(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、およびポリグリコール酸からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケージ蓋部材。
前記フィルタ取付部に取り付けられた換気フィルタをさらに備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載のケージ蓋部材であって、該換気フィルタは、雄ねじ部を有する、ケージ蓋部材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、飼育ケージを構成するケージ蓋部材に関するものであって、板状の蓋本体を備え、蓋本体が、換気フィルタを取り付けるためのフィルタ取付部を含む。
【0017】
現在普及している換気フィルタは雄ねじ部を有するものであるが、蓋本体を使い捨ての薄い(例えば、約0.3mm〜約2mmの)樹脂製に構成すると、慣習的に換気フィルタのフィルタ取付部が破損するという問題が生じることを本発明者は見出した。そこで、本発明は、フィルタ取付部に、換気フィルタの雄ねじ部を挿入するための挿入孔を形成するとともに、挿入孔の縁に切れ込み部を形成することにより、使い捨ての薄い部材で構成したケージ蓋部材におけるフィルタ取付部が破損するという課題を解決したものである。
【0018】
なお、本明細書において使用される用語「約」とは、後に続く数値の±10%の範囲を意味する。
【0019】
従って、本発明のケージ蓋部材を構成する板状の蓋本体には、例えば、使い捨てに適した薄い部材が用いられる。本発明の蓋部材の厚さは、約0.3mm〜約2mm、より好ましくは約0.5mm〜約1mmである。薄すぎると蓋として機能せず、厚すぎると使い捨ての蓋としては費用が上がりすぎるためである。本発明の蓋部材の厚さはこのように薄いので、換気フィルタの雄ねじ部に対応する雌ねじ部を形成することが困難であり得る。
【0020】
本発明のケージ蓋部材を構成する板状の蓋本体に用いる素材としては、使い捨ての蓋に適した当該分野で任意のプラスチック材料、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明のケージ蓋部材は、ポリエチレンテレフタラートから形成され得る。別の好ましい実施形態において、本発明のケージ蓋部材は、生分解性プラスチックから形成されてもよい。この生分解性プラスチックは、例えば、トウモロコシやジャガイモなどに由来し得る。
【0021】
本発明のケージ蓋部材のフィルタ取付部は、換気フィルタを挿入して固定するための挿入孔と、この挿入孔の縁に形成された1または複数の切れ込み部を有する。本発明において、切れ込み部の形状は、半楕円形、三角形、直線(スリット)、四角形、半円形、U字形など任意の形状で形成され得るが、好ましい実施形態において、本発明における切れ込み部はU字形あるいは半円形である。
【0022】
本発明の切れ込み部は1つまたは複数設けられ得る。複数の切れ込み部は、挿入孔の縁に均等に配置されてもよいし、不均等に配置されてもよい。例えば、2つの切れ込み部が設けられる実施形態においては、対向して(略180°間隔で)切れ込み部が設けられ、3つの切れ込み部が設けられる実施形態においては、略120°間隔で切れ込み部が設けられ、4つの切れ込み部が設けられる実施形態においては、略90°間隔で切れ込み部が設けられ得る。好ましい実施形態においては、本発明のフィルタ取付部は、2つの対向する切れ込み部を有し、より好ましい実施形態においては、2つの対向するU字状あるいは半円状の切れ込み部を有し得る。
【0023】
また、フィルタ取付部の構造は、板状の蓋本体に挿入孔および切れ込み部が形成されて
いるだけでなく、挿入孔の周囲が補強された構造でもよい。蓋本体を使い捨てにするために薄い樹脂製とすることにより、換気フィルタの重さに耐えられずに下方に凹むため、補強部を設けてこの凹みを抑制することができる。このように挿入孔の周囲を補強する構造としては、挿入孔の周囲に設けられた突出部が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。この突出部は、蓋本体から突出した凸部であり、任意の高さであり得る。好ましくは突出部の高さは、後述するフィルタねじ部101bが蓋本体200aの表面から突出する高さH1と同一またはそれよりも高い、約6mm〜約10mmであり得る。このようにすることにより、排気枝管と蓋本体との間での気密性の向上を図ることができる。好ましい実施形態において、この突出部はフィルタ取付部の挿入孔の周りにリング状に形成された凸部であるが、本発明はこれに限定されず、換気フィルタの重量による蓋本体の凹みを抑制することができる限り任意の構成であり得る。
【0024】
別の実施形態において、本発明の蓋本体は隆起部を有し、フィルタ取付部は、隆起部に設けられていてもよい。このようにすることにより、換気フィルタの重量による蓋本体の凹みを抑制することができるだけでなく、以下で述べる換気システムとの接続において有利であり得る。本発明の隆起部は、例えば約30mm〜約50mm、好ましくは約40mm、蓋本体から隆起し得る。本発明の隆起部は、例えば約30°〜約50°、好ましくは約40°の角度で隆起し得る。このような角度で隆起させることにより、約90°で隆起させるよりも高い弾力性を確保することが可能となる。
さらに、1つの実施形態において、本発明は、複数の飼育ケージを収容する飼育ラックと、飼育ラック内の換気を行う換気システム(ラック内換気システム)とを備えた飼育システムに関するものであって、換気システムは複数の飼育ケージ内を陰圧に、複数の飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にするように調整され得る。詳細は後述するが、このようにすることで、従来の飼育ラックの換気を行う方法に比べて、飼育ケージ内の汚れた空気などが飼育ラック内および飼育ラックを収容する飼育室を汚染するのを回避できるとともに、飼育ラックのイニシャルコストおよび換気システムのランニングコストを削減することが可能となる。
