(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年急速に普及が進むベビーリーフ等の未熟野菜は、植物体が小さいため、通常の播種ピッチでは無駄が多く、また、単位面積あたりの収量が低くなる。そこで、栽培効率を上げ、収量を増やすためには一般の野菜よりも狭いピッチで播種する必要がある。例えば15mmピッチで種子を播種すると1平方メートル当たり4,400粒の種子を播種する事になるが、これを人力によって行うと多額の人件費が必要になる。そこで、このような分野では特に省力化技術が必要とされている。
【0003】
これを解決するために、水に溶解するPVA(ポリビニルアルコール、ポバール)フィルム製のテープ等に種子を概等間隔に固定したシーダーテープと呼ばれるテープや、等間隔に穴の開いた板を利用する播種装置などが利用されている。しかし、テープでは1条ずつしか播種できないため効率が上がらず、更に、水耕栽培に使用する場合は分解されにくいPVAが用水に溶け出て悪影響を与えるなどの問題がある。
【0004】
一方、播種装置による播種は土耕栽培においては作業効率を著しく高める事ができるが、水耕栽培等の土を使わない栽培の場合は、播種した種子を培地に押し込む作業が必要になるなど、土耕に比べ効率が上がりにくいなどの問題がある。
【0005】
また、特許文献1〜7に示すように、ロールもしくはシート状の紙等でできた基材に必要な大きさ・形状の接着剤を塗布し、その接着剤によって種子を基材に固定し、同シートを畑や栽培容器に置くことにより、播種を大いに省力化できる考案が成されている。しかし何れの方法も、比較的丈夫な紙の基材に接着剤を塗布し、同接着剤で種子を固定するとともに、表面にPVAや紙による保護層を設けて種子の離脱を防ぐなど、土耕栽培を主たる対象としており、また、栽培期間として数週間あるいは数か月を要する一般的な野菜等の栽培用で、生育期間の短い未熟野菜や苗用の種子を播種するためには最適とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
更に、シート状の培地を利用して1〜3週間程度の生育期間で未熟野菜を生産する水耕栽培においては、シードペーパーの台紙が丈夫であると出荷時まで培地上に残り、野菜に混入する恐れがある。また、保護層のPVAが用水に溶け出て分解されないため養液中の濃度が徐々に高くなり、養液の流れに悪影響を与えたり、発泡による漏れが生じる等の問題が生じる他、野菜の生育障害への影響も懸念される。更には、素材量が多いと材料費・製造費共高額になり、1本あたりの付加価値が低い未熟野菜栽培には適さない。
【0008】
本発明は、このような問題を解決する為に成されたもので、水耕栽培による未熟野菜等の生産において、播種作業を大幅に省力化するためのシードペーパーを安価に提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るシードペーパーは、水可分解紙から成る台紙に設けられた複数の、対象種子と略同等の平面形状を有し、該対象種子の高さの1/10〜1倍の深さを有する凹部のそれぞれの内部に、該対象種子が水可溶性接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るシードペーパーで用いる台紙は、水に分解可能な紙であり、例えばトイレットペーパーのJIS規格であるJIS4501-1993に規定されている品質(坪量18g/m2以上、破裂強さ78kPa(10枚)以上、ほぐれやすさ100s以内)を備えるものを用いることができる。
【0011】
本発明に係るシードペーパーが対象とする種子は、水耕栽培が可能であって、大きさが概ね0.3mm以上、5mm以下であるようなあらゆる種類の種子である。例えば、近年ベビーリーフとして大きな需要があるミズナやロロロッサ等は好適に本発明に係るシードペーパーの対象とすることができる。
【0012】
本発明に係るシードペーパーにおいて、台紙に設けられた複数の凹部のそれぞれに種子が収容されているが、各凹部の形状が上記のようなものであることにより、種子はその高さの少なくとも1/10において台紙により覆われ、接着剤により台紙に接着されていることから、台紙への付着が確実となっており、運搬時や水耕培地への設置時(これは機械で行うことができる。)に種子が台紙から離脱するという事態が避けられる。
【0013】
