【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)開催日 2015年9月3日〜9月5日 発行日 2015年9月3日 (2)集会名 第33回日本ロボット学会学術講演会 開催場所 東京電機大学 東京千住キャンパス(東京都足立区千住旭町5番) 刊行物 第33回日本ロボット学会学術講演会講演概要集 一般社団法人日本ロボット学会
【文献】
久保田 亮平,千葉 信一朗,衣川 潤,小菅 一弘 ,ドア組付作業支援ロボットD−PaDY 第1報 コンセプトの提案,第32回日本ロボット学会学術講演会,2014年 9月 4日
【文献】
衣川 潤,久保田 亮平,小菅 一弘,ドア組付作業支援ロボットD−PaDY 第3報 仮想ガイドによる組付作業支援,第33回日本ロボット学会学術講演会予稿集DVD−ROM,2015年 9月 3日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記協調動作モード制御部は、前記産業用ロボットのパワーアシストを受けて前記作業者が前記部品を前記製品に対する取付位置まで移動させる際に、前記部品と前記製品との距離が所定距離よりも遠い場合には、仮想質量を所定質量よりも軽く設定すると共に、仮想粘性係数を所定粘性係数よりも大きく設定し、かつ、前記部品と前記製品との距離が前記所定距離よりも近い場合には、仮想質量を前記所定質量よりも重く設定すると共に、仮想粘性係数を前記所定粘性係数よりも小さく設定するパワー可変アシスト機能を有し、
前記パワー可変アシスト機能では、前記部品と前記製品との距離が、前記所定距離よりも遠い距離である第1の基準距離よりも遠い場合、前記第1の基準距離と前記所定距離よりも近い距離である第2の基準距離との間の場合、及び、前記第2の基準距離よりも近い場合に分け、前記第1の基準距離よりも遠い場合には、仮想質量を前記所定質量よりも軽い第1の基準質量に設定すると共に、仮想粘性係数を前記所定粘性係数よりも大きい第1の基準粘性係数に設定し、かつ、前記第2の基準距離よりも近い場合には、仮想質量を前記所定質量よりも重い第2の基準質量に設定すると共に、仮想粘性係数を前記所定粘性係数よりも小さい第2の基準粘性係数に設定し、かつ、前記第1の基準距離と前記第2の基準距離との間の場合には、仮想質量を前記第1の基準質量から前記第2の基準質量まで連続的に変化させると共に、仮想粘性係数を前記第1の基準粘性係数から前記第2の基準粘性係数まで連続的に変化させ、更に、少なくとも前記第1の基準距離の側及び前記第2の基準距離の側において、仮想質量及び仮想粘性係数を曲線的に変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の作業支援システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドア取り付けの際に用いる治具は車種ごとに製作する必要があるという問題があった。また、車体ごとに棚からの治具の取り出し、片付け、移動、車体への取付け、取外しなどの付随作業が発生してしまい、作業効率が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、作業効率を向上させることができ、かつ、習熟者でなくても容易に部品取り付け作業を行うことができる作業支援システムを提供することを目的とする。
【0007】
なお、特許文献1には、重量物を支持する第1〜8の可動体とその可動体を動かす各々のアクチュエータとそのアクチュエータの出力を調整するコントローラを備えた適切反発力付与型作業補助装置が記載されている。このコントローラは、重力物をその重量物が現に行っている運動をさせるに要する力から、重量物の加速度に比例する力と、速度に比例する力と、位置に比例する力とを合計した合力を減じた力がアクチュエータから出力されるように調整し、かつ、加速度に比例させる係数、速度に比例させる係数、位置に比例させる係数が一連の搬送作業中に切り換えられるようになっている。
【0008】
特許文献1によれば、作業者に適切な反力を与えることができ、良質な作業を行うことができる。しかしながら、特許文献1は、重量物を移動させる際に可動体の移動範囲を制限するものではなく、本願発明とは具体的な構成が異なっている。そのため、特許文献1では、取り付け作業において重量物が自在に動いてしまい、作業の習熟が必要である。
【0009】
