(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮空気中に混入した塵埃及び液体を除去するための中空状をしたフィルタエレメントであって、該フィルタエレメントは、中空状をしたフィルタ集合体と、該フィルタ集合体の軸線方向の一端である上端に取り付けられた上部エンドキャップと、反対側の下端に取り付けられた下部エンドキャップとを有し、
前記フィルタ集合体は、圧縮空気が導入される中央空間部と、該中央空間部を取り囲む多孔状をした中空の内側コア部材と、該内側コア部材の外周を取り囲む中空の内側濾過部材と、該内側濾過部材の外周を取り囲む多孔状をした中空の外側コア部材と、該外側コア部材の外周を取り囲む中空の外側濾過部材とを有し、前記内側濾過部材は、蛇腹状に折曲した濾材を筒形に丸めた形状をなし、前記外側濾過部材は円筒状をなし、該外側濾過部材の空隙率は内側濾過部材の空隙率より大きく、
前記上部エンドキャップは、該上部エンドキャップの中心側から外周側に向けて順に、前記中央空間部の上端部に嵌合する中空の内周壁と、前記外側コア部材の上端部外周を取り囲む中間壁と、前記外側濾過部材の上端部外周を取り囲む外周壁とを有し、前記中間壁の高さは、前記外周壁及び内周壁の高さより低く、
前記上部エンドキャップの内部には、前記中間壁が埋没する深さの接着剤が充填されていて、該接着剤の中に前記フィルタ集合体の上端部が差し込まれると共に、前記中間壁が前記外側コア部材の回りで前記外側濾過部材の内部に食い込んでおり、その状態で前記フィルタ集合体と前記上部エンドキャップとが前記接着剤で相互に接着されている、
ことを特徴とするフィルタエレメント。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気によって空気圧シリンダや空気圧モータ等の空気圧アクチュエータを作動させる場合、塵埃や、油分及び水分等の液体が混入していない清浄な圧縮空気を使用することが要求される。このため、通常、前記空気圧アクチュエータに圧縮空気を供給する空気圧回路には、該圧縮空気から前記塵埃や液体等の異物を除去するため、例えば特許文献1に開示されているような空気圧フィルタが使用される。この空気圧フィルタは、流入口と流出口とを有するフィルタケースの内部に、異物を除去するための中空のフィルタエレメントを有している。
【0003】
従来のフィルタエレメントは、一般に、
図16及び
図17に示すような構成を有している。このフィルタエレメント40は、空隙率の異なる中空状をした内外2つの濾過部材42,43と、パンチングメタルからなる筒状をした内外2つのコア部材44,45とを、交互に同軸状に配設して形成したフィルタ集合体41の上端及び下端に、それぞれエンドキャップ46,47を接着剤49で固定することにより形成されている。
【0004】
前記内外2つの濾過部材42,43のうち、内側濾過部材42は、蛇腹状に折曲した濾材を、折目を中心軸線Lと平行に向けた姿勢で筒状に丸めたものであり、これに対して外側濾過部材43は、均一厚みを有する平板状の濾材を筒状に丸めたものである。
【0005】
前記フィルタエレメント40において、圧縮空気が上部エンドキャップ46を通じて該フィルタエレメント40の中央の中空部48内に供給されると、該圧縮空気は、
図16に矢印で示すように、前記内側濾過部材42から外側濾過部材43へと流れる間に濾過され、前記異物が除去されることにより浄化される。
【0006】
一方、前記圧縮空気から分離された油分や水分等の液体は、前記濾過部材42,43に沿って流下する間に、小さい粒子同士が結合を繰り返すことにより次第に大きな液体粒子に成長し、前記下部エンドキャップ47まで流下したあと、該下部エンドキャップ47から前記フィルタケースの内部に順次滴下し、該フィルタケースの下端部のドレン排出口からドレンとして排出される。
【0007】
