(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(D)を40質量%含有する軽質流動イソパラフィン溶液をガラス板に400μm厚のアプリケーターで成膜し、乾燥させた皮膜に、テクスチャーアナライザーを用いて100gの荷重をかけ、10秒保持後に0.5mm/秒で離したときの接触点にかかる荷重変化(最大応力値)が30〜1000gである請求項1〜6のいずれかに記載の固形化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0010】
本発明の固形化粧料とは、特に限定されないが、成型された化粧料の表面を指で軽く押したときに弾力性を感じるものである。ここで弾力性とは、特に限定されないが、テクスチャーアナライザーによるTPA(texture profile analysis)測定における弾力性(L2/L1)で表すことができる。
本発明において、テクスチャーアナライザーによるTPA測定における弾力性(L2/L1)とは、固形化粧料を厚さ4mmの金型に充填したものを試料とし、英弘精機株式会社製の「テクスチャーアナライザー」を測定機器として使用し、TPA測定条件として、2mmΦシリンダープローブ、プローブ速度を0.5mm/secとし、試料に対して完全破壊しないように(非破壊領域で)、歪みを25%与えるように調整し、前記プローブにより試料に対して2回力を加え、1回目と2回目の時間差を3sec保持し、1回目の歪みによる高さ変化をL1、2回目の歪みによる高さ変化をL2とし、L2/L1によって求められる値をいい、外力による変形が力を取り去ったときに戻る割合を意味する(種谷真一,林弘通,川端晶子共著「食品物性用語辞典」(養賢堂)参照)。
本発明の固形化粧料は、特に限定されないが、テクスチャーアナライザーによるTPA測定における弾力性(L2/L1)が0.50〜0.99であることが好ましく、より好ましくは0.60〜0.99であり、特に好ましくは0.70〜0.99である。
【0011】
本発明に用いられる成分(A)の常温で液状の油剤とは、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、25℃、1気圧にて液体の性状を示し、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、ラノリン誘導体類、シリコーン油類、フッ素系油類等が挙げられる。具体的には、イソドデカン、イソヘキサデカン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、オリーブ油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、トリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル等の液状の紫外線吸収剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)の常温で液状の油剤の含有量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して35〜55質量%(以下、単に%とする)が好ましく、更に好ましくは、38〜50%である。この範囲で用いれば、耐水性、耐皮脂性等がより優れる点でより好ましい。
【0013】
また、成分(A)の常温で液状の油剤が、不揮発性シリコーン油を含有することが、成分(C)と混合すると高い弾力性が得られるため好ましく、メチルフェニルポリシロキサン等のフェニル基含有シリコーンを含有すると、さらにツヤ感も付与されるためより好ましい。
【0014】
不揮発性シリコーン油の含有量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して1〜55%含有することが好ましく、より好ましくは、5〜25%である。この範囲であると、より高い弾力性等を得られる等の点でより好ましい。
【0015】
また、成分(A)の常温で液状の油剤が、揮発性油を含有することが、成分(D)を好適に溶解し、化粧膜の均一性を向上させる点から好ましい。揮発性油としては、沸点が200℃以下のものであることが好ましく、具体的には、イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素油、低重合度のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低沸点の鎖状もしくは環状シリコーン油、低沸点パーフルオロポリエーテル等の低沸点フッ素化合物等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0016】
揮発性油の含有量は、特に限定されないが、化粧料全量に対して5〜40%が好ましく、更に好ましくは、10〜35%である。この範囲であれば、化粧膜の均一性等がより優れる点でより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)の粉体は、化粧料中で粒子として存在し、化粧料一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0018】
これら粉体の中でも、光輝性粉体を含有することが、本発明の効果が顕著に得られる点でより好ましい。光輝性粉体とは、パール剤、ラメ剤等の高輝度な外観を有する粉体であるが、特に平均厚さが0.1〜3.0μm、平均粒径が70〜200μm、アスペクト比(平均粒径/平均厚さ)が50〜300程度のものがより好ましい。
【0019】
本発明に用いられる成分(B)の粉体の含有量は、特に限定されないが、35〜55%が好ましく、更に好ましくは、38〜50%である。この範囲であれば、化粧膜の均一性、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0020】
従って、成分(A)及び(B)の質量比率が、(A)/(B)=0.60〜1.60である範囲が好ましく、更に好ましくは、(A)/(B)=0.75〜1.35である。この範囲であれば、弾力性、化粧膜の均一性、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0021】
