【文献】
Chemico-Biological Interactions,2013年 5月25日,Vol 203 No 3,543-546
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病;パーキンソン病;ハンチントン病;運動ニューロン疾患;脊髄小脳1型、2型、および3型;筋萎縮性側索硬化症(ALS);ならびに前頭側頭型認知症からなる群より選択される、請求項3に記載の環状ポリペプチド。
α7ニコチン性受容体の選択的アロステリックモジュレーターである;および/またはβアミロイドの結合をアウトコンピート(outcompete)する;および/または単離もしくは精製されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の環状ポリペプチド。
【発明の概要】
【0013】
実施例で記載されているように、本発明者は、驚くべきことに、AChEのC末端に由来するペプチドの環状形態は、in vitroでのAChEおよび/またはその末端ペプチドの非古典的な効果(すなわち酵素活性とは独立したAChEの効果)を選択的に阻害し、神経変性疾患を効率良く治療するのに用いられうることを実証した。
【0014】
したがって、本発明の第1の側面によれば、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列、またはそのトランケーションを含む、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0015】
環状ポリペプチドは、アミノ酸の環状鎖を形成するペプチド結合によってN末端およびC末端自身が互いに連結されているが、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列またはそのトランケーションを含む環状ペプチドは、今日に至るまで開発されていない。実施例で記載されているように、本発明者は、驚くべきことに、過酸化水素の非特異的な作用に対する保護が無効力であったことから、第1の側面の環状ポリペプチドの阻害作用がきわめて選択的かつ受容体媒介性であることが示唆されることを実証した。また、発明者は、本発明の環状ポリペプチドが、公知の直鎖状ペプチドであるT14およびT30の毒性作用に拮抗することを観察して非常に驚き、様々な試験において、これらはα7ニコチン性受容体のアロステリック部位(例えば、イベルメクチン感受性のアロステリック部位)を通じたカルシウムのさらなる流入を防止し、βアミロイドと同様に、直鎖状T14およびT30ペプチドの結合を効果的にアウトコンピート(outcompete)することが示唆された。したがって、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、α7ニコチン性受容体の選択的拮抗薬(a selective antagonist)であってもよい。
【0016】
しかしながら、本発明者らは、本発明の環状ポリペプチドが、T30およびアミロイドベータペプチドの作用と拮抗するα7ニコチン性受容体の不活性なアロステリックモジュレーターとして作用することを示していた。したがって、好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、α7ニコチン性受容体の選択的アロステリックモジュレーターであり、より好ましくは、不活性な選択的アロステリックモジュレーターである。「不活性な(inert)」との語は、本発明のポリペプチドが、毒性化合物、すなわちT30およびアミロイドベータペプチド(βアミロイド)の存在下において、受容体のアロステリックモジュレーターとしてのみ作用することを意味する。
【0017】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、αニコチン性受容体のアロステリック部位(最も好ましくは、イベルメクチン感受性のアロステリック部位)を通じてカルシウムのさらなる流入を防ぐ。環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、βアミロイドの結合をアウトコンピート(outcompetes)することが好ましい。
【0018】
本発明のペプチドは、既に各受容体部位を占有するT30ペプチドの内因性当量をアウトコンピート(outcompete)することについて予測されていなかった。さらに、向上した環状ペプチドの安定性は、この効果的な置換を説明する。したがって、環状ポリペプチドは、直鎖状のT14、T30ペプチドおよびβアミロイドの以前に確立された毒性作用を防ぐことができる。ゆえに、本発明者は、本発明の環状ポリペプチドは、さらなる細胞喪失の安定化における神経変性疾患の治療のために多大な有用性を有するであろうと考えている。
【0019】
「その誘導体または類似体」との語は、そのうちのアミノ酸残基が、類似する側鎖またはペプチド骨格の特性を有する残基(天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはアミノ酸模倣体を問わず)に置換されるポリペプチドを意味する。
【0020】
「に由来する」との語は、AChEのC末端内またはその一部に存在するかそれを形成するアミノ酸配列の誘導体または改変体であるアミノ酸配列を意味する。
【0021】
「そのトランケーション」との語は、AChEに由来する環状ポリペプチドは、アミノ酸の除去によりサイズが減少することを意味する。アミノ酸の減少は、本発明の環状ポリペプチドへの環化前にペプチドのC末端またはN末端からの残基の除去によってなされるか、あるいは環化前にペプチドのコアからの1つ以上のアミノ酸の欠失によってなされる。
【0022】
好ましくは、環状ポリペプチドは、精製および/または単離され、すなわち、それは天然で発見されない。
【0023】
アセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンを加水分解するセリンプロテアーゼであり、当業者にとって周知である。脳で発見されるアセチルコリンエステラーゼの主要な形態は、末端付加(tailed)アセチルコリンエステラーゼ(T−AChE)として知られている。本発明は、神経変性疾患の治療と主に関係していることを考慮すると、環状ポリペプチドまたはこれらの誘導体もしくは類似体は、末端付加アセチルコリンエステラーゼ(T−AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列、またはそのトランケーションを含むことが好ましい。
【0024】
ヒト末端付加アセチルコリンエステラーゼ(GenBank:AAA68151.1)の一態様のタンパク質配列は、長さが614アミノ酸であり、本明細書では配列番号1として以下のように提供される。
【0026】
当然のことながら、配列番号1の最初の31アミノ酸残基は、タンパク質が放出されることによって除去され、それによって583のアミノ酸配列が残る。したがって、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、アセチルコリンエステラーゼのC末端に由来するアミノ酸配列、またはそのトランケーションを含み、この際、アセチルコリンエステラーゼは、配列番号1で実質的に定義されるアミノ酸配列を含み、好ましくはN末端の31アミノ酸が除かれる。
【0027】
好ましくは、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の300、200、100または50アミノ酸、またはそのトランケーションを含み、この際、アセチルコリンエステラーゼは配列番号1で実質的に定義されるアミノ酸配列を含む。環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、好ましくは、アセチルコリンエステラーゼのC末端を形成する最後の40アミノ酸に由来するアミノ酸配列、またはそのトランケーションを含む。
【0028】
環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、好ましくは8〜40アミノ酸残基、より好ましくは10〜30アミノ酸、特に好ましくは12〜20アミノ酸を含む。
図11に示すように、本発明者は、βアミロイド(Aβ)とAChEのC末端に由来する3種類のペプチド(本明細書中、T30、T14およびT15と称される)との間の配列アラインメントを作成した。βアミロイド(Aβ)の一部のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号2として以下のように提供される。
【0030】
T30(配列番号1の最後の30アミノ酸残基に相当する)のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号3として以下のように提供される。
【0032】
T14のアミノ酸配列(配列番号1の端部に向かって位置する14アミノ酸残基に相当し、かつT30において見られる最後の15アミノ酸を欠く)は、本明細書では配列番号4として以下のように提供される。
【0034】
T15のアミノ酸配列(配列番号1の最後の15アミノ酸残基に相当する)は、本明細書では配列番号5として以下のように提供される。
【0036】
本発明者は、配列番号2−5に基づくコンセンサス配列を一般化し、本明細書では配列番号6として以下のように提供される。
【0038】
好ましくは、配列番号6において、x
1は、塩基性アミノ酸残基であってもよく、好ましくはヒスチジン(H)であってもよい;x
2は、塩基性アミノ酸残基であってもよく、好ましくはアルギニン(R)であってもよい;x
3は、芳香族アミノ酸残基であってもよく、好ましくはトリプトファン(W)であってもよい;x
4は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸残基であってもよく、好ましくはセリン(S)であってもよい;x
5は、トリプトファン(W)またはメチオニン(M)であってもよい。
【0039】
当然のことながら、配列番号2〜6として表されるいかなる配列も、容易に環化して、第1の側面の環状ポリペプチドを形成することができる。例えば、ペプチドの環化は、側鎖−側鎖、側鎖−骨格、または頭−尾(C末端−N末端)環化技術によってなされうる。好ましい一実施形態において、頭−尾(head−to−tail)環化は、環状ポリペプチドを製造するのに好ましい方法である。環状ポリペプチドは、古典的な溶液相での直鎖状ペプチドの環化、あるいは担体上での(resin−based)環化のいずれかを用いて合成することができる。環化のための好ましい方法は、実施例に記載されている。他の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、環化切断アプローチを用いて製造され、この際、段階的な直鎖状ペプチド合成後の環化によって環状ポリペプチドは合成される。この方法の利点は、側鎖が固定される必要が無いことであり、ゆえにより汎用的である。好ましくは、使用前に、環状ペプチドの合成サンプルをMALDI−TOF MSにより分析してもよい。
【0040】
したがって、本発明に係る好ましいポリペプチドは、環状の配列番号3、4、5もしくは6、またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含む。
【0041】
一実施形態において、環状ポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含み、N末端のリジン残基はC末端のロイシン残基に連結され、アミノ酸の環状鎖が形成される。他の実施形態において、環状ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、N末端のアラニン残基は、C末端のリジン残基に連結される。さらに他の実施形態において、環状ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含み、N末端のアスパラギン残基は、C末端のロイシン残基に連結される。他の実施形態において、環状ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、この際、x
1は塩基性アミノ酸残基、好ましくはヒスチジン(H)であってもよく;x
2は塩基性アミノ酸残基、好ましくはアルギニン(R)であってもよく;x
3は芳香族アミノ酸残基、好ましくはトリプトファン(W)であってもよく;x
4は脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸残基、好ましくはセリン(S)であってもよく;x
5はトリプトファン(W)またはメチオニン(M)であってもよく、N末端のアラニン残基は、C末端のヒスチジン残基に連結される。
【0042】