また、特許文献2には、工場内の生産ラインにおいて、ロボットと一人の作業者が協調して作業を行うシステムに関し、作業者の手に装着され、当該手による作業動作を経時的に測定してその測定結果である動作情報を3次元座標データとして送信するモーションキャプチャと、作業者の手に装着され、部品に加わる荷重を経時的に測定してその測定結果である圧力検出データを送信する圧力センサと、3次元座標データ、及び圧力検出データに基づき産業用ロボット4を制御する制御部とを備え、制御部は、モーションキャプチャから得られた3次元座標データにロボットを追従させ、作業者の手が標準作業位置に到達したと判定すると、作業者が手で部品を押圧することで圧力センサから送信される圧力検出データの値に応じた圧力値で、ロボットの保持部で部品を押圧させる保持部押圧機能を有するものが記載されている。
【0010】
特許文献2によれば、二人の作業者により製品を取り付ける部品取り付け作業を、作業者の勘や骨に頼ることなく、一人の作業者で効率よくかつ正確に行うことができる。しかしながら、特許文献2は3次元座標データにロボットを追従させるものであり、部品を移動させる際にロボットの移動範囲を制限する本願発明とは具体的な構成が異なっている。そのため、特許文献2では、モーションキャプチャが必要となり、システム的に大掛かりとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の作業支援システムは、工場内の生産ラインにおいて、作業者が生産ライン上を搬送される製品に部品を取り付ける部品取り付け作業を支援するものであって、部品を保持する産業用ロボットと、この産業用ロボットを制御する制御部とを備え、制御部は、産業用ロボットが自律的に動作する自律動作モードを制御する自律動作モード制御部と、作業者が産業用ロボットを操作する協調動作モードを制御する協調動作モード制御部とを有し、協調動作モード制御部は、産業用ロボットにより部品を保持しつつ、作業者が部品を保持し、部品を製品に対する取付位置まで移動させる際に、産業用ロボットの移動範囲を制限することにより、部品が規定された仮想ガイドに沿って移動し、取付位置において部品が製品に対して所定の角度となるように制御する移動制限機能を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の作業支援システムによれば、協調動作モードにおいて、産業用ロボットにより部品を保持しつつ、作業者が部品を保持し、部品を製品に対する取付位置まで移動させる際に、産業用ロボットの移動範囲を制限することにより、部品が規定された仮想ガイドに沿って移動し、取付位置において部品が製品に対して所定の角度となるように制御するようにしたので、作業の習熟を行わなくても、だれでも簡単に部品を取り付けることができる。また、取り付け作業を補助する治具等が必要ないので、治具の取り出し、片付け、移動、車体への取付け、取外しなどの付随作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。更に、仮想ガイドに沿って移動するので、気遣い作業が削減され、作業ミスの発生を抑制することができる。加えて、車種ごとに設定を切り替える必要がないので、作業を楽にすることができる。
【0013】
特に、協調動作モードにおいて、産業用ロボットのパワーアシストを受けて作業者が部品を製品に対する取付位置まで移動させる際に、部品と製品との距離が所定距離よりも遠い場合には、仮想質量を所定質量よりも軽く設定すると共に、仮想粘性係数を所定粘性係数よりも大きく設定し、かつ、部品と製品との距離が所定距離よりも近い場合には、仮想質量を所定質量よりも重く設定すると共に、仮想粘性係数を所定粘性係数よりも小さく設定するようにすれば、部品が製品から遠い時には、軽くして移動しやすくすると共に、反発力を高くして速度の出し過ぎを抑制し、部品が製品に近づいた時には、重くして不意な衝突を抑制すると共に、反発力を低くして速度による操作力変化を抑制することができる。よって、部品が製品から遠い時にはすばやく動かし、かつ、近い時には微細な調整がしやすいようにアシストすることができ、操作性が向上し、より安定した作業を行うことができる。
【0014】
