特許第6647575号(P6647575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647575
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】層状珪酸塩粉粒体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/20 20060101AFI20200203BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20200203BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   C01B33/20
   B01J20/12 A
   B01J20/30
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-539634(P2018-539634)
(86)(22)【出願日】2017年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2017031752
(87)【国際公開番号】WO2018051826
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-178121(P2016-178121)
(32)【優先日】2016年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 博
(72)【発明者】
【氏名】田村 堅志
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−024941(JP,A)
【文献】 特開2015−199535(JP,A)
【文献】 特開2005−219972(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/040426(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/081103(WO,A1)
【文献】 特表2012−504102(JP,A)
【文献】 特開2015−189590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20
B01J20/12
B01J20/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発噴霧乾燥により形成される層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤からなり、表面中央に開口部または凹部を有する扁平粒子を含有する層状珪酸塩粉粒体。
【請求項2】
前記層状珪酸塩が、下記一般式で表されることを特徴とする請求項1に記載の層状珪酸塩粉粒体。
[(En+)a/n(M1M2)(Si4-eAl)O10(OH2-f)]
但し、nは1から3の自然数、0.1≦a≦0.8、0≦c≦3、0≦d≦2、2≦c+d≦3、0≦e<4、0≦f≦2であり、Eは層間にあるn価のカチオンであって、H、Li、Na、Mg、Ca、Zn、Sr、Fe、Ba、Ni、Cu、Co、Mn、Al、及びGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ、M1とM2は、2:1型シート内に形成される八面体内に入る金属であって、M1は、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Liのうちの少なくとも1つ、M2は、Al、Fe、Mn、Crのうちの少なくとも1つである。
【請求項3】
前記層状珪酸塩が、スメクタイト類、膨潤性合成マイカ類、バーミキュライト類の群から選択される一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項4】
前記スメクタイト類が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、またはスチブンサイトから選択される、請求項3に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項5】
前記膨潤性合成マイカ類が、Na−四珪素雲母、またはNa−テニオライトから選択される、請求項3に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項6】
前記バーミキュライト類が、2−八面体型バーミキュライト、または3−八面体型バーミキュライトから選択される、請求項3に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項7】
前記レオロジー調節剤が、アニオン性化合物であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項8】
前記レオロジー調節剤の配合比が、前記層状珪酸塩100質量部に対して1〜20質量部であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項9】
顕微鏡観察下で計測した前記扁平粒子の外径が500nmを超え、50μm以下であり、前記扁平粒子の体積(V)に対する表面積(S)の比である比表面積(S/V)が、同体積の球の1.1〜2.0倍であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体。
【請求項10】
請求項9に記載の層状珪酸塩粉粒体中に前記扁平粒子が60%(個数)以上、球形粒子が20%(個数)以下含有し、かつ、該扁平粒子の最大粒子径が50μm以下であることを特徴とする層状珪酸塩粉粒体。
【請求項11】