ところが、前記従来のフィルタエレメント40は、圧縮空気の流速が速い場合、前記濾過部材42,43の下端部近辺や下部エンドキャップ47の上面近辺等において、前記濾過部材42,43中に高密度で含まれる液体や、前記下部エンドキャップ47内に溜まった液体が、前記圧縮空気の速い流れと接触して飛散し、浄化後の該圧縮空気中に再び混入し易いという問題があった。
【0008】
そこで、出願人は、このような問題を解決するため、特願2015−096629号により、濾過部材で捕集された液体がフィルタエレメントの下端部において浄化後の圧縮空気中に再び混入するのを防止することができるフィルタエレメントを提案した。
【0009】
ところが、その後の実験等により、前記液体の再飛散の問題は、フィルタエレメント40の下端部だけでなく、上端部においても発生することが分かった。それは、
図18に示すように、フィルタ集合体41の上端に上部エンドキャップ46を接着剤49で接着したとき、該接着剤49の分布むらによって部分的に窪み50が形成され、接着剤49の表面付近では空気の流れが遅いためにこの窪み50が吹き溜まりとなり、濾過部材42,43で捕集された液体の一部がその中に滞留し、滞留した液体51は、徐々に凝集して体積及び重量を増加させたあと、次第に流下して速い空気の流れと接触することによって外側濾過部材43内に浸透し、該外側濾過部材43の外周面まで達したあと、該外周面から空気中に再飛散するというものである。
【0010】
前記窪み50が形成される原因は、前記フィルタ集合体41の上端に上部エンドキャップ46を接着剤49で接着するとき、前記濾過部材42,43やコア部材44,45等で押されて流動する接着剤49が狭い隙間などに進入しにくいため、その分布が一様にならないためと推測される。
即ち、前記フィルタ集合体41の上端に上部エンドキャップ46を接着する場合、
図19aに示すように、上下逆向きにした上部エンドキャップ46の内部に粘性を有する接着剤49を一定の量(深さ)充填し、
図19b及び19cに示すように、該接着剤49の中に前記フィルタ集合体41の上端部を下向きにして差し込んだあと、該接着剤49を硬化させるが、その際、該接着剤49は、前記濾過部材42,43やコア部材44,45等で押されることにより、
図19bに矢印で示すように、上部エンドキャップ46の内部を内周方向や外周方向及び円周方向等に向けて流動すると共に、軸線L方向(深さ方向)にも次第に盛り上がりながら、蛇腹状に折曲された内側濾過部材42の各隙間内に進入し、外側濾過部材43の内部にも浸透する。空隙率の小さい内側濾過部材42の内部には殆ど浸透しない。
【0011】
このとき前記接着剤49は、
図17に示すように、前記内側濾過部材42の蛇腹状に連なる折曲片42a,42a間の隙間のうち間隔が広い部分や、内側コア部材44と上部エンドキャップ46の筒部46aとの間の広い隙間、あるいは、空隙率が低い外側濾過部材43の内部などには、抵抗が小さいため入り込み易いが、前記折曲片42a,42a間の狭い隙間部分や、蛇腹の折り山42bとコア部材44,45との間の狭い隙間などには、抵抗が大きいため入り込みにくく、接着剤49が多く入り込んだ部分では、該接着剤49が高く盛り上がることになる。その結果、
図18に示すように、該接着剤49の分布むらによって部分的に窪み50が形成され、その部分が吹き溜まりになって液体の再飛散が発生するものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1−3には本発明に係るフィルタエレメント1が示されている。このフィルタエレメント1は、中空状をしたフィルタ集合体2と、該フィルタ集合体2の軸線L方向の一端である上端に取り付けられた円環状の上部エンドキャップ3と、反対側の下端に取り付けられた円形の皿形をした下部エンドキャップ4とを有している。
【0020】
