。皮膚貼付剤において薬剤の染み出しを防止するため、薬剤塗膏面と、該薬剤塗膏面の反対にある外表面を比べると、外表面の方が、薬剤塗膏面よりもニードルパンチ加工によるパンチ痕が多い方が好ましい。
【0044】
支持体が構成の異なる2以上の積層構造を有する不織布から構成される場合、支持体は、薬剤の塗膏面となる伸縮層と、該薬剤塗膏面の反対側の外表面となる剛性層の少なくとも2層を含む積層構造を有する。積層数は、好ましくは2〜5層、より好ましくは2〜4層、更に好ましくは2層である。
【0045】
伸縮層は、皮膚に直接貼り合わされる薬剤塗膏面を有しているため、剛性層に比べて、皮膚に対する追従性が高いことが望ましい。また伸縮層中に捲縮繊維が多く含まれると、捲縮繊維のクリンプに薬剤が取り込まれ、皮膚貼付剤が皮膚に対して接着力が大きくなる。そのため、伸縮層100質量%中、捲縮繊維は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%であり、98質量%以下であっても差し支えない。
一方、伸縮性を阻害しないよう、伸縮層に含まれる低融点繊維の量は少ない方が望ましい。また低融点繊維には、薬剤と接触すると低融点成分が加水分解を起こして強度が低下したり、薬剤との接着力が低下する場合もあるため、伸縮層100質量%中、低融点繊維は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0046】
剛性層は、皮膚貼付剤を身体に貼り付ける際に掌と接触し得る外表面を有しているため、皮膚貼付剤に皺が形成されないよう、伸縮層に比べて、より高い垂直剛軟度が求められる。そのため、剛性層100質量%中、低融点繊維は、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
一方、剛性層にも適度な伸縮性が必要なため、剛性層にも捲縮繊維が含まれることが望ましく、捲縮繊維は、剛性層100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは88質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは82質量%以下である。
皮膚貼付剤の貼りやすさの観点から、剛性層は、伸縮層に比べて垂直剛軟度はより高い程望ましい。そのため、剛性層に含まれる低融点繊維と、伸縮層に含まれる低融点繊維の質量を比較したときに、剛性層に含まれる低融点繊維の質量が多いほうが好ましく、例えば、剛性層に含まれる低融点繊維の質量に対し、伸縮層に含まれる低融点繊維の質量は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下であり、特に好ましくは0.05以下である。
【0047】
剛性層と伸縮層の質量比(剛性層:伸縮層)は、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは75:25〜25:75、更に好ましくは55:45〜45:55である。剛性層と伸縮層の質量比を前記範囲内に調整することにより、支持体の伸縮性と剛性のバランスを保つことができる。
【0048】
支持体が構成の異なる2以上の積層構造を有する不織布から構成される場合、不織布を一体化するためのニードルパンチ加工は薬剤塗膏面(伸縮層)及び外表面(剛性層)のいずれかの面から、もしくはこれらの両面から行うことができる。皮膚貼付剤において薬剤の染み出しを防止するためには、ニードルパンチ加工は外表面から行うことが好ましく、この場合、外表面の方が、薬剤塗膏面よりもニードルパンチ加工によるパンチ痕が多くなる。例えば剛性層側からニードルパンチ加工し、伸縮層側に薬剤を塗膏する場合がこの態様に該当する。一方、剛性層における低融点繊維の繊維配向をできるだけ崩さない方が、低融点繊維の繊維配向を生かして支持体の垂直剛軟度を高めることに繋がるため、ニードルパンチ加工は薬剤塗膏面(伸縮層)から行ってもよく、この場合、薬剤塗膏面の方が、外表面よりもニードルパンチ加工によるパンチ痕が多くなる。
【0049】
垂直剛軟度試験で測定される支持体の垂直剛軟度は、45°以上、より好ましくは50°以上、更に好ましくは60°以上であり、90°以下であり、88°以下であっても差し支えない。垂直剛軟度が前記範囲を下回ると、皮膚貼付剤を身体に貼り付ける際に、皺や合着が生じやすくなるため好ましくない。垂直剛軟度試験については、実施例の欄で詳述する。
