(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゼネバ機構に駆動されて間欠的な走行を繰り返すことにより海苔簀をピッチ搬送する突起付無端チェーンと、前記突起付無端チェーンがピッチ搬送する海苔簀に対し、前記突起付無端チェーンが停止状態を継続している間に、海苔簀に抄き枡を当接させて生海苔材料を供給し、一定の水抜き時間が経過してから前記抄き枡を引き上げることで海苔簀に生海苔を抄製する抄製部とを備えた海苔製造装置であって、
前記ゼネバ機構を駆動するモータと、
前記モータの回転制御を行うことにより、前記突起付無端チェーンが停止状態を継続している時間を変化させて前記水抜き時間を調節するコントローラとを備え、
前記突起付無端チェーンの停止状態継続時間を長くした場合には、前記突起付無端チェーンの走行時間を短くしたうえで、突起付無端チェーンの走行時の走行速度を増大させ、
前記突起付無端チェーンの停止状態継続時間と走行時の走行時間との和から成る1サイクルの時間が一定となるようにすることを特徴とする海苔製造装置。
前記コントローラは、前記突起付無端チェーンが停止状態を継続している時間が長いほど前記突起付無端チェーンが走行するときの走行速度が増大するように前記モータを回転させることを特徴とする請求項1に記載の海苔製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における海苔製造装置1を示している。海苔製造装置1は海苔簀2に抄製した生海苔を乾燥させて乾海苔(板海苔)を生成する装置であり、作業部1Aと乾燥室1Bを備えている。本実施の形態では説明の便宜上、
図1の紙面左方を前方とし、
図1の紙面左方を後方としている。また、
図1の紙面に垂直な方向を左右方向とする。
【0011】
図2において、海苔簀2は枠状のホルダ3に複数個(ここでは8個)が左右方向に並んで保持された状態で搬送され、作業部1Aからその後方の乾燥室1Bへ、そして作業部1Aに再度戻るように移動する。そして、その過程において抄製工程、脱水工程、乾燥工程及び剥離工程が施される。抄製工程と脱水工程及び剥離工程は作業部1A内で行われ、乾燥工程は乾燥室1B内で行われる。
【0012】
図1において、作業部1Aには、作業部内搬送経路を構成する搬送機構である左右一対の突起付無端チェーン11が設けられている。各突起付無端チェーン11は駆動スプロケット12と従動スプロケット13に掛け渡されており、
図1の紙面に平行な周回路を形成している。
【0013】
図2において、各突起付無端チェーン11はそれぞれ、走行面から垂直外方に突出して延びた突起11Tを一定間隔で備えている。ホルダ3は左右の端部3Dが突起付無端チェーン11の搬送方向に隣接した2つの突起11Tに係合(挟持)されることで、左右の突起付無端チェーン11に保持される。
【0014】
図1において、作業部1Aにはゼネバ機構15とこれを駆動するモータ16が設けられている。ゼネバ機構15は、原動車15aと従動車15bを備えており、モータ16は原動車15aを回転駆動する。原動車15aが回転駆動されると従動車15bが間欠回転し、その従動車15bの間欠回転が駆動スプロケット12に伝達されることで突起付無端チェーン11が間欠的に走行する。ゼネバ機構15の従動車15bの間欠回転は他の部位にも伝達され、後述する抄製部21、脱水部22及び剥離部23も突起付無端チェーン11の間欠走行と同期して間欠的に作動する。本実施の形態では、モータ16は回転状態(回転数)を自在に変更できるサーボモータであり、その回転状態の変更制御をコントローラ17が行うようになっている(
図1)。
【0015】
突起付無端チェーン11は、ゼネバ機構15により間欠駆動されることで、
図1における時計回りに間欠走行する。これにより、突起付無端チェーン11に保持された複数のホルダ3が(すなわち複数の海苔簀2が)、突起付無端チェーン11の走行方向にピッチ搬送される。すなわち突起付無端チェーン11は、ゼネバ機構15に駆動されて間欠的な走行を繰り返すことにより海苔簀2をピッチ搬送するように構成されている。
