【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業 重点領域型研究開発 ICTイノベーション創出型グリーンイノベーションの推進 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面部材は、アスファルト材料又はセメント系材料に、比誘電率又は誘電正接又はその両方が一般骨材よりも小さい物質を混入させた素材からなる部材又はこれら素材を複層したものからなる部材であることを特徴とする請求項1に記載の給電導体の埋設構造。
前記表面部材は、プラスチック、木、発泡スチロール、アスファルト材料、コンクリート材料、及び導電性の高い物質をコンクリートに混入し電気抵抗を低下させた素材のいずれかからなる部材又はこれら素材を複層又は複合したものからなる部材であることを特徴とする請求項1に記載の給電導体の埋設構造。
前記基体側部材及び前記表面部材のいずれか一方の、平面視で前記第一給電導体を含む領域と前記第二給電導体を含む領域との間に、絶縁物からなる目地材を配置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の給電導体の埋設構造。
前記第一給電導体及び前記第二給電導体は、板形状、シート形状、又はメッシュ形状であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の給電導体の埋設構造。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車や電動カート、AGV(Automated Guided Vehicle)等、電気エネルギーを動力に用いる車両に対して電力を給電する給電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1記載の給電装置は、以下のように構成されている。
車両側は、電気エネルギーを動力とするモーター、整流回路、及び車輪等を有する車両システム、又は、電気エネルギーを動力とするモーター、バッテリ、整流回路、及び車輪等を有する車両システムである。車輪側は、路面側に敷設された導体から電力を受電する。
【0003】
例えば、車輪と近接する車体側には電極が配設されている。また、タイヤの内部には、タイヤ内導体としてのスチールベルトが設けられている。そして、路面側に敷設された導体と車輪側に設けられたスチールベルトとの間、また、車輪側に設けられたスチールベルトと車体側に配設された電極との間に静電容量が形成されることにより、結果的に車体側に配設された電極と路面側に敷設された導体との間に静電容量が形成され、この静電容量を介して路面側に敷設された導体から車体側に配設された電極に高周波電力エネルギーを伝送させるようになっている。
【0004】
路面側は、金属平板等からなる電極すなわち導体が連続的に路面上に配列、又は埋設して配列され、この導体に高周波電力を給電する電源装置が接続されている。
ところで、例えば路面側に敷設される導体を路面上に連続的に配列した場合、これはすなわち電車の線路と同等の形態となる。そのため、人が敷設されている2つの導体を同時に触れないようにするため、2つの導体の配置位置や配置方法に制約を受けることになる。
【0005】
また、一般的に道路はアスファルト等で構成されているため、金属平板を導体として路面上に敷設すると、金属製の路面はスリップが生じる可能性があり、また、メンテナンスやコスト等、数々の点で不利である。
また、一般的な建築床は、コンクリート、カーペット、長尺シート、塗装等様々であり、建物としての機能性や意匠性によって決定される。そのため、床上に電極を連続的に配列することは、建物としての機能性、意匠性を損なう要因となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した給電装置の一例を示す概略構成図であり、電気自動車や電動カート、電動フォークリフト、電動自動運搬装置等の車両に対して給電を行う給電装置の一例である。
給電装置は、車両側に設けられる受電側装置と、走行路側に設けられる給電側装置とを含む。
【0013】
受電側装置は、受電用の第一電極1及び第二電極2と、第一電極1及び第二電極2間に接続される整流回路3と、整流回路3に接続される負荷4と、を備える。負荷4としては、バッテリ及びモーターを設置するか、又はモーターのみを設置する。
給電には、電気自動車等の車両が有する車輪のうち2つの車輪が選択される。例えば、右後輪が第一車輪5、左後輪が第二車輪6として選択される。
【0014】
