特許第6647536号(P6647536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647536
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】トイレブース長居抑止装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/00 20060101AFI20200203BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20200203BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20200203BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A47K17/00
   E03D9/00 Z
   E04H1/12 301
   G01S13/34
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-52513(P2019-52513)
(22)【出願日】2019年3月20日
(62)【分割の表示】特願2018-544579(P2018-544579)の分割
【原出願日】2018年5月25日
(65)【公開番号】特開2019-202123(P2019-202123A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2019年8月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517125650
【氏名又は名称】株式会社テレ・ポーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】河本 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】滝川 政志
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−159033(JP,A)
【文献】 特開2004−029974(JP,A)
【文献】 特開2017−153850(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/043511(WO,A1)
【文献】 特開2014−196961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 17/00
E03D 9/00
G08B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレブースを使用する使用者の長居を抑止するトイレブース長居抑止装置において、
前記トイレブースの天井裏に設けられる筐体と、
前記筐体に設けられ、且つ、前記使用者の前記トイレブース内の在室を検知する検知部と、
前記筐体に設けられ、且つ、前記トイレブース内に向けて第1注意喚起音を出力可能な喚起音出力部と、
前記筐体に設けられ、且つ、前記検知部による検知信号に基づいて前記喚起音出力部による前記第1注意喚起音の出力を制御する制御部と、
を有し、
前記検知部は、前記トイレブース内に向けて第1電波を送信し、前記第1電波が被検知物により反射された反射波を受信した瞬間の前記第1電波の第1周波数と前記反射波の第2周波数との差である周波数差に基づいて前記被検知物との距離を計測する周波数変調連続波レーダー方式の第1センサを含み、
前記制御部は、前記第1センサにより計測された前記距離に基づいて、前記使用者が前記トイレブースに入室した時点を決定し、決定された前記時点及び前記検知信号に基づいて、前記使用者が前記トイレブースを使用している使用時間を計測し、計測された前記使用時間が予め設定された上限値を超えたときに、前記喚起音出力部が前記第1注意喚起音を出力するように、前記喚起音出力部を制御し、
前記制御部は、前記距離が天井面から扉の上部までの距離である場合に、トイレブース内に向けて開閉する扉を前記時点の検知対象外とし、
被検知物である前記使用者と前記センサとの間の距離が減少した場合に、前記トイレブース内に在室していないと判定し、前記使用時間をリセットさせる、
トイレブース長居抑止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトイレブース長居抑止装置において、
前記制御部は、いずれの使用者も前記トイレブース内に在室していない状態で前記第1センサにより、被検知物とセンサとの間の距離を初期データとして計測し、前記初期データを計測した後、使用者が扉を開いてトイレブースに入室したときに、非検知物である前記使用者と前記センサとの間の距離を計測し、
前記距離が前記初期データよりも減少した場合に、前記トイレブース内に使用者が在室していると判定し、
その後、入室した前記使用者が、便座に腰掛ける動作を行い、前記距離が増加した場合に、前記使用者の入室腰掛け動作から便座に腰掛ける着座姿勢維持動作が行われたと判定し、前記使用者が前記トイレブースを使用している使用時間の計測を開始する、
トイレブース長居抑止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトイレブース長居抑止装置において、
前記制御部は、決定された前記時点及び前記第1センサによる前記検知信号に基づいて、前記使用時間を計測する、トイレブース長居抑止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトイレブース長居抑止装置において、
前記第1注意喚起音は、音声情報による第2注意喚起音を含む、トイレブース長居抑止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトイレブース長居抑止装置において、
前記筐体は、前記トイレブースの天井材の天井裏面に重ね合わされる取付面を有する、トイレブース長居抑止装置。
【請求項6】
請求項5に記載のトイレブース長居抑止装置において、
前記取付面には、前記第1電波及び前記反射波が通過可能な通過部と、前記第1注意喚起音が通る透孔と、が設けられ、
前記取付面を前記天井材の前記天井裏面に重ね合わせたときに、前記通過部と前記透孔とが、前記天井材で覆われる、トイレブース長居抑止装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のトイレブース長居抑止装置において、
前記取付面には、前記筐体を前記天井材の前記天井裏面に固定するための固定部が設けられている、トイレブース長居抑止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースを使用する使用者の長居を抑止するトイレブース長居抑止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共トイレ又はオフィストイレ等において、トイレブースを使用する使用者によってトイレブースが長時間占有されること、即ちトイレブースを使用する使用者がトイレブース内に長居をすることが、問題となっている。例えばスマートフォン又は携帯ゲーム機を利用する場所としてトイレブースが使用されること等の原因により、トイレブースを占有する時間が長くなっている。そのため、トイレ内に複数のトイレブースが設置されている場合でも、全てのトイレブースが使用中の状態になり易く、用便を済ませたい人がトイレブースを使えず待たされる状況が発生している。
