【実施例1】
【0060】
(実施例1:幹細胞を維持培養した培地の上清の調製)
5mLのL−グルタミン(25030−081、Invitrogen)、5mLの非必須アミノ酸溶液(11140−050、Invitrogen)、1mLの2−メルカプトエタノール(21985−023、Invitrogen)、2.5mLのペニシリン/ストレプトマイシン(15140−122、Invitrogen)にDMEM/F12(10565−018、Invitrogen)、及び代替血清(KSR:KnockOut Serum Replacement、登録商標、10828028、Invitrogen)を加えて、全量が500mLの培地を作製した。当該培地に、0.2mLの10μg/mL bFGF(basic fibroblast growth factor、R and D)を添加し、幹細胞用培地とした。幹細胞用培地におけるbFGFの濃度は、4ng/mLであった。
【0061】
上記のように作製した幹細胞用培地を用いて、接着培養用シャーレ上のフィーダー細胞上で、ヒトiPS細胞を接着維持培養した。ヒトiPS細胞は、1週間ごとに継代した。継代の際には、ヒトiPS細胞を、0.25%トリプシン、0.1mg/mLのコラゲナーゼIV、1mmol/LのCaCl
2、及び20%のKSRを含む剥離溶液で処理した。
【0062】
上記の通り維持培養されたヒトiPS細胞を、ES細胞解離液(TrypLE Select、登録商標、ThermoFisher)を用いて、接着培養用シャーレから剥がした。剥がしたヒトiPS細胞を、ラミニン(ニッピ)でコートしたディッシュ上に播種した。その後、10μmol/LのROCK阻害剤を添加したTeSR2培地(Stem cell)を用いて、ヒトiPS細胞を1週間培養した。培地交換は、毎日行った。
【0063】
その後、培地を幹細胞用培地に置換し、二日後に幹細胞用培地の上清を回収した。回収した幹細胞用培地の上清を1500回転で5分遠心し、培地の上清を再度回収した後に3000回転で3分遠心し、遠心後の幹細胞用培地の上清を0.22μmのフィルターでろ過した。ろ過後の幹細胞用培地の上清を、実施例1に係る上清溶液とした。
【0064】
また、維持培養されたiPS細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4、及びTRA 1−60が陽性であることを確認した。
【0065】
(実施例2:幹細胞を維持培養した培地の上清の調製)
実施例1と同様にヒトiPS細胞を維持培養した。その後、実施例1と同様に、ヒトiPS細胞を接着培養用シャーレから剥がし、シングルセルまで分割した。次に、ジェランガム及び10μmol/LのROCK阻害剤(Selleck)を添加してゲル化した幹細胞用培地にヒトiPS細胞を播種し、ヒトiPS細胞を21日間浮遊培養した。その間、二日に一度、ゲル化した幹細胞用培地を培養器に補充した。
【0066】
その後、ヒトiPS細胞が懸濁しているゲル化幹細胞用培地をメッシュフィルターでろ過し、細胞塊を除去した。さらに、ろ過されたゲル化幹細胞用培地を1500回転で5分遠心して細胞及びゲルを沈殿させ、遠心後の幹細胞用培地の上清を再度回収した後に3000回転で3分遠心し、遠心後の幹細胞用培地の上清を0.22μmのフィルターでろ過した。ろ過後の幹細胞用培地の上清を、実施例2に係る上清溶液とした。
【0067】
また、維持培養されたiPS細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4、及びTRA 1−60が陽性であることを確認した。
【0068】
(実施例3:幹細胞を維持培養した培地の上清の調製)
実施例1と同様にヒトiPS細胞を維持培養した。その後、実施例1と同様に、ヒトiPS細胞を接着培養用シャーレから剥がし、シングルセルまで分割した。次に、ジェランガム、及び100μmol/LのROCK阻害剤(Selleck)を添加してゲル化した幹細胞用培地にヒトiPS細胞を播種し、ヒトiPS細胞を14日間浮遊培養した。その間、二日に一度、ゲル化した幹細胞用培地を培養器に補充した。
【0069】
その後、ヒトiPS細胞が懸濁しているゲル化幹細胞用培地をメッシュフィルターでろ過し、細胞塊を除去した。さらに、ろ過されたゲル化幹細胞用培地を1500回転で遠心して細胞及びゲルを沈殿させ、遠心後の幹細胞用培地の上清を再度回収した後に3000回転で3分遠心し、遠心後の幹細胞用培地の上清を0.22μmのフィルターでろ過した。ろ過後の幹細胞用培地の上清を、実施例3に係る上清溶液とした。
