(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レンチ部および把持部を備えており、前記把持部は、前記レンチ部へと延びて延伸端において前記レンチ部に接続されている、加工対象物をねじって回すためのレンチであって、
ローラと、第1の部材と、前記第1の部材に少なくとも部分的に収められた第2の部材とを備える一方向伝達機構をさらに備え、
前記第1の部材は、当該レンチの前記レンチ部に固定に設けられ、前記第2の部材は、加工対象物との嵌合に用いられ、
前記レンチ部からの回転トルクの方向は、前記第1の部材の回転軸に従った第1の方向および第2の方向であり、
前記第1の方向の回転トルクおよび前記第2の方向の回転トルクの一方に関して、前記ローラは、前記第2の部材を前記第1の部材に対して不動にすることで、回転トルクを加工対象物へと出力し、
前記第1の方向の回転トルクおよび前記第2の方向の回転トルクの他方に関して、前記ローラは、回転トルクを加工対象物へと出力することなく前記第2の部材を前記第1の部材に対して回転させ、
前記第1の部材の第1の表面および前記第2の部材の第2の表面が、互いに対向し、 前記第1の表面は、滑らかな曲面であり、前記第2の表面は、前記把持部に近接する部分のみに溝を有し、当該溝は、対向する前記第1の表面と協働して、前記それぞれのローラのための移動室を画成し、
または、
前記第1の部材の第2の表面および前記第2の部材の第1の表面が、互いに対向し、前記第1の表面は、滑らかな曲面であり、前記第2の表面は、前記把持部に近接する部分のみに溝を有し、当該溝は、対向する前記第1の表面と協働して、前記それぞれのローラのための移動室を画成し、
前記溝の数は、3以上であり、
前記レンチ部は、複数のスナップスプリングおよび複数の固定板をさらに含み、前記複数のスナップスプリングはそれぞれ前記第2の部材の一端面に当接し、前記スナップスプリングの外側において前記複数の固定板はそれぞれ前記レンチ部に固定され、それらの間の固定の接続は前記固定板および前記レンチ部のねじ穴にねじを通すことによって達成される、レンチ。
前記第1の部材によって駆動される前記ローラは、前記移動室の第1の部分から前記移動室の第2の部分へと移動し、あるいは前記第2の部分から前記第1の部分へと移動し、前記第1の部分における前記ローラは、自由に回転することができ、前記第2の部分における前記ローラは、前記第1の部材と前記第2の部材との間に挟まれる、請求項1に記載のレンチ。
【発明の概要】
【0004】
先行技術の上述の欠点に鑑み、本発明が解決しようとする技術的課題は、レンチのレンチ部に一方向伝達機構を設けることによって加工対象物への無音な一方向性の伝達を実現するレンチを提供することである。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、レンチ部および把持部を含んでおり、把持部は、レンチ部へと延びて延伸端においてレンチ部に接続されている、加工対象物をねじって回すためのレンチを提供し、このレンチは、ローラと、第1の部材と、第1の部材に少なくとも部分的に収められた第2の部材とを含む一方向伝達機構をさらに含み、第1の部材は、レンチのレンチ部に固定に設けられ、第2の部材は、加工対象物との嵌合に用いられ、レンチ部からの回転トルクの方向は、第1の部材の回転軸に従った第1の方向および第2の方向であり、第1の方向の回転トルクおよび第2の方向の回転トルクの一方に関して、ローラは、第2の部材を第1の部材に対して不動にすることで、回転トルクを加工対象物へと出力し、第1の方向の回転トルクおよび第2の方向の回転トルクの他方に関して、ローラは、回転トルクを加工対象物へと出力することなく第2の部材を第1の部材に対して回転させる。
【0006】
随意により、第1の部材の第1の表面および第2の部材の第2の表面が、互いに対向し、第1の表面は、滑らかな曲面であり、第2の表面は、回転軸に垂直な方向に分布した複数の溝を有し、各々の溝は、対向する第1の表面と協働して、ローラのための移動室を画成し、第1の部材によって駆動されるローラは、移動室の第1の部分から移動室の第2の部分へと移動し、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動し、第1の部分におけるローラは、自由に回転することができ、第2の部分におけるローラは、第1の部材と第2の部材との間に挟まれる。
【0007】
随意により、第1の部材の第2の表面および第2の部材の第1の表面が、互いに対向し、第1の表面は、滑らかな曲面であり、第2の表面は、回転軸に垂直な方向に分布した複数の溝を有し、各々の溝は、対向する第1の表面と協働して、ローラのための移動室を画成し、第1の部材によって駆動されるローラは、移動室の第1の部分から移動室の第2の部分へと移動し、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動し、第1の部分におけるローラは、自由に回転することができ、第2の部分におけるローラは、第1の部材と第2の部材との間に挟まれる。
【0008】
さらに、第1の表面は、円筒面である。
【0009】
さらに、ローラは、ボールローラ、ピンローラまたはニードルローラである。
【0010】
さらに、レンチは、第1の部分に配置された弾性部材をさらに含み、弾性部材は、第1の部分から第2の部分への方向に延び、ローラが第1の部分と第2の部材との間に挟まれるようにローラに当接する。
【0011】
随意により、溝は、回転軸に垂直な第2の表面の断面に一様または非一様に分布する。
【0012】
随意により、溝は、回転軸に垂直な第2の表面の断面のうちの把持部に隣接する部分に一様または非一様に分布し、溝の数は、3以上である。
【0013】
さらに、第2の部材は、加工対象物との嵌合のための第3の表面を有する。
【0014】
随意により、第1の部材の第2の表面および第2の部材の第1の表面が、互いに対向し、第1の表面および第2の表面は、どちらも滑らかな曲面であり、ローラの各々は、第1の表面と第2の表面との間に分布し、2つの隣り合うローラは、両者の間の弾性部材によって接続され、弾性部材の延在方向は、一方のローラから他方のローラへの方向であり、回転軸に垂直なローラの断面は、最大幅および最小幅を有し、最大幅は、ローラが位置する場所の第1の表面と第2の表面との間の距離よりも大きく、最小幅は、ローラが位置する場所の第1の表面と第2の表面との間の距離よりも小さく、第1の部材によって駆動されるローラの回転において、ローラの断面の最大幅の方向の軸とローラが位置する場所の第1の表面の法線とがなす角度が、徐々に増加または減少する。
【0015】
さらに、第1の表面および第2の表面は、円筒面である。
【0016】