【0003】
このような状況への対策として、トイレブース内に使用者が在室しているか否かを検知するとともに、占有的な使用に対する注意を、例えばアラーム音を出力すること等によりトイレブース内に向けて行うトイレブース長居抑止装置がある。
【0004】
特開2017−159033号公報(特許文献1)には、天井裏隠ぺい型トイレブース長居抑止装置において、トイレブース内の人体を検知する検知手段と、トイレブース内に向けて音による喚起を出力可能な発音器からなる喚起手段と、検知手段での人体の検知に基づいて喚起手段における喚起の出力を制御する制御部と、を有する技術が開示されている。
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、検知手段は、トイレブース内に向けて天井材を透過するマイクロ波を輻射して、トイレブース内の人体の生体情報をトップラー効果により検知するドップラーセンサからなる。また、制御手段は、検知手段による生体情報の検知に基づいてトイレブース内在室時間をカウントするタイマーを有し、該タイマーによるトイレブース内在室時間が所定時間を超えたときに喚起手段に喚起の出力を行わせる。
また、トイレ等においてドップラー効果等を用いて被検知物を検知する技術として、以下の技術が開示されている。
【0006】
特開2013−142221号公報(特許文献2)には、トイレ装置において、便座と、放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するドップラーセンサと、ドップラーセンサから出力された検知信号に基づいて使用者の便座からの離座を判定し制御信号を出力する制御部と、を備えた技術が開示されている。
【0007】
特開2013−72270号公報(特許文献3)には、トイレ装置において、電波の送受信を行うドップラーセンサと、ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えた技術が開示されている。
【0008】
特開2011−196069号公報(特許文献4)には、トイレ装置において、送信部が所定方向に送信波となるマイクロ波を送信し、受信部が送信波に対する反射波を受信し、送信波と反射波との差分周波数となるドップラー信号を生成するドップラーセンサ部を備えた技術が開示されている。
【0009】
特開2017−194357号公報(特許文献5)には、検知装置において、電波を送信し、電波が物体で反射した反射波を受信して、物体の動きに対応した周波数特性となるセンサ信号を出力するセンサと、センサ信号の周波数特性に基づいて物体が人であるか否かを判定する第1判定部と、物体が人である場合、センサ信号の周波数特性に基づいて物体の移動の状態を判定する第2判定部と、を備える技術が開示されている。
【0010】
特開2017−134795号公報(特許文献6)には、被介護者の身体状態を検知する見守り装置において、電磁波による送信波を出射し、送信波が対象物で反射することで得られる反射波を受信し、送信波と反射波とを合成することでドップラー信号を生成する電波センサと、電波センサで生成されたドップラー信号に基づいて、被介護者の身体状態を判定する信号処理部とを備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017−159033号公報
【特許文献2】特開2013−142221号公報
【特許文献3】特開2013−72270号公報
【特許文献4】特開2011−196069号公報
【特許文献5】特開2017−194357号公報
【特許文献6】特開2017−134795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したドップラー効果を利用したセンサでは、トイレブース内に使用者が在室しているか否かを検知する検知精度を高くした場合、使用者がトイレブースから退室する際に引いて開けた扉が壁のストッパーに対して弾んで静止するまでの間の扉の動きも検知してしまう。使用者が扉を引いて開ける強さにもよるが、トイレブースの扉は、ストッパーに対して4〜6回程度弾んでから静止する場合があり、このような場合、例えば上記特許文献1に記載されたトイレブース内在室時間をカウントするタイマーは、扉が静止するまでの間は、トイレブース内に既に使用者が在室していないにもかかわらず、すぐにOFFとならない。従って、前の使用者がトイレブースから退室した後、扉が弾んでいる間に後の使用者がそのトイレブース内に入室した場合、タイマーのカウントが引継がれてしまい、例えば後の使用者が便座に腰掛けた直後にトイレブース内在室時間が所定時間を超え、アラーム音が出力されてしまうという問題がある。即ち、使用者がトイレブースに長居していることを精度良く検知できないという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、トイレブースを使用する使用者の長居を抑止するトイレブース長居抑止装置において、使用者がトイレブースに長居していることを精度良く検知可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0015】
本発明の一実施の形態のトイレブース長居抑止装置は、トイレブースを使用する使用者の長居を抑止するトイレブース長居抑止装置である。当該トイレブース長居抑止装置は、トイレブースの天井裏に設けられる筐体と、筐体に設けられ、且つ、使用者のトイレブース内の在室を検知する検知部と、筐体に設けられ、且つ、トイレブース内に向けて第1注意喚起音を出力可能な喚起音出力部と、筐体に設けられ、且つ、検知部による検知信号に基づいて喚起音出力部による第1注意喚起音の出力を制御する制御部と、を有する。検知部は、トイレブース内に向けて第1電波を送信し、第1電波が被検知物により反射された反射波を受信した瞬間の第1電波の第1周波数と反射波の第2周波数との差である周波数差に基づいて被検知物との第1距離を計測する周波数変調連続波レーダー方式の第1センサを含む。制御部は、第1センサにより計測された第1距離に基づいて、使用者がトイレブースに入室した第1時点を決定し、決定された第1時点及び検知信号に基づいて、使用者がトイレブースを使用している使用時間を計測し、計測された使用時間が予め設定された上限値を超えたときに、喚起音出力部が第1注意喚起音を出力するように、喚起音出力部を制御する。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
本発明の代表的な実施の形態によれば、トイレブースを使用する使用者の長居を抑止するトイレブース長居抑止装置において、使用者がトイレブースに長居していることを精度良く検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態のトイレブース長居抑止装置の設置状態の一例を模式的に示す図である。
