特許第6647101号(P6647101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647101
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20200203BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20200203BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20200203BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200203BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20200203BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/19
   A61K8/81
   A61K8/02
   A61K8/31
   A61Q1/00
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-58065(P2016-58065)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-190837(P2016-190837A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-69331(P2015-69331)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】黒谷 達
(72)【発明者】
【氏名】増渕 祐二
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/120876(WO,A1)
【文献】 特開2009−029718(JP,A)
【文献】 特開2008−247834(JP,A)
【文献】 特開2008−247831(JP,A)
【文献】 特開2004−168662(JP,A)
【文献】 特開2004−161681(JP,A)
【文献】 特開2014−196259(JP,A)
【文献】 特開2013−209296(JP,A)
【文献】 特開2012−184206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a)常温で液状の油剤
(b)粉体
(c)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(d)重量平均分子量(Mw)が25000〜100000、融点が60〜100℃であるポリプロピレン重合体
を含有する固形化粧料であり、前記成分(a)及び(b)の質量比率が(a)/(b)=0.60〜1.60であり、
前記成分(a)がフェニル基含有シリコーンを含有する、固形化粧料。
【請求項2】
前記成分(c)の含有量が、3〜9質量%である請求項1記載の固形化粧料。
【請求項3】
前記成分(a)の常温で液状の油剤が、揮発性油を含有する請求項1又は2に記載の固形化粧料。
【請求項4】
さらに、成分(e)として、皮膜形成樹脂を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項5】
テクスチャーアナライザーによるTPA(texture profile analysis)測定における弾力性(L2/L1)が0.50〜0.99である請求項1〜4のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項6】
前記成分(b)の含有量が35〜55質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項7】
前記フェニル基含有シリコーンの含有量が5〜25質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションやアイシャドウ等の固形化粧料は、使用方法が簡便な上に携帯性にも優れることから、消費者に好まれており、油性、水性、粉末、油中水型、水中油型等の様々な剤型が開発され、その使用感や機能性等の更なる向上が求められている。中でも、軽い伸び広がり、べたつきのないさらさらとした感触が特徴の粉末固形化粧料や、ツヤ感、エモリエント効果、肌や瞼への付着性に優れる特徴を有する油性固形化粧料が消費者に特に好まれており、種々の検討が行われてきた。
近年、粉末固形化粧料と油性固形化粧料の両者の利点を有する化粧料の開発(例えば、特許文献1)や、機能性だけではなく、独特の使用感を有する化粧料の開発(例えば、特許文献2)が検討されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57054号公報
【特許文献2】特開2006−1883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術のようにシリコーン弾性粉体を用いて伸びの軽さとなめらかさを向上させる技術では、シリコーン弾性粉体を高配合することにより拡散反射が高くなることから、高いツヤを得ることできず、さらに、瞼等に塗布した場合は、瞬きによって化粧膜がよれ、パール剤等の粉体が奥二重や二重、アイホールのくぼみにたまり、美しい化粧膜が持続できないという課題があった。また、特許文献2の技術のように粉体と油剤をそれぞれ特定の量含有させることにより独特の使用感を具現化する技術では、独特な使用感は得られるものの、ツヤ感の持続に劣り、満足のいく耐衝撃性も得られていなかった。
