(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の配列パターンに対応した通孔(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで、ワーク(3)上の所定位置に前記半田ボール(2)を搭載する配列用マスクであって、
前記通孔(12)からなるパターン領域が多数形成されたマスク本体(10)と、前記マスク本体(10)の前記ワーク(3)との対向面側に設けられた突起部(15)とを備え、
少なくとも前記マスク本体(10)下面に、フラックスの付着を防止できるコーティング層が形成され、
前記突起部(15)の表面に、溶剤に強い樹脂からなるコーティング層が形成されていることを特徴とする配列用マスク。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1乃至
図3に、本発明の第1実施形態に係る半田ボールの配列用マスクを示す。この配列用マスク(以下、単にマスクと記す)1は、半田バンプ形成における半田ボール2の配列工程において使用に供されるものである。
図2において、符号3は、マスク1による半田ボール2の搭載対象となるワークを示す。このワーク3は、例えば、ガラスエポキシ基板のベース4に複数個の半導体チップ5を搭載し、ワイヤボンドで配線した後トランスファモールド封止してなるものであり、半導体チップ5を囲むように、ワーク3の上面には、入出力端子である電極6が所定のパターンで形成されている。なお、ワーク3は、バンプの形成後に個片に切断され、個々のLSIチップとされる。
【0011】
図1に示すように、マスク1は、ニッケルやニッケルコバルト等のニッケル合金、銅やその他の金属を素材として形成されたマスク本体10から成り、このマスク本体10にはこれを囲むように枠体11を装着することができる。マスク本体10の盤面中央部には、各半導体チップ5に対応して、半田ボール2を投入するための多数独立の通孔12からなるパターン領域が多数形成されている。
図2に示すように、通孔12は、ワーク3上における各半導体チップ5の電極6の配列位置に対応した配列パターンに対応している。半田ボール2は、50μm以下の半径寸法を有するものであり、これに合わせて各通孔12は、当該ボール2の半径寸法よりも僅かに大きな内径寸法を有する平面視で円形状に形成されている。
【0012】
枠体11は、アルミ、42アロイ、インバー材、SUS430等の材質からなる平板体であり、その盤面中央に、マスク本体10に対応する一つの四角形状の開口を備えており、本実施形態では、一枚のマスク本体10を一枚の枠体11で保持している。枠体11は、マスク本体10よりも肉厚の成形品であり、マスク本体10の外周縁と不離一体的に接合される。ここでは枠体11の厚み寸法は、例えば0.05〜1.0mm程度とし、本実施形態においては0.5mmに設定した。また、マスク本体10の厚みは、好ましくは10μm以上とし、本実施形態では200μmに設定した。
【0013】
マスク本体10(マスク1)の下面側、すなわちワーク3との対向面側には、下方向に突出状の突起部15を設けることができる。詳しくは、
図2及び
図3に示すように、パターン領域間(パターン領域の外周)にこのパターン領域を囲むように突起部15(桟15a)を設けることができる。この突起部15(桟15a)は、
図3のような連続的に設けたものでなくても良く、断片的に設けても良い。また、
図4に示すように、パターン領域内の通孔12が形成されていない位置に突起部15(支柱15b)を設けることができる。また、隣り合うパターン領域間(パターン領域の外周)にパターン領域を囲むようにして設ける突起部15の形状としては、桟15aに限らず、
図5に示すように、支柱15cであっても良い。係る突起部15を設けていれば、配列作業時において、ワーク3の上面に当接してマスク本体10とワーク3との対向間隙を確保できる。各々の突起部15(桟15a、支柱15b)においては、
図2および
図4に示すように、マスク本体10の下面から突起部15の先端に向かって先窄まるように形成されていることが好ましく、円錐台状を呈している。
【0014】
突起部15の形状としては、この他に