【0016】
図1において、突起付無端チェーン11が形成する作業部内搬送経路は、ホルダ3を前方から後方に搬送する上段経路18と、ホルダ3を後方から前方に搬送する下段経路19から成る。上段経路18上にはホルダ3に保持された各海苔簀2に対して抄製工程を施す抄製部21と、脱水工程を施す脱水部22が設けられている。下段経路19上には海苔簀2に剥離を施す剥離部23が設けられている。
【0017】
図1において、抄製部21は、上段経路18における突起付無端チェーン11の上方位置に設けられた抄き箱31と、突起付無端チェーン11の下方位置に設けられた受け部32とを備えている。抄き箱31と受け部32の数は、ホルダ3が保持する海苔簀2の数と一致(ここでは8組)しており、これら複数の抄き箱31は左右方向に並んで設けられている。抄き箱31は上方に開口した有底の中空の箱状部材から成り、下端に矩形枠状の抄き枡33を備えている。抄き箱31には生海苔に水を混ぜた生海苔材料が貯留されている。
【0018】
図1において、脱水部22は、上段経路18における突起付無端チェーン11の走行面を上下から挟む位置に一対のスポンジ部材22Sを備えている。これら上下のスポンジ部材22Sの数は、ホルダ3が保持する海苔簀2の数と一致(ここでは8組)しており、これら複数のスポンジ部材22Sは左右方向に並んで設けられている。
【0019】
図1において、乾燥室1Bには、乾燥室内搬送経路を形成する搬送機構である上段無端チェーン41Aと下段無端チェーン41Bが設けられている。上段無端チェーン41Aと下段無端チェーン41Bはそれぞれ左右に配置された一対の無端チェーン42から成る。各無端チェーン42は、駆動スプロケット43と従動スプロケット44に掛け渡されて
図1の紙面に平行な往復路を形成している。
【0020】
図1及び
図3(
図1における矢視V−Vから見た図)において、上段無端チェーン41A及び下段無端チェーン41Bの無端チェーン42はそれぞれ、走行面から垂直外方に突出して延びた腕部42Wを一定間隔で備えている。無端チェーン42の搬送方向に隣接した2つの腕部42Wの間にホルダ3が挿入され、腕部42Wの鉤状42Kに曲げられた部分がホルダ3の左右の端部3Dの桁部3Kに係止されることで(
図3中の拡大図参照)、そのホルダ3は上段無端チェーン41A或いは下段無端チェーン41Bに保持される。
【0021】
上段無端チェーン41A及び下段無端チェーン41Bはそれぞれ、左右の無端チェーン42の駆動スプロケット43が図示しない間欠送りギヤ機構により間欠駆動されることで、
図1における時計回りに間欠走行する。これにより、上段無端チェーン41A或いは下段無端チェーン41Bに保持された複数のホルダ3が(すなわち複数の海苔簀2が)、無端チェーン42の走行方向にピッチ搬送される。
【0022】
図3において、生産加工場1Cには温風発生送給部51が設置されている(
図1も参照)。温風発生送給部51は内部にバーナー53を備えている。バーナー53は、生産加工場1Cの壁面に設けられた空気取入口52から取り入れた空気を暖めて暖かい空気を生成し、その生成した暖かい空気を送給ファン51fによって乾燥室1B内に供給する(
図3中に示す矢印A)。ここで、バーナー53は、生産加工場1Cの外部に設けられた保持温風発生装置である加温機54により生成された暖かい空気の送給を受け得るようになっている。
【0023】
加温機54は、ファン54aによって取り入れた外気を加熱手段54bによって加熱して暖かい空気を生成し、その生成した暖かい空気を生産加工場1Cの内部に繋がる連通路54cを通じて温風発生送給部51に送給する。バーナー53は空気取入口52から取り入れた空気に加え、加温機54から送給される空気を暖めることで、効率よく暖かい空気を生成する。乾燥室1B内には換気扇55が設けられており、乾燥室1B内の湿度に応じて換気扇55が作動されることで、乾燥室1B内の湿度が適切な値に維持される。
【0024】