換気システムは、飼育ケージ内を陰圧、飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にすることが可能な範囲で任意の手段であり得る。1つの実施形態において、換気システムは、飼育ラック内への給気を行う給気装置と、飼育ラック内に収容された複数の飼育ケージ内からの排気を行う排気装置とを備えることによって、飼育ケージ内を陰圧、飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にすることを達成するが、本発明はこれに限定されない。好ましい実施形態として、給気装置における飼育ラック内に供給される外気の単位時間当たりの給気量よりも、排気装置における飼育ケージ内の気体の単位時間当たりの排気量を少なくすることで、ラック本体内に導入される外気の一部が飼育ケージを通過せずに飼育ラックから排気される。このようにすることで容易に、飼育ケージ内を陰圧に、かつ飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にすることが可能となる。
【0025】
本願明細書では、以下の実施形態1〜実施形態4のケージ蓋部材として、フィルタ取付部に、換気フィルタの雄ねじ部(以下、フィルタねじ部という。)を挿入するための挿入孔を形成するとともに、挿入孔の縁に切れ込み部をしたケージ蓋部材を挙げる。
【0026】
実施形態1では、ケージ蓋部材として、蓋本体のフィルタ取付部には、挿入孔および切れ込み部だけが形成されたものを説明する。
【0027】
実施形態2では、ケージ蓋部材として、蓋本体のフィルタ取付部には、挿入孔および切れ込み部に加えて、挿入孔の周囲を補強のためのリング状凸部が形成されたものを説明する。
【0028】
実施形態3では、ケージ蓋部材として、蓋本体のフィルタ取付部が、挿入孔および切れ込み部を有するだけでなく、蓋本体のうちの取付部以外の部分に比べて隆起した部分に設けられているものを説明する。
【0029】
実施形態4では、ケージ蓋部材として、蓋本体のフィルタ取付部が、挿入孔、切れ込み部およびリング状凸部を有するだけでなく、蓋本体のうちの取付部以外の部分に比べて隆起した部分に設けられているものを説明する。
さらに、本願明細書では、実施形態5の飼育システムとして、1以上の飼育ラックとともに、飼育ラック内に収容された複数の飼育ケージ内を陰圧に、複数の飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にするように構成されたラック内換気システムを備えた飼育システムを挙げる。
【0030】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1によるケージ蓋部材100を用いた飼育ケージ1を示す斜視図である。
【0031】
この実施形態1のケージ蓋部材100は、
図1に示すように、小動物Mを収容するケージ本体10の開口を覆う蓋部材であり、ケージ本体10とともに飼育ケージ1を構成するものである。
【0032】
以下、飼育ケージ1のケージ本体10およびケージ蓋部材100を詳しく説明する。
【0033】
図2は、
図1に示す飼育ケージ1の分解斜視図である。
【0034】
(ケージ本体10)
飼育ケージ1のケージ本体10は、
図2に示すように、プラスチック材料で構成された本体容器11と、金網で構成された遮蔽ネット12とを有する。遮蔽ネット12は本体容器11の開口を開閉可能に設けられている。ここで、本体容器11はプラスチック製のものに限定されず、紙製、ガラス製、陶器製あるいは金属製でもよい。遮蔽ネット12は、金属製のものに限らず、プラスチック製、紙製、陶器製あるいは金属製でもよい。
【0035】
(ケージ蓋部材100)
ケージ蓋部材100は、
図2に示すように、板状の蓋本体100aと、蓋本体100aの周囲に形成された蓋周壁100bとを有する。蓋本体100aは、換気フィルタ101を取り付けるためのフィルタ取付部110と、給水ボトル102を装着するためのボトル装着部(ボトル取付部)120とを有する。フィルタ取付部110には、換気フィルタ101を挿入するための挿入孔111が形成されており、ケージ蓋部材100の挿入孔111には、ケージ蓋部材100の内側から換気フィルタ101が取り付けられている。なお、換気フィルタ101は、ケージ蓋部材100の外側からケージ蓋部材100の挿入孔111に取り付けてもよい。ボトル装着部120には、給水ボトル102を収容するボトル収容ピット121が形成されており、ボトル収容ピット121の底面には、給水ボトル102の給水ノズル102aを挿入するためのノズル挿入口121aが形成されている。給水ボトル102がボトル収容ピット121に固定具(図示せず)により固定されている。なお、飼育ケージ1内の小動物Mへの給水は、ケージ蓋部材100に装着した給水ボトル102から行う場合に限らず、飼育ケージ1から離れた給水システム(図示せず)から給水してもよい。
【0036】
ここで、蓋本体100aおよび蓋周壁100bは、約0.5mm〜約1mm程度の厚さのポリエチレンテレフタラートにより一体に形成されている。ただし、ケージ蓋部材100は、別々に形成された蓋本体100aと蓋周壁100bとを接合して作製したものでもよい。蓋本体100aと蓋周壁100bとでは、構成材料は同じものでも異なるものでもよい。さらに、蓋本体100aおよび蓋周壁100bを構成する部材は、このような厚さのポリエチレンテレフタレートに限定されるものではなく、このような厚さより厚いあるいは薄いその他のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂など)からなるものでもよい。また、蓋本体100aあるいは蓋周壁100bを構成する部材の厚さは、ケージ蓋部材100に要求される強度を確保できる程度に厚く、かつ、使い捨て部材として要求される経済性を満たす程度に薄いものであればよい。