そこで、本発明は、機能性と独特な使用感を併せ持った固形化粧料を提供することを課題とする。より詳しくは、使用時に高い弾力性を有し、ツヤ感に優れ、化粧膜のよれ、特に瞼等の目元に使用した場合に経時での化粧膜のよれがなく、ツヤ感の変化のなさに優れ、さらには、耐衝撃性に優れた固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、常温で液状の油剤と粉体の特定比率の領域において、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と、重量平均分子量(Mw)が25000〜100000、融点が60〜100℃であるポリプロピレン重合体とを含有する固形化粧料が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
[1]次の成分;
(a)常温で液状の油剤
(b)粉体
(c)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(d)重量平均分子量(Mw)が25000〜100000、融点が60〜100℃であるポリプロピレン重合体
を含有する固形化粧料であり、前記(a)及び(b)の質量比率が(a)/(b)=0.60〜1.60である固形化粧料、
[2]
前記成分(c)の含有量が、3〜9質量%である前記[1]記載の固形化粧料、
[3]
前記成分(a)の常温で液状の油剤が、不揮発性シリコーン油を含有する前記[1]又は[2]に記載の固形化粧料、
[4]
さらに、成分(e)として、皮膜形成樹脂を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の固形化粧料、
[5]
テクスチャーアナライザーによるTPA(texture profile analysis)測定における弾力性(L2/L1)が0.50〜0.99である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の固形化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、使用時に高い弾力性を有し、ツヤ感に優れ、化粧膜のよれがなく、ツヤ感の変化のなさに優れ、さらには、耐衝撃性に優れた固形化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0009】
本発明の固形化粧料とは、特に限定されないが、成型された化粧料の表面を指で軽く押したときに弾力性を感じ、更に、外観に高いツヤ感を有するものである。ここで弾力性とは、特に限定されないが、テクスチャーアナライザーによるTPA(texture profile analysis)測定における弾力性(L2/L1)で表すことができる。
本発明において、テクスチャーアナライザーによるTPA測定における弾力性(L2/L1)とは、固形化粧料を厚さ4mmの金型に充填したものを試料とし、英弘精機株式会社製の「テクスチャーアナライザー」を測定機器として使用し、TPA測定条件として、2mmΦシリンダープローブ、プローブ速度を0.5mm/secとし、試料に対して完全破壊しないように(非破壊領域で)、歪みを25%与えるように調整し、前記プローブにより試料に対して2回力を加え、1回目と2回目の時間差を3sec保持し、1回目の歪みによる高さ変化をL1、2回目の歪みによる高さ変化をL2とし、L2/L1によって求められる値をいい、外力による変形が力を取り去ったときに戻る割合を意味する(種谷真一,林弘通,川端晶子共著「食品物性用語辞典」(養賢堂)参照)。
本発明の固形化粧料は、特に限定されないが、テクスチャーアナライザーによるTPA測定における弾力性(L2/L1)が0.50〜0.99であることが好ましく、より好ましくは0.60〜0.99であり、特に好ましくは0.70〜0.99である。
【0010】
本発明に用いられる成分(a)の常温で液状の油剤とは、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、25℃、1気圧にて液体の性状を示し、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、ラノリン誘導体類、シリコーン油類、フッ素系油類等が挙げられる。具体的には、イソドデカン、イソヘキサデカン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、オリーブ油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、トリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル等の液状の紫外線吸収剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。
【0011】
本発明に用いられる成分(a)の常温で液状の油剤の含有量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して35〜55質量%(以下、単に%とする)が好ましく、更に好ましくは、38〜50%である。この範囲であれば、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感、ツヤ感の変化のなさ、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0012】
また、成分(a)の常温で液状の油剤が、不揮発性シリコーン油を含有することが、成分(c)と混合すると高い弾力性が得られ、ツヤ感に優れる点から好ましく、ツヤ感を著しく向上させる点から、メチルフェニルポリシロキサン等のフェニル基含有シリコーンを含有することがより好ましい。
【0013】