図示しない車体の、第一車輪5の上方となる位置には、第一車輪5の外周と対向するように、第一電極1が配置され、同様に車体の、第二車輪6の上方となる位置には、第二車輪6の外周と対向するように、第二電極2が配置されている。例えば、車両のフェンダーから車輪の外周面に向けて突出させたロッドの先端に、第一電極1、第二電極2として平板状の電極を設ければよい。或いはフェンダーの内面に、車輪の外周に対面するように平板状の電極を設けてもよい。また、タイヤの内部には、タイヤ内導体としてのスチールベルトが設けられている。そして、後述の路面側に敷設された第一導体14、第二導体15と車輪側に設けられたスチールベルトとの間、また、車輪側に設けられたスチールベルトと車体側に配設された第一電極1、第二電極2との間に静電容量が形成されることにより、結果的に車体側に配設された第一電極1と路面側に敷設された第一導体14との間、また、第二電極2と第二導体15との間に静電容量が形成され、この静電容量を介して路面側に敷設された第一、第二導体14、15から車体側に配設された第一、第二電極1、2に高周波電力が伝送される。
【0015】
走行路側の給電側装置は、当該給電側装置が設置される基体11上に積層される金属部材12と、金属部材12上に積層される基体側部材13と、基体側部材13の上に所定間隔で左右に配置される、給電用の連続した第一導体14及び第二導体15と、第一導体14及び第二導体15を覆うように基体側部材13上に配置される表面部材16と、表面部材16及び基体側部材13の、平面視で第一導体14及び第二導体15間の領域に設けられた目地材17と、を備え、さらに、基体側部材13と金属部材12との間に絶縁層18を備える。
【0016】
表面部材16の、第一導体14及び第二導体15とは逆側の面が電気自動車等の車両の走行路面となる。
なお、例えば、給電側装置が工場の床等建物内に設置される場合には、建物スラブが基体11となる。また、給電側装置が道路や駐車場等に設置される場合には、路盤又はコンクリート基層等が基体11となる。
【0017】
第一給電導体としての第一導体14及び第二給電導体としての第二導体15は、板形状、シート形状、又はメッシュ形状に形成され、所定間隔を空けて左右に並べて配置される。第一導体14及び第二導体15は、高周波電力給電用の電源装置19に接続される。この高周波電力給電用の電源装置19は、電気自動車等の車両の走行の邪魔にならない場所に配置される。第一導体14及び第二導体15は、走行路において、第一車輪5及び第二車輪6が、平面視で第一導体14及び第二導体15上を走行し得る幅と間隔で設ければよい。
【0018】
金属部材12は、例えば、金属板、金属シート、金属メッシュ等で構成される。金属板、金属シートは、高周波電力のスキンデプスを十分満足する厚みを有する金属からなり、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等からなる。金属メッシュは、高周波電力の波長に比べて十分に格子間隔が狭く配置された金属部材からなる。金属部材12は、この金属部材12が積層される基体11が土壌や路盤、コンクリート基層等、高周波電力の損失を伴う誘電体、或いは電気的な抵抗体である場合に、その影響を抑制する目的で敷設される。
【0019】
金属部材12は、金属部材12が配置された領域が、平面視で、第一導体14と第二導体15と一致するように配置され、さらに、金属部材12が配置された領域が、平面視で、第一導体14と第二導体15との間の領域と一致するように配置される。なお、金属部材12が配置された領域が、平面視で、第一導体14と第二導体15と一致する領域、及び第一導体14と第二導体15との間の領域と一致する領域を含む、さらに広い領域と一致するように配置してもよい。
【0020】
基体側部材13は、平面視で、第一導体14と重なる領域を含む第一基体側部材13aと、第二導体15と重なる領域を含む第二基体側部材13bと、を備える。
基体側部材13は絶縁性の素材からなると共に、誘電損失が少ない素材からなり、第一導体14と第二導体15との間の絶縁を図ると共に、第一導体14、第二導体15と金属部材12との間に発生する誘電損失を少なくする。基体側部材13は、具体的には、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材からなる。なお、ここでは、基体側部材13を、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材から構成しているが、セラミックスに限るものではなく、比誘電率又は誘電正接又はこれら両方が、一般骨材よりも小さい物質を、アスファルト材料又はセメント系材料に混入させた素材から構成することもできる。
【0021】