本発明者は、環化した配列番号4(すなわち、本明細書中、「環化CT14」、「CT14」または「NBP14」と称される)が、驚くことに、α7ニコチン性受容体の真の拮抗薬として作用することを発見した。言い換えれば、環化した配列番号4は、直鎖状T14、T30およびβアミロイドの毒性から細胞を保護したということである。さらに、環化T14は、直鎖状T14およびT30のこの毒性によって誘発される代償的なAChEの放出を阻害する。加えて、彼らは、単独で与えられた環化T14は、ラット脳切片におけるCa
2+の濃度に対して顕著な影響を有しないが、βアミロイドの効果を阻害することを観察した。したがって、第1の側面の好ましい環状ポリペプチドは、環状の配列番号4またはその機能的変異体またはフラグメントを含む。
【0043】
当業者であれば、機能的変異体および類似体は、実施例に記載されたいずれの実験おいても、環状T14と実質的に同一の生物学的活性を保持することを理解するであろう。したがって、機能的変異体または類似体は、α7ニコチン性受容体のイベルメクチン感受性のアロステリック部位の拮抗活性に基づいて、またはAChEの放出を阻害する程度により、または直鎖状T14、T30およびβアミロイドの毒性から細胞を守る程度により、またはラット脳切片におけるCa
2+レベルを調節する程度により、選択することができる。
【0044】
本発明者は、第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体または類似体の環化によって提供される、観察された受容体拮抗作用が、当業者にとって明白でなかったのは驚くことではないと確信している。このように、本発明者は、いかなるポリペプチドの環化も、α7ニコチン性受容体などの受容体を拮抗するために使用することができると考えている。
【0045】
ゆえに、第2の側面において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体を含む、受容体拮抗薬が提供される。
【0046】
さらに、第3の側面において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、受容体拮抗薬としての使用のために提供される。
【0047】
上述したように、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の環状ポリペプチドが、T30およびアミロイドベータペプチドの作用と拮抗するα7ニコチン性受容体の不活性なアロステリックモジュレーターとして作用することを示している。
【0048】
ゆえに、第4の側面において、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体を含む受容体アロステリックモジュレーターが提供される。
【0049】
第5の側面において、受容体のアロステリックモジュレーターとしての使用のための、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0050】
環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、好ましくは、第1の側面に係るポリペプチド、その誘導体もしくは類似体である。受容体は、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体剤が拮抗するかアロステリックに調節するものであるが、α7受容体であることが好ましい。しかしながら、好ましくは、受容体は、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が拮抗するかアロステリックに調節するものであるが、α7ニコチン性受容体であることが好ましい。環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、受容体上のアロステリック部位、好ましくはイベルメクチン感受性アロステリック部位について拮抗するか調節することが好ましい。
【0051】
本発明者らは、環状ポリペプチドが治療(例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療)に使用されうることを示すことが第一であると考えている。
【0052】
したがって、さらなる側面において、治療または診断における使用のための、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0053】
さらなる側面において、神経変性疾患の治療、改善または予防における使用のための、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体が提供される。
【0054】
さらに別の側面において、患者における神経変性疾患を治療、改善または予防する方法が提供され、当該方法は、治療上有効な量の環状ポリペプチド、その誘導体または類似体を、かような治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0055】
上述したように、本発明者は、本明細書で記載されている環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または受容体拮抗薬、またはアロステリックモジュレーターは、神経変性疾患を治療するための基礎を形成するために使用されうると考えている。
【0056】
ゆえに、本発明の第6の側面において、治療または診断における使用のための、第1の側面に係る環状ポリペプチドまたはその誘導体もしくは類似体、第2の側面に係る受容体拮抗薬、第4の側面に係る受容体アロステリックモジュレーターが提供される。
【0057】
第7の側面において、神経変性疾患の治療、改善または予防における使用のための、第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または第2の側面に係る受容体拮抗薬、または第4の側面に係る受容体アロステリックモジュレーターが提供される。
【0058】
第8の側面において、患者における神経変性疾患を治療、改善または予防する方法が提供され、当該方法は、治療上有効な量の、第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または第2の側面に係る受容体拮抗薬、または第4の側面に係る受容体アロステリックモジュレーターを、かような治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0059】
好ましくは、神経変性疾患は、アルツハイマー病;パーキンソン病;ハンチントン病;運動ニューロン疾患;脊髄小脳1型、2型、および3型;筋萎縮性側索硬化症(ALS);ならびに前頭側頭型認知症からなる群より選択されるが、好ましくはアルツハイマー病である。
【0060】
治療される神経変性疾患は、それぞれ「グローバル(Global)」ニューロンの損傷または死を特徴とするものであることが好ましい。例えば、神経変性疾患は、アルツハイマー病;パーキンソン病;ハンチントン病;運動ニューロン疾患;脊髄小脳1型、2型、および3型;筋萎縮性側索硬化症(ALS);前頭側頭型認知症;ならびに統合失調症からなる群から選択される。
【0061】
好ましくは、治療される神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、または運動ニューロン疾患である。最も好ましくは、治療される神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0062】
当然のことながら、本発明に係る環状ポリペプチドまたは受容体拮抗薬または受容体アロステリックモジュレーターは、アルツハイマー病などの神経変性疾患を治療、改善または予防するために、単剤療法(すなわち、環状ポリペプチド、その誘導体または類似体の使用)において用いられる薬剤に用いてもよい。あるいは、本発明に係る環状ポリペプチドまたは受容体拮抗薬または受容体アロステリックモジュレーターは、補助剤として、または、他のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤のようなアルツハイマー病の治療、改善、予防するための公知の治療法と組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本発明に係る環状ポリペプチドは、特に、組成物の使用方法に応じて、多くの異なる形態を有する組成物と組み合わせてもよい。ゆえに、例えば、組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液、または治療を必要とするヒトまたは動物に投与してもよいその他の適切な形状の形態であってもよい。当然のことながら、本発明に係る薬剤の賦形剤は、投与される患者が耐えうるものであるべきであり、血液脳関門を通過して環状ポリペプチドを送達できることが好ましい。
【0064】
当然のことながら、いかなる脳疾患の治療の有効性も、候補治療化合物の血液脳関門(BBB)の通過能に左右される。本発明者は、環状T14のサイズのペプチドは、以下の経口投与にすぐに利用できないと考えている。しかしながら、アルツハイマー病において、血液脳関門は透過性が増加し、環状14が中枢神経系(実に理想的には、必要とされる、すなわちBBBが支障をきたす(compromised)変性部位)まで到達可能となることが知られている。
【0065】
環状T14(すなわち、NBP−14)などの大きな分子を用いてBBBを通過するために2つの主要な戦略を適用してもよく、以下を含む:(1)特に脳を標的とし、活性化合物を送達するためのトランスポーターとしてのナノ粒子の使用。この方法は、脳にペプチド、タンパク質および抗癌剤を送達するために使用実績がある;(2)カーゴペプチドの使用。特にBBBを通過して輸送されるかようなペプチドを添加することで、環状ポリペプチドの移動が容易に可能となる。
【0066】
本発明に係る環状ポリペプチドを含む薬剤は、多くの方法で使用することができる。例えば、経口投与は、錠剤、カプセルまたは液体形態において経口摂取されうる組成物に環状ポリペプチドが含まれる場合において、必要とされうる。鼻用スプレーによるペプチド投与は、経口投与または静脈投与よりも迅速かつ効率的に脳に到達することから(http://memoryzine.com/2010/07/26/nose−sprays−cross−blood−brain−barrier−faster−and−safer/を参照)、環状T14(すなわちNBP14)を投与する代わりの選択肢として、鼻用スプレーが用いられるであろう。したがって、本発明に係る環状ポリペプチドを含む組成物は、吸入(例えば、鼻腔内)により投与してもよい。また、組成物は、局所使用のために調合してもよい。例えば、クリームまたは軟膏は、(例えば、脳に隣接する)皮膚に適用してもよい。
【0067】
本発明に係る環状ポリペプチドは、徐放デバイスまたは遅延放出デバイス(a slow− or delayed−release device)に組み込まれてもよい。例えば、かようなデバイスを皮膚上または皮内に挿入し、数週間または数ヶ月にわたって薬剤を放出してもよい。デバイスは治療部位(例えば、頭)に少なくとも隣接して配してもよい。本発明に係る環状ポリペプチドを用いた長期治療が必要であり、頻繁な投与(例えば、少なくとも連日注射)を通常的に要する場合において、かようなデバイスは特に有利である。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明に係る薬剤は、患者に対して、血流に、または直接治療を必要とする部位に注射することによって投与してもよい。例えば、薬剤は、少なくとも脳に隣接して注射してもよい。注射は、静脈内(ボーラスまたは点滴)または皮下(ボーラスまたは点滴)または皮内(ボーラスまたは点滴)であってもよい。
【0069】
当然のことながら、必要とされる環状ポリペプチドの量は、その生物学的活性および生物学的利用能によって決定され、投与様式、環状ポリペプチドの物理化学的性質、およびそれが単独療法または併用療法のいずれで使用されるのかに依存する。また、投与頻度は、治療される患者内の環状ポリペプチドの半減期に影響されるであろう。投与される最適用量は、当業者によって決定され、使用中の特定の環状ポリペプチド、薬剤組成物の強度、投与様式、および神経変性疾患の進行によって異なるであろう。治療される特定の患者に依存する追加因子は、患者の年齢、体重、性別、食事および投与時間を含み、これによって用量を調整する必要性が生じる。
【0070】
一般的に、治療、改善または予防するために、本発明に係る環状ポリペプチドは、0.001μg/kg体重〜10mg/kgの一日用量で使用されてもよく、使用する環状ポリペプチドによる。一日用量は、より好ましくは0.01μg/kg体重〜1mg/kg体重であり、最も好ましくは約0.1μg/kg〜10μg/kg体重である。
【0071】