前記フィルタ集合体2は、圧縮空気が導入される中央空間部10と、該中央空間部10を取り囲む多孔状をした中空の内側コア部材11と、該内側コア部材11を介して前記中央空間部10を取り囲む中空の内側濾過部材12と、該内側濾過部材12の外周を取り囲む多孔状をした中空の外側コア部材13と、該外側コア部材13の外周を取り囲む中空の外側濾過部材14とを有している。そして、前記上部エンドキャップ3の中空の内周壁20から前記フィルタ集合体2の中央空間部10内に導入された圧縮空気が、前記内側濾過部材12から外側濾過部材14へと通過する間に濾過され、油分や水分等の液体と塵埃とが除去されることにより浄化された圧縮空気が、前記外側濾過部材14から外部に流出するように構成されている。
【0021】
前記内側コア部材11及び外側コア部材13は、パンチングメタルを円筒形に丸めて形成したもので、前記フィルタ集合体2の強度を保つ役目を果たすものである。なお、前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14も円筒形をしている。
【0022】
前記内側濾過部材12は、前記外側濾過部材14よりも圧縮空気の流れの上流側に位置し、主として、該圧縮空気中に含まれる塵埃と、ミスト状あるいは液滴状をした油分や水分等の液体とを捕集するものである。この内側濾過部材12は、蛇腹状に折曲した濾材を円筒状に丸めることにより形成されたもので、この内側濾過部材12が、折山部分12bを前記軸線Lと平行に向けた姿勢で前記内側コア部材11と外側コア部材13との間に介設されている。
前記内側濾過部材12は、蛇腹状に連なる折曲片12aで形成されているため、平坦なシート状の濾材を円筒状に丸めたものに比べ、濾過面積が大きい。
【0023】
一方、前記外側濾過部材14は、前記内側濾過部材12よりも圧縮空気の流れの下流側に位置し、主として、前記内側濾過部材12で捕集された油分や水分等の液体を前記下部エンドキャップ4まで導く役目を果たすもので、前記外側コア部材13の外周に、該外側コア部材13を介して前記内側濾過部材12の外周を取り囲むように配設されている。
【0024】
前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14は、例えば、直径が数μm−数十μm程度の微細な化学繊維を、規則的にあるいは不規則に積層して形成した繊維シートや、積層した化学繊維を接着剤や融着あるいは絡着等の方法で接合して形成した不織布、セラミック製微細粒子の集合体、あるいは合成樹脂製多孔質シート等により形成することができる。また、前記内側濾過部材12は、前記外側濾過部材14より細径の繊維を使用して空隙率(目の粗さ)を小さくすることにより、微細な塵埃や、油分あるいは水分等の細かいミストを確実に捕集することができる程度に緻密に形成され、これに対して前記外側濾過部材
14は、前記内側濾過部材12より太径の繊維を使用して空隙率(目の粗さ)を大きくすることにより、前記内側濾過部材12が捕集した油分や水分等の液体を下部エンドキャップ4まで速やかに導くことができるように形成されている。従って、前記内側濾過部材12は細目の濾過部材であり、前記外側濾過部材14は粗目の濾過部材であるということができる。
【0025】
前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14の上端部には、円環状をした合成樹脂製の前記上部エンドキャップ3が接着剤5で固定され、前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14の下端部には、円形の皿形をした合成樹脂製の前記下部エンドキャップ4が接着剤5で固定されている。
【0026】
前記上部エンドキャップ3は、
図4及び
図5(a)、(b)からも分かるように、該上部エンドキャップ3の中心側から外周側に向けて順に、前記中央空間部10の上端部に嵌合する円環状をした前記内周壁20と、前記外側コア部材13の上端部外周を取り囲む円環状の中間壁21と、前記外側濾過部材14の上端部外周を取り囲む円環状の外周壁22とを、一体に有している。前記内周壁20と中間壁21と外周壁22とは、フィルタエレメント1の下方側即ち前記下部エンドキャップ4側に向けて、前記軸線Lと平行に延びている。また、前記内周壁20の上端部は、前記下部エンドキャップ4の上方に向けて筒状に延出している。