【0037】
以下、換気フィルタ101およびフィルタ取付部110を具体的に説明する。
【0038】
(換気フィルタ101)
図3は、
図2に示す換気フィルタ101およびフィルタ取付部110を説明するための図であり、
図3(a)〜
図3(e)は、それぞれ換気フィルタ101の拡大側面図、ケージ蓋部材100の平面図、A−A線断面図、B部分の拡大図、フィルタ取付部110の拡大平面図である。
【0039】
ここで、蓋本体100aに取り付けられる換気フィルタ101は、
図3(a)に示すように、空気のろ過機能を備えたフィルタ本体101aと、フィルタ本体101aをケージ蓋部材100の蓋本体100aに固定するためのフィルタねじ部(雄ねじ部)101bとを有する。フィルタねじ部101bでは、円筒形状のねじ軸体101b1の外周面にねじ山101b2が形成されている。ねじ軸体101b1の内部には、フィルタ本体101aにつながる通気路101b3が形成されており、通気路101b3の先端の開口は、後述する換気システム30の排気枝管31に形成された通気孔31a(
図5、
図6参照)に接続される接続口101b4となっている。フィルタ本体101aの高さHaは、所望のろ過機能が達成される範囲内で任意であり得る。一つの実施形態において、フィルタ本体101aの高さHaは、約1cm〜約4cm、好ましくは約2cmである。
【0040】
フィルタねじ部101bの高Hbは、ねじ軸体101b1にねじ山101b2を少なくとも一回り分形成できる高さであることが好ましいが、一回り分形成できる高さの何割かの高さ(たとえば、半分、3分の1などの高さ)であり得る。
【0041】
(フィルタ取付部110)
ケージ蓋部材100のフィルタ取付部110は、
図3(b)、
図3(c)に示すように、板状の蓋本体100aの一部の領域であり、この領域には、換気フィルタ101のフィルタねじ部101bを挿入するための円形の挿入孔111が形成されている。さらに、挿入孔111の縁には一対の切れ込み部111aが形成されている。切れ込み部111aは、挿入孔111にフィルタねじ部101bのねじ軸体101b1を挿入したときにねじ山101b2が挿入孔111と干渉するのを回避あるいは抑制するためのスペースとなるものであればよく、個数、形状、あるいは寸法が限定されるものではない。切れ込み部111aの数が多くなると、製造が困難で、かつねじ山101b2と挿入孔111の周縁部との当接による固定強度が低下するので、好ましくは切れ込み部の数は2〜3個である。また、ねじ山101b2は、一つであってもよいし、切れ込み部111aの個数に応じて複数設けてもよい。
【0042】
ただし、実施形態1では、一例として、挿入孔111の円弧部分の直径Da(
図3(d)、(e)参照)は、フィルタねじ部101bのねじ軸体101b1の直径D1(
図3(a)参照)と略同一または直径D1より大きくなっている。これにより、挿入孔111にねじ軸体101b1を挿入する際に、挿入孔111とフィルタねじ部101bのねじ軸体101b1とが干渉しないようになっている。そのため、換気フィルタ101のフィルタねじ部101bを蓋本体100aにねじ込み易く、しかも、フィルタ取付部110の挿入孔111の縁が裂けたり削れたりする破損を抑制することが可能である。
【0043】
また、挿入孔111の円弧部分の直径Daは、ねじ山101b2の外径D2より小さくなっている。これにより、ケージ蓋部材100の挿入孔111に換気フィルタ101のねじ軸体101b1を挿入したときに、ケージ蓋部材100の挿入孔111の内側縁と換気フィルタ101のねじ山101b2とが引っ掛かるようになっている。
【0044】
さらに、切れ込み部111aの深さDはねじ山101b2の高さH以上(D≧H)の深さとなっている。これにより、挿入孔111にねじ軸体101b1を挿入する際に、フィルタねじ部101bのねじ山101b2が挿入孔111の内縁部に噛み込むことがないようになっている。
【0045】
ここで、切れ込み部111aの形状は、フィルタねじ部101bのねじ山101b2の高さ(すなわち、ねじ溝の深さ)Hの約2倍の半円形状でもよい。例えば、Hは、約1.0×D〜約2.0×D、約1.2×D〜約1.8×D、約1.3×D〜約1.7×Dなどであり得る。ただし、切れ込み部111aの形状はこれに限定されるものではなく、三角形、半楕円形状などの形状でもよく、切れ込み部111aの深さも、挿入孔111の縁がフィルタねじ部101bのねじ山101b2と干渉しない程度であれば任意でありえる。
【0046】
次に、換気フィルタ101をケージ蓋部材100に取り付ける手順を説明する。
【0047】
図4は、
図2に示されるフィルタ取付部110をケージ蓋部材100の上側から見た斜視図であり、
図4(a)〜
図4(c)は、蓋本体100aの下側からフィルタねじ部101bが挿入孔111にねじ込まれる様子を段階的に示す。
【0048】
まず、
図4(a)に示すように、換気フィルタ101のフィルタねじ部101bを上側に向けて換気フィルタ101をケージ蓋部材100の挿入孔111の下側に配置する。
【0049】
次に、
図4(b)に示すように、換気フィルタ101をY方向に回転させながらねじ山101b2の先端をケージ蓋部材100の内側から挿入孔111の切れ込み部111aに斜めに差し込む。
【0050】
さらに、
図4(c)に示すように、ねじ山101b2の先端が挿入孔111の切れ込み部111aに差し込まれた状態で、換気フィルタ101をさらにY方向に回転させて換気フィルタ101のねじ軸体101b1を挿入孔111にねじ込む。
【0051】
これにより、換気フィルタ101がフィルタねじ部101bによりケージ蓋部材100の蓋本体100aに締め付けられることにより、換気フィルタ101がケージ蓋部材100に固定される。
【0052】
このように換気フィルタ101が取り付けられたケージ蓋部材100を、ケージ本体10と組み合わせることにより、内部に飼育環境が形成された飼育ケージ1を得ることができる。