不揮発性シリコーン油の含有量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して1〜55%含有することが好ましく、より好ましくは、5〜25%である。この範囲であると、高い弾力性を得られ、ツヤ感等がより優れる点でより好ましい。
【0014】
また、成分(a)の常温で液状の油剤が、揮発性油を含有することが、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感をより向上させる点からより好ましい。揮発性油としては、沸点が200℃以下のものであることが好ましく、具体的には、イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素油、低重合度のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低沸点の鎖状もしくは環状シリコーン油、低沸点パーフルオロポリエーテル等の低沸点フッ素化合物等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0015】
揮発性油の含有量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して5〜40%が好ましく、更に好ましくは、10〜35%である。この範囲であれば、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感等がより優れる点でより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる成分(b)の粉体は、化粧料中で粒子として存在し、化粧料一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0017】
これら粉体の中でも、光輝性粉体を含有することが、本発明の効果が顕著に得られる点でより好ましい。光輝性粉体とは、パール剤、ラメ剤等の高輝度な外観を有する粉体であるが、特に平均厚さが0.1〜3.0μm、平均粒径が70〜200μm、アスペクト比(平均粒径/平均厚さ)が50〜300程度のものがより好ましい。
【0018】
本発明に用いられる成分(b)の粉体の含有量は、特に限定されないが、35〜55%が好ましく、更に好ましくは、38〜50%である。この範囲であれば、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0019】
従って、成分(a)及び(b)の質量比率が、(a)/(b)=0.60〜1.60である範囲が好ましく、更に好ましくは、(a)/(b)=0.75〜1.35である。この範囲であれば、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0020】
本発明に用いられる成分(c)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、ベンゼンに不溶であるが、自重と同重量以上のベンゼンを含みうる三次元架橋構造を有するオルガノポリシロキサン重合物であり、特公平8−6035号公報等に記載されているものが例示される。部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、オルガノポリシロキサンを架橋結合させて得られる重合物であり、一部に三次元架橋構造を有し、R2SiO単位及びRSiO1.5単位よりなり、R3SiO0.5単位及び/又はSiO2単位を含んでいても良い。但し、各構成単位のRは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等などのアリール基、およびビニル基等の脂肪族不飽和基などが例示され、同種又は異なった種類であっても良い。
【0021】
部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物の製造方法としては、特に限定されないが、特開平1−250306に記載の方法が挙げられ、例えば、下記方法により製造することができる。
内容積5Lのプラネタリーミキサーに、トリメチルシリル末端封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン(平均分子量2340、Si−H 45モル%)1790g、及びジメチルビニルシリル末端封鎖ジメチルポリシロキサン(平均分子量930、ビニル基7.7モル%)710gを投入し、撹拌混合する。同混合溶液に、塩化白金酸の2%イソプロパノール溶液の0.5g添加を行い、70〜80%に昇温し、2時間撹拌を続ける。その後、系内を5〜10mmHgに減圧し、ストリッピングを30分間続行すると、白色の柔軟性を備えた部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を得ることができる。
【0022】
このような部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物としては、例えばINCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。市販品としては、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と成分(a)の常温で液状の油剤とを混合して用いるものが一般的で、このような混合物としては、例えば、KSG−15(部分架橋型メチルポリシロキサン5質量部(以下、単に部とする)とデカメチルシクロペンタシロキサン95部)、KSG−16(部分架橋型メチルポリシロキサン25部とメチルポリシロキサン75部)、KSG−17(部分架橋型メチルポリシロキサン5部とオクタメチルシクロテトラシロキサン95部)、KSG−18(部分架橋型メチルポリシロキサン15部とメチルフェニルポリシロキサン85部)等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0023】