本発明に用いられる成分(C)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、ベンゼンに不溶であるが、自重と同重量以上のベンゼンを含みうる三次元架橋構造を有するオルガノポリシロキサン重合物であり、特公平8−6035号公報等に記載されているものが例示される。部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、オルガノポリシロキサンを架橋結合させて得られる重合物であり、一部に三次元架橋構造を有し、R2SiO単位及びRSiO1.5単位よりなり、R3SiO0.5単位及び/又はSiO2単位を含んでいても良い。但し、各構成単位のRは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等などのアリール基、およびビニル基等の脂肪族不飽和基などが例示され、同種又は異なった種類であっても良い。
【0022】
部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物の製造方法としては、特に限定されないが、特開平1−250306に記載の方法が挙げられ、例えば、下記方法により製造することができる。
内容積5Lのプラネタリーミキサーに、トリメチルシリル末端封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン(平均分子量2340、Si−H 45モル%)1790g、及びジメチルビニルシリル末端封鎖ジメチルポリシロキサン(平均分子量930、ビニル基7.7モル%)710gを投入し、撹拌混合する。同混合溶液に、塩化白金酸の2%イソプロパノール溶液の0.5g添加を行い、70〜80%に昇温し、2時間撹拌を続ける。その後、系内を5〜10mmHgに減圧し、ストリッピングを30分間続行すると、白色の柔軟性を備えた部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を得ることができる。
【0023】
このような部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物としては、例えばINCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。市販品としては、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と成分(a)の常温で液状の油剤とを混合して用いるものが一般的で、このような混合物としては、例えば、KSG−15は、(部分架橋型メチルポリシロキサン5質量部(以下、単に部とする)とデカメチルシクロペンタシロキサン95部)、KSG−16(部分架橋型メチルポリシロキサン25部とメチルポリシロキサン75部)、KSG−17(部分架橋型メチルポリシロキサン5部とオクタメチルシクロテトラシロキサン95部)、KSG−18(部分架橋型メチルポリシロキサン15部とメチルフェニルポリシロキサン85部)(いずれも信越化学工業社製)等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0024】
また、本発明における成分(C)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、長鎖アルキル基を含有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物も含み、部分的に架橋結合を有する三次元構造を呈するシリコーン系エラストマーに長鎖アルキル基を有する化合物であれば特に制限されず、上記長鎖アルキル基としては炭素数8〜30個の直鎖状のアルキル基を好適に例示することができる。
【0025】
かかる成分(C)は、例えば、SiO2単位、HSiO1.5単位、RSiO1.5単位、RHSiO単位、R2SiO単位、R3SiO0.5単位及びR2HSiO0.5単位(ここで、Rは脂肪族不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数1〜30の一価炭化水素基である)からなる群から選択された少なくとも1種の構造単位で構成され、ケイ素原子に結合した水素原子を平均で1.5個以上分子中に含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、SiO2単位、(CH2=CH)SiO1.5単位、RSiO1.5単位、R(CH2=CH)SiO単位、R2SiO単位、R3SiO0.5単位、R2(CH2=CH)SiO0.5単位、(ここでRは脂肪族不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数1〜30の一価炭化水素基である)からなる群から選択された構造単位で構成されると共に、分子中にケイ素原子に結合したビニル基を平均で1.5個以上含有するビニル基含有オルガノポリシロキサン及び/又はCmH2m−1(CH2)xCmH2m−1で表される不飽和炭化水素(但し、mは2〜6、xは1以上の整数である。)との付加重合によって得ることができる。
【0026】
但し、前記構造単位であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとビニル基含有オルガノポリシロキサンのRは、脂肪酸不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数1〜30の一価炭化水素基を表すが、そのRの一部は脂肪酸不飽和基を除く置換もしくは非置換の炭素数8〜30の一価炭化水素基である。この炭素数8〜30の一価炭化水素基は、構造単位中5〜50モル%であることが好ましく、特に10〜40モル%であると静値安定性及び実使用安定性が良好になり好ましい。
【0027】