随意により、第1の部材の第1の表面および第2の部材の第2の表面が、互いに対向し、第1の表面は、滑らかな曲面であり、第2の表面は、把持部に近接する部分に溝を有し、溝は、対向する前記第1の表面と協働して、それぞれのローラのための移動室を画成し、2つの隣り合うローラは、両者の間の弾性部材によって接続され、弾性部材の延在方向は、一方のローラから他方のローラへの方向であり、回転軸に垂直なローラの断面は、最大幅および最小幅を有し、最大幅は、ローラが位置する場所の第1の表面と第2の表面との間の距離よりも大きく、最小幅は、ローラが位置する場所の第1の表面と第2の表面との間の距離よりも小さく、第1の部材によって駆動されるローラの回転において、ローラの断面の最大幅の方向の軸とローラが位置する場所の第1の表面の法線とがなす角度が、徐々に増加または減少する。
【0017】
随意により、第1の部材の第2の表面および第2の部材の第1の表面が、互いに対向し、第1の表面は、滑らかな曲面であり、第2の表面は、把持部に近接する部分に溝を有し、溝は、対向する前記第1の表面と協働して、それぞれのローラのための移動室を画成し、2つの隣り合うローラは、両者の間の弾性部材によって接続され、弾性部材の延在方向は、一方のローラから他方のローラへの方向であり、回転軸に垂直なローラの断面は、最大幅および最小幅を有し、最大幅は、ローラが位置する場所の第1の表面と第2の表面との間の距離よりも大きく、最小幅は、ローラが位置する場所の第1の表面と第2の表面との間の距離よりも小さく、第1の部材によって駆動されるローラの回転において、ローラの断面の最大幅の方向の軸とローラが位置する場所の第1の表面の法線とがなす角度が、徐々に増加または減少する。
【0018】
さらに、第1の表面は、円筒面である。
【0019】
さらに、弾性部材は、圧縮された状態にあり、ローラを第1の部材と第2の部材との間に挟ませる。
【0020】
さらに、第2の部材は、加工対象物との嵌合のための第3の表面を有する。
【0021】
さらに、本発明は、レンチ部および把持部を含んでおり、把持部は、レンチ部へと延びて延伸端においてレンチ部に接続されている、加工対象物をねじって回すためのレンチを開示し、このレンチは、ローラと、第1の部材と、第1の部材に少なくとも部分的に収められたホルダとを含む一方向伝達機構をさらに含み、第1の部材は、レンチのレンチ部に固定に設けられ、ホルダは、ローラの収容および加工対象物の受け入れに用いられ、レンチ部からの回転トルクの方向は、第1の部材の回転軸に従った第1の方向および第2の方向であり、第1の方向の回転トルクおよび第2の方向の回転トルクの一方に関して、ローラは、加工対象物を第1の部材に対して不動にすることで、回転トルクを加工対象物へと出力し、第1の方向の回転トルクおよび第2の方向の回転トルクの他方に関して、ローラは、回転トルクを加工対象物へと出力することなく加工対象物を前記第1の部材に対して回転させる。
【0022】
さらに、ホルダに面する第1の部材の第1の表面が、滑らかな曲面であり、ホルダは、回転軸に垂直な方向に間隔を空けて位置する複数の空間を備え、各々のローラは、各々の空間にそれぞれ収容され、空間は、第1の表面に面する第1の開口部および加工対象物に面する第2の開口部を有し、ローラは、第1の開口部を介して第1の表面に接触することで、第1の部材によって駆動されることができ、ローラは、第2の開口部を介して加工対象物に接触し、第1の表面と加工対象物の表面とによって画成される空間は、ローラのための移動室であり、第1の部材によって駆動されるローラは、移動室の第1の部分から移動室の第2の部分へと移動し、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動し、第1の部分におけるローラは、自由に回転することができ、第2の部分におけるローラは、第1の部材と加工対象物との間に挟まれる。
【0023】
さらに、レンチは、第1の部分に配置された弾性部材をさらに含み、弾性部材は、第1の部分から第2の部分への方向に延び、ローラが第1の部分と加工対象物との間に挟まれるようにローラに当接する。
【0024】
随意により、ローラは、ボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラであり、第2の開口部の幅は、ローラが空間から外れることがないように、ボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラの直径よりも小さい。
【0025】
随意により、ローラは、ピンローラまたはニードルローラであり、ピンローラまたはニードルローラの少なくとも一端が、突起を有し、ホルダは、ローラを空間から外れないようにする制限構造をさらに備え、制限構造は、摺動スロットであり、突起は、摺動スロットへと埋め込まれる。
【0026】
さらに、ホルダは、加工対象物に当接する弾性エジェクタピンをさらに備える。
【0027】
随意により、ローラは、ピンローラまたはニードルローラであり、ピンローラまたはニードルローラの中央部分の直径は、ピンローラまたはニードルローラの上方部分および下方部分の直径よりも小さく、ホルダは、ローラを空間から外れないようにする制限構造をさらに備え、制限構造は、部分的にU字形の弾性シートであり、ピンローラまたはニードルローラの中央部分は、弾性シートのU字形部分に挟まれ、ピンローラまたはニードルローラの上方部分および下方部分が、第1の部材および加工対象物との接触に使用される。
【0028】
さらに、レンチは、ホルダの端面に当接して回転軸の方向のホルダの移動を制限する保持リングをさらに含む。
【0029】
さらに、レンチは、保持リングに当接するスナップスプリングをさらに含み、スナップスプリングは、レンチ部に設けられた環状溝に取り付けられ、保持リングが回転軸の方向に前記レンチ部から外れることを防止する。
【0030】
さらに、レンチは、2つのレンチ部を備え、把持部は、2つのレンチ部の間に接続される。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、一方向伝達機構の種々の利用可能な構造が、レンチのために提供される。レンチに適用される一方向伝達機構は、高速回転を必要としないため、そのトルクは、レンチの使用の要件を満たすことができ、したがって本発明のレンチは、先行技術のレンチに匹敵する。一方で、一方向伝達機構は、使用において静音であり、軸受の耐摩耗性を有する。
【0032】
本発明の目的、特徴、および効果を充分に理解するために、本発明の考え方、具体的な構造、および技術的効果が、添付の図面と併せて以下でさらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および
図2に示されるように、第1の好ましい実施形態において、本発明のレンチは、2つのレンチ部と、2つのレンチ部へと延び、2つの延伸端において2つのレンチ部へと接続された把持部1とを備えている。2つのレンチ部は、いずれも一方向伝達機構を備えている。
【0035】
図3および
図4に示されるレンチ部の一方向伝達機構は、ローラ112などの複数のローラと、第1の部材110と、第2の部材111とを含む。第1の部材110は、レンチ部に固定され、第2の部材111は、第1の部材110に収められ、第2の部材111の回転軸と第1の部材110の回転軸とは、平行であり、好ましくは両者は一致する。具体的には、把持部1は、第1の部材110に接続され、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材110に回転トルクを加える。回転軸に沿った回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図4において用紙に対して内側に垂直、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、