顕微鏡観察下で無作為抽出して結晶ab軸方向の一方向径を計測し、計測した粒子径の平均をとった平均一次粒子径が10nm〜100nmである層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤とが分散媒に分散した懸濁液を、0.4mL/s以上1.0mL/s以下の供給速度で供給し、前記分散媒が蒸発する雰囲気中に噴霧して、前記分散媒を蒸発乾燥することを特徴とする、表面中央に開口部または凹部を有する扁平粒子を含有する層状珪酸塩粉粒体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の層状珪酸塩粉粒体の製造方法において、遠心盤上に層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤とが分散媒に分散した懸濁液の液滴を噴霧して吹きつけ、円盤状に形成された該懸濁液膜を遠心盤の高速回転により飛散させた後、前記分散媒を蒸発乾燥することを特徴とする層状珪酸塩粉粒体の製造方法。
【請求項13】
前記懸濁液の液滴を噴霧して吹きつける際に、該懸濁液を0.2MPaの圧力のガスによって液滴化する、請求項12に記載の層状珪酸塩粉粒体の製造方法。
【請求項14】
前記層状珪酸塩が、下記一般式で表されることを特徴とする請求項11から13の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体の製造方法。
[(En+)a/n(M1M2)(Si4-eAl)O10(OH2-f)]
但し、nは1から3の自然数、0.1≦a≦0.8、0≦c≦3、0≦d≦2、2≦c+d≦3、0≦e<4、0≦f≦2であり、Eは層間にあるn価のカチオンであって、H、Li、Na、Mg、Ca、Zn、Sr、Fe、Ba、Ni、Cu、Co、Mn、Al、及びGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ、M1とM2は、2:1型シート内に形成される八面体内に入る金属であって、M1は、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Liのうちの少なくとも1つ、M2は、Al、Fe、Mn、Crのうちの少なくとも1つである。
【請求項15】
層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤とが分散媒に分散した懸濁液の固形分濃度が、0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項11から1の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体の製造方法。
【請求項16】
請求項11から1の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体の製造方法において、層状珪酸塩粉粒体を350〜800℃の温度にて加熱処理したことを特徴とする層状珪酸塩粉粒体の製造方法。
【請求項17】
請求項1から10の何れか1項に記載の層状珪酸塩粉粒体を用いた、クロマトグラフィー、吸着剤、ドラッグデリバリー、触媒、生物活性剤保護、顔料、又はコーティング用の機能性粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面中央に開口部または凹部を有する扁平粒子を含有する層状珪酸塩粉粒体に関する。
また、本発明は、層状珪酸塩を含有する流動原料から、蒸発噴霧乾燥プロセスを用いて、表面中央に開口部または凹部を有する扁平粒子を含有する層状珪酸塩粉粒体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック流動原料を液滴噴霧して、高温の空気に接触乾燥させて得られる凝集粒子は、製造過程の条件によって様々な形状の粉末が得られること、その単純な製造プロセスは製品コストに極めて優位に働くため、複合材料、触媒、医薬品など幅広い分野での応用が期待されている。これまでに粘土球状粒子(特許文献1、2、5)、アルミナ球状粒子(特許文献3)、シリカドーナツ状粒子(非特許文献1)、キトサンドーナツ状粒子(非特許文献2)、粘土花弁状粒子(特許文献4)、粘土中空状粒子(特許文献6)などが提案されてきている。
【0003】
特に粘土球状粒子は、液体クロマトグラフィー用カラム充填材として実用化されている(特許文献1)。この液体クロマトグラフィー用カラムは、粘土鉱物の有する陽イオン吸着性を活かして表面に分離活性なカチオン性金属錯体エナンチオマーを担持したものがステンレス管に充填されており、該金属錯体を溶解や変質させることなく、ラセミ混合物におけるエナンチオマーを光学分割することが可能である。
【0004】
一方、粒子の内部に空孔を有する造粒物には、空孔部に他の物質を挿入し、包接することで多機能な粉粒体の設計(マイクロカプセル化)が可能となり、化粧品、触媒、医薬品などの幅広い分野での応用が期待できる。この様な目的から層状珪酸塩と無機リン酸塩からなる粘土中空状粒子が製造されている(特許文献6)。その中空状粒子の平均粒子径は20nm以上、500nm以下という微粒子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−42347号公報
【特許文献2】特開平1−202658号公報
【特許文献3】特表2008−505835号公報
【特許文献4】特開2012−82368号公報
【特許文献5】特開2012−111650号公報
【特許文献6】特開2015−24941号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Soft Matter,第8巻,1955−1963項(2012)
