特許第6647440号(P6647440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6647440
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47B 47/00 20060101AFI20200203BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20200203BHJP
   A47B 81/06 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A47B47/00
   A47B97/00 M
   A47B81/06 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-125222(P2019-125222)
(22)【出願日】2019年7月4日
【審査請求日】2019年7月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391049448
【氏名又は名称】天馬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100202670
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】唐木 正義
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−322924(JP,A)
【文献】 特開2018−038702(JP,A)
【文献】 特開2005−127366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 43/00−47/05
A47B 55/00−55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板に取り付けられる右壁及び左壁と、
前記底板に取り付けられる背板と、
前記右壁、前記左壁、および前記背板を上方から支持する天板と、
を備え、
前記背板は、
下部を前記底板と係合させる第一の態様と、
上部を前記底板と係合させる第二の態様と、
の両方で前記底板に取り付け可能に構成され、
前記背板は、前記キャビネットの後部を覆う本体を有し、
前記本体は、前記第二の態様において、前記第一の態様における位置よりも前方に位置する、
キャビネット。
【請求項2】
前記背板は、下部に設けられた第一突起と、上部に設けられた第二突起とを有し、
前記背板の側面視において、前記第一突起と前記第二突起とが回転対称の位置に設けられている、
請求項1に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋内や建物内等に設置されるキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品を内部に収納するキャビネットが、家屋内や建物内等に設置されて広く使用されている。
【0003】
キャビネットに電子機器や映像機器等を収容する場合、収納した機器をコードやケーブル等と接続する必要がある。コード等の余長部分をキャビネット内に配置すると、収納スペースを有効に使えなくなったり、見栄えが悪くなったりする。
【0004】
この問題に関連して、特許文献1には、背板に複数の切込みを形成し、この背板をキャビネット本体の後端より内方に取り付けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−33836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係るキャビネットでは、コード等を背板の切込みに通すと、余長部分を背板とキャビネット本体の後端との間の空間に収めることができるため、余長部分がキャビネット本体の収納空間を占有せず、見栄えもよい。
しかし、背板がキャビネット本体の後端より内方に取り付けられているため、背板をキャビネット本体の後端に取り付ける場合に比べると収納スペースは狭くなる。したがって、キャビネットにコード等を接続しないものを収納する場合は、背板とキャビネット本体の後端との間の空間が単なるデッドスペースとなってしまう。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、収納物等に応じて背板の状態を切り替えることができるキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、底板と、底板に取り付けられる右壁及び左壁と、底板に取り付けられる背板と、右壁、左壁、および背板を上方から支持する天板とを備えるキャビネットである。
このキャビネットにおいて、背板は、下部を底板と係合させる第一の態様と、上部を底板と係合させる第二の態様との両方で底板に取り付け可能に構成されている。
背板は、キャビネットの後部を覆う本体を有し、本体は、第二の態様において、第一の態様における位置よりも前方に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収納物等に応じて背板の状態を切り替えることができるキャビネットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るキャビネットの斜視図である。
図2】同キャビネットに係る底板の平面図である。
図3】同キャビネットに係る左壁の右側面図である。
図4】同キャビネットに係る天板の底面図である。
図5】同キャビネットに係る背板を前側から見た斜視図である。
図6】同背板を後側から見た斜視図である。