【0027】
前記中間壁21は、前記上部エンドキャップ3を前記フィルタ集合体2の上端部に粘性を有する前記接着剤5で接着する時に、該接着剤5が、上部エンドキャップ3の内外周方向、特に外周方向に向けて必要以上に流動するのを制限し、それによって該接着剤5の分布をほぼ均等化する役目を果たすもので、該中間壁21は、前記内周壁20と外周壁22との中間点よりも前記外周壁22側に近寄った位置に、円環の全周にわたって連続すると共に、該円環の全周にわたって均一高さH1を有するように形成され、その断面形状は、先端(下端)がやや尖った形をしている。
【0028】
即ち、前記中間壁21は、前記軸線Lと平行をなす内側面21a及び外側面21bと、前記内側面21aの先端から斜め下向きに延びる内側傾斜面21cと、前記外側面21bの先端から斜め下向きに延びる外側傾斜面21dと、丸みを帯びた下端面21eとを有している。前記内側傾斜面21cは、前記軸線Lから遠ざかる方向に傾斜する面であり、前記外側傾斜面21dは、前記軸線Lに近づく方向に傾斜する面である。また、前記内側面21aの上下方向幅は、前記外側面21bの上下方向幅より小さく、前記内側傾斜面21cの上下方向幅は、前記外側傾斜面21dの上下方向幅より大きい。なお、該中間壁21の作用については、後で改めて述べるものとする。
【0029】
前記内周壁20及び外周壁22の上部エンドキャップ3の内側キャップ面3aからの高さH2は、互いにほぼ同じであり、前記中間壁21の、上部エンドキャップ3の内側キャップ面3aからの前記高さH1は、前記内周壁20及び外周壁22の高さH2より低い。前記外周壁22の高さH2と前記中間壁21の高さH1との好ましい関係は、一般に、該中間壁21の高さH1が前記外周壁22の高さH2の1/3−1/5の範囲内にあることであり、より好ましくは、該中間壁21の高さH1が前記外周壁22の高さH2の1/4であることである。しかし、前記中間壁21の高さH1と前記外周壁22の高さH2との好ましい関係は、前記接着剤5の粘性や充填量等によって変わるため、必ずしもこのようなものに限定されない。
【0030】
前記上部エンドキャップ3を前記フィルタ集合体2の上端部に前記接着剤5で接着する時は、
図7(a)に示すように、前記上部エンドキャップ3の向きを上下逆向きにして水平状態に保持し、その内部に、粘性を有する前記接着剤5を、前記中間壁21が埋没する深さで、且つ、前記フィルタ集合体2の端部が該接着剤5の中に差し込まれても該接着剤5が前記外周壁22及び内周壁20を超えて外部に流出しないような深さになるように、充填する。
【0031】
前記接着剤としては、エポキシ系接着剤が好ましく、その中でも特に、主成分であるエポキシ樹脂(粘度30,000±10,000m(Pa・s/25℃))と、硬化剤成分である変性ポリアミドアミン(粘度23,000±10,000(mPa・s/25℃))とを、等重量部ずつ混合したものが好ましい。これにより得られた接着剤の粘度は、市販されている一般的な蜂蜜の粘度と同程度である。
【0032】
次に、前記フィルタ集合体2を上下反転させ、下向きになった上端部を、
図7(b)に示すように前記接着剤5の中に挿入し、更に、
図7(c)に示すように、前記内側コア部材11と内側濾過部材12と外側コア部材13との先端が、前記上部エンドキャップ3の内側キャップ面3aに当接するか、あるいは、前記接着剤5を介して該内側キャップ面3aとの間にごく僅かな間隔を保って近接する位置まで差し込む。このとき、前記内側コア部材11、内側濾過部材12、外側コア部材13、及び外側濾過部材14の先端は、軸線Lと直交する一つの平面上に位置するように揃えられているため、前記中間壁21の下端部は、前記部材11、12、13、14の上端部よりも下方位置を占めると共に、前記外側濾過部材14の内部に食い込んだ状態になる。
【0033】