【0053】
図5は、
図1に示す飼育ケージ1が用いられる飼育システムの一例を示す図である。
【0054】
飼育システム1000は、複数の飼育ケージ1を収容する飼育ラック20と、飼育ラック20に収容された複数の飼育ケージ1内の換気を行う換気システム30とを有する。
【0055】
飼育ラック20は、左右一対の縦フレーム21と、左右一対の縦フレーム21の間に取り付けられた複数段(ここでは、5段)の棚板22とを有し、各段の棚板22上には複数個(ここでは4個)の飼育ケージ1が配置可能に構成されている。なお、
図5中、23は飼育ラック20の天板である。
【0056】
換気システム30は、各段の棚板22に載せられた複数の飼育ケージ1に共通の排気枝管31を有する。各排気枝管31には、換気フィルタ101の通気路101b3の接続口101b4(
図3(a))とつながる通気孔31a(
図6(a)参照)が形成されており、通気孔31aは、各飼育ケージ1の換気フィルタ101に対応する位置に位置している。
【0057】
ここで、換気フィルタ101と排気枝管31との接続は、換気フィルタ101と排気枝管31との圧接により、換気フィルタ101の通気路101b3の接続口101b4と排気枝管31の通気孔31aとを密着させることにより行っているが、これに限らない。換気フィルタ101と排気枝管31とは排気チューブなどを介して接続してもよい。
【0058】
さらに、換気システム30は、各段の排気枝管31につながる排気幹管32と、換気装置30aとを有する。換気装置30aは、各飼育ケージ1から排気枝管31および排気幹管32を介して吸引した空気が、排出管(図示せず)を介して飼育ラック1000の外部に排出されるように構成されている。各段の排気枝管31と排気幹管32とで換気配管を構成している。ここで、換気装置30aは、例えば、排気幹管32に接続された排気ファンであるが、これに限定されるものではない。
【0059】
このように本実施形態1のケージ蓋部材100では、板状の蓋本体100aに挿入孔111を含むフィルタ取付部110を設け、換気フィルタ101のフィルタねじ部101bを挿入孔111にねじ込むようにしたので、ケージ蓋部材100に使い捨て可能な薄い部材を用いた場合でも、ケージ蓋部材100に換気フィルタ101を取り付けることができる。しかも、挿入孔111の縁には切れ込み部111aを形成しているので、換気フィルタ101を蓋本体100aにねじ込み易く、しかも、薄い部材で構成されたケージ蓋部材100のフィルタ取付部110が破損することを回避あるいは抑制することができる。
【0060】
(実施形態2)
図6は、
図1に示す飼育ケージ1を飼育ラック20に収納した状態を説明するための図である。
図6(a)は、飼育ケージ1の適切な使用状態を示すが、
図6(b)に示すように、ケージ蓋部材を使い捨てにするために薄く形成すると、換気フィルタの取付部分が換気フィルタの重さによって凹むことがあり得る。この場合、換気フィルタ101と排気枝管31との間に隙間ができ、飼育ケージ1内の換気が不十分になる恐れがある。
【0061】
そこで、以下の実施形態2では、補強されたフィルタ取付部210を有するケージ蓋部材200について説明する。
【0062】
図7は、本発明の実施形態2によるケージ蓋部材200を用いた飼育ケージ2を示す斜視図である。
【0063】
実施形態2のケージ蓋部材200は、実施形態1のケージ蓋部材100のフィルタ取付部110を補強したものであり、実施形態1のフィルタ取付部110に代えてこれとは構造が異なるフィルタ取付部210を備えたものである。ケージ蓋部材200のその他の構成は実施形態1のケージ蓋部材100と同一である。
【0064】
図8は、
図7示すケージ蓋部材200のフィルタ取付部210の具体的構造を示す図であり、
図8(a)、
図8(b)、および
図8(c)はそれぞれ、ケージ蓋部材200の平面図、G−G線断面図、J部分の拡大図である。
【0065】
具体的には、
図8(a)に示すように、ケージ蓋部材200を構成する板状の蓋本体200aにはフィルタ取付部210が設けられている。フィルタ取付部210は、
図8(b)および
図8(c)に示すように、蓋本体200aにフィルタねじ部101bを挿入するための挿入孔111を形成し、さらに、挿入孔111の周囲に沿ってリング状凸部(突出部)212を形成した構造となっている。このフィルタ取付部210においても、実施形態1のフィルタ取付部110と同様、挿入孔111の縁に一対の切れ込み部111aが対向するように形成されている。
【0066】
リング状凸部212の高さH2は、換気フィルタ101がケージ蓋部材200の下側に位置するように換気フィルタ101をフィルタ取付部210に取り付けたときにフィルタねじ部101bが蓋本体200aの表面から突出する高さH1と略同一またはそれより高くなるように設定されている。このようにすることにより、
図6(a)に示すように飼育ケージ2が換気システム30に配置されたとき、
図8Aに示すように、排気枝管31の下面は、リング状凸部212の上面と接触し、換気フィルタ101には接触しないので、排気枝管31から換気フィルタ101に荷重がかかることはなく、換気フィルタ101が排気枝管31に押されてケージ蓋部材200から外れるのを回避あるいは抑制することができる。また、リング状凸部212と排気枝管31とを密着させることで、排気枝管31と蓋本体200aとの間での気密性の向上を図ることが可能となる。
【0067】
また、リング状凸部212の内径C2は、
図8(c)に示すように換気フィルタ101のフィルタ本体101aの直径D0よりも大きい。従って、換気フィルタ101をケージ蓋部材200の上からフィルタ取付部210に取り付けた状態では、フィルタ本体101aはリング状凸部212の内側に収まる状態となる。このようにすることにより、フィルタ本体101aのうちのフィルタねじ部101bの周辺部分は、換気フィルタ101をケージ蓋部材200の下側から取り付けた場合と同様に、ケージ蓋部材200の蓋本体200aに密着し、固定の強度を確保することが可能となる。