このような長鎖アルキル基を含有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物としては、例えばINCI名で(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。市販品としては、長鎖アルキル基を有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物と成分(A)の常温で液状の油剤とを混合したシリコーンゲルを挙げることができる。例えば、KSG−41は、ミネラルオイル65〜75%を含み、KSG−42は、イソドデカン70〜80%を含み、KSG−43は、トリオクタノイン(トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル)65〜75%を含み、KSG−44は、スクワラン65〜75%を含んでいるもの(いずれも信越化学工業社製)等を具体的に挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0028】
本発明における成分(C)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、特に限定されないが、弾力性、耐衝撃性、耐水性、耐皮脂性等がより優れる点で、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを1種または2種以上用いることがより好ましく、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを用いるとこれらの効果がより顕著に発揮されるため、特に好ましい。
【0029】
本発明における成分(C)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、成分(A)の常温で液状の油剤で膨潤させなくてもよいが、成分(A)の常温で液状の油剤で膨潤させた状態で化粧料に存在させると、弾力性、落下強度等がより優れる点でより好ましい。
【0030】
本発明における成分(C)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物の含有量は、特に限定されないが、3〜9%が好ましく、更に好ましくは、4〜8%である。この範囲であれば、高い弾力性、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0031】
本発明の固形粉末化粧料に用いられる成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であり、好ましくは1.2〜2.8であるデキストリン脂肪酸エステルである。
この置換度が1.0未満であると液状油等への溶解温度が100℃以上と高くなり、着色や特異な臭いが生じ、好ましくない。
【0032】
また、成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルは、次の特性を有する。
(1)液状油に混合したときに液状油がゲル化しない。
「液状油がゲル化しない」とは、ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm2/sである流動パラフィンを液状油とする場合、デキストリン脂肪酸エステルを5質量%含有する該流動パラフィンを100℃で溶解し、24時間後25℃で粘度を測定したとき、粘度が、YAmCo DIGITAL VISCOMATE粘度計VM−100A(振動式)(山一電機社製)の検出限界以下であることを意味する。なお、ゲル化する場合には、粘度が検出されることで確認できる。
【0033】
(2)成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルが形成する皮膜が特定範囲のタック性を有する。
「タック性」を、支持体に該デキストリン脂肪酸エステルを塗布し、もうひとつの支持体を相互に離れた状態から面接触させた後に、後退させて別離させ、後退を開始してから完全に別離するまでの接触点にかかる荷重変化(最大応力値)で表す場合、該デキストリン脂肪酸エステルを40質量%含有する軽質流動イソパラフィン溶液をガラス板に400μm厚のアプリケーターで成膜し、乾燥させた皮膜に、テクスチャーアナライザー、たとえば、テクスチャーアナライザーTA.XTplus(StABlE MiCro SystEms社製)を用いて、プローブとして直径12.5mm円柱状のポリアセタール樹脂(DElrin(登録商標)デュポン社製)製プローブを使用し、100gの荷重をかけ10秒保持後に0.5mm/秒で離したときの荷重変化、すなわちタック性が30〜1,000gである。
【0034】
成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられるデキストリンは、グルコース平均重合度3〜150、特に10〜100のデキストリンが好ましい。グルコース平均重合度が2以下では、得られたデキストリン脂肪酸エステルがワックス様となって油剤への溶解性が低下する。また、グルコース平均重合度が150を超えると、デキストリン脂肪酸エステルの油剤への溶解温度が高くなる、又は溶解性が悪くなる等の問題を生ずることがある。デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0035】
成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸は、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を必須とし、さらに炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸、及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これら炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸以外の脂肪酸をまとめて表すときは「その他の脂肪酸」という)を含有してもよいものである。
【0036】
脂肪酸の組成割合は、全脂肪酸に対して、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上が50mol%より多く100mol%以下、好ましくは55mol%以上100mol%以下であり、その他の脂肪酸は、0mol%以上50mol%未満、好ましくは、0mol%以上45mol%以下である。
炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコサン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、炭素数12〜22のものが好ましく、特にイソステアリン酸が好ましく、構造の違い等の限定は特にない。
【0037】
本発明において、イソステアリン酸とは、分岐したステアリン酸の1種、又は2種以上の混合物を意味する。例えば5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、次いで水素添加、酸化することにより製造することができ(以下、「アルドール縮合型」と略す)、これは例えば日産化学工業社より市販されている。2−ヘプチルウンデカン酸はノニルアルコールをガーベット反応(GuErBEt反応、ゲルベ反応ともいう)により二量化し、酸化することにより製造することができ、これは例えば三菱化学社より市販されており、分岐位置の若干異なる類似混合物として、日産化学工業社より市販され、さらに出発アルコールが直鎖飽和ではない2箇所メチル分岐したタイプも同様に日産化学社より市販されている(以下総じて「ガーベット反応型」と略す)。また、メチル分岐イソステアリン酸は、例えばオレイン酸のダイマー製造時の副産物として得られるもので〔例えばJ.AmEr.Oil ChEm.SoC.,51,522(1974)に記載〕、例えば米国エメリー社などから市販されていたものがあげられる(以下「エメリー型」と略す)。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸のさらに出発物質は、オレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等も含まれる場合がある。本発明においては特にこのエメリー型がより好ましい。
【0038】
また、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素数8〜22のものが好ましく、特に炭素数12〜22のものが好ましい。
【0039】
炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸としては、例えば、モノエン不飽和脂肪酸としては、シス−4−デセン(オブツシル)酸、9−デセン(カプロレイン)酸、シス−4−ドデセン(リンデル)酸、シス−4−テトラデセン(ツズ)酸、シス−5−テトラデセン(フィセテリン)酸、シス−9−テトラデセン(ミリストレイン)酸、シス−6−ヘキサデセン酸、シス−9−ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス−9−オクタデセン(オレイン)酸、トランス−9−オクタデセン酸(エライジン酸)、シス−11−オクタデセン(アスクレピン)酸、シス−11−エイコセン(ゴンドレイン)酸、シス−17−ヘキサコセン(キシメン)酸、シス−21−トリアコンテン(ルメクエン)酸等が挙げられ、ポリエン不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸、リノール酸、ヒラゴ酸、プニカ酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、EPA、イワシ酸、DHA、ニシン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等が挙げられる。
【0040】
炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸は、環状構造を基本骨格の少なくとも一部に有する炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪酸を意味し、例えば9,10−メチレン−9−オクタデセン酸;アレプリル酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸、α−シクロヘキシルメチル酸、ω−シクロヘキシル酸、5(6)−カルボキシ−4−ヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オクタン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸などが挙げられる。
【0041】
成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸単独の場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリンイソ酪酸エステル
デキストリンエチルメチル酢酸エステル
デキストリンイソヘプタン酸エステル
デキストリン2−エチルヘキサン酸エステル
デキストリンイソノナン酸エステル
デキストリンイソデカン酸エステル
デキストリンイソパルミチン酸エステル
デキストリンイソステアリン酸エステル
デキストリンイソアラキン酸エステル
デキストリンイソヘキサコサン酸エステル
デキストリン(イソ吉草酸/イソステアリン酸)エステル
【0042】
本発明において、新規なデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸とその他の脂肪酸との混合脂肪酸を用いた場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリン(イソ酪酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(エチルメチル酢酸/ラウリン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/ラウリン酸)エステル
デキストリン(イソヘプタン酸/ラウリン酸/ベヘン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(イソヘキサコサン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/イソ吉草酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソノナン酸/パルミチン酸/カプロン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソデカン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(2−エチル酪酸/ベヘン酸)エステル