また、部品と製品との距離が所定距離よりも遠い第1の基準距離と所定距離よりも近い第2の基準距離との間にある場合に、少なくとも第1の基準距離の側及び第2の基準距離の側において、仮想質量及び仮想粘性係数を曲線的に変化させるようにすれば、操作感覚の急な変化を抑制することができ、滑らかに操作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る作業支援システム1の全体構成を表すものである。この作業支援システム1は、工場内の生産ラインにおいて、作業者が生産ライン上を搬送される製品W1に部品W2を取り付ける部品取り付け作業を支援するものであり、部品W2を保持する産業用ロボット10と、この産業用ロボット10を制御する
図1では図示されていない制御部とを備えている。なお、本実施の形態では、製品W1が車体であり、部品W2がドアである場合について具体的に説明する。
【0018】
産業用ロボット10は、例えば、部品W2を平面移動させるための走行・横行部11と、この走行・横行部11に配設されたアーム部12と、このアーム部12に配設され、部品W2を把持する把持部13とを備えている。走行・横行部11は、例えば、生産ラインに対して平行に伸長して設置された走行レール11Aと、この走行レール11Aに対して直交する方向に伸長して設置された横行レール11Bと、走行レール11A及び横行レール11Bを利用して平面移動するベース11Cとを有している。
【0019】
走行レール11Aは、例えば、工場内上部の梁に固定して配設されており、横行レール11Bは、例えば、走行レール11Aに沿ってスライド可能に走行レール11Aに対して配設されている。ベース11Cは、例えば、横行レール11Bに沿ってスライド可能に横行レール11Bに対して配設されている。これにより、ベース11Cは2自由度を有し、平面移動することができるようになっている。
【0020】
アーム部12は、例えば、ベース11Cに対して配設されている。アーム部12は、例えば、回転3軸を有していることが好ましく、把持部13の位置・姿勢を制御したり、調整したりすることができるようになっている。アーム部12の駆動には、例えば、ダイレクトドライブモータを用いることが好ましい。把持部13は、例えば、直動4軸を有していることが好ましく、把持した部品W2の位置・姿勢を制御することができるようになっている。把持部13には、例えば、力センサが搭載されており、作業者Pの力情報に基づき、把持部13の制御を行うことで部品W2の質量を補償し、作業性を高めることができるようになっている。
【0021】
産業用ロボット10は、また、例えば、作業者P等の位置を検出する位置センサ14を備えていることが好ましい。
【0022】
図2は制御部20の構成を表すものである。制御部20は、例えば、プログラムを実行可能なコンピュータとしてのハードウエア構成を有しており、プログラムが実行されることにより産業用ロボット10を制御する各種機能を有するように構成されている。制御部20は、例えば、産業用ロボット10が自律的に動作する自律動作モードを制御する自立動作モード制御部21と、作業者Pが産業用ロボット10を操作する際に補助する協調動作モードを制御する協調動作モード制御部22とを有している。
【0023】
自律動作モード制御部21は、例えば、産業用ロボット10が部品W2を図示しない供給装置から自動的に取り出し、所定の待機位置まで搬送するように制御する自動取り出し機能21Aを有している。
【0024】
強調動作モード制御部22は、産業用ロボット10により部品W2を保持しつつ、作業者Pが部品W2を保持し、部品W2を製品W1に対する取付位置まで移動させる際に、産業用ロボット10の移動範囲を制限することにより、部品W2が規定された仮想ガイドに沿って移動し、取付位置において部品W2が製品W1に対して所定の角度となるように制御する移動制限機能22Aを有している。具体的には、例えば、作業者Pが部品W2を製品W1に対する取付位置まで移動させる際に、部品W2が規定された仮想ガイドに沿って移動するようにベース11Cの移動方向を制御するようになっている。
【0025】
これにより、産業用ロボット10は、部品W2の取り出しは自動的に行い、部品W2を製品W1の取付位置まで移動させる際には、部品W2を保持しつつ、作業者Pの操作に応じて部品W2を規定した仮想ガイドに沿って移動させるように制御される。自立動作モードから協調動作モードへは、例えば、作業者Pが部品W2を持った時に切り替わるように制御されることが好ましい。作業者Pが部品W2を持ったことは、例えば、把持部13に搭載された力センサにより感知し、その信号は制御部20に送られるように構成されている。
【0026】