【0068】
しかしながら、リング状凸部212のサイズは上述の構成に限定されるものではなく、
リング状凸部212の高さH2が、フィルタねじ部101bが蓋本体200aの表面から突出する高さH1より低い場合、さらにリング状凸部212の内径C2が、換気フィルタ101のフィルタ本体101aの直径D0よりも小さい場合もあり得る。
【0069】
このように実施形態2のケージ蓋部材200では、蓋本体200aのフィルタ取付部210を、蓋本体200aに形成した挿入孔111の周囲に沿ってリング状凸部212を形成した構造としたので、蓋本体200aのフィルタ取付部210およびその周辺部分が補強されることとなり、ケージ蓋部材200の中央のフィルタ取付部210が換気フィルタ101の重さなどで凹むのを抑制することができる。その結果、飼育ラック20に収容した飼育ケージ2の換気フィルタ101と換気システム30の排気枝管31との間に隙間が生じて飼育ケージ2の換気能力が低下するのを抑制することができる。
【0070】
(実施形態3)
さらに、実施形態1、2のケージ蓋部材100、200は、飼育ケージ1、2を飼育ラック20に収納した状態で、ケージ蓋部材100、200に取り付けた換気フィルタ101と排気枝管31とを密着させて換気フィルタ101の通気路101b3の接続口101b4と排気枝管31の通気孔31aとを接続するので、ケージ蓋部材100、200のフィルタ取付部110、210の周辺部を隆起させて換気フィルタ101と排気枝管31との密着を高めるために、弾力性に富む構造とすることが望ましい。
【0071】
図9は、本発明の実施形態3によるケージ蓋部材300を用いた飼育ケージ3を示す斜視図である。
【0072】
実施形態3のケージ蓋部材300は、実施形態1のケージ蓋部材100におけるフィルタ取付部110の周辺部分の弾力性を高めたものであり、実施形態1のケージ蓋部材100において、蓋本体100aに代えて、隆起部313を含む蓋本体300aを備えたものである。ケージ蓋部材300のその他の構成は実施形態1のケージ蓋部材100と同一である。
【0073】
図10は、
図9に示すケージ蓋部材300のフィルタ取付部310の具体的構造を示す図であり、
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)はそれぞれ、ケージ蓋部材300の平面図、K−K線断面図、およびL部分の拡大図である。
【0074】
図10(a)に示すように、ケージ蓋部材300の蓋本体300aは隆起部313を有し、フィルタ取付部310は、ケージ蓋部材300の隆起部313に設けられており、隆起部313の平坦部に、換気フィルタ101を取り付けるための挿入孔111が形成されている。また、隆起部313の側面は傾斜面となっており、この傾斜面により隆起部313の弾力性が高められている。隆起部313の傾斜面の傾斜角は、約30°〜約50°の範囲であり、好ましくは約40°である。このフィルタ取付部310においても、挿入孔111の縁には一対の切れ込み部111aが対向するように形成されている。
【0075】
さらに、蓋本体300aのうちの隆起部313以外の部分での内面に対する隆起部313での内面の高さ(以下、隆起部313の高さという。)H3は、フィルタ本体101a高さHaよりも高くなっている。一つの実施形態において、フィルタ本体101a高さHaが約1cm〜約3cmに対して、隆起部313の高さは約3cm〜約5cmであり、好ましくは、フィルタ本体101aの高さHaが約2cmに対して、隆起部313の高さH3は約4cmであり得る。
【0076】
このようにすることにより、ケージ蓋部材300をケージ本体10に取り付けたとき、
図10Aに示すように、フィルタ本体101aの下面は、蓋本体100aのうちの隆起部313以外の部分の下面より高い位置、すなわち、換気フィルタ101が遮蔽ネット12(図示せず)よりも高い位置に配置されるため、小動物Mが換気フィルタ101をかじることで換気フィルタ101に不具合が発生するのを抑制することができる。
【0077】
このように実施形態3のケージ蓋部材300では、板状の蓋本体300aの一部に、側面が傾斜した隆起部313を形成し、この隆起部313の頂上部分にフィルタ取付部310を配置したので、
図6(b)に示されるような換気フィルタ101の重さによる凹みが抑制される。また、フィルタ取付部310の周辺部分に傾斜面が位置することとなり、フィルタ取付部310の周辺部分の弾力性が高まる。その結果、ケージ蓋部材300を用いた飼育ケージ3では、フィルタ取付部310を下方に押さえつけたときにフィルタ取付部310の周辺部が変形しやすくなり、
図10Aに示すように、飼育ケージ1を
図5に示す飼育ラック20の棚板22と排気枝管31との間に押し込む作業がし易くなる。
【0078】
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態4によるケージ蓋部材400を用いた飼育ケージ4を示す斜視図である。
【0079】
実施形態4のケージ蓋部材400は、実施形態3のケージ蓋部材300のフィルタ取付部310を補強したものであり、実施形態3のケージ蓋部材300において、フィルタ取付部310に代えてこれとは構造が異なるフィルタ取付部410を備えたものである。ケージ蓋部材400のその他の構成は実施形態3のケージ蓋部材300と同一である。
【0080】
図12は、ケージ蓋部材400のフィルタ取付部410の具体的構造を示す図であり、
図12(a)〜
図12(c)は、それぞれケージ蓋部材400の平面図、N−N線断面図、およびP部分の拡大図である。
【0081】
図12(a)に示すように、ケージ蓋部材400の蓋本体400aは、実施形態3のケージ蓋部材300と同様に隆起部313を有し、隆起部313には、実施形態3のフィルタ取付部310とは構造が異なるフィルタ取付部410が設けられている。
【0082】
フィルタ取付部410は、
図12(b)および