給電用の第一導体14及び第二導体15は、ワイヤレス給電を行うための電力の送電路であり、例えば板形状に形成される。第一導体14及び第二導体15は、高周波電力のスキンデプスを十分満足する厚みを有する、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属製のシート部材からなる。前述のように、第一導体14及び第二導体15は、高周波電力給電用の電源装置19から供給される高周波電力の波長に比べて、十分に格子間隔が狭く配置された金属メッシュであってもよく、また、シート形状であってもよい。これら第一導体14及び第二導体15は、基体側部材13に埋設されていてもよく、逆に表面部材16に埋設されていてもよい。また、基体側部材13と表面部材16とに亙ってこれら間に埋設されていてもよく、表面部材16の走行路面となる面が平坦となるように、基体側部材13と、第一導体14及び第二導体15と、表面部材16と、が積層されていればよい。
【0022】
表面部材16は、第一導体14及び第二導体15の保護層となる部材であり、また、路面表層や、建築床の仕上げ材としての機能を持つ。また、表面部材16は、第一導体14及び第二導体15間の短絡を防止する。
表面部材16は、平面視で、基体側部材13の第一基体側部材13a及び第一導体14と重なる第一表面部材16aと、第二基体側部材13bと重なる第二表面部材16bと、を備え、例えば、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材からなる。なお、ここでは、表面部材16を、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材から構成しているが、セラミックスに限るものではなく、比誘電率又は誘電正接又はこれら両方が、一般骨材よりも小さい物質を、アスファルト材料又はセメント系材料に混入させた素材から構成することもできる。
【0023】
表面部材16は、車両の重量や走行時の振動に耐え得る強度を持ち、且つ、効率低下の点から比較的薄い素材であることが好ましい。
なお、ここでは、表面部材16が、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材からなる場合について説明するが、必ずしもこれに限るものではない。後述のように、基体側部材13のみをアスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材とするだけでも、伝播損失を抑制し給電効率を向上させることができるため、表面部材16は他の素材からなるものであってもよい。この場合、表面部材16としては、例えば、アスファルト材料、コンクリート材料、セラミックス材料、プラスチック、木、発泡スチロール等を適用することができる。また、これら材料から表面部材16が構成される場合には、表面部材16は、単一の素材で構成されているだけでなく、複数の素材を、複層したもの、あるいは複合したものであってもよい。また、金属繊維など導電性が高い物質をコンクリート等に混入し、電気抵抗を低くした部材からなるものであってもよい。このように、表面部材16が電気抵抗を低くした部材からなる場合には、目地材17又はスリット等の電気絶縁体を設ける等、第一導体14と第二導体15とを絶縁する構造を設ける必要がある。
【0024】
表面部材16が電気抵抗を低くした部材からなる場合には、目地材17又はスリット等、第一導体14と第二導体15とを絶縁する構造を設ける必要がある。つまり、表面部材16の電気抵抗が比較的高く、第一導体14と第二導体15との間で電流リークが生じる可能性が小さい場合には必ずしも設ける必要はなく、また、目地材17a及び17bのうちのいずれか一方のみを配置してもよい。
【0025】
目地材17を備える場合、目地材17は例えば以下の構成を有する。目地材17は、目地材17aと目地材17bとを備える。目地材17aは、基体側部材13の第一基体側部材13aと第二基体側部材13bとの間に設けられ、第一、第二基体側部材13a、13bと目地材17aとからなる層の上面が平坦となるように形成される。目地材17bは、表面部材16の第一表面部材16aと第二表面部材16bとの間に設けられ、第一、第二表面部材16a、16bと目地材17bとからなる層の上面が平坦となるように形成される。
【0026】
目地材17は、発泡ウレタンなど、複素比誘電率の実部が「1」、虚部が「0」に近い素材であることが好ましい。また、目地材17は、固体である必要はなく、液体や空気などの気体、又は固体と液体と気体との混合体であってもよく、この場合も、複素比誘電率の実部が「1」、虚部が「0」に近い素材であることが好ましい。例えば、第一基体側部材13aと第二基体側部材13bとの間、又は第一表面部材16a、第二表面部材16bとの間に隙間を設けたものであってよい。また、目地材17として液体や気体、また、固体と液体と気体との混合体を用いる場合には、これらを、例えば発泡ウレタンなどの複素比誘電率の実部が「1」、虚部が「0」に近い素材からなる収納容器に収納し、これを第一基体側部材13aと第二基体側部材13bとの間、又は第一表面部材16a、第二表面部材16bとの間に配置すればよい。