強調動作モード制御部22は、また、作業者Pが部品W2を製品W1に対する取付位置まで移動させる際に、産業用ロボット10により作業者Pが実際の部品W2の質量よりも軽く感じるようにパワーアシストしつつ、部品W2と製品W1との位置関係に応じてパワーアシスト量を変化させるパワー可変アシスト機能22Bを有していることが好ましい。パワーアシスト量の計算は、例えば、次のようにすることができる。
【0027】
例えば、
図3に示したような仮想マス・ダンパ系を考えると、運動方程式は数1となる。
【数1】
数1において、zは一般化座標、Mは把持部13の仮想質量、Dは把持部13の仮想粘性係数、Fは把持部13に取り付けられた力センサから計測された作業者Pの操作力である。
【0028】
ここで以下のような状態方程式を考える。
【数2】
【0029】
数2に示した状態方程式の解は次のようになる。
【数3】
【0030】
これを離散化する。
【数4】
数4においてΔTはサンプリング周期である。
【0031】
入力u
(τ)を0次ホールドして1次近似を行う。
【数5】
【0032】
ここで
図5に示す仮想マス・ダンパ系の状態方程式は以下のようになる。
【数6】
【0033】
これを数2と比較すると、A、Bは以下のようになる。
【数7】
【0034】
よって、数7を数5に代入し、x
kをv
kに、u
kをF
kに置き換えると、以下の式が得られ、これが仮想マス・ダンパ特性を用いた制御式となる。
【数8】
v
k+1は目標速度、Dは仮想粘性係数、Mは仮想質量、ΔTはサンプリング周期、v
kは現在速度、F
kは現在の作業者Pの操作力である。仮想質量M及び仮想粘性係数Dはチューニングパラメータであり、これを調整することで操作性を変えることが可能である。
【0035】
部品W2を素早く遠くへ移動させたい作業と、微細な位置決めを行いたい作業とでは、求められる操作性が異なるため、状況に応じてチューニングパラメータを変えることが好ましい。そこで、パワー可変アシスト機能22Bでは、例えば、部品W2と製品W1との距離に応じて、チューニングパラメータである仮想質量Mと、仮想粘性係数Dを変えることにより、部品W2を素早く遠くへ移動させる作業と、微調整を行いたい作業に求められる操作性を両立させるようになっている。
【0036】
例えば、部品W2と製品W1との距離が所定距離よりも遠い場合には、仮想質量Mを所定質量よりも軽く設定すると共に、仮想粘性係数Dを所定粘性係数よりも大きく設定し、かつ、部品W2と製品W1との距離が所定距離よりも近い場合には、仮想質量Mを所定質量よりも重く設定すると共に、仮想粘性係数Dを所定粘性係数よりも小さく設定することが好ましい。部品W2が製品W1から遠い時には、軽くして移動しやすくすると共に、反発力を高くして速度の出し過ぎを抑制し、部品W2が製品W1に近づいた時には、重くして不意な衝突を抑制すると共に、反発力を低くして速度による操作力変化を抑制することができるからである。
【0037】
具体的には、例えば、
図4及び
図5に示したように、部品W2と製品W1との距離が、所定距離よりも遠い距離である第1の基準距離L1よりも遠い場合、第1の基準距離L1と所定距離よりも近い距離である第2の基準距離L2との間の場合、及び、第2の基準距離L2よりも近い場合に分け、第1の基準距離L1よりも遠い場合には、仮想質量Mを所定質量よりも軽い第1の基準質量M1に設定すると共に、仮想粘性係数Dを所定粘性係数よりも
大きい第1の基準粘性係数D1に設定し、かつ、第2の基準距離L2よりも近い場合には、仮想質量Mを所定質量よりも重い第2の基準質量M2に設定すると共に、仮想粘性係数Dを所定粘性係数よりも
小さい第2の基準粘性係数D2に設定し、かつ、第1の基準距離L1と第2の基準距離L2との間の場合には、仮想質量Mを第1の基準質量M1から第2の基準質量M2まで連続的に変化させると共に、仮想粘性係数Dを第1の基準粘性係数D1から第2の基準粘性係数D2まで連続的に変化させることが好ましい。
【0038】
更に、部品W2と製品W1との距離が第1の基準距離L1と第2の基準距離L2との間においては、例えば、
図4及び
図5に示したように、少なくとも第1の基準距離L1の側、及び、第2の基準距離L2の側において、仮想質量M及び仮想粘性係数Dを曲線的に変化させることが好ましい。具体的には、第1の基準質量M1と第2の基準質量M2との間、及び、第1の基準粘性係数D1と第2の基準粘性係数D2との間を5次多項式で補間するように仮想質量M及び仮想粘性係数Dを変化させることが好ましい。滑らかなパラメータの変更を行うことにより、操作感覚の急な変化を抑制することができるからである。