図12(c)に示すように、蓋本体400aを構成する隆起部313の平坦部に、換気フィルタ101を取り付けるための挿入孔111を形成し、さらに、挿入孔111の周囲にリング状凸部(突出部)412を形成した構造となっている。このフィルタ取付部410においても、実施形態3のフィルタ取付部310と同様、挿入孔111の縁に一対の切れ込み部111aが対向するように形成されている。ここで、リング状凸部412は、実施形態2のリング状凸部212と同じ構造を有している。従って、実施形態4におけるケージ蓋部材400の有する機能および効果、例えば、
図12Aに示すようにケージ蓋部材400を用いた飼育ケージ4を飼育ラック20の棚板22上に配置する場合などの機能および効果は、実施形態1〜実施形態3におけるケージ蓋部材100、200、300がそれぞれ有する機能および効果と同様であるので割愛する。
【0083】
なお、実施形態1〜実施形態4では、ケージ蓋部材に取付けられる換気フィルタは1つの排気フィルタである場合を示したが、本発明はこれに限定されない。フィルタの通気路に接続される配管の種類に応じて、換気フィルタは排気フィルタであってもよいし、給気フィルタであってもよい。またケージ蓋部材は、2以上の換気フィルタの取付が可能となるように2以上のフィルタ取付部を備えたものでもよい。例えば、複数の換気フィルタを取り付け可能なケージ蓋部材の一例として、換気フィルタとしてフィルタ取付部に排気フィルタ、第2のフィルタ取付部に給気フィルタが取り付けられたものであってもよい。その場合、このようなケージ蓋部材を用いた飼育ケージでは、飼育ケージから排気フィルタを通して強制排気するだけでなく、飼育ケージへ給気フィルタを通して強制給気することが可能であり、そのため、より多くの小動物の飼育が可能となる。
【0084】
また、この飼育システムの飼育ラックには、棚板毎に排気枝管とともに給気枝管を設け、飼育ラックの棚板上に載置された飼育ケージでは、排気フィルタは排気チューブなどを介して排気枝管に接続され、給気フィルタは給気チューブなどを介して給気枝管に接続されていてもよい。
【0085】
さらに、排気フィルタと排気枝管との接続、および給気フィルタと給気枝管との接続は、実施形態1〜実施形態4で説明したように、それぞれのフィルタと、排気枝管あるいは給気枝管との圧接により行うようにしてもよい。
(実施形態5)
従来から複数の飼育ケージを収容する飼育ラックの換気を行う換気システム(ラック内換気システム)として、清浄な空気が飼育ラックの背面の多孔板より飼育ラックの開放された前面に向けて流れるように空気流を形成し、飼育ラックの棚間での相互汚染を回避するようにしたものがある。この換気システムでは、飼育ラック毎の換気を行わないで飼育室の全体を換気する場合に比べて、換気の対象となる体積は、飼育ラックの内容積となって削減される。しかしながら、飼育ラックが設置されている飼育室では、設置されている台数の飼育ラックでの総換気風量に応じた風量の換気を行う必要があること、さらに、飼育ケージ内の汚れた空気などが飼育ラック内および飼育室を汚染することから、空気清浄化のための空調設備として、比較的処理風量の大きな室内空調装置が必要となる(例えば、
図14を参照)。
これに対し、飼育ラックの内部に配置される飼育ケージごとに個別に換気を行う場合は、換気の対象となる体積は、複数の飼育ケージの内容量の合計であり、換気の対象となる体積は、同じ数の小動物を飼育する場合、飼育ラックの内容積に比べると大きく削減される。従って、飼育ラックが設置されている飼育室での空気清浄化のための処理風量も大きく削減される。
ただし、この場合、飼育ラックでは、個々の飼育ケージでの換気効率を落とさないためには、個々の飼育ケージに対して給気配管と排気配管とを接続する必要があり、飼育ラックにおける換気のための構成が複雑になってしまうという問題が生じることを本件発明者は見出した。
本発明は、この課題に対しては、複数の飼育ケージを収容する飼育ラックと、飼育ラックの換気を行う換気システムとを備えた飼育システムにおいて、換気システムを、複数の飼育ケージ内を陰圧に、複数の飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にするように構成するという課題解決手段を提供する。ここで、飼育ケージ内を陰圧にするとは、飼育ケージ内の気圧を飼育ケージ外の気圧に比べて相対的に低くすることであり、飼育ラック内を陽圧にするとは、飼育ラック内の気圧を飼育ラック外(例えば、飼育室内)の気圧に比べて相対的に高くすることを意味する。一つの実施形態において、飼育ケージ内を陰圧、飼育ラック内を陽圧という状態は、飼育ケージ内の気圧が大気圧(約1013hPa)より低く、飼育ケージ以外の飼育ラック内の気圧が大気圧(約1013hPa)より高い状態であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、飼育ケージ内の気圧が飼育ラックの気圧に対して相対的に低く、飼育ラック内の気圧が飼育ラック外(飼育室)の気圧よりも相対的に高い状態を満足する状態であれば、飼育ケージおよび飼育ラック内の気圧が大気圧以下であってもよいし、飼育ケージおよび飼育ラック内の気圧が陽圧であってもよい。
このような飼育ラックの換気システムを備えた飼育システムでは、飼育ケージ内を陰圧に保持することで、飼育ケージ内の汚れた空気などが飼育ラック内および飼育室内を汚染するのを回避でき、しかも、換気の対象を個々の飼育ケージとすることで、飼育環境(飼育室)の空気清浄化のための処理風量の削減により空調設備(室内空調装置)の小型化を図ることができる。
また、飼育ケージを収容する飼育ラック内を陽圧にすることで、個々の飼育ケージに給気配管を接続することなく個々の飼育ケージへの強制給気が可能となる。これにより、配管構造の複雑化を招くことなく個々の飼育ケージでの換気効率を高めることができ、同時に、飼育ケージ内の汚れた空気などによる飼育ラック内や飼育室内の汚染をより確実に回避することができる。