また、本発明における成分(c)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、長鎖アルキル基を含有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物も含み、部分的に架橋結合を有する三次元構造を呈するシリコーン系エラストマーに長鎖アルキル基を有する化合物であれば特に制限されず、上記長鎖アルキル基としては炭素数8〜30個の直鎖状のアルキル基を好適に例示することができる。
【0024】
かかる成分(c)は、例えば、SiO2単位、HSiO1.5単位、RSiO1.5単位、RHSiO単位、R2SiO単位、R3SiO0.5単位及びR2HSiO0.5単位(ここで、Rは脂肪族不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数1〜30の一価炭化水素基である)からなる群から選択された少なくとも1種の構造単位で構成され、ケイ素原子に結合した水素原子を平均で1.5個以上分子中に含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、SiO2単位、(CH2=CH)SiO1.5単位、RSiO1.5単位、R(CH2=CH)SiO単位、R2SiO単位、R3SiO0.5単位、R2(CH2=CH)SiO0.5単位、(ここでRは脂肪族不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数1〜30の一価炭化水素基である)からなる群から選択された構造単位で構成されると共に、分子中にケイ素原子に結合したビニル基を平均で1.5個以上含有するビニル基含有オルガノポリシロキサン及び/又はCmH2m−1(CH2)xCmH2m−1で表される不飽和炭化水素(但し、mは2〜6、xは1以上の整数である。)との付加重合によって得ることができる。
【0025】
但し、前記構造単位であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとビニル基含有オルガノポリシロキサンのRは、脂肪酸不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数1〜30の一価炭化水素基を表すが、そのRの一部は脂肪酸不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数8〜30の一価炭化水素基である。この炭素数8〜30の一価炭化水素基は、構造単位中5〜50モル%であることが好ましく、特に10〜40モル%であると静値安定性及び実使用安定性が良好になり好ましい。
【0026】
このような長鎖アルキル基を含有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物としては、例えばINCI名で(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。市販品としては、長鎖アルキル基を有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と成分(a)の常温で液状の油剤とを混合したシリコーンゲルを挙げることができる。例えば、KSG−41は、ミネラルオイル65〜75%を含み、KSG−42は、イソドデカン70〜80%を含み、KSG−43は、トリオクタノイン(トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル)65〜75%を含み、KSG−44は、スクワラン65〜75%を含んでいるもの(いずれも信越化学工業社製)等を具体的に挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0027】
本発明における成分(c)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、特に限定されないが、弾力性、耐衝撃性、ツヤ感等がより優れる点で、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを1種または2種以上用いることがより好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを用いるとこれらの効果がより顕著に発揮されるため、特に好ましい。
【0028】
本発明における成分(c)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、成分(a)の常温で液状の油剤で膨潤させなくてもよいが、成分(a)の常温で液状の油剤で膨潤させた状態で化粧料に存在させると、弾力性、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0029】
本発明における成分(c)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物の含有量は、特に限定されないが、3〜9%が好ましく、更に好ましくは、4〜8%である。この範囲であれば、高い弾力性、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0030】
本発明における成分(d)のポリプロピレン重合体とは、プロピレンを重合して得られる透明感のある固形物であり、特に限定されないが、下記に示す物性であることが好ましい。
【0031】