本発明に係るシードペーパーでは、台紙が水可分解性であることから、台紙は水耕栽培中に徐々に分解する。ここで、水による分解は、水の存在により物理的に分離するものと、水中の微生物等により分解されるものの双方の態様があり得る。水により分解した台紙成分は、培地表面から消失し、水により培地から除去される。分解した紙成分は水に溶解するものではないため、フィルター等により水から除去することが可能であり、PVA等のように水に蓄積されてゆくということはない。従って、水耕栽培において長期間の水循環処理を行うことができる。
【0014】
また、種子を台紙に固定するための接着剤に水可溶性接着剤を用いているため、種子に付着した台紙及びこの接着剤自体も水に押し流される。本発明においては、この接着剤の使用量(付着面積)はシードペーパー全体の面積からすると僅かなものであるため、長期間の水の循環使用を妨げることはない。
【0015】
次に、上記のようなシードペーパーを製造するために好適な装置を次に提示する。本発明に係るシードペーパー製造装置は、
a) 水可分解紙から成る長尺台紙を供給する台紙供給部と、
b) 前記台紙供給部より供給される長尺台紙の一面に所定の間隔で水可溶性接着剤を付着させる接着剤適用部と、
c) 前記長尺台紙の前記一面上に多数の種子を載置する種子載置部と、
d) 前記長尺台紙に付着しなかった種子を前記長尺台紙から除去する除去部と、
e) 前記除去部を通過した前記長尺台紙を、前記種子よりも柔らかい
長尺台紙側のローラーと、該長尺台紙側のローラーよりも硬い種子側のローラーから成る1対のローラーにより挟んで前記長尺台紙を送る種子固定部と
を有することを特徴とする。
【0016】
上記種子載置部において接着剤が付着された長尺台紙上に多数の種子を載置すると、長尺台紙上の接着剤が付着された箇所にある種子は長尺台紙に付着するし、それ以外の箇所にある種子は長尺台紙に付着しない。従って、除去部において付着しなかった種子を長尺台紙から除去することにより、除去部を通過した長尺台紙は、接着剤を付着させた箇所のみに種子が付着した状態となっている。除去部における非付着種子の除去方法としては、重力を用いるのが最も簡単である。すなわち、長尺台紙を傾斜させたり、上下逆にする等だけで、非付着種子を除去することができる。また、風力や振動等の積極的な除去手段を用いてもよい。ここで除去された種子は、種子載置部で再び用いることができる。
【0017】
上記種子固定部では、前記除去部を通過した前記長尺台紙を、前記種子よりも柔らかい1対のローラーにより挟んで回転することにより、長尺台紙を送る。1対のローラーの硬さをこのように設定することにより、長尺台紙上に付着した種子はローラーにより潰されることなく両ローラー間に埋設されるような状態となる。これにより、長尺台紙に凹部が形成され、種子はその凹部の中に、その高さの少なくとも1/10が埋設された状態となる。また、この際に、2本のローラーの間の圧力により、種子と長尺台紙の間に存在する接着剤が広がり、接着面積がより大きくなって、種子の長尺台紙への接着がより確実となる。
【0018】
ここで、1対のローラーを構成する2本のローラーの相対的硬さを、種子側の方が硬く、長尺台紙側の方が柔らかいように設定す
る。こうすることにより、長尺台紙上に付着した
種子はより大きく長尺台紙側に押し込まれることになり、長尺台紙には種子の高さの1/3〜1倍の深さの凹部が形成され、種子がその中に埋設された状態となる。
【0019】
なお、台紙供給部では、この種子固定部の1対のローラーによる送り力により、ロール状(或いは折り畳み状)の長尺台紙を引き出すようにしてもよい。
【0020】
種子固定部を通過した種子付きの長尺台紙(シードペーパー)は、巻き取ってもよいし、適宜の寸法で切断してシート状にしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るシードペーパーでは、台紙が水可分解性であることから、台紙は水耕栽培中に物理的に、或いは微生物により、徐々に分解し、培地表面から消失して水により流されてゆく。この分解物はフィルター等により水から除去することが可能であり、PVA等のように水に蓄積されてゆくということはないため、水耕栽培において長期間の水循環処理を行うことができる。また、種子を台紙に固定する水可溶性接着剤も水耕栽培水に混入するが、この接着剤の使用量(付着面積)はシードペーパー全体の面積からすると僅かなものであるため、長期間の水の循環使用を妨げることはない。