環状ポリペプチドは、神経変性疾患の発症前、発症中または発症後に投与してもよい。毎日の用量は、単回投与(例えば、1日1回の注射または鼻腔スプレーの吸入)として与えられてもよい。あるいは、環状ポリペプチドは、1日2回以上の投与を必要としてもよい。一例として、環状ポリペプチドは、(すなわち、体重70kgを仮定して)0.07μg〜700mgの量で、1日2回(または、治療される神経変性疾患の重症度によってはそれ以上)投与してもよい。治療を受ける患者は、(2回投与の場合)起床時に1回目の投与を、夕方またはそれから3〜4時間空けて2回目の投与を受けてもよい。あるいは、複数回投与を必要としない患者に対して、最適な用量の本発明に係る環状ポリペプチドを提供するために、徐放デバイスを用いてもよい。
【0072】
本発明に係る環状ポリペプチドの特定の配合や(薬剤の一日用量や投与頻度などの)正確な治療計画を形成するのに、製薬業界で従来採用されているものなど公知の方法(例えば、in vivo実験、臨床試験など)を用いてもよい。本発明者は、本発明に係る環状ポリペプチドの使用に基づき、自らが抗神経変性疾患組成を提案した第一人者であると考えている。
【0073】
したがって、本発明の第9の側面において、治療上有効な量の第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または第2の側面に係る受容体拮抗薬、または第4の側面に係る受容体アロステリックモジュレーターと、必要に応じて、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬剤組成物が提供される。
【0074】
薬剤組成物は、好ましくは、抗神経変性疾患組成物、すなわち、アルツハイマー病などの患者の神経変性疾患の治療改善、予防または治療において使用される医薬製剤である。
【0075】
また、本発明は、第10の側面において、第9の側面に係る薬剤組成物の製造方法を提供する。当該方法は、治療上有効な量の第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体もしくは類似体、または第2の側面に係る受容体拮抗薬、または第4の側面に係る受容体アロステリックモジュレーターと、薬学的に許容される賦形剤とを組み合わせることを含む。
【0076】
環状ポリペプチド、その誘導体または類似体は、ここで開示されている環状T14(すなわち、NBP14)、すなわち配列番号4であることが好ましい。
【0077】
「患者」は、脊椎動物、哺乳類または家畜であってもよい。したがって、本発明に係る薬剤は、いかなる哺乳動物、例えば家畜(例えば馬)、ペットを治療するのに使用してもよく、または他の獣医学用途において使用してもよい。しかしながら、最も好ましくは、患者はヒトである。
【0078】
本明細書で称される、環状ポリペプチドの「治療上有効な量」は、患者に投与した際、神経変性疾患の症状を治療し、所望の効果を生じるのに必要とされる活性剤量である任意量である。
【0079】
例えば、使用される環状ポリペプチドの治療上有効な量は、約0.001mg〜約800mg、好ましくは約0.01mg〜約500mgであってもよい。環状ポリペプチドの量は、約0.1mg〜約100mgであることが好ましい。
【0080】
本明細書で称される、「薬学的に許容される賦形剤」は、当業者にとって薬剤組成物を処方するのに有用であると知られている、公知の化合物または公知の化合物の組み合わせである。
【0081】
一実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、固体であってもよく、組成物は粉末または錠剤の形態であってもよい。固体の薬学的に許容可能な賦形剤は、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、染料、充填剤、流動促進剤、圧縮補助剤、不活性結合剤、甘味料、防腐剤、コーティング剤または錠剤崩壊剤として作用しうる1つ以上の物質を含む。また、賦形剤は、封止材(an encapsulating material)であってもよい。粉末において、賦形剤は、本発明に係る微細な活性剤との混合物である微細固体である。錠剤において、活性剤(すなわち、モジュレーター)を、圧縮特性を有する賦形剤と適当な割合で混合し、所望の形状・大きさに圧縮してもよい。粉末および錠剤は、活性物質を99%以下含むことが好ましい。好適な固体賦形剤としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂がある。他の実施形態において、薬学的賦形剤はゲルであってもよく、組成物はクリームなどの形態であってもよい。
【0082】
しかしながら、薬学的賦形剤は液体であってもよく、薬剤組成物は溶液の形態であってもよい。液体賦形剤は、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤および加圧組成物を調製するのに使用される。本発明に係る活性剤(環状ポリペプチド)は、水、有機溶媒、それらの混合物または薬学的に許容される油または脂など、薬学的に許容される液体賦形剤に溶解または懸濁してもよい。液体賦形剤は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味料、香料、懸濁化剤、増粘剤、色素、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤などの他の適当な医薬品添加物を含有してもよい。経口および非経口投与向けの液体賦形剤の好適例としては、水(上記の添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を一部含む)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびその誘導体、ならびに油((例えば、分留ヤシ油およびラッカセイ油)。また、非経口投与の場合、賦形剤は、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルとすることができる。滅菌された液体賦形剤は、非経口投与向けの滅菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物向けの液体賦形剤は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される噴射剤とすることができる。
【0083】
滅菌された溶液または懸濁液である液体薬剤組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、特に皮下注射によって利用することができる。環状ポリペプチドは、滅菌水、生理食塩水または他の好適な滅菌注射用媒体を用いて投与する際、溶解または懸濁されうる滅菌固体組成物として調製することができる。
【0084】
本発明の環状ポリペプチドおよび組成物は、他の溶質や懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびエチレンオキシドと共重合したその無水物)などを含む、滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与されてもよい。また、本発明に係る使用される環状ポリペプチドは、液体または固体の組成物形態で経口投与することができる。経口投与に好適な組成物は、ピル、カプセル剤、顆粒剤、錠剤および粉末などの固体形態、ならびに溶液、シロップ、エリキシルおよび懸濁液などの液体形態を含む。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョンおよび懸濁液が含まれる。
【0085】
本発明者らは、その拮抗的性質のために、第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体または類似体に驚くべき治療効果があることを実証したが、設計された非臨床関連実験においてα7ニコチン性受容体の構造および/または機能を調査するのに有用であろうと考えている。
【0086】
したがって、さらなる側面において、α7ニコチン性受容体を調査するためのin vitroまたはex vivoの分析方法における、第1の側面に係る環状ポリペプチド、その誘導体または類似体の使用方法が提供される。
【0087】
好ましくは、当該方法は、α7ニコチン性受容体のアロステリック部位の探索を含む。好ましくは、当該方法は、α7ニコチン性受容体を通じたカルシウムのさらなる流入を防止するために環状ペプチドを使用することを含む。環状ペプチドは、アンタゴニストとして機能し、カルシウムイオンを阻害することが好ましい。
【0088】
当然のことながら、本発明は、核酸またはペプチドまたはその変異体、誘導体または類似体にまで拡張するものであり、その機能性変異体または機能性フラグメントを含む、本明細書で言及される配列のいずれかのアミノ酸または核酸配列を実質的に含む。「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「機能性変異体」および「機能性フラグメント」は、例えば配列番号1−6で定義される配列と40%の同一性であるなど、本明細書で言及されるいずれか1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性を有する配列である。
【0089】
また、言及される配列のいずれかと65%超、好ましくは70%超、よりこのましくは75%超、さらにより好ましくは80%超である配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列についても想定される。好ましくは、アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、言及される配列のいずれかと少なくとも85%の同一性を有し、言及される配列のいずれかと、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも92%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の同一性、最も好ましくは少なくとも99%の同一性である。
【0090】
当業者であれば、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性割合の計算方法を理解するであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性割合(the percentage identity)を計算するためには、まず2つの配列のアラインメントを準備し、配列同一性値を計算する。2つの配列の同一性割合は、(i)配列をアラインするために使用される方法(例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith−Waterman(異なるプログラムで実施した)または3D比較による構造アラインメント)、および(ii)アライメント方法によって使用されるパラメータ(例えば、ローカル対グローバルアライメント、ペアスコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)、ギャップペナルティ(例えば、関数形式や定数))に依存して、異なる値をとる。
【0091】
アライン後、2つの配列間の同一性割合を計算する方法は多数ある。その一つとして、例えば、一致数(the number of identities)を(i)最短配列長さ、(ii)アラインメント長さ、(iii)配列の平均長さ、(iv)非ギャップ位置数、または(iv)オーバーハングを除く等価位置数で除してもよい。さらに、当然のことながら、同一性割合は、長さにも大きく依存する。ゆえに、配列の短いペアでは、より高い配列同一性が偶然に発生することが予想される。
【0092】
したがって、当然のことながら、タンパク質またはDNA配列の正確なアラインメントは複雑なプロセスである。有名な多重アラインメントプログラムであるClustalW(Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research,22,4673−4680;Thompson et al.,1997,Nucleic Acids Research,24,4876−4882)は、本発明に合致したタンパク質またはDNAの多重アラインメントを生成する上で好適な方法である。ClustalWに好適なパラメータは下記のとおりである:DNAアラインメントの場合:ギャップオープンペナルティ=15.0、ギャップ伸長ペナルティ=6.66、およびマトリックス=アイデンティティ。タンパク質アライメントの場合:ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、およびマトリックス=Gonnet。DNAおよびタンパク質のアラインメントの場合:ENDGAP=−1およびGAPDIST=4。当業者であれば、最適な配列アラインメントのためにこれらおよび他のパラメータを変更することが必要なことに気づくであろう。
【0093】
好ましくは、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性割合の計算は、その後、(N/T)