【0070】
また、維持培養されたiPS細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4、及びTRA 1−60が陽性であることを確認した。
【0071】
(比較例:分化した細胞を培養した培地の上清の調製)
特開2016−128396号公報に記載の実施例に準じてヒトiPS細胞を培養した。すなわち、実施例1と同じ幹細胞用培地を用いて、接着培養用シャーレ上のフィーダー細胞上で、ヒトiPS細胞を接着維持培養した。ヒトiPS細胞は、1週間ごとに継代した。継代の際には、ヒトiPS細胞を、0.25%トリプシン、0.1mg/mLのコラゲナーゼIV、1mmol/LのCaCl
2、及び20%のKSRを含む剥離溶液で処理した。
【0072】
上記の通り培養されたヒトiPS細胞を、ES細胞解離液(TrypLE Select、登録商標、ThermoFisher)を用いて、接着培養用シャーレから剥がした。剥がしたヒトiPS細胞を、非接着培養用シャーレに入れたゲル化していないヒトiPS細胞中で1週間浮遊培養した。この結果、胚様体(EB)が形成された。形成された胚様体を接着培養用シャーレ上に播種し、10%FBSを含有するDMEM中で1週間成長(outgrowth)させた。
【0073】
次に、細胞を0.05%トリプシン−EDTA溶液を用いて接着培養用シャーレから剥がし、シングルセルまで分割された細胞を新たな接着培養用シャーレに播種した。その後、培地として10%FBSを含有するDMEMを用い、細胞を一週間培養した。
【0074】
細胞が70%から80%以上コンフルエントになったことを確認した後に、培地を無血清培地(FBSを含まないDMEM)に置換し、2日間培養後、培地の上清を回収した。回収した培地の上清を1500回転で5分遠心し、培地の上清を再度回収した後に3000回転で3分遠心し、培地の上清を再度回収したものを比較例に係る上清溶液とした。
【0075】
また、培養された細胞は、未分化マーカーであるNANOG、OCT3/4、及びTRA 1−60が陰性であり、分化した細胞であることが確認された。
【0076】
(実施例4:線維芽細胞の増殖性試験)
増殖培地Aとして、10%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン添加DMEM培地を用意した。次に、成人由来正常ヒト線維芽細胞(KF−4109、Strain No.01035、クラボウ)を、濃度が5×10
3細胞/0.1mL/ウェルとなるよう増殖培地Aで懸濁し、96ウェルプレートに播種して、CO
2インキュベーター内(5%CO
2、37℃)で1日間培養した。
【0077】
試験培地Aとして、1%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン添加DMEM培地を用意した。次に、実施例1から3及び比較例に係る上清溶液のそれぞれと、試験培地Aと、を、体積比で、10.00:90.00となるよう混合し、濃度が10.00v/v%の実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Aを得た。一部のウェル内の増殖培地Aを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Aのそれぞれに置換した。
【0078】
陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを、1%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマイシンを添加していないDMEM培地(無添加試験培地A)に置換した。また、陰性コントロールとして、DMEM/F12と、試験培地Aと、を、体積比で、10.00:90.00となるよう混合して得られた希釈試験培地Aに、一部のウェルの増殖培地Aを置換した。
【0079】
置換された培地で、1日間及び3日間、線維芽細胞を培養し、生細胞数測定試薬SF(Cat.No.07553−15、ナカライテスク)及びプレートリーダー(Varioskan MicroPlate Reader、Thermo Scientific)を用いて、WST−8法で生細胞数測定を行った。結果を
図1及び