これらにより、本発明に係るシードペーパーは水耕栽培に適したシードペーパーであり、特にベビーリーフ等の未熟野菜の生産において、播種作業を大幅に省力化することができ、またコストダウンすることができる。
【0022】
本発明に係るシードペーパー製造装置は、このようなシードペーパーを高効率に且つ低コストで大量に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜
図6を用いて、本発明に係る水耕栽培用シードペーパー製造装置の一実施形態を説明する。
図1に示すとおり、本実施形態のシードペーパー製造装置10は次の各部から構成される。
・水可分解紙から成る長尺台紙11を供給する台紙供給部A
・後半の接着剤印刷部Cと台紙移送・種子圧着部Eによる間欠的な長尺台紙11の移動要求に応じて長尺台紙11に過剰なストレス(引張力)を与えることなく長尺台紙11を送給するための第一緩衝部B
・長尺台紙11に種子13を固定するために接着剤12を所定の間隔で塗布する接着剤印刷部C
・長尺台紙11に塗布された接着剤点に種子13を付着させる種子付着部D
・長尺台紙11にその長さ方向に所定間隔で接着剤点を印刷するために長尺台紙11を所定距離(これを移送ピッチと呼ぶ。なお、移送ピッチと前記所定間隔は異なっていてもよい。)ずつ間欠的に送る台紙移送と、付着した種子13を確実に長尺台紙11に固定するために種子13を長尺台紙11に押し込むように圧接する種子圧接を兼ねた台紙移送・種子圧着部E
・静電気等により長尺台紙11に付着したままの種子や、はみ出した接着剤に付着した余分な種子を除去するための、柔らかい回転ブラシ等を用いた積極除去部F
・間欠的に送られてくる、長尺台紙11に所定間隔で種子13が接着されたシードペーパー15を、過剰なストレスを与えることなく巻き取るために、長尺台紙11の急激な動きを緩衝する第二緩衝部G
・シードペーパー15を巻き取るための台紙巻取部H
・長尺台紙11(又はシードペーパー15)が移動する際に長尺台紙11(又はシードペーパー15)に過剰なストレスを与えず、且つ、停止時に適切な保持力で保持するために適宜の複数の箇所に設けられた、負圧を用いた台紙保持部J1〜J3
【0025】
第一緩衝部B及び第二緩衝部Gは
図2に示すように、長尺台紙11を間欠的に移送する際に長尺台紙11に無理な力を与えないように、長尺台紙11をたるませて内部に垂らしておくような機構となっている。そのため、第一緩衝部B、第二緩衝部G共、長尺台紙11の幅より若干広い幅を持ち、長尺台紙11の送り方向の長さ(厚さ)が数cm、高さ(深さ)が20〜30cm程度の上方が開口した筒状のボディ21を持つ。ボディ21の下部には、内部の空気を排出するファン22と、該ファンを回転駆動するモーター23と、吸い込まれる長尺台紙11のたるんだ部分の下端(底面)の高さを計測できるセンサー24を持っている。
【0026】
長尺台紙11を台紙供給部Aから途中の各構成部B〜Gを通過させて台紙巻取部Hに渡し、第一緩衝部B及び第二緩衝部Gを稼働させると、両緩衝部B、Gの下側のファン22が回転して長尺台紙11をボディ21内に引き込む。そしてセンサー24は長尺台紙11の底面までの距離を測定する。
【0027】
長尺台紙11の底面が上限(アッパーリミット)ULより上(点線)である場合、台紙供給部Aのブレーキを開放するか供給モーターを回転させて長尺台紙11を供給する。長尺台紙11の下端部が下限(ロワーリミット)LLに達すると、台紙供給部Aの台紙供給を停止する。なお、この際の台紙供給部Aの台紙供給量(台紙供給部Aが引き出す長尺台紙11の長さ)は、後述の移送ピッチとは無関係である。
【0028】
センサー24は超音波距離センサーを想定して図示し説明するが、ボディ21の側壁のLLの位置(ロワーリミット部)及びULの位置(アッパーリミット部)に反射型もしくは透過型の光センサーを置いても同様の機能は達成できる。更に、
図2ではセンサー24をボディ21の下側に設ける事例を示しているが、上側に設置しても同様な機能を実現することができる。そして、ファン22による吸引力を十分確保しておくならば、第一緩衝部B及び第二緩衝部G共、全体としての方向は
図2に示すような長尺台紙11を下方に垂らすだけでなく左右や逆の方向(上側に吸引する方向)となるようにしても、その機能に影響はない(長尺台紙11は後述の通り、トイレットペーパーのような薄葉紙であるため、それらの場合でも、さほど強いモーター23は不要である。)。