図6に示すように、突起部15の根元寸法がマスク本体10の下面に向かうにつれて大きくなる末拡がり形状(突起部15の根元から先端に向かうにつれて窄まっていく先窄まり形状)であって、側面が円弧状に形成されたものであっても良い。これにより、突起部15の特に根元部15”に応力が集中することにより生じる破損を防止できるとともに、マスク1をワーク3に載置した際に、仮に突起部15にフラックス17が付着したとしても、突起部15の側面が円弧となっていることにより、フラックス17の通孔12への回り込みを防止できるので、通孔12にフラックス17が付着することによる半田ボール2の搭載不良を招くおそれをなくすことができる。なお、突起部15の根元部15”の終端位置については、マスク本体10の下面の通孔12付近に位置していることが好ましく、マスク本体下面10aと通孔内面12aとの交点に位置する形態、マスク本体下面10a上の通孔12から間隙をとったところに位置する形態が考えられる。また、突起部15の側面は、凸状円弧でも凹状円弧でもどちらでも良く、凸状円弧とすれば強度の良いものになり、凹状円弧とすれば突起部15側面のどの位置においてもフラックス17が付着された電極6に近づく部分がない、つまり、フラックス17が付着された電極6から一定距離を保った状態となって良い。さらに、突起部15の先端部15’及び/又は根元部15”を円弧状に形成しても良く、これにより、突起部15にフラックス17が付着するおそれが可及的に減少する。
【0015】
本マスク1においては、突起部15の高さとマスク本体10の厚みとの比が2対1以上とするのが好ましく、上記マスク本体10の厚さが10〜300μmの範囲内においてこれを満足することがより好ましい。また、突起部15は、アスペクト比(突起部15における高さと先端寸法との比)が大きいものが好ましく、本実施形態ではアスペクト比3としている。また、突起部15の根元寸法L2は、突起部15の先端寸法L1の1.0〜1.5倍とするのが好ましく、本実施形態では1.2倍に設定している。さらに、突起部15の先端寸法L1と根元寸法L2と通孔12間の幅寸法L3との比が1対1.2対1.4以上であることが好ましい。さらに、パターン領域から突起部15(桟15a、支柱15c)の根元までの寸法L4は、0.01mm以上に設定することが好ましく、本実施形態では0.02mmとしている。係る条件により、フラックスの付着を可及的に防ぐことができる。この時、上述した突起部15の先端寸法L1と根元寸法L2との比の関係及びパターン領域から突起部15の根元までの寸法L4の関係を満足することにより、突起部15の破損防止及びフラックスの付着防止を両立させることができる。さらには、パターン領域から突起部15(桟15a、支柱15c)の先端中心までの寸法をL5とした時、L1とL2とL5との比が1対3対2.5以上とすることにより、上記両立効果を最大限に活かすことができる。
【0016】
ここでは、マスク本体10と突起部15が一体となったマスク1としているが、マスク本体10と突起部15とが別部材で一体的に形成されたものでも良い。これは、上記マスク1において、マスク本体10を磁性体で形成し、突起部15を非磁性体で形成すれば、磁石の磁力吸引によってワーク3にマスク1を固定する場合に、マスク1に対して磁力を均一に働かせることができるので、マスク1が不用意に撓むおそれがなく、ワークに良好に密着させることができ、電極6に対する通孔12の位置合わせ精度を向上することができる。また、マスク1を取り外す際には、ワーク3と突起部15が直接磁力結合しないので、版離れを良好にすることができる。係るマスク1は、例えば、マスク本体10を磁性体金属(ニッケル、鉄等)によって形成し、突起部15を非磁性体金属(銅、アルミなど)によって形成することで得られる。
【0017】
また、突起部15を非磁性体で形成するものにおいては、上記金属に限らず、樹脂やレジストによって形成したものでも良い。これにより、上記効果に加え、当該樹脂の弾力性に由来するクッション作用が発揮され、突起部15がワーク3に当接した際に、ワーク3が損傷するおそれが少なくなる。なお、係る効果を顕著に奏するためには、マスク1において、突起部15だけでなく、ワーク3と当接する部分の全てを樹脂で形成することが好ましい。また、突起部15を樹脂で形成する場合、電鋳法でマスク本体10を形成する時に使用するレジストと同じものを使用すれば、生産効率良く形成できる。
【0018】
また、本マスク1においては、
図2、
図4、
図6に示すように、マスク本体10下面や通孔12内面にコーティング層50を設けている。コーティング層50としては、撥水性を有するものが好ましく、その材質としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂、乳剤、レジスト(液状)などがある。係るコーティング層50を設けることにより、マスク本体10下面や通孔12内面にフラックスが付着してもフラックスを弾くことができ、マスク本体10下面や通孔12内面にフラックスが付着したままの状態を防止できる。なお、該コーティング層50は、マスク本体10上面に形成しても良いし、パターン領域間であって、突起部15(桟15a、支柱15c)間におけるマスク本体10下面においては形成しなくて良い。要は、フラックスが付着すると半田ボールの搭載不良が生じやすい部分に形成するのが望ましく、マスク1をワーク上に載置した際に、電極6上に塗布されたフラックス17と対面するマスク本体10及び突起部15の表面に形成することが望ましい。