図4において用紙に対して外側に垂直、すなわち反時計回りの方向である。
【0036】
第1の部材110の第2の部材111に面する第1の表面1101は、滑らかな曲面であり、この例においては円筒面であり、第2の部材111の第1の部材110に面する第2の表面1112は、溝116などの複数の溝を含む。これらの溝は、第1の部材110の回転軸に対して垂直な方向に分布しており、この例では、第2の部材111の回転軸に対して垂直に外周に分布している。第2の面1112および第1の面1101は、互いに対向し、各々の溝が、対向する第1の面1101とともに、移動室116などのローラのための移動室を画成している。移動室は、より大きな第1の部分と、より小さい第2の部分とを備えるように設計されており、例えば、移動室116は、第1の部分116aと第2の部分116bとを有する。ローラ112などの移動室内のローラを、ローラ112へと加わる第1の表面1101の摩擦力によって、移動室の第1の部分から第2の部分へと移動し、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動するように、駆動することができる。移動室の第1の部分のローラは、自由に回転することができ、第2の部分のローラは、第1の部材110と第2の部材111との間に挟まれる。第1の部材110と第2の部材111との間に挟まれたローラが、セルフロック(self−locking)による摩擦力によって変形してデッドロック(dead lock)を形成し、したがって第2の部材111は第1の部材110に対して動くことができず、回転トルクを一方向伝達機構を介して加工対象物へと出力することができる一方で、自由に回転することができるローラは、デッドロックを形成することがなく、第2の部材111が、第1の部材110に対して回転可能であり、したがってレンチ部からの回転トルクを加工対象物へと出力することができない。
【0037】
この実施形態におけるローラは、回転体であり、円筒状、球状、または段状(stepped)であってよいボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラである。好ましくは、各々のローラが位置する移動室の第1の部分には、ローラが第1の部材110と第2の部材111との間に挟まれるようにローラに当接するばね115などの横方向に配置された弾性部材がさらに設けられる。ここで、「横方向」とは、ばねが位置する移動室の第1の部分から第2の部分への方向のばねの延在を指し、すなわちばねの復元力の方向が、第1の部分から第2の部分への方向である。
【0038】
第2の部材111は、
図4に示されるように、この例においては第1の部材110から遠い表面である加工対象物との嵌合のための第3の表面1111を有する。使用時に、第3の表面1111は、ナットなどの加工対象物の端部を囲み、加工対象物を駆動して回転させる。
図4に示されるとおりの第1の部材110の回転トルクが第1の方向である場合、ローラは、第1の部材110と第2の部材111との間に挟み込まれることで、第1の部材110から第2の部材111へと回転トルクを伝達し、第2の部材111が加工対象物を駆動して時計回りに回転させる。
図4に示されるとおりの第1の部材110の回転トルクが第2の方向である場合、ローラが第1の部材110によって駆動されて第1の部材110および第2の部材111の挟み込みから外れることで、第1の部材110からの回転トルクは第2の部材111へと伝達されず、加工対象物は回転しない。
【0039】
好ましくは、
図3に示されるように、保持リング113a、113bおよびスナップスプリング114a、114bが、さらに設けられる。保持リング113a、113bは、第2の部材111の一端面にそれぞれ当接して、第2の部材111を第1の部材110内に閉じ込め、スナップスプリング114a、114bは、保持リング113a、113bにそれぞれ当接し、レンチ部(この実施形態においては、とりわけ第1の部材110の第1の表面1101)に設けられた環状溝に嵌合し、対応する環状溝に埋め込まれることによって、回転軸の方向の保持具113a、113bおよび第2の部材111の移動を制限することで、保持リング113a、113bおよび第2の部材111が回転軸の方向にレンチ部から脱落することを防止するために使用される。
【0040】
図5は、ローラ122などの複数のローラと、第1の部材120と、第2の部材121とを含むレンチ部の一方向伝達機構の別の構造を示しており、第1の部材120は、レンチ部に固定され、第2の部材121は、第1の部材120内に収められ、第2の部材121の回転軸と第1の部材120の回転軸とは、平行であり、好ましくは両者は一致している。具体的には、把持部1が、第1の部材120に接続されており、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材120に回転トルクを加える。回転軸の方向における回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図5において用紙に対して内側に垂直、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、
図5において用紙に対して外側に垂直、すなわち反時計回りの方向である。
【0041】
第1の部材120に面する第2の部材121の第1の表面1212は、滑らかな曲面であり、この例では円筒面である。第2の部材121に面する第1の部材120の第2の表面1201は、溝126などの複数の溝を有する。これらの溝は、第1の部材120の回転軸に対して垂直な方向に分布しており、この例では、第2の部材121に垂直な回転軸の周辺に分布している。第2の面1201および第1の面1212は、互いに対向し、各々の溝が、対向する第1の面1212とともに、移動室126などのローラのための移動室を画成している。移動室は、第1の部分126aおよび第2の部分126bを有する移動室126など、より大きな第1の部分およびより小さい第2の部分を有するように設計されている。ローラ122などの移動室内のローラを、ローラ122へと加わる第1の表面1212の摩擦力によって、移動室の第1の部分から移動室の第2の部分へと移動し、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動するように、駆動することができる。移動室の第1の部分のローラは、自由に回転することができ、第2の部分のローラは、第1の部材120と第2の部材121との間に挟まれる。第1の部材120と第2の部材121との間に挟まれたローラは、セルフロックによる摩擦力によって変形してデッドロックを形成することで、第2の部材121を第1の部材120に対して動けなくし、したがってレンチ部からの回転トルクを、一方向伝達機構を介して加工対象物へと出力することができる。自由に回転することができるローラは、デッドロックを形成することがなく、第2の部材121が第1の部材120に対して回転可能であるため、レンチ部からの回転トルクを加工対象物へと出力することができない。