図2に示す。濃度が10.00v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Aを用いた場合、無添加試験培地A、希釈試験培地A、及び比較例に係る上清添加培地Aを用いた場合と比較して、線維芽細胞が優位に増殖したことが確認された。また、幹細胞の培地の上清が、細胞の生存率の上昇に有効であることが示唆された。さらに、継代時のシャーレからの剥離の際、あるいはシングルセルに分割される際には、細胞には、圧力等の物理的ストレスと、剥離剤により化学的なストレスが加えられる。しかし、これらのストレスを受けた細胞が、実施例に係る上清添加培地によって増殖したことから、実施例に係る上清添加培地が、細胞が受けたストレスを緩和し、細胞をストレスから保護し、細胞を安定化し、生存率を向上させることが示唆された。これらの結果から、実施例に係る上清添加培地が、細胞に含まれる核酸、タンパク質、タンパク質複合体、リポタンパク質、リボソーム、及び生体膜を保護することが示唆された。ここで、生体膜は、細胞膜を含む。
【0080】
(実施例5:線維芽細胞によるI型コラーゲン及びヒアルロン酸産生試験)
実施例4と同様に、増殖培地Aで成人由来正常ヒト線維芽細胞を1日間培養した。その後、濃度が1.00v/v%、10.00v/v%又は100.0v/v%である以外は、実施例4と同様に、一部のウェル内の増殖培地Aを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Aのそれぞれに置換した。
【0081】
陽性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを置換しなかった。陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを、無添加試験培地Aに置換した。また、陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Aを、実施例4と同様に調整した希釈試験培地Aに置換した。
【0082】
培地を交換した後、3日間、線維芽細胞を培養し、培地の上清を回収し、−80℃で保存した。その後、培地の上清を解凍し、培地の上清のI型コラーゲン濃度を、ヒトコラーゲンタイプ1 ELISA kit(Cat.No.EC1−E105)で測定した。また、培地の上清のヒアルロン酸濃度を、DueSet Hyaluronan(Cat.No.DY3614、R&D Systems)を用いて測定した。結果を
図3、
図4及び
図5に示す。
【0083】
図3及び
図4において、右側の補正されたバーは、線維芽細胞を培養する前から元々培地に含まれていたコラーゲンの量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバーは、補正前のデータを示している。
図3に示すように、濃度が1.0v/v%の実施例1に係る上清添加培地Aを用いた場合、無添加試験培地A、増殖培地A、希釈試験培地A、及び比較例に係る上清添加培地Aを用いた場合と比較して、I型コラーゲンの産生量が優位に増加していた。
図4に示すように、濃度が1.0v/v%及び100.0v/v%の実施例3に係る上清添加培地Aを用いた場合、増殖培地Aを用いた場合と比較して、I型コラーゲンの産生量が顕著に増加していた。したがって、幹細胞の培地の上清が、コラーゲンの産生を促進し、皮膚のシワ及びたるみ形成防止、及び改善に有効であることが示唆された。
【0084】
図5において、右側の補正されたバーは、線維芽細胞を培養する前から元々培地に含まれていたヒアルロン酸の量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバーは、補正前のデータを示している。濃度が10.0v/v%及び100.0v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Aを用いた場合、無添加試験培地A、希釈試験培地A、及び比較例に係る上清添加培地Aと比較して、ヒアルロン酸の産生量が顕著に増加していた。したがって、幹細胞の培地の上清が、ヒアルロン酸の産生を促進し、ヒアルロン酸の減少によるシワ及びたるみの形成防止、及び改善に有効であることが示唆された。
【0085】
(実施例6:表皮細胞の遊走性試験)
増殖培地Bとして、増殖添加剤(10μg/mLのインスリン、0.1ng/mLのhEGF、0.67μg/mLのハイドロコーチゾン、4μL/mLのウシ脳下垂体抽出液BPE)及び抗菌剤(50μg/mLのゲンタマイシン、50ng/mLのアンフォテリシン)を含む500mLの表皮細胞培地(HuMedia−KG2、クラボウ)を用意した。