図7】(a)は、背板を第一の態様で取り付けた同キャビネットの断面図、(b)は、背板を第二の態様で取り付けた同キャビネットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るキャビネット1を示す図である。キャビネット1は、底板10と、左壁20と、右壁30と、天板40と、背板50とを備えており、前方から内部空間にアクセスして物品を収納できるように構成されている。
底板10、左壁20、右壁30、天板40、背板50の材質は、キャビネット1に収納される物品や要求される強度等を考慮して、樹脂、金属、木材などの各種材料から適宜選択できる。
【0012】
図2は、底板10の模式平面図である。底板10の平面視形状は長方形(正方形を含む。以下同じ)である。底板10の後部上面には、背板50と係合するための溝11が、後辺12と一定の距離を空けて平行に延びている。溝11が形成された背板50の後部上面は、前側よりも一段低くなっている。
【0013】
左壁20および右壁30は、底板10上に、それぞれ底板10の左辺14および右辺13に沿って取り付けられている。
左壁20および右壁30の底板10への取り付け方法には特に制限はない。例えば、ネジによる固定や、底板に設けた溝に嵌合させる、接着するなどの方法を例示できる。これらの方法が複数組み合わされてもよい。本実施形態では、左壁20および右壁30の一部が底板10に形成された溝15に進入して嵌合することにより左壁20および右壁30が底板10に固定されている。
【0014】
図3は、左壁20の右側面図である。左壁20において、内部空間側となる右側面25には、複数の突起21が形成されている。
右側面25の後部には、背板係合部26が形成されている。背板係合部26は、右側面25の他の部位よりも一段低く形成されている。背板係合部26の前後方向中央部には、上下方向に延びる溝27が形成されている。
【0015】
図示を省略するが、右壁30は、左右が反転している点を除き、左壁20と同一の形状および構造を有する。
右壁30において内部空間側となる左側面には、突起21と同様の右側突起(不図示)が複数形成されている。突起21には、それぞれ対になる一つの右側突起が存在する。対になる突起21および右側突起は、キャビネット1の上下方向における位置(高さ)および前後方向における位置(奥行)が概ね同一である。
突起21および右側突起の数や配置は、適宜設定できる。
【0016】
図4は、天板40の底面図である。天板40の底面後部には、後辺41と略平行に延びる溝45が形成されている。
完成したキャビネット1において、天板40は、左壁20および右壁30に対して固定される。固定の方法に特に制限はなく、左壁20および右壁30を底板10に取り付ける方法と同様の方法で行える。本実施形態では、左壁20および右壁30の一部が天板40に形成された孔46に進入して嵌合することにより左壁20および右壁30が天板40に固定されている。
【0017】
図5は、背板50を前側から見た斜視図であり、図6は、背板50を後ろ側から見た斜視図である。背板50は、キャビネット1の後部を覆う本体51と、本体51の周縁から延びる4つの側面とを有する。
本体51の正面視形状は長方形である。本体51の周縁からは、下面52、左面53、右面54、および上面55の側面が前方に延びている。
【0018】
本体51は、中央部に略長方形の貫通溝61を有する。貫通溝61は、少なくとも一か所で途切れているため、貫通溝61に囲まれた領域R1は、本体51の他の領域から切り離されていない。貫通溝61の途切れた部分を切断して貫通溝61を連続させることにより、貫通溝61に囲まれた領域R1をくり抜いて、本体51に穴をあけることができる。貫通溝61の位置や領域R1の大きさ等は、適宜設定できる。貫通溝と領域の組が複数設けられてもよい。
【0019】
左面53および右面54の外側の面には、前後方向中央部において上下方向に延びる凸条56が形成されている。凸条56は、背板係合部26に形成された溝27に進入できる寸法を有する。左面53および右面54において、対向する内側の面には、突起21および右側突起と同様の突起57が形成されている。
左面53および右面54の厚みは、左壁20および右壁30において、背板係合部により生じている段差と略同一である。
【0020】
図6に示すように、下面52の外側の面の前端部には、左右方向に延びる凸条58が形成されている。凸条58(第一突起)は、底板10に形成された溝11に進入できる寸法を有する。
図5および図6に示すように、上面55の外側の面の後端部には、左右方向に延びる凸条59が形成されている。凸条59(第二突起)は、天板40に形成された溝45に進入できる寸法を有する。
【0021】
上記の様に構成されたキャビネット1の使用時の動作について説明する。
キャビネット1の組み立て時には、まず底板10に左壁20および右壁30を取り付ける。
【0022】
次に、背板50を左壁20および右壁30の背板係合部に係合させつつ、背板50を底板10に取り付け、その上から天板40を取り付ける。天板40により、左壁20、右壁30、および背板50の上部が支持される。
【0023】
キャビネット1を組み立てる際、背板50は、二つの態様のいずれかで底板10に取り付けられる。
第一の態様は、背板50の上下と底板10の上下とを一致させた取り付け方である。第一の態様では、下面52の凸条58が底板10の溝11に進入して係合し、上面55の凸条59が天板40の溝45に進入する。その結果、図7の(a)に示すように、本体51の位置が底板10の後端と一致し、キャビネット1の内部に、単一の収納空間が形成される。
【0024】
第二の態様は、背板50を上下反転させた状態で底板10に取り付ける取り付け方である。第二の態様では、下面52の凸条58が天板40の溝45に進入して係合し、上面55の凸条59が底板10の溝11に進入する。その結果、図7の(b)に示すように、本体51の位置が溝11と一致し、キャビネット1内部の収納空間は、本体51により、前側の第一空間Sp1と、後ろ側の第二空間Sp2とに区切られる。