本発明における成分(d)のポリプロピレン重合体の重量平均分子量(以下、単にMwとする)は、25000〜100000であり、より好ましくは、25000〜40000である。Mwが25000未満では、べたつきが発生することがあり、また、100000を超えると、柔らかな使用感に劣ることがある。Mwの算出は、GPC測定装置(カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT、検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C)を用い、詳細な測定条件は、溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン、測定温度は145℃、流速は1.0ミリリットル/分、試料濃度:2.2mg/ミリリットル、注入量は160マイクロリットル、さらに、検量線はUniversal Calibration、解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)とする。
【0032】
また、本発明に用いられる成分(d)のポリプロピレン重合体は、GPC法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が4以下であることが好ましく、より好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が4を超えると、べたつきが発生することがある。
【0033】
本発明に用いられる成分(d)のポリプロピレン重合体の融点は、60℃〜100℃が好ましく、更に好ましくは、70℃〜90℃である。融点の測定は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm)とする。
【0034】
本発明に用いられる成分(d)のポリプロピレン重合体の重合方法は特に制限されず、スラリー重合法、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のいずれの方法を用いてもよいが、分子量分布の観点から、メタロセン錯体を用いて合成する方法が好ましく、例えば、国際公開WO2003/091289号公報に記載された方法に基づいて製造することができる。
【0035】
このような成分(d)の市販品としては、特に限定されないが、L−MODU S400(重量平均分子量:45000、Mw/Mn:2〜3、融点:70〜80℃、出光興産社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明における成分(d)のポリプロピレン重合体の含有量は、特に制限されないが、0.1〜5%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.5〜3%である。この範囲であれば、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感の変化のなさ等がより優れ、成分(a)のツヤ感と成分(c)の弾力性を損なわない点でより好ましい。
【0037】
本発明の固形化粧料には、さらに、成分(e)として、皮膜形成樹脂を含有することができる。本発明における皮膜形成樹脂とは、揮発性溶媒等に溶解させたのち、該混合溶液をシャーレに広げて乾燥させた後、皮膜を形成する性質を有する樹脂のことであり、化粧料に通常使用されるものであれば特に制限されず利用することができる。ただし、得られた皮膜は乾燥に伴い割れが生じてもよく、一枚の膜として得られなくてもよい。例えば、テルペン系樹脂、シリコーン樹脂、炭化水素樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの皮膜形成樹脂の中でも、シリコーン樹脂を含有することが、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感、ツヤ感の変化のなさにより優れる点等でより好ましく、具体的には、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上含有することができる。
【0038】
市販品としては、SR1000(トリメチルシロキシケイ酸)、SILFORM FLEXIBLE RESIN(ポリメチルシルセスキオキサン)(モメンティブ社製)等が挙げられる。また、前記シリコーン樹脂と低粘度シリコーン油と混合して用いるものが一般的で、このような混合物としては、例えば、KP−545(アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル30部とデカメチルシクロペンタシロキサン70部)、KF−9021(トリメチルシロキシケイ酸50部とデカメチルシクロペンタシロキサン50部)(信越化学社製)等が挙げられ、これらを1種又は2種以上含有することができる。
【0039】
本発明における成分(e)の皮膜形成樹脂の含有量は、特に制限されないが、0.1〜10%の範囲が好ましく、更に好ましくは、1〜7%である。
【0040】
本発明の固形化粧料には、本発明の効果を損なわない程度で、必要に応じて、前記必須成分以外の各種成分、例えば、界面活性剤、水性成分、水溶性高分子、固形の紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜含有することができる。
【0041】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、大豆リン脂質が挙げられる。
【0042】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。但し、本発明において、得られる効果を損なわないためには、水性成分の含有量は10%以下であることがより好ましい。