【0027】
また、目地材17の幅、すなわち、第一表面部材16aと第二表面部材16bとの間隔、及び第一基体側部材13aと第二基体側部材13bとの間隔は、第一導体14と第二導体15との間での電流リークを防止することの可能な間隔であればよい。
また、目地材17a及び17bは一体に形成してもよく、また、目地材17aの上に目地材17bを積層してもよい。
【0028】
図2に、目地材17を設けない場合の給電側装置の一例を示す。例えば、第一導体14及び第二導体15は、それぞれ基体側部材13に埋め込まれた状態に配置され、第一導体14及び第二導体15の上面を含む領域に表面部材16が配置されて、第一導体14及び第二導体15の周囲が基体側部材13と表面部材16とで囲まれた状態となっている。
絶縁層18は、比誘電率の低い素材からなり、例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂及びエチレン樹脂等の樹脂材、ゴム、シリコン、PET(ポリエチレンテレフタラート)等のポリエチレンを適用することができ、さらに、セラミックス等の多孔質で比誘電率が低い素材を適用することも可能である。
【0029】
そして、金属部材12、基体側部材13、第一及び第二導体14、15、表面部材16、及び絶縁層18の積層構造の幅は、
図1に示すように、基体側部材13、表面部材16及び金属部材12により、第一導体14及び第二導体15間の電流リークを低減することの可能な幅に形成されている。
以上のようにして形成される給電装置について、基体側部材13及び表面部材16としてセラミックスを混入させたアスファルト材料又はセラミックスを混入させたコンクリート材料を用いることによる、電気特性を評価した。
【0030】
まず、一般骨材とセラミックス骨材とについて、比誘電率と誘電正接を測定した。セラミックス骨材として、セラサンド(登録商標 美州興産株式会社製)を用いた。なお、ここでいう一般骨材とは、岩石を砕いて人工的に作った骨材(砕石、砕砂)や、天然の作用により岩石からできた砂、砂利(天然骨材)、コンクリート構造物の解体に伴い発生したコンクリート塊から、破砕、磨砕等の処理を行うことで得た骨材(再生骨材)等の砕石のことをいう。
【0031】
砕砂、砕石の岩種は20種類程度あり、主に安山岩、砂岩、石灰岩がよく使用され他には花崗岩・閃緑岩・斑れい岩・斑岩・ひん岩・輝線岩・粗面岩・玄武岩・蛇紋岩の火成岩頬、礫岩・頁岩・粘板岩・凝灰岩の堆積岩類、片麻岩・結晶片岩の変成岩類、珪石・ドロマイト・かんらん岩等がある。
測定には、インピーダンスアナライザを使用した。一般骨材を平行平板の中に詰め、平行平板法で測定した。
図3及び
図4に、比誘電率と誘電正接の測定結果を示す。
図3において、横軸は周波数[MHz]、縦軸は比誘電率である。
図4において、横軸は周波数[MHz]、縦軸は誘電正接である。また、
図3及び
図4において、特性線L1はセラミックス骨材の特性を示し、特性線L2は一般骨材の特性を示す。
【0032】
図3及び
図4に示すように、セラミックス骨材は、全周波数に亙って一般骨材と比較して比誘電率及び誘電正接が小さいことがわかる。つまり、セラミックス骨材は多孔質で砕石内に空隙が多いため、比誘電率及び誘電正接が小さくなると考えられる。このように、セラミックス骨材は、一般骨材と比較して比誘電率及び誘電正接が小さいため、一般骨材に比較して定常波の抑制や伝播効率の向上を図ることができる。
【0033】
以上から、
図1又は
図2に示す基体側部材13として、セラミックスを混入させたアスファルト材料又はセラミックスを混入させたコンクリート材料、つまり、比誘電率及び誘電正接のうちの少なくともいずれか一方が一般骨材よりも小さい物質を、アスファルト材料又はコンクリート材料に混入させることによって、誘電損失を低減できることがわかる。
【0034】
次に、表面部材16として、セラミックスを混入させたアスファルト材料を用いる場合について、比誘電率及び誘電正接を測定した。具体的には、石灰石からなる6号砕石及び砕砂を含む一般的なアスファルト舗装材料Aと、一般的なアスファルト舗装材料において6号砕石をセラミックス骨材に変更したアスファルト舗装材料Bと、一般的なアスファルト舗装材料において6号砕石及び砕砂をセラミックス骨材に変更したアスファルト舗装材料Cと、について、平行平板法で比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0035】