*100などのアラインメントから計算してもよく、この際、Nは、同一の残基を共有する配列における位置の数であり、Tは、ギャップを含みオーバーハングを除いて比較した位置の総数である。したがって、2つの配列間の同一性割合を計算するための最も好ましい方法は、(i)例えば、上記のように、好適な一連のパラメータを用いてClustalWプログラムを用いて配列アラインメントを作成し、および(ii)NおよびTを次式に挿入する:配列同一性=(N/T)
*100。
【0094】
類似する配列を特定するための他の方法は、当業者にとって公知である。例えば、実質的に類似するヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下でDNA配列またはその相補体にハイブリダイズする配列によってコードされる。ストリンジェントな条件は、ヌクレオチドが約45℃で3×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でフィルターに結合したDNAまたはRNAにハイブリダイズさせた後、約20〜65℃で0.2×SSC/0.1%SDS中で少なくとも1回洗浄することを意味する。あるいは、実質的に類似するポリペプチドは、配列番号1−6で示される配列とは、少なくとも1アミノ酸、しかし5、10、20、50または100未満のアミノ酸が異なっていてもよい。
【0095】
遺伝コードの縮退により、これによってコードされるタンパク質配列に実質的に影響を及ぼすことなく、本明細書に記載されるいかなる核酸配列は変異または変化して、その機能性変異体を提供してもよいことは明白である。好適なヌクレオチド変異体は、配列内で同一のアミノ酸をコードし、ゆえにサイレントな変化を生む異なるコドンの置換によって変更された配列を有するものである。他の好適な変異体は、対応するヌクレオチド配列を有するが、置換されるアミノ酸と同様の生物物理学的性質の側鎖を有するアミノ酸をコードする、異なるコドンの置換によって変更される配列の全部または一部を含むものであり、保守的な変化を生む。例えば、小さい非極性の疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリンおよびメチオニンが含まれる。大きい非極性の疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが含まれる。極性の中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが含まれる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。ゆえに、いずれのアミノ酸が同様の生物物理学的性質を有するアミノ酸で置換されてもよいか当然に理解され、当業者であればこれらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知るであろう。
【0096】
(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)ここで記載された特徴のすべて、および/または開示された方法またはプロセスの過程のすべては、少なくともかような特徴および/または過程の一部が相互に排他的である場合を除き、上記の側面のいずれと組み合わせてもよい。
【0097】
本発明をより理解するため、および本発明の実施形態を有効に実施することができる方法を示すために、参照として、図面を添付する。
【実施例】
【0099】
ここで、配列番号4は、「環化(cyclated)T14」、「CT14」または「NBP14」を意味するものとする。
【0100】
<材料および方法>
[ペプチドの環化]
直鎖状ペプチドの環化を達成するために、ここで記載される3つの技術、すなわち側鎖−側鎖、側鎖−主鎖および頭−尾(head−to−tail)(C末端−N末端)環化を用いた。頭−尾環化は、広く研究されており、(1分子あたり2つ以下の)指向された(directed)Cys−Cysジスルフィド環化に関与しうる。反応を注視することで、確実に100%環化される。合成には、(1)高希釈濃度下での古典的な溶液相での直鎖状ペプチド環化および(2)担体上での(resin−based)環化の2つの主要なアプローチが用いられる。固相合成(1)において、2つの異なるプロトコールを採用した:
(a)イミダゾール、3酸、4アミン’またはアルコールなどの側鎖官能基を介して固定されたペプチドの担体上環化を行った。ペプチドをC末端でエステルとして直交に(orthogonally)保護した後、通常のBocまたはFmoc合成を通じて結合し、ケン化、環化および切断した。
【0101】
(b)用いた他のプロトコールは、環化切断アプローチであり、段階的な直鎖状ペプチド合成を行った後、環化により環状ペプチドを合成した。この方法の1つの長所は、側鎖を固定する必要が無いことであり、(a)より汎用的なアプローチとなっている(Christopher J.White and Andrei K.Yudin(2011)Nature Chemistry 3;Valero et al(1999)J Peptide Res.53,76−67;Lihu Yang and Greg Morriello(1999)Tetrahedron Letters 40,8197−8200;Parvesh Wadhwani et al(2006)J.Org.Chem.71,55−61)。
【0102】
環状ペプチドの生成サンプルをMALDI−TOF MSにより分析した。
【0103】
[PC12細胞培養]
PC12細胞はクローンであり、副腎髄質由来の褐色細胞腫細胞株である(Greene and Tischler,1976,Proc Natl Acad Sci U S A 73:2424−2428;Mizrachi et al.,1990,Proc Natl Acad Sci U S A 87:6161−6165)。これらは容易に培養でき、すぐに実験的操作に用いることができる。クロム親和性細胞は神経堤に由来するが、アクセス可能な末梢器官(副腎髄質)の中心に存在するため、これらは脳への「窓」を提供すると記述されている(Bornstein et al.,2012,Mol Psychiatry 17:354−358)。当該細胞は、神経変性における未知の主要プロセスの研究のために、強力で、新規であるが、in vitroモデルとして役立ち、これが当該プロジェクトで有用な理由は以下のとおりである:アルツハイマー患者の副腎髄質は、CNSにおいて見られるものとよく似た多様な病理学的特徴を示し、例えば、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の発現と同様に、多数のLewy小体様封入物、神経原線維変化および一対のらせん状フィラメントがある(Takeda et al.,1994,Neurosci Lett 168:57−60)。さらに、AppleyardおよびMacdonald(1991,Lancet 338:1085−1086)は、おそらく促進された血漿中への分泌に起因し、AChEの可溶な(すなわち放出可能な)形態のみがADの副腎から選択的に除去されることを実証しており、AD患者ではこれが上昇している(Atack et al.,1985, J Neurol Sci 70:1−12;Berson et al.,2008,Brain 131:109−119)。
【0104】
野生型PC12細胞は、シグマアルドリッチ社(St.Louis,MO)より提供された。培養は、コラーゲン(2μg/cm
2)でコートされた100mmディッシュ(コーニング社)中に規定通りに置き、熱失活10%ウマ血清(HS)およびウシ胎児血清(FBS)を添加したイーグル必須最小培地(MEM)、10mM HEPES、2mM L−グルタミンおよび1:400のペニシリン/ストレプトマイシン溶液を用いた培地で成長状態を維持した。細胞は、加湿雰囲気5%CO
2内にて37℃で保ち、培地を2日ごとに交換した。継代(splitting)のため、ピペットと培地とを用いて細胞をディッシュから引き剥がし、これらの一部を新しい培養ディッシュに移した。細胞は、12〜25継代のものを使用した。
【0105】
[細胞膜の調製]
結合アッセイを行うため、PC12膜を得た。PC12細胞を100mmプレート上でコンフルエントになるまで成長させた。成長培地を除去し、4.5μg/μlアプロチニンおよび0.1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する氷冷50mM Tris−HClバッファー(pH7.4)を添加した。細胞を機械的に脱離させ、4℃で4分間遠心分離(1040×g)しペレット化した。ペレットをPolytronでホモジナイズし、4℃で20分間遠心分離(13000×g)した。ペレットを新しいバッファー中で再懸濁し、37℃で10分間インキュベートし、内在性の神経伝達物質を除いた。続いて、サンプルを再懸濁した。最終ペレットをバッファー中で再懸濁し、Bradford試薬(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を用いてタンパク質濃度を算出した。細胞膜の調製は−80℃で保管した。
【0106】
[βアミロイドの調製]
提供元(Abcam,Cambridge UK)が示すように、βアミロイド(1−42)線維を調製した。βアミロイド(1−42)1mgを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)212μlおよびNH
4OH 10μl中に溶解した。超音波処理およびチューブあたり10μlずつ分けた後、高速真空乾燥機(Thermo Fisher Scientific,Loughborough,UK)で乾燥し、−20℃で保管した。実験のため、サンプルをDMSO(5mM)2μlおよびHCl(0.01N)98μl中に希釈して繊維形成させ、37℃で一晩インキュベートした。
【0107】
[[
3H]イベルメクチン結合アッセイ]
PC12膜との結合のため、50mM Tris−HCl中に希釈した異なる濃度のAChEペプチドT30、βアミロイドまたは環状T14非存在下または存在下(0.1、0.5、0.7、1、2、10μM)で、最終量0.5mlとし、5nM[
3H]イベルメクチン(American Radiolabeled Chemicals,USA)とともに(PC12膜50μgを含有する)50mM Tris−HClバッファー中に希釈した膜0.25mlを含有するポリスチレンチューブ(VWR International Ltd;Leicestershire,UK)内で、4℃で2時間インキュベーションをそれぞれ行った。その後、サンプルを、Harvester(Brandel;MD,USA)により0.5% ポリエチレンイミン(polyethylenemine)中に予め浸漬したBrandel GBガラス繊維フィルター(MD,USA)を通して濾過した。チューブを氷冷50mM Tris−HClバッファーで3回洗浄した。300SL液体シンチレーションカウンター(Lablogic Systems Limited,UK)を用いて、シンチレーションスペクトロメトリーにより、チューブ内の放射能をカウントした。全てのチューブについて、非特異(30μMイベルメクチンで処理した細胞)値を差し引くことにより、特異的結合を算出した。
【0108】
[細胞生存アッセイ]
用いた細胞生存アッセイは、毒性スクリーニング向けのスルホローダミンB(SRB)比色アッセイである。実験前日、コラーゲンコート96ウェルプレート上に、40,000細胞/ウェルの濃度で細胞を播種した。細胞濃度は、Fuchs−Rosenthalチャンバーにより測定した。環状T14(0.1〜100μM)ならびにT30、T14およびAβ(10μM)を単独で、または環状T14(0.1および0.7μM)と組み合わせて含有するMEMで試薬を調製した。処理後、培地を交換し、10%トリフルオロ酢酸(TCA)100μlを添加して4℃で1時間置くことにより、細胞を固定した。その後、細胞を水で洗浄し、0.057%SRBの1%酢酸(HAc)溶液100μlを用いて、室温で30分間染色した。染色後、過剰なSRBを除去するために細胞を1%HAcで洗浄した後、10mM Tris−HCl塩基(pH10.5)200μlでインキュベートして5分間振とうし、タンパク質に結合した染色剤を可溶化した。吸光度測定は、V
Max Kinetic Microplate Reader(Molecular Devices)内で、490nmで行った。
【0109】
[アセチルコリンエステラーゼ活性アッセイ]
AChE活性は、AChE活性に起因するチオール基の存在を測定するEllman試薬を用いて測定した。細胞生存アッセイのため、実験前日に細胞を播種した。細胞を、異なる濃度の環状T14(0.1−100μM)ならびにT30、T14およびAβ 10μMを単独で、または環状T14(0.1および0.7μM)と組み合わせて処理した。処理後、各処理の上清(灌流液)を回収し、各条件につき25μLを新しい平底96ウェルプレートに添加し、Ellman試薬(溶液A:139mM KH