このようにして前記接着剤5の中にフィルタ集合体2の端部を挿入すると、前記内側コア部材11、内側濾過部材12、外側コア部材13、及び外側濾過部材14で押された該接着剤5は、前記上部エンドキャップ3の内部をその内周方向及び外周方向と円周方向とに向けて流動すると共に、縦方向(深さ方向)にも徐々に盛り上がるように流動する。
【0034】
このとき、前記上部エンドキャップ3の外周方向に向けて前記内側濾過部材12から遠ざかる方向(横向き)に流動する接着剤5の一部は、前記中間壁21により堰き止められてその流動が制限されると共に、その流動方向が、該中間壁21の前記内側面21a及び内側傾斜面21cに沿って縦向きに変えられる。その結果、前記接着剤5は、前記内側濾過部材12の蛇腹状に連なる折曲片12a,12a間の隙間や、折山部分12bと外側コア部材13との間の隙間など、各隙間部分に確実に入り込み、最終的に、
図4に示すように、前記内周壁20と内側コア部材11との間や、該内側コア部材11と前記内側濾過部材12との間、該内側濾過部材12と前記外側コア部材13との間、該外側コア部材13と前記外側濾過部材14との間などに、ほぼむらなく均等に分布することになる。この場合、該接着剤5の表面は、全体が完全な平坦面になるまでには至らず、部分的に小さく畝った状態になって小さな窪み16が形成されることはあるが、前記中間壁21が無い場合のような大きな窪みが形成されることはない。
なお、前記接着剤5の一部は、空隙率の高い前記外側濾過部材14の内部には浸透するが、空隙率の低い前記内側濾過部材12の内部には殆ど浸透しない。
【0035】
そのあと前記接着剤5を硬化させることにより、前記フィルタ集合体2の上端部に前記上部エンドキャップ3が接着、
固化されることになる。硬化に要する時間は、25℃の温度下で12時間以上である。
【0036】
このように、前記上部エンドキャップ3に中間壁21を設けることにより、該上部エンドキャップ3を接着剤5で前記フィルタ集合体2の上端部に接着、固定したとき、前記中間壁21で接着剤5の流動が制限されると共に流動方向が変えられて、分布状態が均一化され、従来のフィルタエレメントのように接着剤の介在しない窪みが形成されてそれが吹き溜まりとなるようなことがなくなる。これにより、濾過部材に捕集された液体粒子が前記
吹き溜まりに一旦滞留したあと、圧縮空気と接触して再飛散するといった問題が解消される。このことは、上部エンドキャップ3に、前記中間壁21を形成しないでフィルタ集合体2に接着する場合と、様々な形状及び高さの中間壁21を形成してフィルタ集合体2に接着する場合とについて、様々な実験を重ねることにより、確かめられた。
【0037】
一方、前記下部エンドキャップ4は、前記フィルタ集合体2の中央空間部10の下端部を閉塞するもので、
図3及び
図6から明らかなように、該下部エンドキャップ4の上面中央に位置して前記中央空間部10内に嵌合する円柱状の中央突部30と、該下部エンドキャップ4の外周端からやや内側に寄った位置に前記中央突部30を取り囲むように形成された円環状の内側壁31と、前記下部エンドキャップ4の外周端に形成されて前記内側壁31の回りを間隔をおいて取り囲む円環状の外側壁32と、これら内側壁31と外側壁32との間に形成された液体排出路33とを有している。
【0038】
前記中央突部30と内側壁31と外側壁32とは、フィルタエレメント1の上方側即ち前記上部エンドキャップ3側に向けて、前記軸線Lと平行に延びており、前記外側壁32のキャップ内底面4aからの高さH3は、前記内側壁31のキャップ内底面4aからの高さH4より高く、前記中央突部30のキャップ内底面4aからの高さH5と同じである。
【0039】
前記内側壁31の外周面と前記外側壁32の内周面とは、放射状に位置する複数のリブ状連結壁34により連結され、隣接する連結壁34,34間に前記液体排出路33が形成されている。前記連結壁34の上端面は、前記内側壁31の上端面と同じ高さにあって、水平をなし、該連結壁34の下端面は、上向きに湾曲する曲面に形成されている。