【非特許文献2】Soft Matter,第6巻,4070-4083項(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において製造されている層状珪酸塩粉粒体は、球状粒子、花弁状粒子、もしくは開口部を持たない中空粒子のみである。例えば、液体クロマトグラフィー用カラム充填材への応用の場合、分離効率を向上させるためには、球状粒子の粒子サイズを小さくして比表面積を増加させる必要がある。しかし、粒子径を過度に減少させてしまうと、目詰まりによって溶離液を高速流動できなくなり、逆に処理効率が低下してしまう。また、マイクロカプセル化を考えた場合、従来技術の層状珪酸塩中空粒子には開口部がないため、造粒後の二次プロセスで物質を挿入することは極めて困難となってしまう。
シリカ(SiO)においては、表面中央に開口部を有するドーナツ状粒子が得られており、粒径を保ったままで球状粒子よりも大きな比表面積とすることはできる。しかし、シリカ粒子は、層状珪酸塩粒子とは異なり、陽イオンを選択的に吸着することはできない。
キトサンドーナツ状粒子は、粒径が大きく(平均粒径0.6 mm)、カラム充填材として使用できない。
【0008】
本発明は、以上述べた従来技術を念頭になされたもので、表面中央に開口部または凹部を有する層状珪酸塩の扁平粒子を製造することによって、クロマトグラフィー、化粧品、触媒、医薬品(生物活性剤保護、ドラッグデリバリーなど)、顔料、コーティング材料などに有用な機能性粉粒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の層状珪酸塩粉粒体は、蒸発噴霧乾燥により形成される層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤からなり、表面中央に開口部または凹部を有する扁平粒子を含有するものである。この扁平粒子は、例えば、粒子表面に開口部を有するドーナツ状扁平粒子や、凹部を有するマッシュルーム状扁平粒子である。
【0010】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、下記組成式で表わされる層状珪酸塩を好適に使用できる。
[(En+)a/n(M1M2)(Si4-eAl)O10(OH2-f)]
但し、nは1から3の自然数、0.1≦a≦0.8、0≦c≦3、0≦d≦2、2≦c+d≦3、0≦e<4、0≦f≦2であり、Eは層間にあるn価のカチオンであって、H、Li、Na、Mg、Ca、Zn、Sr、Fe、Ba、Ni、Cu、Co、Mn、Al、及びGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ、M1とM2は、2:1型シート内に形成される八面体内に入る金属であって、M1は、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Liのうちの少なくとも1つ、M2は、Al、Fe、Mn、Crのうちの少なくとも1つである。
【0011】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、層状珪酸塩が、スメクタイト類、膨潤性合成マイカ類、バーミキュライト類の群から選択される一種であるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、前記スメクタイト類が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、またはスチブンサイトから選択されるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、前記膨潤性合成マイカ類が、Na−四珪素雲母、またはNa−テニオライトから選択されるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、前記バーミキュライト類が、2−八面体型バーミキュライト、または3−八面体型バーミキュライトから選択されるとよい。
【0012】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤が、アニオン性化合物であるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤の配合比が、層状珪酸塩100質量部に対して1〜20質量部であるとよい。
【0013】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、顕微鏡観察下で計測した前記扁平粒子の外径が500nmを超え、50μm以下であり、前記扁平粒子の体積(V)に対する表面積(S)の比である比表面積(S/V)が、同体積の球の1.1〜2.0倍であるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、上記の層状珪酸塩粉粒体中に前記扁平粒子が60%(個数)以上、球形粒子が20%(個数)以下含有し、かつ、該扁平粒子の最大粒子径が50μm以下であるとよい。
【0014】
本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法において、好ましくは、遠心盤上に層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤を含む懸濁液の液滴を噴霧して吹きつけ、円盤状に形成された該懸濁液膜を遠心盤の高速回転により飛散させた後、分散媒を蒸発乾燥するとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法において、好ましくは、前記層状珪酸塩として、顕微鏡観察下で無作為抽出して結晶ab軸方向の一方向径を計測し、計測した粒子径の平均をとった平均粒子径が10nm〜100nmである層状珪酸塩を用いるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法において、好ましくは、層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤を含む懸濁液の固形分濃度が、0.1〜20質量%であるとよい。