セラミックス砕石としてセラサンドを用いた。
図5及び
図6に、比誘電率と誘電正接の測定結果を示す。
図5において、横軸は周波数[MHz]、縦軸は比誘電率である。
図6において、横軸は周波数[MHz]、縦軸は誘電正接である。また、
図5及び
図6において、特性線L11はアスファルト舗装材料Aの特性を示し、特性線L12はアスファルト舗装材料Bの特性を示し、特性線L13はアスファルト舗装材料Cの特性を示す。
【0036】
図5及び
図6に示すように、アスファルト舗装材料A〜Cは、全周波数に亙ってセラミックス骨材の配合率が増える程、比誘電率及び誘電正接が小さいことが分かる。特に、アスファルト舗装材料Cの誘電正接は、アスファルト舗装材料Aの誘電正接の1/7程度であって、アスファルト舗装材料Aの6号砕石及び砕砂をセラミックス骨材に変更することによって、アスファルト舗装材料による損失つまり表面部材16による誘電損失を1/7に低減できることがわかる。
【0037】
次に、骨材の違いが、給電導体が埋設された走行路における高周波電力エネルギーの伝播損失に与える影響を測定した。
この測定は、
図7に示す、給電側装置を模した伝送路を用いて行った。すなわち
図7に示すように、金属部材12の上に積層された発泡スチロール層(絶縁層18)の上に、砕石層13cとして、一般骨材又はセラミックス砕石を敷き、砕石層13cの上に、第一導体14及び第二導体15を配置した。伝送路の長さは1.25mとした。また、発泡スチロール層及び砕石層の高さはそれぞれ5cmとした。また、第一導体14及び第二導体15の幅はそれぞれ30cmとし、これら第一導体14及び第二導体15の間隔は25cmとした。なお、
図7において(a)は正面図、(b)は側面図である。セラミックス骨材として、セラサンドを用いた。絶縁層18としてスタイロフォームを用いた。
【0038】
そして、砕石層として、一般骨材を用いた場合と、セラミックス骨材を用いた場合とについて、系の伝播損失を比較した。具体的には、まず、この系の2ポートSパラメータをネットワークアナライザで測定した。測定結果より、最大有能電力効率ηmaxを算出した。ηmaxは系の両ポートを整合したときに得られる効率を表す。ηmaxは次式(1)から算出することができる。
【0040】
なお、Zは測定したSパラメータから、次式(2)で求められた被測定系のZパラメータを示す。整合により反射損失がなくなるため、ηmaxは、系の内部損失のみを考慮した効率である。
Z=50(I+S)(I−S)
−1 ……(2)
なお、式(2)中の、Iは単位行列、SはSパラメータを表す行列である。
最大有能電力効率ηmaxの算出結果を
図8に示す。
図8において横軸は周波数[MHz]、縦軸は最大有能電力効率ηmax[%]である。また、特性線L21は砕石層13cとしてセラミックス骨材を用いた場合を示し、特性線L22は砕石層13cとして一般骨材を用いた場合を示す。
【0041】
図8から、最大有能電力効率ηmaxは、全周波数に亙って、セラミックス骨材の方が高いことがわかる。
系の伝播損失(減衰量)[dB]は、次式(3)で算出することができる。
−10×log
10(ηmax) ……(3)
13.56MHzにおける伝播効率を表1に示す。また、表1には、100m換算の伝播効率及び伝播損失(減衰量)も示す。
【0043】
表1から、セラミックス骨材を用いた方が伝播効率は大きく、伝播損失は小さいことが確認される。また、100m当たりの減衰量で考えると、セラミックス骨材を用いることで、一般骨材を用いた場合よりも約5.4dB/100m伝播損失が低減することが確認された。
以上説明したように、本実施形態においては、給電用の第一、第二導体14、15を走行路に埋設する際に、絶縁性の基体側部材13又は誘電損失が少ない素材からなる表面部材16に第一導体14及び第二導体15を埋設するか、又は第一導体14及び第二導体15を、基体側部材13及び表面部材16に亙って埋設することで、第一導体14及び第二導体15の表面を、基体側部材13又は表面部材16により覆うようにしたため、第一導体14及び第二導体15間の電流のリークを抑制し、この電流のリークに起因する効率低下を抑制することができ高い効率でのワイヤレス給電を実現することができる。
【0044】
さらに、このとき、基体側部材13をアスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材で形成することにより、走行路の延びる方向への伝播損失を大幅に低減することができる。
