(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647540
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20200203BHJP
F16K 11/044 20060101ALI20200203BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20200203BHJP
F01P 5/10 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
F04D15/00 F
F16K11/044 Z
F16K31/06 305L
F01P5/10 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-522754(P2018-522754)
(86)(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公表番号】特表2019-500532(P2019-500532A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2016075072
(87)【国際公開番号】WO2017076644
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年6月25日
(31)【優先権主張番号】102015119098.2
(32)【優先日】2015年11月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】593209987
【氏名又は名称】ピールブルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ツィールベアク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル−トーマス ベンラ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ザンダース
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ロートガング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブアガー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ニヒリン
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102012207387(DE,A1)
【文献】
特表2009−520899(JP,A)
【文献】
特開平07−055044(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0291724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F16K 11/044
F16K 31/06
F01P 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニットであって、
冷却媒体ポンプ羽根車(20)の出口(62)と周囲の圧送通路(12)との間の環状ギャップ(60)の通流横断面を調整することができる変位可能な調整スライダ(56)と、
流れ通路(42)内に液圧を生ぜしめることができる調整ポンプ(36)と、
前記調整スライダ(56)の第1の軸方向側に形成された、前記調整スライダ(56)の第1の圧力室(72)と、
2つの弁座(110,112)および3つの流れ接続部(118,120,122)ならびに閉鎖部材(76)を備える電磁弁(78)とが設けられており、
前記閉鎖部材(76)は、前記電磁弁(78)の可動子(96)に結合されて軸方向に可動であり、
第1の前記流れ接続部(118)は、前記調整ポンプ(36)の出口(46)に流体接続されており、第2の前記流れ接続部(120)は、前記調整スライダ(56)の前記第1の圧力室(72)に流体接続されているものにおいて、
第3の前記流れ接続部(122)は、前記冷却媒体ポンプ(11)の入口(14)に流体接続されており、第1の前記弁座(110)は、前記第1の流れ接続部(118)と前記第2の流れ接続部(120)との間に形成されており、第2の前記弁座(112)は、前記第2の流れ接続部(120)と前記第3の流れ接続部(122)との間に形成されていることを特徴とする、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項2】