ここで、飼育システムは、飼育ラックとその換気システムとを備え、飼育ラックに個別に除塵可能な飼育ケージを収容し、換気システムが個々の飼育ケージ内を陰圧に、複数の飼育ケージ以外の飼育ラック内を陽圧にする機能を有するものであれば特に限定されるものではない。従って、本発明の飼育システムは、実施形態1〜4のいずれかの飼育ケージを飼育ラックに収容したものでもよい。ただし、以下に詳述する実施形態5では、飼育システムは、実施形態1の飼育ケージ1を飼育ラックに複数個収容し、換気システムとして、飼育ラック内を給気により陽圧に保持する給気装置と、複数の飼育ケージ内を排気により陰圧に保持する排気装置とを有するものとする。
以下、このように飼育ラックに収容された飼育ケージ1の個別換気が行われる飼育システムを実施形態5として具体的に説明する。
図13は、本発明の実施形態5による飼育システム1010を説明するための模式図であり、飼育システム1010を構成する飼育ラック1100およびラック内換気装置1200を飼育施設1001の飼育室1030に設置した状態を示す。
飼育施設1001は、小動物の飼育を行う飼育室1030と、飼育室1030に設置される飼育システム1010とを有する。
飼育システム1010は、複数の飼育ケージを収容する飼育ラック(個別除塵ラック)1100と、飼育ラック1100の内部を換気するラック内換気システム1200とを有する。ここで、複数の飼育ケージには、実施形態1の飼育ケージ1が用いられている。
ラック内換気システム1200は、飼育ラック1100に収容される複数の飼育ケージ1の除塵が個別に行われ、かつ各飼育ケージ1の内部の汚れが飼育ラック1100の内部および外部に広がらないように、飼育ケージ1および飼育ラック1100の換気を行うように構成されている。
ここで、飼育ラック1100は、複数の飼育ケージ1を格納するラック本体1110と、ラック本体1110に飼育ケージ1を出し入れするための開口部を開閉するラック扉1120とを有し、ラック本体1110内には複数段に渡って飼育ケージ1を配置可能に構成されている。
ラック内換気システム1200は、飼育室1030内の清浄な空気を飼育ラック1100内に供給する給気装置1210と、各飼育ケージ1内の空気を換気フィルタ101を通して飼育ラック1100の外部(飼育室1030の内部)へ排出する排気装置1220と、ラック本体1110に取り付けられたラックフィルタ1230とを有する。
給気装置1210は、給気配管1212と給気ファン1211とを有し、給気配管1212は、飼育ラック1100の内部から外部に跨って配置され、給気配管1212のうちの飼育ラック1100の外側に位置する端部には、給気ファン1211が取り付けられ、給気ファン1211により飼育室1030内の清浄な空気が飼育ラック1100内に供給されるようになっている。
排気装置1220は、排気配管1222と排気ファン1221とを有し、排気配管1222は、複数の飼育ケージ1の各々に対応して設けられた複数の排気枝管1223と、複数の排気枝管1223が接続された排気幹管1224とを有する。排気枝管1223の一端は飼育ケージ1の換気フィルタ101に接続され、複数の排気枝管1223の他端は排気幹管1224に接続されている。排気幹管1224のうちの飼育ラック1100の外側に位置する端部には、排気ファン1221が取り付けられ、排気ファン1221より個々の飼育ケージ1内の空気が換気フィルタ101を通して飼育ラック1100の外側に排出されるようになっている。この場合、飼育ケージ1は、ケージ本体10の上面の開口がケージ蓋部材100により密閉された構造ではなく、そのケージ本体10とケージ蓋部材100との間には、飼育ケージ1内の陰圧により飼育ラック1100内の空気が飼育ケージ1内に導入される導入部としての隙間Gpが形成された構造を有する。なお、導入部は飼育ラック1100内の空気が飼育ケージ1内に導入可能であれば任意の機構であり得る。導入部は隙間Gpに限定されず、例えば、ケージ蓋部材100やケージ本体10に形成された微細な貫通穴であってもよい。
ラックフィルタ1230は、飼育室1030から飼育ラック1100内に供給された清浄な空気のうちで複数の飼育ケージ1のいずれにも入り損ねた空気が飼育ラック1100から排出される経路に配置されている。
このような構成の飼育システム1010では、給気装置1210が飼育ラック1100への給気を行うことにより飼育ラック1100内が陽圧に保持され、排気装置1220が各飼育ケージ1からの排気を行うことにより各飼育ケージ1内が陰圧に保持される。ここでは、給気装置1210における飼育ラック1100内に供給される外気の単位時間当たりの給気量よりも、排気装置1220における飼育ケージ1100内から排気される気体の単位時間当たりの排気量を少なくすることで、飼育ラック内に導入される外気の一部が飼育ケージを通過せずに飼育ラックから排気される。
上述したように、飼育ラック内を陽圧にするとは、飼育ラック内の気圧を飼育ラック外の気圧より高くすること、飼育ケージ内を陰圧するとは、飼育ケージ内の気圧を飼育ケージ外の気圧に比べて低くすることであり、飼育ラック内の陽圧は、給気装置1210により飼育ラック1100の外部の空気(飼育室1030内の空気)を飼育ラック1100の内部に供給することにより実現され、飼育ケージ内の陰圧は、排気装置1220により飼育ケージ1の内部の空気を飼育ケージ1の外部(飼育ラック1100の外部である飼育室1030の内部)に排気することにより実現される。
換気によって、適切な酸素のケージへの供給、動物の呼吸、照明または器具によって生じる温度負荷の除去、臭気などの希釈、環境雰囲気の水分量の調整および隣接スペース間での静圧差の形成が達成される。1時間あたりの換気回数は、国や実験施設における規定に従って、ケージに収納する動物の数、種、大きさおよびラックの大きさなどの条件も考慮して、適宜設定され得る。一つの実施形態において換気回数は、1時間あたり約5回〜約25回、好ましくは約10回〜約15回である。しかし本発明はこれに限定されない。