本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法において、好ましくは、層状珪酸塩粉粒体を350〜800℃の温度にて加熱処理するとよい。
【0015】
本発明の層状珪酸塩粉粒体は、クロマトグラフィー、ドラッグデリバリー、触媒、生物活性剤保護、顔料、又はコーティング用の機能性粉末に有用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の層状珪酸塩粉粒体は、ドーナツ状扁平粒子又はマッシュルーム状扁平粒子を含有する。非特許文献2によれば、ドーナツ状扁平粒子は、同じ体積の球状粒子よりも大きな比表面積(約1.5倍)をもつ。また、マッシュルーム状扁平粒子は、内部空孔部に直接物質を包接できる。このため、得られる扁平粒子は、クロマトグラフィー、ドラッグデリバリー、触媒、生物活性剤保護、顔料、及びコーティング用の機能性粉末に使用できる。
また、本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法によれば、遠心盤上に層状珪酸塩とレオロジー調節剤を含む懸濁液を噴霧して吹き付け、遠心盤の回転数を調節することで、効率的に粒度分布を制御した扁平粒子を製造することができる。該製造方法では、懸濁液の溶媒を水とすることができるため、人体に影響のある有害物質を含まず、有害物質の除去等の別処理を必要としないため、簡便に大量の扁平粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、ガスアトマイザーと遠心アトマイザーとを組み合わせた蒸発噴霧乾燥装置の概略図である。
図2図2は、表面中央に開口部を持つ扁平粒子の形状を規定し、かつ扁平粒子の表面積及び体積を算出するための2つの半径の定義を示す模式図である。
図3図3は、層状珪酸塩(ラポナイトRDS)から作製した扁平粒子の光学顕微鏡写真で、白線は10μmの長さを示す。
図4図4は、層状珪酸塩(ラポナイトRDS)から作製したドーナツ型粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図5図5は、層状珪酸塩(ラポナイトRDS)から作製したマッシュルーム型粒子の走査型電子顕微鏡像である。
図6図6は、層状珪酸塩(ラポナイトRDS)から作製したマッシュルーム型粒子のX線CT(コンピューター断層撮影)像である。
図7図7は、層状珪酸塩(ラポナイトRDS)から作製した扁平粒子の粒径分布(Frequency, 棒グラフ)と粒径分布の積算値(Cumulative frequency, 黒丸)とを示すグラフである。
図8図8は、同体積の球に対するドーナツ型粒子の比表面積の割合の頻度分布を示すグラフである。
図9図9は、層状珪酸塩(ラポナイトRD)から製造した球状粒子の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、本発明に使用する層状珪酸塩について説明する。
本発明に使用する層状珪酸塩は、1枚の八面体シートと2枚の四面体シートが四面体シート/八面体シート/四面体シートの順で積層された単位層を備える。四面体シートは、Siを中心としてOが四面体の各頂点に存在するものがつながって構成されたシートであり、八面体シートはMg、Mn、Al等を中心として6つのOもしくはOHが八面体の頂点に存在するものがつながって構成されたシートである。四面体シート/八面体シート/四面体シートの順で積層された構造は、2:1型構造と称される。
【0019】
この2:1型構造の珪酸塩層は、その構造中の同形置換により正電荷が不足すると、置換量に相当する陽イオンが交換性カチオンとして層間に存在するようになる。このときの2:1型層の負電荷を層電荷(layer charge)と呼び、2:1型構造の鉱物はこの値(2:1型の組成式のあたりの電荷の絶対値で示す)によって分類されている。タルク、パイロフィライト:0、スメクタイト:0.2〜0.6、バーミキュライト:0.6〜0.9、雲母、雲母粘土鉱物:0.6〜1.0、緑泥石:0.8〜1.2、脆雲母:〜2である。
【0020】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、好ましくは、下記組成式で表わされる層状珪酸塩を好適に使用できる。
[(En+)a/n(M1M2)(Si4-eAl)O10(OH2-f)]
但し、nは1から3の自然数、0.1≦a≦0.8、0≦c≦3、0≦d≦2、2≦c+d≦3、0≦e<4、0≦f≦2であり、Eは層間にあるn価のカチオンであって、H、Li、Na、Mg、Ca、Zn、Sr、Fe、Ba、Ni、Cu、Co、Mn、Al、及びGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ、M1とM2は、2:1型シート内に形成される八面体内に入る金属であって、M1は、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Liのうちの少なくとも1つ、M2は、Al、Fe、Mn、Crのうちの少なくとも1つである。
【0021】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、蒸発噴霧乾燥に供するための懸濁液形成のための好ましい組成としては、特に層間カチオン(E)の好適な組成量は、0.1≦a≦0.8であるが、更に好ましくは0.3≦a≦0.7の範囲のものである。aが0.1未満になると層間陽イオン量が少なくなり水膨潤性が乏しくなり、0.8を超えると単位層のもつ層電荷が高くなるので、層同士の引き合う力が強まり、同様に均一な懸濁液の調製が困難となる。いずれも蒸発噴霧乾燥のプロセスに供給する懸濁液として好ましくない。