【0042】
この実施形態におけるローラは、回転体であり、円筒状、球状、または段状であってよいボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラである。好ましくは、各々のローラが位置する移動室の第1の部分には、ローラが第1の部材120と第2の部材121との間に挟まれるようにローラに当接するばね125などの横方向に配置された弾性部材がさらに設けられる。ここで、「横方向」とは、ばねが位置する移動室の第1の部分から第2の部分への方向のばねの延在を指し、すなわちばねの復元力の方向が、第1の部分から第2の部分への方向である。
【0043】
第2の部材121は、
図4に示されるように、この例においては第1の部材120から遠い表面である加工対象物との嵌合のための第3の表面1211を有する。使用時に、第3の表面1211は、ナットなどの加工対象物の端部を囲み、加工対象物を駆動して回転させる。
図5に示されるとおりの第1の部材120の回転トルクが第1の方向である場合、ローラが第1の部材120と第2の部材121との間に挟まれることにより、回転トルクが第1の部材120から第2の部材121へと伝達され、第2の部材121が加工対象物を時計回りの方向に回転させ、
図5に示されるとおりの第1の部材120の回転トルクが第2の方向である場合、ローラが第1の部材120によって駆動され、第1の部材120および第2の部材121の挟み込みから外れるため、第1の部材120からの回転トルクを第2の部材121に伝達することができず、加工対象物は回転しない。
【0044】
上記の2つの例では、第1の部材または第2の部材の表面の溝は、底面と底面の両側に位置する側面とを有するU字形の溝である。
図6に示されるレンチ部の一方向伝達機構の第3の構造において、第1の部材130の第2の表面1301に配置された溝は、V字形であり、これも実行可能な構造である。第2の部材131、ローラ132などの複数のローラ、第2の部材131の第1の表面1312、および加工対象物との嵌合のための第2の部材131の第3の表面1311は、いずれも前述の例と同様である。各々の溝が、対向する第1の面1312とともに、移動室136などのローラのための移動室を画成している。移動室は、第1の部分136aおよび第2の部分136bを有する移動室136など、より大きな第1の部分およびより小さい第2の部分を有するように設計されている。好ましくは、各々のローラが位置する移動室の第1の部分には、
図7に示されるU字形のばね135など、ローラが第1の部材130と第2の部材131との間に挟まれるようにローラに当接する横方向に配置された弾性部材がさらに設けられる。ばねは、ばねが位置する移動室の第1の部分から第2の部分への方向に延び、すなわちばねの復元力の方向が、第1の部分から第2の部分への方向である。
【0045】
図8が、ローラ142などの複数のローラと、第1の部材140と、第2の部材141とを含むレンチ部の一方向伝達機構の第4の構造を示している。第1の部材140は、レンチ部に固定され、第2の部材141は、第1の部材130に収められ、第2の部材141の回転軸と第1の部材140の回転軸とは、平行であり、好ましくは両者は一致する。具体的には、把持部1が、第1の部材140に接続されており、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材140に回転トルクを加える。回転軸の方向における回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図8において用紙に対して内側に垂直、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、
図8において用紙に対して外側に垂直、すなわち反時計回りの方向である。
【0046】
第2の部材141に面する第1の部材140の第1の表面1401は、滑らかな曲面であり、この例では円筒面である。第1の部材140に面する第2の部材141の第2の表面1412は、滑らかな曲面であり、この例では円筒面である。この例において、第2の表面1412および第1の表面1401は、互いに平行であり、それらの対称軸は、どちらも第2の部材141および第1の部材140の回転軸である。各々のローラは、第1の表面1401と第2の表面1412との間に分布し、ばねなどの弾性部材(図示せず)が、隣り合う2つのローラの間に接続され、ばねは、一方のローラから他方のローラへと延びる。ローラは、
図8に示されるように、異形のローラであり、回転軸に垂直な断面が、最大幅および最小幅を有し、最大幅は、第1の表面13401と第2の表面1412との間の距離よりも大きく、最小幅は、第1の表面1401と第2の表面1412との間の距離よりも小さい。好ましくは、ローラ間のばねは、圧縮された状態にあり、各々のローラは、第1の部材140と第2の部材141との間に挟まれ、とくには第1の表面1401と第2の表面1412との間に挟まれている。第1の表面1401と第2の表面1412との間のローラを、ローラへと加わる第1の表面1401の摩擦力によって駆動し、回転させることができる。ローラの回転は、ローラの断面の最大幅の方向の軸とローラが位置する第1の表面1401の法線とがなす角度(鋭角)が徐々に増加し、あるいは減少する方向の回転であり得る。
【0047】
第2の部材141は、
図8に示されるように、この例においては第1の部材140から遠い表面である加工対象物との嵌合のための第3の表面1311を有する。使用時に、第3の表面1311は、ナットなどの加工対象物の端部を囲み、加工対象物を駆動して回転させる。
図8に示されるとおりの第1の部材140の回転トルクが第1の方向である場合、ローラは、断面の最大幅の方向のローラの軸とローラが位置する第1の表面1401の法線との間の角度が徐々に減少するような方向に回転し、あるいはそのような方向に回転しようとする傾向を有し、したがって第1の表面1401と第2の表面1412との間にしっかりと挟まれ、回転トルクを第1の部材140から第2の部材141へと伝達して、加工対象物を時計方向に回転させることができ、
図8に示されるとおりの第1の部材130の回転トルクが第2の方向である場合、ローラは、第1の部材140によって駆動され、断面の最大幅の方向のローラの軸とローラが位置する第1の表面1401の法線との間の角度が徐々に増加するような方向に回転し、したがって第1の表面1401および第2の表面1412の挟み込みから外れ、回転トルクを第1の部材140から第2の部材141へと伝達することができず、加工対象物は回転しない。
【0048】
図9および