【0043】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0044】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0045】
本発明の固形化粧料は、ファンデーション、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、コンシーラー等のメーキャップ化粧料、日焼け止め化粧料等のスキンケア化粧料等が挙げられ、特に限定されないが、本発明の効果が顕著に発揮される化粧料は、ファンデーション、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料である。
【0046】
本発明の固形化粧料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、成分(a)〜(e)及びその他の成分を混合した後、乾式で圧縮成型する方法(以下「乾式成型方法」と略す)、また、成分(a)〜(e)及びその他の成分と揮発性油とを混合してスラリー状とし、これを充填成型した後、該揮発性油を除去して成型する湿式成型方法等が挙げられる。本発明は、成分(a)の常温で液状の油剤中に揮発性油を含有することが、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感をより向上させる点等からより好ましいため、乾式成型方法を適用することがより好ましい。乾式成型方法に用いられる充填機器としては、特に限定されないが、弾力性を有する組成物や、流動性を有しない粘土状の組成物等の充填に用いられる充填機器が好ましく、例えば、スクリューフィーダー付充填機、枡型充填機等が挙げられる。
【0047】
スクリューフィーダー付充填機、枡型充填機等の市販品としては、火星人CN580(レオン自動機社製)、TOA小型餃子充填機(東亜工業社製)、豆ミンサーBK−205N(ボニー社製)、つぶぞろいRC−1(品川工業社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
次に以下に製造例及び実施例をあげて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0049】
製造例1:部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
内容積5Lのプラネタリーミキサーに、トリメチルシリル末端封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン(平均分子量2340、Si−H 45モル%)1790g、及びジメチルビニルシリル末端封鎖ジメチルポリシロキサン(平均分子量930、ビニル基7.7モル%)710gを投入し、撹拌混合する。同混合溶液に、塩化白金酸の2%イソプロパノール溶液の0.5g添加を行い、70〜80%に昇温し、2時間撹拌を続ける。その後、系内を5〜10mmHgに減圧し、ストリッピングを30分間続行した。この結果、得られた部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、白色の柔軟性を備えた粉体であった。
【0050】
実施例1〜9及び比較例1〜6:アイシャドウ
表1に示す組成のアイシャドウを以下に示す製造方法により調製し、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、「ツヤ感の変化のなさ」、「耐衝撃性」について以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
※1:シリコンKF−96(6CS)(信越化学工業社製)
※2:シリコンKF−54(信越化学工業社製)
※3:シリコンKF−995(信越化学工業社製)
※4:L−MODU S400(出光興産社製)
※5:PERFORMALENE 655(ニューフェーズテクノロジー社製)
※6:メタシャイン1080RC−Y(日本板硝子社製)
※7:AEROSIL300(日本アエロジル社製)
【0053】
(製造方法)
A:成分1〜3を三本ローラーにて分散、膨潤させる。
B:Aに、成分4〜6を添加混合する。
C:成分7〜9を110℃にて均一溶解する。
D:Bに、Cと成分10〜18を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧しながら混練する。
E:Dをスクリューフィーダー付充填機を用いて容器に充填し、プレス後、アイシャドウを得た。
【0054】
(評価方法)
各評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価項目):イ.弾力性
前記実施例及び比較例のアイシャドウの弾力性については、英弘精機社製テクスチャーアナライザーによるTPA(texture profile analysis)測定を行なった。測定条件は、2mmΦシリンダープローブ、プローブ速度を0.5mm/secとし、サンプルに対して完全破壊しないように(非破壊領域で)、歪みを25%与えるように調整した。TPA測定は、一定のプローブにより、サンプルに対して2回力を加えて、1回目と2回目の時間差を3sec保持し、1回目の歪みによる高さ変化をL1、2回目の歪みによる高さ変化をL2とし、L2/L1を弾力性(springness)の指標とする。例えば、バネの場合、完全弾性体であることからL1=L2となるため、弾力性L2/L1=1となる。
【0055】
本発明では、以下の基準にて弾力性を判定した。
(判定基準)
(L2/L1) :(判定)
0.85を超える :◎
0.50を超えて、0.85以下:○
0.40を超えて、0.50以下:△
0.40以下 :×
【0056】
(評価項目):ロ.化粧膜のよれのなさ