【0022】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、層状珪酸塩としては、溶媒に膨潤するものであれば特に制限されないが、具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトに代表されるスメクタイト類、Na−四珪素雲母、Na−テニオライトなどの膨潤性合成雲母(マイカ)類、2−八面体型バーミキュライト、3−八面体型バーミキュライトなどのバーミキュライト類が好適である。これらの層状珪酸塩のうち、スメクタイト類及びバーミキュライト類については、天然鉱物であってもよく、水熱合成、溶融法、固相法等による合成物であってもよい。また、本発明では、上記の層状粘土鉱物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、原料として使用する層状珪酸塩の一次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡像(TEM)、走査型電子顕微鏡像(SEM)、或は走査プローブ顕微鏡(SPM)で行なうことができる。原料の1次粒子が凝集・固結して2次粒子を形成している場合は、1次粒子にまで分散してから測定する。この場合、層状珪酸塩結晶のab軸方向の定方向径(Green径)が計測され、計測した粒子径の数平均をとったものを平均粒子径とする。
【0024】
本発明に使用する層状珪酸塩の平均一次粒子径は、10nm〜100nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは20nm〜80nmの範囲である。10nm未満では層状珪酸塩の結晶を製造、精製することが困難となり、100nmより大きいと蒸発工程で粒子隔壁の平滑性が損なわれ形状制御ができなくなる虞がある。
【0025】
一般に、水に分散した層状珪酸塩、特にスメクタイト懸濁液は、コロイド状態、即ちゾルを形成するが、高濃度になるにつれて粘性が上昇し、ある濃度を境に顕著なチキソトロピー性を示す。これは、結合欠陥の存在しない層面(四面体シート)に対して、端面がSi−O,Al−O,Mg−O,O−O間等が切れた結合欠陥から構成されているため、層面と端面の電荷が異なることで双方が引き寄せあってゲル(カードハウス構造)を形成するためである。このため、スメクタイト懸濁液を蒸発噴霧乾燥する際に、溶媒が蒸発して固体濃度が増加すると、飛散した懸濁液は急激にゲル化して芯の詰まった凝集粉末を形成する。
【0026】
本発明では、蒸発噴霧乾燥過程で安定した高濃度流動分散液(ゾル)状態を保つため、層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤を使用する。レオロジー調節剤は、層状珪酸塩粒子の端部に吸着するものであれば制限がなく、アニオン性化合物、水酸基を有する化合物、アルコキシル基を有する化合物が有用である。特にアニオン性化合物は、スラリーの中で層状珪酸塩粒子の端部に容易に吸着し電荷を持つことで、粒子どうしの電気的反発力が生じるため、分散剤として良好に働くものである。その結果、高い空隙率を有する扁平粒子が得られる。この理由は必ずしも明らかではないが、蒸発噴霧乾燥過程(噴霧→霧状ゾル粒子形成→乾燥→凝集体形成)における急激な固体濃度の上昇時においても流動性が保たれ、端部同士の結合によって溶媒−固体のコア−シェル構造が形成される為と考えられる。
【0027】
層状珪酸塩の結晶端面を修飾する可能なアニオン性化合物としては、好ましくは、リン酸塩類、カルボン酸類、スルホン酸塩類、または硫酸塩類である。
リン酸塩類は、第一リン酸イオン(HPO)、第二リン酸イオン(HPO2−)、第三リン酸イオン(PO3−)、二リン酸イオン(P4−)、三リン酸(P105−)、ポリリン酸イオン(P3n+1(n+2)−)、及び有機リン酸イオンを含む塩に代表されるもので、具体的には、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、三リン酸五カリウム、トリポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、酸性ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、第一リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、第三リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、メタリン酸マグネシウム、第一リン酸アルミニウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、トリポリリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム、重過石、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、及びラウリルリン酸カリウムなどがある。
【0028】
カルボン酸類としては、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等の飽和脂肪酸及びその金属塩がある。
また、カルボン酸類としては、安息香酸(ベンゼンカルボン酸)、フタル酸(ベンゼン−1,2−ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)、テレフタル酸(ベンゼン−1,4−ジカルボン酸)、サリチル酸(2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、メリト酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、ケイ皮酸(3−フェニルプロパ−2−エン酸)等の芳香族カルボン酸及びその金属塩もある。
また、カルボン酸類としては、シュウ酸(エタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)、コハク酸(ブタン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、フマル酸((E)−ブタ−2−エン二酸)、マレイン酸((Z)−ブタ−2−エン二酸)ジカルボン酸、アコニット酸(2−カルボキシプロパ−1−エントリカルボン酸)等のポリカルボン酸及びその金属塩もある。