さらに、基体側部材13だけでなく、表面部材16についても、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材で形成したため、走行路の延びる方向への伝播損失をさらに低減することができる。
【0045】
また、基体側部材13及び表面部材16を、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材、つまり、特別な素材ではなく、アスファルト材料、セメント系材料、セラミックス骨材といった、一般的な安価な部材を用いることで実現することができるため、コストの増加を伴うことなく、伝播損失の低減を図ることができる。
また、基体側部材13の下層となる層、つまり基体側部材13と金属部材12との間の層として、絶縁層18を設けることによって、伝播効率をさらに向上させることができる。
【0046】
このように伝播効率の向上を図ることができるため、特に、電気自動車等においては、道路から電力供給を効率よく受けることができ、長距離走行を可能とすることができる。
また、給電用の第一、第二導体14、15を走行路側に埋設したため、感電を回避するための配置位置等の制約や、意匠性の低下等を伴うことなく実現することができる。
なお、上記実施形態においては、第一、第二導体14、15により、単一の高周波電力を伝送する場合について説明したが、高周波電力に限らず、他の周波数の交流電力を伝送するようにしてもよい。
【0047】
また、給電用の第一、第二導体14、15から、周波数の異なる複数の交流電力を伝送するようにしてもよい。このようにすることによって、例えば、複数の異なる車両に対して、各車両で固有の周波数を用いて交流電力を伝送することができる。
また、表面部材16は、第一導体14及び第二導体15が敷設される走行路面とのコントラストが高くなるような色調に形成されていてもよい。つまり、第一導体14及び第二導体15が埋設されている場合、車両のドライバは、走行路のどこに第一、第二導体14、15が埋設されているかを認識しにくい。表面部材16の色調を、走行路面とのコントラストが高くなるように設定することにより、ドライバは、第一、第二導体14、15が埋設された表面部材16の領域を容易に認識することができる。そのため、第一、第二導体14、15を埋設したとしても、第一、第二車輪5、6が、第一、第二導体14、15上を走行するように仕向けることができる。その結果、車両への給電を的確に行うことができる。
【0048】
また、表面部材16に目地材17bを設ける場合には、目地材17bの色調を表面部材16とのコントラストが高くなるように設定することによって、車両のドライバは、目地材17bの位置すなわち、第一導体14、第二導体15間の中央線を認識することができる。したがって、目地材17bが第一、第二導体14、15間の中央に配置されているものとすると、この目地材17bが第一車輪5、第二車輪6間の幅方向中央にくるように操舵することによって、第一、第二導体14、15を埋設したとしても、第一、第二車輪5、6が、第一、第二導体14、15上を走行するように仕向けることができる。
【0049】
また、本発明の一実施形態における給電導体の埋設構造は、道路や工場の床、駐車場等に適用することができる。例えば道路に適用すれば、電気自動車の長距離走行を可能とすることができる。また、工場の床等に配置した場合には、電動カートやAGV(無人搬送車)への電力供給を行うことができる。また、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、サービスエリア等の駐車場の車両駐車スペースや走行スペースに配置することによって、例えば、電気自動車を駐車スペースに駐車させるだけで、或いは、電気自動車を駐車スペースに向けて走行させる若しくは駐車スペースから一般路に向けて走行させるだけで、電力供給を行うことができる。即ち、車両駐車スペースに配置する構成は、非接触型給電所として機能し、走行スペースに配置する構成は、非接触型給電走行路として機能することになる。このような使い方であれば、利用者の使い勝手を大きく向上させることができ、スーパーマーケットなどの商用設備にとっては集客にも繋がるという利点がある。
【0050】
また、上記実施形態において、
図1では、基体側部材13と表面部材16とが平面視で一致して重なる場合について説明したが、平面視で、基体側部材13と表面部材16とは必ずしも同一の大きさでなくてもよく、基体側部材13と表面部材16とが、平面視で第一導体14及び第二導体15と一致する領域を含んでいればよい。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。
さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。