ところで垂直剛軟度試験は、薬剤塗膏予定面を上にした状態から試験を開始する。すなわち薬剤塗膏前に、その予定面を指定する必要がある。なお不織布の一方面及び他方面のどちらを上にした状態でも、そこから試験を開始して所定の垂直剛軟度を示す場合は、特段、予定面を指定する必要はないものの(どちらを薬剤剤塗膏予定面としてもよいことを意味する)、上にする側が変わると垂直剛軟度を満足するか否かが変わる場合には、薬剤塗膏予定面を指定する必要がある。この場合、上にして試験をした時に垂直剛軟度を満足する側を薬剤塗膏予定面としてもよい。また、ニードルパンチ痕が少ない側を薬剤塗膏予定面としてもよく、積層構造を有する不織布の場合には伸縮層側のニードルパンチ痕が少ないため、伸縮層側を薬剤塗膏予定面としてもよい。なお積層構造を有する不織布の場合、剛性層側のパンチ痕を少なくして、この剛性層側を薬剤塗膏予定面とする場合もある。
【0050】
支持体における低融点繊維の繊維配向は、5°以上45°以下であり、より好ましくは43°以下、更に好ましくは40°以下、より更に好ましくは38°以下であり、10°以上であってもよい。低融点繊維の繊維配向度が前記範囲を上回ると、垂直方向の剛性を充分に保てない虞があり、皮膚貼付剤を身体に貼り付ける際に、皺や合着が生じやすくなるため好ましくない。
【0051】
本発明者が調査したところによると、通常の皮膚貼付剤であれば概ね、支持体の50%伸長時応力は0.5〜15N/5cm(MD方向)、0.2〜3N/5cm(CD方向)であった。しかし、腰や肩など、皮膚貼付剤を立てた状態で身体に貼り付ける部位には、伸縮性や回復性が他部位よりも必要でないことが分かった。そのため本発明では、支持体の50%伸長時応力が多少高くても、垂直方向の剛性に優れていれば支持体として使用できることとした。
このような理由から、支持体の50%伸長時応力は、MD方向において、0.5N/5cm以上が望ましく、好ましくは18N/5cm以上、より好ましくは20N/5cm以上、更に好ましくは22N/5cm以上であり、好ましくは65N/5cm以下、より好ましくは55N/5cm以下、更に好ましくは50N/5cm以下である。
また支持体の50%伸長時応力は、CD方向において、0.2N/5cm以上が望ましく、好ましくは7N/5cm以上、より好ましくは10N/5cm以上、更に好ましくは12N/5cm以上であり、好ましくは50N/5cm以下、より好ましくは40N/5cm以下、更に好ましくは30N/5cm以下である。
50%伸長時応力を前記範囲内に調整することにより、皮膚貼付剤として必要な伸縮性が発揮される。
【0052】
更に、支持体の50%伸長時回復率は、通常の皮膚貼付剤であれば概ね、35%以上(MD方向)、60%以上(CD方向)であるが、本発明ではこれより多少低くても垂直方向の剛性に優れていれば支持体として使用できることとした。
支持体の50%伸長時回復率は、MD方向において、好ましくは25%以上、より好ましくは28%以上、更に好ましくは30%以上である。伸張時回復率の上限を特に定める必要はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは33%以下である。
支持体の50%伸長時回復率は、CD方向において、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは55%以下である。
支持体の50%伸長時回復率を前記範囲内に調整することにより、皮膚貼付剤として必要な伸縮性が発揮される。
【0053】
II.支持体の製造方法
本発明に係る支持体の製造方法は、
捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む原料繊維をカード機に供給してクロスウェブ法によりウェブ層を形成する工程、
形成されたウェブを針深さが5mm以上15mm以下、打ち込み本数が50本/cm
2以上250本/cm
2以下でニードルパンチ加工して不織布を製造する工程、及び
製造された不織布に熱圧縮処理を施し、不織布の厚さを0.45mm以上2.5mm以下に調整する工程を含むことを特徴とする。
支持体の垂直剛軟度を高めるため、本発明では、クロスウェブ法によりウェブ層を形成して捲縮繊維や低融点繊維を一定方向(平面方向又は水平方向)に配向させた後、この配向を崩さないように弱くニードルパンチ加工を行うことが重要である。そのため、支持体の厚さの調整はニードルパンチ加工後に実施される熱圧縮処理で行われる。本方法により製造された支持体は、低融点繊維の繊維配向が維持されているため、垂直剛軟度が高くなる。
【0054】