第二空間Sp2の寸法は、背板50における4つの側面の前後方向寸法を変更することにより、容易に変更できる。
【0025】
第一の態様および第二の態様のいずれにおいても、左面53および右面54に形成された凸条56は、背板係合部26に形成された溝27に進入する。これにより、背板50を取り付けた後に背板50がキャビネット1の前後方向にずれることが好適に抑制される。凸条56は、左面53および右面54の前後方向中央部に形成されているため、背板50がいずれの態様でとりつけられても一対の凸条56の位置は変化しない。したがって、第一の態様および第二の態様のいずれにおいても、溝27と良好に位置合わせされて凸条56と溝27とが係合する。
また、左面53および右面54の厚みと背板係合部26に生じる段差とが略同一の寸法であるため、底板10に左壁20、右壁30、および背板が取り付けられた状態においては、左壁20、右壁30の内面と、係合する左面53および右面54の内面とが概ね同一面上に位置する。その結果、キャビネット1の左右の内面は、ほぼ段差がない状態となる。加えて、底板10の前側上面と背板50の下面52の上面も、ほぼ段差がない状態となり、第一の態様において、キャビネット1の内面にはほぼ段差がない状態が確保される。
【0026】
最後に、必要に応じて、図1および図7に示すように、収納空間内に仕切り板70を設置する。仕切り板70は、キャビネット1の左右の内面にある突起21および右側突起に乗せることで、収納空間内に配置できる。第一の態様においては、仕切り板70を背板50に形成された突起57にも支持させることで、仕切り板70をより安定させて配置できる。仕切り板の数や寸法は、適宜設定できる。
以上により、キャビネット1の組み立てが完了する。使用者は、収納空間内に所望の物品を収納してキャビネット1を使用できる。
【0027】
背板50をいずれの態様で取り付けるかは、キャビネット1の用途等に応じて使用者が自由に決定できる。キャビネット1を組み立てた状態で販売する場合は、販売者が決定してもよい。
第一の態様は、収納空間を最大限に利用でき、キャビネットの後側がフラットとなって見栄えが良くなる利点があり、収納する物品の容積が大きい場合や、収納する物品等がコードやケーブル等を必要としない場合に適している。一方、第二の態様では、第二空間Sp2に、コードやケーブル等の余長部分を配置したり、コードやケーブル等を接続する電源タップやルータ等を配置したりできる利点があり、オーディオ製品等を収納する等の場合に適している。第二態様では必要に応じて本体51の領域R1を切り離し、形成された穴にコードやケーブル等を通すことで、余長部分を第二空間Sp2内に引き出すことができる。
背板を接着しなければ、組み立て後にキャビネット1の一部を分解して第一の態様と第二の態様とを変更することもできる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のキャビネット1によれば、用途や収納物等に応じて、背板の取り付け態様を選択することで、収納空間を用途等に適した状態に設定できる。
【0029】
また、背板50において、底板10と係合する凸条58と、天板40と係合する凸条59とが、背板50の側方視において回転対称となる位置に設けられている。そのため、第一の態様と第二の態様において、底板10と係合する部位および天板40と係合する部位の位置が変化しない。その結果、底板10や天板40に複数の係合部位を形成する必要がなく、構成を簡素にできる。
底板10と係合する部位および天板40と係合する部位を回転対称に配置する方法は、上記に限られない。例えば、底板10と係合する部位および天板40と係合する部位の両方を背板の前後方向中央部に形成すると、2つの係合部位を回転対称に配置できる。
【0030】
さらに、底板10、左壁20、および右壁30において、背板50が取り付けられる後部領域が前側よりも一段低くなっているため、第一の態様で背板50を取り付けた際に、収納空間の内面に段差が生じない。その結果、収納空間にデッドスペースが生じにくく、効率よく使用できる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が適宜組み合わされてもよい。
【0032】
・第一突起および第二突起は、上記実施形態のようの一方向に連続する凸条である必要はない。例えば、棒状あるいは柱状の単数または複数の突起であってもよい。この場合、溝も突起の形状に合わせて穴などとされてもよい。
・底板にキャスタを取り付けて、移動しやすくしてもよい。
・キャビネットの正面に、扉を設けてもよい。扉は、ガラスの様に透明なものでもよいし、不透明なものでもよい。
・収納空間内面に設けられる突起を取り外し可能とし、突起を取り付け可能な複数の穴を収納空間内面に設けてもよい。
【0033】
・本発明のキャビネットは、組み立てられた状態で流通してもよいし、組み立てられる前の状態で流通してもよい。
・本発明のキャビネットは、上述した構成を備える限り、上下左右等に他の収納機構が隣接して設けられてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 キャビネット
10 天板
20 左壁
30 右壁
40 天板
50 背板
51 本体
58 第一凸条(第一突起)
59 第二凸条(第二突起)
【要約】
【課題】収納物等に応じて背板の状態を切り替えることができるキャビネットを提供する。
【解決手段】キャビネットは、底板10と、底板10に取り付けられる右壁及び左壁と、底板10に取り付けられる背板50と、右壁、左壁、および背板50を上方から支持する天板40とを備える。背板50は、下部を底板10と係合させる第一の態様と、上部を底板10と係合させる第二の態様との両方で底板10に取り付け可能に構成されている。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7