【0019】
なお、各図面は、実際のマスク1の様子を示したものではなく、それを模式的に示している。また、各図面における通孔12の開口寸法やマスク本体10等の厚み寸法等は、図面作成の便宜上、そのような寸法に示したものである。また、
図3、
図5において、符号15で図示しているのは、突起部15の下端面(先端面)であり、突起部15の根元は図示していない。また、
図3、
図5においては、コーティング層50は図示していない。
【0020】
係るマスク1を用いた半田ボール2の配列作業は、以下のような手順で行われる。なお、この配列作業は、専用の配列装置(特許文献1の
図1、
図5等を参照)によって行われる。まず、ワーク3の電極6上にフラックス17(
図2参照)を印刷塗布する。次に、通孔12と電極6が一致するように、ワーク3上にマスク1を位置合わせしたうえで、マスク1を固定する。かかる位置合わせ作業は、実際には枠体11とワーク3との外周縁を位置合わせすることで行われる。位置合わせ作業が終了すると、該固定状態において、突起部15の下端面がワーク3の表面に当接することで、マスク本体10は、
図2、
図4、
図6に示すようなワーク3との対向間隙が確保された離間姿勢に姿勢保持される。この時、ワーク3の下方に磁石を配置して、この磁石の磁力作用によって、マスク1をワーク3側に吸着させることもできる。
【0021】
次に、マスク1上に多数個の半田ボール2を供給し、スキージブラシを用いてマスク1上で半田ボール2を分散させて、通孔12内に一つずつ半田ボール2を投入する。これにて、電極6上に半田ボール2がフラックス17によって仮止め状に粘着保持される。かかるスキージブラシを用いた半田ボール2の投入作業において、スキージブラシ圧がマスク1に大きくかかったとしても突起部15によってマスク1が撓むことを防止でき、投入作業を作業効率良くスムーズに進めることができる。
【0022】
以上のように、本実施形態に係るマスク1によれば、マスク本体10とワーク3との対向間隙を形成する突起部15を備えているので、突起部15によってワーク3との対向間隙を確実に確保でき、通孔12内への半田ボール2の投入作業を効率的に漏れなく進めることが可能となる。
【0023】
マスク本体10の外周縁に補強用の枠体11を設けることができ、マスク本体10をそれ自体に内方に収縮する方向の応力が作用するようなテンションを加えた状態で形成すれば、周囲温度の変化に伴うマスク本体10の膨張分を、当該収縮方向へのテンションで吸収できる。これにて、ワーク3に対するマスク本体10の位置ズレの発生を防ぐことができる。また、マスク本体10の全体に均一なテンションを与えることができるので、ワーク3に対して半田ボール2を位置精度良く搭載させることができる。
【0024】
次に、係る構成の配列用マスク1の製造方法を
図7及び
図8に示す。まず、例えば、導電性を有するステンレス製や真ちゅう鋼製の母型30の表面にフォトレジスト層31を形成する。このフォトレジスト層31は、ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。ついで、
図7(a)に示すごとく、フォトレジスト層31の上に、突起部15に対応する透光孔32aを有するパターンフィルム(ガラスマスク)32を密着させたのち、紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、
図7(b)に示すように、先窄まり状の突起部15に対応するレジスト体34aを有する一次パターンレジスト34を母型30上に形成した。この時、紫外線が透過しにくいフォトレジストを用いたり、露光量を弱めたりして、レジスト体34aにテーパを付けることが好ましい。続いて、上記母型30を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、
図7(c)に示すごとく、先のレジスト体34aの高さの範囲内で、母型30のレジスト体34aで覆われていない表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して、一次電鋳層35を形成した。ここでは、母型30の略全面にわたって、一次電鋳層35を形成した(第一の電鋳工程)。次に、