図10に示されるレンチ部の一方向伝達機構は、ローラ212などの複数のローラと、第1の部材210と、第2の部材211とを含む。第1の部材210は、レンチ部に固定され、第2の部材211は、第1の部材210に収められ、第2の部材211の回転軸と第1の部材210の回転軸とは、平行であり、好ましくは両者は一致する。具体的には、把持部1が、第1の部材210に接続されており、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材210に回転トルクを加える。回転軸の方向における回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図9において用紙に対して内側に垂直、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、
図9において用紙に対して外側に垂直、すなわち反時計回りの方向である。
【0049】
図9および
図10に示される一方向伝達機構の構造は、
図9および
図10に示される一方向伝達機構の第1の部材210の第2の表面2101上の溝216などの複数の溝が、第1の部材210の回転軸に垂直な第2の表面2101の断面のうち、把持部1の部分に隣接する部分にだけ分布しており、この例では、とくには把持部1に隣接する部分における外周の一部分に分布していることを除き、
図5に示したものと同様である。溝の数は、好ましくは3つである。上記に加えて、一方向伝達機構の第2の部材211、第1の部材210、ローラ212などの複数のローラ、およびばね215などの複数の弾性部材の構造および動作原理は、
図5に示した一方向伝達機構と同じであり、ここでは詳細には説明しない。
【0050】
図10に示されるように、レンチ部は、スナップスプリング213a、213bおよび固定板214a、214bをさらに備え、スナップスプリング113a、113bは、それぞれ第2の部材211の一端面に当接し、第1の部材210の表面2101に配置された環状溝に嵌合して、対応する環状溝へと埋め込まれることで、回転軸の方向の第2の部材211の移動を制限し、固定板214a、214bは、スナップスプリング113a、113bの外側において、
図10に示されるように、レンチ部にそれぞれ固定され、それらの間の固定の接続は、固定板214a、214bおよびレンチ部のねじ穴にねじを通すことによって達成される。
【0051】
さらに、
図4、
図6、および
図8に示した一方向伝達機構を、
図9に示した構造と同様に設計することができ、すなわちローラおよび溝を、回転軸に垂直な第2の表面の断面のうちの把持部に隣接する部分にのみ分布させることができる。
図4に示した一方向伝達機構が
図9に示した構造と同様に設計される場合、溝が、第1の部材に面する第2の部材の表面に設けられ、各々の溝が、ローラおよび弾性部材に対応し、溝の数は、好ましくは3つである。
図6に示した一方向伝達機構が
図9に示した構造と同様に設計される場合、溝が、第2の部材に面する第1の部材の表面に設けられ、各々の溝が、ローラおよび弾性部材に対応し、溝の数は、好ましくは3つである。
図8に示した一方向伝達機構が
図9に示した構造と同様に設計される場合、1つの溝が、第1の部材に面する第2の部材の表面に設けられ、あるいは1つの溝が、第2の部材に面する第1の部材の表面に設けられ、複数のローラ(例えば、3つ)が、溝に配置され、弾性部材が、ローラ間に接続される。上記に加えて、一方向伝達機構の第2の部材、第1の部材、複数のローラ、および複数のばねの構造および動作原理は、
図4、
図6、および
図8に示した一方向伝達機構のものと同じであり、ここでは詳細には説明しない。一方向伝達機構のこのような構造によれば、レンチの頭部にローラを設けなくてよいため、頭部の構造を小型化することができ、より広い範囲の用途に関して、狭い空間で使用することが可能である。
【0052】
図11および
図12に示されるように、第2の好ましい実施形態において、本発明のレンチは、2つのレンチ部と、2つのレンチ部へと延び、2つの延伸端において2つのレンチ部に接続された把持部1とを有する。一方のレンチ部は、上記の実施形態において説明したとおりの一方向伝達機構を備え、他方のレンチ部は、一方向伝達機構を備えず、むしろ従来からのレンチ部の構造である。
【0053】
図13および
図14に示されるように、第3の好ましい実施形態において、本発明のレンチは、レンチ部へと延び、延伸端においてレンチ部に接続された1つのレンチ部を有し、レンチ部に一方向伝達機構が設けられている。
【0054】
図15に示されるレンチ部の一方向伝達機構は、ローラ312などの複数のローラと、第1の部材310と、第2の部材とを含み、第2の部材は、互いに係合する第1の部分311aおよび第2の部分311bによって形成されるホルダを含む。第1の部材310は、レンチ部に固定され、第2の部材は、第1の部材310に収められ、第2の部材の回転軸は、第1の部材310の回転軸に平行であり、好ましくは両者は一致する。具体的には、把持部1が、第1の部材310に接続されており、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材310に回転トルクを加える。回転軸の方向における回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図18〜
図21のように用紙に対して内側に垂直、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、
図18〜
図21のように用紙に対して外側に垂直、すなわち反時計回りの方向である。
【0055】
図20は、不動の状態の一方向伝達機構の正面図を示しており、相手方の加工対象物3が図示されている。
図15および
図20に見られるように、第2の部材に面する第1の部材310の第1の表面3101は、滑らかな曲面であり、この例においては円筒面であり、第2の部材のホルダは、第1の部材310および第2の部材の回転軸に直交する方向に互いに間隔を空けて位置する複数の空間が設けられた環状体であり、各々のローラは、それぞれの空間に収容され、ここで空間は、
図25に示される第2の部材の空間3212と同様である。各々の空間は、第1の部材310に面する第1の開口部と、加工対象物3に面する第2の開口部とを有する。したがって、第1の表面3101と加工対象物の表面とによって限られる空間が、移動室316などのローラのための移動室となる。この例において、移動室は、(弓形の断面を有する)部分円筒形状を有し、移動室は、第1の部分316aと第2の部分316bとを有する移動室316など、より大きな第1の部分と、より小さい第2の部分とを有するように設計される。ローラは、自身が位置する空間の第1の開口部を介して第1の表面3101に接触することで、第1の部材320によって駆動されることができ、ローラは、第2の開口部を介して加工対象物3に接触する。第1の部分310は、第1の部分310とローラとの間の摩擦によってローラを駆動して、ローラが位置する空間の第1の部分から第2の部分へと移動させ、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動させることができる。第1の部分のローラは、自由に回転することができ、第2の部分のローラは、第1の部材310と加工対象物3との間に挟まれる。
