(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チューハイまたはチューハイテイスト飲料にさっぱり感やキレを向上させる方法は十分に検討されていない。特に、本来のチューハイ感を損ねることなく、かつ、飲料の液色も大きく変化させることなくこの目的を達成する手段は十分でない。
【0006】
本発明の課題は、容器詰飲料において、チューハイ感を損ねることなく、かつ、飲料の液色も大きく変化させずにさっぱり感やキレを向上させることである。
【0007】
また、油脂を含む飲食品を摂取すると、その油脂が口腔中に残存し、不快な感じを与える。そしてその油脂が蓄積すると、不快感は増大する。したがって、食事によってもたらされる油脂を口から洗い流すことが求められる。水などの飲料を飲用すれば当該油脂をある程度口から洗い流すことはできるが、必ずしも十分ではない。
【0008】
本発明の別の課題は、油脂を口から洗い流す能力を有する素材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、紅茶由来ポリフェノールの総含有量と、クエン酸及び/又はリンゴ酸の含有量が特定範囲にある容器詰飲料が、さっぱり感やキレの点で優れていること、及び飲料の液色が濃くなり過ぎないことを見出した。また、本発明者らは、紅茶由来ポリフェノールが、優れた口中の油脂の洗い流し作用を有することも見出した。
【0010】
本発明は、以下のものに関するが、これらに限定されない。
1.容器詰飲料であって、
紅茶由来ポリフェノールの総含有量が0.07〜31.5ppmであり、
クエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計が0〜18.0g/Lであり、そして
波長500nmにおける吸光度が0.2以下である、
前記飲料。
2.リモネンの含有量が0.01〜90ppmである、1に記載の飲料。
3.ショ糖換算で甘味度が20%未満である、1又は2に記載の飲料。
4.果汁を含有する、1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
5.チューハイ又はチューハイテイスト飲料である、1〜4のいずれか1項に記載の飲料。
6.乳化剤の含有量が0.1w/w%以下である、1〜5のいずれか1項に記載の飲料。
7.さらに炭酸を含有する、1〜6のいずれか1項に記載の飲料。
8.さらに、アルコール含有量が1〜10v/v%である、1〜7のいずれか1項に記載の飲料。
9.クエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計が0.01〜18.0g/Lである、1〜8のいずれか1項に記載の飲料。
10.容器詰飲料の製造方法であって、
当該飲料中の紅茶由来ポリフェノールの総含有量を0.07〜31.5ppmに調整する工程、
当該飲料中のクエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計を0〜18.0g/Lに調整する工程、及び
当該飲料の波長500nmにおける吸光度を0.2以下に調整する工程
を含む、前記製造方法。
11.容器詰飲料のさっぱり感及び/又はキレを向上する方法であって、
当該飲料中の紅茶由来ポリフェノールの総含有量を0.07〜31.5ppmに調整する工程、
当該飲料中のクエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計を0〜18.0g/Lに調整する工程、及び
当該飲料の波長500nmにおける吸光度を0.2以下に調整する工程
を含む、前記方法。
12.紅茶由来ポリフェノールを有効成分として含有する、口中の油脂の洗い流し用飲食品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、容器詰飲料において、チューハイ感を損ねることなく、かつ、飲料の液色を大きく変化させずにさっぱり感やキレを向上させることができる。
【0012】
したがって、本発明の飲料は、特に、チューハイ、又はチューハイテイスト飲料として好適である。チューハイテイスト飲料とは、成人向けのチューハイに味を似せた、アルコール含有量が0v/v%のノンアルコール飲料を意味する。
【0013】