図2】実施の形態のトイレブース長居抑止装置の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態のトイレブース長居抑止装置の一例を示す図である。
図4】FMCWレーダー方式のセンサにより計測される距離ごとの検知信号の強度を示すグラフである。
図5】FMCWレーダー方式のセンサにより計測される距離の時間変化を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態)
【0020】
以下では、本発明の一実施の形態である実施の形態のトイレブース長居抑止装置について説明する。本実施の形態のトイレブース長居抑止装置は、トイレブースを使用する使用者の長居を抑止するトイレブース長居抑止装置である。なお、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置は、トイレブースの天井裏に使用者から見えないように設置される天井裏隠ぺい型トイレブース長居抑止装置である。
<トイレブース長居抑止装置の設置状態>
【0021】
初めに、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置の設置状態について説明する。図1は、実施の形態のトイレブース長居抑止装置の設置状態の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、トイレ室(レストルーム)AのトイレブースBの上方にあっては、トイレ室Aの天井材Cが、延設されている。
【0022】
天井材Cは、マイクロ波の透過損失が少ない材質よりなり、例えば通常の天井仕上げ材として採用される一枚の石膏ボードよりなる。また、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置では、本装置からのマイクロ波の輻射波及び反射波が、石膏ボードを二枚重ねにして厚さ18mmとした天井材であっても何ら問題なく透過し、本装置が適正に作動することが検証されている。
【0023】
公共トイレ又はオフィストイレ等においては、トイレ室Aの天井材Cとして、上述した石膏ボードよりなるものを使用することが多く、マイクロ波の透過損失が少ない天井仕上げ材でトイレ室Aの天井が張られているのが一般的である。なお、図1のトイレ室Aにおいて一つのトイレブースBが表されているが、図1の紙面に垂直な方向に複数のトイレブースが並び設けられていて、説明を容易にするために一つのトイレブースBを図示している。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1は、洋式大便器の便座Dに腰掛けている使用者としての人体Eの上方に位置するように、天井材Cの天井裏面に設置される。またトイレブースBごとに、一台のトイレブース長居抑止装置1が設置される。
<トイレブース長居抑止装置>
【0025】
次に、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置について説明する。図2は、実施の形態のトイレブース長居抑止装置の一例を示すブロック図である。図3は、実施の形態のトイレブース長居抑止装置の一例を示す図である。図3(a)は、トイレブース長居抑止装置を斜め上方から視たときの斜視図であり、図3(b)は、トイレブース長居抑止装置を下方から視たときの底面図である。
【0026】
図2及び図3に示すように、トイレブース長居抑止装置1は、検知部2と、喚起音出力部3と、制御部4と、筐体5と、を有する。筐体5は、トイレブースBの天井裏に設けられ、検知部2と、喚起音出力部3と、制御部4とが、筐体5の内部に組み入れられることにより、設けられている。なお、例えば筐体5が箱状形状を有していない場合には、検知部2と、喚起音出力部3と、制御部4とは、筐体5の内部に設けられていなくてもよく、例えば筐体5の上方又は側方に設けられていてもよい。また、筐体5は、かまぼこ形状(円筒を中心で縦に切った形状)であって、楕円形状の側面部5a,5bと、正面部5c、背面部(不図示)と、天面部5dと、取付面7とから構成される。
[検知部]
【0027】
検知部2は、使用者のトイレブース内の在室を検知する。検知部2は、周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave:FMCW)レーダー方式のセンサ2aを含む。
【0028】
センサ2aは、トイレブース長居抑止装置1の設置場所の下方に位置するトイレブースB内に向けて、天井材Cを透過する電波を輻射し、トイレブースB内での被検知物としての使用者の人体Eとセンサ2aとの間の距離を、計測する。言い換えれば、センサ2aは、トイレブースB内に向けて電波を送信し、電波が被検知物としての使用者の人体Eにより反射された反射波を受信し、反射波を受信した瞬間の送信した電波の周波数と、受信した反射波の周波数と、の差である周波数差に基づいて、被検知物とセンサ2aとの間の距離を計測する。FMCWレーダーは、連続波レーダーの一種であり、変調方式として周波数変調(Frequency Modulation:FM)を採用しており、周波数の時間依存性が例えば鋸波状になるように周波数を変化させながら、反射波を受信した瞬間の送信波と反射波の周波数差(ビート周波数)から距離を求める、レーダーである。
センサ2aは、トイレブースBの扉Fの位置を含む、トイレブースB内の全域を検知範囲としており、トイレブースBに入退室する使用者の人体Eを検知する。
【0029】
ここで、比較例のトイレブース長居抑止装置として、例えば上記特許文献1に記載された技術と同様に、検知部2が、ドップラーレーダー方式のセンサを含むが、FMCWレーダー方式のセンサを含まない場合、即ち、検知部2がドップラー効果のみを利用する場合を考える。このような比較例においては、検知部2は、ドップラー効果のみにより被検知物を検知することになる。また、ドップラー効果を利用するセンサは、対象物自体の動きを検知するので、例えば体動、心拍及び肺呼吸の動きを検知するものの、発信源から対象物までの距離は検知しない。
【0030】
従って、ドップラー効果を利用したセンサでは、トイレブース内に使用者が在室しているか否かを検知する検知精度を高くした場合、使用者がトイレブースから退室する際に引いて開けた扉が壁のストッパーに対して弾んで静止するまでの間の扉の動きも検知してしまう。使用者が扉を引いて開ける強さにもよるが、トイレブースの扉は、ストッパーに対して4〜6回程度弾んでから静止する場合があり、このような場合、例えば上記特許文献1に記載されたトイレブース内在室時間をカウントするタイマーは、扉が静止するまでの間は、トイレブース内に既に使用者が在室していないにもかかわらず、すぐにOFFとならない。従って、前の使用者がトイレブースから退室した後、扉が弾んでいる間に後の使用者がそのトイレブース内に入室した場合、タイマーのカウントが引継がれてしまい、例えば後の使用者が便座に腰掛けた直後にトイレブース内在室時間が所定時間を超え、アラーム音が出力されてしまうという問題がある。