デキストリン(イソノナン酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/アラキドン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ステアリン酸/オレイン酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/パルミチン酸/ショールムーグリン酸)エステル
【0043】
次に、成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルの製造方法について説明する。
製造方法としては、特に限定されず、公知の製法を採用することができるが、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0044】
(1)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を全脂肪酸誘導体に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これらの脂肪酸誘導体をまとめて表すときは「その他の脂肪酸誘導体」という)を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満を含有する脂肪酸誘導体とを反応させる。
【0045】
(2)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上とを反応させ、次いで、その生成物とその他の脂肪酸誘導体とを反応させる。
その場合、全脂肪酸誘導体に対して炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、その他の脂肪酸誘導体を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満使用する。
【0046】
上記デキストリンとのエステル化反応に使用される脂肪酸誘導体としては、例えば、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等が用いられる。
(1)及び(2)のいずれの場合も、まず、デキストリンを反応溶媒に分散し、必要に応じて触媒を添加する。これに、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等を添加して反応させる。(1)の製造法の場合は、これらの酸を混合して同時に添加反応させ、(2)の製造法の場合は、まず反応性の低い分岐飽和脂肪酸誘導体を反応させた後、次いでその他の脂肪酸誘導体を添加反応させる。
【0047】
製造にあたり、これらのうちの好ましい方法を採用することができる。反応溶媒にはジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のホルムアミド系;アセトアミド系;ケトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系;ジオキサン等の溶剤を適宜使用することができる。反応触媒としてはピリジン、ピコリン等の3級アミノ化合物などを用いることができる。反応温度は原料脂肪酸等により適宜選択されるが、0℃〜100℃の温度が好ましい。
【0048】
このような成分(D)の市販品としては、「ユニフィルマHVY」(千葉製粉社製)等が挙げられる。
【0049】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜15%が好ましく、より好ましくは、0.5〜10%である。この範囲であれば、耐水性、耐皮脂性、耐衝撃性等がより優れる点でより好ましい。
【0050】
本発明の固形化粧料には、さらに、成分(E)として、成分(D)以外の皮膜形成樹脂を含有することができる。本発明における皮膜形成樹脂とは、揮発性溶媒等に溶解させたのち、該混合溶液をシャーレに広げて乾燥させた後、皮膜を形成する性質を有する樹脂のことであり、化粧料に通常使用されるものであれば特に制限されず利用することができる。ただし、得られた皮膜は乾燥に伴い割れが生じてもよく、一枚の膜として得られなくてもよい。例えば、テルペン系樹脂、シリコーン樹脂、炭化水素樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの皮膜形成樹脂の中でも、シリコーン樹脂を含有することが、耐水性、耐皮脂性に優れる点でより好ましく、具体的には、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上含有することができる。
【0051】
市販品としては、SR1000(トリメチルシロキシケイ酸)、SILFORM FLEXIBLE RESIN(ポリメチルシルセスキオキサン)(モメンティブ社製)等が挙げられる。また、前記シリコーン樹脂と低粘度シリコーン油と混合して用いるものが一般的で、このような混合物としては、例えば、KP−545(アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル30部とデカメチルシクロペンタシロキサン70部)、KF−9021(トリメチルシロキシケイ酸50部とデカメチルシクロペンタシロキサン50部)(信越化学社製)等が挙げられ、これらを1種又は2種以上含有することができる。
【0052】
本発明における成分(E)の皮膜形成樹脂の含有量は、特に制限されないが、0.1〜10%の範囲が好ましく、更に好ましくは、1〜7%である。
【0053】
本発明の固形化粧料には、本発明の効果を損なわない程度で、必要に応じて、前記必須成分以外の各種成分、例えば、界面活性剤、水性成分、水溶性高分子、固形の紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜含有することができる。
