特許第6647445号(P6647445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6647445
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】グラスランの異音評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20200203BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20200203BHJP
   G01H 3/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   G01M7/02 B
   G01M17/007 Z
   G01H3/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-217655(P2019-217655)
(22)【出願日】2019年12月1日
【審査請求日】2019年12月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】出口 幸三
(72)【発明者】
【氏名】小田 廣
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−088031(JP,A)
【文献】 特開2016−118396(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0427236(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0100714(US,A1)
【文献】 米国特許第5568404(US,A)
【文献】 特許第6627004(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00 − 7/06
G01M 17/007
G01H 1/00 − 17/00
B60J 10/74 − 10/79
G01M 13/00
G01M 99/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられた枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを溝部に案内するグラスランの異音評価方法であって、
前記グラスランを前記車両に取付けた状態で、ドアガラス用センサーで前記ドアガラスにかかる振動を検出してドアガラス振動波形として記憶するとともに、枠体用センサーで前記枠体にかかる振動を検出して枠体振動波形として記憶する工程と、
前記ガラス振動波形と前記枠体振動波形を合成して前記枠体に対する前記ドアガラスの相対的な振動のみを抽出した合成振動波形として記憶する工程と、
前記車両を停車した状態で、前記合成振動波形に基づく振動を車外側に設けた加振機から発生させて、前記ドアガラスを振動させる工程と、
車内側に設けたマイクで、前記加振機から発生させた前記合成振動波形に基づく振動による音を検出する工程を備え、
前記ドアガラスを振動させる工程の次工程として、
前記加振機から前記合成振動波形に基づく振動を発生させて、前記ドアガラス用センサー及び前記枠体用センサーの検出を介して、前記ドアガラスを人為的に振動させたときの合成振動波形を抽出してリアル合成振動波形とし、前記リアル合成振動波形と前記合成振動波形を比較して、両者の差が一定値以下になるように前記加振機の出力を変えて前記リアル合成振動波形を補正する波形補正工程を設け、
前記音を検出する工程における前記合成振動波形を、前記波形補正工程により補正された前記リアル合成振動波形としたことを特徴とするグラスランの異音評価方法。
【請求項2】
車両のドアに設けられた枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを溝部に案内するグラスランの異音評価方法であって、
前記グラスランを前記車両に取付けた状態で、ドアガラス用センサーで前記ドアガラスにかかる振動を検出してドアガラス振動波形として記憶するとともに、枠体用センサーで前記枠体にかかる振動を検出して枠体振動波形として記憶する工程と、
前記ガラス振動波形と前記枠体振動波形を合成して前記枠体に対する前記ドアガラスの相対的な振動のみを抽出した合成振動波形として記憶する工程と、
前記グラスランを実験ベンチにて設けられた前記枠体に相当する模擬枠体に取付け、前記グラスランの溝部に対して前記ドアガラスに相当する模擬ドアガラスを案内した状態とし、前記合成振動波形に基づく振動を前記模擬ドアガラスの表面側に設けた加振機から発生させて、前記模擬ドアガラスを振動させる工程と、
前記模擬ドアガラスの裏面側に設けたマイクで、前記加振機から発生させた前記合成振動波形に基づく振動による音を検出する工程を備え、
前記模擬ドアガラスを振動させる工程の次工程として、
前記加振機から前記合成振動波形に基づく振動を発生させて、前記ドアガラス用センサー及び前記枠体用センサーの検出を介して、前記模擬ドアガラスを人為的に振動させたときの合成振動波形を抽出してリアル合成振動波形とし、前記リアル合成振動波形と前記合成振動波形を比較して、両者の差が一定値以下になるように前記加振機の出力を変えて前記リアル合成振動波形を補正する波形補正工程を設け、