図7(d)に示すごとく、一次パターンレジスト34を除去する。ここで、一次電鋳層35の表面に研磨処理を施しておくと良い。
【0025】
次いで、
図8(a)に示すごとく、一次電鋳層35および母型30の表面の全体に、フォトレジスト層36を形成したうえで、当該フォトレジスト層36の表面に、前記通孔12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム(ガラスマスク)37を密着させたのち、紫外光ランプ33で紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、
図8(b)に示すように、マスク本体10に対応するレジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を一次電鋳層35の表面に形成した。続いて、所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、
図8(c)に示すごとく、先のレジスト体38aの高さの範囲内で、母型30及びのレジスト体38aで覆われていない一次電鋳層35の表面にニッケルや銅等の電着金属を電鋳して、二次電鋳層39を形成した(第二の電鋳工程)。次に、二次パターンレジスト38を溶解除去し、母型30及び一次電鋳層35から二次電鋳層39を剥離する。最後に、マスク本体10下面に対応する二次電鋳層39の母型面側及び通孔12内面に対応する二次電鋳層39の二次パターンレジスト38との対向面にコーティング層50を形成することで、
図8(e)および
図2に示すようなマスク1を得た。
【0026】
こうして得られたマスク1に枠体11を装着すれば、
図1に示すような配列用マスク1が得られる。マスク1(二次電鋳層39)は、それ自体に内方に収縮する方向の応力が作用するようなテンションを加えた状態で、枠体11に保持することが可能である。かかる応力の付与は、例えば、枠体11とマスク1との熱膨張係数の差を利用して、高温環境下でマスク1の外周縁に枠体11の装着作業を行い、常温時ではマスク1を内方側に収縮させることで実現できる。
【0027】
以上のようなマスク1の製造方法によれば、電鋳法を用いて高精度に配列用マスクを作製することができるので、半田ボール2を位置精度良くワーク3上に搭載させることができる。また、突起部15を有するマスク1を一回の電鋳(第二の電鋳工程)により、マスク本体10と突起部15とを不離一体に形成するようにすれば、マスク本体10と突起部15とを別体で形成したものに比べて、該突起部15の破損などの不都合が生じるおそれが少なく、信頼性に優れたマスク1を高精度に得ることができる点でも優れている。また、突起部15をマスク本体10の下面に近づくにつれて大きくなるよう先窄まり状に形成すれば、突起部15の特に根元に応力が集中することが回避されるため、突起部15の強度をしっかりと補強できつつ、突起部15をフラックス17が塗布された電極6から離間した状態で電極6間に当接できるので、電極6に塗布されたフラックス17がマスク本体10に付着することによる半田ボール2の搭載不良を防止することができる。この時、突起部15の先端部15’の寸法と根元部15”の寸法との比を1対3以上とすること、突起部15のアスペクト比を3以上とすることでより効果的となる。係る所望の寸法及びアスペクト比を有する突起部15の作製は、レジストパターン35の形状を調整することによって容易に得られる。
【0028】
なお、係る構成のマスク1において、通孔12及び突起部15の形状はストレート状としてもテーパ状としても良い。ここで、通孔12や突起部15をテーパ状とする場合について具体的に説明すると、通孔12においては、マスク本体10のワーク3との対向面側に向かって先窄まり状のテーパを設けることで、半田ボール2を通孔12内に誘い込みやすくなり、マスク本体10のワーク3との対向面側に向かって先拡がり状のテーパを設けることで、マスク本体10のワーク3との対向面側における通孔12周縁にフラックスが付着されることを防止できる。また、突起部15においては、マスク本体10のワーク3との対向面側に向かって先窄まり状のテーパを設けることで、ワーク3上へのマスクの載置をしっかりとすることができ、マスク本体10のワーク3との対向面側に向かって先拡がり状のテーパを設けることで、ワーク3の電極6が狭ピッチに配列された場合であっても、突起部15の強度を確保しつつ、ワーク3上への突起部15の当接をしっかりと対応することができる。かかる形状は、フォトレジスト層31・36の感光度や露光条件を変更することによって容易に得られる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る配列用マスクについて説明する。本実施形態では、