前記電磁弁(78)は、内部で前記閉鎖部材(76)が2つの前記弁座(110,112)間で軸方向に可動となっている流れケーシング(82)と、コア(92)、磁束ガイド部材(94)、コイル支持体(88)に配置されたコイル(90)を備えた電磁式のアクチュエータ(84)と、軸方向に可動の前記可動子(96)とを有している、請求項1記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項3】
少なくとも前記電磁弁(78)の前記流れケーシング(82)は、前記冷却媒体ポンプ(11)のケーシング部分(28)の受容開口(80)内に配置されている、請求項1または2記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項4】
前記ケーシング部分(28)に、前記第1の圧力室(72)を前記第2の流れ接続部(120)に接続する第1の通路(124)が形成されている、請求項3記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項5】
前記ケーシング部分(28)に、一方では前記電磁弁(78)の前記第1の流れ接続部(118)に接続されかつ他方では調整ポンプケーシング(44)内で前記調整ポンプ(36)の前記出口(46)まで続いている第2の通路(126)が形成されている、請求項3または4記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項6】
前記ケーシング部分(28)に、一方では前記電磁弁(78)の前記第3の流れ接続部(122)に接続されかつ他方では前記ケーシング部分(28)の半径方向内側の貫通開口(48)内へ延びている第3の通路(128)が形成されており、前記貫通開口(48)は、前記調整ポンプケーシング(44)の内部に続いており、かつ前記貫通開口(48)を前記冷却媒体ポンプ(11)の駆動軸(18)が貫通しており、前記冷却媒体ポンプ羽根車(20)には、前記冷却媒体ポンプ(11)の前記入口(14)に通じる少なくとも1つの軸方向孔(130)が形成されている、請求項5記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項7】
前記調整ポンプケーシング(44)内で、第2の圧力室(74)を前記調整ポンプ(36)の前記流れ通路(42)に流体接続する接続通路(132)が、前記調整ポンプ(36)の流入領域に形成されている、請求項5または6記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項8】
前記電磁弁(78)の前記閉鎖部材(76)は、弁棒(108)に取り付けられており、前記閉鎖部材(76)の第1の軸方向端部における閉鎖面(114)は、前記第1の弁座(110)に対応配置されており、反対の側の軸方向端部における閉鎖面(116)は、前記第2の弁座(112)に対応配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項9】
前記電磁弁(78)は比例弁である、請求項1から8までのいずれか1項記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【請求項10】
前記電磁弁(78)は可変タイミング制御可能である、請求項1から7までのいずれか1項記載の、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の機械的に調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニットであって、冷却媒体ポンプ羽根車の出口と周囲の圧送通路との間の環状ギャップの通流横断面を調整することができる変位可能な調整スライダと、液圧を生ぜしめることができる調整ポンプと、調整スライダの第1の軸方向側に形成された調整スライダの第1の圧力室と、2つの弁座および3つの流れ接続部ならびに閉鎖部材を備える電磁弁とが設けられており、閉鎖部材は、電磁弁の可動子に結合されて軸方向に可動であり、第1の流れ接続部は、調整ポンプの出口に流体接続されており、第2の流れ接続部は、調整スライダの第1の圧力室に流体接続されているものに関する。
【0002】
冷却媒体ポンプのためのこのような調整ユニットは、内燃機関において圧送される冷却媒体の量を調整するために用いられ、これにより、内燃機関の過熱が防止される。これらのポンプの駆動は大抵、ベルト駆動装置またはチェーン駆動装置を介して行われ、冷却媒体ポンプ羽根車は、クランクシャフトの回転数またはクランクシャフトの回転数に対する固定比率でもって駆動される。
【0003】
最新の内燃機関では、圧送される冷却媒体量が、内燃機関または自動車の所要冷却媒体量に適合され得る。有害物質エミッションの増大を回避し、かつ燃料消費量を減少させるためには、特にエンジンの冷間運転段階が短縮されることが望ましい。このことはとりわけ、この段階中に冷却媒体流が絞られるか、または完全に遮断されることにより行われる。