まず捲縮繊維及び前記捲縮繊維よりも融点が低い低融点繊維を含む原料繊維をカード機に供給してクロスウェブ法によりウェブ層を形成する。クロスウェブ法によれば、カード機より送り出されたウェブをそのまま使用して積層することができるため、製造された不織布において、水平方向又は平面方向に捲縮繊維や低融点繊維が配列しやすくなる。本発明では、この繊維の配向を利用することにより、使用時に折れ曲がったり、皺が寄ったりしにくい皮膚貼付剤を提供することができる。
【0055】
支持体が構成の異なる2以上の積層構造を有する不織布から構成される場合、各層用のウェブを積層した後、次のウェブの結合工程を実施するとよい。例えば、伸縮層用ウェブと剛性層用ウェブをそれぞれ形成し、これらのウェブを積層した後、次のウェブの結合工程を実施するとよい。
【0056】
層間剥離防止、支持体表面の毛羽立ち防止、並びに支持体の強度向上を目的として、本発明においてウェブ中の繊維の結合にはニードルパンチ法を採用する。本発明では、クロスウェブ法により形成された低融点繊維の繊維配向をできるだけ崩さないようにするため、弱くニードルパンチ加工を行うことが望ましい。
【0057】
ニードルパンチ加工における針深さは、5mm以上、より好ましくは7mm以上、更に好ましくは8mm以上であり、15mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは12mm以下である。特に支持体が構成の異なる2以上の不織布から構成される場合には、針深さが深くなると各層間の交絡が強くなりすぎるため、針深さは浅い方が好ましい。針深さを前記範囲内に調整することにより、低融点繊維の繊維配向を崩さずに、繊維を適度に交絡させて支持体の強度を高めることができる。
【0058】
ニードルパンチ加工における打ち込み本数は、50本/cm
2以上、より好ましくは70本/cm
2以上、更に好ましくは90本/cm
2以上であり、250本/cm
2以下、より好ましくは200本/cm
2以下、更に好ましくは150本/cm
2以下である。打ち込み本数を前記範囲内に調整することにより、低融点繊維の繊維配向を崩さずに、繊維を適度に絡合させることが可能となる。
【0059】
ニードルパンチ法では、例えば、ニードルパンチ針番手36〜42番を用いるとよい。
【0060】
ニードルパンチ加工は薬剤塗膏面及び外表面のいずれかの面から、もしくはこれらの両面から行うことができる。支持体が単層の不織布から構成される場合、薬剤の染み出しを抑制するために、ニードルパンチ加工は少なくとも外表面から実施されていることが好ましい。なお、支持体が構成の異なる2以上の積層構造を有する不織布から構成される場合には、外表面(剛性層)における低融点繊維の繊維配向をできるだけ崩さず、低融点繊維を剛性層中に留めて層間を明瞭にした方が、支持体の垂直剛軟度を向上させることができるため、ニードルパンチ加工は少なくとも薬剤塗膏面から実施されていることも好ましい態様の一つである。
【0061】
本発明では、支持体の強度を高めるために、ニードルパンチ法により繊維を交絡させた後、捲縮繊維が潜在捲縮繊維の場合にはその捲縮を発現させることも目的としつつ低融点繊維の一部又は全部を熱溶融させて、サーマルボンド法により繊維交点を熱融着することが好ましい。サーマルボンド法における熱処理温度は、低融点繊維のガラス転移温度超であり、具体的には、150〜225℃が好ましく、より好ましくは160〜220℃である。また、熱処理温度は、混綿している低融点繊維の融点T
Lに対し、T
L+10(℃)〜T
L+110(℃)が好ましく、より好ましくはT
L+30(℃)〜T
L+90(℃)である。熱処理温度が前記範囲内であれば、低融点繊維を適度に溶融することが可能となる。加熱時間は、混綿する低融点繊維の融点や含有量を考慮して適宜設定するとよいが、15〜180秒が好ましく、より好ましくは20〜90秒である。サーマルボンド法は、例えば、所望の温度に調整した熱処理機(例えば、循環式熱風乾燥機)を用いて行うことができる。
【0062】
その後、支持体の厚さを調整と支持体表面の毛羽立ちを抑制するために、製造された不織布に熱圧縮処理を施し、不織布の厚さを0.45mm以上2.5mm以下に調整する。本発明では、低融点繊維の繊維配向を崩さないようにする目的で弱くニードルパンチ加工を実施しているため、支持体の厚さは、ニードルパンチ加工後の熱圧縮工程で調整している。