図9に示すように、コーティング層50がマスク本体10下面だけでなく、突起部15の表面にも形成されている。
【0030】
本実施形態の配列用マスクによれば、突起部15表面にもコーティング層50が形成されているので、突起部15に対してもフラックスの付着を防止できる。また、マスク本体10下面、通孔12内面、及び突起部15表面にコーティング層50を形成することで、仮に、通孔12内面にフラックスが付着したとしても、フラックスを弾き、マスク本体10下面及び突起部15表面を介してワーク上に流すことができる。また、フラックス17の通孔12への回り込みをより確実に防止できる。
【0031】
さらに、マスク本体10下面及び突起部15表面の全面を覆うようにコーティング層50を形成することで、例えば、マスク本体10と突起部15とを別部材で形成した場合、両者間の接合強度が弱く(これは、バンプの微細化に伴って通孔間隔寸法やパターン領域間隔寸法が狭くなり、通孔間やパターン領域間(パターン領域外周)に配される突起部15自身の外形寸法も小さくなる傾向にあるため、突起部15とマスク本体10との接合面積が小さくなることに起因する)、マスク1使用時に突起部15が不用意に脱落、変形、破損するおそれがあるが、係る構成により、コーティング層50が突起部15の保護層として機能することになるので、突起部15の脱落、変形、破損の防止にも寄与できる。なお、突起部15の脱落、変形、破損を防ぐことに特化したい場合は、マスク本体10の下面及び突起部15の表面に、スパッタや無電解めっきによって金属層(Ni、Cuなど)を形成することにより、コーティング層50を設けると良い。
【0032】
図10及び
図11に、本実施形態の配列用マスクの製造方法を示す。まず、
図10(a)に示すごとく、母型40を用意する。母型40は導電性を有するものであれば何でも良く、本実施形態ではステンレスを用いた。次いで、母型40の表面にフォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、
図10(b)に示すごとく、レジスト体41aを有する一次パターンレジスト41を母型40上に形成した。上記フォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして形成した。次いで、上記母型40を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、
図10(c)に示すごとく、先のレジスト体41aの高さと同じ程度に、母型40のレジスト体41aで覆われていない表面に電着金属を電鋳して、一次電着層42を形成した。本実施形態では、Ni−Co電鋳により一次電着層42を形成した。なお、一次電着層42を形成した後に一次電着層42表面に対して、ベルト研摩などといった機械的研摩および/または電解研磨するのが好ましい。次いで、
図10(d)に示すごとく、レジスト体41a(レジストパターン41)を溶解除去した。
【0033】
次いで、
図11(a)に示すごとく、一次電着層42の表面上に、ソルダーレジスト層43を形成した。このソルダーレジスト層43は、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして形成した。次いで、露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、
図11(b)に示すごとく、レジスト体44aを有する二次パターンレジスト44を一次電着層42上に一体的に形成した。なお、二次パターンレジスト44を形成した後にベーキングなどといった脱落防止処理を行うのが好ましい。これにより、レジスト体44aを有する二次パターンレジスト44と一次電着層42との密着がより強固なものにできる。次いで、
図11(c)に示すごとく、母型40から一次電着層42およびその表面に形成された二次パターンレジスト44を剥離する。最後に、一次電着層42の二次パターンレジスト44を有する側の表面および二次パターンレジスト44の表面にコーティング層50を形成することによって、
図11(d)及び
図9に示す配列用マスク1を得ることができる。なお、コーティング層50は、母型40から一次電着層42および二次パターンレジスト44を剥離する前に形成しても良い。また、コーティング層50は、一次電着層42の二次パターンレジスト44を有する側の表面に限らず、一次電着層42の表面全面に形成しても良い。もちろん、通孔12内面にもコーティング層50を形成しても良い。