図20に示されるように、移動室316内のローラが第2の部分316bに位置する場合に、第1の部材310が反時計方向に回転させられると、ローラは、摩擦力の作用の下で316bから316aへと移動する傾向を示し、ローラがロックされ、加工対象物3が駆動されて一緒に回転し、第1の部材310が時計方向に回転させられると、ローラは、摩擦力の作用の下で316aから316bへと移動する傾向を示し、ローラが自由に回転し、加工対象物3およびホルダが一緒に第1の部材310に対して移動し、ラチェット機能を達成する。加工対象物を時計回りに締め付けたい場合に、ローラを第1の部分316aなどの第1の部分に配置すれば充分であることを、見て取ることができる。
【0056】
具体的には、
図16および
図17が、ホルダの第2の部分311bを示しており、第1の部分311aの構造は、第1の部分311aに係合する第2の部分311bの表面が突起3112などの複数の突起を有し、第1の部分311aの係合面がこれらの突起と嵌合する凹部を有することを除き、第2の部分311bと対称である。第2の部分311bは、移動室316(
図20を参照)などのローラを収容するための移動室を形成するように1対1で第1の部分311aの溝に対応して係合する溝3161などの複数の溝を有する。第2の部分311bは、加工対象物に面する内面と、第1の部材310に面する外面とを有し、外面と第1の部材310の第1の表面3101との間には、すき間が存在し、すなわち両者は非接触であり、内面は、加工対象物に適合する形状を有しており、第1の部分311aも同じである。例えば、この例における一方向伝達機構は、(
図18に示されるように)六角ナットと嵌合すべく使用されるため、第2の部分311bの内面は、側壁3111などの6つの側壁を有し、各々の側壁が、六角ナットの側面に対応する。
図17に示される第2の部分311bの正面図において、第2の部分311bの内面がおおむね正六角形であることを見て取ることができ、第1の部分311aも同じであるため、両者の係合によって形成されるホルダの内面は、回転軸に垂直な断面においてほぼ正六角形である。しかしながら、本発明の他の例においては、ホルダの内面の形状を、他の形状であってもよい嵌合すべき加工対象物に応じて、設計および決定することができる。
【0057】
具体的には、
図18に示されるように、この例の一方向伝達機構を加工対象物3に嵌合させたとき、ホルダの内面は、加工対象物3の表面に対向するが、両者は完全には接触していない。実際に、ローラの効果的なロック機能を確実にし、加工対象物3の一方向伝達機構との嵌合の着脱を容易にするために、ホルダの内面は、加工対象物の表面から特定の距離のすき間を有するように設計される。この例において、ホルダの内面の6つの側壁の各々は、すき間A1およびA2など、加工対象物3の側壁に接触していない2つのすき間を有し、すき間A1が、加工対象物3がねじ込み時にホルダに接触しないようにして、ローラのロック機能が失われないようにするために使用される。すき間A2は、加工対象物3が一方向伝達機構へと配置されるときに加工対象物3の六角点がホルダに接触しないようにして、加工対象物3の配置および取り外しを容易にするために使用される。ホルダの内面の6つの側壁の各々は、突出部Cなど、加工対象物3の側壁へと向いた突出部をさらに有する。突出部Cは、すき間A1およびA2の間に位置し、A1およびA2の接続線と比べて加工対象物3により近い。加えて、すき間A1およびA2の間の突出部Cは、ローラが位置する場所から遠い側に分布しており、すなわち
図18に示されるように、ホルダの側壁を2つの部分に分割する二等分線Bをすき間A1およびA2の間に引くと、2つの部分のうちのローラから遠い部位に接触領域Cが位置する。ホルダの内面の他の側壁の突出部およびすき間の設計は同じであり、したがってホルダの内面の6つの側壁における6つの接触領域は、六角形を形成し、これによってホルダ内に配置されるときの加工対象物3の初期位置を保証し、デッドロック機能の失敗を回避することができる。これは、デッドロッキングが、ローラが狭い空間に位置するときにのみ有効となることができ、ローラが真ん中の最大位置にまさに位置する場合、デッドロックが無効になるからである。加えて、これらの接触領域は、ラチェットが回転させられるときも加工対象物に接触することができ、したがって別のホルダが、ラチェット機能を達成するために回転させられる。当然ながら、加工対象物は、ラチェット機能を達成するために、他の位置に接触してホルダを駆動し、回転させることができる。ホルダの形状が二等分線に対して対称に設計される場合、デッドロック機能とラチェット機能とを入れ替えることができる。
【0058】
具体的には、
図19に示されるように、レンチ部からの回転トルクが第1の方向である場合、すなわち第1の部材310が図中の矢印によって示される方向とは反対に回転させられる場合、第1の部材310と、ローラと、加工対象物3との間の固定力が解放され、加工対象物3がわずかな角度の回転後に第2の部材のホルダに接触し、加工対象物3が回転させられない場合には、加工対象物3がホルダと一緒に第1の部材310に対して回転し、ローラが転がり始める。すなわち、ローラは、第1の部分310によってローラが位置する移動室の第1の部分へと駆動され、自由に回転することができる。ローラがデッドロックを形成することがなく、第1の部材310に対して回転可能であるため、レンチ部からの回転トルクを加工対象物3へと出力することはできない。上述の回転は、ローラの転がり摩擦に基づく第1の部材310に対する加工対象物3の回転であり、抵抗が小さく、したがってラチェット機能の実現が容易になる。
図21に示されるように、レンチ部からの回転トルクが第2の方向である場合、すなわち第1の部材310が図中の矢印によって示される方向に回転させられる場合、加工対象物3と第2の部材のホルダとがお互いに対して回転し、くさび形の移動室が形成され、ローラが、第1の部材310によってローラが位置する移動室の第2の部分、すなわち第1の部材310と加工対象物3との間へと駆動される。このくさび形の移動室において、ローラは、加工対象物3と第1の部材310との複合作用により、移動室のより狭い部分へと移動する傾向を有し、したがってローラがよりきつく挟まれ、すなわちローラがセルフロック摩擦によって変形してデッドロックを形成し、結果としてローラが第1の部材110および加工対象物3に対して不動となり、レンチ部からの回転トルクをローラを介して加工対象物3へと出力することができる。
【0059】
この実施形態におけるローラは、回転体であり、円筒状、球状、または段状であってよいボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラである。第2の開口部の幅は、ボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラの直径よりも小さく、したがってローラが加工対象物と噛み合っていないときに移動室から出てしまうことがない。