【0040】
そして、前記中央突部30と内側壁31とで囲まれた円環状の液溜室35内に、前記フィルタ集合体2の内側コア部材11と内側濾過部材12と外側コア部材13との下端部が嵌合して、各々の下端部が前記液溜室35の平らなキャップ内定面4aに当接し、該液溜室35内に充填された接着剤5によって、前記フィルタ集合体2の下端部に接着されている。
【0041】
前記内側濾過部材12の下端部外周は、前記内側壁31により、前記外側コア部材13を介して取り囲まれている。従って、前記内側コア部材11と内側濾過部材12と外側コア部材13との下端部は、軸線Lと直交する一つの平面内に位置していることになる。
一方、前記外側濾過部材14の下端部は、前記内側濾過部材12の下端部より上方位置にあって、前記内側壁31の上端面及び前記連結壁34の上端面に当接するか、又は僅かな隙間を介して近接した状態に配設され、該外側濾過部材14の下端部外周は、前記外側壁32によって取り囲まれている。
【0042】
また、前記外側濾過部材14の下端部外周と前記外側壁32の内周との間には、隙間36が形成され、この隙間36が前記液体排出路33に連通している。
【0043】
前記下部エンドキャップ4も、前記上部エンドキャップ3と同様に、圧縮空気から分離された液体が該圧縮空気中に再飛散するのを防止する役目を果たすもので、その作用は次の通りである。
【0044】
即ち、前記中央空間部10内に導入された圧縮空気が前記内側濾過部材12から外側濾過部材14へと通過する間に該内側濾過部材12及び外側濾過部材14で捕集された液体は、最初は微細な粒子であったものが次第に凝集して大きな粒子になっていき、それに伴って、重力の作用により前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14に沿って流下し、流下する間に互いに結合して更に大きな液体粒子となり、前記下部エンドキャップ4に達する。
【0045】
そして、前記内側濾過部材12に沿って流下した液体は、前記下部エンドキャップ4の液溜室35内に一時的に滞留したあと、後続の液体の流下によって前記内側壁31を少しずつオーバーフローし、前記液体排出路33から外部に滴り落ちる。前記外側濾過部材14に沿って流下した液体も、前記液体排出路33から外部に滴り落ちる。
【0046】
このとき、前記中央空間部10から前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14を通過する圧縮空気の流れのうち、前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14の下端部近辺を通る流れは、前記下部エンドキャップ4の外側壁32により遮断され、その部分の流速が低下させられる。この結果、前記下部エンドキャップ4の液溜室35内に溜まった液体や、前記内側壁31をオーバーフローする液体、あるいは前記内側濾過部材12及び外側濾過部材14の下端部近辺に高密度で含まれる液体が、前記圧縮空気の流れによって飛散するのが防止され、そのため、該圧縮空気から分離された液体が、浄化後の圧縮空気中に再び混入することはない。
【0047】
前記実施形態では、
図5(a)、(b)から明らかなように、上部エンドキャップ3の中間壁21が、円環の全周にわたり連続し、且つ均一な高さH1を有するように形成されているが、該中間壁21の形状はこのようなものに限らず、以下に述べるような様々な形状であっても良い。
【0048】
図8に示す中間壁21Aは、軸線Lに平行な内側面21a及び外側面21bと、円弧状をした下端面21eとによって、高さ全体に亘って均一な厚さを有するように形成されている。前記下端面21eは、軸線Lと直交する平坦面に形成することもできる。
【0049】
図9に示す中間壁21Bは、軸線Lに平行な内側面21aと、下端側ほど次第に該中間壁21Bの厚さが薄くなる方向に傾斜する外側傾斜面21dとにより、下端が尖った形に形成されている点、