ここで、チューハイ感とは、チューハイ又はチューハイテイスト飲料が有する独特の好ましい味であり、酒感、甘味、酸味、フルーツ感のバランス、特に、酒感、炭酸感、甘味、酸味、フルーツ感のバランスがとれたすっきりとした味わいを意味する。また、さっぱり感とは、飲用後の苦味・酸味・エグ味・渋み等の不快な味が残らず、後口がべたべたしないことを意味し、キレとは、飲食品の心地よい香り・風味・味わいが十分にありながらも後味に残らない飲み心地の良さや、のどごしの良さを意味する。
【0014】
また、紅茶由来ポリフェノールを含有する本発明の飲料は、水中で油脂を分散させる能力に優れていることも見出された。しかも、この効果は、紅茶由来ポリフェノール以外の成分として乳化剤を余り含まなくとも発揮される。したがって、本発明の飲料は特に油脂を含有する食品を食する際に有用である。また、紅茶由来ポリフェノール自体を、口中の油脂の洗い流しのために利用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の容器詰飲料(以下、「本発明の飲料」とも記載する)、及び関連する方法などについて、以下に説明する。
【0017】
(紅茶由来ポリフェノール)
本発明に用いられる紅茶由来ポリフェノールは、カメリア・シネンシス(Camellia Sinensis)の葉を発酵して得られる紅茶葉を水などの溶媒で抽出して得ることができる。
【0018】
抽出のためには紅茶葉又は紅茶葉の粉砕物を用いることができる。抽出溶媒は、典型的には、水、エタノールなどのアルコール、又はそれらの組合せである。抽出温度は特に限定されないが、典型的には50〜95℃、60〜80℃、又は70℃である。抽出時間は特に限定されないが、典型的には30秒〜24時間、又は1分〜3時間である。抽出に使用される水などの溶媒の量は、典型的には紅茶葉重量に対して15倍容量以上、15〜150倍容量、又は30〜40倍容量である。
【0019】
得られた抽出物を必要に応じて濃縮又は乾燥させて、紅茶ポリフェノールを含有する紅茶抽出物を得ることができる。当該抽出物は、必要に応じて精製してもよい。
【0020】
本発明の飲料における紅茶由来ポリフェノールの総含有量は、0.07〜31.5ppm、好ましくは0.09〜24.5ppm、より好ましくは0.25〜14.0ppm、より好ましくは0.35〜10.5ppmである。紅茶由来ポリフェノールの含有量が0.07ppm未満では、さっぱり感やキレが十分に得られないことがある。また、総ポリフェノールの含有量が31.5ppmを超えると、味及び外観の点でチューハイらしさが損なわれ得る。
【0021】
本明細書における「紅茶由来ポリフェノールの総含有量」は、タンニン酸換算の量を意味する。より具体的には、含有される紅茶由来ポリフェノールが全てタンニン酸であると仮定して、測定結果からポリフェノール量を求める。ポリフェノールの総含有量(タンニン酸換算)の測定には、例えばFOLIN−DENIS法などの公知の方法を用いることができる。FOLIN−DENIS法を用いる場合には、例えば、所定の濃度でタンニン酸を含有するコントロール溶液と試験液の発色の程度を比較すれば、タンニン酸換算のポリフェノールの総含有量を求めることができる。
【0022】
なお、本明細書において、ppmは重量/容量ppmを意味し、これはmg/Lに相当するものである。
【0023】
紅茶由来ポリフェノールの含有量を調整するためには、使用する紅茶由来ポリフェノール又はそれを含む原料の量を調整すればよい。
【0024】
(クエン酸及びリンゴ酸)
クエン酸は、レモンなどの柑橘類に多く含まれる有機酸であり、やや渋味のある酸味を有する。リンゴ酸は、リンゴなどに多く含まれる有機酸であり、爽快感のある酸味を有する。
【0025】
本発明の飲料に含有されるクエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計は、0〜18.0g/L、好ましくは0.01〜18.0g/L、より好ましくは0.1〜15.0g/Lである。当該飲料はクエン酸及びリンゴ酸の内の一方だけを含有してもよいし、両方含有してもよい。
【0026】
クエン酸及びリンゴ酸の含有量は、HPLC法などの公知の方法を用いて定量することができる。その含有量を調整するためには、使用するクエン酸及びリンゴ酸、又はそれらを含む原料の量を調整すればよい。
【0027】
(吸光度)