【0054】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、大豆リン脂質が挙げられる。
【0055】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。但し、本発明において、得られる効果を損なわないためには、水性成分の含有量は10%以下であることがより好ましい。
【0056】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0057】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0058】
本発明の固形化粧料は、ファンデーション、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、コンシーラー等のメーキャップ化粧料、日焼け止め化粧料等のスキンケア化粧料等が挙げられ、特に限定されないが、本発明の効果が顕著に発揮される化粧料は、ファンデーション、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料である。
【0059】
本発明の固形化粧料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、成分(a)〜(e)及びその他の成分を混合した後、乾式で圧縮成型する方法(以下「乾式成型方法」と略す)、また、成分(a)〜(e)及びその他の成分と揮発性油とを混合してスラリー状とし、これを充填成型した後、該揮発性油を除去して成型する湿式成型方法等が挙げられる。本発明は、成分(a)の常温で液状の油剤中に揮発性油を含有することが、化粧膜のよれのなさ、ツヤ感をより向上させる点等からより好ましいため、乾式成型方法を適用することがより好ましい。乾式成型方法に用いられる充填機器としては、特に限定されないが、弾力性を有する組成物や、流動性を有しない粘土状の組成物等の充填に用いられる充填機器が好ましく、例えば、スクリューフィーダー付充填機、枡型充填機等が挙げられる。
【0060】
スクリューフィーダー付充填機、枡型充填機等の市販品としては、火星人CN580(レオン自動機社製)、TOA小型餃子充填機(東亜工業社製)、豆ミンサーBK−205N(ボニー社製)、つぶぞろいRC−1(品川工業社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下に製造例及び実施例をあげて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0062】
製造例1:部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
内容積5Lのプラネタリーミキサーに、トリメチルシリル末端封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン(平均分子量2340、Si−H 45モル%)1790g、及びジメチルビニルシリル末端封鎖ジメチルポリシロキサン(平均分子量930、ビニル基7.7モル%)710gを投入し、撹拌混合する。同混合溶液に、塩化白金酸の2%イソプロパノール溶液の0.5g添加を行い、70〜80%に昇温し、2時間撹拌を続ける。その後、系内を5〜10mmHgに減圧し、ストリッピングを30分間続行した。この結果、得られた部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、白色の柔軟性を備えた粉体であった。
【0063】
製造例2:デキストリン脂肪酸エステル
平均グルコース重合度30のデキストリン21.41g(0.132mol)をジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62g(0.666mol)とからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)120g(0.396mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質107gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%) 尚、エメリー型の出発原料はコグニス社製のEMARSOL873を用いた。本原料の脂肪酸組成は分岐脂肪酸が60mol%、その他の脂肪酸が40mol%(パルミチン酸10mol%を含む)のものを用いた。
置換度は2.2、イソステアリン酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)、粘度は0mPa・s、タック性は161gであった。
【0064】
実施例1〜10および比較例1〜5 アイシャドウ
下記表1に示す組成のアイシャドウを下記製造方法に従って調製した。得られたアイシャドウについて、下記評価方法1により「弾力性」の評価を行った。下記評価方法2により官能評価(「膜の均一性」、「耐水性、耐皮脂性」)を行った。また、下記評価方法3により「耐衝撃性」の評価を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
※1:コスモール168ARV(日清オイリオ社製)
※2:シリコンKF−96(6CS)(信越化学工業社製)
※3:シリコンKF−995(信越化学工業社製)
※4:シリコンKF−54(信越化学工業社製)
【0067】
(製造方法):実施例1〜10、比較例1〜5
A:成分4,5、8を三本ローラーにて分散、膨潤させる。
B:成分1〜3、6〜7、9、18を70℃にて均一に溶解する。
C:Aに、Bを添加混合する。
D:Cに、成分10〜17を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧しながら混練する。
E:Dをスクリューフィーダー付充填機を用いて容器に充填し、プレス後、アイシャドウを得た。
【0068】
<評価方法1(弾力性)>