【0004】
冷却媒体量の調整に関しては、様々なユニットが知られている。電気的に駆動される冷却媒体ポンプの他に、クラッチ、特に流体動力学的なクラッチを介してその駆動装置に対し断接可能なポンプも周知である。特に廉価で簡単に形成される、圧送される冷却媒体流の調整手段は、軸方向に押しずらし可能な調整スライダを用いることであり、この調整スライダは、冷却媒体ポンプ羽根車を越えて押しずらされるようになっており、これにより、冷却媒体流を減少させるために、ポンプは周囲の圧送通路内へ圧送するのではなく、閉じられたスライダに対して圧送することになる。
【0005】
この調整スライダの作動も、やはり様々な形式で行われる。純粋に電気式の変位の他に、とりわけスライダの液圧式の変位が有利であるということが判った。液圧式の変位は大抵、環状のピストン室または液圧液で満たされる別の構成の圧力室を介して行われ、この圧力室が満たされると、スライダは冷却媒体ポンプ羽根車を越えて移動させられる。調整スライダの戻しは、出口に対して圧力室を開放することにより行われ、このことは大抵、2方向2位置切換電磁弁を介して、かつスライダの戻し力を提供するばねの作用下で行われる。
【0006】
調整スライダの移動に必要とされる冷却媒体量を追加的なピストン/シリンダユニット等の追加的な圧送ユニットを介して供与しなくてもよいようにするため、または作動用の別の液圧液を圧縮しなくてもよいようにするためには、調整ユニットが知られており、これらの調整ユニットでは、所要圧力を生ぜしめる調整ポンプが冷却媒体ポンプの駆動軸に配置されており、調整ポンプは、スライダを適宜に変位させるために用いられる。これらの調整ポンプは、例えばサイドチャンネルポンプまたはサーボポンプとして形成される。
【0007】
調整スライダを押しずらすための圧力を生ぜしめる調整ポンプを備えた、機械的に駆動される調整可能な冷却媒体ポンプのための調整ユニットは、独国特許出願公開第102012207387号明細書(DE 10 2012 207 387 A1)から公知である。このポンプの場合、3ポート2位置切換弁を介して、第1の位置で調整ポンプの吐出側が閉じられ、ポンプの吸込み側は冷却回路とスライダとに接続され、第2の位置で吐出側がスライダに接続され、吸込み側は冷却回路に接続される。スライダを戻すには、ばねが用いられるが、吸込み接続部に生じる負圧によりポンプを戻すことが望ましいため、ばねは、場合により省略可能であることが望ましい。相応して、弁の第1の流れ接続部は圧力室に接続されており、第2の流れ接続部は調整ポンプの出口に接続されており、第3の流れ接続部は調整ポンプの流入部に接続されている。詳細に説明された調整ユニットの通路・流れ案内は開示されていない。概略的に図示された流れ案内は、最新の内燃機関においては多大な手間と所要構成空間とをもってしか、技術的に実現することができない。さらに、空にされるのは調整ポンプの流入部であるため、ピストン室を迅速に空にすることは不可能であり、これにより通路全体に、ピストン室内で逆圧として働く圧力が形成される。
【0008】
よって、可能な限り短い切換時間を有していて、要求された冷却媒体流量を可能な限りすぐに提供することができる、内燃機関の冷却媒体ポンプ用の調整ユニットを提供する、という課題が生じる。同時に、所要構成空間が最小にされることが望ましい。冷却媒体ポンプの最大圧送量を保証する位置へのスライダの戻しは、調整スライダに作用する圧縮ばねをなるべく使用せずに行うことができるようにしたい。さらに、冷却媒体流量の可変制御を可能な限り実施することができるようにしたい。
【0009】
前記課題は、独立請求項1記載の特徴を備えた、内燃機関の冷却媒体ポンプのための調整ユニットにより解決される。
【0010】
第3の流れ接続部が、冷却媒体ポンプの入口に流体接続されており、第1の弁座が、第1の流れ接続部と第2の流れ接続部との間に形成されており、第2の弁座が、第2の流れ接続部と第3の流れ接続部との間に形成されていることにより、圧力室と冷却媒体ポンプの入口との間に接続が生ぜしめられ、これにより、そこに存在する冷却媒体が迅速に吸い出され、ひいては圧力室内の圧力を急速に低下させることができるか、または調整ポンプの出口から圧力室まで接続が生ぜしめられ、これにより、圧力室ひいては調整スライダに対する圧力供給が行われるようになっている。つまり、調整スライダの短期の変位は、電磁弁の切換により可能になる。
【0011】
好適には、電磁弁は、内部で閉鎖部材が2つの弁座間で軸方向に可動である流れケーシングと、コア、磁束ガイド部材、コイル支持体に配置されたコイルを備えた電磁式のアクチュエータと、軸方向に可動の可動子とを有している。これにより、閉鎖部材は短い距離を進むだけで済むので、切換時間が短縮されることになる。