さらに、カルボン酸類としては、オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸及びその金属塩、乳酸(2−ヒドロキシプロパン酸)、リンゴ酸(2−ヒドロキシブタン二酸)、クエン酸(2−ヒドロキシプロパントリカルボン酸)等のヒドロキシ酸及びその金属塩もある。前記クエン酸の金属塩としては、クエン酸一ナトリウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸第二鉄アンモニウムなどが例示される。
【0029】
スルホン酸塩類としては、1−ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロブタンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどがある。
【0030】
硫酸塩類としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノ−ルスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどがある。
【0031】
本発明に使用する層状珪酸塩において、好ましくは、層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤の配合比が、層状珪酸塩100質量部に対して、レオロジー調節剤が1〜20質量部の範囲が好ましく、さらに好適なのは層状珪酸塩100質量部に対して、レオロジー調節剤が3〜10質量部の範囲である。100質量部の層状珪酸塩に対してレオロジー調節剤が1質量部未満になると球状の中実粒子の割合が多くなり、20質量部を超えると分散液中の層状珪酸塩粒子間の架橋構造が不安定となり、目的の扁平粒子を形成することが困難となる場合がある。
【0032】
本発明の層状珪酸塩粉粒体において、走査型電子顕微鏡像により求めた前記偏平粒子の外径が500nm〜50μmであり、前記扁平粒子の体積(V)に対する表面積(S)の比である比表面積(S/V)が、同体積の球の1.1〜2.0倍であることあることが好ましく、更に好ましくは、外径が1〜30μm、比表面積が同体積の球の1.3〜1.6倍の範囲である。外径が500nm未満では、開口部の無い中空状粒子が形成される虞があり、50μmを超えると、空孔径の不均一な粒子となり機能低下の原因になる虞がある。一方、比表面積が同体積の球の1.1倍未満では扁平形状が不十分で他の物質を取り込む効果が見込めず、2.0倍を超えると形状の不均一化により性能低下の虞がある。
【0033】
尚、偏平粒子の粒子形状の計測は、その異方性の形状と粒度分布を持つことから、沈降重量法や遠心沈降光透過法、レーザー回折・散乱法等による間接的測定法よりも、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、レーザー顕微鏡、デジタル顕微鏡等により直接観察し、外径を個々の粒子について計測し、数平均を求める方が好ましい。上記の外径もこの数平均の値で表わされる。
【0034】
一方、比表面積(S/V)は、顕微鏡やX線イメージングによる形状測定法、流体透過法、気体吸着法等で求める事が出来るが、扁平粒子の粒子サイズから、透過型電子顕微鏡像(TEM)、走査型電子顕微鏡像(SEM)、或は走査プローブ顕微鏡(SPM)等を用いた形状測定法が特に好ましい。
【0035】
層状珪酸塩およびリン酸塩の分散に用いられる溶媒は、水がベースになるが、これにアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等)及び/又は多価アルコールが混合されていてもよい。
【0036】
次に、本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法について説明する。
本発明に使用される蒸発噴霧乾燥の方法としては、従来公知の手段をそのまま採用することができ、例えば、二流体噴射弁を使用する方法、圧力噴射弁を使用する方法、遠心アトマイザーを使用する方法、静電アトマイザーを使用する方法、振動ノズルを使用する方法、音響アトマイザーを使用する方法、または、それらを組み合わせた方法等、流体を微粒子化して高温気流中に噴霧し、乾燥粉末化する方法を使用することができる。
【0037】
特に、遠心盤(ディスク)上に層状珪酸塩と該層状珪酸塩の結晶端面を修飾するレオロジー調節剤を含む懸濁液の液滴を噴霧して吹きつけ、円盤状に形成された該懸濁液膜を遠心ディスクの高速回転により飛散させた後、分散媒を蒸発乾燥する方法、すなわち二流体噴射弁を使用する方法(ガスアトマイザー)と遠心アトマイザー(回転円板アトマイザー)とを組み合わせた方法、が好適である。
図1は、ガスアトマイザーと遠心アトマイザーとを組み合わせた蒸発噴霧乾燥装置の基本構成を説明する構成図である。本装置は、噴霧処理を内部で行う円筒形のチャンバー(10)と、その内部に配置した、原料を遠心噴霧する遠心ディスク(30)と、遠心ディスク(30)に原料を供給する原料供給機構(20)により構成されている。
【0038】
原料供給機構(20)は、前記チャンバー(10)上方に配置されていて、下端に、遠心ディスク(30)の回転中心に向かって原料を流下させる流下口(23)を有する原料タンク(21)と、流下口(23)から流下した原料を遠心ディスク(30)に向かって噴射するガス噴霧ノズル(22)を含んで構成されている。
【0039】