図10に示す中間壁21Cは、高さの高い壁部分21fと高さの低い壁部分21gとを円周方向に交互に形成することにより、高低差(凹凸)を有するように形成されている点が、前記
図8の中間壁21Aとそれぞれ相違している。
【0050】
また、
図11に示す中間壁21Dは、円弧状に湾曲する複数の壁部分21hを、相互間に間隔をおいて円周方向に並べて配設することにより、不連続をなすように形成されている点が、前記
図8の中間壁21Aと相違しており、
図12に示す中間壁21Eは、壁部分21iの長さが
図11の中間壁21Dの壁部分21hの長さより短く、且つ、該壁部分21iの外側面21bが円弧面をしている点が、前記
図11の中間壁21Dと相違している。なお、前記
図11の中間壁21Dの各壁部分21hは、直線状をしていても良く、また、その下端面は円弧面であっても平坦面であっても構わない。
【0051】
更に、
図13(a)、(b)に示す中間壁21Fは、小径の内側環状壁21jと大径の外側環状壁21kとを同心状に配設することにより二重構造にした点が、前記
図8の中間壁21Aと相違している。この場合、前記内側環状壁21j及び外側環状壁21kの高さを違えても良く、あるいは、前記内側環状壁21j及び外側環状壁21kの一方又は両方を、前記
図8−12の何れかの中間壁21A−21Eと同形にすることもでき、両方を
図8−12の中間壁21A−21Eのように形成する場合、前記内側環状壁21jと外側環状壁21kとを異なる形状にすることもできる。
また、
図14に示す中間壁21Gは、直線状をした複数の壁部分21mが連なることによって多角形状に形成されている点が、前記
図8の中間壁21Aと相違している。
なお、
図10の中間壁21C、
図11の中間壁21D、
図13の中間壁21F、及び
図14の中間壁21Gの断面形状は、
図5の中間壁21の断面形状と同形状にすることもできる。
【0052】
更に、
図15(a)、(b)においては、上部エンドキャップ3に、内周壁20の回りを取り囲む円環状の凹部23を形成し、この凹部23の外径側の側壁を中間壁21Hとしている。この上部エンドキャップ3が上端に接着されるフィルタ集合体2は、内側コア部材11と内側濾過部材12と外側コア部材13との上端部が前記凹部23内に嵌合し、外側濾過部材14の上端部が、前記凹部23を取り囲む凸部24に当接するように、該外側濾過部材14の上端部が、前記部材11−13の上端部より低位置を占めるように形成される。
なお、
図5、
図8−
図15に示す上部エンドキャップを使用するフィルタエレメントにおいても、フィルタ集合体2を、外側濾過部材14の上端部が他の部材11−13の上端部より低位置を占めるように形成することにより、該外側濾過部材14の上端部を中間壁21に当接させるようにしても良い。
【0053】
なお、図示した実施形態において、前記フィルタ集合体2の横断面形状、即ち、前記内側コア部材11、内側濾過部材12、外側コア部材13、及び外側濾過部材14の横断面形状は、円形をしているが、その断面形状は円形以外であっても良い。例えば、楕円形であっても、四角形や六角形あるいは八角形等の多角形であっても良く、その場合、前記上部エンドキャップ3及び下部エンドキャップ4も同様の形に形成することができる。その際、上部エンドキャップ3の中間壁21,21A−21Hも同様の形に形成されることは勿論である。
【0054】
また、図示した実施形態において、前記フィルタ集合体2には、内側濾過部材12の内側に、圧縮空気中に含まれる比較的大きな塵埃等を前もって除去することにより前記内側濾過部材12を保護する中空状のプリフィルターを配置することもできる。このプリフィルターは、前記内側コア部材11の内側又は外側のどちらに配置しても良い。
【0055】
更に、前記実施形態では、前記内側濾過部材12が細目に形成され、前記外側濾過部材14が粗目に形成されているが、その逆に、前記内側濾過部材12を粗目に形成し、前記外側濾過部材14を細目に形成することもできる。