熱圧縮工程では、支持体の不織布の厚さを、0.45mm以上、より好ましくは0.70mm以上、更に好ましくは0.85mm以上であり、2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.5mm以下に調整する。すなわち熱圧縮工程では、ニードルパンチ加工後の不織布の厚さを、好ましくは0.2倍以下、より好ましくは0.1倍以下、更に好ましくは0.05倍以下に圧縮して、支持体を製造する。
【0063】
熱圧縮工程は、例えば、サーマルボンド加工の不織布を加熱ロールや加熱板間に通すことで実施できる。熱圧縮工程における加熱ロールや金属板の温度は、例えば、50〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜190℃である。熱圧縮工程での温度を前記範囲に調整することにより、支持体中の低融点繊維を適度に溶融させることができるため、圧縮後の不織布を薄く維持することが可能となる。
【0064】
支持体の垂直剛軟度を高め、外表面をより平滑にするために、捲縮繊維が溶融しない程度に、熱圧縮工程では少なくとも支持体の外表面に相当する面を熱圧縮するとよい。
【0065】
III.用途
本発明に係る支持体は、皮膚貼付剤用の支持体として好ましく使用される。すなわち本発明は、長方形の支持体の片面に薬剤が塗布された皮膚貼付剤であって、前記支持体が前述した支持体から構成され、長手方向に沿った垂直断面での低融点繊維の長手方向に対する面内配向が5°以上45°以下である皮膚貼付剤も包含する。前記皮膚貼付剤としては、例えば、外用消炎鎮痛剤、熱冷却剤、脚部・踵用貼付剤、美容用含水ゲルシート等が例示されるが、本発明に係る支持体は鉛直方向に対する剛性に優れていることから、本発明に係る支持体は、腰用または肩用の皮膚貼付剤に特に好ましく用いられる。
【0066】
支持体が構成の異なる2以上の積層構造を有する不織布から構成される場合、薬剤は伸縮層側表面に塗布されていることが望ましい。伸縮層側表面に薬剤を塗膏しておけば、皮膚貼付剤を立てて身体に貼り付ける際に、剛性層のハリによって、皮膚貼付剤が垂直状態を維持することがより容易となるためである。
【0067】
薬剤には、常温下で薬物を皮膚表面に長時間固定し得るものを採用することが好ましく、薬剤を構成する成分としては、汎用の薬剤が選択できる。
【0068】
薬剤には、通常、増粘剤、湿潤剤、水、充填剤、その他必要に応じて、溶解補助剤、吸収促進剤、薬効補助剤、化粧料、安定化剤、乳化剤等が適宜含有される。
【0069】
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、デンプン等の植物系、ザンサンガム、アカシアガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系等の天然高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系等の半合成高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体等の合成高分子等の水溶性高分子;が好適に用いられる。
【0070】
また湿潤剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビタール等の多価アルコール等が挙げられ、充填剤としては、例えば、カオリン、酸化亜鉛、タルク、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0071】
薬効補助剤としては、例えば、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、L−メントール、チモール、ハッカ油、リモネン、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等が挙げられる。溶解補助剤または吸収促進剤としては、例えば、炭酸プロピレン、クロタミトン、ジイソプロピルアジペート等が挙げられる。
【0072】
上記に加え薬剤には、用途に応じて、例えば、パラベン等の保存剤;アニオン性、カチオン性及びノニオン性界面活性剤;塩化アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムアミノ酢酸塩等の金属アルミニウム架橋剤;ジャコバ油、ヒマシ油等の油;EDTA等のキレート剤;リンゴ酸、酒石酸、ジイソプロピルアミン等のpH調節剤;エタノール等のアルコール;ヒアルロン酸、アロエエキス、ローヤルゼリーエキス、尿素等の保湿剤;その他、香料や色素が添加されていてもよい。
【0073】