図1に示す蒸発噴霧乾燥装置を用いて層状珪酸塩粉粒体を製造する際には、原料タンク(21)の流下口(23)から流下した層状珪酸塩の懸濁液を、ガス噴霧ノズル(22)から噴出するガスにより液滴化して、高速回転する遠心ディスク(30)に吹き付ける。当該遠心ディスク(30)に吹き付けられた懸濁液は、薄い膜となり、回転による遠心力で、その外周縁からチャンバー(10)内部に微細液滴として飛散される。チャンバー(10)内部に微細液滴として飛散した懸濁液は、チャンバー(10)の底部に落下する途中で、ヒータ(図示せず)により温められて液分が蒸発除去される。このようして得られた噴霧乾燥物は、前記ガス噴霧ノズル(22)から噴射されたガスとともに、チャンバー(10)の外部に取り出され回収される。
【0040】
この際の蒸発噴霧乾燥装置の運転条件としては、流下口(23)から流下する懸濁液の供給速度を0.4〜1.0mL/s、遠心ディスク(30)の回転数を10,000〜60,000rpmとすることが好ましい。懸濁液の供給速度を0.4mL/s以上とすることで、単位時間当たりに得られる層状珪酸塩粉粒体の量が増え、製造を効率的に行うことができる。他方、懸濁液の供給速度を1.0mL/s以下とすることで、扁平粒子を高い割合で含む層状珪酸塩粉粒体が得られる。また、遠心ディスクの回転数を10,000〜60,000rpmの範囲とすることで、扁平粒子を高い割合で含む層状珪酸塩粉粒体が得られる。
【0041】
本発明の層状珪酸塩粉粒体の製造方法においては、前述のようにして得られた噴霧乾燥物を、350〜800℃の温度にて加熱処理することによって、扁平粒子の耐水性を向上させることができる。更に好適な処理条件としては450〜700℃の範囲である。この焼成処理温度が350℃未満では層状珪酸塩層間への水の復水によって耐水性が不充分となる虞があり、一方900℃を超えると層状珪酸塩がガラス質に転移し、表面の物質吸着特性を維持できなくなる虞がある。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0043】
本実施例において使用した、表面中央に開口部を持つ扁平粒子の比表面積の評価法は、以下のとおりである。
1.粒子形態観察
膨潤化処理後の粒子形態を、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6700F)を用いて加速電圧15kVで形態観察を行った。また広視野での観察に光学顕微鏡(ニコン社製、E400POL)を用いた。凹部観察については放射光施設SPring−8(理化学研究所播磨地区)にて、X線CT像を撮影した。
【0044】
2.比表面積評価
走査型電子顕微鏡像から、図2に示すように扁平粒子の大円の半径rと小円の半径aを計測する。これら2つの半径値から式(1)に従って、扁平粒子の体積Vを算出する。また式(2)に従って、扁平粒子の表面積Sを算出する。これらの結果から表面中央に開口部を持つ扁平粒子の比表面積をS/Vとして評価する。
ここで、式1は、表面中央に開口部を持つ扁平粒子の体積計算式である。また、式2は、表面中央に開口部を持つ扁平粒子の表面積計算式である。
【数1】
【数2】
【0045】
3.扁平粒子の生成の合否
粒子形態観察の結果から、500個の粒子形状を計測した後、外径が500nmを超え、50μm以下であり、比表面積が同体積の球の1.1〜2.0倍である扁平粒子が、60%以上ある:(評価)◎、40%以上ある:(評価)○、10%以上ある:(評価)△、10%未満である:(評価)×、と評価した。前記基準で性能の◎、○、△を扁平粒子製造の合格判定とした。
【0046】
<実施例1>
層状珪酸塩として、ピロリン酸四ナトリウムを8質量%含有する合成ヘクトライト(ラポナイトRDS;BYK社製)を使用し、水495mLに層状珪酸塩5gをマグネチックスターラーで分散させ、層状珪酸塩とレオロジー調節剤とを含む、固形分濃度(以下、「原料の濃度」と記載する。)が1質量%の懸濁液を得た。得られた懸濁液を、ガスアトマイザーと遠心アトマイザーとを組み合わせた蒸発噴霧乾燥装置(以下、「遠心噴霧乾燥装置」と記載する)により噴霧乾燥して、2〜25μmの扁平粒子を得た。
装置の操作条件を表1に示す。この製造した粒子の光学顕微鏡写真を図3に示す。表面中央に開口部または凹部を呈していることがわかる。
【0047】
この製造した粒子の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。中央の直径10μmの扁平粒子は表面中央に開口部を呈しており、いわゆるドーナツ型であることがわかる。図5の走査型電子顕微鏡像から、製造した扁平粒子の一部は表面中央に凹部を呈しており、いわゆるマッシュルーム型粒子であることがわかる。図6のX線CT像からこの凹部が粒子を貫通していないこと、および粒子内部の空間が入口よりも広いことがわかる。
【0048】
製造した扁平粒子の粒径(直径)分布を図7に示す。走査型電子顕微鏡像からランダムに抽出した500粒子によって、この分布を得た。ヒストグラムが粒径分布(Frequency)を示し、黒丸が粒径分布の積算値(Cumulative frequency)を示す。粒径は、2〜25μmのものが観察されたが、80%以上の粒子の直径が10〜20μmの範囲にあり、特に60%以上が12〜16μmの粒径を呈した。
得られた粒子のうち、ドーナツ型粒子についての比表面積の分布を図8に示す。走査型電子顕微鏡像からランダムに抽出した50粒子によって、この分布を得た。図8から、本実施例で製造したドーナツ型粒子は、同体積の球状粒子に対して、比表面積が1.1から1.7倍大きいことがわかる。また、その大部分が、1.2から1.4倍の範囲に存在する。結果を表3に示す。
【0049】
表1は、実施例1の実験条件を示している。
【表1】
【0050】
<実施例2>
水495mLに水膨潤性粘土鉱物(スメクトンSA;クニミネ社製)5g、ピロリン酸四ナトリウムを0.3g添加し、マグネチックスターラーで分散させ、原料の濃度が1質量%の懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心噴霧乾燥装置により噴霧乾燥して、0.5〜30μmの扁平粒子を得た。装置の操作条件を表2に示す。また、結果を表3に示す。
【0051】