2PO
4および79.66mM K
2HPO
4、pH7.0;溶液B(基質):11.5mMヨウ化アセチルチオコリン;溶液C(試薬):8mM 5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)および15mM NaHCO
3)175μlを添加した。33(A):3(B):4(C)の比で3種類の溶液の混合物としてEllman試薬を調製した。吸光度測定は、実験を通して通常の間隔(3、10、30および60分)で、405nmで測定した。
【0110】
[カルシウム蛍光測定]
Fluo−4(Life Technologies Corporation, UK)をロードした細胞内の蛍光変化を測定することにより、細胞内Ca
2+増加をモニターした。脳切片を、βアミロイド、環状T14、またはβアミロイド+環状T14を含有する、124mM NaCl、3.7mM KCl、26mM NaHCO
3、2mM CaCl
2、1.3mM MgSO
4、1.3mM KH
2PO
4および10mMグルコース;pH:7.1内で2時間インキュベートした。2時間後、下記を含有するロード培地1.2ml/ウェルとともに、切片を暗所下室温で40分間インキュベートした:Tyrode塩溶液(TSS;137mM NaCl、2.7mM KCl、1.0mM MgCl
2、2.5mM CaCl
2、0.2mM NaH
2PO
4、12.0 NaHCO
3、5.5グルコース、pH7.4)、Fluo−4(2μM)、Pluronic F127(0.02%)およびプロベネシド(2mM)。プロベネシドは、マルチドラッグ耐性タンパク質の阻害剤、イオントランスポーターであり、細胞からの蛍光分子の排出を妨げる。インキュベーション後、切片をTSSで洗浄し、1200μl/ウェルのTSSおよびプロベネシドを含有する脱エステル化培地を添加した。切片を22℃の暗所下で20分間インキュベートした。蛍光測定(励起波長485nm、発光波長538nm)は、Fluostar Optima(BMG,UK)プレートリーダー内で記録した。
【0111】
[薬および試薬]
MEM、培養血清、抗生物質、コラーゲン、スルホローダミンB、イベルメクチンおよびバッファー試薬は、Sigma−Aldrich社(St.Louis,MO)より入手した。T30、T14、AChEペプチドおよび環状T14は、Genosphere Biotechnologies(France)により合成された。ペプチドのストックは、蒸留水で希釈した。
【0112】
[データ分析]
異なる技術のそれぞれにおいて、12以上の実験の百分率値の平均によって統計分析を行った。多重処理群および同一コントロール間での比較は、一元配置分散分析(ANOVA)およびGraphPAD Instat(GraphPAD software,San Diego,CA)を用いたTukey’s post−hoc試験により行った。これらの試験は、各処理の平均と各他処理の平均とを比較する;すなわち、全ての一対比較のセットに同時に適用し、2平均間の相違が標準誤差よりも大きいことが許容されうる場所を特定する。統計的有意性は、P値<0.05で取られた。グラフは、GraphPAD Prism 6(GraphPAD software,San Diego,CA)を用いてプロットした。結合実験の場合、結果は、1分あたりのカウント(cpm)として得て、コントロールに対する割合に変換した。GraphPad Prismを用いて、結果を一部位競合結合(one site competition binding)モデルにフィッティングした。カルシウムの結果の場合には、GraphPad Prismを用いて、非線形回帰曲線を用いた単一部位Hill式(a single site Hill equation)に対する実験データポイントの対数をフィッティングすることにより、EC50値を算出した。
【0113】
〔実施例1〕T14の環化
本発明者は、α7ニコチン性アセチルコリン受容体のアロステリック部位を選択的に標的とし、T14/T30との結合に対して競合(compete)し、またβアミロイドに拮抗(antagonise)する物質を合成した。当該物質は、C末端のリジン残基に連結されるN末端のアラニン残基とともに、アミノ酸配列AEFHRWSSYMVHWK[配列番号:4]を有するT14の環形態である。Genosphere Biotechnologies(France)は、直鎖状ペプチドをN末端へC末端ラクタムに変換することにより、環化を行った。以下の実験では、いかにして環状T14ペプチドが確立されたT30ペプチドおよびアミロイドのin vitroの毒性効果を阻害するのかについて、初めて実証する。
【0114】
〔実施例2〕環状T14は単独で適用された際に毒性を有しない
細胞生存検出法としてスルホローダミンB(SRB)を用いて、実施例1で製造した環状T14でPC12細胞を1時間処理した。その結果、細胞生存において変化が観察されず、100μM(100nM:98.76±15.15;700nM:106.94±19.92;1μM:104.82±10.9;100μM:93.58±11.62)の濃度では毒性を有しないことが示唆された(
図1参照)。
【0115】
〔実施例3〕環状T14はAChE酵素活性に影響を及ぼさない
次に、本発明者は、環状T14がアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の酵素活性に影響を及ぼすのか否かを確かめることにした。AChE酵素活性は、アセチルコリンエステラーゼ活性アッセイを用いて測定した。本発明者は、環状T14(2μM)が存在しても、アセチルコリンエステラーゼの酵素活性に影響を及ぼさないのに対し、ガランタミン(2μM)は強力に阻害することを発見した(
図2参照)。
【0116】
〔実施例4〕環状T14は過酸化水素による非特異的毒性に効かない
次に、本発明者は、環状T14が過酸化水素による非特異的毒性効果からPC12細胞を保護するのか否かを究明した。
図3で見られるように、H
2O
2を単独または環状T14と組み合わせて供した場合、顕著な差が見られなかった。
【0117】
〔実施例5〕環状T14は細胞をT14、T30およびβアミロイドの毒性から保護する
細胞生存検出法としてSRBを用いて、(4A)βアミロイド、(4B)直鎖状T14、もしくは(4C)T30を単独で、または環状T14(100nM)と組み合わせて用いて、PC12細胞を1時間処理した。
図4に示すように、3つのペプチド単独では、細胞生存率の減少をもたらしたが(Aβ:69.875±4.38;T14:83.02±5.385およびT30:68.395±3.095)、環状T14と組み合わせた場合は、細胞が驚くほどに死から守られた(Aβ+C14:94.475±7.4;T14+C14:99.4±12.475;T30+C14:88.59±8.785)。
【0118】
〔実施例6〕環状T14はT14およびT30によって誘導されるAChEの放出を阻害する
比色Ellmanアッセイを用いて、毒刺激後の代償的応答(compensatory response)としてのAChE活性を評価した。直鎖状T14およびT30(10μM)を単独で、または環状T14(100μM)と組み合わせて用いて、細胞を1時間処理した(
図5参照)。全てのペプチドは、AChE活性の増加を誘導し(T30:129.10±1.18;T14:123.0±0.62)、環状T14と組み合わせた場合において部分的に阻害された(T30+C14:110.58±0.80;T14+C14:112.30±1.39)。
【0119】
〔実施例7〕βアミロイド、T30およびT14は[3H]イベルメクチンの結合を置き換える
ここで用いられる準備のために、βアミロイド、T30およびT14にとって、α7nAChE(α7ニコチン性アセチルコリン受容体)が標的であることを実証するため。[
3H]イベルメクチン結合アッセイは、PC細胞膜上で行い、対数用量−応答によりリガンド[
3H]イベルメクチンが結合する受容体のアロステリック部位のアフィニティーの減少を実証した(表1、
図6参照)。
【0120】
【表1】
【0121】
〔実施例8〕環状T14はガランタミンよりも優れた有効性で[3H]イベルメクチンの結合を置き換える
低μM濃度の環状T14は、ガランタミンに類似したアフィニティーで、しかしそれよりも顕著に優れた有効性で、[
3H]イベルメクチンを置き換えた。
【0122】
【表2】
【0123】
〔実施例9〕環状T14はガランタミンよりも優れた有効性でβアミロイドの毒性から細胞を保護する
細胞生存検出法としてSRBを用いて、βアミロイドを単独で、または環状T14(1nM)もしくはガランタミン(100nM)と組み合わせて用いて、PC12細胞を1時間処理した。
図8に示すように、環状T14は、ガランタミン(98.79±14.21)に比べて、用量として2桁低いオーダーでAβ毒性から保護した(97.34±9.57)。
【0124】
〔実施例10〕βアミロイドからの100%保護に必要な環状T14の最低濃度
細胞生存検出法としてSRBを用いて、βアミロイドを0.5nMから100nMまで濃度を増加させた環状T14と組み合わせて用いて、PC12細胞を1時間処理した(0.5:88.49±10;1:97.34±9.57;10:102.28±8.53;50:101.79±13.99;100:103.68±6.34)。全保護のための閾値用量は1nMであった(
図9)。
【0125】
〔実施例11〕環状T14はラット脳切片中のCa
2+レベルを低減する
蛍光測定を用いて、1μM 環状T14、10μM βアミロイド、およびその組み合わせを用いて、2時間処理後のカルシウムレベル変化を検出した。環状T14は細胞内カルシウム基準レベルを変化させなかったのに対し、βアミロイドは細胞内カルシウムレベルの増加を誘導し、これは環状T14によってベースラインに戻されている(
図10参照)。
【0126】
〔実施例12〕T30はα7ニコチン性受容体のアロステリック部位に対して高い結合アフィニティーを示す
生存試験を用いて、本発明者は、α7ニコチン性受容体のアロステリック部位に対し、現在臨床使用されている薬(例えば、ガランタミン(10μM))に比べ、T30は約3桁高い結合アフィニティーを有することを示した(5nM)。
【0127】
<一般的考察>
環状T14は、T30およびアミロイドベータペプチドの働きに拮抗するα7ニコチン性受容体の、新規のα7ニコチン性受容体不活性アロステリックモジュレーターである。環状T14は、新規のα7ニコチン性受容体拮抗薬である。非特異剤である過酸化水素からの保護が無効力であったことから、環状T14の阻害作用は選択的であり受容体媒介性であることが示唆される。環状T14は、多様な試験においてT30の毒性効果に拮抗することから、環状T14は、アミロイドに対するのと同様に、T30に対する結合と競合することにより、α7ニコチン性受容体上のアロステリック部位を通じたカルシウムのさらなる流入を防止することが示唆される。この有効な置換は、環状ペプチドの向上した安定性によって説明されるであろう。
【0128】
[なぜ環状T14系薬は現在用いられている処理に比べて有効なのであろうか?]
本発明者は、α7受容体上のアロステリック部位に対して、現在臨床で使用されている薬(例えば、ガランタミン(10μM))に比べ、T30が約3桁高い結合アフィニティー(5nM)を有することを直近で示している。実際、この観察から、なぜ上記のかような薬が比較的期待外れであるのか(表1参照;Kramp&Herrling,2011,Neurodegenerative Dis 8,44−94)が示唆されるであろう:アルツハイマー患者の脳において過剰である内在性T30が重要な部位を既に占有している場合、低アフィニティー競合によって置換されないであろう。しかしながら、ここで示唆されるように、非常に類似するまたは優れた結合アフィニティーを有する薬によって阻害されるであろう(
図7参照)。ゆえに、そのような薬は、きわめて有効な薬である可能性を有する。
【0129】
環状T14のさらなる利点は、ガランタミンと異なり、AChE阻害剤でもあり、受容体に結合する以外に、他の生物学的作用を有さないことである。発明者のこれまでの研究(Greenfield,2013,Chem Biol Interact.203(3):543−6)が示唆するように、神経変性疾患においてT30がきわめて重要なシグナル分子である場合、その拮抗作用は、最も基本的かつ特異的なレベルでこれらの疾患を打ち負かす(combat)であろう。いずれにせよ、正確な役割にかかわらず、アミロイドは神経変性疾患に関与するので、この新規物質がアミロイドと拮抗するという観察は、臨床において大変興味深いものであろう。他の治療的候補はβアミロイドの有効性(例えば、ガンマセクレターゼ阻害剤)を標的とするのに対し、これは有効なアミロイド毒性遮断の初めての例である。
【0130】
【表3】
【0131】
本発明者は、現在の結果から、環状T14の形成によって、特定ターゲットであるα7ニコチン性受容体への結合が可能になると示唆されると考えている。