前記実施例及び比較例のアイシャドウの弾力性については、英弘精機社製テクスチャーアナライザーによるTPA(texture profile analysis)測定を行なった。測定条件は、2mmΦシリンダープローブ、プローブ速度を0.5mm/secとし、サンプルに対して完全破壊しないように(非破壊領域で)、歪みを25%与えるように調整した。TPA測定は、一定のプローブにより、サンプルに対して2回力を加えて、1回目と2回目の時間差を3sec保持し、1回目の歪みによる高さ変化をL1、2回目の歪みによる高さ変化をL2とし、L2/L1を弾力性(springness)の指標とする。例えば、バネの場合、完全弾性体であることからL1=L2となるため、弾力性L2/L1=1となる。
【0069】
本発明では、以下の基準にて弾力性を判定した。
(判定基準)
(L2/L1) :(判定)
0.85を超える :◎
0.50を超えて、0.85以下:○
0.40を超えて、0.50以下:△
0.40以下 :×
【0070】
<評価方法2(化粧膜の均一性、耐水性、耐皮脂性)>
化粧品評価専門パネル20名に前記実施例及び比較例のアイシャドウを使用してもらい、「化粧膜の均一性」、「耐水性、耐皮脂性」について、各自が以下の基準に従って5段階評価し、アイシャドウ毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。なお、耐水性、耐皮脂性については、アイシャドウ塗布直後の状態と4時間後(日常生活)の状態を比較し、評価した。
<評価基準>
(評価結果):(評点)
非常に良好:5点
良好 :4点
普通 :3点
やや不良 :2点
不良 :1点
<判定基準>
(評点の平均点) :(判定)
4.5以上 :◎
3.5以上〜4.5未満:○
1.5以上〜3.5未満:△
1.5未満 :×
【0071】
<評価方法3(耐衝撃性)>
前記実施例及び比較例のアイシャドウサンプルから5個ずつを選び、木製硬板上へ50cm、の高さから落下させ、耐衝撃性を評価した。5個のサンプルについて落下による変化(壊れ、剥れ、ひび、片寄り)の有無を調べ、その程度に従って下記判定基準により耐衝撃性を評価した。
<判定基準>
(評価結果):(判定)
5個とも全く変化がない :◎
5個のうち1個にわずかな変化がある:〇
5個のうち2個に変化がある :△
5個のうち3個以上に変化がある :×
【0072】
(結果)
表1の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜10のアイシャドウは、「弾力性」、「膜の均一性」、「耐水性、耐皮脂性」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形化粧料であった。一方、油剤と粉体の質量比率が好適でない比較例1,2及び、成分(D)のデキストリン脂肪酸エステルを含有していない比較例3〜5は、全ての項目を満足させるものは得られなかった。
【0073】
実施例11 ファンデーション
下記の処方および製法によりファンデーションを製造した。
(処方) (%)
(1)製造例2のデキストリン脂肪酸エステル 2
(2)製造例1の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物 9
(3)コハク酸2−エチルヘキシル 5
(4)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 6
(5)デカメチルシクロペンタシロキサン ※3 15
(6)メチルフェニルポリシロキサン ※5 5
(7)軽質イソパラフィン 5
(8)トリメチルシロキシケイ酸 5
(9)シリコン処理ベンガラ 0.5
(10)シリコン処理黄酸化鉄 1
(11)シリコン処理黒酸化鉄 0.3
(12)無水ケイ酸 3
(13)ポリアクリル酸アルキル ※6 5
(14)N−ラウロイル−L−リジン ※7 3
(15)硫酸バリウム 3
(16)トリエトキシカプリリルシラン処理酸化チタン 10
(17)フッ素処理マイカ 5
(18)シリコン処理タルク 5
(19)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(20)シリコン処理セリサイト 残量
※5:シリコンKF−56(信越化学工業社製)
※6:マツモトマイクロスフェアM−100(松本油脂製薬社製)
※7:アミホープLL(味の素社製)
【0074】
(製造方法)
A.成分(1)〜(8)を、均一混合する。
B.A.に成分(9)〜(20)を添加し、均一分散し、化粧料基材を得る。
C.B.をスクリューフィーダー付充填機を用いてガラス製ジャー容器に充填し、加圧成型し、ファンデーションを得た。
【0075】
(結果)
得られたファンデーションは、使用時に高い弾力性を有し、化粧膜の均一性、耐水性、耐皮脂性に優れ、更には、耐衝撃性に優れたものであった。
【0076】
実施例12 頬紅
下記の処方および製法により頬紅を製造した。
(処方) (%)
(1)製造例2のデキストリン脂肪酸エステル 0.5
(2)製造例1の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物 5
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン ※3 25
(4)コハク酸2−エチルヘキシル 4
(5)メチルフェニルポリシロキサン ※4 10
(6)トリメチルシロキシケイ酸 5
(7)赤色226号 0.5
(8)黄色4号 1
(9)青色1号 0.1
(10)ベンガラ 0.5
(11)黄酸化鉄 0.3
(12)無水ケイ酸 3
(13)ポリアクリル酸アルキル ※8 5
(14)架橋型シリコーン・網状シリコーンブロック共重合体 ※9 5
(15)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(16)シリコン処理セリサイト 残量
(17)合成金雲母 5
※8:マツモトマイクロスフェアM−101(松本油脂製薬工業社製)
※9:KSP−101(信越化学工業社製)
【0077】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を、均一混合する。
B.A.に成分(7)〜(17)を添加し、均一分散しする。
C.B.を枡型充填機を用いてABS樹脂製皿に充填し、頬紅を得た。
【0078】
(結果)
得られた頬紅は、使用時に高い弾力性を有し、化粧膜の均一性、耐水性、耐皮脂性に優れ、更には、耐衝撃性に優れたものであった。