【0031】
即ち、ドップラー効果を利用したセンサでは、使用者がトイレブースに入室した時点を精度良く検知できないという問題がある。そして、ドップラー効果を利用したセンサでは、前の使用者の退室と後の使用者の入室とが連続した場合、後の使用者の使用時間を、前の使用者がトイレブースに入室した時点から引き継いでカウントしてしまう誤りが発生するという問題がある。
一方、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、検知部2は、少なくとも、FMCWレーダー方式のセンサ2aを含む。
【0032】
FMCWレーダー方式のセンサ2aは、反射波が戻ってくるまでの時間に基づいて、被検知物を検知する。例えば、使用者の人体等、ある程度の大きさの物体を含む被検知物がトイレブース内に在室していない場合には、通常では輻射された電波は、便器又は床面等に反射して戻る。一方、被検知物がトイレブース内に在室している場合には、輻射された電波は、使用者の人体又は使用者がトイレブース内に持ち込んだかばん等に反射して戻る。そのため、使用者が在室している場合と、使用者が在室していない場合との間で、反射波が戻る時間に時間差が生じるため、その時間差から距離の変化を検知することができ、トイレブース内に使用者が在室しているか否かを検知することができる。また、その距離の変化を検知した時点で、トイレブース内に使用者が在室している時間である、使用時間としてのトイレブース内在室時間をカウントするタイマーをON又はOFFに切り替えることにより、後述する図4図5を用いて説明するように、扉の開閉時の動きを検知対象から排除することができる。
【0033】
即ち、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、使用者のトイレブースへの入退室に際し、扉が弾んで動いていても、扉の動きによる影響を受けずに、使用者のトイレブースからの退室による距離の変化を検知して、タイマーをOFFに切り替える、即ちタイマーをリセットすることができる。そのため、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置によれば、使用者がトイレブースに入室した時点を精度良く検知することができる。従って、前の使用者の退室と後の使用者の入室とが連続した場合でも、後の使用者の使用時間を、前の使用者がトイレブースに入室した時点から引き継いでカウントしてしまう誤りが発生することを、防止することができる。
【0034】
また、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、使用者がトイレブースに入室した後も、センサ2aが、反射波を受信した瞬間の送信した電波の周波数と、受信した反射波の周波数と、の差である周波数差に基づいて、被検知物とセンサ2aとの間の距離を計測することにより、使用者がトイレブース内に在室しているか否かを容易に検知することができる。そのため、使用者がトイレブースを使用している使用時間を容易に計測することができる。
【0035】
比較例のトイレブース長居抑止装置は、検知部2が、ドップラーレーダー方式のセンサを含むが、FMCWレーダー方式のセンサを含まないため、トイレブース内で使用者が長時間静止している場合、トイレブース内に使用者が在室していないと認識する。一方、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、検知部2が、少なくともFMCWレーダー方式のセンサ2aを含むため、トイレブース内で使用者が長時間静止していた場合でも、トイレブース内に使用者が在室していないと認識することを防止することができる。
【0036】
また、比較例のトイレブース長居抑止装置では、例えばトイレブース内で使用者が心肺停止状態で倒れていた場合には、倒れている使用者を検知することができない。一方、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、トイレブース内で使用者が心肺停止状態で倒れていた場合でも、倒れている使用者を検知することができる。例えば人の利用頻度が少なくなる深夜の駅構内のトイレ等において、使用者が心肺停止状態で倒れていることが検知されてアラーム音が出力され、トイレブース周辺の通行人への注意が喚起されることは、倒れている使用者を一刻も早く救助するための手助けとなる。
なお、天井裏の空間側からの振動の受信を原因とする誤検知を防ぐために、検知部2の周りには、衝撃吸収体等を設けるようにすることが望ましい。
[喚起音出力部]
【0037】
喚起音出力部3は、トイレブース長居抑止装置1の下方に位置するトイレブースB内に向けて、音声情報による注意喚起音を出力可能な発音器を含む。即ち、喚起音出力部3により出力される注意喚起音は、音声情報による注意喚起音を含む。音声情報による注意喚起音は、人の声又は合成音等により構成され、必要に応じて出力できるように、喚起音出力部3に記録されている。音声情報の内容は、例えば「残りあと一分でお時間となります。次にお待ちの方のためにも、ブースからの退室のご準備をお願いします。」等、退室を促す内容であればよい。
【0038】
喚起音出力部3が出力する、音声情報による注意喚起音は、後述の所定時間を超えてトイレブースBを占有している使用者に向けて退室を促すものであるから、注意喚起音の音量は、その使用者に聞こえる音量であればよい。しかし、トイレ室でトイレブースの空きを待つ待機者がいると想定した場合、注意喚起音の音量は、待機者にも聞こえる音量であることが好ましい。待機者にも音声情報による注意喚起音が聞こえることにより、その待機者は、次に空くトイレブースを時間的な情報と合わせて知り得ることになり、その待機者の生理的苦痛を軽減させることができる。
【0039】
使用者に対してトイレブースからの退室を促すための注意喚起音として、音声情報を含む注意喚起音を挙げたが、注意喚起音は、音声情報を含むものには限定されず、チャイム音又はアラーム音等の各種の注意喚起音を含んでもよい。即ち、注意喚起音として、使用者に対してトイレブースからの退室を促すために、各種の効果音を採用することができる。
[制御部]
【0040】
制御部4には、検知部2が接続されている。検知部2がFMCWレーダー方式のセンサ2aを含む場合には、制御部4は、トイレブース内に使用者が在室しているか否かの情報を検知信号として取得することができる。また、制御部4は、検知部2による検知信号に基づいて、トイレブース内在室時間のカウント(計測)を行う、即ちトイレブース内在室時間を計測するタイマー6を、含む。
【0041】
更に、制御部4には、喚起音出力部3が接続されている。制御部4は、タイマー6により計測された、使用時間としてのトイレブース内在室時間が、予め設定された上限値としての所定時間(例えば10分間)を超えたときに、喚起音出力部3が注意喚起音に含まれる音声情報による注意喚起音を出力するように、喚起音出力部3を制御する。
【0042】