皮膚貼付剤では、薬剤が熱可塑性樹脂からなるフィルムで保護されていること望ましい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニル等が挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0075】
実施例及び比較例で製造された支持体及び皮膚貼付剤の評価は、下記に基づき行った。なお以下の評価1〜5及び9〜10は外用消炎鎮痛剤の塗膏前の支持体に対して実施し、評価6〜8は外用消炎鎮痛剤の塗膏後の皮膚貼付剤に対して実施した。
1.支持体の目付;JIS L1913の6.2法に準ず。
2.支持体の厚さ;JIS L1913の6.1B法に準ず。
3.支持体の密度;目付を厚さで除し、単位を換算した。
【0076】
4.垂直剛軟度;
1)作成した支持体から縦(MD方向)10cm×横(CD方向)15cmの長方形サンプル10を切り出し、
2)
図1(a)に示す様に薬剤を塗膏する為の面12(薬剤塗膏予定面。例えば、実施例・比較例では、ニードルパンチ痕が少ない側の面。支持体が伸縮層と剛性層の2層の場合は、伸縮層面)を上にして水平状態にし、サンプル10の長手方向端辺から幅5cmの部分を、サンプル10の上下から一対の軽量で変形しない12cm×12cm×12cmの立方体22で挟着し、バンド21で固定した後、
3)
図1(b)に示すように、薬剤塗膏予定面12を上にしたまま挟着部を水平に保つ一方、挟着部先の非挟着部を自然に垂らし、その後、挟着部と非挟着部の境界線が鉛直方向に一致するように一対の立方体22を同時に5秒かけてゆっくりと90°回転させ、回転後30秒間保持した後、
4)
図1(c)が示すように、非挟着部における上辺の頂点Qを、回転後の挟着部の下辺を含む水平面に平行投影して投影点Pとし、
5)投影点Pを通りかつ前記境界線と直交する直線Lと、回転後の挟着部のサンプル10の下辺を延長した直線Mがなす角θ(°)を求め、下記式に基づいて垂直剛軟度を算出する。
垂直剛軟度(°)=90°−θ
なお実施例及び比較例では、4)〜5)の垂直剛軟度の算出に際し、A4サイズの紙に印刷した半円分度器23を回転後の立方体の下に敷き、挟着部の下辺延長線が半円分度器の90°方向と一致するように合わせた後、非挟着部における上辺の頂点を、分度器が印刷された紙に平行投影して投影点Pとし、投影点Pが示す角度を読み取って垂直剛軟度とした。角度が90°を超える場合には、「180°−測定値」で求められる角度を垂直剛軟度として評価した。測定数は5とし、その平均値を垂直剛軟度の測定値とした。
【0077】
5.低融点繊維の繊維配向;
図2(a)に示すように支持体10をCD方向に沿って切断し、現れた断面を株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−1000を使用して倍率100倍で画像を撮影する。なお撮影時にはゼロ点あわせとして、撮影後の写真のヨコ方向が不織布のCD方向にタテ方向が不織布の厚さ(T)方向にそれぞれ一致するようにした。
その後撮影した画像をA4サイズ(295mm×210mm)に印刷し(
図2(b))、この印刷面において不織布の外表面11に近い場所(塗膏面12から遠い場所)から任意の1mm
2(=1mm×1mm)の領域を設定し(
図2(c))、この領域の中に含まれる低融点繊維について0.1mm間隔ごとにCD方向(長手方向)と低融点繊維がなす角度を測定する。測定された角度の平均値を繊維配向度とする。但し、繊維配向度は0〜90°までで評価し、測定された角度が90°を超える場合には、「180°−測定値」で求められる角度を繊維配向度の評価に用いることとする。また、低融点繊維を判別するため、画像撮影前に繊維鑑別用試薬(ボーケンステインII)による前処理をしておく。
図2(c)は、低融点繊維の繊維配向度の測定の一例を示しており、1mm
2の領域中に低融点繊維A〜Cが含まれており、低融点繊維Aでは7箇所、低融点繊維Bでは5箇所、低融点繊維Cでは6箇所を0.1mm間隔の場所として選択し、それぞれの箇所で繊維配向度を測定し、この合計を、全測定箇所の数(
図2では18)で除して、低融点繊維の繊維配向度とする。
【0078】
6.皮膚貼付剤の貼り易さ;皮膚貼付剤を腰に貼り付けたときの貼りやすさの官能試験を行った。被験者が皮膚貼付剤を腰に貼り付けたときに、片手で綺麗に貼り付けられるか、皮膚貼付剤が皺や合着を生じるかを目視観察する。
◎:片手で綺麗に貼れる。
○:片手で貼れる。
△:片手で貼ると皺や合着が少し発生するが、問題なく使用できる。
×:片手で貼ることはできない。
【0079】