【0029】
また、
図2では第一緩衝部Bと第二緩衝部Gにそれぞれ小型のファン22を設け、独立して使用する事例を示しているが、一個の大型ファンを使用し、同ファンの吸引力をパイプ等で配分する事もできる。
【0030】
この様に台紙供給部Aと第一緩衝部Bは協調して、後行程が必要とする長さの長尺台紙11を必要なタイミングで供給するが、第一緩衝部Bが長尺台紙11に与える張力はファン22の弱い吸引力によるもので、且つ、長尺台紙11の移動時に長尺台紙11の質量以外に慣性に影響を与える質量が存在しないため、後方の接着剤印刷部Cが長尺台紙11に間欠的な力を与えても長尺台紙11に強い張力が掛からず、シングルのトイレットペーパーのような薄く破れやすい長尺台紙11でも安定して使用することができる。
【0031】
次に、接着剤印刷部Cの動作を
図3により説明する。
本発明に係るシードペーパー15は、主に短期間で成長する未熟野菜の水耕栽培に使用するため、台紙側を上にして使用する場合は発芽した芽が容易に台紙を突き抜けて上に伸びることができる必要があり、台紙側を下にして使用する場合は発根した根が容易に台紙を突き抜けて培地に伸びることができる必要がある。これらのため、長尺台紙11としては、水で分解されやすい薄くて疎な紙が適している。例えば、前述の通り、トイレットペーパーのJIS規格であるJIS4501-1993に規定されている品質(坪量18g/m2以上、破裂強さ78kPa(10枚)以上、ほぐれやすさ100s以内)を備えるものを用いることができる。
【0032】
この様な薄くて疎な紙に一般的な接着剤を塗布すると、瞬時に接着材が紙に染み込み拡散してしまうため、紙表面に必要量の接着材が残らず、種子を接着する力が弱くなるという問題が生じる。また、接着剤が拡散することにより塗布面が広がり、台紙に複数の種子が付着するという問題も生じる。
【0033】
これらの問題を解決するには、容易に紙に浸透・拡散しない粘度の高い接着剤を、複数の種子が付着しないように種子一個分の面積で精密に印刷する必要がある。このためには、一般的にシルクスクリーン印刷と呼ばれる手法が最適である。
【0034】
また、シルクスクリーン印刷法によれば、種子の大きさや植え付けピッチに合わせて金属薄板やプラスチックシートのマスク32を作る事により
図3の様に、一度に複数個列(
図3では12個×2列の例を示す。)の接着剤を印刷することができるため、効率が良い。
【0035】
ただし、この様な方法で長尺台紙11に接着剤12を印刷する場合、印刷機31やマスク32は送り方向に或る程度の大きさが必要となり、長尺台紙11の間欠移送の送り量(移送ピッチ)より小さくする事が困難となる。この場合、先に印刷した接着剤が次の印刷時にマスク32に接触する事になる。これを防ぐために、
図4に示す様に、印刷する際に、移送ピッチと概ね同じ幅(移送方向の寸法)を持つ押上体33を用いて長尺台紙11を持ち上げ、長尺台紙11を動かすときは押上体33を点線位置に下げる。これにより、長尺台紙11上に印刷された接着剤12がマスク32等に擦れて接着剤12の形状が変化する事を防ぐことができる。
【0036】
印刷機31の構造は本発明の目的とは直接関係がないので詳細は図示しないが、マスク32の上側に適量の接着剤を保持し、スキージと呼ばれるへら状の機構要素が、印刷の度に長尺台紙11の幅方向に交互に移動することにより、接着剤12をマスク32の穴を通して長尺台紙11に印刷するもので、様々な構造が考案・製造されている。
【0037】
接着剤印刷部Cで使用する接着剤としては、澱粉糊やキサンタンガム等の植物由来の水可溶性接着剤を用いる。これらの糊は植物由来であるため、水中の微生物等により容易に分解される。
【0038】
この様に、所定の間隔で接着剤12が印刷された台紙11は、引き続き種子付着部Dに送られる。
種子付着部Dには、長尺台紙11の搬送方向に沿って水平方向及び垂直方向に設けられた水平背板41及び垂直背板42が設けられ、両者の間には吸引のための搬送方向スリットを多数有する吸引基板43が設けられる。また、それらの幅方向両側にそれぞれガイド板44が設けられている。吸引基板43の背部には台紙保持部J2が設けられている。吸引基板43の一例を