即ち、制御部4は、検知部2による検知信号に基づいて喚起音出力部3による注意喚起音の出力を制御する。詳細には、制御部4は、センサ2aにより計測された距離から、使用者がトイレブース内に着座していることを検出し、これによって着座した時点を決定し、決定された時点および検知部2による検知信号に基づいて、使用者がトイレブースを使用している使用時間を計測し、計測された使用時間が予め設定された上限値を超えたときに、喚起音出力部3が注意喚起音を出力するように、喚起音出力部3を制御する。
【0043】
また、制御部4は、センサ2aにより計測された距離から、トイレブース内に荷物が置かれていることを検出し、これによって荷物が置かれた時点を決定し、決定された時点および検知部2による検知信号に基づいて、トイレブース内に荷物が置かれ続けられている時間を計測し、計測された時間が予め設定された上限値を超えたときに、喚起音出力部3が注意喚起音を出力するように、喚起音出力部3を制御する。なお、計測された時間が予め設定された上限値を超えたときに、制御部4は、通信部(不図示)が外部の管理室やセンターに荷物が置かれ続けていることを示す情報を送信するようにしても良い。
【0044】
なお、制御部4は、センサ2aにより計測された距離に基づいて、使用者がトイレブースに入室した時点を決定し、決定された時点及び検知部2による検知信号に基づいて、使用者がトイレブースを使用している使用時間を計測し、計測された使用時間が予め設定された上限値を超えたときに、喚起音出力部3が注意喚起音を出力するように、喚起音出力部3を制御するようにしても良い。
【0045】
また、制御部4は、センサ2aにより計測された距離から、使用者がトイレブース内にうずくまっていることや、倒れていることを検出し、これによって検出した時点を決定し、決定された時点および検知部2による検知信号に基づいて、使用者がトイレブース内で倒れている時間を計測し、計測された時間が予め設定された上限値を超えたときに、喚起音出力部3が注意喚起音を出力するように、喚起音出力部3を制御する。
<トイレブース長居抑止方法>
【0046】
次に、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置を用いたトイレブース長居抑止方法について説明する。具体的には、検知部2が使用者を検知する際の制御部4による制御方法について説明する。図4は、FMCWレーダー方式のセンサにより計測される距離ごとの検知信号の強度を示すグラフである。図5は、FMCWレーダー方式のセンサにより計測される距離の時間変化を模式的に示すグラフである。図6は、ドップラーレーダー方式のセンサにより検知されるドップラー効果のレベルの時間変化を模式的に示すグラフである。図4の縦軸は、検知信号の強度を示し、図4の横軸は、センサから被検知物までの距離を示す。図5の縦軸は、計測された距離を示し、図5の横軸は、時間を示している。図6の縦軸は、検知されたドップラー効果のレベルを示し、図6の横軸は、時間を示している。
[初期データの記録]
【0047】
本実施の形態のトイレブース長居抑止方法においては、まず、制御部4は、いずれの使用者もトイレブース内に在室していない状態で、FMCWレーダー方式のセンサ2aにより、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1を計測する。
【0048】
具体的には、トイレブース毎に内部の広さ又は便器等の形状等が異なるため、トイレブース長居抑止装置1を設置後、トイレブース長居抑止装置1による使用者の在室の検知を開始する前に、制御部4は、いずれの使用者もトイレブース内に在室していない状態で、FMCWレーダー方式のセンサ2aにより、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS2を計測し、計測された距離DS2を、初期データとして記録する。
[適正な入室及び退室]
【0049】
このようにして初期データを記録した後、制御部4は、使用者がトイレブースBに入室する際、及び、使用者がトイレブースBから退室する際に、使用者がトイレブース内に在室しているか否かを検知部2により検知する。以下では、使用者による適正な入室及び退室がなされる場合について説明する。ここで、適正な入室及び退室とは、前の使用者の退室と後の使用者の入室が連続しない場合を意味し、以下では、前の使用者による適正な入室及び退室と、後の使用者による適正な入室と、がなされる場合について説明する。また、以下では、制御部4が、センサ2aにより、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS3を計測する例について説明する。
【0050】
図5に示すように、例えば、初期データとして、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS2が、例えば2.0mであると記録され(図5の「空室時」)、このような状態で、使用者が扉Fを開いてトイレブースBに入室した場合を考える。このような場合であって、使用者が立った状態でトイレブースに入室した時に、センサ2aから輻射されたマイクロ波は、使用者の人体全体に反射し、戻ってくる時間に時間差が生じるが、使用者の頭及び肩に反射したマイクロ波により、センサ2aは、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS3が、例えば0.8mであると計測する(図5の「入室腰掛け動作時」)。その結果、制御部4は、距離DS1としての距離DS3が距離DS2よりも大きく減少して変化が生じたと判定、即ちトイレブース内に使用者が在室していると判定し、タイマー6がONとなる。このとき、使用者がトイレブースに入室した時点を、計測された距離DS3が距離DS2よりも短くなった時点として決定することになる。
【0051】
好適には、制御部4は、距離DS1としての距離DS3が距離DS2よりも予め設定された上限値を超える差分だけ短くなったときに、トイレブース内に使用者が在室していると判定することができ、このような上限値を適宜設定することにより、誤検知を防止しつつ、使用者の在室を確実に検知することができる。
【0052】
次に、入室した使用者が、ズボン、スカート又は下着を下げ、洋式便器の便座Dに腰掛ける動作を行った場合を考える。このような場合、センサ2aは、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS3が、距離DS2よりも短く、且つ、0.8mよりも長く、例えば1.0mであると計測する(図5の「着座姿勢維持動作時」)。そして、センサ2aにより計測された距離DS1としての距離DS3の情報は、制御部4に送られる。
【0053】
次に、入室した使用者が、便座Dに腰掛けて用便を行うか、又は、便座Dに腰掛けながら携帯端末機器を操作している場合を考える。このような場合も、センサ2aは、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS3が、距離DS2よりも短く、且つ、0.8mよりも長く、例えば1.0mであると計測する(図5の「着座姿勢維持動作時」)。そして、センサ2aにより計測された距離DS1としての距離DS3の情報は、制御部4に送られる。
【0054】