【0012】
1つの好適な実施形態では、少なくとも電磁弁の流れケーシングは、冷却媒体ポンプのケーシング部分の受容開口内に配置されている。これに相応して、電磁弁は調整ポンプのすぐ近くに配置されることから、導管の長さが短縮され、このこともやはり、調整ユニットの切換時間の短縮につながる。付加的に、構成空間はあまり必要とされず、組立は簡略化される。それというのも、調整ユニットは冷却媒体ポンプと共に、全体として予め組み立てられてアウタケーシング内に挿入することができるようになっているからである。
【0013】
有利にはケーシング部分に、第1の圧力室を第2の流れ接続部に接続する第1の通路が形成されている。追加導管は省かれている。代わりにより迅速な切換時間のための、極端に短い接続部が達成される。
【0014】
付加的に、ケーシング部分に、一方では電磁弁の第1の流れ接続部に接続されかつ他方では調整ポンプケーシング内で調整ポンプの出口まで続いている第2の通路が形成されていると有利である。これにより、圧力接続部と圧力室との間を接続するために追加導管を取り付ける必要は一切ない。それというのも、これらの導管は完全にケーシング内に組み込まれているからである。これに相応して、これらの接続部は短い長さを有している。
【0015】
さらに好適には、ケーシング部分に、一方では電磁弁の第3の流れ接続部に接続されかつ他方ではケーシング部分の半径方向内側の貫通開口内へ延びている第3の通路が形成されており、貫通開口は、調整ポンプケーシングの内部に続いており、かつ貫通開口を冷却媒体ポンプの駆動軸が貫通しており、冷却媒体ポンプ羽根車には、冷却媒体ポンプの入口に通じる軸方向孔が形成されている。このようにして簡単に、冷却媒体ポンプの入口に対する接続部も、特に孔としてケーシング部分に形成されるべき唯1つの追加的な通路と、冷却媒体ポンプ羽根車に形成された少なくとも1つの孔とにより形成される。またこの接続も、取り付けられるべき追加導管無しで、極めて短い距離で行われる。
【0016】
好適には、調整ポンプケーシングに、第2の圧力室を調整ポンプの流れ通路に流体接続する通路が、調整ポンプの流入領域に形成されており、これにより冷却媒体ポンプは、圧縮ばねや類似の連続的に力を加える追加的な手段無しで構成されている。このことは、必要とされる作動力を減少させるので、極めて短い応答時間を伴う調整ユニットの切換が新たに可能になる。
【0017】
本発明の1つの別の好適な構成では、電磁弁の閉鎖部材が弁棒に配置されており、この場合、閉鎖部材の第1の軸方向端部における閉鎖面は第1の弁座に対応配置されており、反対の側の軸方向端部における閉鎖面は第2の弁座に対応配置されている。それぞれの弁座に対する閉鎖部材の軸方向での着座は、各通流横断面の密でほぼ漏れの無い閉鎖をもたらす。このためには両側に荷重が加えられる閉鎖部材だけが必要とされるに過ぎず、これにより電磁弁の構成も、やはり簡単になる。
【0018】
この場合、電磁弁は、好適には比例弁として形成されている。このことは、弁開口の連続的な調整を可能にし、これにより調整スライダは複数の中間位置にも移動することができるようになっており、ひいては冷却媒体流量を完璧に調整することができるようになっている。この弁は、弁座に高周波で衝突する弁体が省かれているため、長寿命を有している。
【0019】
これに対して択一的な1つの実施形態では、電磁弁は可変タイミング制御可能である。このように制御されるサーボ弁は、確かに製造においてはより高価であるが、所望の開口横断面の、より正確な調整を可能にするので、調整スライダの、より正確な位置調整も可能になる。
【0020】
これにより、冷却媒体流量の高精度で極めて迅速な調整を可能にする、内燃機関の冷却媒体ポンプのための調整ユニットが達成される。この場合は小さな構成空間しか必要とされず、組立時間が大幅に短縮される。特に、応答時間が極度に短い、調整スライダの純粋に液圧式の位置調整が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下に、本発明による内燃機関用冷却媒体ポンプの1つの実施例を図示して説明する。
【
図1】本発明による調整ユニットを備えた冷却媒体ポンプの側方断面図である。
【
図2】
図1に示した冷却媒体ポンプを
図1に対して回動させて示す側方断面図である。
【
図3】本発明による調整ユニットの3ポート2位置切換電磁弁の、
図1に対する拡大断面図である。
【0022】
図示の冷却媒体ポンプ11は、アウタケーシング10を有しており、アウタケーシング10内にはらせん状の圧送通路12が形成されており、圧送通路12内には、やはりアウタケーシング10内に形成された軸方向の入口14を介して冷却媒体が吸い込まれるようになっており、冷却媒体は圧送通路12を介して、アウタケーシング10内に形成された接線方向のポンプ出口16へ圧送され、かつ内燃機関の冷却回路内へ圧送される。