化粧専門パネル20名に前記実施例及び比較例のアイシャドウを使用してもらい、「化粧膜のよれのなさ」について、各自が以下の基準に従って7段階評価し、更に、全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。尚、化粧膜のよれのなさは、塗布後8時間で評価した。
(絶対評価)
(評点):(評価)
6点 :非常に良い
5点 :良い
4点 :やや良い
3点 :普通
2点 :やや悪い
1点 :悪い
0点 :非常に悪い
(判定基準)
(評点平均値) :(判定)
5点を超える :◎
3.5点を超えて5点以下 :○
2点を超えて3.5点以下 :△
2点以下 :×
【0057】
(評価項目):ハ.ツヤ感
前記実施例及び比較例のアイシャドウの「ツヤ感」を、アイシャドウ塗布前後の瞼中央部分の明度値変化により評価した。具体的には、化粧専門パネルのアイシャドウ塗布前の瞼中央部分の明度値(LA)と、アイシャドウ塗布直後の瞼中央部分の明度値(LB)を同一条件(光源、撮影距離を固定)で500万画素のデジタルカメラにて撮影し、市販の画像処理アプリケーション(例えば、Adobe PhotoShop(R):アドビシステムズ社製)を用いて、得られた画像から明度値を求め、アイシャドウ塗布前後における明度値の変化(LB−LA)を算出した。本測定を同じ化粧専門パネルにて、日にちを変えて3回測定し、アイシャドウ塗布前後における明度値の変化(LB−LA)の平均値を算出し、下記判定基準により評価した。
(判定基準)
(LB−LAの平均値):判定
3.0以上 :◎
2.0を超えて3.0以下:〇
1.0を超えて2.0以下:△
1.0以下 :×
【0058】
(評価項目):ニ.ツヤ感の変化のなさ
前記実施例及び比較例のアイシャドウの「ツヤ感の変化のなさ」を、アイシャドウが塗布されている瞼中央部分の経時による明度値変化により評価した。具体的には、化粧専門パネルのアイシャドウ塗布直後の瞼中央部分の明度値(LB)と、アイシャドウ塗布8時間後の瞼中央部分の明度値(LC)を同一条件(光源、撮影距離を固定)で500万画素のデジタルカメラにて撮影し、市販の画像処理アプリケーション(例えば、Adobe PhotoShop(R):アドビシステムズ社製)を用いて、得られた画像から明度値を求め、アイシャドウが塗布されている瞼中央部分の経時による明度値の変化(LB−LC)を算出した。本測定を同じ化粧専門パネルにて、日にちを変えて3回測定し、アイシャドウ塗布前後における明度値の変化(LB−LC)の平均値を算出し、下記判定基準により評価した。なお、「ツヤ感の変化なさ」に優れるほど、経時での明度値変化は小さくなる。
(判定基準)
(LB−LCの平均値) :判定
0.5以下 :◎
0.5を超えて1.0以下 :〇
1.0を超えて2.0以下 :△
2.0を超える :×
【0059】
(評価方法)ホ.耐衝撃性
耐衝撃性については、縦3cm×横3cm×高さ1.5cmのガラス容器に充填された前記実施例及び比較例のアイシャドウを各5個用意し、50cmの高さからアクリル板状に正立方向で自由落下させ、落下後の表面状態を観察し、各アイシャドウ毎に下記評価基準により評点を付し、各5個の評点の平均値を算出し、以下の4段階の判定基準により判定した。
(評価基準)
(外観の状態変化) :(評点)
全く変化無し :4
僅かにヨレが発生するが許容 :3
ヨレが発生する :2
著しくヨレが発生し、外観を損なう:1
(判定基準)
(判定):(n=5の評点の平均点)
◎:3.5点以上
○:3.0点以上〜3.5点未満
△:2.0点以上〜3.0点未満
×:2.0未満
【0060】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜9のアイシャドウは、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、「ツヤ感の変化のなさ」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れたアイシャドウであった。特に、「化粧膜のよれのなさ」に関しては、瞬きによって化粧膜がよれ、パール剤等の粉体が奥二重や二重、アイホールのくぼみ等にたまることなく、美しい化粧膜が持続されていた。一方、成分(c)を含有していない比較例1では、「弾力性」がなく、「耐衝撃性」に劣るものであった。また、成分(d)を含有していない比較例2では、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感の変化のなさ」に劣るものであった。成分(d)の代わりに、ポリエチレンワックスを用いた比較例3は、「ツヤ感の変化のなさ」には優れるものの、塗布直後の「ツヤ感」に劣るものであり、塗布8時間後も変わらず「ツヤ感」に劣るものであった。油剤と粉体の質量比率が好適でない比較例4は「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、比較例5は「耐衝撃性」に劣るものであった。成分(c)、成分(d)を含有していない比較例6は、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感の変化のなさ」、及び「耐衝撃性」に劣るものであった。
【0061】
実施例10 コントロールカラー
(成分) (%)
1.酸化チタン 5.0
2.酸化亜鉛 1.0
3.球状ナイロンパウダー(平均粒子径5μm) 7.0
4.赤酸化鉄 0.5
5.黄酸化鉄 1.0
6.黒酸化鉄 0.1
7.雲母チタン *8 10.0
8.セリサイト 残量
9.メチルフェニルポリシロキサン 15.0
10.製造例1の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物 5.0
11.ジメチルポリシロキサン 20.0