図12について、α7ニコチン性受容体の概略図を示す。単量体受容体は、同一のα7サブユニットを5つ有し、受容体が活性化した際、Na
+やCa
2+などのイオンが通過する中心孔の周囲にそれぞれ対称的に配置されている。各α7サブユニットは、オルソステリック結合部位(orthosteric binding site)(すなわち、活性部位)およびアロステリック結合部位を含む。通常の受容体の生理学的活性化は、1つのアセチルコリン分子が2つのα7サブユニットの界面にこれらのオルソステリック部位を介して結合することによってなされる。他の公知のオルソステリック部位のリガンドとしては(これに制限されないが)コリンおよびメチルリカコチニン(Methyllycaconitine)(MLA)が含まれる。アロステリック部位のリガンドとしては(これに制限されないが)直鎖状および環状T14、環状および直鎖状T30、ガランタミン、イベルメクチンならびにPNU12が含まれる。
【0132】
図10に示すように、この理論に拘束されることは望まないが、本発明者は、βアミロイド(Aβ)が(i)α7ニコチン性受容体のオルソステリックおよびアロステリック結合部位の両方に同時に結合すること、または(ii)これらの部位のいずれか1つに非特異的に結合することのいずれかが可能であると考えている。本発明者は、環状T14がアロステリック部位においてアンタゴニストとして作用することを発見した。
【0133】
[創薬]
本発明者は、環状T14の特定の構造を用いて、環状T14の三次元形態を模倣しつつ、血液脳関門をより速やかに通過できるような、より小さな化合物を設計することが可能となるであろうと考えている。
【0134】
〔実施例13〕環状T14(すなわち、「NBP14」と称する)の物理化学的特性分析
<背景>
水および有機溶媒における化合物の溶解性は、それが胃や腸などの体内の生理学的障壁を越える能力に強く影響を及ぼす。薬が脳疾患(例えば認知症)をターゲットとしている場合、さらなる障壁を越える必要があり、それが血液脳関門である。LogPとしても知られる分配係数は、化合物が水または有機溶媒中で可溶化する能力を評価し、化合物が異なる生理学的障壁を越える能力に関連する。
【0135】
<詳細な方法>
[溶媒の調製]
下記のとおり、溶媒の飽和を行った。水存在下で1−オクタノールを室温で24時間撹拌した。1−オクタノール存在下でmQ水を室温で24時間撹拌した。その後、溶液を静置して、室温で一晩平衡化した。シリンジと針を用いて飽和溶媒を回収し、さらに使用時まで室温で保管した。
【0136】
[撹拌チューブ法]
飽和水および飽和1−オクタノールをガラス管内に下記の比で置いた:各チューブは環状T14を0.25mg当量含有した。その後、全てのチューブを室温で4時間混合した。撹拌後、チューブを室温で静置して平衡化した。
【0137】
[検量線]
検量線のための環状T14の濃度は、0.5mg.ml
−1、0.25mg.ml
−1、0.13mg.ml
−1、0.066mg.ml
−1、0.033mg.ml
−1および0.016mg/ml
−1であった。検量線の吸光度を280nmで測定した。
【0138】
[サンプル分析]
各サンプルのいずれの分画についても、針付きのシリンジを用いて別個に回収した。280nmで全分画の吸光度を測定し、検量線に基づいて全分画の濃度を算出した。下記式により、環状T14の分配係数を計算した。
【0139】
【数1】
【0140】
環状T14のLogPを得るために、各条件の結果を平均化した。
【0141】
<結果およびこれらの示唆>
環状T14の平均LogPは、−0.5899であった。LogPが負の値であることは、化合物が親水的であることを意味する。しかしながら、LogPが0に近いことは、化合物が親油性環境においても同様に可溶であることに対応する。ゆえに、NBP14がBBBを越えることが説明できる。
【0142】
〔実施例14〕PC12細胞におけるT30および環状T14(すなわち、NBP14)の効果
NBP14のT30毒性に対するさらなる保護効果を特徴づけるため、本発明者は、下記の方法セクションで述べるように、3種類のin vitro系((A)カルシウム流入;(B)AChE放出;(C)細胞生存率)に効果をもたらす濃度を算出した。
【0143】
<方法>
[(A)カルシウム流入]
実験前日、96ウェルプレートの成長培地200μl中にPC12細胞を播種する。実験当日、(提供元のプロトコールのとおりに)Fluo−8溶液(Abcam)を調製する。次に、成長培地100μlを除去し、Fluo−8溶液100μlを添加する。T30およびNBP−14を用いた処理を加え、インキュベーター内で30分間および室温で30分間インキュベートする。
【0144】
1時間後、プレートを蛍光プレートリーダー(Fluostar)内に置く。蛍光を読み取る前に、100μMアセチルコリン(ACh)を調製し、Fluostarインジェクター内に配する。各ウェルにつき、ベース蛍光によって読み取りを行い、ニコチン性受容体を介したカルシウムの増加を誘導するであろうアセチルコリンをインジェクトする。その後、T30およびNBP−14の効果を評価する。
【0145】
[(B)AChE放出]
AChE活性の変化を検出するのに用いたプロトコールは、上記したものと同様である。
【0146】
[(C)細胞生存率]
以前用いたSRB技術の改善として、Cell Counting Kit−8(CCK−8)を用いた。きわめて水に可溶なテトラゾリウム塩であるWST−8を用いることにより、電子輸送体存在下での還元により、CCK−8は水に可溶なホルマザン染料を産生する。WST−8は細胞内でデヒドロゲナーゼにより還元され、黄色を呈した生成物(ホルマザン)が生成し、これは組織培養培地に可溶である。細胞内でのデヒドロゲナーゼ活性によって産生されるホルマザン染料の量は、生存細胞数に直接的に比例する。実験前日、96ウェルプレートの成長培地200μlにPC12細胞を播種する。T30およびNBP−14を用いた処理を加え、インキュベーター内で1時間インキュベートする。
【0147】
次に、成長培地100μlを除去し、CCK−8(Cell Counting Kit−8)溶液10μlを添加する。プレートをインキュベーター内で2時間インキュベートした後、吸光度プレートリーダー内に置く。吸光度は450nmで測定しなければならない。
【0148】
<(A)カルシウム流入>
上記のように、T30は、αニコチン性受容体の陽性アロステリックモジュレーターである。ゆえに、第一のアゴニストであるアセチルコリンを用いて、コントロールカルシウム流入を100%とした基準に従って評価した。T30(5μM)は、この効果を171.05%±6.21%;N=3まで促進した。NBP−14濃度を増加させ(5、7、9、10、20、50、70、1000、5000nM)、これらT30誘導型増加の拮抗作用を決定した。(各)値(%)は、134.2497±6.85、120.8612±8.65、113.9162±8.82、140.776±12.16、115.83±7.67、110.3213±13.21、125.9596±0.1、99.85±0.32、115.1942±9.84、79.99±14.04である。
図13は、NBP−14が濃度に応じてT30効果を阻害し、低nM範囲で保護的であることを示している。
【0149】
<(B)AChE放出>
上記のように、PC12細胞は、「代償的な(compensatory)」反応(すなわち、放出されるAChE活性の増加:169.45%±2.11%;N=3)を伴って、T30の毒性効果に応答する。本発明者は、5μM T30に対するNBP−14の用量依存的な効果を見つけた。本結果(
図14)は、高nM濃度でNBP−14がAChEの代償効果から保護することを示す。(各)値(%)は、130.73±1.84、111.68±2.26、92.78±0.99、82.56±2.38、68.90±0.92、65.12±1.32、61.04±0.97、79.43±1.69±1.24、83.91±1.24、89.55±1.25である。
【0150】
<(C)細胞生存率>
T30(5μM)は、25%の細胞生存率の減少(74.309%±2.87%;N=3)をもたらし、NBP−14によって濃度−効果により次第に阻害された(
図15)。(各)値(%)は、76.25±7.51、67.04±4.35、76.04±4.22、71.36±1.64、79.02±10.22、75.1±3.9、62.43±3.01、78.10±2.16、116.65±3.62、107.79±5.10である。NBP−14は、高nM範囲でT30誘導型細胞死から保護する。
【0151】
〔実施例15〕in vitroラット脳切片皮質ネットワークにおけるT30および環状T14(すなわちNBP−14)の効果
<背景>
T30ペプチドは、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の30アミノ酸セグメントであり、そこからT14が切断される。両方とも同一の効果をもたらすことから、これらの活性配列はT14に、および同様にT30に存在することが示唆される。高度に調節的な物質としての哺乳類脳切片のT14の生物活性は、既に研究で示されている。異なる濃度で、興奮および抑制の両方を含む皮質ネットワークを調節するT14の効果が報告されている:低濃度では、ペプチドがα7受容体を介してカルシウム流入増加のトリガーとなるが、高濃度では、ニューロンの可塑性を誘発する(Greenfield et al.,2004)のと同様に、チャネルを不活性化させる過剰量のカルシウムをもたらし(Badin et al.,2013;Bon and Greenfield,2003)。
【0152】
T14/30の全皮質ネットワークに対する作用についてさらなる理解を得るため、ミリ秒(ms、生理学的事象と同等である)およびマイクロメーター(μm)の一時的スケールで、脳切片における集合ニューロン集団活性(collective neuronal population activity)、「ニューロンアセンブリ(neuronal assemblies)」のダイナミクスをモニターするために、比較的最近の技術である電位感受性色素イメージング(VSDI)を用いた。かような技術は、電位が変化する蛍光コアを含有する特定の親油性分子の感受性(Tominaga et al.,2000)を利用する。これらの親油性特性により、これらの色素分子は細胞膜内に埋め込まれ、ミリ秒解像度の高速カメラで捉えられる特定の膜を通じた電位について蛍光読み取りを変える。その結果、電位感受性色素を用いたイメージングは、比類なき時空解像度でニューロン細胞を通じた電位変化の直接およびオンラインでの読み出しを提供する。
【0153】
この技術を用いて、本発明者は、(a)任意の領域における応答強度などの広範囲にわたるニューロン集団活性のデータを得ることができ、そこから(b)誘発されるニューロンアセンブリの広がりが測定され、このパラメータから、広がりの勾配として(c)開始点(d)からの活性波面の伝播速度が測定される。これらの各パラメータは、これまで行われた、1)T30の増加した濃度(0.5、0.75、1および5μM)によって誘導される皮質ネットワーク活性および応答に対する効果の研究、ならびに2)単一で比較的高(1μM)T30濃度に対するNBP−14の拮抗効果の評価の2つの実験について独立して測定される。
【0154】
・使用技術:視床皮質(TC)pc14ラット(Wistar)脳切片の電位感受性色素イメージング(Di−4−ANEPPS)
・刺激パラダイム:(視床皮質の反復刺激に一致する)40Hz二連(paired)パルス刺激
・灌流パラダイム:2段階で実行された時期(epoch)−各薬剤灌流(コントロール、0.1μM T30などという)につき、新しい灌流を行い、薬剤が実際の濃度に到達するまでの時間があるよう、記録期間(同様に15分間)前に15分間灌流させ、濃度依存的な効果を誘導して一旦記録した。一つの灌流時期を30分続行し、各灌流時期について最後15分間のみを考慮して読み取った。
【0155】
<詳細な方法>
[脳切片の調製]
雄のウィスターラット(14〜17日齢;全15個体)を、イソフルランで麻酔した:100%w/wイソフルラン10mLを、麻酔チャンバー(ガラスボックス20×15×15cm)底部のコットンベッドに注ぎ、ラットを麻酔効果が発現するまで45秒以下置いた。各麻酔ラットの後足をつまみ、適切な麻酔深度であるか確認した。一度麻酔が確認されたら、速やかにラットの首をはね、脳を酸素化した氷冷人工脳脊髄液(「切片化する(slicing)」aCSF mmol換算:120 NaCl、5 KCl、20 NaHCO
3、2.4 CaCl
2、2 MgSO
4、1.2 KH
2PO
4、10 グルコース、6.7 HEPES塩および3.3 HEPES酸;pH:7.1)に7〜8時間浸漬し、脳を切片化する時間を設けた。Vibratome(Leica VT1000S)を用いて、視床(VPN)および第一体性感覚皮質(バレル領域)を含む脳のブロックから傍矢状の切片(400μm厚さ)を切り出し、室温でaCSFを含有するバブラーポット(bubbler pot)に移し(「記録する(recording)」aCSF mmol換算:124 NaCl、3.7 KCl、26 NaHCO