前記音を検出する工程における前記合成振動波形を、前記波形補正工程により補正された前記リアル合成振動波形としたことを特徴とするグラスランの異音評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられた枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを案内するグラスランの異音評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアのドアサッシュ,ドアフレームなどといった枠体には、グラスランが嵌装されて昇降するドアガラスを案内するようになっている。
このようなグラスランにおいては、車両が悪路などを走行した場合や、車両の停車中であってもドアを閉じた場合に、グラスランの周りに異音が発生するといった問題がある。 いわゆる、「グラスラン異音」又は「ガラスラン異音」と呼ばれるものである。
【0003】
この異音については、発生源がグラスランだけによるものではなく、グラスラン以外からの色々な音が混在しているためグラスランだけによるものを特定することは極めて困難である。
グラスラン以外からの音としては、ドアに取付いているその他部品(内装トリム,樹脂カバー等)の軋んだ音や走行時のタイヤロードノイズ,エンジンノイズ,ウィンドノイズなどがある。
【0004】
従来、車両のステアリングシステムに関する異音検出方法及び評価装置については、例えば特許文献1に記載されているが、グラスランに関して異音を評価する方法として有効的なものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6225368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、実車で起きている振動現象を再現しうるグラスランの異音評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両のドア(1)に設けられた枠体(100)に沿って嵌装され、昇降するドアガラス(2)を溝部(19)に案内するグラスラン(10)の異音評価方法であって、
前記グラスラン(10)を前記車両に取付けた状態で、ドアガラス用センサー(20)で前記ドアガラス(2)にかかる振動を検出してドアガラス振動波形(X)として記憶するとともに、枠体用センサー(30)で前記枠体(100)にかかる振動を検出して枠体振動波形(Y)として記憶する工程と、
前記ガラス振動波形(X)と前記枠体振動波形(Y)を合成して前記枠体(100)に対する前記ドアガラス(2)の相対的な振動のみを抽出した合成振動波形(Z)として記憶する工程と、
前記車両を停車した状態で、前記合成振動波形(Z)に基づく振動を車外側に設けた加振機(40)から発生させて、前記ドアガラス(2)を振動させる工程と、
車内側に設けたマイク(50)で、前記加振機(40)から発生させた前記合成振動波形(Z)に基づく振動による音を検出する工程を備え、
前記ドアガラス(2)を振動させる工程の次工程として、
前記加振機(40)から前記合成振動波形(Z)に基づく振動を発生させて、前記ドアガラス用センサー(20)及び前記枠体用センサー(30)の検出を介して、前記ドアガラス(2)を人為的に振動させたときの合成振動波形を抽出してリアル合成振動波形(R)とし、前記リアル合成振動波形(R)と前記合成振動波形(Z0)を比較して、両者の差が一定値(Q)以下になるように前記加振機(40)の出力を変えて前記リアル合成振動波形(R)を補正する波形補正工程を設け、
前記音を検出する工程における前記合成振動波形(Z)を、前記波形補正工程により補正された前記リアル合成振動波形(R)としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、車両のドア(1)に設けられた枠体(100)に沿って嵌装され、昇降するドアガラス(2)を溝部(19)に案内するグラスラン(10)の異音評価方法であって、
前記グラスラン(10)を前記車両に取付けた状態で、ドアガラス用センサー(20)で前記ドアガラス(2)にかかる振動を検出してドアガラス振動波形(X)として記憶するとともに、枠体用センサー(30)で前記枠体(100)にかかる振動を検出して枠体振動波形(Y)として記憶する工程と、
前記ガラス振動波形(X)と前記枠体振動波形(Y)を合成して前記枠体(100)に対する前記ドアガラス(2)の相対的な振動のみを抽出した合成振動波形(Z)として記憶する工程と、
前記グラスラン(10)を実験ベンチ(200)にて設けられた前記枠体(100)に相当する模擬枠体(101)に取付け、前記グラスラン(10)の溝部(19)に対して前記ドアガラス(2)に相当する模擬ドアガラス(102)を案内した状態とし、前記合成振動波形(Z)に基づく振動を前記模擬ドアガラス(102)の表面側に設けた加振機(40)から発生させて、前記模擬ドアガラス(102)を振動させる工程と、
前記模擬ドアガラス(102)の裏面側に設けたマイク(50)で、前記加振機(40)から発生させた前記合成振動波形(Z)に基づく振動による音を検出する工程を備え、