【0034】
次に、第2実施形態に係る配列用マスクの別実施形態について説明する。ここでは、
図13(a)に示すように、突起部15が樹脂で形成されたものであって、係る突起部15の表面にコーティング層70が形成されており、コーティング層70の材質として、突起部15の材質とは異なる材質で形成されている。
【0035】
上述のように、本マスクはワークの電極上に半田ボールを搭載するために用いられるものであるが、半田ボールの配列工程(振込搭載)時に、マスクに汚れなどが付着することがあるので、これを除去するために、必要に応じてマスクを洗浄する。マスクを洗浄する場合、溶剤を用いて行うため、この溶剤が突起部を構成する材質表面にベタツキが発生するなどの悪影響が生じる可能性があるが、突起部表面にコーティング層があるために、このような悪影響から防御している。
【0036】
そこで、本実施形態のマスクは、樹脂で形成した突起部15に対する悪影響を防御するために、突起部15の表面にコーティング層70を形成しており、コーティング層70が突起部15を構成する材質(樹脂)とは異なる材質で形成している。コーティング層70としては、上記材質に加え、例えば、アクリル系樹脂を主成分とする感光材で形成することも可能である。
【0037】
係る配列用マスクの製造方法は、母型の用意から一次電着層を形成してレジスト体を除去するまでは、前述の工程(
図10参照)と同様である。次いで、一次電着層42の表面上に、ソルダーレジスト層を形成し、露光、現像、乾燥の各処理を行うことにより、
図14(a)に示すごとく、レジスト体60aを有する二次パターンレジスト60を一次電着層42上に一体的に形成した。次いで、
図14(b)に示すごとく、二次パターンレジスト60の表面にコーティング層70を形成する。コーティング層70は、アルカリ現像型の感光材であって、主な含有成分は、アクリル樹脂(55〜65%)、硫酸バリウム(15〜25%)、二酸化珪素(15〜25%)である。最後に、母型40から一次電着層42を、その表面に形成された二次パターンレジスト60およびコーティング層70とともに剥離することによって、
図14(c)及び
図13に示す配列用マスク1を得ることができる。なお、コーティング層70は、一次電着層42の二次パターンレジスト60を有する側の表面にも形成しても良い。また、一次電着層42上に二次パターンレジスト60を形成後、母型40から剥離してからコーティング層70を形成しても良い。こうすることで、一次電着層42の二次パターンレジスト60を有する側の表面だけでなく、一次電着層42の表面全面にコーティング層70を容易に形成することができる。通孔12の内壁にもコーティング層70を形成しても良い。また、二次パターンレジスト60やコーティング層70を形成した後に、ベーキングなどといった脱落防止処理を行うのが好ましい。これにより、一次電着層42と二次パターンレジスト60、および二次パターンレジスト60とコーティング層70の密着がより強固なものにできる。係る脱落防止処理は、二次パターンレジスト60とコーティング層70を形成毎に行っても良いし、二次パターンレジスト60表面にコーティング層70を形成した後に併せて行っても良い。
【0038】
係る製造方法によって得られたマスク1は、洗浄(溶剤)に強いものとなり、突起部15にベタツキが発生することを可及的に防止できる。また、
図13(b)に示すように、コーティング層70を突起部15の表面全面を覆うように形成すれば、突起部15の破損・欠落を防止できる。
【0039】
ここで、突起部15とコーティング層70は同じ樹脂同士なので、突起部15とコーティング層70との密着力は強固なものであるが、マスク本体10に突起部15を形成した後(突起部15の表面にコーティング層70を形成する前)に、突起部15を洗浄して突起部15の表面にあえてベタツキを発生させ、その表面にコーティング層70を形成することで、突起部15とコーティング層70との密着力をより強固なものにすることができる。
【0040】
また、