【0060】
本実施形態において、レンチ部は、第2の部材の一方の端面にそれぞれ当接し、第1の部材310の第1の表面に設けられた環状溝に嵌合して対応する環状溝に埋め込まれ、回転軸の方向の第2の部材の移動を制限するスナップスプリング314a、314bをさらに含む。ホルダが分割された構成であるため、第2の部材およびローラの取り付けを、ローラを第2の部分311bの空間部に配置し、次いで第1の部分311aを第2の部分311bに係合させることによって達成することができる。
【0061】
好ましくは、横方向に配置される弾性部材が、それぞれのローラが位置する移動室の第1の部分にさらに設けられる。
図32に示されるように、各々の弾性部材は、ばね315など、それぞれのローラが第1の部材310と加工対象物3との間に挟まれるように、それぞれのローラにそれぞれ当接する。ばねは、自身が位置する移動室の第1の部分から第2の部分への方向に延び、すなわち復元力の方向が、第1の部分から第2の部分への方向である。あるいは、
図23に示されるように、横方向に配置される弾性部材は、ローラが位置する移動室の第1の部分に設けられ、ばね315は、第1の部材310と加工対象物3との間に挟まれるようにローラ312に当接する。
【0062】
図24に示されるように、第4の好ましい実施形態において、本発明のレンチは、レンチ部を有し、把持部1が、レンチ部へと延び、延伸端においてレンチ部に接続され、一方向伝達機構がレンチ部に設けられている。
【0063】
図25に示されるレンチ部の一方向伝達機構は、ローラ322などの複数のローラと、第1の部材320と、第2の部材とを含み、第2の部材は、ホルダ321を含む。第1の部材320は、レンチ部に固定され、第2の部材は、第1の部材320に収められ、第2の部材321の回転軸および第1の部材320の回転軸は、互いに平行であり、好ましくは両者は一致する。具体的には、把持部1が、第1の部材320に接続されており、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材320に回転トルクを加える。回転軸の方向における回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図25における下向き、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、
図25における上向き、すなわち反時計回りの方向である。
【0064】
第2の部材に面する第1の部材320の第1の表面は、滑らかな曲面であり、この例においては円筒面であり、ホルダ321は、複数の間隔を空けて位置する空間が第1の部材320および第2の部材の回転軸に直交する方向に配置された環状体であり、各々のローラは、それぞれ空間3212などの各々の空間に収容される。各々の空間は、第1の部材320に面する第1の開口部と、加工対象物に面する第2の開口部とを有し、第1の表面と加工対象物の表面とによって限られる空間が、ローラのための移動室となる。上述の例と同様に、移動室は、より大きい第1の部分と、より小さい第2の部分とを有するように設計される。ローラは、自身が位置する空間の第1の開口部を介して第1の表面に接触することで、第1の部材320によって駆動されることができ、ローラは、第2の開口部を介して加工対象物に接触する。第1の部材320は、第1の部材320とローラとの間の摩擦によってローラを駆動して、ローラが位置する空間の第1の部分から第2の部分へと移動させ、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動させることができる。第1の部分のローラは、自由に回転することができ、第2の部分のローラは、第1の部材320と加工対象物との間に挟まれる。
【0065】
この実施形態におけるローラは、回転体であり、円筒状、球状、または段状であってよいボールローラ、ピンローラ、またはニードルローラである。第2の部材は、
図24に示される弾性エジェクタピン327など、加工対象物に当接するホルダ321上に配置された弾性エジェクタピンを含む。
図25に示されるように、本実施形態の弾性エジェクタピンは、ホルダ321が、加工対象物に面する表面に凹部3213などの複数の凹部を有し、プレート326などのばねを備えるプレートが、対応する凹部に埋め込まれ、プレートのばねに接触ヘッドが設けられることで弾性エジェクタピンが形成されるようなやり方で、ホルダ321上に配置される。弾性エジェクタピンは、ナットなどの加工対象物がローラに逆らうことを可能にし、したがってレンチに遊びがなく、より便利に使用することができる。
【0066】
本実施形態におけるホルダ321は、ローラの脱落を防止するために、バッフル324との係合を必要とする。具体的には、ホルダ321の端面が、バッフル324の縁部の切り欠き(例えば、切り欠き3241)と嵌合する突起3211などの複数の突起を有することで、両者の間の位置決めが実現される。レンチ部は、第2の部材およびバッフルにそれぞれ当接するスナップリングをさらに含むが、その構造、機能、および配置は、前述した実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。本実施形態の一方向伝達機構の動作の態様は、前述の実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0067】
図26および
図27に示されるように、第5の好ましい実施形態において、本発明のレンチは、レンチ部を有し、把持部1が、レンチ部へと延び、延伸端においてレンチ部に接続され、一方向伝達機構がレンチ部に設けられている。一方向伝達機構の構造は、
図28〜
図33に示されるとおりである。
【0068】
図28および
図29に示されるレンチ部の一方向伝達機構は、ローラ412などの複数のローラと、第1の部材410と、第2の部材とを含み、第2の部材は、互いに嵌合してホルダを形成する第1の部分411aおよび第2の部分411bを含む。第1の部材410は、レンチ部に固定され、第2の部材は、第1の部材410に収められ、第2の部材の回転軸は、第1の部材410の回転軸に平行であり、好ましくは両者は一致する。具体的には、把持部1が、第1の部材410に接続されており、ユーザは、把持部1を回転させることによって第1の部材410に回転トルクを加える。回転軸の方向における回転トルクの方向は、第1の方向および第2の方向を含み、第1の方向は、
図29において用紙に対して内側に垂直、すなわち時計回りの方向であり、第2の方向は、図中の矢印によって示されるとおり、
図29において用紙に対して外側に垂直、すなわち反時計回りの方向である。
【0069】
第2の部材に面する第1の部材410の第1の表面4101は、滑らかな曲面であり、この例においては円筒面であり、第2の部材のホルダは、互いに間隔を空けて位置する複数の空間が第1の部材410および第2の部材の回転軸に直交する方向に設けられた環状体であり、それぞれのローラは、それぞれの空間にそれぞれ収容され、ここで空間は、