【0086】
成人由来正常ヒト表皮細胞を10μg/mLのMitomycin C(Cat.No.20898−21、Nacalai tesque)で2時間処理し、細胞分裂を停止させた。次に、ヒト表皮細胞を、濃度が4×10
4細胞/0.1mL/ウェルとなるよう増殖培地Bで懸濁し、細胞の遊走能を測定するキット(Oris Cell Migration Assay、登録商標)のコラーゲンコート済みプレートに播種して、CO
2インキュベーター内(5%CO2、37℃)で1日間培養し、プレート上のストッパーで塞がれていないストッパーの外縁部に表皮細胞を定着させた。その後、ストッパーをプレート上から撤去した。
【0087】
試験培地Bとして、500mLの表皮細胞培地に抗菌剤(50μg/mLのゲンタマイシン及び50nm/mLのアンフォテリシン)を添加した培地を用意した。次に、実施例1から3及び比較例に係る上清溶液のそれぞれと、試験培地Bと、を、体積比で、10.0:90.0、1.0:99.0となるよう混合し、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Bを得た。一部のプレート上の増殖培地Bを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Bのそれぞれに置換した。
【0088】
一部のプレート上の増殖培地Bを、陰性コントロールとして、増殖添加剤を添加していない表皮細胞培地(無添加試験培地B)に置換した。また、陰性コントロールとして、DMEM/F12と、試験培地Bと、を、体積比で、10.0:90.0、1.0:99.0となるよう混合して得られた希釈試験培地Bに、一部のプレート上の増殖培地Bを置換した。
【0089】
創傷治癒の過程では、傷に向かって表皮細胞が遊走して創傷が収縮する。本実施例においては、ストッパーで塞がれていたところに表皮細胞が遊走したか否かを、プレートリーダーを用いて分析した。具体的には、培地を置換してから23時間後、生細胞染色試薬(Calcein AM、Cat.NO.341−07901、DOJINDO)で表皮細胞を染色し、プレートリーダー(Varioskan MicroPlate Reader、Thermo Scientific)を用いて、波長485nmの励起光に対する波長538nmの蛍光を測定した。
【0090】
結果を
図6及び
図7に示す。濃度が1.0v/v%及び10.0v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Bを用いた場合、無添加試験培地B、希釈試験培地B、及び比較例に係る上清添加培地Bと比較して、表皮細胞の遊走能の有意な促進効果が認められた。したがって、幹細胞の培地の上清が、創傷治癒に有効であることが示された。また、幹細胞の培地の上清が、例えば、紫外線暴露による皮膚損傷で生じる皮膚表層のしみ及び不均一な肌色の形成の防止及び改善に有効であることが示唆された。また、幹細胞の培地の上清が、細胞を安定化し、生存率の上昇に有効であることが示唆された。さらに、継代時のシャーレからの剥離の際、あるいはシングルセルに分割される際には、細胞には、圧力等の物理的ストレスと、剥離剤により化学的なストレスが加えられる。しかし、これらのストレスを受けた細胞が、実施例に係る上清添加培地によって増殖したことから、実施例に係る上清添加培地が細胞が受けたストレスを緩和し、細胞をストレスから保護し、細胞を安定化し、生存率を向上させることが示唆された。これらの結果から、実施例に係る上清添加培地が、細胞に含まれる核酸、タンパク質、タンパク質複合体、リポタンパク質、リボソーム、及び生体膜を保護することが示唆された。ここで、生体膜は、細胞膜を含む。
【0091】
(実施例7:毛乳頭細胞の増殖性試験)
増殖培地Cとして、専用添加剤(牛胎児血清、インスリン・トランスフェリン・トリヨードサイロニン混液、牛下垂体抽出液、サイプロテロンアセテート)添加済みの毛乳頭細胞専用培地(Cat.No.TMTPGM−250、TOYOBO)を用意した。次に、正常ヒト毛乳頭細胞(Cat.No.CA60205a、Lot.No.2868、TOYOBO)を、濃度が1.2×10
4細胞/0.3mL/ウェルとなるよう増殖培地Cで懸濁し、typeIコラーゲンコート48ウェルプレートに播種して、CO