【0023】
このためには圧送通路12の半径方向内側で、ラジアルポンプ羽根車として形成された冷却媒体ポンプ羽根車20が駆動軸18に取り付けられており、冷却媒体ポンプ羽根車20が回転することにより、圧送通路12内の冷却媒体が圧送される。冷却媒体ポンプ羽根車20の駆動は、ベルトホイール24に係合しているベルト22を介して行われ、ベルトホイール24は、駆動軸18の、軸方向で冷却媒体ポンプ羽根車20とは反対の側の端部に取り付けられている。ベルトホイール24は、複列式の玉軸受26を介して支持されており、玉軸受26は、アウタケーシング10にシール部材30を介して取り付けられた固定のケーシング部分28に圧着されている。事前固定のために、ケーシング部分28は環状の突出部32を有しており、突出部32は、アウタケーシング10の対応する受容部に嵌め込まれている。
【0024】
冷却媒体ポンプ11を調整することができるようにするためには、冷却媒体ポンプ羽根車20の、軸方向で入口14とは反対の側に、冷却媒体ポンプ11の調整ユニット34が形成されている。この調整ユニット34は、調整ポンプ羽根車38を備えた調整ポンプ36から成っており、調整ポンプ羽根車38は、冷却媒体ポンプ羽根車20と一体的に形成されていて、これに相応して冷却媒体ポンプ羽根車20と共に回転させられる。この調整ポンプ羽根車38は、複数の羽根40を有しており、これらは軸方向で、サイドチャンネルとして調整ポンプケーシング44内に形成された流れ通路42に対向して位置するように配置されている。前記調整ポンプケーシング44内には、流入部(図示せず)と出口46とが形成されており、冷却媒体が流入部を介して流入するか、もしくは圧力を高められた冷却媒体が出口46を介して流出することができるようになっている。
【0025】
調整ポンプケーシング44も、ケーシング部分28と同様に軸方向の内部貫通開口48を有しており、内部貫通開口48を通って駆動軸18が、ケーシング部分28の領域にシール部材50を介在させて延びており、かつケーシング部分28に取り付けられている。このためには調整ポンプケーシング44に、ケーシング部分28に向いた環状の突出部52が形成されており、突出部52は、ケーシング28の対応する受容開口49内に突入しており、これにより事前固定が行われる。次いで調整ポンプケーシング44は、調整ポンプケーシング44を通ってケーシング部分28の対応するねじ山付き孔内へ延びる複数のねじ54(
図2)を介して固定される。
【0026】
冷却媒体ポンプ11の冷却媒体圧送量の調整は調整スライダ56を介して行われ、調整スライダ56の円筒状の周壁58は、冷却媒体ポンプ羽根車20を越えて押しずらすことができ、これにより、冷却媒体ポンプ羽根車20の出口62と圧送通路12との間の環状ギャップ60の自由横断面が調整される。調整スライダ56の移動は、一方では環状ギャップ60の端部により制限され、他方では突出部32により制限され、突出部32の軸方向端部には、調整スライダ56の、環状ギャップ60を完全に開放する位置において周壁58の段部64が当接する。
【0027】
調整スライダ56は、周壁58の他に底部66も有しており、底部66の外周部から周壁58は軸方向で調整ポンプケーシング44とアウタケーシング10との間で、軸方向に引き続く環状ギャップ60に向かって延在している。底部66は、半径方向内側の領域に開口68を有しており、開口68は中空円筒部分70により画定され、中空円筒部分70を介して調整スライダ56は、調整ポンプケーシング44に支持される。底部66の外周部と内周部とには、それぞれ半径方向溝が形成されており、半径方向溝にはそれぞれピストンリング71が配置されており、これらのピストンリング71を介して、調整スライダ56の軸方向で互いに反対の2つの側が、互いにシールされるようになっている。
【0028】
調整スライダ56の、冷却媒体ポンプ羽根車20とは反対の側には第1の圧力室72が位置しており、第1の圧力室72は、軸方向ではケーシング部分28と調整スライダ56の底部66とにより画定され、半径方向外側に対してはアウタケーシング10もしくはケーシング部分28の環状の突出部32により画定され、かつ半径方向内側に対しては調整ポンプケーシング44により画定される。底部66の、冷却媒体ポンプ羽根車20に面した側には第2の圧力室74が形成され、第2の圧力室74は、軸方向では底部66と調整ポンプケーシング44とにより画定され、半径方向外側に対しては調整スライダ56の周壁58により画定され、かつ半径方向内側に対しては調整ポンプケーシング44により画定される。両圧力室72,74内で調整スライダ56の底部66に加えられる圧力の差に応じて、調整スライダ56の周壁58が相応して環状ギャップ60内に押し込まれるか、または環状ギャップ60から押し出される。
【0029】