このようにして、センサ2aにより計測された距離DS1としての距離DS3が、初期データである距離DS2よりも大きく減少するように変化したことが、情報として検知部2から制御部4に送られると、制御部4は、計測された距離DS1としての距離DS3の変化に基づいて、トイレブース内に使用者が在室しており、使用者の入室腰掛け動作から便座に腰掛ける着座姿勢維持動作が行われたと、判定する。この判定が行われた場合、制御部4は、前述したように、タイマー6に、トイレブース内在室時間のカウントを開始させる。
【0055】
即ち、制御部4は、いずれの使用者もトイレブース内に在室していない状態でセンサ2aにより距離DS1としての距離DS2を計測し、距離DS2を計測した後、センサ2aにより距離DS1としての距離DS3を計測し、使用者がトイレブースに入室した時点を、計測された距離DS3が距離DS2よりも短くなった時点として決定する。言い換えれば、制御部4は、センサ2aにより計測された距離DS1に基づいて、使用者がトイレブースに入室した時点を決定する。そして、制御部4は、決定された時点及びセンサ2aによる検知信号に基づいて、使用者がトイレブースを使用している使用時間を計測するように、制御する。また、制御部4は、カウントされるトイレブース内在室時間と、予め設定された上限値としての所定時間(例えば10分間)とを比較する。計測された使用時間が予め設定された上限値を超えたときに、制御部4は、喚起音出力部3が注意喚起音を出力するように、喚起音出力部3を制御する。
【0056】
ここで、使用者が用便を済ませるなどして、予め設定された上限値としての所定時間内に、トイレブースBから退室するための準備動作に入った場合には、腰を便座から上げるか又は衣服を整えるために、センサ2aは、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS3が、例えば0.8mであると計測する(図5の「退室動作時」)。そして、使用者がトイレブースBから退室した後、センサ2aから輻射されたマイクロ波は、人体には反射せず、センサ2aは、被検知物とセンサ2aとの間の距離DS1としての距離DS3を、例えば2、0mと検知することになる(図5の「空室時」)。その結果、制御部4は、距離DS3が初期データとしての距離DS2に近づいて変化が生じたと判定、即ち退室動作が行われ、トイレブース内に使用者が在室していないと判定する。
【0057】
このように、制御部4が、決定された使用者がトイレブースに入室した時点及びセンサ2aによる検知信号に基づいて使用時間を計測する場合、検知部2がドップラーレーダー方式のセンサを併用しなくてもよいので、検知部2の構成を簡易なものとし、トイレブース長居抑止装置の製造コストを低減することができる。
[カウントのリセット]
【0058】
前述したように、制御部4が、予め設定された上限値としての所定時間内に、退室動作が行われ、トイレブース内に使用者が在室していないと判定すると、タイマー6がOFFとなる。即ち、制御部4は、タイマー6に、トイレブース内在室時間のカウントをリセットさせ(トイレブース内在室時間をゼロにする)、タイマー6を、カウント起動待機の状態に戻す。この場合、所定時間内に使用者が退室しているので、喚起音出力部3は動作しない。
[退室後の入室]
【0059】
前の使用者がトイレブースBから退室した後、後の使用者がトイレブースBに入室した場合、制御部4は、前の使用者のときと同様に、計測された距離DS1の変化に基づいて、トイレブース内に後の使用者が在室しており、後の使用者の入室腰掛け動作から便座に腰掛ける着座姿勢維持動作が行われたと、判定する。前述したように、前の使用者が退室したことにより、タイマー6はカウント起動待機の状態に戻されている。そのため、制御部4が、後の使用者の入室腰掛け動作から便座に腰掛ける着座姿勢維持動作が行われたと、判定すれば、上述のようにタイマー6が起動してトイレブース内在室時間のカウントが開始される。
[退室と入室の連続]
次に、前の使用者の退室と後の使用者の入室とが連続する場合について説明する。
【0060】
前述したように、比較例のトイレブース長居抑止装置として、検知部2が、ドップラーレーダー方式のセンサを含むが、FMCWレーダー方式のセンサを含まない場合を考える。このような比較例においては、使用者が扉を引いて開ける強さにもよるが、トイレブースの扉は、ストッパーに対して4〜6回程度弾んでから静止する場合があり、このような場合、トイレブース内在室時間をカウントするタイマーは、扉が静止するまでの間は、トイレブース内に既に使用者が在室していないにもかかわらず、すぐにOFFとならない。
【0061】
即ち、比較例においては、前の使用者がトイレブースから退室した後、後の使用者が連続してトイレブースに入室した場合、前の使用者の退室動作に基づくドップラー効果のレベルが高い状態と、後の使用者の入室腰掛け動作に基づくドップラー効果のレベルが高い状態、が時間的に連続してセンサに検知され、検知された検知信号が検知部2から制御部4に送られる可能性がある。このような場合、前の使用者がトイレブースから退室する際に、タイマーがOFFにならず、タイマー6のカウントのリセットがなされず、タイマー6がカウント起動待機の状態に戻されない可能性がある。この、前の使用者の退室動作に基づくドップラー効果のレベルが高い状態と、後の使用者の入室腰掛け動作に基づくドップラー効果のレベルが高い状態と、が時間的に連続するとは、例えば図6の二点鎖線で囲まれた領域RG1において、左右両側の振幅の大きい領域が重なってしまう場合に相当する。
【0062】
このように、比較例においては、前の使用者がトイレブースから退室した後、後の使用者が連続してトイレブースに入室した場合、使用者がトイレブースに入室した時点を精度良く検知できないという問題がある。そして、比較例においては、前の使用者の退室と後の使用者の入室とが連続した場合、後の使用者の使用時間を、前の使用者がトイレブースに入室した時点から引き継いでカウントしてしまう誤りが発生するという問題がある。
【0063】
一方、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、予め例えば天井面(センサの位置)と扉の上部(厚み分の面)との距離(例えば0.8m)のデータのみを、検知対象外として設定しておけばよい。これにより、扉が弾んで動いていても、扉の動きを検知されないようにすることができ、これまでのドップラー効果では排除できなかった扉の動きを検知対象から排除することができるようになる。そのため、単純にトイレブース内に使用者が在室しているか否かを明確に判定することができ、実際の使用者の入室又は退室に追随するように、タイマーをON又はOFFに切り替えることができる。
【0064】