本発明の飲料は、紅茶由来ポリフェノールを配合しているにも拘らず、飲料の液色が濃くない。当該飲料の500nmにおける吸光度は好ましくは0.2以下、より好ましくは0.09以下、より好ましくは0.07以下、より好ましくは0.05以下である。
【0028】
(アルコール)
本発明の飲料は、アルコールを含有してもよい。本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
【0029】
アルコールはどのような手段で飲料に含有させてもよいが、本発明の特に好ましい態様の一つはチューハイであるため、本発明の飲料は蒸留酒を含有することが好ましい。蒸留酒は、その原料や製造方法によって限定されない。当該蒸留酒としては、例えば、スピリッツ(例えば、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、コルン)、ニュートラルスピリッツ、リキュール類、ウイスキー類(例えば、ウイスキー及びブランデー)、焼酎が挙げられる。
【0030】
本発明の飲料のアルコール含有量は、好ましくは1〜10v/v%であり、さらにより好ましくは5〜8v/v%である。
【0031】
本明細書においては、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。
【0032】
(リモネン)
本発明の飲料は、リモネンを含有してもよい。ここで、リモネンとはd−リモネンを意味する。リモネンは果汁由来であっても、香料由来であってもよい。
【0033】
本発明の飲料がリモネンを含有する場合、当該飲料中のリモネンの含有量は、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上である。本願発明の効果が得られる限りリモネンの含有量の上限値はないが、リモネンの含有量の上限値は、好ましくは90ppm、50ppm、または10ppmである。例えば、リモネンの含有量は、0.01〜90ppm、0.1〜50ppm、又は0.1〜10ppmであってもよい。d−リモネンの含有量は、GC−MS、HPLC法などの公知のいずれの方法で測定してもよい。以下に、GC−MSの典型的な分析条件を示す。
【0034】
<GC−MS分析条件>
試料となる飲料を以下の条件にて、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)に供する。GCの分析条件は以下のとおり。
GC装置:Agilent Technologies GC−MSD
GCオーブン温度条件:40℃(5分)−6℃/min−240℃
質量分析(MS)条件
四重極設定値:150
イオン源設定値:230
面積値算出条件
トータルイオンモード
質量(LOW):35
質量(HIGH):550
カラム:DB−WAXETR 60m、内径320μm、膜厚0.25μm
試料前処理条件:試料80μLと内部標準物質(デカン酸メチルエステル20ppm
アルコール水溶液)20μLを20mLスクリューキャップバイアル瓶中で混合
ダイナミックヘッドスペース条件
装置:ゲステル社MPS
吸着剤:TENAX
試料気化温度:80℃
試料気化用ガス供給量:3000ml
試料気化用ガス供給速度:100ml/min
試料気化用ガス種類:窒素
ピーク保持時間:MSの解析によって成分および濃度の同定を行う。
標準物質:リモネン
(甘味度)
本発明の飲料の甘味度は、ショ糖換算で好ましくは20%未満、より好ましくは0.1〜10%、さらにより好ましくは0.5〜5%である。飲料の甘味度は、当該飲料に含まれる各甘味成分の量(重量濃度)を、ショ糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量(果汁等由来の甘味成分も含む)を総計することによって求めることができる。なお、ショ糖の甘味1に対する各種甘味成分の甘味の相対比は、公知の砂糖甘味
換算表(例えば、ビバレッジジャパン社「飲料用語辞典」資料11頁)等から求めることができる。
【0035】
(炭酸ガス)
本発明の飲料は、炭酸ガスを含んでもよい。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0036】
本発明の飲料の液温が20℃における炭酸ガス圧は、特に限定されないが、好ましくは0.7〜3.5kgf/cm
2、より好ましくは0.8〜2.8kgf/cm
2である。また、炭酸ガス圧は、0.8〜2.5kgf/cm