図5に示す。長尺台紙11は、水平背板41、吸引基板43、垂直背板42に沿って進む間に台紙保持部J2の作用により吸引され、水平方向から垂直方向に向きが変えられるが、こうして両ガイド板44と、90度向きを変える長尺台紙11が形作る空間に種子13が供給されている。これにより種子13は、長尺台紙11に印刷された接着剤点上の接着剤12に付着する。
【0039】
種子13は、長尺台紙11の水平方向の動きで
図1の左側に運ばれるが、長尺台紙11が垂直方向に向きを変えるため上側に引き上げられ、或る程度まで上がると重力で転がり落ち、
図1に示すような塊を構成する事になる。この塊の中で、種子13は長尺台紙11上を転がり、移動する事により、接着剤点の上を何度も通過するチャンスがあるので、種子13が長尺台紙11の接着剤点上の接着剤12に付着する確率は非常に高い事になる。一方、種子13は、基本的には、接着剤点以外の長尺台紙11上からは排除される。この点から、種子付着部Dは本発明の除去部を兼ねている。
【0040】
この種子付着部Dの構造は、左右に設けたガイド板44と、長尺台紙11の移動方向を概ね水平から概ね垂直に変化させる事以外は、その角度や変化のカーブは発明の要素として重要ではない。また、角度の変化に沿って長尺台紙11をより確実に保持する為に、本実施形態ではファンによる吸引力を利用しているが、長尺台紙11の移送方向への動きと種子13の塊の自重、及び両者の間の摩擦により、種子13の塊はファンによる吸引力が無くとも継続的に
図1のような状態を保持し得る。
【0041】
次に、種子13が付着した長尺台紙11は、上方にある、接着剤点に付着した種子を確実に長尺台紙11に固定するための種子圧着と、長尺台紙11を所定の移送ピッチずつ正確に移動させるための台紙移送を兼ねた台紙移送・種子圧着部Eに至る。この台紙移送・種子圧着部Eについて、
図6を用いて説明する。
【0042】
種子付着部Dで長尺台紙11に付着した種子13は、
図6の拡大
図6Aに示すように長尺台紙11の表面に印刷された接着剤12に一部が付着しているだけであるため、脱落しやすい。
【0043】
この不具合を解消するために、本装置では柔らかいスポンジの様な素材でできた、2本のローラー51、52を押し付けながら同期回転させ(なお、一方のみを駆動し、他方を従動ローラーとしてもよい。)、その間を長尺台紙11を通過させる。これにより、拡大
図6Bに示すように、種子13を長尺台紙11に押し付けて長尺台紙11を凹ませると共に、接着剤12と種子13の接着面を拡張する事により種子13を長尺台紙11に確実に固定する(拡大
図6C)。
【0044】
なお、これらローラー51と52は、種子13をより長尺台紙11側に押し込むために、台紙側のローラー51の硬さE1を種子側のローラー52の硬さE2よりも低く(硬さで表すと、E2≧E1)とした方が良い。ただし、種子側のローラー52の硬さE2が高すぎると、そして長尺台紙11の強さが弱すぎると、種子13が長尺台紙11を突き破って脱落してしまうので、種子側のローラー52の硬さE2は対象とする種子13の種類に応じて適当な柔らかさとしておくことが必要である。
【0045】
また、本装置では両側ともローラー51、52を使用しているが、少なくとも一方をベルトとすることによっても同様な機能を実現することができる。
【0046】
これにより種子13は長尺台紙11の接着剤点にしっかりと接着固定されるが、長尺台紙11には該接着剤点以外の箇所に静電気等により種子が付着していたり、はみ出した接着剤により1つの接着剤点に複数の種子が付着することがある。そこで、それらの余分な種子13を除去するために、柔らかいブラシ等による積極除去部Fを設けておいた方が良い。
図1では回転ブラシによる例を示したが、柔らかい刷毛の様な固定ブラシを用いても良い。
なお、種子13の種類によっては、このような積極除去部Fが不要な場合もある。
【0047】
本実施形態のシードペーパー製造装置の各所には、長尺台紙11を保持するためにファンによる吸引力を利用した台紙保持部J1〜J3が設けられている。
図3及び