図1において、剥離部23は、突起付無端チェーン11の下段経路19中に、海苔簀2から乾海苔を剥離する剥離機構23Rを有している。抄製部21で生海苔が抄製された複数の海苔簀2は、突起付無端チェーン11、上段無端チェーン41A及び下段無端チェーン41Bから成る搬送機構によって搬送されて乾燥室1Bを通過したら、突起付無端チェーン11によって受け取られ、剥離機構23Rに送られる。剥離機構23Rは、抄製部21で生海苔が抄製されたときとは上下が反対になった状態でホルダ3ごと送られてきた海苔簀2に対し、海苔簀2の下面側に張り付いている乾海苔を吸着しつつ、海苔簀2を上方にめくるように動かすことで海苔簀2から乾海苔を剥離する。
【0025】
次に、海苔製造装置1の動作を説明する。コントローラ17に回転制御されたモータ16がゼネバ機構15を駆動すると突起付無端チェーン11が間欠走行し、複数のホルダ3がピッチ搬送される。複数のホルダ3のうちのひとつが抄製部21に達すると、抄き箱31が下降する。下降した抄き箱31は抄き枡33を海苔簀2に上方から当接させつつ、海苔簀2を受け部32に押し付ける。抄き箱31が海苔簀2を受け部32に押し付けたら図示しないバルブが作動して抄き箱31の底部に設けられた開口が開き、抄き箱31内から生海苔材料が下方に流出する。これにより生海苔材料が抄き枡33を介して海苔簀2に供給される。
【0026】
海苔簀2に供給された生海苔材料の水分は海苔簀2を介して下方に落ち、生海苔材料は水抜きされる。抄き箱31はモータ16の回転状態(回転数)に依存する一定の時間(水抜き時)が経過した後に上昇し、抄き枡33は引き上げられて海苔簀2から離間する。これにより海苔簀2上に、抄き枡33の開口形状に応じた矩形形状の生海苔が抄製される。抄き箱31が上昇したら、海苔簀2上に生海苔を抄製する抄製工程が終了する。
【0027】
ここで、上記水抜き時間が十分な時間である場合には、海苔簀2に抄製された生海苔NNは抄き枡33の開口形状と合致した綺麗な矩形形状となるが(
図4(a))、水抜き時間が十分な時間でない場合には、抄き枡33を海苔簀2から引き上げたとき、海苔簀2上の生海苔NNの一部が外側に流れて広がって型崩れを起こしてしまう(
図4(b))。このため水抜き時間は、型崩れが生じない(すなわち生産される海苔の品質が良好に保たれる)十分な時間が確保される必要があり、実際に海苔簀2に生海苔を抄製してみた結果、水抜き時間が不十分であると判断した場合には、突起付無端チェーン11が停止状態を継続している時間(停止状態継続時間)を長くする必要がある。
【0028】
突起付無端チェーン11の停止状態継続時間を長くするには、モータ作動制御部であるコントローラ17からモータ16の回転制御を行うことにより、突起付無端チェーン11が停止状態を継続している時間を変化させる。具体的には、ゼネバ機構15を構成する従動車15bが突起付無端チェーン11を停止させる回転位置にある状態が長くなるようにする。
【0029】
この場合、単純に水抜き時間を長くするだけであれば、モータ16を定回転させつつ、その定回転の回転速度を落とすようにすればよいが、これでは突起付無端チェーン11による海苔簀2の走行時間が長くなって生産効率が低下してしまう。このため海苔簀2の停止状態継続時間を長くした場合には、海苔簀2の停止状態継続時間を長くした分、突起付無端チェーン11の走行時の走行速度が大きくなるように、突起付無端チェーン11の走行時に対応するモータ16の回転速度を増大させることが好ましい。このため本実施の形態では、コントローラ17は、突起付無端チェーン11が停止状態を継続している時間が長いほど突起付無端チェーン11が走行するときの走行速度が増大するようにモータ16を回転させるようになっている。そして、突起付無端チェーン11の停止状態継続時間と走行時の走行時間との和から成る1サイクルの時間が一定となるようにすれば、海苔の生産効率を低下させることなく、生産される海苔の品質を良好な状態に保持することができる。或いは、水抜き時間が十分な時間であることの保証のものとで突起付無端チェーン11の走行時の走行速度を速めることで、生産効率を向上させることができる。
【0030】
例えば、