2であってもよい。本発明において、炭酸ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA−500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、20℃における炭酸ガス圧を意味する。
【0037】
(果汁)
本発明の飲料は、果汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、あるいは濃縮した濃縮果汁のいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0038】
果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類果汁(オレンジ果汁、うんしゅうみかん果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、柚子果汁、いよかん果汁、なつみかん果汁、はっさく果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、かぼす果汁等)、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁、ライチ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁等)、その他果実の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ベリー果汁、キウイフルーツ果汁等)、イチゴ果汁、メロン果汁などが挙げられる。これらの果汁は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の飲料における果汁の含有量は、特に限定されないが、典型的には、果汁率に換算して0〜100w/w%、又は10w/w%未満である。
【0040】
本発明では、飲料中の「果汁率」を飲料100g中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0041】
果汁率(w/w%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL/<飲料の比重>×100
(他の成分)
本発明における飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0042】
(乳化剤)
本発明の飲料は、好ましくは、乳化剤の含有量が0.1w/w%以下である(本明細書においては、紅茶由来ポリフェノールは乳化剤に含まれないものとする)。それにも拘らず、油脂を容易に分散させることができる。
【0043】
本明細書における「乳化剤」とは、一般に乳化剤として知られている全てのものを意味し、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、エンジュサポニン、オオムギ穀皮抽出物、ダイズサポニン、ステロール、スフィンゴ脂質、ステアロイル乳酸カルシウム、胆汁末、チャ種子サポニン、トマト糖脂質、ビートサポニン、ユッカフォーム抽出物、プロピレングリコール、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンなどが例示される。本発明においては、乳化剤は、直接添加されたものだけではなく、乳化香料などに含まれる乳化剤に由来するものであってもよい。
【0044】
(油脂の分散)
紅茶由来ポリフェノールが水中に存在すると、油脂を水に加えた際に生じる油滴が通常よりも細かく分散する。即ち、紅茶由来ポリフェノールは、油脂を分散させる、水又は水溶液の能力を向上させることができる。紅茶由来ポリフェノールのこのような能力や、それを含有する本発明の飲料が油脂を分散させる能力は、以下の試験をすることにより評価することができる。
【0045】
<試験液の調製>
所定量の紅茶由来ポリフェノールを、以下の表1に示された配合を有するアルコール含有飲料に溶解して試験液を得る。或いは、紅茶由来ポリフェノールを含有する飲料を試験液として用いる。試験液30mlを、下記の工程1〜7を有する方法で試験する。
【0047】
<試験>
工程1.東洋佐々木ガラス株式会社(東洋佐々木硝子社)製、口径約4.9cm、最大外径約6.1cm、厚み約2mm、高さ約11.2cm、深さ約7.5cm、満注容量約140mlのガラス容器に、試験液を30ml注ぎ、