図25に示した第2の部分の空間3212と同様である。各々の空間が、第1の部材410に面する第1の開口部と、加工対象物に面する第2の開口部とを有することで、第1の表面4101と加工対象物の表面とによって限られる空間が、移動室416などのローラのための移動室となる。移動室は、より大きい第1の部分と、より小さい第2の部分とを有するように設計される。ローラは、自身が位置する空間の第1の開口部を介して第1の表面4101に接触することで、第1の部材410によって駆動されることができ、ローラは、第2の開口部を介して加工対象物に接触する。第1の部材410は、第1の部材410とローラとの間の摩擦によってローラを駆動して、ローラが位置する空間の第1の部分から第2の部分へと移動させ、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動させることができる。第1の部分のローラは、自由に回転することができ、第2の部分のローラは、第1の部材410と加工対象物との間に挟まれる。
【0070】
ホルダは、
図30および
図31にそれぞれ示されるとおりの第1の部分411aおよび第2の部分411bを有する表面部分4111などの加工対象物に面する複数の表面部分を有する。第1の部分411aは、縁部に切り欠き411a2などの複数の切り欠きを有している板状の構造物であり、第2の部分411bは、突起411b1などの複数の突起を端面に有する。第2の部分411bの端面の複数の突起は、第1の部分411aの縁部の複数の切り欠きにそれぞれ嵌合し、両者の間の位置決めを達成する。第2の部分411bは、凹部411b2などの複数の凹部を有する。第2の部分411bが第1の部分411aに係合した後に、凹部は、ホルダの上述の空間を形成する。
【0071】
第2の部材は、ローラがホルダの空間から出ないように制限構造を有する。この実施形態におけるローラは、一端に突起を有する円柱ローラまたはニードルローラであり、ローラの上端が突起4121を有している。制限構造は、
図30に示されているような摺動スロット411a1などのホルダの第1の部分411aの摺動スロットである。それぞれのローラの突起が、それぞれの摺動スロットにそれぞれ埋め込まれることで、ローラの移動範囲が制限され、すなわち上述の空間に制限される。
【0072】
好ましくは、
図33に示されるばね415など、横方向に配置される弾性部材が、各々のローラが位置する移動室の第1の部分に設けられる。各々の弾性部材は、それぞれのローラが第1の部材410と加工対象物との間に挟まれるように、それぞれのローラの各々にそれぞれ当接する。ばねは、自身が位置する移動室の第1の部分から第2の部分への方向に延び、すなわち復元力の方向が、第1の部分から第2の部分へと向けられる。
【0073】
本実施形態におけるレンチ部は、保持リング413とスナップスプリング414a、414bとをさらに備え、保持リング413は、第2の部材の片側に当接し、スナップスプリング414a、414bは、保持リング413およびホルダの第2の部分411bの片側にそれぞれ当接し、第1の部材410の第1の表面4101の環状溝と嵌合することにより、回転軸の方向の第2の部材および保持リング413の移動を限定する。本実施形態の一方向伝達機構の動作の態様は、前述の実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
図34〜
図36が、本実施形態におけるレンチ部の第2の部材およびローラの別の構造を示しており、第2の部材に面する第1の部材420の第1の表面4201は、滑らかな曲面であり、この例においては円筒面であり、第2の部材のホルダは、互いに間隔を空けて位置する複数の空間が第1の部材420および第2の部材の回転軸に直交する方向に設けられた環状体であり、それぞれのローラは、それぞれの空間にそれぞれ収容され、ここで空間は、
図25に示した第2の部材の空間3212と同様である。各々の空間が、第1の部材420に面する第1の開口部と、加工対象物に面する第2の開口部とを有することで、第1の表面4201と加工対象物の表面とによって限られる空間が、移動室426などのローラのための移動室となる。移動室は、より大きい第1の部分と、より小さい第2の部分とを有するように設計される。ローラは、自身が位置する空間の第1の開口部を介して第1の表面4201に接触することで、第1の部材420によって駆動されることができ、ローラは、第2の開口部を介して加工対象物に接触する。第1の部材420は、第1の部材420とローラとの間の摩擦によってローラを駆動して、ローラが位置する空間の第1の部分から第2の部分へと移動させ、あるいは第2の部分から第1の部分へと移動させることができる。第1の部分のローラは、自由に回転することができ、第2の部分のローラは、第1の部材420と加工対象物との間に挟まれる。
【0075】
ホルダの第1の部分421aは、ねじ428などの複数のねじによって第2の部分と係合する板状の構造物である。第2の部分(上述の例のような第2の部分411b)は、凹部421b2などの複数の凹部を有する。第2の部分が第1の部分421aに係合した後に、凹部は、ホルダの上述の空間を形成する。さらに、ホルダは、加工対象物に面する表面部分4211などの複数の表面部分を有する。
【0076】
第2の部材は、ローラが貫通穴および凹部から抜け出さないように制限構造を有する。この実施形態におけるローラは、
図35に示されるように、より細い中央部分を有する円柱ピンローラまたはニードルローラである。制限構造は、
図36に示されるように、U字形の中間部分を有する弾性シートである。ピンローラまたはニードルローラの中央部分を弾性シートのU字形の部分に挟むことにより、弾性シートの端部がホルダに固定され、すなわちローラの移動範囲が制限され、すなわちローラが貫通穴および凹部に閉じ込められる。さらに、このような構造を有するローラは、弾性シートの作用の下で容易に反転(flip)することがない。
【0077】
さらに、本構造の弾性シートは、弾性シート425などの前述の実施形態の弾性部材としても機能することができ、そのU字形部分の一方側がエジェクタピン427によって押されてホルダに取り付けられる。各々の弾性シートは、自身が位置する移動室の第1の部分から第2の部分への方向に延び、すなわち復元力の方向が、第1の部分から第2の部分へと向けられる。
【0078】
上述の部分に加えて、本構造における第1の部材420、第2の部材、およびローラの構造、配置、および動作は、上述した構造と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
本発明の好ましい具体的な実施形態を、上記で詳細に説明した。当業者であれば、本発明の考え方に従って、いかなる独創的な努力も必要とすることなく、多数の修正および変形を実行できることを、理解すべきである。したがって、当業者が、本発明の考え方に従って、論理的な分析、推論、および限定された実験を通じて、先行技術に基づいて導き出すことができる技術的解決策は、特許請求の範囲によって定められる保護の範囲に含まれなければならない。