前記模擬ドアガラス(102)を振動させる工程の次工程として、
前記加振機(40)から前記合成振動波形(Z)に基づく振動を発生させて、前記ドアガラス用センサー(20)及び前記枠体用センサー(30)の検出を介して、前記模擬ドアガラス(102)を人為的に振動させたときの合成振動波形を抽出してリアル合成振動波形(R)とし、前記リアル合成振動波形(R)と前記合成振動波形(Z0)を比較して、両者の差が一定値(Q)以下になるように前記加振機(40)の出力を変えて前記リアル合成振動波形(R)を補正する波形補正工程を設け、
前記音を検出する工程における前記合成振動波形(Z)を、前記波形補正工程により補正された前記リアル合成振動波形(R)としたことを特徴とする。
【0009】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グラスランを車両に取付けた状態で、ドアガラス用センサーでドアガラスにかかるドアガラス振動波形を検出するととともに、枠体用センサーで枠体にかかる枠体振動波形を検出し、それらガラス振動波形と枠体振動波形を合成して枠体に対するドアガラスの相対的な振動のみを抽出して合成振動波形とするので、グラスランだけによって発生する音を検出することができる。
そして、合成振動波形に基づく振動を加振機から発生させて、ドアガラスを振動させて、このときの音を車内側に設けたマイクで検出するので、実車において発生するグラスランの振動とそれにともなう音を再現することができる。
これによって、何度でも試験を実施することができるので、グラスランの振動を考慮して、より優れた形状及び材質のグラスランを設計することができる。
【0011】
また、本発明によれば、実車においてドアガラスを振動させる工程の次工程として波形補正工程を設けて、加振機から合成振動波形に基づく振動を発生させてドアガラスを人為的に振動させたときのリアル合成振動波形が合成振動波形と一定値を超える差があると、加振機の出力を変えてリアル合成振動波形を合成振動波形に近づけるように制御するものであるので、実車において発生するグラスランの振動とそれにともなう音を、実車を使用してより正確に再現することができる。
すなわち、本来、加振機から合成振動波形に基づく振動を発生させてドアガラスを人為的に振動させたときのリアル合成振動波形は合成振動波形と同一になるはずであるが、例えば、加振機の振動にあわせてその加振機が装着された支柱も振動することで振動が減衰する場合や実車が置かれた環境によって振動が変わる場合があるのでこれを補正してリアル合成振動波形が合成振動波形と同一になるようにフィードバック制御したものである。
【0012】
また、本発明によれば、グラスランを実験ベンチにて設けられた模擬枠体に取付け、グラスランの溝部に対して模擬ドアガラスを案内した状態とし、合成振動波形に基づく振動を模擬ドアガラスの表面側に設けた加振機から発生させて模擬ドアガラスを振動させ、模擬ドアガラスの裏面側に設けたマイクで、加振機から発生させた合成振動波形に基づく振動による音を検出するようにしたので、実車において発生するグラスランの振動とそれにともなう音を実験ベンチにおいて再現させることができる。
よって、グラスランの設計をコンパクトな環境で行うことができる。
【0013】
また、本発明によれば、実験ベンチにおいて模擬ドアガラスを振動させる工程の次工程として波形補正工程を設けて、加振機から合成振動波形に基づく振動を発生させて模擬ドアガラスを人為的に振動させたときのリアル合成振動波形が合成振動波形と一定値を超える差があると、加振機の出力を変えてリアル合成振動波形を合成振動波形に近づけるように制御するものであるので、実車において発生するグラスランの振動とそれにともなう音を、実験ベンチを使用してより正確に再現することができる。
すなわち、本来、加振機から合成振動波形に基づく振動を発生させて模擬ドアガラスを人為的に振動させたときのリアル合成振動波形は合成振動波形と同一になるはずであるが、例えば、加振機の振動にあわせてその加振機が装着された支柱も振動することで振動が減衰する場合や実験ベントの環境によって振動が変わる場合があるのでこれを補正してリアル合成振動波形が合成振動波形と同一になるようにフィードバック制御したものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両を示す側面図である。
図2図1のフロントドアに取付けられたグラスランを示すA−A線拡大断面図である。
図3図1のフロントドア周りにおけるドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30の設置位置を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るグラスランの異音評価方法を実施する様子を示す部分断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るグラスランの異音評価方法を実施するための電気的構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係るグラスランの異音評価方法において、ドアガラス用センサー20が検出したドアガラス振動波形(X)と、枠体用センサー30が検出した枠体振動波形(Y)を重ねて示したグラフである。