工程2.当該試験液を液温23℃で静置し、
工程3.静置された試験液に辣油(ラー油)(ハウス食品株式会社)を200μl加え、当該ガラス容器にふたをし、
工程4.振盪装置に固定された内寸約6.5cm四方の枡形容器中に当該ガラス容器を置き、水平に直径80mmの円を描くように250回/分の速度で1分間当該枡形容器を振盪し、
工程5.当該ガラス容器を水平にしたまま、回転された試験液を液温23℃で3時間静置し、
工程6.当該ガラス容器の上部から液面の写真を撮影し、そして
工程7.得られた写真に対する目視評価を行い、油脂の分散レベルを決定する。
【0048】
試験に用いる容器の形状は
図1に示すとおりである。工程3におけるふたのためには、パラフィルムなどを用いてよい。工程4の模式図を
図2に示す。振盪装置に固定した内寸約6.5cm四方の枡形容器中にガラス容器を置く。振盪のために用いる振盪装置は、典型的には、タイテック株式会社のBR−300LFである。この装置を用いる場合、
図2のように当該枡形容器が常に同じ方向を向く状態で振盪させる。工程6の写真は、解像度がある程度高いことが好ましく、例えば、800万画素程度の解像度のものを用いることができる。
【0049】
工程7においては、油滴のサイズが小さいこと、そして油滴が偏りなく液面全体に分布することが好ましい。各分散レベルに対応する典型的な分散状態を
図3〜5に示す。これらに基づいて試験液中の油脂の分散レベルを決定する。分散状態が良い程分散レベルは高くなる。分散レベルが2以上であれば、油脂を分散させる能力が十分であると判断される。
【0050】
(容器詰め飲料)
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
【0051】
(方法)
本発明は、別の側面では容器詰飲料の製造方法である。当該方法は、以下の工程を含む。
【0052】
当該飲料中の紅茶由来ポリフェノールの含有量を0.07〜31.5ppmに調整する工程、
当該飲料中のクエン酸及びリンゴ酸の各含有量の合計を0〜18.0g/Lに調整する工程、及び
当該飲料の波長500nmにおける吸光度を0.2以下に調整する工程。
【0053】
飲料中の紅茶由来ポリフェノール含有量、クエン酸及びリンゴ酸の合計含有量、吸光度を調整する方法は、当該飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程を同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。また紅茶由来ポリフェノール含有量、クエン酸及びリンゴ酸の合計含有量、吸光度、アルコール含有量、炭酸ガス圧の好ましい範囲は、飲料に関して上記した通りである。また、追加される他の成分の具体例や量、更には甘味度も、飲料に関して上記した通りである。
【0054】
本発明の製造方法は、容器詰飲料のさっぱり感及び/又はキレを向上することができる。従って、当該製造方法は、別の側面では、容器詰飲料のさっぱり感及び/又はキレを向上する方法である。これは、チューハイ感を損なわずに達成することができる。
【0055】
(口中の油脂の洗い流し用飲食品組成物)
紅茶由来ポリフェノールが存在すると、油脂を水に加えた際に生じる油滴が細かく分散する。このため、当該化合物は、食事などによって口にもたらされる油脂を口から洗い流す、水又は水溶液の能力を向上させることができる。したがって、本発明は、別の側面では、紅茶由来ポリフェノールを有効成分として含有する、口中の油脂の洗い流し用飲食品組成物である。油脂は食事によって口にもたらされてもよいし、別の方法でもたらされてもよい。
【0056】
当該飲食品組成物の形態は、特に限定されないが、例えば、清涼飲料水(例えば、スポーツドリンク、炭酸飲料、果汁飲料)、チューハイテイスト飲料、チューハイなどのアルコール飲料である。或いは、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセルも含む)等の形態であってもよい。当該飲食品組成物は、例えば、機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養補助食品、食事療法用食品、健康食品、サプリメント等であってもよい。
【0057】