このために必要な圧力差は調整ポンプ36により形成され、この場合、相応の圧力が、3ポート2位置切換電磁弁78の閉鎖部材76の位置に応じて各圧力室72,74に供給される。このためにはケーシング部分28に電磁弁78用の受容開口80が形成されており、受容開口80内に、電磁弁78の流れケーシング82が受容される。
【0030】
電磁弁78は、
図3に示されており、電磁式のアクチュエータ84と、弁ユニット86とから成っている。アクチュエータ84は、コイル支持体88に配置されたコイル90を有しており、コイル90の内部にはコア92が位置しており、コイル90は、軸方向と半径方向とにおいて、電磁回路の磁束ガイド部材94により包囲されている。コイル90に給電すると、軸方向に可動の可動子96が、コア92の方向に引き付けられる。この運動は、コア92に形成された凹部100内でコア92と可動子96との間に配置されたばね98の力に抗して行われ、ばね98は、コア92内に取り付けられた磁化不能のピン102を包囲しており、ピン102は、可動子96用のストッパとして用いられ、可動子96は、コア92に向かって押しずらされた位置でコア92には接触しないようになっている。それというのも、これにより望ましくない接着力が生じる恐れがあるからである。流れケーシング82内に取り付けられた滑りスリーブ104内で支持された可動子96は、孔106を有しており、孔106を介して、可動子96とコア92との間の室が、滑りスリーブ104を挟んで反対の側の室に接続されており、これにより、電磁弁78の内部で可動子96とコア92との間に存在している流体が、可動子96がコア92に向かって動いた時に圧縮されて、この動きに抗して作用する力を生ぜしめる、ということが防止され、代わりに流体は、孔106を通って流出するようになっている。
【0031】
弁ユニット86は、流れケーシング82と、可動子96の端部に取り付けられた弁棒108とから成り、弁棒108の端部には閉鎖部材76が取り付けられていて、流れケーシング82内に配置された2つの弁座110,112と協働するようになっており、この場合、弁座110は、ケーシング部分28内の受容開口80の端部に直接形成されてもよい。このために閉鎖部材76は、互いに反対の側に位置する各軸方向端部に形成された2つの閉鎖面114,116を有しており、これらの閉鎖面114,116のうち、第1の閉鎖面114は、アクチュエータ84の非給電時に第1の弁座110に着座するようになっており、他方の閉鎖面116は、アクチュエータ84の給電時に軸方向で第2の弁座112に着座するようになっている。
【0032】
第1の弁座110は、ケーシング部分28内に位置する流れケーシング82の第1の流れ接続部118と、第2の流れ接続部120との間に配置されており、第2の弁座112は、第2の流れ接続部120と第3の流れ接続部122との間に配置されており、これにより、最初の2つの流れ接続部118,120間か、または第2の流れ接続部120と第3の流れ接続部122との間に接続が生じるようになっている。第1の圧力室72に、加圧された流体を供給することができるようにするためには、ケーシング部分28内に簡単な孔の形態の第1の通路124が形成されており、第1の通路124は、第2の流れ接続部120から第1の圧力室72内へ通じている。第1の流れ接続部118は、ケーシング部分28内に形成された第2の通路126内へ開口しており、第2の通路126は、調整ポンプケーシング44内で調整ポンプ36の出口46まで続いている。第1の流れ接続部118が第2の流れ接続部120に流体接続されると、これに相応して第1の圧力室72へ通路124,126を介して、加圧された流体が調整ポンプ36の流れ通路42から供給され、これにより、調整スライダは環状ギャップ60を閉じる位置へ押しずらされることになる。このことは、閉鎖部材76がその第2の閉鎖面116でもって第2の弁座112に着座したときに行われ、この着座は、アクチュエータ84が給電され、これに相応して可動子がその戻り位置に位置しているときに行われる。これに相応して、調整スライダ56が環状ギャップ60内へ完全に押しずらされ、これにより、冷却媒体ポンプ11の冷却媒体圧送は中断されることになる。
【0033】