図4には、そのうち、接着剤印刷部Cの直後に配置された台紙保持部J1が示されている。長尺台紙11に均一に種子13を接着するには、長尺台紙11を所定の移送ピッチだけ正確に移動させ且つ確実に保持する必要があるが、前述のように、本実施形態におけるシードペーパー15の長尺台紙11は、シングルのトイレットペーパーに類似した薄くて疎な素材であるため、これを破ることなくローラー等で押さえるのは非常に難しい。また、摩擦や慣性が増えるのも、移動時に大きな張力が加わるため好ましくない。そこで本実施形態の装置では、間欠移送する間に長尺台紙11を静置させるために、台紙保持部J1〜J3を設置した。これら台紙保持部J1〜J3では、長尺台紙11の搬送面35に複数の穴やスリット36を設け、これらの穴やスリット36からファン37で空気を吸い込む事により、長尺台紙11を搬送面35に吸い付けて保持する。この保持力は、穴の大きさや数、スリット36の形状により任意に設定することができ、更にファン37の回転数(吸気力)によっても容易に調整することができる。本方式によれば、長尺台紙11の長手方向には自身の重量による搬送面35との間のフリクション(摩擦力)以外の力が加わらないため、長尺台紙11を間欠的に移送しても強い張力が加わらず、薄く疎な紙でも破れることなく処理することができる。
【0048】
なお、
図1では各台紙保持部J1〜J3において小型のファン37を独立して使用する事例を示しているが、一個の大型ファンを使用し、同ファンの吸引力をパイプ等で配分する事もできる。また、ファンによる吸引ではなく、静電気を利用した吸引を行ってもよい。
【0049】
上記実施形態の装置において、長尺台紙11の幅は装置の基本構造を大きく変えることなく、トイレットペーパー程度の幅から数十cmまで、栽培方法や装置側の要望に応じて自由に決定することができる。
【0050】
次に、本実施形態のシードペーパー製造装置により製造したシードペーパーと同シードペーパーを利用した栽培の実施例を
図7と
図8を用いて説明する。
【0051】
図7はシードペーパー60の一つの実施例で、概ねトイレットペーパーと同じ幅(w=110mm)の台紙61上に縦横等ピッチで種子62を接着した例である。この種子62の接着ピッチpは対象になる植物の種類や栽培方法(栽培期間)により自由に決めることができ、例えば成長が速く上に伸びるミズナの未熟野菜生産用であれば14mmピッチ、同様に未熟野菜の生産用でも横に広がり易いロロロッサの場合は18mmピッチ、同じロロロッサでもベビーリーフではなく野菜として出荷する用途の場合は28mmピッチなど、野菜の種類や栽培目的・期間により最適なシードペーパーを製造し提供する事により、野菜生産の生産性を大幅に高める事ができる。なお、縦横のピッチは必ずしも同じである必要はない。
【0052】
次に
図8に示す幅L(1200mm)、奥行きD(600mm)のトレイ71で水耕栽培によりベビーリーフを育てる実施例について説明する。このトレイ71の幅L=1200mm、奥行きD=600mmとし、その中の培地にピッチp=14mmのシードペーパーを敷設して野菜を育てる場合、3,300個前後の種子を播種する必要があり、人力で播種すると作業時間として概ね1時間を必要とする。また、各種販売されている播種器具を用いても、上に置くだけでは、種子が移動するような素材の培地の場合は種子を培地に押し込むなどの作業が必要になるため、大幅な省力化は困難である。
【0053】
近年野菜工場が普及し始め、栽培自体は相当省力化できているが、播種と収穫・調整に人力を必要とするため、収益性が一向に向上しない。また、特にベビーリーフの様な未熟野菜の場合は、植物体が小さいので多くの種子を播種する必要がある上に収穫数が多いので播種と収穫に関する労働生産性が低く、市場では高価に取引されている。
【0054】
しかしながら、本発明によるシードペーパーを利用する水耕栽培によりベビーリーフを栽培すると、播種に要する人件費を大幅に削減できることになる。
例えば
図7に示す幅w=110mmのシードペーパー60を使用する場合、幅方向に8個の種子が並んでいるので、例えば長さを1160mmとするとシードペーパー60上には8×82=656個の種子が存在することになる。それを必要な長さに切って、トレイ71に横に並べて(
図8のトレイの場合、5列)置くだけで、656個×5=3,280個の種子を数秒〜数十秒で播種することができることになる。
【0055】
更に効率よく播種するには、シードペーパー60の幅を広げれば良く、例えば570mm幅のシードペーパーを使用すると、1枚のシードペーパーを置くだけで1つのトレイ71への播種が完了することになる。
【0056】
また、
図8において、5枚のシードペーパー60の種類(野菜の種類)を変えることにより、市場の要求に応じて必要な野菜の割合によるミックスベビーリーフを効率よく生産することもできる。