口中の油脂の洗い流し用飲食品組成物は、その洗い流し効果に関連した様々な表示を付すことができる。本発明は、以下の表示を付した、口中の油脂の洗い流し用飲食品組成物にも関する:「油っこい食事に合う」、「食事の油を洗い流す」、「口中の油ギレがよい」、「油をさっぱりさせる」、或いはこれらと同視できる表示。当該表示は、当該組成物自体や、それを含む容器又は包装に付すことができる。これらの表示を付したものは、油脂の洗い流しという用途に用いられることが意図されていると考えることができる。
【0058】
当該飲食品組成物における紅茶由来ポリフェノールの含有量は、特に限定されないが、典型的には0.07〜31.5ppmである。
【0059】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値〜上限値」は、それら下限値及び上限値を含む。例えば、「1〜2
」により表される範囲は、1及び2を含む。
【実施例】
【0060】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(試験例1) 紅茶由来ポリフェノールとクエン酸の含有量
紅茶由来ポリフェノールを含有する紅茶抽出物は、以下のようにして製造した。紅茶葉90gを95℃の水810mlに投入後、80〜95℃の温度で時々撹拌しながら45分間抽出した。この抽出液をろ紙でろ過し、1回目の抽出ろ過液を得た。上記抽出工程で残った茶葉を回収し、再度95℃の水720mlに投入後、80〜95℃の温度で時々撹拌しながら45分間抽出した。この抽出液をろ紙でろ過し、2回目の抽出ろ過液を得た。上記1回目及び2回目の抽出ろ過液を混合し、紅茶抽出液1250gを得た。この抽出液の内の50gを濃縮後凍結乾燥して、紅茶抽出物1gを得た。
【0062】
紅茶抽出物及びクエン酸(無水クエン酸:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)の配合量を調整して、炭酸ガス圧1.5kgf/cm
2の飲料である試料及び比較例を製造した。それらの配合は以下の表2に示すとおりである。
【0063】
【表2】
【0064】
得られた試料及び比較例のクエン酸、紅茶抽出物、紅茶由来ポリフェノールの含有量は、表3A〜3Gに記載のとおりである。表中、紅茶由来ポリフェノールの総含有量は「総ポリフェノール」と記載されており、それらは、FOLIN−DENIS法を用いて得られたタンニン酸換算の値である。また、得られた全ての比較例及び試料のアルコール含有量は5v/v%であり、甘味度はショ糖2.46%水溶液相当(甘味度2.46%)あった。以下に記載の方法で、官能評価、油脂の分散、吸光度、外観の試験を行い、それらの結果に基づいて総合評価も行った。なお、それらの試験方法及び評価基準は、特に断りがない限り、他の試験例でも用いる。
【0065】
<官能評価>
訓練されたパネラー3名により、得られた試料と比較例について、チューハイの味(酒感、炭酸感、甘味、酸味、フルーツ感などが複雑に絡み合った味)のバランスを、評点法による官能試験により評価した。専門パネリスト3名が、それらの程度を、5点満点:「非常に優れている」=5点、「優れている」=4点、「よい」=3点、「よくない」=2点、「悪い」=1点で評価し、評価点の平均を算出した。
【0066】
また、後味(キレ)の程度についても、上述の味のバランスと同様に評価した。専門パネリスト3名が、それらの程度を、5点満点:「非常によく感じる」=5点、「よく感じる」=4点、「感じる」=3点、「わずかに感じる」=2点、「感じない」=1点で評価し、評価点の平均を算出した。
【0067】
<油脂の分散状態の評価>
製造された試料と比較例を試験液として用い、下記の工程1〜7を有する方法で試験した。
【0068】
工程1.東洋佐々木ガラス株式会社(東洋佐々木硝子社)製、口径約4.9cm、最大外径約6.1cm、厚み約2mm、高さ約11.2cm、深さ約7.5cm、満注容量約140mlのガラス容器に、試験液を30ml注ぎ、
工程2.当該試験液を液温23℃で静置し、
工程3.静置された試験液に辣油(ラー油)(ハウス食品株式会社)を200μl加え、当該ガラス容器にふたをし、
工程4.振盪装置に固定された内寸約6.5cm四方の枡形容器中に当該ガラス容器を置き、水平に直径80mmの円を描くように250回/分の速度で1分間当該枡形容器を振盪し、
工程5.当該ガラス容器を水平にしたまま、回転された試験液を液温23℃で3時間静置し、
工程6.当該ガラス容器の上部から液面の写真を撮影し、そして