図7図6に示したドアガラス振動波形(X)と枠体振動波形(Y)を合成して枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出した合成振動波形(Z)を示したグラフである。
図8図4に示したマイクで検出した音を視覚化した図である。
図9】本発明の実施形態に係るグラスランの異音評価方法を実施するために波形補正部を追加した電気的構成を示すブロック図である。
図10図9に示す波形補正部における波形補正制御を示すフローチャートである。
図11図9に示す波形補正部における波形補正制御を示す別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るグラスランの異音評価方法について説明する。
通常、図1及び図2に示すように、車両のドア1(フロントドア1A,リヤドア1B)のドアサッシュ,ドアフレームなどといった枠体100には、グラスラン10が嵌装されて、昇降するドアガラス2を案内するようになっている。
【0016】
グラスラン10は、一般的に、内側に溝部19を形成し、車内側側壁部11と車外側側壁部12と両側壁部11,12を連結する連結壁部13からなる断面略コ字状の本体部18と、車内側側壁部11の端部から車外側に向けて延びドアガラス2の車内側面に摺接するインナリップ部14と、車外側側壁部12の端部から車内側に向けて延びドアガラス2の車外側面に摺接するアウタリップ部15と、車内側側壁部11の端部から車内側に延び枠体100を保持する車内側リップ部16と、同じく車外側側壁部12の端部から車外側に延び枠体100を保持する車外側リップ部17を備えている。
【0017】
本発明の実施形態に係るグラスランの異音評価方法を実行するための評価システムとしては、図3に示すような、ドアガラス2に取付けられ振動を検出するドアガラス用センサー20と、枠体100に取付けられ振動を検出する枠体用センサー30と、図4に示すような、振動を発生させる加振機40と、音を検出するマイク50と、図5に示すような、システム全体を制御する制御装置70を備えている。
【0018】
ドアガラス用センサー20は、ドアガラス2の車外側(車内側でもよい)に取付けられ、ドアガラス2にかかる振動を検出する。
枠体用センサー30は、枠体100の車外側に取付けられ、枠体100にかかる振動を検出する。
ここでは、ドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30としてそれぞれドアガラス2と枠体100に取付けられた接触型のセンサーを示したが、非接触型のセンサーであっても振動の変位,波形を感知できるものであればよい。
【0019】
加振機40は、車外側に固定され、本体部41と、本体部41から延びるアーム42と、アーム42の先端に設けられドアガラス2の上端を掴む把持部43からなり、要求された振動波形に沿って振動を加えることができる。
なお、加振機40の構成としてはこれに限定されるものではなく、ドアガラス2だけに振動を加えることができるものであればよい。
マイク50は、車内側で、例えば運転者の耳の位置の高さに設けられて音を検出する。
【0020】
制御装置70は、制御部71と、記憶部72と、出力用のディスプレイ等からなる出力部73と、入力用のキーボードやマウス等からなる入力部74と、波形合成部75を備えている。
制御部71は、制御プログラムに従ってシステム全体を制御するものであり、CPUからなる。
記憶部72は、制御プログラムなどが記憶されるROMや一時的にデータが記憶されるRAMといった記憶媒体からなる。
波形合成部75は、制御部71から送信された2つの振動波形を合成する。合成方式としては、2つの振動波形を加算した合成振動波形を形成したり、あるいは2つの振動波形の差分をとって一方の振動波形に対する他方の振動波形の差分を示す合成振動波形を形成したりすることができる。
【0021】
このように構成された評価システムを使用して、グラスランの異音を評価する場合について説明する。
実車において、グラスラン10に発生する異音は、車両を停車してドア1を開いた状態から閉じた状態にしたときと、車両を特に悪路で走行したときにグラスラン10の周り付近から発生するが、ドア閉時と悪路走行時では発生する異音は同じではないため、先ず、ドア閉時の場合における異音評価方法について説明する。
【0022】
ドア閉時(車両停車状態)
車両(実車にはグラスラン10は組付いている)を停車した状態で、ドアガラス2にドアガラス用センサー20を取付け、枠体100に枠体用センサー30を取付ける。特に限定されるものではないが、図3に示すように、ドアガラス用センサー20の設置位置は、ドアガラス2の中央上部で、枠体用センサー30の設置位置は、ドアガラス用センサー20の設置位置を上方に延長した位置で枠体100の中央にした。なお、ドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30については、ドアガラス2及び枠体100に取付けられるものであればその他のものであってもよい。なお、上述したように、ドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30として非接触型のセンサーを使用することもできる。