3、2 CaCl
2、1.3 MgSO
4、1.3 KH
2PO
4および10 グルコース;pH:7.1)、これは電気生理学記録およびVSDIで用いたものと同一であった。切片を酸素化(95%O
2−5%CO
2)「記録(recording)」aCSFに置き、VSD染色前に最低1時間再灌流した。
【0156】
[VSDセットアップ]
切片を暗所の95%O
2−5%CO
2でバブリングしたaCSFで満たした高湿度チャンバー内に置いた。色素溶液(4% 0.2mM スチリル色素ピリジニウム4−[2−[6−(ジブチルアミノ)−2−ナフタレニル]−エチニル]−1−(3−スルホプロピル)ヒドロキシド(Di−4−ANEPPS,Invitrogen,Paisley,UK)(Tominaga et al.,2000)の46%aCSF溶液、ウシ胎児血清46%、DMSO3.5%およびクレモフォール(cremophore)EL0.4%)を上記の切片に注いだ(Badin et al.,2013)。VSD記録開始に際し、切片を小さな濾紙上に記録浴内に置き、切片が生存するように保ち、切片の上に置かれた家庭用のプラスチック枠を用いて大まかに秤量した。蛍光VSDであるため、光毒性および漂白の有害な影響を最小限に保つため、Di−4−ANEPPS染色中および染色後における全て切片の取り扱いは、ほぼ完全な暗所で行った。(刺激電極が置かれる)VPNを、海馬の先端から内包の側面までの距離について特定した。
【0157】
(1000Hzで測定される)インピーダンス:500kΩを有する刺激電極をVPN内に置き、Spike 2 V6.0(CED Ltd,Cambridge,UK)を用いて、40Hzの二連パルス(paired−pulse)刺激(持続時間2×100μs;刺激間インターバル−ISI−二連パルス 25ミリ秒)を誘発し、適切なISIに対して神経支配されるバレル内の急速な活性伝播波を惹起した。デジタルカメラ(Brain Vision MiCAM Ultima R3−V20 Master)に連結したMiCAM Ultima超高速イメージングシステムと、Ultima 2004/08イメージングソフトウェア(Brain Vision)とを用いて、1msの解像度で16ビット画像を取得することにより、かような一時的な「ニューロンアセンブリ(neuronal assemblies)」を記録した。Osramハロゲンキセノフォット(xenophot)64634 HLX EFR Display/Opticランプを用いて光を生成し、MHF−G150LR (Moritex Corporation)を用いて、フィルターをかけて緑色光(530±10nm)を発光した。発光蛍光を、前述したように(Collins et al.,2007;Devonshire et al.,2010a;Devonshire et al.,2010b;Grandy et al.,2012;Mann et al.,2005)、ダイクロイックミラーおよび>590nmハイパスフィルターに通した。
【0158】
[薬剤の調製および塗布]
T30溶液およびNBP−14溶液は、各実験開始時に新鮮なように調製し、小分けのストック溶液を「記録(recording)」aCSFに適量添加し、Minipulse 3ポンプ(Gilson Scientific Ltd,Bedfordshire,UK)を用いて毎分1.5mLの定速での灌流に適用した。灌流条件は2つに分けた:前半は記録しない15分間灌流で構成され、適切な濃度に達した後、後半の灌流条件を開始し、ここでは次の15分間の灌流について記録をとり(平均30スナップショット)、灌流条件あたり全部で30分間とした。
【0159】
[データ分析および統計]
VSDIが製造した4×4mm(100×100ピクセル)二次元画像から、全体的な誘発シグナルである、活性化タイムコース、広がりおよび強度などの重要なデータを抽出した。各VSDI実験について、ピーク応答を包含する、刺激後0〜200msの間の各スナップショットデータは、各条件(T30およびT30対NBP−14実験の両方とも、1条件につき全部で30スナップショットである)に対して、測定および平均化されたこれらのパラメータを有する。これを達成するため、活性領域から対象領域(ROI)を選択し、対象領域内で記録された最大活性の20%より高い活性を示すものとして、アクティブピクセルを隔離する閾値でフィルターした後の最大応答幅を取り囲んだ。その後、かようなデータを蓄積して、記録された効果を測定するための定性的な「時空」マップ(
図19)とともに、活性化強度範囲の詳細な定量的グラフ(
図16、17、18)を作成し、同様に、得られた時空データの正確な視覚表示を作成した。全てのデータの取り扱いおよび分析はMathematica 8(Wolfram Research,USA)を用いて行い、全ての統計データ(Analysis of Variance−ANOVA)は、R Studioを用いたデータに適合する非線形複合効果モデル(non−linear mixed effects models)を用いて行った。全ての統計試験について、P<0.05は有意であるとみなした。データは、平均±S.E.Mとして表す。
【0160】
<結果および考察>
図16は、(A)発光蛍光強度、および(B)アクティブピクセルの広がりに対するT30の用量増加効果を示す。各ピクセルは、40×40μmの寸法を有し、10未満の別個のニューロンの活性に起因する特異的な蛍光を意味する。記録浴内のT30濃度が増加することで、アクティブピクセルから発する蛍光強度が減少する。これは、単一ピクセル量からより高い蛍光読み取りに至る相当な同時に起きるニューロン膜の非局在として、誘起されるニューロン集団活性の非同期を示唆しており、ここでは反対の効果が見られている(より低い同調性)。さらに、強度グラフ(
図16A)からわかるように、ここでは40Hz二連パルス刺激パラダイムが用いられる。当該結果より、T30処理に起因して全体的な蛍光が減少するだけでなく、(40Hz二連パルスで、75ms(第1パルスの25ms後)に誘起される)第2パルスは最初のパルスの規模に比べて促進が大幅に減少することもわかる。
【0161】
さらに、広がりグラフ(
図16B)で見られるように、皮質アセンブリの広がりは、きわめて高レベル(5μM)に達するまではT30処理によって顕著に影響されず、これは皮質ネットワーク全体に対してT30が調節剤として作用するとの理論を裏付ける。伝播速度、蛍光の広がりや強度など、VSDIによって強調される異なるパラメータが、必ずしも関連しない皮質ダイナミクスの根本原理にたびたび依存し、これらのパラメータは別々に分析しなければならないこと、ならびに、これらの結果はまず互いに独立に解釈しなければならないことついて、留意しておくことも重要である。
【0162】
図17は、アセンブリダイナミクスの開始に対する増加するT30適用の効果を示し、伝播を詳細に調べた。
図17より、T30はニューロン活性伝播速度(ここでは上昇期の傾きとして得られる)の減少をもたらし、
図16で見られるような皮質ネットワークの協調性の低下と一致し、5μM T30処理下では伝播速度が最大3.5倍減少した。以上の結果および以前の実験から、5μM T30濃度は、十分なカルシウム流入をもたらすには高すぎるため、イオンチャネルの非活性化における閾値となりえず、ゆえに、以前報告されたように(Bon and Greenfield,2003)、特定の調剤(the particular preparation)の感受性に依存する興奮/抑制効果の複合をもたらすものと結論づけられた。ゆえに、本発明者は、より低い、しかし十分に可能性のある濃度である1μM T30を用いて以降の実験を行い、NBP14の可能な拮抗効果を調査した。このT30濃度は、依然として高いが、ペプチドが脳切片に浸透する際に希釈効果が必然的に起こると考えられる本研究の特性から選択した。ちなみに、NPB14については、これまでのPC12細胞のin vitro研究において、T30に比べてα7ニコチン性アセチルコリン受容体に対して高アフィニティーであることが示唆されたため、0.1、5、100および300nM、すなわち、T30濃度より2〜4桁低い濃度で増加させて用いた。
【0163】
図18は、NBP−14濃度増加によるT30効果の拮抗作用を示す。図は、T30灌流によってもたらされるニューロン集団の調節効果に対するNBP−14の拮抗特性を示す。考慮すべき重要なこととしては、T30が切片に浸透する際の希釈因子であり、切片は、プロテアーゼ、神経伝達物質の取り込みや細胞外マトリックスの密度など、脳切片中に潜在的に依然存在しかつ活性である全ての生理学的プロセスを含む;ゆえに、濃度1μMのT30は十分な効果をもたらすのに時間を要する可能性が高い(上記のデータから45−60分と示唆される)。これを念頭に置き、T30によってもたらされた傾向はベースラインに向かって逆行した(青色線/バー)後、5nM NBP−14灌流中のT30の効果は顕著となる(橙色線/バー)。
【0164】
NBP−14が非活性であり、自身に対していかなる調節効果も誘起しないことを示すことについても留意することが重要であり、ここで見られる効果は第一にT30に起因し、NBP−14濃度の増加による拮抗作用に対するこれらの反転であることを示唆する。重要なことに、300nM NBP−14灌流下では、T14効果の大部分はコントロールレベルに向かって減少する一方、濃度1000nMにおいてもT30は灌流される。このことから、T30に比べ、NBPのターゲットに対するアフィニティーが顕著に高いことが示唆される。
【0165】
図19は、NBP−14の濃度増加(0.1、5、100および300nM)に対するT30(1μM)効果を試験した3つの実験(すなわち、左、中央、右カラム)からの定性結果を示す。上のパネルは、2つの主要な平均化データグラフを示す:左−蛍光シグナル強度、右−誘起されるアセンブリの広がり。下のパネルは、各条件について、時間(全部で310ms、x軸)に対して、対象領域に横たわる一列のピクセルの活性(y軸)をマッピングした「時空」マップである。T30およびNBP−14を共灌流(co−perfusion)した結果、強度グラフ上で蛍光強度の劇的な減少が明らかに表れる。注:時空マップは、それぞれの灌流(左)を標識化し、強度(右)および広がり(左)のグラフの両方において対応する軌跡を色分けした。
【0166】
<参考文献>
Badin,A.S.,J.Eraifej, and S.Greenfield.2013.in vitroでのラット眼窩前頭皮質の光学イメージングによって明らかにされた新規ペプチドの高分解能時空生物活性:神経変性疾患のための可能な含意.Neuropharmacology.73C:10−18.
Bon, C.L., and S.A.Greenfield.2003.アセチルコリンエステラーゼ由来ペプチドの生物活性:モルモット海馬における電気生理学的特性評価.Eur J Neurosci.17:1991−1995.
Collins,T.F.,E.O.Mann,M.R.Hill,E.J.Dommett, and S.A.Greenfield.2007.ニューロンアセンブリのダイナミクスは麻酔ではなく鎮痛薬によって調節される.Eur J Anaesthesiol.24:609−614.
Devonshire,I.M.,E.J.Dommett,T.H.Grandy,A.C.Halliday, and S.A.Greenfield.2010a.同時電気生理学的記録およびin vivo光学イメージングによって明らかにされるように、環境的な充実はラットバレル皮質における感覚誘発活動の特定の構成要素を分化的に修飾する.Neuroscience.170:662−669.
Devonshire,I.M.,T.H.Grandy,E.J.Dommett, and S.A.Greenfield.2010b.複合光学イメージングおよび電気生理学によって明らかにされたラットバレル皮質における感覚処理に対するウレタン麻酔の影響.Eur J Neurosci.32:786−797.
Grandy,T.H.,S.A.Greenfield, and I.M.Devonshire.2012.in vivoでの電位感受性色素の評価:脳脈動アーチファクトを効果的に除去した後の薬理学的副作用とシグナルノイズ比.Journal of neurophysiology.108:2931−2945.
Greenfield,S.A.,T.Day,E.O.Mann, and I.Bermudez.2004.新規ペプチドはアルファ7ニコチン性受容体の応答を調節する:脳における可能な栄養毒性のメカニズムの含意.J Neurochem.90:325−331.
Mann,E.O.,T.Tominaga,M.Ichikawa, and S.A.Greenfield.2005.in vitroでの海馬活動の時空間パターンのコリン作動性変調.48:118−133.