表2は、実施例2の実験条件を示している。
【表2】
【0052】
<実施例3>
実施例1の回転盤の回転数を10,000(rpm)とした以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0053】
<実施例4>
実施例2の回転盤の回転数を10,000(rpm)とした以外は、実施例2と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0054】
<実施例5>
実施例2の回転盤の回転数を20,000(rpm)とした以外は、実施例2と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0055】
<実施例6>
実施例1の回転盤の回転数を30,000(rpm)とした以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0056】
<実施例7>
実施例1の原料の濃度を1.5質量%にした以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0057】
<実施例8>
実施例1の原料の濃度を2質量%にした以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0058】
<実施例9>
実施例1の原料の濃度を2.5質量%にした以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0059】
<実施例10>
実施例1の原料の濃度を3質量%にした以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0060】
<実施例11>
実施例1の回転盤の回転数を40,000(rpm)した以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0061】
<実施例12>
実施例1の回転盤の回転数を50,000(rpm)した以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0062】
<実施例13>
実施例1の回転盤の回転数を60,000(rpm)した以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0063】
<実施例14>
実施例2の回転盤の回転数を50,000(rpm)した以外は、実施例2と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0064】
<実施例15>
実施例1の回転盤を取り除き、ガスアトマイズ法のみで製造した以外は、実施例1と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0065】
<比較例1>
層状珪酸塩として、ピロリン酸四ナトリウムを含まない合成ヘクトライト(ラポナイトRD;BYK社製)を使用した以外は実施例1と同様に試料を作製した。その結果、0.4〜29μmの球状粒子のみが生成され、扁平粒子は生成されなかった。装置の操作条件は実施例1と同じである。走査型電子顕微鏡像を図9に示す。扁平粒子は製造されず、球状粒子のみが製造されている。結果を表3に示す。
【0066】
<比較例2>
ピロリン酸四ナトリウムを添加しなかった点以外は実施例2と同様に試料を作製した。その結果、0.4〜20μmの球状粒子のみが生成され、扁平粒子は生成されなかった。また、結果を表3に示す。
【0067】
<比較例3>
層状珪酸塩として、ピロリン酸四ナトリウムを含まない合成ヘクトライト(ラポナイトRD;BYK社製)を使用した以外は、実施例6と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0068】
<比較例4>
層状珪酸塩として、ピロリン酸四ナトリウムを含まない合成ヘクトライト(ラポナイトRD;BYK社製)を使用した以外は、実施例11と同様に試料を作製した。結果を表3に示す。
【0069】
<比較例5>
水495mLに層状珪酸塩としてNa型モンモリロナイト(クニピアF;クニミネ社製)をそれぞれ5g分散させて懸濁液を調製した。レオロジー調節剤を添加せずに、実施例2の条件で試料を作製した。結果を表3に示す。なお、本比較例で使用したクニピアFは、天然物由来で粒度分布が一定しないため、表中の「原料の平均粒子径」欄には、平均粒径ではなく粒径範囲を記載している。原料の最小粒径が100nm程度であり、したがって平均粒径が100nmを超えるクニピアFでは、実施例と同じ条件で層状珪酸塩粉粒体を製造した場合でも、扁平粒子が生成されなかった。
【0070】
<比較例6>
比較例5で使用した層状珪酸塩に6質量%のピロリン酸四ナトリウムを添加した以外は、比較例5と同様に試料を作成した。結果を表3に示す。原料の平均粒径が100nmを超えるクニピアFでは、実施例と同じ条件で層状珪酸塩粉粒体を製造した場合でも、扁平粒子が生成されなかった。
【0071】
表3は、実施例1〜15と比較例1〜6のまとめである。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の層状珪酸塩粉粒体は、後工程において性質の異なる多種類のカチオン性物質を、吸着−担持、マイクロカプセル化できるため、多様な機能性粉粒体を製造する上で極めて有効である。得られた層状珪酸塩粉粒体は表面中央に開口部または凹部を有する扁平粒子であるため、カラムクロマトグラフィー用充てん剤、触媒の担体、化粧品、医薬品(生物活性剤保護、ドラッグデリバリーなど)、顔料、コーティング材料など、多分野への応用が期待できる。
【符号の説明】
【0073】
10 チャンバー
20 原料供給機構
21 原料タンク
22 ガス噴霧ノズル
23 流下口
30 遠心ディスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9