冷却媒体ポンプ11が運転中にポンプ出口16に対して最大の冷却媒体量を圧送すべきときには、冷却媒体ポンプ羽根車20の出口62のところの環状ギャップ60が完全に開放される。このためには、アクチュエータ84には給電されず、これによりばね98の力に基づき閉鎖部材76がその第1の閉鎖面114でもって第1の弁座110に対して押圧され、これにより、第1の圧力室72に対する調整ポンプ36の出口46の接続が中断され、代わりにケーシング部分28を通り半径方向内側に向かって貫通開口48まで延びる第3の通路128に開口する第3の流れ接続部122に対する第2の流れ接続部120ひいては第1の圧力室72の接続部が開放される。前記貫通開口48は、調整ポンプケーシング44内で軸方向に延びておりかつ冷却媒体ポンプ羽根車20の直後まで、調整ポンプケーシング44全体を貫通して延びている。冷却媒体ポンプ羽根車20は、1つまたは複数の軸方向孔130を有しており、軸方向孔130を通って冷却媒体が冷却媒体ポンプ11の入口14に流入することができるようになっているので、冷却媒体は、第1の圧力室から冷却媒体ポンプ11により吸い出される。第1の弁座110が閉じられた結果、調整ポンプ36は閉じられた第1の流れ接続部118に対して圧送することになる。よって、流れ通路42全体において圧力が上昇し、この圧力は、調整ポンプ36の流入領域にも作用する。ただし、この流入領域において調整ポンプケーシング44内には、孔の形態の接続通路132が流れ通路42から第2の圧力室74まで形成されているので、上昇した前記圧力は第2の圧力室74内にも形成されることになる。第2の圧力室74内でも圧力が上昇した結果、調整スライダ56の底部66に圧力差が生じ、この圧力差に基づき、調整スライダ56は環状ギャップ60を開放する位置へ押しずらされ、ひいては冷却媒体ポンプ11の最大圧送量が保証されるようになっている。
【0034】
電磁弁78の電気供給部が故障した場合にも、調整スライダ56は相応して同じ位置を占めることになるので、この非常運転状態でも、冷却媒体ポンプ11の最大圧送量は保証され、このために戻しばねまたは別の非液圧的な力が必要になることはないと考えられる。
【0035】
第2の圧力室74内の圧力の極端に激しい上昇は、とりわけ調整ポンプケーシング44と周壁58との間の漏れにより回避され、調整ポンプ36により追加的に圧送された冷却媒体も、やはり冷却回路内への圧送用に利用される。
【0036】
冷却媒体流量の減少が再びエンジン制御装置により要求される場合、例えば冷間始動後の内燃機関の暖機運転中といった場合には、電磁弁78に再給電し、これにより調整ポンプ36の出口46に生じている圧力が再び第1の圧力室72内へ伝達される一方で、同時に第2の圧力室74内の圧力は低下する。それというのも、流入領域には冷却媒体の吸込みにより低下させられた圧力が生じているからである。この場合はまず、第2の圧力室74内の冷却媒体も吸い出される。この状態では相応して、調整スライダ56の底部66のところに再び圧力差が生じており、この圧力差により、調整スライダ56が環状ギャップ60内へ押しずらされ、ひいては冷却回路内の冷却媒体流が中断されることになる。第1の圧力室72内の圧力上昇が高まると、しばらくして流れ通路42内および第2の圧力室74内の圧力も上昇するが、これにより戻されることはない。それというのも、第2の圧力室74から漏出する量は、第1の圧力室72から漏出する量よりも多く、変位させるには付加的に摩擦力を克服せねばならないと考えられるからである。これに相応して調整スライダ56は所望の位置に留まっており、極端に激しい圧力上昇が生じることはない。
【0037】
付加的に、圧送される冷却媒体流量を完全に調整することができるようにするためには、比例動作式または可変タイミング制御式の電磁弁78が使用され、これにより、弁78を複数の中間位置へ移動させることも可能になり、比例弁を使用すると、調整スライダ56のあらゆる位置に対して力の均衡が得られることから、相応して環状ギャップ60の通流横断面の完全な調整が可能になる。タイミング制御式の電磁弁の場合には、第1および第2の圧力室72,74内の圧力が、弁の開閉の時間的な比率により定められる。これに相応して低く保たれる周波数に基づいて弁が往復運動するように制御され、周波数により、弁を介して時間的な流量を変化させて調整することができるようになっている。このことは、より正確な調整を可能にする。
【0038】
説明した調整ユニットは、電磁弁の組込みと、この電磁弁の3ポート2位置切換弁としての構成とに基づき、とりわけコンパクトに形成されていて、簡単かつ廉価に製造・組立可能である。調整ポンプを調整スライダの圧力室に液圧的に接続するための追加導管は省かれてよい。それというのも、追加導管は極めて短い距離にわたり簡単な孔として、2つのインナケーシング部分内に形成されてよいからである。調整スライダの、純粋に液圧的な変位は、短い応答時間で極めて迅速に行われる。付加的に、調整スライダの、環状ギャップを閉じる位置への変位に必要とされる所要の力が、戻しばねの省略により軽減され、これにより、より迅速な変位が、より小さな横断面でもって可能である。
【0039】
独立請求項の保護範囲が、説明した実施例に限定されていないことは明白である。特に別の構成の調整ポンプの別のケーシング分割も考えられる。また、通路案内または圧力室の画定も、独立請求項の保護範囲を逸脱すること無しに変更可能である。付加的に、例えば両ポンプ羽根車の2ピース構成も考えられる。