12.オクタン酸グリセリル 5.0
13.ポリプロピレン重合体 *4 0.5
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
15.香料 0.1

*8:FLAMENCO ULTRA SPARKLE 4500
【0062】
(製造方法)
A:成分9〜11を三本ローラーにて分散、膨潤させる。
B:成分12、13を110℃にて、均一に溶解する。
C:AにBを混合後、成分1〜8、14、15を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧しながら混練する。
D:Cをスクリューフィーダー付充填機を用いて容器に充填し、プレスした後、チークを得た。
【0063】
実施例10のチークは、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、「ツヤ感の変化のなさ」、「耐衝撃性」の全ての項目において優れたチークであった。また、L2/L1は、0.9であり、弾力性に優れていた。
【0064】
実施例11 ファンデーション
(成分) (%)
1.酸化チタン 10.0
2.酸化亜鉛 5.0
3.タルク 10.0
4.マイカ 残量
5.ベンガラ 0.2
6.黄酸化鉄 1.5
7.黒酸化鉄 0.2
8.ポリメタクリル酸メチル(平均粒子径6μm) *9 10.0
9.シリカ 1.0
10.製造例1の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物 8.0
11.メチルフェニルポリシロキサン 20.0
12.デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
13.流動パラフィン 5.0
14.ポリプロピレン重合体 *4 1.0
15.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
16.香料 0.1

*9:MR−5C(綜研化学株式会社製)
【0065】
(製造方法)
A:成分10〜12を三本ローラーにて分散、膨潤させる。
B:成分13、14を110℃にて、均一に溶解する。
C:AにBを混合後、成分1〜9、15、16を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧しながら混練する。
D:Cをスクリューフィーダー付充填機を用いて容器に充填し、ファンデーションを得た。
【0066】
実施例11のファンデーションは、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、「ツヤ感の変化のなさ」、「耐衝撃性」の全ての項目において優れたファンデーションであった。また、L2/L1は、0.8であり、弾力性に優れていた。
【0067】
実施例12 コンシーラー
(成分) (%)
1.シリコーン処理酸化チタン 20.0
2.シリコーン処理酸化亜鉛 5.0
3.シリコーン処理マイカ 残量
4.シリコーン処理赤酸化鉄 0.5
5.シリコーン処理黄酸化鉄 3.0
6.シリコーン黒酸化鉄 0.3
7.ジメチルポリシロキサン 20.0
8.メチルフェニルポリシロキサン 20.0
9.製造例1の部分架橋型オルガノポリシロキサン 4.0
10.ポリメチルシルセスキオキサン *10 5.0
11.流動パラフィン 5.0
12.ポリプロピレン重合体 *4 3.0
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
14.香料 0.1

*10:SILFORM FLEXIBLE RESIN(モメンティブ社製)
【0068】
(製造方法)
A:成分7〜9を三本ローラーにて分散、膨潤させる。
B:成分11、12を110℃にて、均一に溶解する。
C:AにBを混合後、成分1〜6、10、13、14を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧しながら混練する。
D:Cを枡型充填機を用いて容器に充填し、コンシーラーを得た。
【0069】
実施例12のコンシーラーは、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、「ツヤ感の変化のなさ」、「耐衝撃性」の全ての項目において優れコンシーラーであった。また、L2/L1は、0.70であり、弾力性に優れていた。
【0070】
実施例13 アイライナー
(成分) (%)
1.シリコーン黒酸化鉄 0.3
2.シリコーン処理タルク 20.0
3.シリコーン処理マイカ 残量
4.ジメチルポリシロキサン 20.0
5.メチルフェニルポリシロキサン 20.0
6.製造例1の部分架橋型オルガノポリシロキサン 7.0
7.トリメチルシロキシケイ酸混合物 *11 5.0
8.2−エチルヘキサン酸セチル 5.0
9.ポリプロピレン重合体 *4 2.0
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
11.香料 0.1

*11:KF−9021(信越化学工業社製)
【0071】
(製造方法)
A:成分4〜6を三本ローラーにて分散、膨潤させる。
B:成分8、9を110℃にて、均一に溶解する。
C:AにBを混合後、成分1〜3、7、10、11を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧しながら混練する。
D:Cを枡型充填機を用いて容器に充填し、アイライナーを得た。
【0072】
実施例13のアイライナーは、「弾力性」、「化粧膜のよれのなさ」、「ツヤ感」、「ツヤ感の変化のなさ」、「耐衝撃性」の全ての項目において優れたアイライナーであった。また、L2/L1は、0.60であり、弾力性に優れていた。