【0039】
この作業支援システム1は、次のように動作する。
図6は作業支援システム1を用いて製品W1に部品W2を取り付ける部品取り付け作業を行う手順を表すものである。まず、例えば、生産ライン上を搬送される製品W1である車体に、作業者Pが車内部品を取り付けている間に、産業用ロボット10は、自立動作モード制御部21からの指示を受けて、部品W2であるドアを図示しない供給装置から自動的に取り出し、仮想ガイドG上の所定の待機位置まで搬送する(取り出し工程)。
【0040】
次に、例えば、作業者Pが産業用ロボット10に保持されている部品W2を持つと、把持部13に搭載された力センサがそれを感知し、自立動作モードから協調動作モードに切り替わり、協調動作モード制御部22の移動制限機能22Aにより産業用ロボット10の移動範囲が制限される。これにより、部品W2を産業用ロボット10に保持させた状態で、作業者Pが部品W2を製品W1に近付けるような操作力を加えると、把持部13は移動制限機能22Aにより制御された仮想ガイドGに沿って、製品W1に近づく方に移動する(移動工程)。よって、作業者Pは現実にはないレールに沿って移動させているような感覚で部品W2を移動させることができ、部品W2は製品W1に対して所定の角度が保たれた状態で近づく。
【0041】
また、この移動工程では、例えば、産業用ロボット10によりパワーアシストされ、作業者Pは実際の部品W2よりも軽い仮想質量Mの物を動かすような感覚で部品W2を移動させることができる。その際、パワーアシスト量は、例えば、協調動作モード制御部22のパワー可変アシスト機能22Bにより、部品W2が製品W1から遠い時には、軽くして移動しやすくすると共に、反発力を高くして速度の出し過ぎを抑制し、部品W2が製品W1に近づいた時には、重くして不意な衝突を抑制すると共に、反発力を低くして速度による操作力変化を抑制するように制御される。具体的には、例えば、部品W2と製品W1との距離は位置センサ14を用いて算出し、作業者Pの操作力は把持部13に搭載された力センサにより検出し、仮想粘性係数D及び仮想質量Mを調整し、式8から目標速度v
k+1を求め、それに基づき、把持部13を移動させる。
【0042】
部品W2が製品W1の取付位置に対して十分に近づいたら、作業者Pが最終的な微調整を行い、部品W2を製品W1に取り付ける(取付工程)。取り付けが終了すると、協調動作モードから自立動作モードに切り替わり、産業用ロボット10は部品W2の取り出し位置に移動する。
【0043】
このように本実施の形態によれば、協調動作モードにおいて、産業用ロボット10により部品W2を保持しつつ、作業者Pが部品W2を保持し、部品W2を製品W1に対する取付位置まで移動させる際に、産業用ロボット10の移動範囲を制限することにより、部品W2が規定された仮想ガイドに沿って移動し、取付位置において部品W2が製品W1に対して所定の角度となるように制御するようにしたので、作業の習熟を行わなくても、だれでも簡単に部品W2を取り付けることができる。また、取り付け作業を補助する治具等が必要ないので、治具の取り出し、片付け、移動、車体への取付け、取外しなどの付随作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。更に、仮想ガイドに沿って移動するので、気遣い作業が削減され、作業ミスの発生を抑制することができる。加えて、車種ごとに設定を切り替える必要がないので、作業を楽にすることができる。
【0044】
特に、協調動作モードにおいて、産業用ロボット10のパワーアシストを受けて作業者Pが部品W2を製品W1に対する取付位置まで移動させる際に、部品W2と製品W1との距離が所定距離よりも遠い場合には、仮想質量Mを所定質量よりも軽く設定すると共に、仮想粘性係数Dを所定粘性係数よりも大きく設定し、かつ、部品W2と製品W1との距離が所定距離よりも近い場合には、仮想質量Mを所定質量よりも重く設定すると共に、仮想粘性係数Dを所定粘性係数よりも小さく設定するようにすれば、部品W2が製品W1から遠い時には、軽くして移動しやすくすると共に、反発力を高くして速度の出し過ぎを抑制し、部品W2が製品W1に近づいた時には、重くして不意な衝突を抑制すると共に、反発力を低くして速度による操作力変化を抑制することができる。よって、部品W2が製品W1から遠い時にはすばやく動かし、かつ、近い時には微細な調整がしやすいようにアシストすることができ、操作性が向上し、より安定した作業を行うことができる。