【0023】
このとき、ドアガラス2は少し下げた状態にしている。ここでは、ドアガラス2を全閉の状態と半開(1/2開)の状態の間の位置にしている。
【0024】
そして、ドア1を開いた状態から閉じる。なお、ドア1を閉じる速度は、1.2m/sとした。
【0025】
ドア1を閉じたときの衝撃で発生する、ドアガラス2にかかる振動をドアガラス用センサー20で検出し、同時に枠体100にかかる振動を枠体用センサー30で検出する。検出された情報は制御部71に送信され、制御部71は、検出されたドアガラス2にかかる振動をドアガラス振動波形Xとして記憶部72に記憶するとともに、同じく検出された枠体100にかかる振動を枠体振動波形Yとして記憶部72に記憶する。
ドアガラス振動波形Xと枠体振動波形Yは、例えば、図6に示すような波形になる。
【0026】
次に制御部71は、ドアガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを波形合成部75に送信すると、波形合成部75は、ガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを合成して枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出して合成振動波形Zとする。より具体的には、ガラス振動波形Xの値から枠体振動波形Yの値を減算した値を、合成振動波形Zとして制御部71に送信し、制御部71はその合成振動波形Zを記憶部72に記憶する。
図6に示したドアガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを合成した(ガラス振動波形Xの値から枠体振動波形Yの値を減算)合成振動波形Zは、図7に示すような波形になる。
【0027】
これによって、ドア1の閉時には、その振動によってグラスラン10の音に加えて、その他、色々な音が混在するが、枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出することで、グラスラン10だけによって発生する音を検出することができる。
【0028】
そして、制御部71が、記憶部72に格納された合成振動波形Zを読み出して、図4に示したように、合成振動波形Zに基づく振動を車外側に設けた加振機40から発生させて、ドアガラス2を振動させる。
このときの音を、車内側に設けたマイク50で検出して、視覚化する。この視覚化は、色付けによる可視化、あるいは、図8に示したように、濃淡による可視化によって表現され、出力部73においてディスプレイ表示されるようにしたものである。なお、図8に示したものでは、時間に対して分離した周期的な音を確認することができた。
【0029】
このように、記憶部72に記憶された合成振動波形Zを読み出して使用することで、実車におけるドア閉時に発生するグラスラン10の振動とそれにともなう音を再現することができるので、何度でも試験を実施することができる。
よって、ドア閉時のグラスラン10の振動を考慮して、より優れた形状及び材質のグラスラン10を設計することができる。
【0030】
悪路走行時
上述したドア閉時(車両停車状態)と同様に、図3に示すように、ドアガラス2を少し下げた状態で、ドアガラス2にドアガラス用センサー20を取付け、枠体100に枠体用センサー30を取付けた状態として、実車を走行させる。なお、上述したように、ドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30として非接触型のセンサーを使用することもできる。
この走行時の衝撃で発生する、ドアガラス2にかかる振動をドアガラス用センサー20で検出し、同時に枠体100にかかる振動を枠体用センサー30で検出する。検出された情報は制御部71に送信され、制御部71は、検出されたドアガラス2にかかる振動をドアガラス振動波形Xとして記憶部72に記憶するとともに、同じく検出された枠体100にかかる振動を枠体振動波形Yとして記憶部72に記憶する。
【0031】
次に制御部71は、ドアガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを波形合成部75に送信すると、波形合成部75は、ガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを合成して枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出して合成振動波形Zとする。より具体的には、ガラス振動波形Xの値から枠体振動波形Yの値を減算した値を、合成振動波形Zとして制御部71に送信し、制御部71はその合成振動波形Zを記憶部72に記憶する。
【0032】
これによって、悪路走行時には、その振動によってグラスラン10の音に加えて、その他、色々な音が混在するが、枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出することで、グラスラン10だけによって発生する音を検出することができる。
【0033】
そして、制御部71が、記憶部72に格納された合成振動波形Zを読み出して、合成振動波形Zに基づく振動を車外側に設けた加振機40から発生させて、ドアガラス2を振動させる。