図5(a)に示すように、ゼネバ機構15を介してモータ16による駆動される突起付無端チェーン11の間欠走行の周期がTであり、そのうち走行時間がT1、停止状態継続時間がT2であって、1周期分の間欠走行による突起付無端チェーン11の走行距離がLである運用状態があるとする。この状態から、停止状態継続時間をT2からΔTだけ長くしてT2+ΔTとする場合には、
図5(b)に示すように、走行時間をT1からΔTだけ短くしたT1−ΔTとしたうえで、突起付無端チェーン11の走行時の走行速度を増大(
図5(a),(b)ではグラフの傾きがθ1からθ2に増大)させる。このようにすれば、水抜き時間を長めに設定しても、生産効率(単位時間当たり海苔の生産量)を維持することができる。
【0031】
抄製部21で抄製工程が終了したら、生海苔が抄製された海苔簀2は、その後の突起付無端チェーン11の走行によって脱水部22に送られる。脱水部22が備える上下のスポンジ部材22Sの間に海苔簀2が停止したら、図示しないエアー吸引脱水装置が海苔簀2上の生海苔の水分を吸引脱水した後、上下のスポンジ部材22Sが互いに近接する方向に移動して、海苔簀2を上下方向から挟み込む。これにより海苔簀2上の生海苔に含まれる水分が上下のスポンジ部材22Sによって吸い取られ、生海苔の水分が除かれる。なお、抄製部21での水抜き時間が長めに設定されると、脱水部22での脱水時間も増大するので、より効果的に脱水がなされて好ましい。脱水部22において生海苔に含まれる水分が除かれたら、突起付無端チェーン11が走行を再開して、海苔簀2を乾燥室1Bに搬送する。
【0032】
海苔簀2を乾燥室1Bに搬送する突起付無端チェーン11は、脱水部22を出た後は下方に進行する。このとき突起付無端チェーン11の一対の突起11Tが開くので、一対の突起11Tによるホルダ3の挟持は解除され、ホルダ3は上段無端チェーン41Aによって受け取られ、保持される。
【0033】
乾燥室1Bでは、先ず、上段無端チェーン41Aが、脱水部22から受け取ったホルダ3を前方から後方へ移動させ、次いで後方から前方へ移動させてホルダ3を乾燥室1B内で前後方向に往復移動させる。上段無端チェーン41Aは前後方向に往復移動させたホルダ3を下段無端チェーン41Bに順次受け渡し、下段無端チェーン41Bは上段無端チェーン41Aからホルダ3を受け取って保持する。そして、下段無端チェーン41Bは、保持したホルダ3を前方から後方へ移動させた後、後方から前方へ移動させて、乾燥室1B内で前後方向に往復移動させる。
【0034】
乾燥室1Bでは、上記のように上段無端チェーン41Aと下段無端チェーン41Bによって各ホルダ3を前後方向に2往復させる間、温風発生送給部51は温風を乾燥室1Bに送給することによって、海苔簀2上の生海苔を乾燥させる。乾燥室1Bでは2〜3時間程度の時間をかけて生海苔を乾燥させ、各海苔簀2上に乾海苔を生成させる。
【0035】
乾燥室1Bで乾海苔にされた海苔簀2を保持したホルダ3は下段無端チェーン41Bから剥離部23に送られる。剥離部23は、乾燥室1Bで海苔簀2上に乾海苔が生成された各ホルダ3を突起付無端チェーン11によって受け取り、各海苔簀2から乾海苔を剥離する。剥離部23で海苔簀2から剥離された乾海苔は図示しないコンベア装置によって海苔製造装置1の外部に運ばれる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態における海苔製造装置では、突起付無端チェーン11を間欠走行させるゼネバ機構15を駆動するモータ16の回転制御をコントローラ17が行い、突起付無端チェーン11が停止状態を継続している時間を変化させて水抜き時間を調整できるようになっている。このため、抄製した生海苔が型崩れを生じていた場合には水抜き時間を長めに設定(変更)することで、生成される海苔の品質を向上させることができる。また、水抜き時間を長めに設定した分だけ突起付無端チェーン11による海苔簀2の搬送速度を上げることが可能であるので、生産効率を低下させることもない。このように本実施の形態における海苔製造装置1によれば、生産効率を低下させることなく、生産される海苔の品質を向上させることができる。