2インキュベーター内(5%CO
2、37℃)で1日間培養した。
【0092】
実施例1から3及び比較例に係る上清溶液のそれぞれと、添加剤を添加していない毛乳頭細胞専用培地(無添加試験培地C)と、を、体積比で30.0:70.0となるよう混合し、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Cを得た。一部のウェル内の増殖培地Cを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Cのそれぞれに置換した。
【0093】
陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Cを、添加剤を添加していない毛乳頭細胞専用培地(無添加試験培地C)に置換した。また、陰性コントロールとして、DMEM/F12と、無添加試験培地Cと、を、体積比で30.0:70.0となるよう混合して得られた希釈試験培地Cに、一部のウェルの増殖培地Cを置換した。
【0094】
置換された培地で、3日間、毛乳頭細胞を培養し、WST−8法で生細胞数測定を行った。結果を
図8に示す。濃度が30.0v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Cを用いた場合、無添加試験培地C及び希釈試験培地Cを用いた場合と比較して、毛乳頭細胞が優位に増殖したことが確認された。したがって、幹細胞の培地の上清が、薄毛の治療、脱毛の予防、毛生促進、及び発毛促進等の育毛及び発毛効果を有することが示唆された。
【0095】
(実施例8:毛乳頭細胞によるFGF−7及びVEGF産生試験)
実施例7と同様に、増殖培地Cで正常ヒト毛乳頭細胞を1日間培養した。その後、濃度が0.3v/v%、30.0v/v%、又は100.0v/v%である以外は、実施例7と同様に、一部のウェル内の増殖培地Cを、実施例1から3及び比較例に係る上清添加培地Cのそれぞれに置換した。
【0096】
陰性コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Cを、無添加試験培地C及び希釈試験培地Cのそれぞれに置換した。また、参考コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Cを、毛乳頭細胞専用培地に100μmol/Lのアデノシンを添加したアデノシン添加培地、及び毛乳頭細胞専用培地に30μmol/Lのミノキシジルを添加したアデノシン添加培地のそれぞれに置換した。また、ミノキシジルのビヒクル・コントロールとして、一部のウェルの増殖培地Cを、毛乳頭細胞専用培地に0.1%DMSOを添加したDMSO添加培地に置換した。
【0097】
培地を交換した後、3日間、毛乳頭細胞を培養し、培地の上清を回収し、−80℃で保存した。その後、培地の上清を解凍し、培地の上清の線維芽細胞成長因子7(FGF−7)濃度を、FGF−7 Human ELISA kit(Cat.No.ab100519、abcam)で測定した。また、培地の上清の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)濃度をHuman VEGF Quantikine ELISA(Cat.No.DVE00、R&D Systems)で測定した。結果を
図9及び
図10に示す。
【0098】
図9において、右側の補正されたバーは、毛乳頭細胞を培養する前から元々培地に含まれていたFGF−7の量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバーは、補正前のデータを示している。濃度が0.3v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Cを用いた場合、無添加試験培地C、希釈試験培地C、及び比較例に係る上清添加培地Cを用いた場合と比較して、FGF−7の産生量が有意に増加したのが確認された。
【0099】
図10において、右側の補正されたバーは、毛乳頭細胞を培養する前から元々培地に含まれていたVEGFの量を除く補正をされたデータを示している。左側の生データのバーは、補正前のデータを示している。濃度が30.0v/v%及び100.0v/v%の実施例1から3に係る上清添加培地Cを用いた場合、希釈試験培地C及び比較例に係る上清添加培地Cを用いた場合と比較して、VEGFの産生量が有意に増加したのが確認された。