Tominaga,T.,Y.Tominaga,H.Yamada,G.Matsumoto, and M.Ichikawa.2000.Di−4−ANEPPS染色ラット海馬切片の神経活動における電気生理学的シグナルおよび光シグナルの定量化.Journal of neuroscience methods.102:11−23.。
【0167】
〔実施例16〕自由に動けるラットにおけるNBP14の効果
<背景>
アルツハイマー病患者の動物モデルとは異なり、一部のパーキンソン病のラットは十分に確立されており、容易に定量化できる。したがって、片側の線条体内にT30注射を投与し、毒の行動的影響を観察した。以降の実験では、注入側のDAニューロン喪失を誘発し、反対側のDAニューロンには作用しない公知の神経毒である6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)に対するNBP14の潜在的な保護効果を観察した。埋め込んだカニューレを介して内側前脳束(MFB)にNBP−14を投与した。6−ヒドロキシドーパミンは、10mg/kgで投与した。
【0168】
<詳細な方法>
ケタミン(10%:0.1ml/kg体重)およびキシラジン(2%;0.01ml/kg)で動物を麻酔した。その後、20mg/ml 6−OHDA(0.02%アスコルビン酸溶液)2μLを動物のMFBに定位的に注射した。病変座標は、前頂(bregma)および硬膜(dura)についてcm単位で設定される:L−1.7mm;AP−3.6mm;DV−8.0mm。注射(注射速度2μl/5min)後、1分間注射針を残して逆流を回避した後、ゆっくりと引っ込めた。
【0169】
肢配置試験(シリンダーテスト):この試験では、シリンダー状の囲いの壁に対して体を支持するラットの各前肢の使用を評価する。当該試験は、後肢で立って囲いの壁に向かってもたれることにより新たな環境を探索するという、動物固有の動きの利点を利用したものである。この試験を行うため、ラットを個別にガラスシリンダー(直径21cm、高さ34cm)内に置き、壁探索を3分間記録した。記録に先立ち、シリンダーへの習慣作用は許容されない。壁探索は、無傷の肢(R)および損傷した肢(L)の比で表れ、損傷した左+両前肢の値で除した無傷の右+両前肢の値(R/L)として計算される。肢配置試験は、ベースラインを得るために1日目に、選択のために1日目に、および2日目に行った。
【0170】
選択基準(1日目):肢配置試験について、この研究では、統計的に肢間で顕著な差が見られる全動物が含まれる(無傷の肢(R)および損傷した肢(L)の比は、損傷した左+両前肢の値で除した無傷の右+両前肢の値(R/L)として表される。)
全試験の結果は、平均(MEAN)群値±SEMとして表されるであろう。一元ANOVAによるデータの分析およびTukey試験により、処理効果の有意性を調べた。この研究は、実験動物の取扱いおよび使用における倫理的行動委員会に対して、本研究が規則および規制を遵守することを掲げる申請書を提出して承認を得た上で行った。
【0171】
図20は、NBP−14のin vivo試験中に準拠される手順を要約している。
【0172】
<結果>
[NBP14効果]
肢配置試験のR/L比の分析は、運動機能の片側のみの損傷を反映する。2日目(すなわち、6−OHDA注射から2日後かつNBP−14注射から1日後)、6−OHDA賦形剤で処理したときとの間で、肢配置のR/L比に顕著な差があった:それぞれ、7.54±1.63対3.62±0.55(p<0.05)。肢配置試験で見られたように、NBP−14で処理した場合、1回用量後に損傷した前肢の運動性が改善した(
図21)。
【0173】
〔実施例17〕APPおよびアミロイドに対するT30およびNBP14の効果
<背景>
過剰なカルシウムが、アミロイド前駆タンパク質(APP)の異常な切断、ゆえにアミロイドベータ(Aβ)の放出を引き起こすことについては、既に確立されている(Hartigan&Johnson,1999;Cai et al.,2012)。本発明者は、T30がPC12細胞内でカルシウム流入を約70%増加させることを示しており、かようなカルシウムの増加は、アミロイドの産生および全長APP分子の結果的な減少を引き起こす可能性がある。
【0174】
<詳細な方法論:APPの検出>
[タンパク質可溶化プロトコール]
PC12膜内でAPPを検出するのに十分なタンパク質を得るため、ペトリ皿にPC12細胞を成長培地とともに1週間置き、タンパク質を可溶化する前に、T30およびNBP−14で1時間処理した。細胞が90%コンフルエンスに達するまで成長させ、成長培地を除去し、HBSS2mlで再懸濁した。細胞懸濁液を15mlチューブに移し、1000rpmで5分間遠心した。その後、上清を捨て、プロテアーゼインヒビター(1μl:1ml PMSFおよび3μl:1ml アプロチニン)を加えたLysisバッファー(20mM Tris、137mM NaCl、1% Triton X−100、2mM EDTA;pH8)にペレットを再懸濁し、Polytronを用いて10秒間粉砕した。次に、粉砕したペレットを1.5mlエッペンドルフに分け、4℃で2時間回転または撹拌した。2時間後、エッペンドルフを15000rpmで20分間遠心し、上清を取った。Bradford試薬を用いて、各エッペンドルフに含まれるタンパク質を定量した。
【0175】
[電気泳動プロトコール]
APP検出のため、約25μgのタンパク質を用いた。プロトコールを開始する前に、試薬を以下のとおり調製した:
下部ゲル(10%)(重合20分)
10ml(2ゲル):3.6ml H
2O MQ、2.42ml アクリルアミドおよび1.3ml ビスアクリルアミド、2.5ml Tris−HCl 1.5M pH8.8、0.11ml SDS 10%、0.06ml 過硫酸アンモニウム 10%、6.67μl TEMED(最終構成要素)
上部ゲル(5%)(重合20分)
5ml(2ゲル):3.67ml H
2O MQ、0.48ml アクリルアミドおよび0.26ml ビスアクリルアミド、0.625ml Tris−hCl 1M pH6.8、0.05ml SDS 10%、25μl 過硫酸アンモニウム 10%、5μl TEMED
Tris−HCl 1.5M pH8.8
100ml:18.16gr Tris塩基、qsp 100ml H
2O MQ、pH8.8
Tris−HCl 1M pH6.8
100ml:12.1gr Tris塩基、qsp 100ml H
2O MQ、pH6.8
サンプルバッファー(4X)
8ml:3.2ml SDS 10%、1.6ml グリセロール、2ml Tris−HCl 1M pH6.8、0.8ml B−メルカプトエタノール、0.4ml ブロモフェノールブルー 0.1%またはレッド(実験には1Xを使用)
ランニングバッファー(10X)
1L:30.3g Tris塩基、144gr グリシン、10gr SDS、qsp 1L H
2O MQ(実験には1Xを使用)。
【0176】
電気泳動のステップは以下のとおりである:
a)下部および上部アクリルアミドゲルを調製する。APPゲルの%は、10%下部ゲルおよび5%スタッキングゲルである。
【0177】
b)(Bradfordアッセイで算出した)25μgの濃度でサンプル24μlを調製し(β−メルカプトエタノール+タンパク質+lisis含有6μl SB 4X)、100℃で5分間加熱して変性させる。
【0178】
c)タンパク質マーカーおよびサンプルをゲルのウェルに入れる(20−30μL)。
【0179】
d)泳動を実行する:35mA(約1時間)。
【0180】
[ウェスタンブロットプロトコール]
プロトコールを開始する前に、試薬を以下のとおり調製する:
転写バッファー(1X)
1L:3.03g Tris塩基、14.4gr グリシン、200ml メタノール、qsp 1L H
2O MQ
TBSバッファー(4X)
1L:24.25gr Tris塩基、60gr NaCl、qsp 1L H
2O MQ、pH7.5
TBS−Tweenバッファー
1L:250ml TBS 4X、0.5ml Tween20、qsp 1L H
2O MQ。
【0181】
電気的転写およびタンパク質の免疫検出の2つの段階があり、以下の段階を参照する:
1)電気的転写
a)PVDFメンブレンを活性化する:MeOH中で1分間、MQ H
2O中で2分間
b)PVDFメンブレン、紙、スポンジを転写バッファーに10分間つける
c)サンドイッチを作製し、ゲルからPDVFメンブレンへのタンパク質の転写を実行する:0.2Aで2時間。
【0182】
2)タンパク質の免疫検出
a)メンブレンの非特異部位を(TBS−Tに溶解した)5%ミルクでブロックする
b)1:500希釈(20μl:10ml)の(TBST/ミルク5%に溶解した)一次抗体:抗アミロイド前駆タンパク質(ab2072、ウサギ)とともに、4℃で一晩インキュベーション
c)TBS−Tでメンブレンを洗浄する(5分×2)
d)1:5000希釈(20μl:10ml)の(TBS−Tに溶解した)二次抗体:抗ウサギHRP(ヤギ)とともに、室温で45分間インキュベーション
e)TBS−Tでメンブレンを洗浄する(5分×2+10分×1)
f)Chemiboxオプション(白色光)を用いて写真を撮影し、マーカーバンドの位置を参照する
g)抗体検出のためECL試薬(HRP)を添加し(各コンポーネントにつき1ml)、Chemiboxオプション(光無し)を用いて数枚撮影する。
【0183】
<詳細な方法論:細胞培養培地におけるAβ
42の検出>
処理1時間後、培養培地を回収し、培養培地を希釈剤として用いて1:100に希釈した。その後、4連の各希釈サンプルを、AnaSpec(Fremont,CA,USA)のELISA検出キットで提供されるプレート内に置いた。その後、製造元のプロトコールに従って検出を行った。簡潔には、検出抗体50μl存在下でサンプルを4時間インキュベートした。その後、プレートを洗浄溶液で7回洗浄し、キットで提供されている3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)とともに15分間インキュベートした。サンプルを呈示した後、停止溶液で反応を停止し、450nmにおける光学濃度を読み取った。
【0184】
図22は、細胞内でのT30の効果に起因する一連の事象の概略図を示す:(1)T30が受容体のアロステリック部位に結合して、チャネルの開口を促進し、細胞内にCa
2+が流入する(Greenfield et al.2004)。(2)カルシウムの流入は、非局在および電位依存的な(L−VOCC)チャネルの開口をもたらし、より多くのCa
2+を細胞内に流入させる(Dickinson et al.,2007)。(3)これにより、細胞内のカルシウムはT30を含むAChE G4の放出増加を誘発する(Greenfield,2013)。(4)また、カルシウムは、T30に対するより多くの標的を提供することにより、より多くのCa
2+を細胞内へ流入させるであろうα7ニコチン性受容体の上方制御を誘起する(Bond et al.,2009)。(5)カルシウムは、(a)タウ(Tau)を増加させ、(b)細胞外の毒性を有するアミロイドの切断を引き起こすγ−セクレターゼ/β−セクレターゼを活性化する酵素(すなわちGSK−3)を活性化し、(c)T30は毒性量のCa
2+の細胞内への流入をさらに促進する(Hartigan&Johnson(1999),Cai et al.(2012),Garcia−Rates et al(2013))。
【0185】
したがって、免疫検出を用いて、本発明者は、T30(5μM)およびNBP14(0.5μM)の投与による(i)APPレベルおよび(ii)アミロイドの放出を発見した。
【0186】
<結果>
(i)
図23に示すように、T30はPC12細胞膜における全長APPのレベルを減少させ、これはNBP14によって反転する効果であった。値は、コントロール(100%±10.98);T30 5μM(67.82%±6.23%)およびT30+NBP−14 0.5μM(126%±1.12%)である。
【0187】
図24は、グラフで表されるウェスタンブロットによる免疫検出を示す。3種類の異なる処理は、APPの異なる発現レベル(
図24に表される値)を示す。各条件につき、タンパク質はGAPDHレベルで補正されている。
【0188】
APPの産生はT30ペプチドによって減少し、これはNBP−14によって反転される効果である。このことから、APPは切断され、アミロイドβ1−42ペプチド(Aβ
42)を放出することが示唆される。
【0189】
(ii)Aβ
42の放出を決定するため、我々は市販のELISAキットを用いて、溶液中に存在するAβ42を測定した。この試験では、T30はAβ42の放出をコントロールに比べて約175%まで増加させ、NBP−14はAβ
42の放出をコントロールに近い値にもたらすことが示された(
図25参照)。