【0045】
また、部品W2と製品W1との距離が所定距離よりも遠い第1の基準距離L1と所定距離よりも近い第2の基準距離L2との間にある場合に、少なくとも第1の基準距離L1の側及び第2の基準距離L2の側において、仮想質量M及び仮想粘性係数Dを曲線的に変化させるようにすれば、操作感覚の急な変化を抑制することができ、滑らかに操作することができる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
上記実施の形態で説明した作業支援システム1を用いて、製品W1である車体に、部品W2であるドアを取り付ける取り付け作業を行った。その際、協調動作モードにおいて、移動制限機能22Aおよびパワー可変アシスト機能22Bを使用した。
【0047】
(比較例1)
実施例1に対する比較例1として、協調動作モードにおいて、移動制限機能22A及びパワー可変アシスト機能22Bを使わずに、産業用ロボット10をパッシブにすることで、作業者Pが把持部13を操作し、水平面における全ての自由度を調節しながら部品W2であるドアを移動させるようにしたことを除き、他は実施例1と同様にして取り付け作業を行った。
【0048】
(比較例2)
実施例1に対する比較例2として、協調動作モードにおいて、移動制限機能22A及びパワー可変アシスト機能22Bを使わずに、産業用ロボット10をパッシブにした状態で、把持部13のツメと車体に取り付けた治具とを固定させ、これをガイドとして、部品W2であるドアをスライドさせて取り付けるようにしたことを除き、他は実施例1と同様にして取り付け作業を行った。
【0049】
(評価)
実施例1、比較例1、及び、比較例2について、それぞれ取り付け作業を10回ずつ行い、それぞれについて、作業者Pが把持部13を操作し始めてから工具をツールスタンドに戻すまでの作業時間を測定すると共に、アーム部12が有する3軸のモータのそれぞれの回転角度からドアの取り付け角度を求めた。表1及び表2に、それぞれの平均値と標準偏差を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1に示したように、比較例1に比べて実施例1及び比較例2では、作業時間が短縮されていることが分かった。作業時間の分散についても小さくなっていることから、安定した作業が実現できていることが分かった。また、表2に示したように、比較例2は比較例1に比べて取り付け角度の分散が大きく変わっていないのに対して、実施例1では取り付け角度の分散が小さくなっており、安定した取り付けが実現できたことが分かった。なお、比較例1では部品W2であるドアと製品W1である車体の意匠面が3度接触したが、実施例1及び比較例2では一度も接触しなかった。
【0053】
また、実施例1、比較例1、及び、比較例2における把持部13の軌跡を
図7に示す。
図7に示したように、比較例1及び比較例2では毎回異なる軌跡を描いているが、実施例1では同じ軌跡を描いていた。
【0054】
すなわち、移動制限機能22Aにより、産業用ロボット10の移動範囲を制限し、部品W2が規定された仮想ガイドに沿って移動するように制御するようにすれば、作業者に依存せず安定した取り付け作業を行うことができることが分かった。また、気遣い作業が減少し、ドアと車体の接触回避に大きく貢献できることが分かった。
【0055】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、製品が車体、部品がドアである場合について説明したが、本発明は、他の部品を取り付ける場合、又は、他の製品に他の部品を取り付ける場合についても適用することができる。
【0056】
また、上記実施の形態では、走行レール11Aを固定して配設し、走行レール11Aに対して、横行レール11Bを走行レール11Aに沿ってスライド可能に配設し、横行レール11Bに対して、ベース11Cを横行レール11Bに沿ってスライド可能に配設する場合について説明したが、ベース11Cが2自由度を有し平面移動することができれば、他の構成を有していてもよい。例えば、横行レール11Bを走行レール11Aの伸長方向及び横行レール11Bの伸長方向にスライド可能とするようにしてもよい。
【0057】
更に、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。