即ち、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置によるトイレブース長居抑止方法によれば、FMCWレーダー方式のセンサ2aに、トイレブース内に使用者が在室しているか否かを検知させる。これにより、使用者のトイレブースへの退室に際し、扉が弾んで動いていても、扉の動きによる影響を受けずに、使用者のトイレブースからの退室による距離の変化を検知して、タイマー6をOFFに切り替える、即ちタイマー6をリセットすることができる。そのため、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置によるトイレブース長居抑止方法によれば、使用者がトイレブースに入室した時点を精度良く検知することができる。従って、前の使用者の退室と後の使用者の入室とが連続した場合でも、後の使用者の使用時間を、前の使用者がトイレブースに入室した時点から引き継いでカウントしてしまう誤りが発生することを、防止することができる。
【0065】
また、図4に示されるように、制御部4には、所定間隔ごとに、センサから被検知物までの距離ごとの検知信号の強度が入力される。これによって、制御部4には、検出された距離が第1の距離(1m〜4m)である場合には、使用者がトイレブース内に着座していることを検出する。また、検出された距離が第1の距離よりも長い第2の距離(1.5m〜4.5m)である場合には、使用者がトイレブース内にうずくまっていること検出する。また、検出された距離が第3の距離(1.5m〜5m)である場合には、トイレブース内に荷物が置かれていることを検出する。
<筐体及び取付面>
次に、図1乃至図3を参照し、筐体及び取付面について説明する。
[筐体]
【0066】
図2には、筐体5に、検知部2と喚起音出力部3と制御部4とが収容されている状態が概略的に表されている。図2に示すように、筐体5の下面(筐体下面)は、天井材Cの天井裏面に密に接する取付面7とされている。即ち、筐体5は、トイレブースの天井材Cの天井裏面に重ね合わされる取付面7を有する。
【0067】
取付面7には、マイクロ波通過面8が設けられている。なお、透孔9が設けられているようにしても良い。マイクロ波通過面8と複数の透孔9とは、筐体5の取付面7を天井材Cの天井裏面に重ね合わせたときに、天井材Cで覆われる。
【0068】
マイクロ波通過面8は、筐体下面板の一部であって、センサ2aにより送信された電波、並びに、センサ2aにより送信された電波が被検知物により反射された反射波が通る通過部である。透孔9が配列されている筐体下面板の上面には、喚起音出力部3に含まれる発音器(例えばスピーカ)が配置されており、喚起音出力部3が出力する音声情報がこれらの透孔9を通るとともに、更に天井材Cを通過して、下方のトイレブースBにいる人に聞こえるようになっている。即ち、複数の透孔9は、互いに隣り合うように配列され、且つ、注意喚起音がそれぞれ通る透孔である。
[喚起音出力部を組み込む点と透孔を天井材で覆う点について]
【0069】
喚起音出力部3が、検知部2と制御部4とともに筐体5に組み込まれている理由は、以下の通りである。まず、仮に、喚起音出力部3が単独でトイレブース内の内壁面等の在室者から見える位置に設置されていると、喚起音出力部3がトイレブース内に在室している使用者に対して退室を促すものであることから、使用者の気分を害し易くなる。そして使用者によって喚起音出力部3がいたずらされるか、又は、壊されることも予想される。
【0070】
喚起音出力部3がいたずらされるか、又は、壊されることを防止するためには、トイレブースBの上方の天井裏に喚起音出力部3を配置して隠すことが、対策として挙げられる。しかしながら、喚起音出力部3を単独で天井裏に隠すように配置しただけでは、喚起音出力部3が出力する注意喚起音が天井裏にこもってしまい、天井材を通して下方のトイレブースに届く注意喚起音の音質が、悪くなってしまう。
【0071】
このように注意喚起音の音質が悪くなると、注意喚起音の内容が、トイレブース内の在室している使用者に、伝わらなくなってしまう。例えば、音声情報として、英語又は中国語等の外国語でアナウンスを流して使用者に退室を促そうとしても、アナウンスの内容が不明確になるばかりか、日本語でアナウンスされているのか、又は、外国語でアナウンスされているのか、も識別できなくなる可能性がある。
【0072】
注意喚起音の内容を確実に伝えるために、注意喚起音の音量を大きくすることが考えられる。しかし、注意喚起音の音量を大きくすると、トイレ室の天井面が広範囲に振動して、どのトイレブースに対して注意喚起音が出力されているのか、が不明確になってしまう。そのため、注意喚起音の対象となっているトイレブース内に在室している使用者は、自分に対して退室が促されているのか、又は、隣接したトイレブース内に在室している使用者に対して退室が促されているのか、が識別できない。また、注意喚起音の対象ではない、隣接のトイレブース内に在室している使用者も、誰に対して退室が促されているのか、識別できない。よっていずれのトイレブース内に在室している使用者も、勘違いを起こし易くなる、という問題がある。
【0073】
更に、トイレブース外でトイレブースの空きを待っている待機者にとっても、いずれのトイレブース内に在室している使用者に対して退室が促されているのかが識別しにくい。よって、ただ漫然と退室が促されているだけに聞こえてしまい、トイレブースがもうすぐ空くという期待を持てない、という問題がある。
【0074】
一方、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1では、前述したように、喚起音出力部3が、検知部2と制御部4とともに筐体5に組み込まれている。そのため、トイレブース長居抑止装置1を、天井材Cの天井裏面側に設置することにより、喚起音出力部3を単体で天井裏に設置する作業を行うことなく、喚起音出力部3を容易に天井裏に隠すことができる。また、マイクロ波通過面8と透孔9とが天井材Cに接触した状態で覆われるため、トイレブース長居抑止装置1を天井裏に設置した後に、トイレブース長居抑止装置1と天井材Cとの間に小動物等が入り込むことがなく、天井裏の埃又は小さい異物がトイレブース長居抑止装置1内に入ることを防止することができる。
【0075】
喚起音出力部3からは、音声情報による注意喚起音が、下方に向いた指向性を持って出力され、透孔9を通ってトイレブースB内に向けて放たれる。このとき、トイレブース長居抑止装置1が、天井材Cの天井裏面側に設置され、透孔9が天井材Cに接触した状態で覆われるため、音声情報による注意喚起音は、天井裏の空間でこもらずに、透孔9から直接天井材Cを通って、トイレブース長居抑止装置1の設置場所の下方に位置するトイレブースB内の空間に適正に届く。そのため、音声情報による注意喚起音が、そのトイレブースB内に在室している使用者に、明瞭に伝わる。
【0076】
従って、注意喚起音の音声情報が英語又は中国語等の外国語でアナウンスを流す形態であっても、注意喚起音の対象であるトイレブース内に在室している使用者は、注意喚起音の内容が即座に理解でき、隣接のトイレブース内に在室している使用者も、誰に対して退室が促されているのか、容易に識別できる。また、喚起音出力部3が出力する注意喚起音がアラーム音又は効果音であっても、同様である。
【0077】
更に、音声情報による注意喚起音が明瞭となっているため、トイレブースの空きを待つ待機者にとっても、いずれのトイレブース内に在室している使用者に対して退室が促されているのかが容易に識別できる。よって、待機者に、もうすぐトイレブースが使用できるという安心感を、与えることができる。