本発明のラック内換気システム1200は、飼育室全体を換気する従来技術に比べてケージ内の空気を換気するだけで足りるため、換気量を低減することができ、それによって換気効率が高められ、省エネルギーで低コスト化を図ることが可能となる。
このように飼育ケージ1内を陰圧にするのに対して飼育ラック1100内を陽圧にすることにより、空気の流れが飼育ラック1100内から飼育ケージ1内への一方向となるため、飼育ケージ1内の汚れた空気が飼育ラック1100内に逆流することが防止される。そのため、飼育ラック1100内および飼育室を常に清浄な状態に保つことが可能となる。
なお、飼育作業者Paなどが出入りする飼育室1030の出入り口には、飼育室1030の内部がその外部と隔離されるように仕切扉1031が設けられており、飼育室1030の内部は、室内空調装置(室内換気装置)1020により清浄な状態に保持されている。室内空調装置1020は、給気管1021、給気ファン1022、排気管1023、および排気ファン1024を有し、給気ファン1022が給気管1021を介して飼育室1030へ清浄な空気を供給し、排気ファン1024が排気管1023を介して飼育室1030内の空気を外部に排出するように構成されている。この室内空調装置1020での処理風量は、飼育室1030に設置されているすべての飼育システム1010の飼育ラック1100に収容されているすべての飼育ケージ1での換気風量の総量に相当する風量である。
図14は、実施形態5の飼育システム1010と対比される従来の飼育システム2010を説明するための模式図であり、陽圧ラック2100を用いた従来の飼育システム2010を示している。
この飼育システム2010では、複数の飼育ケージ1aを収容する飼育ラックとして、内部が陽圧に保持される従来の飼育ラック(陽圧ラック)2100が用いられている。
飼育システム2010は、複数の飼育ケージ1aを収容する飼育ラック2100と、飼育ラック2100の内部を換気するラック内換気システム2200とを有している。
飼育ラック2100には飼育ケージ1aを載せる棚2102が複数段設けられ、飼育ラック2100の前面側は開口し、その背面側には多孔板2101が取り付けられている。飼育ラック2100は、ラック内換気システム2200から供給される空気が背面側から多孔板2101を介して前面側に流れることにより、飼育ラック2100内が陽圧に保持されるように構成されている。また、飼育ラック2100の背面側から多孔板2101を介して前面側に流れる空気は層流を形成し、これにより上下の棚2102間および同じ棚の隣接する飼育ケージ1a間での空気の相互汚染が抑制される。
また、従来の陽圧ラック2100で用いられている飼育ケージ1aは、実施形態1の飼育ケージ1とは異なり、換気フィルタを有していない。飼育ケージ1aでは、飼育ラック2100の背面側からその前面側に流れる空気により飼育ケージ1a内の換気が行われるように、飼育ケージ1aの上面などには、飼育ケージ1aの内部への空気の流入が可能となるように開口(図示せず)が形成されている。
なお、従来の陽圧ラック2100を用いた飼育システム2010が設置されている飼育施設2001では、飼育室1030の換気のための室内空調装置2020は、実施形態5の飼育施設1001の室内空調装置1020に相当するものであるが、実施形態5の飼育施設1001の室内空調装置1020と比べると、換気能力の高い大型の装置が用いられている。その理由は、
・陽圧ラック2100を用いた飼育システム2010では、換気の対象となるのは飼育ラック2100の内容積であり、飼育ラック2100に収容されるすべての飼育ケージ1aの内容積に比べて大きく、その結果、陽圧ラック2100が設置されている飼育室1030の換気風量も大きくなること、および、
・飼育ケージ1a内の汚れが陽圧ラック2100の外に拡散するため、陽圧ラック2100の配置されている飼育室1030の内部を空調により除塵する必要があること、
である。
このように、実施形態5のラック内換気システム1200を備えた飼育システム1010では、飼育ラック1100に収容された複数の飼育ケージ1の各々の内部が陰圧に保持されるように排気装置1220が各飼育ケージ1内の空気を排気するので、飼育ケージ1内の汚れた空気などが飼育ラック1100内および飼育室1030内を汚染するのを回避できる。しかも、ラック内換気システム1200では、換気の対象は飼育ラック1100内に収容されている複数の飼育ケージ1の内部領域(飼育ラック1100内の一部)であることから、飼育環境の空気清浄化のための処理風量を低く抑えることができる。
さらに、複数の飼育ケージ1を収容する飼育ラック1100の内部が陽圧に保持されるように給気装置1210が飼育ラック1100内に清浄な空気を供給するので、飼育ラック1100内に配置された個々の飼育ケージ1には、ケージ本体10とケージ蓋部材100との間の隙間Gpから清浄な空気が強制的に供給される。このため、各飼育ケージ1に給気配管が接続された複雑な配管構造を用いることなく、個々の飼育ケージでの換気効率を高めることができ、同時に、飼育ケージ内の汚れた空気などによる飼育ラック内や飼育室内の汚染をより確実に回避できる。
その結果、実施形態5の飼育システム1010では、空気清浄化の対象となる体積が、飼育環境である飼育室1030の限られた領域(飼育ラック1100内の複数の飼育ケージ1の内部領域)の体積に限定されることから、飼育ラック1100内および飼育室1030内の空気清浄化のための処理風量を大きく削減でき、飼育施設1001に設置される室内空調装置1020を小型化できる。
しかも、飼育システム1010を構成するラック内換気システム1200では、配管構造を複雑化させることなく、個々の飼育ケージ1内での換気効率を高め、飼育ケージ1内の汚れた空気などによる飼育ラック内や飼育室内の汚染の拡散をより確実に防止することが可能となる。
【0086】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。