工程7.得られた写真に対する目視評価を行い、油脂の分散レベルを決定する。
【0069】
工程7においては、油滴のサイズが小さいこと、そして油滴が偏りなく液面全体に分布することが好ましい。各分散レベルに対応する典型的な分散状態を示す
図3〜5に基づいて試験液の分散レベルを決定した。
図3が分散レベル1(分散状態が悪い)、
図4が分散レベル2(分散状態が良い)、
図5がレベル3(分散状態が非常に良い)の典型例を示す。
【0070】
<吸光度及び外観>
得られた試料と比較例の500nmにおける吸光度も測定した。測定には島津製作所 UV−1700を用いた。
【0071】
また、比較例と比較して、外観上の液色や形状が大きく変化しないことが好ましいとして、訓練されたパネラー3名が、その観点から目視によって評価した。その程度を、5点満点:「非常に優れている」=5点、「優れている」=4点、「よい」=3点、「よくない」=2点、「悪い」=1点で評価し、評価点の平均を算出した。
【0072】
<総合評価>
専門パネリスト3名が、上記のバランスと後味(キレ)に関する官能評価、油脂の分散状態の評価、吸光度、外観の試験結果から、総合的にチューハイ飲料としての好ましさを評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0073】
5点満点:「非常に優れている」=5点、「優れている」=4点、「よい」=3点、「普通」=2点、「悪い」=1点で評価し、3名の評価点の平均を算出した。平均点の小数点以下1桁を四捨五入し、5段階の評価を設け、5点を「◎+」、4点を「◎」、3点を「○」、2点を「△」、1点を「×」として2点(△)以上を合格とした。
【0074】
結果を以下の表に示す。
【0075】
【表3A】
【0076】
【表3B】
【0077】
【表3C】
【0078】
【表3D】
【0079】
【表3E】
【0080】
【表3F】
【0081】
【表3G】
【0082】
これらの表に示された通り、特定の範囲の含有量のクエン酸と特定範囲の含有量の紅茶由来ポリフェノールを含有する飲料で良好な結果が得られた。
【0083】
次に、クエン酸の存在が効果に影響を与えているかどうかを確認した。具体的には、クエン酸を含有しないことを除いて試料1−6と同じ配合で試料1−6’の飲料を調製し、上記と同様の試験をした。配合及び結果を以下に示す。試験結果から明らかなとおり、クエン酸がなくとも良好な結果が得られた。
【0084】
【表3H】
【0085】
(試験例2) クエン酸とリンゴ酸の比較評価
クエン酸をリンゴ酸に置き換えたことを除いて試料1−6と同じ配合で飲料(試料1−12)を製造した。配合は以下の表に示すとおりである。得られた試料について試験例1と同様の試験をして得られた結果を以下に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
クエン酸と同じ濃度であれば、リンゴ酸を用いても、官能評価等の試験結果はクエン酸の場合と同等になることが分かった。
【0088】
(試験例3) アルコールの影響
アルコール含有量を変更したことを除いて試料1−6と同じ配合で飲料(試料1−13、試料1−13’、試料1−14)を製造した。配合は以下の表に示すとおりである。得られた試料及び比較例について試験例1と同様の試験をして得られた結果を以下に示す。
【0089】
【表5】
【0090】
アルコールが存在せずとも良好な結果が得られた。また、アルコールが存在する場合には、その量に拘わらず本発明の効果が優れていた。
【0091】
(試験例4)甘味料の影響
果糖ぶどう糖液糖を高甘味度甘味料に変更した点を除いて試料1−6と同じ配合で、飲料(試料1−15〜1−17)を製造した。配合は以下の表に示すとおりである。試料1−15〜1−17の、ショ糖換算の甘味度は、2.46%であった。得られた試料について試験例1と同様の試験をして得られた結果を以下に示す。
【0092】
甘味料が異なっていても、同様に良好な結果が得られることが明らかとなった。
【0093】
【表6】
【0094】
(試験例5) リモネンの影響
リモネンを一定量添加したことを除いて試料1−6と同じ配合で飲料(試料1−18〜1−21)を製造した。配合を以下の表に示す。得られた試料について、試験例1と同様の試験を行った。結果を以下に示す。特定量のリモネンが存在すると、さらに優れた効果が得られた。
【0095】
【表7】