7.保護フィルムの剥がしやすさ;皮膚貼付剤から保護フィルムを剥がす際の剥がしやすさを官能評価する。
○:容易に剥がせる。
×:容易に剥がせない。
【0080】
8.皮膚貼付剤のゴワツキ感;腰に皮膚貼付剤を貼付した後の、ゴワツキ感を官能評価する。
◎:ゴワツキ感が全くない。
○:貼り付け直後はゴワツキ感を若干感じるが、暫くすると気にならない。
×:ゴワツキ感があり不快である。
【0081】
9.支持体の50%伸張時応力;支持体から幅50mm×長さ300mmの試験片を採取する。試験片を引張試験機につかみ間隔を200mmで取り付ける。200mm/minの引張速度で100mm引っ張った時点での応力を計測する。
【0082】
10.支持体の50%伸張時回復率;支持体から幅50mm×長さ300mmの試験片を採取する。試験片を引張試験機につかみ間隔を200mmで取り付ける。200mm/minの引張速度で100mm引っ張り、同速で原点まで戻す。このとき試験片の引張応力が0になる原点からの距離をL
0として下記式により50%伸張時回復率を算出する。
50%伸張時回復率(%)=100−L
0
【0083】
実施例1〜3、実施例6〜15、比較例2〜3、比較例5〜6
実施例1では、繊度2.2dtex、繊維長51mm、捲縮数80個/25mm(熱処理後)の潜在捲縮ポリエステル繊維80質量%、及び繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部の融点130℃、芯:鞘(質量比)=50:50)20質量%を混綿した。混綿した原料繊維をカード機に供給してクロスウェブ法により繊維ウェブを積層して、目付60g/m
2の剛性層用ウェブを作成した。
また、繊度2.2dtex、繊維長51mm、捲縮数80個/25mm(熱処理後)の潜在捲縮ポリエステル繊維100質量%を計量し、原料繊維をカード機に供給してクロスウェブ法により繊維ウェブを積層して、目付60g/m
2の伸縮層用ウェブを作成した。
形成された積層ウェブの剛性層側から、針番手40番、打ち込み本数120本/cm
2、針深さ10mmにてニードルパンチ加工を施し、170℃に保った熱風循環式乾燥機に30秒間通して熱処理を行った。その後、得られた不織布を、70℃に加熱したステンレスロール間に通し、目付120g/m
2、厚さ0.98mmの支持体を得た。
実施例2〜3、実施例6〜15、比較例2〜3、比較例5〜6では、製造条件を表に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして支持体を得た。なお実施例15で使用した低融点繊維は、繊度4.4dtex、繊維長38mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部の融点130℃、芯:鞘(質量比)=50:50)である。
得られた支持体の伸縮層表面に、汎用の外用消炎鎮痛剤を塗布して皮膚貼付剤を得た。
【0084】
実施例4〜5、比較例1、比較例4
実施例4では、繊度2.2dtex、繊維長51mmの潜在捲縮ポリエステル繊維85質量%、及び繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部の融点130℃、芯:鞘(質量比)=50:50)15質量%を混綿した。混綿した原料繊維をカード機に供給してクロスウェブ法により繊維ウェブを積層した。形成された積層ウェブの片面から、針番手40番、打ち込み本数120本/cm
2、針深さ10mmにてニードルパンチ加工を施し、170℃に保った熱風循環式乾燥機に30秒間通して熱処理を行った。その後、得られた不織布を、70℃に加熱したステンレスロール間に通し、目付120g/m
2、厚さ1.05mmの支持体を得た。
実施例5、比較例1、比較例4では、製造条件を表に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして支持体を得た。
得られた支持体の一方面(ニードルパンチ加工側の反対面)に、前記汎用の外用消炎鎮痛剤を塗布して皮膚貼付剤を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1〜15が示すように、支持体に含まれる低融点繊維の量、支持体の目付及び厚さをコントロールしているため、皮膚貼付剤を腰へ貼り付ける際に皺や合着が生じにくく、身体の後ろ側であっても片手で簡単に貼ることができた。また保護フィルムも剥がしやすく、使用時のゴワつき感も少ない上、皮膚貼付剤に求められる通気性、柔軟性、伸縮性も発揮されるため、皮膚貼付剤用支持体として好ましく使用できる。