このときの音を、車内側に設けたマイク50で検出して、視覚化する。この視覚化は、色付けによる可視化、あるいは、図8に示したように、濃淡による可視化によって表現される。
【0034】
このように、記憶部72に記憶された合成振動波形Zを読み出して使用することで、実車における悪路走行時に発生するグラスラン10の振動とそれにともなう音を再現することができるので、何度でも実車を停車させた状態で試験を実施することができる。
よって、悪路走行時のグラスラン10の振動を考慮して、より優れた形状及び材質のグラスラン10を設計することができる。
【0035】
なお、ここでは、「悪路」と表現しているが、「悪路」といっても正確に定義することは困難である。平坦な道路に比較して泥道やでこぼこ道は「悪路」といえる。また、高速道に比較して一般道は「悪路」といえるかもしれない。また、高速道でも舗装されたばかりの道に比較して経年変化した道は「悪路」といえるかもしれない。
よって車両の走行時であれば適用可能であるが、少しでも条件の悪い道路を走行したときに異音を発生しないグラスラン10を設計する場合において有効的である。
【0036】
本発明の実施形態では、グラスラン10が組付けられた実車のドアガラス2を、合成振動波形Zに基づく振動を加振機40から発生させて振動させることで、ドア閉時や走行時に発生するグラスラン10の振動とそれにともなう音を再現するようにしたが、実車ではなく同様な構造を実験ベンチにおいても再現させることができる。
【0037】
すなわち、グラスラン10を実験ベンチにて設けられた枠体100に相当する模擬枠体101に取付け、グラスラン10の溝部19に対してドアガラス2に相当する模擬ドアガラス102を案内した状態とし、合成振動波形Zに基づく振動を模擬ドアガラス102の表面側に設けた加振機40から発生させて、模擬ドアガラス102を振動させ、模擬ドアガラス102の裏面側に設けたマイク50で、加振機40から発生させた合成振動波形Zに基づく振動による音を検出するようにしたものである。
そして、マイク50によって検出された音を、出力部73においてディスプレイ表示することで視覚化される。
【0038】
また、図9に示すように、制御装置70に合成振動波形Zを更新する波形補正部76を設けることもできる。
このときの波形補正制御は、波形合成部75によって、ガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを合成して枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出して合成振動波形Zとし、制御部71の指示によりその得られた合成振動波形Zに基づく振動を加振機40から発生させて、ドアガラス2を振動させる工程の次工程として設けられる。
【0039】
この波形補正制御について図10に示すフローチャートを参照して説明すると、まず制御部71は、ガラス振動波形Xと枠体振動波形Yを合成して得られた合成振動波形Zを記憶部72から読取り、この値をレジスタZ0として記憶する(ステップS101(以下、括弧内では「ステップ」という語を省略する))。
【0040】
次に、制御部71は、合成振動波形Zに基づく振動を車外側に設けた加振機40から発生させて、ドアガラス2を人為的に振動させ(S102)、このときの音を、マイク50を介して検出する(S103)。
【0041】
次に、制御部71は、ドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30の検出を介して、ドアガラス2を人為的に振動させたときの合成振動波形を再度抽出してその値をリアル合成振動波形Rとしてこの値をレジスタRに記憶する(S104)。このとき、波形合成部75は、ドアガラス用センサー20が検出したガラス振動波形Xと枠体用センサー30が検出した枠体振動波形Yを合成して枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出してリアル合成振動波形Rとしている。
【0042】
次に、制御部71は、リアル合成振動波形Rに対応したレジスタRの波形と、上述した、ドア閉時(車両停車状態)の場合や、悪路走行時の場合にグラスランだけによる振動による合成振動波形に対応したレジスタZ0を比較して(S105)、両者の差が一定値Q以下であるか否かを判断する(S106)。この実施形態では、複数の時間における合成振動波形の振幅の差の平均が一定値Q以下であるか否かを判断するようにしている。
【0043】
そして、制御部71は、レジスタRの値がレジスタZ0の値よりも大きいと加振機40の出力(パワー)を減少させ(S107)、逆にレジスタRの値がレジスタZ0の値よりも小さいと加振機40の出力(パワー)を増加させる(S108)。
このときの加振機40の出力の減少率及び増加率は、あらかじめ定まっていて徐々に減少あるいは増加させるようにしている。
【0044】
次に、制御部71は、波形補正部76を指示して加振機40の出力を減少または増加させたときの合成振動波形となるように次に加振機40を使用して振動させるときの合成振動波形Zを更新させる(S109)。
【0045】