[固定部]
【0078】
取付面7の周辺には、筐体5を天井材Cの天井裏面に安定的に固定させるための固定部9が設けられている。固定部9は、複数の鋲部材が取付面7の周方向に移動可能にして配置されてなるものであり、その鋲部材を天井材Cの天井裏面に突き刺して筐体5を所定角度で周方向に回転させることにより、筐体5の天井材Cに対する固定が行われる。
【0079】
なお、固定部9の構成は、特に限定されるものではない。例えば目立てして起こされた複数の係止刃を有する金属板を固定部9としてもよく、取付面7の周辺等に配置された筐体5を天井材Cの天井裏面に置いて僅かながら周方向に回転させること等により、係止刃が天井材Cに食い込んだ状態で固定部9の固定を行ってもよい。更に、固定部9を粘着性テープとしてもよく、筐体5の取付面7に粘着性テープを配し、その粘着性テープにて天井材Cとの固定を行ってもよい。
【0080】
このように、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1においては、筐体5の取付面7に固定部9が設けられているので、トイレブース長居抑止装置1を安定的に固定し、且つ、簡単(ワンタッチ)に天井材Cの天井裏面に設置することができる。そして、固定部9は、トイレブース長居抑止装置1が地震等により位置ズレするのを防止するとともに、マイクロ波通過面8と透孔9とが天井材Cの天井裏面に密に接する状態を維持する。
【0081】
本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1を天井材Cの天井裏面に設置する場合、例えばトイレブースBの上方の天井材Cに配置されている照明器具を取り外して開いた照明器具取付孔から、側面側から挿入しトイレブース長居抑止装置1を天井材Cの天井裏面に置くことができる。そして、照明器具に給電する天井裏電気配線に、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1における不図示の電源線を接続し、再び照明器具を元のように取り付けることができる。ここで、トイレブース長居抑止装置1の側面部5a,5bは、幅および高さのいずれもが1cm以上9cm未満となっている。LEDなどが取り付けられる照明器具取付孔の口径は9cmであるところ、トイレブース長居抑止装置1の側面部5a,5bは、幅および高さを9cm以下とすることで、トイレブース長居抑止装置1を側面側から照照明器具取付孔を介して挿入することで、天井材Cの天井裏面に置くことができる。
【0082】
このように、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1には、検知部2と喚起音出力部3と制御部4とがまとめられているので、トイレブース長居抑止装置1を天井材Cの天井裏面に設置することにより、トイレブース内に在室する使用者に対して必要時に退室を促す仕組みを、簡単に構築できる。
【0083】
本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1は、当該トイレブース長居抑止装置1が、天井材Cの天井裏面に各トイレブースの上方に位置するように配置されるため、外部の専用装置からの無線通信によって各種の設定等を行うために、図示しないインターフェイス部を備えている。これにより、トイレブース長居抑止装置1を天井裏に設置した後には、天井裏に入ることなしに、インターフェイス部を介して専用機器を用いながら、複数のトイレブース長居抑止装置1の各々の設定(喚起音出力部3が動作するまでの時間設定、及び、喚起音出力部3が出力する注意喚起音の種類又は音量等の設定)を容易に行うことができる。また、複数のトイレブース長居抑止装置1の各々の動作確認のための各種情報を、専用装置にて取得することができる。
【0084】
また、複数のトイレブース長居抑止装置1の各々から電波を送信し、送信された電波及びその反射波を用いて被検知物を検知するため、隣り合う装置同士で電波の干渉が生じないようにチャンネルを変えておくことが、誤検知を無くす上で必要である。従って、上記専用装置は、干渉を防ぐチャンネル変更の設定を行うものであってもよい。
<表示装置>
【0085】
本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1は、各トイレブース長居抑止装置1の稼働情報を、トイレ室Aに設けられた表示装置に向けて、無線通信にて送出できる出力器(図示は省略)を有してもよい。図1に一例を示すように、トイレ室Aでのトイレブース列の近くの壁面に表示装置10が設置され、出力器(図示は省略)は、表示装置10に向けて、各トイレブースの使用状況等の情報を送出する。表示装置10は、例えばトイレブースの空きを待つ人が並ぶことになる箇所に取り付けられる。
【0086】
表示装置10は、液晶表示パネル等の表示体、及び、公知の人体近接検知センサ等を備え、トイレブースの空きを待つ人が並んだ場合、並んだ人を人体近接センサが検知することにより、表示動作を行う。
【0087】
更に、表示装置10は、トイレブース長居抑止装置1から出力された情報に基づいて、トイレブースの使用状況をトイレブースの空きを待つ人に知らせる働きをするものであり、喚起音出力部3による表示動作が行われているときに、喚起音出力部3が注意喚起音を出力することにより退室が促される場合があることを併せて表示することもできる。
【0088】
また、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1は、検知部2による検知信号等の情報を送信するか、又は、制御部4への指示情報を受信するために組み付けられた、無線型又は有線型の送受信器を有してもよい。このような場合、例えば、各トイレブースの使用状況等の情報を、建物の管理部門等に送って一括的に管理することができる。また、本実施の形態のトイレブース長居抑止装置1は、検知部2と喚起音出力部3と制御部4とを一体的に備えているため、トイレ室から離れた場所にある管理部門から遠隔にて各トイレブースの使用状況を監視し、防犯も図るシステムを、容易に構築することができる。
【0089】
更に、管理部門側から複数のトイレブース長居抑止装置の各々に向けて指示情報を送信して、喚起音出力部3が動作するまでの時間設定、及び、喚起音出力部3が出力する注意喚起音の種類又は音量等の設定を遠隔操作にて行えるシステムを、容易に構築することができる。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0091】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換を行ってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…トイレブース長居抑止装置、2…検知部、2a…センサ、3…喚起音出力部、4…制御部、5…筐体、6…タイマー、7…取付面、8…マイクロ波通過面、9…固定部、10…表示装置、A…トイレ室、B…トイレブース、C…天井材、D…便座、E…人体、F…扉、RG1…領域。
図1
図2
図3
図4
図5