図13(c)に示すように、コーティング層70を形成する材質のみで突起部15を形成することもできる。コーティング層70を形成する材質は、フラックスが付着しにくいものであり、具体的には、アクリル樹脂に硫酸バリウム及び/又は二酸化珪素が含有された樹脂混合物が挙げられる。この樹脂混合物は、耐溶剤性に優れている。これについて具体的に説明すると、係る樹脂混合物で幅寸法が0.2〜3.0mm(0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、2.0mm、3.0mmの計7製品)の突起部をニッケル−コバルト合金からなるマスク本体に設けた各マスクを、洗浄剤(化研テック株式会社製)に6〜24時間(6時間、12時間、24時間の計3回)浸漬させたが、全てのマスクにおいて突起部の剥離がなかったことが確認できた。さらに、係る樹脂混合物は、マスク本体10との相性が良く、密着性が良いので、突起部15の幅寸法を狭くすることが可能である。なお、係る樹脂混合物は硬度があるので(JIS規格の引っかき硬度試験で5H〜6H)、マスク本体の厚さが100μm以下において、突起部の幅寸法を5mmより大きくすると、マスクに反りが発生してしまう恐れがあるので、突起部の幅寸法は5mm以下とするのが好ましい。このように、コーティング層70は、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂などといった材質を主成分として形成されている。そして、係る材質を主成分として突起部15を構成することが可能である。
【0041】
上記突起部15を形成する樹脂混合物の主成分は、アクリル樹脂であるが、これに限らず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂、EVA樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミドなど(所謂、熱可塑性樹脂)が挙げられる。また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタンなど(所謂、熱硬化性樹脂)でも良い。
【0042】
上記各実施形態において、突起部15(支柱15b)と通孔12の配置は、突起部15(支柱15b)が一つの通孔12を囲むように配置しても良いし、一つの突起部15が通孔12に囲まれるように配置しても良い。一つの通孔12を囲むように突起部15を配置する場合、突起部15の形状は、支柱のように部分的に設けたものに限らず、無端枠状に設けたものでも良い。また、突起部15の形状は、桟15aや円柱に限らず、ひし形・六角形などといった多角形や楕円でも良い。さらに、これら形状においては、
図10に示すように、細長形状及び/又は角が丸みを帯びたものが好ましい。このように、これら形状の長手方向・長径方向を一定方向に合わせることで、例えば、マスク1の裏面を洗浄する際に、洗浄手段(布やスポンジなど)が突起部15に引っかかることによる洗浄手段や突起部15が破損するおそれを可及的になくすことができるとともに、スムーズに洗浄することが可能となる。よって、突起部15全ての長手方向・長径方向を一方向に合わせることが望ましい。なお、細長形状とするのはあくまでも突起部15の下端面(先端面)においてであり、突起部15の根元部15bの面においては強度等の点で必ずしも細長形状とする必要はない。
【0043】
また、上記各実施形態において、通孔12の内面とマスク本体10及び突起部15の表面とでコーティング層50・70の厚みを異ならせても良い。具体的には、通孔12の内面におけるコーティング層50の厚みをT1、マスク本体10及び突起部15の表面におけるコーティング層50の厚みをT2とした時(
図9参照)、T1>T2とすれば、半田ボールの搭載不良を引き起こす通孔12内面へのフラックスの付着をより確実に防ぐことができる。また、コーティング層50を滑りやすい(摩擦が小さい)材質で形成すれば、T1の厚み分だけマスク本体10上面と通孔12内面との境目に滑りやすい領域として現れることになり、T1の厚さが厚ければ厚いほど、該領域が大きくなるので、半田ボール2をスキージブラシでかく時に、スキージブラシや半田ボール2を滑らかに移動させることができ、生産性や作業効率の向上が見込める。そして、T1<T2とすれば、マスク本体10下面に突起部15が別体形成された時に、突起部15の脱落、変形、破損をより確実に防ぐことができる。なお、このコーティング層50の形成方法としては、浸漬方式やスプレー方式など種々の方法があるが、コーティング層50を形成する際は、所望する形成個所以外の部分を保護シートで覆うと良い。また、コーティング層50を厚く形成したい時は、厚くしたい個所を局所的にスプレーしたり、マスク1の浸漬させる方向を異ならせたり(例えば、マスク本体10下面において厚くしたい場合は、マスク本体10下面と浸漬面とを平行にした状態で浸漬させると良く、通孔12内面において厚くしたい場合は、マスク本体10下面と浸漬面とを垂直にした状態で浸漬させると良い)することで実現できる。