これにより、ステップS102に戻り、更新された合成振動波形Zで加振機40による振動を行い、前回と同様にリアル合成振動波形Rを抽出する。リアル合成振動波形Rは加振機40の出力変化に伴って変化する。
このような、処理を繰り返して行い、ステップS105で、リアル合成振動波形Rに対応したレジスタRの波形と、グラスランだけによる振動による合成振動波形に対応したレジスタZ0の差が一定値Q以下になると、波形補正制御処理を終了する。
このとき、ステップS103でマイク50が最終的に検出した音が評価対象となる異音である。その後、この異音に対して音を視覚化する工程が施される。
【0046】
なお、この場合は、加振機40を振動させたときには常時マイク50で音を検出するものであったが、図11に示すフローチャートのように、リアル合成振動波形Rに対応したレジスタRの波形と、前述した、ドア閉時(車両停車状態)の場合や、悪路走行時の場合にグラスランだけによる振動による合成振動波形に対応したレジスタZ0を比較して、両者の差が一定値Q以下になったときに(ステップS105でYES)、加振機40で再度振動させて(S110)、そのときの音を検出する(S111)、といったように音の検出については一回だけにすることもできる。
【0047】
なお、ステップS105における合成振動波形Z0とリアル合成振動波形Rの比較においては、複数の時間における合成振動波形の振幅の差の平均が一定値Q以下であるか否かを判断するようにしたが、特にこれに限らず他の方法であってもよい。
また、合成振動波形Z0とリアル合成振動波形Rの比較については振幅同士を比較し両波形の差(差の絶対値)が一定値Q以下ではないと加振機40の出力を増減させる制御を採用したが、これに代えて、あるいはこれに加えて両波形の周波数の差を検出して差があるとリアル合成振動波形Rを合成振動波形Z0に近づけるような制御を採用してもよい。
また、波形補正部76を特に設けることなく波形補正部76における処理を制御部71が実行するようにしてもよい。
【0048】
これによれば、実車においてドアガラス2を振動させる工程の次工程として波形補正工程を設けて、加振機40から合成振動波形に基づく振動を発生させてドアガラス2を人為的に振動させたときのリアル合成振動波形Rを合成振動波形Z0に近づけるように制御するものであるので、実車において発生するグラスラン10の振動とそれにともなう音を、実車を使用してより正確に再現することができる。
すなわち、本来、加振機40から合成振動波形に基づく振動を発生させてドアガラス2を人為的に振動させたときのリアル合成振動波形Rは合成振動波形Z0と同一になるはずであるが、例えば、加振機40の振動にあわせてその加振機40が装着された支柱(図示しない)も振動することで振動が減衰する場合や実車が置かれた環境によって振動が変わる場合があるのでこれを補正してリアル合成振動波形Rが合成振動波形Z0と同一になるようにフィードバック制御したものである。
【0049】
なお、実験ベンチで行う場合にも、模擬ドアガラス102を振動させる工程の次工程として上述した波形補正工程を設けて異音評価を行うことができる。
【0050】
また、本発明の実施形態ではドアガラス用センサー20及び枠体用センサー30が発生した振動を検出するときに、ドアガラス2を、全閉の状態と半開(1/2開)の状態の間の位置にしたが、全開または全閉としても振動を検出することができる。しかしながら、ドアガラス2を全開にすると振動の幅が小さくしかも音が車内側に大きく伝わり難いので全開を除く下げた状態にすることが好ましい。
マイク50によって検出された音を色付けや濃淡によって視覚化するようにしたが、音の強弱だけで表現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ドア
1A フロントドア
1B リヤドア
2 ドアガラス
10 グラスラン
11 車内側側壁部
12 車外側側壁部
13 連結壁部
14 インナリップ部
15 アウタリップ部
16 車内側リップ部
17 車外側リップ部
18 本体部
19 溝部
20 ドアガラス用センサー
30 枠体用センサー
40 加振機
50 マイク
70 制御装置
71 制御部
72 記憶部
73 出力部
74 入力部
75 波形合成部
76 波形補正部
100 枠体
101 模擬枠体
102 模擬ドアガラス
X ドアガラス振動波形
Y 枠体振動波形
Z 合成振動波形
【要約】
【課題】実車で起きている振動現象を再現しうるグラスランの異音評価方法を提供する。
【解決手段】グラスラン10を車両に取付けた状態で、ドアガラス用センサー20でドアガラス2にかかる振動を検出したドアガラス振動波形Xと、枠体用センサー30で枠体100にかかる振動を検出した枠体振動波形Yを合成して枠体100に対するドアガラス2の相対的な振動のみを抽出した合成振動波形Z0として記憶し、車両を停車した状態で、合成振動波形Z0に基づく振動を車外側に設けた加振機40から発生させ、そのときのリアル合成振動波形Rを検出し、合成振動波形Z0と差があると加振機40の出力を変えてリアル合成振動波形Rを合成振動波形Z0に近づける補正制御を実行した後、ドアガラス2を振動させて車内側に設けたマイク50で音を検出する。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11